台本概要

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タイトル アメノチ
作者名 シンタマ  (@UdonguRataN)
ジャンル コメディ
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 お見合いの話

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
千葉 204 ちば
愛媛 205 えみめ
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
愛媛:げ。 千葉:はぁ。・・・また貴方ですか。 愛媛:それはこっちのセリフ。折角の、料理の評判も最高で、綺麗な庭園に囲まれた景色のいい 愛媛:素敵なレストランでの食事の相手が・・・なんであんたなの。あーあ、ほんと最悪。 千葉:全くです。 愛媛:よし。あんた帰んなさいよ。 千葉:え。なんでですか。 愛媛:お互い一緒にいたくない以上、それが一番スマートじゃない?ほらほら早く立って。 千葉:あの、ちょっと待ってもらっていいですか。 愛媛:ええ。なに? 千葉:なぜ、私が帰らなければならないんでしょうか? 愛媛:だってそれしか選択肢がないでしょう。 千葉:ありますよね!? 愛媛:はぁ?今来たばかりの私に帰れっていうの?! 千葉:奇遇ですね。私も今来たばかりです。 愛媛:ちょっとやめてよ、その待ち合わせの時の常套句みたいなの。 愛媛:・・・もしかして好感度上げたいの? 千葉:違います。勘弁して下さい。・・・どのみち、こうやってマッチングされてしまった以上は、 千葉:諦めて幾らかの時間をここで一緒に過ごすしかないんじゃないですか? 愛媛:はぁ、憂鬱ね。じゃあさ、時間いっぱい面白トークで楽しませてよ。 千葉:・・・出来ると思いますか? 愛媛:全然。 千葉:・・・。 愛媛:というかですね。 千葉:はい? 愛媛:何度も参加されているのに、まだお気づきでいないようなので、親切心で言わせて頂きますけど、 愛媛:そろそろ諦めた方が宜しいんじゃないですか? 千葉:敬語の使い慣れなさが出てますよ。 愛媛:ただの皮肉よ。そんなことも分からない? 千葉:なんと。 愛媛:ふん。 千葉:そのような会話の高等テクニックを使えるんですね。少し見直しました。 愛媛:どういうこと? 千葉:常に強気で攻撃的。機嫌を損ねるとずっと黙る。いつもそうじゃないですか。 愛媛:それはあんたが悪い。 千葉:そうですか。具体的に教えて頂いても? 愛媛:だからあんたが悪いからよ。 千葉:望まぬとは言え、また再会出来たのも何かのご縁。 千葉:可能な限り改善しますのでどうかご指導下さい。 愛媛:そういう所よ!なんなの?自分の悪い所の改善をご指導って。 千葉:あれ?お分かり頂けませんか?ただの皮肉です。 愛媛:・・・最悪。 千葉:今更ですが、一つお聞きしても? 愛媛:なによ。 千葉:私は確かに何回もこのイベントに参加しておきながら結果を出せていない、それは事実です。 千葉:まぁ、それでも諦める訳にはいきませんが。しかしそれは愛媛さんも同じなハズです。 愛媛:く・・・気づかれたか。 千葉:でなければこう何度も会いませんからね。 千葉:それで・・・どうして愛媛さんはさっさとお相手を決めて、結婚なされないのですか? 愛媛:ほんとに今更。そして唐突ね。 千葉:2020年代後半から、より顕著になったニホンの人口減少。 千葉:その対策として施行された「国家繁栄法」にもとづく20歳以上の国民の結婚義務化。 愛媛:・・・。 千葉:結婚生活や出産、教育に対する環境や補助金も年々向上、 千葉:独身者が最も虐げられていると言ってもいいでしょう。 愛媛:そうね。 千葉:同性婚も認可されて久しいですし、体外受精により誰でも子供が作れます。 愛媛:ええ。 千葉:他にも、性転換や美容整形技術の向上と、それに対する保険の適用、 千葉:結婚可能年齢は15歳にまで引き下げられ、10歳を超えた男女の婚約の推奨などなど、 千葉:政策は多岐(たき)に渡り、今や結婚しないことの方が難しい。 愛媛:その通り。 千葉:そんな中、なぜ愛媛さんは今だ結婚なされないんですか? 愛媛:・・・ははーん。 千葉:どうされました? 愛媛:突然何を、と思ったけどやっぱりあなたひょっとして。 千葉:はい? 愛媛:こんなに回りくどく探ったりして、実は私のこと好きになっちゃってたんでしょ? 千葉:いえ全く。 愛媛:即答! 千葉:全く、です。 愛媛:2回言うな! 千葉:どう聞いたらそういった結論になるのか、人である私には理解出来かねます。 愛媛:待って。私も人よ。 千葉:全く好意は抱いておりません。 愛媛:まさかの3回目!? 千葉:ごめんなさい。友人という体(てい)でよろしければ。 愛媛:なんで私がフラれたみたいになってんの!しかも体って! 千葉:ご不満ですか? 愛媛:もういいわ!はぁ・・・じゃあなんで聞くのよ? 千葉:そう、ですね。今日のような自治体主催の婚活マッチングイベントで、 千葉:私と愛媛さんは何回お会いしたでしょうか? 愛媛:不本意ながら3回目。しかも今回は2回連続・・・。 千葉:ええそうです。この流れ、もしかしたらこの地域に残された未婚者、 千葉:未婚約者は私達二人だけなのかも、と思うほどです。 愛媛:ちょっと、怖いこと言うのやめてよ。 千葉:幾らか要望も考慮されますが、基本的に相手はランダムに選ばれます。 千葉:流石に二人だけ、というのは大袈裟ですが、選択肢が日々減っているのは間違いないでしょう。 愛媛:・・まぁね。 千葉:最初にお会いした時から、愛媛さんは結婚する事に前向きな印象なのですが。 愛媛:ええそうよ。結婚したいわ。 千葉:だから余計に、その・・・。 愛媛:矛盾してるんじゃないかって?なら早くすればいいのに、と。 千葉:・・・はい。そうです。 愛媛:そうねぇ。・・・あ、じゃあさ、なんだと思う? 千葉:え、何がですか? 愛媛:理由よ理由。あんたが聞きたい訳も分かったけど、ただ言うのもつまらないじゃない。 千葉:成程。・・・そうですね。物凄く外見の好みが厳しい、とか。 愛媛:違いまーす。それに今の時代、外見は結構変え放題じゃない? 愛媛:そんなことに固執はしません。 千葉:・・・じゃあ学歴を重視とか。 愛媛:ぶー。それも違います。 千葉:あ、じゃあ分かりました!資産狙いですね。お金第一。 愛媛:待って待って。確かに必要だけど、それだと私、感じ悪くない? 千葉:じゃあ、家事が出来ない。 愛媛:失礼な。人並みに出来ます。 千葉:なら、ズボラだから! 愛媛:たまにはそりゃサボ・・・って違う! 千葉:人の話を聞かないから! 愛媛:それは確かにあるかも・・・ 愛媛:って私が結婚しない理由を当ててるんだよね!?結婚出来ない理由を言ってない!? 千葉:あ、つい。 愛媛:つい、じゃない!そして失礼!全て間違いです。そんなことありません! 千葉:う~ん、難しいですね。 愛媛:本当に知りたいの・・・? 千葉:はい。はぁ、降参です。答えを教えて下さい。 愛媛:んー、しょうがないなぁ。その・・・全然大した理由じゃないんだけど。 千葉:はい。 愛媛:私は・・・恋をしたいのよ。 千葉:え・・・? 愛媛:そんなに意外? 千葉:だって・・・こ、鯉としたい!?それは・・・また・・・ 愛媛:そんな訳ないでしょ!? 千葉:あらゆる多様性が認められる時代ですからね。 千葉:もしよろしけば、ウチにまだ独身でイケメンのクマノミがいますので紹介しましょうか? 愛媛:嫌に決まってるでしょ! 千葉:やっぱり淡水魚じゃないとダメですかね。 愛媛:エラ呼吸から離れろ! 愛媛:はぁ・・・はぁ・・・これ以上茶化すならこの話題はもうおしまいだからね。 千葉:分かりました。是非お願いします。 愛媛:・・・。あんたの家も多分そうだと思うけど、 愛媛:私の両親は集団お見合いイベントで知り合って、そこで結婚したのね。 千葉:・・・はい。 愛媛:今でも仲のいい夫婦、家族だと思う・・・ 愛媛:ただね、私は子供の頃にお祖母ちゃんが言ってたことが忘れられないの。 愛媛:知ってる?昔はね、皆、恋をしたんだって! 愛媛:恋をして、その人をどんどん好きになって、気持ちが通じ合って、 愛媛:お付き合いをして、そして結婚したんだって。 千葉:・・・そうなんですか。 愛媛:凄く素敵じゃない?あ、勿論私は両親の事大好きだし尊敬もしてるよ。 愛媛:でも私は誰かに言われるままに会って、 愛媛:子供を作る為に結婚してって気にはどうしてもなれない・・・。 愛媛:それにはやっぱり、恋がしたい。 千葉:そうですか。・・・それが理由ですか。 愛媛:そうよ。ね?大したものじゃないでしょ? 千葉:ええ、ほんとそうですね。 愛媛:何その言い方。 千葉:すいません。思った以上にこう、くだらない理由だったもので。 愛媛:はあ? 千葉:何ですか恋って?・・・結婚して子供作って家族になるってことに、 千葉:そんなもの不要じゃないですか! 愛媛:あのさ・・・あんたが教えてって言うから仕方なく話したんでしょ。 愛媛:それを何?理解して欲しいなんて元々これっぽっちも思ってないけど、 愛媛:否定される言われなんてない。 千葉:・・・。 愛媛:ほんと最悪。 千葉:・・・すいません。そんなつもりは・・・ 愛媛:もういいわ。やっぱり顔見た瞬間に帰ればよかった。お互い時間の無駄だったわね。 千葉:いえ、そんなことは・・・あ!よかったら気分直しに何か注文しませんか? 千葉:まだ、何も頼んでませんよね。 愛媛:はぁ。この状況でよく言えるわ。呆れを通り越して笑っちゃう・・・。 愛媛:まぁいいわ。もう会うこともないでしょうし、最後に一つ教えてあげる。 千葉:・・・。 愛媛:あんたは誰と話してるの? 千葉:・・・え? 愛媛:次の相手とはちゃんと会話してあげてね。 千葉:愛媛さん、それはどういう意味ですか!? 愛媛:そのまんまよ。 千葉:愛媛さん・・・。 愛媛:私達それぞれ、幸せに結婚出来るよう頑張りましょ。じゃあ、さようなら。 千葉:あ・・・。 千葉:・・・・・・。 千葉:・・・雨、か。 愛媛:ほんっと来た瞬間帰ればよかったわ・・・。 千葉:愛媛さん!? 愛媛:な、何よ。 千葉:え?だって・・・今、さっき・・・え? 愛媛:見てよ外!急に凄い雨なんだもん。 千葉:なんだもん、て・・・。確かに凄い雨ですけど。傘は? 愛媛:天気予報見てなかったし・・・ 愛媛:それに私は、予報でほぼ雨の日でも、家を出る時に雨が降ってなければ傘は持ち歩かない主義なのよ。 千葉:なんですかその主義。 愛媛:それに私 千葉:・・・はい? 愛媛:雨、嫌いなのよね。 千葉:・・・はぁ。 愛媛:だからこれは戻ってきたというか、戦略的撤退よ。 千葉:ただの雨宿りじゃないですか。 愛媛:仕方ないでしょ。この辺何もないし、 愛媛:お店の入口にずっと立ってるって訳にもいかないし・・・席がここしか空いてないし・・・。 千葉:・・・ぷっ、ははは。 愛媛:ぐっ。ダメならダメって言ってよね!・・・拒否権はあるから。 千葉:いえ全然。・・・おかえりなさい。 愛媛:ただいま。・・・雨が、やむまでね。 千葉:はい。ありがとうございます。 愛媛:何のお礼よ・・・。 千葉:その、愛媛さんはなんで雨が嫌いなんですか? 愛媛:なんでって言われると・・・また大したことない理由なんだけど。 千葉:分かりました。覚悟しておきます。 愛媛:するな!・・・あー・・・言葉にするのは難しいんだけど・・・。 千葉:はい。 愛媛:こう・・・なんていうの?寂しい、みたいな? 千葉:雨が、ですか? 愛媛:そう。・・・雨もそうだし、雨を感じてる私も、かな。 愛媛:今日みたいに、寒くて、遅い時間の雨は特に。 愛媛:空がどこまでも真っ暗で、見てると飲み込まれそうになって。ひんやりとした空気の中、 愛媛:雨粒なんかあんまり見えないのに、でも確実に私に降り注いでる。そういう時はほんと・・・ 千葉:寂しく、なるんですか? 愛媛:うん。 千葉:・・・それは何か少し、分かる気がします。 愛媛:えー?本当?さっきは否定して私が怒ったから合わせてるんじゃないのー? 千葉:違います!本当に、少し、分かります。本当です。 愛媛:ふーん。・・・少し、という謙虚さに免じて認めてあげよう。 千葉:愛媛さん。 愛媛:なに? 千葉:さっきは、その・・・すいませんでした。 愛媛:別にもう気にしてないし怒ってない。自分でも、時代に合ってないって分かってるし。 千葉:でも私は愛媛さんにとって大切な思いを傷つけてしまった。 愛媛:大袈裟な言い方。そんなにヤワじゃないよ私は。 愛媛:それに・・・私もちょっと気になることあって。 千葉:何ですか? 愛媛:今度は私が質問していい? 千葉:はい勿論。 愛媛:なんで、さっきあんな風に言ったのかなって。 千葉:・・・。 愛媛:言いたくないならいいんだけど。 愛媛:・・・あんたがあんなに感情的になったのって、初めてだった気がして。 千葉:そう、ですかね。 愛媛:・・・うん。だから私は、ひょっとしたら先にあんたを傷つけちゃったのかもしれない。 愛媛:それが気になって・・・。 千葉:そんな事は・・・。分かりました。お答えします。 千葉:先に言っておきますけど、物凄く、その、つまらない話です。 愛媛:ありがと。覚悟しとくね。 千葉:助かります。あぁ・・・この話をするのも久しぶりです。 千葉:私は所謂、試験管ベビーでして。勿論それ自体はなんら珍しくないのですが。 愛媛:うん。 千葉:少し違うのが、私、という存在がこの世に誕生した瞬間、 千葉:私という存在の誕生を願ったはずの二人が消えてしまったことです。 愛媛:え・・・? 千葉:男女なのか男性同士なのか女性同士なのか、 千葉:そもそもそんな二人がいたのかすら分かりませんが・・・。 千葉:要するに私は子供が出来た際に国から貰える端金(はしたがね)欲しさに虚偽の申請をされた。 千葉:その、まさしく産物なんです。 愛媛:そんな・・・。 千葉:子供を捨てるより試験管を捨てる方がまだ罪の意識は低かったのでしょうね。 千葉:とにかく、私という存在の価値は誕生した瞬間のみにあり、産まれる前になくなりました。 千葉:そんな私はそのまま人工子宮で産まれ、施設に入れて頂き、育ち、今に至る、という感じです。 愛媛:・・・。 千葉:なので私は親も家族も知りません。施設の方達や、学校や職場で知り合った友人、 千葉:お世話になった、大切な人達はいっぱいいますが・・・。 千葉:私は、本質的にはいつまでも、どこまでも一人なんです。 千葉:・・・だから。さっき愛媛さんが、優しい家族が既にいらっしゃって、 千葉:幸せな家族の状態を・・・知っているのに、それだけじゃ物足りないって聞いて、こう・・・ 愛媛:・・・ごめん。 千葉:いや違うんです! 愛媛:え? 千葉:謝ることなんてないんです・・・。自分の生い立ちが少々特殊であることは十分理解していますから、 千葉:人から、家族や結婚相手の話を聞いても、今まで感情が高ぶるなんてことはなかった。 千葉:でもなぜか、愛媛さんの言葉を聞いたら急に・・・ 千葉:悪いのは、勝手に聞いて勝手に取り乱した私なんです。 愛媛:・・・分かった。それと、言ったでしょ?私はもう気にしないって。 千葉:はい。ほんとにすいません。 愛媛:だからあんたも気にしない。そうしよう。 千葉:私も、ですか。 愛媛:だって不公平でしょ?私だけ許されるみたいで。私にも許させなさい。 千葉:どんな理屈ですか・・・。でも、分かりました。もう気にしません。 愛媛:宜しい。そうだ、ここからはもっと建設的な話をしましょう。 千葉:建設的?それはどういった話ですか? 愛媛:決まってるでしょ。この先、お互いが結婚出来る為の作戦会議よ! 千葉:えええ・・・。 愛媛:何よその反応は。 千葉:だってそんな急に。 愛媛:いいじゃない。もう私たちは一度腹を割って話した仲間。つまり同士! 千葉:そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、難しいんじゃないですか? 愛媛:なんでよ。 千葉:・・・言いづらいんですけど。私も愛媛さんも結婚出来ていないですよね。 愛媛:それが何よ。だから話し合うんじゃない。 千葉:成功した経験がない二人が話し合ってもいい意見が生まれるとは思えないのですが。 愛媛:はぁ。考えが浅いわね。 千葉:え。 愛媛:いい?成功者の経験談とか、どうやったら結婚出来るかなんて講習は、私達既に何度も受けてるのよ。 千葉:まぁそうですね。 愛媛:でも出来ない。それはなぜかしら? 千葉:・・・向いてない、からとか。 愛媛:違う!諦めたらダメ!それはなぜか、それはつまり・・・ 千葉:つまり? 愛媛:私達に必要なもの、足りないものは一般的でないからに他ならない! 千葉:成程! 愛媛:そしてそれを解決出来るのは、お互いを幾らか理解しあった私達でしか成し得ない。 千葉:それは、確かにそうかもしれません。 愛媛:分かってもらえたようで嬉しいわ。では早速会議を始めましょう。 千葉:宜しくお願い致します。 愛媛:敵を知り己を知れば百戦危うからず。まずは状況の確認ね。 千葉:敵って。それと何回結婚するつもりですか。 愛媛:まずは私から。私はまず恋がしたい。 千葉:はい。 愛媛:でも恋が出来ていない。だから結婚も出来ない。 千葉:実に分かりやすい。次は私ですね。私は・・・私はなんで出来ないんでしょう? 愛媛:私に聞かないでよ。特になし、でいいんじゃない? 千葉:そんなやる気のない履歴書みたいな。 愛媛:そもそも結婚したい気持ちはあるのよね? 千葉:それは勿論、はい。 愛媛:じゃあさ。結婚して何がしたいの? 千葉:え。 愛媛:どんな人と結婚してどんな子供が生まれて欲しくてどんな家庭を築きたいとかある? 千葉:どんな、って・・・ええ・・・。すいません。ない、です。 愛媛:そこよ! 千葉:はい? 愛媛:あなたが結婚出来ない理由。結婚した後、がないからじゃない? 千葉:あ。 愛媛:今はそうでもないけど。さっき言ったでしょ? 愛媛:最初に会った時とか、ほんとどこ向いて誰と喋ってんのかなって思った。 千葉:・・・そういう意味だったんですね。 愛媛:漠然と感じただけだったけどね。その答えを聞いてより納得したというか。 千葉:そうか・・・。ありがとうございます。なんかこう、光明が見えた気がします。 愛媛:原因が分かった所で、次はそれぞれ解決していきましょう。 千葉:はい。と言っても、愛媛さんはもう決まってますね。 愛媛:どうすればいいの? 千葉:恋しましょう。 愛媛:いや、そうなんだけど。それが出来ないから困ってて・・・。 千葉:なんでですか?しましょうよ恋。 愛媛:急にぐいぐいくるわね。・・・でも本当に出来ないんだもん。 愛媛:というかそもそも恋って何?ねぇ? 千葉:ええ?!それこそ私に聞かないで下さいよ。 愛媛:抽象的なのでもいいから。何かヒントを頂戴。お願い。 千葉:そう言われても・・・。あの、あくまでイメージですけど。 愛媛:うんうん。 千葉:その人の事を、好きで好きでたまらない状態ではないでしょうか・・・。 愛媛:あ・・・。 千葉:違いますかね。やっぱり。 愛媛:・・・。 千葉:何か言って下さいよ。 愛媛:私も、そう思う。 千葉:え。 愛媛:そう、その人の事が好きで好きでたまらない状態!それが恋よね! 千葉:はい、きっとそうです。 愛媛:あー、すっきりした。 千葉:そうだ。愛媛さん。 愛媛:何? 千葉:愛媛さんは、恋をしてその方と結婚することが望みなんですよね。 愛媛:そうよ。 千葉:どんな人とどんな風に恋をして、恋人から結婚相手になる間にどんなことをされたいんですか? 千葉:きっとそれは、私の悩みの解決にもなる気がします。是非聞かせて下さい。  愛媛:あー・・・それね。 千葉:はい。 愛媛:何も考えてなかったわ。 千葉:はい? 愛媛:てへ。 千葉:てへじゃないですよ!先を考えることが大事だって自分で言ってたじゃないですか。 愛媛:でも恋って、突然なるもんなんじゃないの?先の事なんて考えられなくない? 千葉:だから分かりませんよ・・・。 千葉:じゃあ、無事恋人が出来たとして、してみたい事とかはありませんか? 愛媛:それだったら・・・まぁ、あるけど。 千葉:どんな事ですか? 愛媛:・・・手を繋いでお出かけとか。 千葉:おお。 愛媛:おおって。 千葉:積極的だなと。 愛媛:手、手くらいいいでしょ!こ、恋人同士なのよ私達は! 千葉:私達、ですか? 愛媛:あ、あんたじゃないわよ!未来のその、出会う人よ! 千葉:ですよね。他には? 愛媛:そうね。お互いに好きなお店とか場所を案内しあったり、偶然、共通の趣味を見つけてはしゃいだり・・・ 千葉:はい。 愛媛:たまには家から出ないで二人で映画観たり、ゲームしながらゴロゴロしたり・・・ 千葉:・・・。 愛媛:勿論喧嘩もする。するんだけど、それはとても大事な事で、した後はもっと仲良くなるのよ。 千葉:はい・・・。 愛媛:そしてね。相手が嬉しいと私も嬉しくなって。私が嬉しいと相手も凄く嬉しそうに笑ってくれるの。 愛媛:逆に辛い時は、何も言わず、ずっと傍にいてくれて・・・ 愛媛:こう・・・抱きしめてくれたりなんかしてくれて!私の気持ちはそれで一気に楽になるの! 千葉:愛媛さん・・・。 愛媛:そう、私はね。その人の事が好きで好きでたまらないから、見た目とか過去とか関係なくて、 愛媛:特別じゃない、平凡な毎日でいい。ただ、今、その人と一緒にいることに幸せを感じられる・・・ 千葉:・・・。 愛媛:そんな恋がしたい、な。 千葉:はい・・・ありがとう、ございます。 愛媛:・・・なんだか思ったより、恥ずかしいわね。 千葉:そう、ですね。 愛媛:よ、よーし!気を取り直して次はあんたの問題を解決しましょう! 愛媛:どんな人と結婚して、どんな結婚生活を送ってみたいか、一緒に考えてみよう。 千葉:あの・・・実は、愛媛さんの話を聞いている内にイメージが湧いてきた、 千葉:というか、こうなったら嬉しいなっていうのが浮かんできまして・・・。 愛媛:え!ほんと!凄いじゃない。 千葉:ははは・・・。聞いて、頂いてもいいですか? 愛媛:勿論よ。どうぞ。 千葉:はい。理想の結婚生活から言いますね。まず、住む街は夫婦二人で決めたいと思います。 愛媛:ふんふん。 千葉:幾つか見て、周りの環境はどうだ、とか、近所のスーパーとか公園とか図書館とか色々調べて。 千葉:最初は賃貸でいいんですけど、いつかこの街に家を建てたいね、なんて話をするんです。 千葉:そして、結婚してから最初の1年くらいは二人の時間を楽しんで、そして子供を設けます。 愛媛:おお、いいわね。 千葉:産まれてきてくれた子は、それはそれは可愛くて、私は毎日その子の成長と、 千葉:一緒にいてくれる結婚相手の方のおかげで毎日を幸せに過ごす・・・という感じ、です。 愛媛:うん。とっても素敵じゃない! 千葉:そう言って頂けると嬉しいです。・・・そして、その、結婚したい、と思う人なんですが。 愛媛:どんな人? 千葉:はい。その人はあまり人の見た目や学歴にこだわりはなくて。 愛媛:ほうほう。 千葉:お金の管理はしっかりしてて。 愛媛:大事よねそこは。 千葉:多分、料理はちょっと苦手で、綺麗好きの掃除上手。たまにズボラな所もあるんですけど、 千葉:そこもきっと可愛らしく思えて。 愛媛:・・・え。 千葉:話を聞いてくれない時があったり、少し口が悪かったりするけど、 愛媛:ま、まま待って・・・ 千葉:初めて会った時からいつも真っすぐで、温かくて、優しくて、少し寂しがり屋で、 千葉:一緒に前に進もうと言ってくれて、家族が大好きで、結婚がしたくて、でも、その前に。 愛媛:ねぇ・・・その人って・・・ 千葉:恋がしたいと願ってる方、です。 愛媛:は、はわわわわ・・・ 千葉:愛媛さん。 愛媛:ひゃ、ひゃい・・・。 千葉:私、千葉醤(ひしお)は貴方と・・・結婚したいです。 愛媛:うぅ・・・ 千葉:私!千葉醤は!貴方と結婚したいです! 愛媛:き、聞こえてるから! 千葉:愛媛さん! 愛媛:分かった!分かったから!周り皆見てるから!千葉さん、ちょっと落ち着いて! 千葉:はっ。・・・すいません。なんでしょう、こんな気持ち初めてで。抑えきれませんでした・・・。 愛媛:うん・・・。 千葉:愛媛さん。 愛媛:・・・はい。 千葉:私と、恋をして頂けませんか。 愛媛:こ、恋って!?それに、なんで私を・・・ 千葉:全身が騒ぐんです。私はもう愛媛さんしか考えれません。そして愛媛さんと結婚するには、 千葉:愛媛さんが私に恋をしなければならんですよね? 愛媛:・・・するとなればそうだけど!そうなんだけど・・・ 千葉:私にも、その、恋が出来る自信はありません。ただずっと愛媛さんの事を大切に、 千葉:一番の存在だって思い続ける自信はあります。 愛媛:なんでそんなこと分かるのよ。 千葉:根拠はありません。でも、分かります。はっきりと。 愛媛:・・・その・・・私、料理は少し、じゃなくてとっても苦手なんだけど。 千葉:一緒に作りましょう。 愛媛:結構我が侭で気分屋だし。 千葉:そうだと思います。 愛媛:うぐっ。突然変な事言うかもしれないし。 千葉:楽しみにしてます。 愛媛:うぅ・・・。 千葉:愛媛さん。私と恋をして下さい。 愛媛:・・・。 千葉:・・・。 愛媛:その・・・ご、ごめんなさい! 千葉:・・・あはは、そう、ですか。答えて頂いてありがとうございます。分かりましt 愛媛:でも! 千葉:は、はい? 愛媛:あの、こ、このごめんなさいは嫌でごめんなさい、じゃなくて。 愛媛:千葉さんの言葉は・・・嬉しかったです。と、とっても・・・。 千葉:愛媛さん・・・。 愛媛:ああああ・・・その、上手く言えないんですけど、今はそのお答えが出せない、 愛媛:と言いますか、こここ恋ってこれは恋なのかな、とか、 愛媛:正直今は顔が見れない、と申しますかね・・・その、つまり。 千葉:はい。 愛媛:ちょっと待って下さい・・・とかでもいいでしょう、か? 千葉:はい!勿論です。 愛媛:必ずお返事は致しますので・・・。 千葉:いつまででも待っています。 愛媛:うぅ・・・。 千葉:・・・雨、止みそうですね。 愛媛:・・・あ。そうですね。 千葉:よし、では今すぐ出ましょうか。 愛媛:え?なんで!? 千葉:なんでって、雨が止んでしまうからです。 愛媛:・・・私、さっき雨は嫌いって言ったよね。それに傘も持ってないし。 千葉:はい覚えています。ですが大丈夫です。 千葉:こう見えても私は、天気予報のチェックは外出する予定がない日も怠りませんし、 千葉:仮に100%晴れでも傘は常に持ち歩いています。 愛媛:こう見えても、って、物凄くそう見えるわよ。 千葉:雨が止んだら愛媛さんは帰ってしまいます。なら私がとるべき行動は一つ。 千葉:止む前に一緒に出ることだと思います。愛媛さんとギリギリまで一緒にいたい。 千葉:今日もう一度、同じ場所で見送るようなことはしたくないんです。 愛媛:え・・・。 千葉:道中は出来る限り面白い話を披露して楽しんで頂こうと思います。 千葉:期待に添えるかはわかりませんが・・・。ただ、絶対に寂しい思いはさせません。 千葉:あ、そうだ。雨が少し好きになる雑学を幾つか話させていただk 愛媛:ぷっ・・・ふふふふ。 千葉:ダメ、ですかね?せめてお時間にまだ余裕があればもう少しだけその・・・一緒にいたいです。 愛媛:そうね。雨が少し好きになる雑学は気になるけど、店を出るのは止んでからにしましょう。 千葉:・・・はい。 愛媛:ふぅ・・・それにしてもお腹空いたわね。 千葉:はい? 愛媛:結局ずっと話しっぱなしで何も頼まないままなんて、 愛媛:こんな素敵なレストランにいるのにあり得ないと思わない? 千葉:そんな気分じゃないって言ったのは愛媛さんだと思うんですが。 愛媛:いつの話よ。 千葉:ついさっきだったような。 愛媛:そうだっけ? 千葉:そうですよ。 愛媛:忘れた。それに、さ。 千葉:はい。 愛媛:私も、今、あなたともう少し一緒にいたい気分なの!

愛媛:げ。 千葉:はぁ。・・・また貴方ですか。 愛媛:それはこっちのセリフ。折角の、料理の評判も最高で、綺麗な庭園に囲まれた景色のいい 愛媛:素敵なレストランでの食事の相手が・・・なんであんたなの。あーあ、ほんと最悪。 千葉:全くです。 愛媛:よし。あんた帰んなさいよ。 千葉:え。なんでですか。 愛媛:お互い一緒にいたくない以上、それが一番スマートじゃない?ほらほら早く立って。 千葉:あの、ちょっと待ってもらっていいですか。 愛媛:ええ。なに? 千葉:なぜ、私が帰らなければならないんでしょうか? 愛媛:だってそれしか選択肢がないでしょう。 千葉:ありますよね!? 愛媛:はぁ?今来たばかりの私に帰れっていうの?! 千葉:奇遇ですね。私も今来たばかりです。 愛媛:ちょっとやめてよ、その待ち合わせの時の常套句みたいなの。 愛媛:・・・もしかして好感度上げたいの? 千葉:違います。勘弁して下さい。・・・どのみち、こうやってマッチングされてしまった以上は、 千葉:諦めて幾らかの時間をここで一緒に過ごすしかないんじゃないですか? 愛媛:はぁ、憂鬱ね。じゃあさ、時間いっぱい面白トークで楽しませてよ。 千葉:・・・出来ると思いますか? 愛媛:全然。 千葉:・・・。 愛媛:というかですね。 千葉:はい? 愛媛:何度も参加されているのに、まだお気づきでいないようなので、親切心で言わせて頂きますけど、 愛媛:そろそろ諦めた方が宜しいんじゃないですか? 千葉:敬語の使い慣れなさが出てますよ。 愛媛:ただの皮肉よ。そんなことも分からない? 千葉:なんと。 愛媛:ふん。 千葉:そのような会話の高等テクニックを使えるんですね。少し見直しました。 愛媛:どういうこと? 千葉:常に強気で攻撃的。機嫌を損ねるとずっと黙る。いつもそうじゃないですか。 愛媛:それはあんたが悪い。 千葉:そうですか。具体的に教えて頂いても? 愛媛:だからあんたが悪いからよ。 千葉:望まぬとは言え、また再会出来たのも何かのご縁。 千葉:可能な限り改善しますのでどうかご指導下さい。 愛媛:そういう所よ!なんなの?自分の悪い所の改善をご指導って。 千葉:あれ?お分かり頂けませんか?ただの皮肉です。 愛媛:・・・最悪。 千葉:今更ですが、一つお聞きしても? 愛媛:なによ。 千葉:私は確かに何回もこのイベントに参加しておきながら結果を出せていない、それは事実です。 千葉:まぁ、それでも諦める訳にはいきませんが。しかしそれは愛媛さんも同じなハズです。 愛媛:く・・・気づかれたか。 千葉:でなければこう何度も会いませんからね。 千葉:それで・・・どうして愛媛さんはさっさとお相手を決めて、結婚なされないのですか? 愛媛:ほんとに今更。そして唐突ね。 千葉:2020年代後半から、より顕著になったニホンの人口減少。 千葉:その対策として施行された「国家繁栄法」にもとづく20歳以上の国民の結婚義務化。 愛媛:・・・。 千葉:結婚生活や出産、教育に対する環境や補助金も年々向上、 千葉:独身者が最も虐げられていると言ってもいいでしょう。 愛媛:そうね。 千葉:同性婚も認可されて久しいですし、体外受精により誰でも子供が作れます。 愛媛:ええ。 千葉:他にも、性転換や美容整形技術の向上と、それに対する保険の適用、 千葉:結婚可能年齢は15歳にまで引き下げられ、10歳を超えた男女の婚約の推奨などなど、 千葉:政策は多岐(たき)に渡り、今や結婚しないことの方が難しい。 愛媛:その通り。 千葉:そんな中、なぜ愛媛さんは今だ結婚なされないんですか? 愛媛:・・・ははーん。 千葉:どうされました? 愛媛:突然何を、と思ったけどやっぱりあなたひょっとして。 千葉:はい? 愛媛:こんなに回りくどく探ったりして、実は私のこと好きになっちゃってたんでしょ? 千葉:いえ全く。 愛媛:即答! 千葉:全く、です。 愛媛:2回言うな! 千葉:どう聞いたらそういった結論になるのか、人である私には理解出来かねます。 愛媛:待って。私も人よ。 千葉:全く好意は抱いておりません。 愛媛:まさかの3回目!? 千葉:ごめんなさい。友人という体(てい)でよろしければ。 愛媛:なんで私がフラれたみたいになってんの!しかも体って! 千葉:ご不満ですか? 愛媛:もういいわ!はぁ・・・じゃあなんで聞くのよ? 千葉:そう、ですね。今日のような自治体主催の婚活マッチングイベントで、 千葉:私と愛媛さんは何回お会いしたでしょうか? 愛媛:不本意ながら3回目。しかも今回は2回連続・・・。 千葉:ええそうです。この流れ、もしかしたらこの地域に残された未婚者、 千葉:未婚約者は私達二人だけなのかも、と思うほどです。 愛媛:ちょっと、怖いこと言うのやめてよ。 千葉:幾らか要望も考慮されますが、基本的に相手はランダムに選ばれます。 千葉:流石に二人だけ、というのは大袈裟ですが、選択肢が日々減っているのは間違いないでしょう。 愛媛:・・まぁね。 千葉:最初にお会いした時から、愛媛さんは結婚する事に前向きな印象なのですが。 愛媛:ええそうよ。結婚したいわ。 千葉:だから余計に、その・・・。 愛媛:矛盾してるんじゃないかって?なら早くすればいいのに、と。 千葉:・・・はい。そうです。 愛媛:そうねぇ。・・・あ、じゃあさ、なんだと思う? 千葉:え、何がですか? 愛媛:理由よ理由。あんたが聞きたい訳も分かったけど、ただ言うのもつまらないじゃない。 千葉:成程。・・・そうですね。物凄く外見の好みが厳しい、とか。 愛媛:違いまーす。それに今の時代、外見は結構変え放題じゃない? 愛媛:そんなことに固執はしません。 千葉:・・・じゃあ学歴を重視とか。 愛媛:ぶー。それも違います。 千葉:あ、じゃあ分かりました!資産狙いですね。お金第一。 愛媛:待って待って。確かに必要だけど、それだと私、感じ悪くない? 千葉:じゃあ、家事が出来ない。 愛媛:失礼な。人並みに出来ます。 千葉:なら、ズボラだから! 愛媛:たまにはそりゃサボ・・・って違う! 千葉:人の話を聞かないから! 愛媛:それは確かにあるかも・・・ 愛媛:って私が結婚しない理由を当ててるんだよね!?結婚出来ない理由を言ってない!? 千葉:あ、つい。 愛媛:つい、じゃない!そして失礼!全て間違いです。そんなことありません! 千葉:う~ん、難しいですね。 愛媛:本当に知りたいの・・・? 千葉:はい。はぁ、降参です。答えを教えて下さい。 愛媛:んー、しょうがないなぁ。その・・・全然大した理由じゃないんだけど。 千葉:はい。 愛媛:私は・・・恋をしたいのよ。 千葉:え・・・? 愛媛:そんなに意外? 千葉:だって・・・こ、鯉としたい!?それは・・・また・・・ 愛媛:そんな訳ないでしょ!? 千葉:あらゆる多様性が認められる時代ですからね。 千葉:もしよろしけば、ウチにまだ独身でイケメンのクマノミがいますので紹介しましょうか? 愛媛:嫌に決まってるでしょ! 千葉:やっぱり淡水魚じゃないとダメですかね。 愛媛:エラ呼吸から離れろ! 愛媛:はぁ・・・はぁ・・・これ以上茶化すならこの話題はもうおしまいだからね。 千葉:分かりました。是非お願いします。 愛媛:・・・。あんたの家も多分そうだと思うけど、 愛媛:私の両親は集団お見合いイベントで知り合って、そこで結婚したのね。 千葉:・・・はい。 愛媛:今でも仲のいい夫婦、家族だと思う・・・ 愛媛:ただね、私は子供の頃にお祖母ちゃんが言ってたことが忘れられないの。 愛媛:知ってる?昔はね、皆、恋をしたんだって! 愛媛:恋をして、その人をどんどん好きになって、気持ちが通じ合って、 愛媛:お付き合いをして、そして結婚したんだって。 千葉:・・・そうなんですか。 愛媛:凄く素敵じゃない?あ、勿論私は両親の事大好きだし尊敬もしてるよ。 愛媛:でも私は誰かに言われるままに会って、 愛媛:子供を作る為に結婚してって気にはどうしてもなれない・・・。 愛媛:それにはやっぱり、恋がしたい。 千葉:そうですか。・・・それが理由ですか。 愛媛:そうよ。ね?大したものじゃないでしょ? 千葉:ええ、ほんとそうですね。 愛媛:何その言い方。 千葉:すいません。思った以上にこう、くだらない理由だったもので。 愛媛:はあ? 千葉:何ですか恋って?・・・結婚して子供作って家族になるってことに、 千葉:そんなもの不要じゃないですか! 愛媛:あのさ・・・あんたが教えてって言うから仕方なく話したんでしょ。 愛媛:それを何?理解して欲しいなんて元々これっぽっちも思ってないけど、 愛媛:否定される言われなんてない。 千葉:・・・。 愛媛:ほんと最悪。 千葉:・・・すいません。そんなつもりは・・・ 愛媛:もういいわ。やっぱり顔見た瞬間に帰ればよかった。お互い時間の無駄だったわね。 千葉:いえ、そんなことは・・・あ!よかったら気分直しに何か注文しませんか? 千葉:まだ、何も頼んでませんよね。 愛媛:はぁ。この状況でよく言えるわ。呆れを通り越して笑っちゃう・・・。 愛媛:まぁいいわ。もう会うこともないでしょうし、最後に一つ教えてあげる。 千葉:・・・。 愛媛:あんたは誰と話してるの? 千葉:・・・え? 愛媛:次の相手とはちゃんと会話してあげてね。 千葉:愛媛さん、それはどういう意味ですか!? 愛媛:そのまんまよ。 千葉:愛媛さん・・・。 愛媛:私達それぞれ、幸せに結婚出来るよう頑張りましょ。じゃあ、さようなら。 千葉:あ・・・。 千葉:・・・・・・。 千葉:・・・雨、か。 愛媛:ほんっと来た瞬間帰ればよかったわ・・・。 千葉:愛媛さん!? 愛媛:な、何よ。 千葉:え?だって・・・今、さっき・・・え? 愛媛:見てよ外!急に凄い雨なんだもん。 千葉:なんだもん、て・・・。確かに凄い雨ですけど。傘は? 愛媛:天気予報見てなかったし・・・ 愛媛:それに私は、予報でほぼ雨の日でも、家を出る時に雨が降ってなければ傘は持ち歩かない主義なのよ。 千葉:なんですかその主義。 愛媛:それに私 千葉:・・・はい? 愛媛:雨、嫌いなのよね。 千葉:・・・はぁ。 愛媛:だからこれは戻ってきたというか、戦略的撤退よ。 千葉:ただの雨宿りじゃないですか。 愛媛:仕方ないでしょ。この辺何もないし、 愛媛:お店の入口にずっと立ってるって訳にもいかないし・・・席がここしか空いてないし・・・。 千葉:・・・ぷっ、ははは。 愛媛:ぐっ。ダメならダメって言ってよね!・・・拒否権はあるから。 千葉:いえ全然。・・・おかえりなさい。 愛媛:ただいま。・・・雨が、やむまでね。 千葉:はい。ありがとうございます。 愛媛:何のお礼よ・・・。 千葉:その、愛媛さんはなんで雨が嫌いなんですか? 愛媛:なんでって言われると・・・また大したことない理由なんだけど。 千葉:分かりました。覚悟しておきます。 愛媛:するな!・・・あー・・・言葉にするのは難しいんだけど・・・。 千葉:はい。 愛媛:こう・・・なんていうの?寂しい、みたいな? 千葉:雨が、ですか? 愛媛:そう。・・・雨もそうだし、雨を感じてる私も、かな。 愛媛:今日みたいに、寒くて、遅い時間の雨は特に。 愛媛:空がどこまでも真っ暗で、見てると飲み込まれそうになって。ひんやりとした空気の中、 愛媛:雨粒なんかあんまり見えないのに、でも確実に私に降り注いでる。そういう時はほんと・・・ 千葉:寂しく、なるんですか? 愛媛:うん。 千葉:・・・それは何か少し、分かる気がします。 愛媛:えー?本当?さっきは否定して私が怒ったから合わせてるんじゃないのー? 千葉:違います!本当に、少し、分かります。本当です。 愛媛:ふーん。・・・少し、という謙虚さに免じて認めてあげよう。 千葉:愛媛さん。 愛媛:なに? 千葉:さっきは、その・・・すいませんでした。 愛媛:別にもう気にしてないし怒ってない。自分でも、時代に合ってないって分かってるし。 千葉:でも私は愛媛さんにとって大切な思いを傷つけてしまった。 愛媛:大袈裟な言い方。そんなにヤワじゃないよ私は。 愛媛:それに・・・私もちょっと気になることあって。 千葉:何ですか? 愛媛:今度は私が質問していい? 千葉:はい勿論。 愛媛:なんで、さっきあんな風に言ったのかなって。 千葉:・・・。 愛媛:言いたくないならいいんだけど。 愛媛:・・・あんたがあんなに感情的になったのって、初めてだった気がして。 千葉:そう、ですかね。 愛媛:・・・うん。だから私は、ひょっとしたら先にあんたを傷つけちゃったのかもしれない。 愛媛:それが気になって・・・。 千葉:そんな事は・・・。分かりました。お答えします。 千葉:先に言っておきますけど、物凄く、その、つまらない話です。 愛媛:ありがと。覚悟しとくね。 千葉:助かります。あぁ・・・この話をするのも久しぶりです。 千葉:私は所謂、試験管ベビーでして。勿論それ自体はなんら珍しくないのですが。 愛媛:うん。 千葉:少し違うのが、私、という存在がこの世に誕生した瞬間、 千葉:私という存在の誕生を願ったはずの二人が消えてしまったことです。 愛媛:え・・・? 千葉:男女なのか男性同士なのか女性同士なのか、 千葉:そもそもそんな二人がいたのかすら分かりませんが・・・。 千葉:要するに私は子供が出来た際に国から貰える端金(はしたがね)欲しさに虚偽の申請をされた。 千葉:その、まさしく産物なんです。 愛媛:そんな・・・。 千葉:子供を捨てるより試験管を捨てる方がまだ罪の意識は低かったのでしょうね。 千葉:とにかく、私という存在の価値は誕生した瞬間のみにあり、産まれる前になくなりました。 千葉:そんな私はそのまま人工子宮で産まれ、施設に入れて頂き、育ち、今に至る、という感じです。 愛媛:・・・。 千葉:なので私は親も家族も知りません。施設の方達や、学校や職場で知り合った友人、 千葉:お世話になった、大切な人達はいっぱいいますが・・・。 千葉:私は、本質的にはいつまでも、どこまでも一人なんです。 千葉:・・・だから。さっき愛媛さんが、優しい家族が既にいらっしゃって、 千葉:幸せな家族の状態を・・・知っているのに、それだけじゃ物足りないって聞いて、こう・・・ 愛媛:・・・ごめん。 千葉:いや違うんです! 愛媛:え? 千葉:謝ることなんてないんです・・・。自分の生い立ちが少々特殊であることは十分理解していますから、 千葉:人から、家族や結婚相手の話を聞いても、今まで感情が高ぶるなんてことはなかった。 千葉:でもなぜか、愛媛さんの言葉を聞いたら急に・・・ 千葉:悪いのは、勝手に聞いて勝手に取り乱した私なんです。 愛媛:・・・分かった。それと、言ったでしょ?私はもう気にしないって。 千葉:はい。ほんとにすいません。 愛媛:だからあんたも気にしない。そうしよう。 千葉:私も、ですか。 愛媛:だって不公平でしょ?私だけ許されるみたいで。私にも許させなさい。 千葉:どんな理屈ですか・・・。でも、分かりました。もう気にしません。 愛媛:宜しい。そうだ、ここからはもっと建設的な話をしましょう。 千葉:建設的?それはどういった話ですか? 愛媛:決まってるでしょ。この先、お互いが結婚出来る為の作戦会議よ! 千葉:えええ・・・。 愛媛:何よその反応は。 千葉:だってそんな急に。 愛媛:いいじゃない。もう私たちは一度腹を割って話した仲間。つまり同士! 千葉:そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、難しいんじゃないですか? 愛媛:なんでよ。 千葉:・・・言いづらいんですけど。私も愛媛さんも結婚出来ていないですよね。 愛媛:それが何よ。だから話し合うんじゃない。 千葉:成功した経験がない二人が話し合ってもいい意見が生まれるとは思えないのですが。 愛媛:はぁ。考えが浅いわね。 千葉:え。 愛媛:いい?成功者の経験談とか、どうやったら結婚出来るかなんて講習は、私達既に何度も受けてるのよ。 千葉:まぁそうですね。 愛媛:でも出来ない。それはなぜかしら? 千葉:・・・向いてない、からとか。 愛媛:違う!諦めたらダメ!それはなぜか、それはつまり・・・ 千葉:つまり? 愛媛:私達に必要なもの、足りないものは一般的でないからに他ならない! 千葉:成程! 愛媛:そしてそれを解決出来るのは、お互いを幾らか理解しあった私達でしか成し得ない。 千葉:それは、確かにそうかもしれません。 愛媛:分かってもらえたようで嬉しいわ。では早速会議を始めましょう。 千葉:宜しくお願い致します。 愛媛:敵を知り己を知れば百戦危うからず。まずは状況の確認ね。 千葉:敵って。それと何回結婚するつもりですか。 愛媛:まずは私から。私はまず恋がしたい。 千葉:はい。 愛媛:でも恋が出来ていない。だから結婚も出来ない。 千葉:実に分かりやすい。次は私ですね。私は・・・私はなんで出来ないんでしょう? 愛媛:私に聞かないでよ。特になし、でいいんじゃない? 千葉:そんなやる気のない履歴書みたいな。 愛媛:そもそも結婚したい気持ちはあるのよね? 千葉:それは勿論、はい。 愛媛:じゃあさ。結婚して何がしたいの? 千葉:え。 愛媛:どんな人と結婚してどんな子供が生まれて欲しくてどんな家庭を築きたいとかある? 千葉:どんな、って・・・ええ・・・。すいません。ない、です。 愛媛:そこよ! 千葉:はい? 愛媛:あなたが結婚出来ない理由。結婚した後、がないからじゃない? 千葉:あ。 愛媛:今はそうでもないけど。さっき言ったでしょ? 愛媛:最初に会った時とか、ほんとどこ向いて誰と喋ってんのかなって思った。 千葉:・・・そういう意味だったんですね。 愛媛:漠然と感じただけだったけどね。その答えを聞いてより納得したというか。 千葉:そうか・・・。ありがとうございます。なんかこう、光明が見えた気がします。 愛媛:原因が分かった所で、次はそれぞれ解決していきましょう。 千葉:はい。と言っても、愛媛さんはもう決まってますね。 愛媛:どうすればいいの? 千葉:恋しましょう。 愛媛:いや、そうなんだけど。それが出来ないから困ってて・・・。 千葉:なんでですか?しましょうよ恋。 愛媛:急にぐいぐいくるわね。・・・でも本当に出来ないんだもん。 愛媛:というかそもそも恋って何?ねぇ? 千葉:ええ?!それこそ私に聞かないで下さいよ。 愛媛:抽象的なのでもいいから。何かヒントを頂戴。お願い。 千葉:そう言われても・・・。あの、あくまでイメージですけど。 愛媛:うんうん。 千葉:その人の事を、好きで好きでたまらない状態ではないでしょうか・・・。 愛媛:あ・・・。 千葉:違いますかね。やっぱり。 愛媛:・・・。 千葉:何か言って下さいよ。 愛媛:私も、そう思う。 千葉:え。 愛媛:そう、その人の事が好きで好きでたまらない状態!それが恋よね! 千葉:はい、きっとそうです。 愛媛:あー、すっきりした。 千葉:そうだ。愛媛さん。 愛媛:何? 千葉:愛媛さんは、恋をしてその方と結婚することが望みなんですよね。 愛媛:そうよ。 千葉:どんな人とどんな風に恋をして、恋人から結婚相手になる間にどんなことをされたいんですか? 千葉:きっとそれは、私の悩みの解決にもなる気がします。是非聞かせて下さい。  愛媛:あー・・・それね。 千葉:はい。 愛媛:何も考えてなかったわ。 千葉:はい? 愛媛:てへ。 千葉:てへじゃないですよ!先を考えることが大事だって自分で言ってたじゃないですか。 愛媛:でも恋って、突然なるもんなんじゃないの?先の事なんて考えられなくない? 千葉:だから分かりませんよ・・・。 千葉:じゃあ、無事恋人が出来たとして、してみたい事とかはありませんか? 愛媛:それだったら・・・まぁ、あるけど。 千葉:どんな事ですか? 愛媛:・・・手を繋いでお出かけとか。 千葉:おお。 愛媛:おおって。 千葉:積極的だなと。 愛媛:手、手くらいいいでしょ!こ、恋人同士なのよ私達は! 千葉:私達、ですか? 愛媛:あ、あんたじゃないわよ!未来のその、出会う人よ! 千葉:ですよね。他には? 愛媛:そうね。お互いに好きなお店とか場所を案内しあったり、偶然、共通の趣味を見つけてはしゃいだり・・・ 千葉:はい。 愛媛:たまには家から出ないで二人で映画観たり、ゲームしながらゴロゴロしたり・・・ 千葉:・・・。 愛媛:勿論喧嘩もする。するんだけど、それはとても大事な事で、した後はもっと仲良くなるのよ。 千葉:はい・・・。 愛媛:そしてね。相手が嬉しいと私も嬉しくなって。私が嬉しいと相手も凄く嬉しそうに笑ってくれるの。 愛媛:逆に辛い時は、何も言わず、ずっと傍にいてくれて・・・ 愛媛:こう・・・抱きしめてくれたりなんかしてくれて!私の気持ちはそれで一気に楽になるの! 千葉:愛媛さん・・・。 愛媛:そう、私はね。その人の事が好きで好きでたまらないから、見た目とか過去とか関係なくて、 愛媛:特別じゃない、平凡な毎日でいい。ただ、今、その人と一緒にいることに幸せを感じられる・・・ 千葉:・・・。 愛媛:そんな恋がしたい、な。 千葉:はい・・・ありがとう、ございます。 愛媛:・・・なんだか思ったより、恥ずかしいわね。 千葉:そう、ですね。 愛媛:よ、よーし!気を取り直して次はあんたの問題を解決しましょう! 愛媛:どんな人と結婚して、どんな結婚生活を送ってみたいか、一緒に考えてみよう。 千葉:あの・・・実は、愛媛さんの話を聞いている内にイメージが湧いてきた、 千葉:というか、こうなったら嬉しいなっていうのが浮かんできまして・・・。 愛媛:え!ほんと!凄いじゃない。 千葉:ははは・・・。聞いて、頂いてもいいですか? 愛媛:勿論よ。どうぞ。 千葉:はい。理想の結婚生活から言いますね。まず、住む街は夫婦二人で決めたいと思います。 愛媛:ふんふん。 千葉:幾つか見て、周りの環境はどうだ、とか、近所のスーパーとか公園とか図書館とか色々調べて。 千葉:最初は賃貸でいいんですけど、いつかこの街に家を建てたいね、なんて話をするんです。 千葉:そして、結婚してから最初の1年くらいは二人の時間を楽しんで、そして子供を設けます。 愛媛:おお、いいわね。 千葉:産まれてきてくれた子は、それはそれは可愛くて、私は毎日その子の成長と、 千葉:一緒にいてくれる結婚相手の方のおかげで毎日を幸せに過ごす・・・という感じ、です。 愛媛:うん。とっても素敵じゃない! 千葉:そう言って頂けると嬉しいです。・・・そして、その、結婚したい、と思う人なんですが。 愛媛:どんな人? 千葉:はい。その人はあまり人の見た目や学歴にこだわりはなくて。 愛媛:ほうほう。 千葉:お金の管理はしっかりしてて。 愛媛:大事よねそこは。 千葉:多分、料理はちょっと苦手で、綺麗好きの掃除上手。たまにズボラな所もあるんですけど、 千葉:そこもきっと可愛らしく思えて。 愛媛:・・・え。 千葉:話を聞いてくれない時があったり、少し口が悪かったりするけど、 愛媛:ま、まま待って・・・ 千葉:初めて会った時からいつも真っすぐで、温かくて、優しくて、少し寂しがり屋で、 千葉:一緒に前に進もうと言ってくれて、家族が大好きで、結婚がしたくて、でも、その前に。 愛媛:ねぇ・・・その人って・・・ 千葉:恋がしたいと願ってる方、です。 愛媛:は、はわわわわ・・・ 千葉:愛媛さん。 愛媛:ひゃ、ひゃい・・・。 千葉:私、千葉醤(ひしお)は貴方と・・・結婚したいです。 愛媛:うぅ・・・ 千葉:私!千葉醤は!貴方と結婚したいです! 愛媛:き、聞こえてるから! 千葉:愛媛さん! 愛媛:分かった!分かったから!周り皆見てるから!千葉さん、ちょっと落ち着いて! 千葉:はっ。・・・すいません。なんでしょう、こんな気持ち初めてで。抑えきれませんでした・・・。 愛媛:うん・・・。 千葉:愛媛さん。 愛媛:・・・はい。 千葉:私と、恋をして頂けませんか。 愛媛:こ、恋って!?それに、なんで私を・・・ 千葉:全身が騒ぐんです。私はもう愛媛さんしか考えれません。そして愛媛さんと結婚するには、 千葉:愛媛さんが私に恋をしなければならんですよね? 愛媛:・・・するとなればそうだけど!そうなんだけど・・・ 千葉:私にも、その、恋が出来る自信はありません。ただずっと愛媛さんの事を大切に、 千葉:一番の存在だって思い続ける自信はあります。 愛媛:なんでそんなこと分かるのよ。 千葉:根拠はありません。でも、分かります。はっきりと。 愛媛:・・・その・・・私、料理は少し、じゃなくてとっても苦手なんだけど。 千葉:一緒に作りましょう。 愛媛:結構我が侭で気分屋だし。 千葉:そうだと思います。 愛媛:うぐっ。突然変な事言うかもしれないし。 千葉:楽しみにしてます。 愛媛:うぅ・・・。 千葉:愛媛さん。私と恋をして下さい。 愛媛:・・・。 千葉:・・・。 愛媛:その・・・ご、ごめんなさい! 千葉:・・・あはは、そう、ですか。答えて頂いてありがとうございます。分かりましt 愛媛:でも! 千葉:は、はい? 愛媛:あの、こ、このごめんなさいは嫌でごめんなさい、じゃなくて。 愛媛:千葉さんの言葉は・・・嬉しかったです。と、とっても・・・。 千葉:愛媛さん・・・。 愛媛:ああああ・・・その、上手く言えないんですけど、今はそのお答えが出せない、 愛媛:と言いますか、こここ恋ってこれは恋なのかな、とか、 愛媛:正直今は顔が見れない、と申しますかね・・・その、つまり。 千葉:はい。 愛媛:ちょっと待って下さい・・・とかでもいいでしょう、か? 千葉:はい!勿論です。 愛媛:必ずお返事は致しますので・・・。 千葉:いつまででも待っています。 愛媛:うぅ・・・。 千葉:・・・雨、止みそうですね。 愛媛:・・・あ。そうですね。 千葉:よし、では今すぐ出ましょうか。 愛媛:え?なんで!? 千葉:なんでって、雨が止んでしまうからです。 愛媛:・・・私、さっき雨は嫌いって言ったよね。それに傘も持ってないし。 千葉:はい覚えています。ですが大丈夫です。 千葉:こう見えても私は、天気予報のチェックは外出する予定がない日も怠りませんし、 千葉:仮に100%晴れでも傘は常に持ち歩いています。 愛媛:こう見えても、って、物凄くそう見えるわよ。 千葉:雨が止んだら愛媛さんは帰ってしまいます。なら私がとるべき行動は一つ。 千葉:止む前に一緒に出ることだと思います。愛媛さんとギリギリまで一緒にいたい。 千葉:今日もう一度、同じ場所で見送るようなことはしたくないんです。 愛媛:え・・・。 千葉:道中は出来る限り面白い話を披露して楽しんで頂こうと思います。 千葉:期待に添えるかはわかりませんが・・・。ただ、絶対に寂しい思いはさせません。 千葉:あ、そうだ。雨が少し好きになる雑学を幾つか話させていただk 愛媛:ぷっ・・・ふふふふ。 千葉:ダメ、ですかね?せめてお時間にまだ余裕があればもう少しだけその・・・一緒にいたいです。 愛媛:そうね。雨が少し好きになる雑学は気になるけど、店を出るのは止んでからにしましょう。 千葉:・・・はい。 愛媛:ふぅ・・・それにしてもお腹空いたわね。 千葉:はい? 愛媛:結局ずっと話しっぱなしで何も頼まないままなんて、 愛媛:こんな素敵なレストランにいるのにあり得ないと思わない? 千葉:そんな気分じゃないって言ったのは愛媛さんだと思うんですが。 愛媛:いつの話よ。 千葉:ついさっきだったような。 愛媛:そうだっけ? 千葉:そうですよ。 愛媛:忘れた。それに、さ。 千葉:はい。 愛媛:私も、今、あなたともう少し一緒にいたい気分なの!