台本概要

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タイトル 【泣ける系】彼女の最後のビデオレター
作者名 ゆる男  (@yuruyurumanno11)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ある日突然、生まれつき心臓に難病を抱えているまゆに彼氏役を任命された涼真は
まゆに振り回されながらも2人の思い出を築いていく。
彼女が最後に伝えたい言葉は彼女の最後のビデオレターに込められていた

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
涼真 341 まゆに彼氏役として色々振り回される高校1年生の男の子 元気なまゆの病気を知り、少しずつ心の距離が近づいていく
まゆ 358 心臓病を患っている高校1年生の女の子 天真爛漫な彼女はいつも元気に笑っている
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
まゆ:……さよなら 涼真:俺は彼女から送られた動画を閉じる 涼真:彼女から貰った宝物のような思い出は俺の胸に残り続けていた 涼真:感謝の気持ちと、笑顔でいることと、前向きに生きること 涼真:彼女の人生の全てがこの動画に収められているようで、俺はそれを噛み締めている 涼真:これが彼女の最後のビデオレター 0:病院にて 涼真:はあ〜最悪だ。階段から転んで左腕骨折だなんて運が悪い 涼真:まあ、入院してる間は勉強出来るし気長に待つかなー 涼真:あ、大丈夫ですか?荷物持ちますよ? 涼真:いえ、俺は大丈夫です まゆ:……お? まゆ:……んーいいこと思いついたかも! 涼真:はあ〜入院生活も暇だなー まゆ:ちらっ 涼真:ん? まゆ:ひゅっ! 涼真:なんだ?あの子 まゆ:あっはは! まゆ:先生、私、彼氏いるんだけど、最後の思い出に外出させてよ まゆ:え?ほ、ほんとだよ!今度連れてくるから! 0:2ヶ月後 涼真:よーし、やっとリハビリが終わったぞー。これで俺も自由だ まゆ:わっ! 涼真:うわあー!え?なに? まゆ:びっくりした? 涼真:びっくりしますよ まゆ:だよねー! 涼真:急になんですか? まゆ:急に?なんだろうね? 涼真:はあ? まゆ:でわ、出発進行しまーす! 涼真:ちょっ!冒頭から激しすぎですよ! まゆ:あ、先生、この間言ってた彼氏と出掛けてくるね 涼真:か、彼氏!? まゆ:合わせて 涼真:か、彼氏! まゆ:よく言えましたー まゆ:んじゃ、行くよ 涼真:ど、どこに! まゆ:どこまでもだよー! 涼真:どういうことだー! 涼真:ここはどこなの? まゆ:ん?海だよ 涼真:なんでまた海なんか まゆ:空気が美味しいから まゆ:いやーごめんねー彼氏とデートって言わないと外に出してくれなくてさ 涼真:なんで俺なんだよ 涼真:しかも、君、俺の病室覗いたりしてたでしょ? まゆ:うん、覗いてた 涼真:それも俺を彼氏役にしようって決めてたから? まゆ:うん、そうだよ 涼真:薄情な人だなーそれで俺をこんな振り回して 涼真:俺だって暇じゃない、帰って勉強しないと まゆ:そんなの後でも出来るでしょ? 涼真:悪いけどそれはバカの考え方だよ まゆ:なに?その言い方。感じわるっ 涼真:悪かったね まゆ:もう、久しぶりの外の空気たっぷり堪能させてよ 涼真:・・・はぁしょうがないなー まゆ:わーい!さすが彼氏役! 涼真:彼氏役って……キッパリ言うなよ 涼真:それにしても、なんで外に出たかったの? 涼真:先生から外出許可も出ないくらい君は問題児なのか? まゆ:違うよ!初対面でどんな印象持ってんの! 涼真:君にだけは言われたくないね まゆ:まあいいや、んー問題児っちゃ問題児かもだけど外に出ちゃいけない理由があるの 涼真:何? まゆ:病気持ちだから 涼真:病気?君が?どう考えても元気じゃないか まゆ:その通り!!私は元気なのです!! まゆ:なのにあのクソ丸ハゲ親父が外出させてくれないの 涼真:先生になんてこと言うんだ 涼真:そんなに重病なの?そんな風には見えないけど まゆ:うん、明日死ぬかもね 涼真:何をそんな冗談を まゆ:ほんとだよ?『先天性心神経』(せんてんせいしんしんけい)って知ってる? 涼真:聞いたことないね まゆ:だろうねー まゆ:私は今16歳なんだけどね 涼真:同い年か まゆ:先天性心神経という病気は16歳まで生きられる確率は何パーセントでしょう? 涼真:わかるわけないでしょ まゆ:正解は5パーセント 涼真:・・・5パーセント? まゆ:うん、私はその5パーセントまで生きられた数少ない奇跡の人間なのです! まゆ:ちなみに20歳まで生きられる確率は何パーセントだと思う? 涼真:わからないって まゆ:0パーセント 涼真:・・・そうなんだ まゆ:そうなんだって冷たい人だねこんなか弱い美少女にかける言葉もないの? 涼真:美は余計だと思うよ まゆ:かける言葉きつすぎ!あははは! 涼真:君、本当に病気なの? まゆ:うん、病気だし明日死ぬかもしれない 涼真:そんなに元気でいられるもんなのかな まゆ:逆に君はなんで元気じゃないの? 涼真:僕は別に元気でいる必要がないからだよ まゆ:なーにそれ、つまんない、君とは仲良くなれなそう 涼真:彼氏役に選んでおいて偉そうなこと言わないでもらえる? まゆ:まあそうだね、君のおかげでこうやって海に来れたことだし 涼真:そりゃ、よかったね まゆ:うん まゆ:また・・・来れるといいなー 涼真:・・・ 0:まゆの一瞬の寂しそうな顔に涼真はうろたえる まゆ:名前教えて、私はまゆ 涼真:俺は涼真 まゆ:じゃあ、ライン交換しよう!また私を外に連れてって! 涼真:君ねー まゆ:まゆって呼んで 涼真:ま、まゆ まゆ:はい、なに? 涼真:なんでもない、もう言う気失せた まゆ:交換してくれないの? 涼真:するよ!うるさいな! まゆ:やったー!じゃあ写真撮ろ? 涼真:はいはい まゆ:もっと笑ってよーせっかくなんだから 涼真:笑うのは苦手だよ 0:場面転換 :まゆがメッセージを送信しました まゆ:やっほー 涼真:なに? まゆ:今暇だよね? 涼真:勝手に決めつけないでくれる? まゆ:じゃあ出掛けよ? 涼真:話聞いてた!? まゆ:また海行きたいなーって思って、海の横に有名な神社もあるんだよ 涼真:俺が居ないと外出れないんだから俺に感謝しないとね まゆ:ありがとうございます! 涼真:んで?いつ行くの? まゆ:今週の日曜日にしよっか まゆ:あ、1回病院来てもらわないと出れないからよろしく! 涼真:相当信用されてないんだね まゆ:やだ、照れる 涼真:別に褒めてないよ 0:涼真は病院までまゆを迎えに行き 0:まゆと電車に乗る まゆ:わー!電車なんて何年ぶりだろー! 涼真:そんなに久しぶりなんだね まゆ:うん、だって今日も電車乗るなって言われてるもん 涼真:ちょ!俺を巻き込むなって! まゆ:私が今日死んだら逃げていいからね? 涼真:ひき逃げみたいなことはしたくないよ まゆ:あははっ!おもしろ!ナイスジョーク! 涼真:俺は笑えないよ まゆ:あ、そうだ、写真撮ろ? 涼真:また撮るの? まゆ:いいの!はい撮りまーす 涼真:まったく 0:目的地に着く まゆ:私、階段登れないからおんぶして? 涼真:な、なんで俺が!? まゆ:涼真以外に誰が居るの?ドキドキしちゃうかもしれないけど早くー 涼真:一言余計なんだよ 0:神社まで登る まゆ:ここの神社ね、願い事ちゃんと叶うらしいよ? 涼真:そうなんだ まゆ:涼真は彼女が欲しいって頼んだ方がいいよ 涼真:余計なお世話だよ 0:お賽銭を投げて手を合わせる まゆ:ふぅー!この願いは叶えばいいなー 涼真:あからさまに何願ったか聞いてほしそうな顔してるけど俺は聞かないよ? まゆ:ほんっと冷たい人! 涼真:君に付き合ってあげてるだけでも心優しい人だよ まゆ:はいはいありがと、じゃあ写真撮ろ? 涼真:また!? まゆ:早く!ほら! 涼真:まったく最近の若い子は まゆ:涼真も同い年でしょ! 0:海に行く まゆ:おー!ここの海も広いねー! 涼真:まゆはなんでそんなに海が好きなの? まゆ:んーとねー広いからかな? 涼真:頭悪そうな回答だね まゆ:そんなディスる!? 涼真:もっと理由があるのかと思ったから まゆ:理由はあるよ?海見てると心が綺麗になる 涼真:心が綺麗な人は内緒で電車乗らないよ? まゆ:うるさーい! 涼真:じゃあ理由話してよ まゆ:私と真逆なんだよね、海って 涼真:どうして? まゆ:何年も前から生きてるじゃん?私はすぐ死ぬじゃん? まゆ:なんか、何年も前から今でも生きてるのにこんなに広くて暖かい気持ちになるのなんか憧れるんだ 涼真:そっか まゆ:何?またばかにするの? 涼真:いいや、君らしい理由だったからさ まゆ:あのさ、涼真の言葉って感情ないよね!? 涼真:そう? まゆ:うん、なんか何も伝わらない 涼真:伝わらなくてもいいじゃん?伝えようともしてないんだから まゆ:涼真には気持ちってのがないの!? 涼真:気持ちなんてない まゆ:ひねくれてる 涼真:別にいいよひねくれてても まゆ:何が君をそうさせたの!?不気味なんだけど 涼真:いいじゃん まゆ:よくない!もうすぐ死ぬ私に全部吐きなさい 涼真:・・・ならいっか 涼真:俺は君の言う通りひねくれものだ 涼真:俺は学年で一番頭がいいからね まゆ:そうなの!?すごいじゃん 涼真:何もすごくないみんな最初はそう言うんだ 涼真:だんだんとそれが当たり前になってみんなの言葉が信じられなくなった 涼真:学年一位を取るたびにまたあいつか、また気取ってる、かっこつけてる 涼真:そんな言葉が飛び交う教室で俺は感情を表に出せると思う? まゆ:それってさ、君がみんなからすごいって言われた時、ありがとうって言ったの? 涼真:・・・なんで?言う必要ないじゃないか まゆ:もう!それだよ! まゆ:自分の努力で勝ち取った一位だとしても褒められたらありがとうって言うの! まゆ:笑顔で、あ・り・が・と・う 涼真:なんで感謝なんか・・・ まゆ:涼真、死にそうになったことないでしょ? 涼真:ないよ まゆ:私は何回もあるよ?その度に思うもん まゆ:生きててよかった、私が生きていられるのはみんなのおかげだ まゆ:みんなありがとうってね 涼真:なんか妙に説得力あるな まゆ:伊達に生死さまよってませんから! まゆ:人に感謝出来る人は素敵だと思うよ 涼真:・・・そっか、まゆが言うなら間違いないのかもね 涼真:ありがとう まゆ:おー!よく言えました!じゃあ写真撮ろ? 涼真:何回撮るの!? まゆ:また行こうね・・・ 涼真:・・・まゆ? 0:まゆはまた一瞬の寂しそうな顔をした 0:場面転換 :まゆがメッセージを送信しました まゆ:やっほー! 涼真:何? まゆ:あははっ、先生に怒られちゃった 涼真:なんで?電車乗ったのバレたの? まゆ:この間無理しすぎたから心臓に異状が見られたんだって 涼真:それって大丈夫なの? まゆ:知らない 涼真:自分の体なんだから興味持ちなよ まゆ:とりあえず彼氏役さん、暇だから病室来てよ 涼真:なんか皮肉言われてる気がするから足が進まないな まゆ:ねえーー!お願いお願い! 涼真:わかったよ 0:場面転換、病室にて 涼真:心臓に異状が見られたって大丈夫なのかな? 涼真:さすがに天真爛漫(てんしんらんまん)な彼女でも落ち込んでるだろうし、慰めの言葉でも考えるか 0:涼真はドアを開ける 涼真:やあ、まゆ まゆ:わああーー!!涼真ーー!!おはよおはよおはよーー!! 涼真:……… まゆ:なーにその顔ー!いつもの5倍くらいしけた顔してるじゃーん! 涼真:帰ってもいいかな? まゆ:はい、帰さない!ここに座って? 涼真:はいはい まゆ:りんごもあるよ?剥いて? 涼真:俺はまゆの奴隷じゃないぞ まゆ:そうだよね、彼氏役だもんね 涼真:うるさい まゆ:まーたツンケンしてるー写真撮ろ? 涼真:誰がそうさせたんだか。写真ももう慣れてきた まゆ:慣れてきたんだ〜私色に染まるの?彼氏役さん? 涼真:なんで君色に染まらないといけないんだよ!本物の彼氏じゃあるまいし まゆ:ああ!大きな声で彼氏じゃないって言わないでよ!先生にバレちゃう! 涼真:何が? まゆ:あ、ほら! 0:まゆの病室からは例の先生が覗きに来る まゆ:あ、あははー!彼氏とデート中だから覗きに来ないでねー先生 涼真:ちょ!手握らないでもらえる!? まゆ:しょうがないでしょ まゆ:じゃあねー!先生 0:先生はまゆの病室を去る まゆ:はあ、危なかった 涼真:ほんとに君は問題児だね まゆ:なんで!? 涼真:別に まゆ:あー!わかった。手握られてドキドキしてたんでしょ!? 涼真:し、してないよ! まゆ:顔赤くなってるよー?ぷぷぷー 涼真:その点滴引っこ抜いたら君の寿命無くなるかな? まゆ:やめてよ!ただでさえ寿命短いんだから! まゆ:涼真、彼女いたことないの? 涼真:ほっといてくれ まゆ:そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃん、私も居たことないし 涼真:そうなの? まゆ:うん。だって生まれた時からずっと病院にいたんだよ?ここの病棟は死にかけのおじいちゃんおばあちゃんと私だけなの 涼真:酷い言い方だな まゆ:だからさ、たまーにこっそり1階に行って誰かいないかなーって見てたんだ 涼真:それで俺を見つけたのか 涼真:とんだとばっちりだよ まゆ:酷い言い方は涼真もじゃん! 涼真:なんで俺を彼氏役にしたんだ? まゆ:なんでって?なんでだろ? 涼真:なんだよそれ まゆ:わかんないよ。でもあの時の涼真は人助けしてた気がする 涼真:そんなことしてたかな? まゆ:そうだよ。なんか優しそうだったから彼氏役にしたの まゆ:今も来てって言ったら来てくれるし? 涼真:今すぐにでも帰っていいんだよ? まゆ:ごめんってー。怒らないの。はい笑顔でピース!写真撮ろ? 涼真:まったく まゆ:でもさ、どうして涼真は私のわがままに付き合ってくれるの? 涼真:一応わがまま言ってる自覚はあったんだね 涼真:それこそ俺にもわかんないけど、まゆは一瞬だけ悲しそうな顔を浮かべるんだよ まゆ:悲しそうな顔?そんなのしてないよ? 涼真:じゃあ無意識なんだね、まゆは海を見ると必ず悲しそうな顔をするんだよ まゆ:……そうだったんだ 涼真:いつもこんな能天気な君が悲しそうな顔をしてると、違和感あるでしょ? まゆ:んー確かにそうだね まゆ:じゃあこれからは元気100倍で生きるね! 涼真:そういう問題じゃないでしょ 涼真:まゆは自分の病気が怖いと思ったことないの? まゆ:そんなのあるわけないじゃん。どうせいつか死ぬってわかってるんだから 涼真:さっぱりしてるなー まゆ:だって、明日死ぬかもしれないのにいちいち怖がってられないよ まゆ:私はごく普通の毎日を過ごせるだけで満足だからね 涼真:そうなんだね まゆ:うん!だから涼真も後悔のないように生きたまえ 涼真:余計なお世話かな まゆ:まーた冷たくしてー まゆ:………うっ!いったたた…ごめん。発作かも 涼真:え?だ、大丈夫? まゆ:うん…とりあえず帰ってもいいよ 涼真:………なんで? まゆ:痛がってるところ見られたくないんだもん 涼真:………でも、そんな急に言われたって まゆ:私は大丈夫。またラインするね 涼真:………まゆ 0:場面転換 :まゆがメッセージを送信しました まゆ:涼真! 涼真:まゆ?昨日は大丈夫だったの? まゆ:大丈夫だって言ったじゃん 涼真:ならよかったよ まゆ:涼真に伝え忘れてた事があった。病院きて 涼真:ラインで言えばいいだろ? まゆ:直接言いたいの。早く来て 涼真:はあ。わかったよ 0:病室に入る 涼真:まゆ? まゆ:おー!おはよー涼真 涼真:なんだ。元気そうじゃん まゆ:だから大丈夫だって言ったでしょ? まゆ:もしかして心配してくれたの?優しいねー! 涼真:からかわないでもらえるかな?本当に心配したんだぞ? まゆ:はいはい、ありがとう。写真撮ろ? 涼真:毎回撮るの!? まゆ:いいでしょ?減るもんじゃないし 涼真:ほんとにわがままな人だ 涼真:んで?俺に言いたいことって何? まゆ:あーそうだった まゆ:んふふ。なんだと思うー? 涼真:も、もったいぶらずに言ってよ まゆ:私さ、涼真のこと…… 涼真:…… まゆ:死ぬまで迷惑かけようかなーって思ったのー! 涼真:……… 涼真:………君が死んだら地獄行きだよ まゆ:なにー?告白かと思ったー?んなわけないじゃん! 涼真:お、思ってない! まゆ:お、思ってない!(大袈裟に真似する) 涼真:こんなにも殺意が沸くのは初めてだ まゆ:あっはっはっは!涼真といると面白いね 涼真:君が一方的にからかってるだけと思うけど? まゆ:そうとも言うね! 涼真:もう既に迷惑なんだけどどういうわけなの? まゆ:あー、でもまあそのまんまだよ?外出許可も出してくれなくなったからさー まゆ:先生がなるべく家族とか恋人と居ろって言うから彼氏役にも来てもらおうと思って 涼真:君、まさか親御さんにも俺が彼氏だって言ってるんじゃないよね? まゆ:家族にはちゃんと彼氏役って説明してるよ 涼真:さすがにか まゆ:涼真は彼女作らないの? 涼真:つ、作らないよ! まゆ:出来ないの間違えじゃなくて? 涼真:だいぶ前から思ってたけど、君うるさいから黙ってもらえるかな? まゆ:涼真のこと好きになる人は沢山いると思うけどねー 涼真:いるわけないでしょ。俺は相変わらず学校でも嫌われ者だしね まゆ:みんな見る目ないなー。こんなに面白いのに 涼真:面白がってるだけでしょ? まゆ:違うよ?私だってこの病院の中で一人ぼっちだったし 涼真:他に友達とかは? まゆ:居たよ。私と同じ病気の子がね 涼真:………その子は? まゆ:あれ?言ってなかったっけ?先天性心神経(せんてんせいしんしんけい)は16歳まで生きられる確率は5パーセントだって まゆ:その子は12歳の時に亡くなっちゃったの 涼真:……… まゆ:だからさ、涼真 涼真:なに? まゆ:一人ぼっちの私を海に連れてってくれてありがとう 涼真:急になに? まゆ:ん?ほら、私も涼真のこと振り回してるじゃん? 涼真:間違いないね まゆ:私が死んだら、涼真、悲しむかなって 涼真:……… まゆ:ま!涼真はありえないよね! まゆ:ひねくれ者だもんねー。感情ないし、悲しむわけないか 涼真:悲しむに決まってるだろ まゆ:………え? 涼真:君はいつも無邪気で笑顔でこんなにも元気じゃないか 涼真:そんなまゆが急に居なくなるなんて悲しいに決まってる まゆ:………それってさ、涼真に私が必要ってことでいいのかな? 涼真:さあね。でも少なくとも俺はまゆと会って少しは変わった気がするんだ 涼真:だから君も、俺といる時は無理しなくていいよ まゆ:無理って何? 涼真:ほら、ずっと笑顔でいたり、元気でいたりするのは普段通りかもしれない 涼真:でもふとした時に悲しい顔するから、俺はまゆを見離せないんだよ 涼真:寂しい顔するなら寂しい感情を出してもいいんだよ 涼真:俺はそういうの苦手だから出来ないけどいつ死ぬかわからないまゆは何も隠して欲しくない 涼真:まゆが俺を彼氏役に選んだんだから最後までまゆのこと教えてよ 涼真:いつも笑ってるけど、まゆが笑えない時ってどんな時? まゆ:・・・私は まゆ:・・・はぁー、グスンッ まゆ:涼真と一緒に居て楽しいって思えた時 涼真:・・・なんだ、涙出るじゃん まゆ:私だって泣くよ。涼真に会えてこんなに楽しくなれると思わなかったもん。終わりたくないよ 涼真:……そうか まゆ:ありがとうって言うの! 涼真:あ、ありがとう! まゆ:よく言えましたー写真撮ろ? 涼真:はあ まゆ:でもね、涼真 涼真:ん? まゆ:それでも私は発作が起きても寿命が短くても辛いとか悲しいとかは思わないよ? 涼真:……どうして? まゆ:胸の痛みは一瞬かもしれない。けど涼真とこうして話してる時間とか楽しい時間だって、どんなに小さな幸せでも私にとっては一生分の幸せなんだよ? 涼真:………君はほんとに… まゆ:うん。だからさ…… まゆ:………っ!! 涼真:……まゆ!? まゆ:ご、ごめん。また発作かも 涼真:……… 涼真:………まゆ 0:涼真はまゆの手を握る まゆ:涼真? 涼真:俺…まゆが死ぬのは嫌だよ まゆ:……… 0:場面転換 :まゆがメッセージを送信しました まゆ:りょーま! 涼真:まゆ、発作は良くなったの? まゆ:今のところは大丈夫かな?ごめんね心配かけて 涼真:いいんだよ まゆ:今日も病院来てくれるよね? 涼真:まあ、行ってもいいよ まゆ:素直じゃないねー 0:涼真は病室の扉の前で立つ 涼真:………はあ 0:涼真はまゆの病室のドアを開ける まゆ:涼真ー!おっはよー! 涼真:相変わらず元気だね まゆ:1日を大切にだよー! 涼真:……… まゆ:ねえ、涼真、テストどうだったの? 涼真:1位だったよ まゆ:すっごいねー! 涼真:………… まゆ:ありがとうって言わなきゃ 涼真:ありがと まゆ:なーに怒ってんの? 涼真:怒ってるように見える? まゆ:じゃあなんなの? 涼真:……心配してるんだよ まゆ:……どうして? 涼真:なんか、君が遠くにいる気がして まゆ:……なにそれ 涼真:教えてよ、まゆの体は今どうなってるの? 涼真:そういえばおかしいじゃないか、外出許可も出ないし、家族とか彼氏と居ろって言われるなんて 涼真:まゆは……もう死ぬの? まゆ:……うん 涼真:………どうして まゆ:ターミナルって知ってる? 涼真:……ターミナル? まゆ:うん。亡くなる準備をするってこと 涼真:………まゆのことか? まゆ:そうだよ 涼真:……嘘だろ? まゆ:ほんとだよ。もうその準備をしてるの 涼真:いくらなんでも急すぎる まゆ:私の病気はいつも急だよ まゆ:もうそろそろだけど、私はいつか死ぬの 涼真:……まゆが死ぬなんて…言わないでくれよ まゆ:……え? 涼真:……くっ… まゆ:な、なんで涼真が泣くの?私が死ぬことはわかってたことでしょ? 涼真:わかってるけど…受け入れられないだろ まゆ:だとしても泣かないでよ 涼真:俺がまゆに出会って、どんな思いでこの病室に来てるかわかる? まゆ:……なに? 涼真:君の笑顔が、君の声が、君の明るさが、俺を元気づけてくれたんだよ 涼真:そんなまゆが死ぬなんて……言うなよ まゆ:……でもね、どう頑張っても私は生きられないよ 涼真:……なら君に会わなきゃよかった まゆ:……え? 涼真:後悔しか残らないよ。俺はずっと君と居たいのに、一緒に居られないなんて まゆ:どうしてそんなこと言うの? 涼真:だって!俺は…… 涼真:いや、何でもない まゆ:……謝ってよ 涼真:……何を? まゆ:私に会わなきゃよかったなんて言わないでよ! まゆ:私は涼真に会えて……こんなに嬉しいのに、なんでそんなこと言うの? 涼真:………だってそうだろ。俺は何も出来ないんだから まゆ:別に何かして欲しいわけじゃないよ 涼真:それじゃダメだよ。いっそ、俺だってまゆと同じ病気になって同じ気持ちになってみたかった まゆ:……私の気持ちわかってないじゃん。勝手なこと言わないでよ! 涼真:……まゆ まゆ:涼真は今すぐ死んでって言われてもどうせ死ねないでしょ? 涼真:……… まゆ:私の病気は…生きたくても生きられない人が沢山いるの。それなのに何でそんなこと言うの!?ひどいよ! 涼真:………ごめん まゆ:……私の気持ち…ちゃんと考えて 涼真:でも、俺の気持ちもわかってくれ まゆ:………え? 涼真:まゆに会えて嬉しいからこそ、そう思ってしまうんだ。悲しいんだよ まゆ:………涼真 涼真:何か俺に出来ることはないかっていつも思うんだ。でも答えは見つからない 涼真:君に出会えて嬉しいのに、君と話して、距離は段々と近づいていくのに、君は遠くに行ってしまう 涼真:このやるせない気持ちを…まゆにもわかってほしいんだ まゆ:………そっか。そうだよね まゆ:もしかしたら、私なんかより涼真の方が辛いのかもね 涼真:……まゆと比べたら、俺は生きられるから幸せだよ まゆ:その気持ち、忘れないでね? 涼真:え? まゆ:生きてるだけで幸せだって気持ちだよ 涼真:………うん 涼真:この気持ちも、まゆと一緒に居たからそう思えたのかもしれないね まゆ:……ありがと まゆ:仲直りの写真撮ろ! 涼真:わかったよ まゆ:ねえ、涼真。私が死んだらやっぱ悲しい? 涼真:当たり前だろ まゆ:そっか。なんか嬉しい 涼真:何回も言わないからな? まゆ:涼真 涼真:……ん? まゆ:ハグする? 涼真:……俺はそんな手には乗らないぞ まゆ:じゃないと、私、遠くに行っちゃうかもしれないよ? 涼真:……… 0:涼真はまゆを抱きしめる まゆ:……あったかいね 涼真:……そうだな まゆ:この温かさは忘れたくないなー まゆ:こんな時にこんなこと言っていいかわかんないけどさ まゆ:私ね…… 涼真:………ん? まゆ:……涼真と… まゆ:…………っ!! 涼真:ま、まゆ!? まゆ:………はあ、はあ。……っ!! 涼真:待って!まゆ!今ナースコール押すから まゆ:…はあ…はあ…ごめん涼真 涼真:こんな時に謝らないでよ まゆ:……違う、そうじゃなくてさ 涼真:………え? まゆ:私……本当に死ぬかも 涼真:……まゆ!? 0:いつもと違う発作が起こる 0:そしてまゆの緊急手術が行われた 0:--場面転換-- :まゆがメッセージを送信しました まゆ:ねえ、涼真 涼真:まゆ、無事だったの? 涼真:二日も連絡来なかったから心配したぞ まゆ:ごめんね、心配かけちゃった まゆ:ねえ涼真 涼真:何? まゆ:会いたい 0:涼真はまゆの病室に向かう 涼真:まゆ? まゆ:……… 涼真:……まゆ!? まゆ:………すぅー……すぅー 涼真:な、なんだ、寝てたのか 涼真:……まゆ 涼真:………うぅ、まゆ…… 涼真:お願いだよ…死なないでくれ…… まゆ:なんで泣いてんの? 涼真:っ! 涼真:ね、寝たフリなんて卑怯だ! まゆ:なんでそっぽ向いちゃうの?こっち向いてよ 涼真:いやだね まゆ:もう、しょうがないなー 0:まゆは後ろから涼真を抱きしめる 涼真:……またハグかよ まゆ:嬉しいでしょ? 涼真:からかうなって まゆ:でもね、今回はハグじゃないよ 涼真:……? まゆ:聞こえる?私の心臓の音 涼真:……うん、少しだけ まゆ:私、この心臓が大嫌いだったんだ 涼真:そりゃそうだよな まゆ:気まぐれに発作が来るし、学校にも行けないし、夜も眠れないし まゆ:いっそ、死んじゃおっかなって思ったこともあるよ 涼真:……… まゆ:でも、私は生きてる。この心臓と一緒にまだ生きてる まゆ:この心臓は、私が涼真と出会うために動き続けてくれたんだよ 涼真:………まゆ 涼真:………うっ…うぅぅ。ありがとう まゆ:よく言えました まゆ:涼真に会えて私は幸せだよ 涼真:まゆがそう言ってくれるなら、俺だって同じ気持ちだよ 涼真:幸せだ まゆ:………うん 涼真:まゆが俺を海に連れ出した時、走る無邪気なまゆが眩しかった 涼真:まゆの髪が柔らかく揺れる様子も振り返るその笑顔も、キンと高い声も優しそうな眼差しも 涼真:俺はまゆとの思い出を絶対に忘れないよ。大切な思い出だ まゆ:………涼真 まゆ:涼真のその言葉が私の人生を幸せにしてくれる まゆ:生まれてきてよかったって何度も思わせてくれるの思わせてくれるの 涼真:……ありがとう まゆ:もう涼真は人に感謝出来る人だね 涼真:これもきっとまゆと過ごして、まゆに教えてもらったからだよ まゆ:……ありがと…グスン 涼真:まゆ、泣いてるの? まゆ:……私は涼真みたいに泣き虫じゃないから!泣いてないもん 涼真:じゃあ今すぐ離れて顔見せてよ まゆ:やだよ、離れたくない 涼真:……… まゆ:あ、今、涼真、顔赤くなってるでしょ? 涼真:な、なってない! まゆ:じゃあ顔見せてよ 0:涼真とまゆは顔を合わせる 涼真:………ふふっ まゆ:あははっ 涼真:泣いてるじゃん まゆ:涼真だって顔赤くなってるじゃん 涼真:うるさいなぁ まゆ:うるさくないよー 涼真:……ふふっ まゆ:………あははっ 涼真:……こんな時間がずっと続けばいいのにな まゆ:そんなこと言われたら私、嬉しすぎて今すぐに死んじゃうかも 涼真:そんな事言うなよ まゆ:冗談だよ。私はまだ死なないもん 涼真:まゆが居なくなっても俺はまゆみたいに笑顔で居続けたい まゆ:……ううん。涼真はもうずっと笑顔で居てくれたじゃん 涼真:………え? まゆ:私にはわかるよ 涼真:どういうこと? まゆ:それはまた明日教えるね 涼真:……じゃあ、明日も会える? まゆ:うん、私も会いたい 涼真:じゃあ、また明日ね まゆ:うん。ばいばい 0:涼真は病室を出る まゆ:……はあ……はあ まゆ:……私は涼真の心の中に居るよ まゆ:……さよなら 0:この言葉を残したまゆが帰らぬ人になった 0:その連絡が来たのは涼真がまゆの彼氏だと思ってるまゆの担当の先生からだった 0:心臓病が悪化し、まゆはその場で亡くなったのだった :新着のメッセージはありません 涼真:なんでだよ 涼真:また明日って言ったじゃねーかよ 涼真:ふざけんなよ!まゆ!! 涼真:俺は・・・君のそばでもっと笑いたかった 涼真:君に笑顔でありがとうって言えばよかった 涼真:もう一度君に・・・気持ちを伝えればよかった 涼真:いつも元気な君が居たから当たり前だと思っていた 涼真:君に甘えすぎていたのかもしれない 涼真:もう一度会えると思っていたのかもしれない 涼真:いつも彼女は言っていたはず、いつ死ぬかわからないって 涼真:彼女の涙で気付けなかった俺はバカだ 涼真:まゆの声が、まゆの笑顔が・・・今はたまらなく愛おしい 涼真:もう一度会いたいよ・・・まゆ :まゆが動画を送信しました 涼真:・・・え!? 涼真:な、なんで?まゆは亡くなったはずじゃ 0:恐る恐る涼真は送られた動画を開く 0:--場面転換-- :まゆが動画を送信しました まゆ:これ、本当に写ってるのかな? まゆ:あーあー!聞こえますかー? まゆ:まあ聞こえなかったらテイク2で行くかー まゆ:このビデオを見てる時はもしかしたら まゆ:私は君の前から二度と姿を現すことはないでしょう まゆ:怖いこと言ってごめんね? まゆ:私はおばけじゃないよ、予約送信ってやつで涼真に動画送ってるの まゆ:だから、私は居ないけどこの動画は送れるんだ まゆ:昨日、発作が起きた後に先生に言われたの まゆ:この発作は先天性心神経が終わる合図だって まゆ:治るじゃないよ?終わるの まゆ:だから、最後に涼真に言いたいことがある まゆ:涼真に言いたいことはね〜 まゆ:………っっはあ〜〜 まゆ:君はいつも頑固で頭でっかちで無愛想で まゆ:ほんっとーーーに!!自分を好きになれない人だったよね まゆ:私はそんな君とぶつかってきたけど まゆ:もっと私を知って欲しかったからだし まゆ:素直な君を見ていたかったからだよ? まゆ:何度も何度も話して知らない間にお互い泣いていたこともあったよね? まゆ:今思えば笑っちゃうけど まゆ:そんな日々が私にとっての幸せなんだって今なら言えるよ! まゆ:だんだん素直になっていく君は まゆ:私を抱きしめて離さなかった時 まゆ:私は本当の君の温かさを感じれてる気がしてすごく嬉しかった まゆ:でも・・・なんでだろう まゆ:言葉にするにはとても勇気がいることで まゆ:一生君と一緒に居られるなら簡単に言えるはずなのに まゆ:明日がいつ来なくなるかわからないって思ったら まゆ:私の言葉は君を傷つけてしまう気がして、怖かった まゆ:辛いのは私じゃなくて まゆ:君の方なんじゃないかなって思ってる まゆ:でも、私は君との距離が近づく度にいつも感じるの まゆ:一緒に居たのにずっと言えなくてごめんなさい まゆ:こんな形になっちゃったけど最後に言わせて? まゆ:ずっと まゆ:ずっと好きだったよ まゆ:君と話して、笑って、喧嘩して、泣いて、仲直りして、また笑って まゆ:君と過ごした1分1秒が私の生きた証なの まゆ:大切な思い出だよ? まゆ:私は居なくなるけど まゆ:君も同じ気持ちでいてくれたらいいな まゆ:思い出に残る私の一生の恋でした まゆ:ごめんこんなに泣いちゃったらテイク2なんて撮れないや まゆ:あーもうやめた!! まゆ:ばいばい・・・今までありがとう まゆ:大好き・・・ まゆ:さよなら 涼真:まゆ……… 涼真:俺だって……同じ気持ちだよ 涼真:俺だって……まゆの事が…… 涼真:何度も言おうと思ってた。何度もそう感じてた 涼真:それでも何も言えない俺は本当にバカだ 涼真:今更だけど……伝えたい 涼真:まゆに届くかわからないけど俺も送るか :涼真がメッセージを送信しました 涼真:俺も…好きだよ :まゆが画像を送信しました 涼真:………え? :まゆが画像を送信しました 涼真:俺との写真? 涼真:これも予約送信か? :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました 涼真:うっ…ううぅ……… 涼真:俺、まゆと一緒だとこんなに笑ってたんだな :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました 涼真:頑固で頭でっかちで無愛想な俺と一緒に居てくれてありがとう :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました 涼真:俺はまゆと一緒に居れて楽しかった 涼真:幸せだった 涼真:まゆの事が好きだった・・・ 涼真:まゆ・・・沢山思い出をくれてありがとう :まゆがメッセージを送信しました まゆ:ありがとう まゆ:私も大好き まゆ:涼真の笑顔は まゆ:私だけの宝物だよ 0:彼女の最後のビデオレター 0:〜END〜

まゆ:……さよなら 涼真:俺は彼女から送られた動画を閉じる 涼真:彼女から貰った宝物のような思い出は俺の胸に残り続けていた 涼真:感謝の気持ちと、笑顔でいることと、前向きに生きること 涼真:彼女の人生の全てがこの動画に収められているようで、俺はそれを噛み締めている 涼真:これが彼女の最後のビデオレター 0:病院にて 涼真:はあ〜最悪だ。階段から転んで左腕骨折だなんて運が悪い 涼真:まあ、入院してる間は勉強出来るし気長に待つかなー 涼真:あ、大丈夫ですか?荷物持ちますよ? 涼真:いえ、俺は大丈夫です まゆ:……お? まゆ:……んーいいこと思いついたかも! 涼真:はあ〜入院生活も暇だなー まゆ:ちらっ 涼真:ん? まゆ:ひゅっ! 涼真:なんだ?あの子 まゆ:あっはは! まゆ:先生、私、彼氏いるんだけど、最後の思い出に外出させてよ まゆ:え?ほ、ほんとだよ!今度連れてくるから! 0:2ヶ月後 涼真:よーし、やっとリハビリが終わったぞー。これで俺も自由だ まゆ:わっ! 涼真:うわあー!え?なに? まゆ:びっくりした? 涼真:びっくりしますよ まゆ:だよねー! 涼真:急になんですか? まゆ:急に?なんだろうね? 涼真:はあ? まゆ:でわ、出発進行しまーす! 涼真:ちょっ!冒頭から激しすぎですよ! まゆ:あ、先生、この間言ってた彼氏と出掛けてくるね 涼真:か、彼氏!? まゆ:合わせて 涼真:か、彼氏! まゆ:よく言えましたー まゆ:んじゃ、行くよ 涼真:ど、どこに! まゆ:どこまでもだよー! 涼真:どういうことだー! 涼真:ここはどこなの? まゆ:ん?海だよ 涼真:なんでまた海なんか まゆ:空気が美味しいから まゆ:いやーごめんねー彼氏とデートって言わないと外に出してくれなくてさ 涼真:なんで俺なんだよ 涼真:しかも、君、俺の病室覗いたりしてたでしょ? まゆ:うん、覗いてた 涼真:それも俺を彼氏役にしようって決めてたから? まゆ:うん、そうだよ 涼真:薄情な人だなーそれで俺をこんな振り回して 涼真:俺だって暇じゃない、帰って勉強しないと まゆ:そんなの後でも出来るでしょ? 涼真:悪いけどそれはバカの考え方だよ まゆ:なに?その言い方。感じわるっ 涼真:悪かったね まゆ:もう、久しぶりの外の空気たっぷり堪能させてよ 涼真:・・・はぁしょうがないなー まゆ:わーい!さすが彼氏役! 涼真:彼氏役って……キッパリ言うなよ 涼真:それにしても、なんで外に出たかったの? 涼真:先生から外出許可も出ないくらい君は問題児なのか? まゆ:違うよ!初対面でどんな印象持ってんの! 涼真:君にだけは言われたくないね まゆ:まあいいや、んー問題児っちゃ問題児かもだけど外に出ちゃいけない理由があるの 涼真:何? まゆ:病気持ちだから 涼真:病気?君が?どう考えても元気じゃないか まゆ:その通り!!私は元気なのです!! まゆ:なのにあのクソ丸ハゲ親父が外出させてくれないの 涼真:先生になんてこと言うんだ 涼真:そんなに重病なの?そんな風には見えないけど まゆ:うん、明日死ぬかもね 涼真:何をそんな冗談を まゆ:ほんとだよ?『先天性心神経』(せんてんせいしんしんけい)って知ってる? 涼真:聞いたことないね まゆ:だろうねー まゆ:私は今16歳なんだけどね 涼真:同い年か まゆ:先天性心神経という病気は16歳まで生きられる確率は何パーセントでしょう? 涼真:わかるわけないでしょ まゆ:正解は5パーセント 涼真:・・・5パーセント? まゆ:うん、私はその5パーセントまで生きられた数少ない奇跡の人間なのです! まゆ:ちなみに20歳まで生きられる確率は何パーセントだと思う? 涼真:わからないって まゆ:0パーセント 涼真:・・・そうなんだ まゆ:そうなんだって冷たい人だねこんなか弱い美少女にかける言葉もないの? 涼真:美は余計だと思うよ まゆ:かける言葉きつすぎ!あははは! 涼真:君、本当に病気なの? まゆ:うん、病気だし明日死ぬかもしれない 涼真:そんなに元気でいられるもんなのかな まゆ:逆に君はなんで元気じゃないの? 涼真:僕は別に元気でいる必要がないからだよ まゆ:なーにそれ、つまんない、君とは仲良くなれなそう 涼真:彼氏役に選んでおいて偉そうなこと言わないでもらえる? まゆ:まあそうだね、君のおかげでこうやって海に来れたことだし 涼真:そりゃ、よかったね まゆ:うん まゆ:また・・・来れるといいなー 涼真:・・・ 0:まゆの一瞬の寂しそうな顔に涼真はうろたえる まゆ:名前教えて、私はまゆ 涼真:俺は涼真 まゆ:じゃあ、ライン交換しよう!また私を外に連れてって! 涼真:君ねー まゆ:まゆって呼んで 涼真:ま、まゆ まゆ:はい、なに? 涼真:なんでもない、もう言う気失せた まゆ:交換してくれないの? 涼真:するよ!うるさいな! まゆ:やったー!じゃあ写真撮ろ? 涼真:はいはい まゆ:もっと笑ってよーせっかくなんだから 涼真:笑うのは苦手だよ 0:場面転換 :まゆがメッセージを送信しました まゆ:やっほー 涼真:なに? まゆ:今暇だよね? 涼真:勝手に決めつけないでくれる? まゆ:じゃあ出掛けよ? 涼真:話聞いてた!? まゆ:また海行きたいなーって思って、海の横に有名な神社もあるんだよ 涼真:俺が居ないと外出れないんだから俺に感謝しないとね まゆ:ありがとうございます! 涼真:んで?いつ行くの? まゆ:今週の日曜日にしよっか まゆ:あ、1回病院来てもらわないと出れないからよろしく! 涼真:相当信用されてないんだね まゆ:やだ、照れる 涼真:別に褒めてないよ 0:涼真は病院までまゆを迎えに行き 0:まゆと電車に乗る まゆ:わー!電車なんて何年ぶりだろー! 涼真:そんなに久しぶりなんだね まゆ:うん、だって今日も電車乗るなって言われてるもん 涼真:ちょ!俺を巻き込むなって! まゆ:私が今日死んだら逃げていいからね? 涼真:ひき逃げみたいなことはしたくないよ まゆ:あははっ!おもしろ!ナイスジョーク! 涼真:俺は笑えないよ まゆ:あ、そうだ、写真撮ろ? 涼真:また撮るの? まゆ:いいの!はい撮りまーす 涼真:まったく 0:目的地に着く まゆ:私、階段登れないからおんぶして? 涼真:な、なんで俺が!? まゆ:涼真以外に誰が居るの?ドキドキしちゃうかもしれないけど早くー 涼真:一言余計なんだよ 0:神社まで登る まゆ:ここの神社ね、願い事ちゃんと叶うらしいよ? 涼真:そうなんだ まゆ:涼真は彼女が欲しいって頼んだ方がいいよ 涼真:余計なお世話だよ 0:お賽銭を投げて手を合わせる まゆ:ふぅー!この願いは叶えばいいなー 涼真:あからさまに何願ったか聞いてほしそうな顔してるけど俺は聞かないよ? まゆ:ほんっと冷たい人! 涼真:君に付き合ってあげてるだけでも心優しい人だよ まゆ:はいはいありがと、じゃあ写真撮ろ? 涼真:また!? まゆ:早く!ほら! 涼真:まったく最近の若い子は まゆ:涼真も同い年でしょ! 0:海に行く まゆ:おー!ここの海も広いねー! 涼真:まゆはなんでそんなに海が好きなの? まゆ:んーとねー広いからかな? 涼真:頭悪そうな回答だね まゆ:そんなディスる!? 涼真:もっと理由があるのかと思ったから まゆ:理由はあるよ?海見てると心が綺麗になる 涼真:心が綺麗な人は内緒で電車乗らないよ? まゆ:うるさーい! 涼真:じゃあ理由話してよ まゆ:私と真逆なんだよね、海って 涼真:どうして? まゆ:何年も前から生きてるじゃん?私はすぐ死ぬじゃん? まゆ:なんか、何年も前から今でも生きてるのにこんなに広くて暖かい気持ちになるのなんか憧れるんだ 涼真:そっか まゆ:何?またばかにするの? 涼真:いいや、君らしい理由だったからさ まゆ:あのさ、涼真の言葉って感情ないよね!? 涼真:そう? まゆ:うん、なんか何も伝わらない 涼真:伝わらなくてもいいじゃん?伝えようともしてないんだから まゆ:涼真には気持ちってのがないの!? 涼真:気持ちなんてない まゆ:ひねくれてる 涼真:別にいいよひねくれてても まゆ:何が君をそうさせたの!?不気味なんだけど 涼真:いいじゃん まゆ:よくない!もうすぐ死ぬ私に全部吐きなさい 涼真:・・・ならいっか 涼真:俺は君の言う通りひねくれものだ 涼真:俺は学年で一番頭がいいからね まゆ:そうなの!?すごいじゃん 涼真:何もすごくないみんな最初はそう言うんだ 涼真:だんだんとそれが当たり前になってみんなの言葉が信じられなくなった 涼真:学年一位を取るたびにまたあいつか、また気取ってる、かっこつけてる 涼真:そんな言葉が飛び交う教室で俺は感情を表に出せると思う? まゆ:それってさ、君がみんなからすごいって言われた時、ありがとうって言ったの? 涼真:・・・なんで?言う必要ないじゃないか まゆ:もう!それだよ! まゆ:自分の努力で勝ち取った一位だとしても褒められたらありがとうって言うの! まゆ:笑顔で、あ・り・が・と・う 涼真:なんで感謝なんか・・・ まゆ:涼真、死にそうになったことないでしょ? 涼真:ないよ まゆ:私は何回もあるよ?その度に思うもん まゆ:生きててよかった、私が生きていられるのはみんなのおかげだ まゆ:みんなありがとうってね 涼真:なんか妙に説得力あるな まゆ:伊達に生死さまよってませんから! まゆ:人に感謝出来る人は素敵だと思うよ 涼真:・・・そっか、まゆが言うなら間違いないのかもね 涼真:ありがとう まゆ:おー!よく言えました!じゃあ写真撮ろ? 涼真:何回撮るの!? まゆ:また行こうね・・・ 涼真:・・・まゆ? 0:まゆはまた一瞬の寂しそうな顔をした 0:場面転換 :まゆがメッセージを送信しました まゆ:やっほー! 涼真:何? まゆ:あははっ、先生に怒られちゃった 涼真:なんで?電車乗ったのバレたの? まゆ:この間無理しすぎたから心臓に異状が見られたんだって 涼真:それって大丈夫なの? まゆ:知らない 涼真:自分の体なんだから興味持ちなよ まゆ:とりあえず彼氏役さん、暇だから病室来てよ 涼真:なんか皮肉言われてる気がするから足が進まないな まゆ:ねえーー!お願いお願い! 涼真:わかったよ 0:場面転換、病室にて 涼真:心臓に異状が見られたって大丈夫なのかな? 涼真:さすがに天真爛漫(てんしんらんまん)な彼女でも落ち込んでるだろうし、慰めの言葉でも考えるか 0:涼真はドアを開ける 涼真:やあ、まゆ まゆ:わああーー!!涼真ーー!!おはよおはよおはよーー!! 涼真:……… まゆ:なーにその顔ー!いつもの5倍くらいしけた顔してるじゃーん! 涼真:帰ってもいいかな? まゆ:はい、帰さない!ここに座って? 涼真:はいはい まゆ:りんごもあるよ?剥いて? 涼真:俺はまゆの奴隷じゃないぞ まゆ:そうだよね、彼氏役だもんね 涼真:うるさい まゆ:まーたツンケンしてるー写真撮ろ? 涼真:誰がそうさせたんだか。写真ももう慣れてきた まゆ:慣れてきたんだ〜私色に染まるの?彼氏役さん? 涼真:なんで君色に染まらないといけないんだよ!本物の彼氏じゃあるまいし まゆ:ああ!大きな声で彼氏じゃないって言わないでよ!先生にバレちゃう! 涼真:何が? まゆ:あ、ほら! 0:まゆの病室からは例の先生が覗きに来る まゆ:あ、あははー!彼氏とデート中だから覗きに来ないでねー先生 涼真:ちょ!手握らないでもらえる!? まゆ:しょうがないでしょ まゆ:じゃあねー!先生 0:先生はまゆの病室を去る まゆ:はあ、危なかった 涼真:ほんとに君は問題児だね まゆ:なんで!? 涼真:別に まゆ:あー!わかった。手握られてドキドキしてたんでしょ!? 涼真:し、してないよ! まゆ:顔赤くなってるよー?ぷぷぷー 涼真:その点滴引っこ抜いたら君の寿命無くなるかな? まゆ:やめてよ!ただでさえ寿命短いんだから! まゆ:涼真、彼女いたことないの? 涼真:ほっといてくれ まゆ:そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃん、私も居たことないし 涼真:そうなの? まゆ:うん。だって生まれた時からずっと病院にいたんだよ?ここの病棟は死にかけのおじいちゃんおばあちゃんと私だけなの 涼真:酷い言い方だな まゆ:だからさ、たまーにこっそり1階に行って誰かいないかなーって見てたんだ 涼真:それで俺を見つけたのか 涼真:とんだとばっちりだよ まゆ:酷い言い方は涼真もじゃん! 涼真:なんで俺を彼氏役にしたんだ? まゆ:なんでって?なんでだろ? 涼真:なんだよそれ まゆ:わかんないよ。でもあの時の涼真は人助けしてた気がする 涼真:そんなことしてたかな? まゆ:そうだよ。なんか優しそうだったから彼氏役にしたの まゆ:今も来てって言ったら来てくれるし? 涼真:今すぐにでも帰っていいんだよ? まゆ:ごめんってー。怒らないの。はい笑顔でピース!写真撮ろ? 涼真:まったく まゆ:でもさ、どうして涼真は私のわがままに付き合ってくれるの? 涼真:一応わがまま言ってる自覚はあったんだね 涼真:それこそ俺にもわかんないけど、まゆは一瞬だけ悲しそうな顔を浮かべるんだよ まゆ:悲しそうな顔?そんなのしてないよ? 涼真:じゃあ無意識なんだね、まゆは海を見ると必ず悲しそうな顔をするんだよ まゆ:……そうだったんだ 涼真:いつもこんな能天気な君が悲しそうな顔をしてると、違和感あるでしょ? まゆ:んー確かにそうだね まゆ:じゃあこれからは元気100倍で生きるね! 涼真:そういう問題じゃないでしょ 涼真:まゆは自分の病気が怖いと思ったことないの? まゆ:そんなのあるわけないじゃん。どうせいつか死ぬってわかってるんだから 涼真:さっぱりしてるなー まゆ:だって、明日死ぬかもしれないのにいちいち怖がってられないよ まゆ:私はごく普通の毎日を過ごせるだけで満足だからね 涼真:そうなんだね まゆ:うん!だから涼真も後悔のないように生きたまえ 涼真:余計なお世話かな まゆ:まーた冷たくしてー まゆ:………うっ!いったたた…ごめん。発作かも 涼真:え?だ、大丈夫? まゆ:うん…とりあえず帰ってもいいよ 涼真:………なんで? まゆ:痛がってるところ見られたくないんだもん 涼真:………でも、そんな急に言われたって まゆ:私は大丈夫。またラインするね 涼真:………まゆ 0:場面転換 :まゆがメッセージを送信しました まゆ:涼真! 涼真:まゆ?昨日は大丈夫だったの? まゆ:大丈夫だって言ったじゃん 涼真:ならよかったよ まゆ:涼真に伝え忘れてた事があった。病院きて 涼真:ラインで言えばいいだろ? まゆ:直接言いたいの。早く来て 涼真:はあ。わかったよ 0:病室に入る 涼真:まゆ? まゆ:おー!おはよー涼真 涼真:なんだ。元気そうじゃん まゆ:だから大丈夫だって言ったでしょ? まゆ:もしかして心配してくれたの?優しいねー! 涼真:からかわないでもらえるかな?本当に心配したんだぞ? まゆ:はいはい、ありがとう。写真撮ろ? 涼真:毎回撮るの!? まゆ:いいでしょ?減るもんじゃないし 涼真:ほんとにわがままな人だ 涼真:んで?俺に言いたいことって何? まゆ:あーそうだった まゆ:んふふ。なんだと思うー? 涼真:も、もったいぶらずに言ってよ まゆ:私さ、涼真のこと…… 涼真:…… まゆ:死ぬまで迷惑かけようかなーって思ったのー! 涼真:……… 涼真:………君が死んだら地獄行きだよ まゆ:なにー?告白かと思ったー?んなわけないじゃん! 涼真:お、思ってない! まゆ:お、思ってない!(大袈裟に真似する) 涼真:こんなにも殺意が沸くのは初めてだ まゆ:あっはっはっは!涼真といると面白いね 涼真:君が一方的にからかってるだけと思うけど? まゆ:そうとも言うね! 涼真:もう既に迷惑なんだけどどういうわけなの? まゆ:あー、でもまあそのまんまだよ?外出許可も出してくれなくなったからさー まゆ:先生がなるべく家族とか恋人と居ろって言うから彼氏役にも来てもらおうと思って 涼真:君、まさか親御さんにも俺が彼氏だって言ってるんじゃないよね? まゆ:家族にはちゃんと彼氏役って説明してるよ 涼真:さすがにか まゆ:涼真は彼女作らないの? 涼真:つ、作らないよ! まゆ:出来ないの間違えじゃなくて? 涼真:だいぶ前から思ってたけど、君うるさいから黙ってもらえるかな? まゆ:涼真のこと好きになる人は沢山いると思うけどねー 涼真:いるわけないでしょ。俺は相変わらず学校でも嫌われ者だしね まゆ:みんな見る目ないなー。こんなに面白いのに 涼真:面白がってるだけでしょ? まゆ:違うよ?私だってこの病院の中で一人ぼっちだったし 涼真:他に友達とかは? まゆ:居たよ。私と同じ病気の子がね 涼真:………その子は? まゆ:あれ?言ってなかったっけ?先天性心神経(せんてんせいしんしんけい)は16歳まで生きられる確率は5パーセントだって まゆ:その子は12歳の時に亡くなっちゃったの 涼真:……… まゆ:だからさ、涼真 涼真:なに? まゆ:一人ぼっちの私を海に連れてってくれてありがとう 涼真:急になに? まゆ:ん?ほら、私も涼真のこと振り回してるじゃん? 涼真:間違いないね まゆ:私が死んだら、涼真、悲しむかなって 涼真:……… まゆ:ま!涼真はありえないよね! まゆ:ひねくれ者だもんねー。感情ないし、悲しむわけないか 涼真:悲しむに決まってるだろ まゆ:………え? 涼真:君はいつも無邪気で笑顔でこんなにも元気じゃないか 涼真:そんなまゆが急に居なくなるなんて悲しいに決まってる まゆ:………それってさ、涼真に私が必要ってことでいいのかな? 涼真:さあね。でも少なくとも俺はまゆと会って少しは変わった気がするんだ 涼真:だから君も、俺といる時は無理しなくていいよ まゆ:無理って何? 涼真:ほら、ずっと笑顔でいたり、元気でいたりするのは普段通りかもしれない 涼真:でもふとした時に悲しい顔するから、俺はまゆを見離せないんだよ 涼真:寂しい顔するなら寂しい感情を出してもいいんだよ 涼真:俺はそういうの苦手だから出来ないけどいつ死ぬかわからないまゆは何も隠して欲しくない 涼真:まゆが俺を彼氏役に選んだんだから最後までまゆのこと教えてよ 涼真:いつも笑ってるけど、まゆが笑えない時ってどんな時? まゆ:・・・私は まゆ:・・・はぁー、グスンッ まゆ:涼真と一緒に居て楽しいって思えた時 涼真:・・・なんだ、涙出るじゃん まゆ:私だって泣くよ。涼真に会えてこんなに楽しくなれると思わなかったもん。終わりたくないよ 涼真:……そうか まゆ:ありがとうって言うの! 涼真:あ、ありがとう! まゆ:よく言えましたー写真撮ろ? 涼真:はあ まゆ:でもね、涼真 涼真:ん? まゆ:それでも私は発作が起きても寿命が短くても辛いとか悲しいとかは思わないよ? 涼真:……どうして? まゆ:胸の痛みは一瞬かもしれない。けど涼真とこうして話してる時間とか楽しい時間だって、どんなに小さな幸せでも私にとっては一生分の幸せなんだよ? 涼真:………君はほんとに… まゆ:うん。だからさ…… まゆ:………っ!! 涼真:……まゆ!? まゆ:ご、ごめん。また発作かも 涼真:……… 涼真:………まゆ 0:涼真はまゆの手を握る まゆ:涼真? 涼真:俺…まゆが死ぬのは嫌だよ まゆ:……… 0:場面転換 :まゆがメッセージを送信しました まゆ:りょーま! 涼真:まゆ、発作は良くなったの? まゆ:今のところは大丈夫かな?ごめんね心配かけて 涼真:いいんだよ まゆ:今日も病院来てくれるよね? 涼真:まあ、行ってもいいよ まゆ:素直じゃないねー 0:涼真は病室の扉の前で立つ 涼真:………はあ 0:涼真はまゆの病室のドアを開ける まゆ:涼真ー!おっはよー! 涼真:相変わらず元気だね まゆ:1日を大切にだよー! 涼真:……… まゆ:ねえ、涼真、テストどうだったの? 涼真:1位だったよ まゆ:すっごいねー! 涼真:………… まゆ:ありがとうって言わなきゃ 涼真:ありがと まゆ:なーに怒ってんの? 涼真:怒ってるように見える? まゆ:じゃあなんなの? 涼真:……心配してるんだよ まゆ:……どうして? 涼真:なんか、君が遠くにいる気がして まゆ:……なにそれ 涼真:教えてよ、まゆの体は今どうなってるの? 涼真:そういえばおかしいじゃないか、外出許可も出ないし、家族とか彼氏と居ろって言われるなんて 涼真:まゆは……もう死ぬの? まゆ:……うん 涼真:………どうして まゆ:ターミナルって知ってる? 涼真:……ターミナル? まゆ:うん。亡くなる準備をするってこと 涼真:………まゆのことか? まゆ:そうだよ 涼真:……嘘だろ? まゆ:ほんとだよ。もうその準備をしてるの 涼真:いくらなんでも急すぎる まゆ:私の病気はいつも急だよ まゆ:もうそろそろだけど、私はいつか死ぬの 涼真:……まゆが死ぬなんて…言わないでくれよ まゆ:……え? 涼真:……くっ… まゆ:な、なんで涼真が泣くの?私が死ぬことはわかってたことでしょ? 涼真:わかってるけど…受け入れられないだろ まゆ:だとしても泣かないでよ 涼真:俺がまゆに出会って、どんな思いでこの病室に来てるかわかる? まゆ:……なに? 涼真:君の笑顔が、君の声が、君の明るさが、俺を元気づけてくれたんだよ 涼真:そんなまゆが死ぬなんて……言うなよ まゆ:……でもね、どう頑張っても私は生きられないよ 涼真:……なら君に会わなきゃよかった まゆ:……え? 涼真:後悔しか残らないよ。俺はずっと君と居たいのに、一緒に居られないなんて まゆ:どうしてそんなこと言うの? 涼真:だって!俺は…… 涼真:いや、何でもない まゆ:……謝ってよ 涼真:……何を? まゆ:私に会わなきゃよかったなんて言わないでよ! まゆ:私は涼真に会えて……こんなに嬉しいのに、なんでそんなこと言うの? 涼真:………だってそうだろ。俺は何も出来ないんだから まゆ:別に何かして欲しいわけじゃないよ 涼真:それじゃダメだよ。いっそ、俺だってまゆと同じ病気になって同じ気持ちになってみたかった まゆ:……私の気持ちわかってないじゃん。勝手なこと言わないでよ! 涼真:……まゆ まゆ:涼真は今すぐ死んでって言われてもどうせ死ねないでしょ? 涼真:……… まゆ:私の病気は…生きたくても生きられない人が沢山いるの。それなのに何でそんなこと言うの!?ひどいよ! 涼真:………ごめん まゆ:……私の気持ち…ちゃんと考えて 涼真:でも、俺の気持ちもわかってくれ まゆ:………え? 涼真:まゆに会えて嬉しいからこそ、そう思ってしまうんだ。悲しいんだよ まゆ:………涼真 涼真:何か俺に出来ることはないかっていつも思うんだ。でも答えは見つからない 涼真:君に出会えて嬉しいのに、君と話して、距離は段々と近づいていくのに、君は遠くに行ってしまう 涼真:このやるせない気持ちを…まゆにもわかってほしいんだ まゆ:………そっか。そうだよね まゆ:もしかしたら、私なんかより涼真の方が辛いのかもね 涼真:……まゆと比べたら、俺は生きられるから幸せだよ まゆ:その気持ち、忘れないでね? 涼真:え? まゆ:生きてるだけで幸せだって気持ちだよ 涼真:………うん 涼真:この気持ちも、まゆと一緒に居たからそう思えたのかもしれないね まゆ:……ありがと まゆ:仲直りの写真撮ろ! 涼真:わかったよ まゆ:ねえ、涼真。私が死んだらやっぱ悲しい? 涼真:当たり前だろ まゆ:そっか。なんか嬉しい 涼真:何回も言わないからな? まゆ:涼真 涼真:……ん? まゆ:ハグする? 涼真:……俺はそんな手には乗らないぞ まゆ:じゃないと、私、遠くに行っちゃうかもしれないよ? 涼真:……… 0:涼真はまゆを抱きしめる まゆ:……あったかいね 涼真:……そうだな まゆ:この温かさは忘れたくないなー まゆ:こんな時にこんなこと言っていいかわかんないけどさ まゆ:私ね…… 涼真:………ん? まゆ:……涼真と… まゆ:…………っ!! 涼真:ま、まゆ!? まゆ:………はあ、はあ。……っ!! 涼真:待って!まゆ!今ナースコール押すから まゆ:…はあ…はあ…ごめん涼真 涼真:こんな時に謝らないでよ まゆ:……違う、そうじゃなくてさ 涼真:………え? まゆ:私……本当に死ぬかも 涼真:……まゆ!? 0:いつもと違う発作が起こる 0:そしてまゆの緊急手術が行われた 0:--場面転換-- :まゆがメッセージを送信しました まゆ:ねえ、涼真 涼真:まゆ、無事だったの? 涼真:二日も連絡来なかったから心配したぞ まゆ:ごめんね、心配かけちゃった まゆ:ねえ涼真 涼真:何? まゆ:会いたい 0:涼真はまゆの病室に向かう 涼真:まゆ? まゆ:……… 涼真:……まゆ!? まゆ:………すぅー……すぅー 涼真:な、なんだ、寝てたのか 涼真:……まゆ 涼真:………うぅ、まゆ…… 涼真:お願いだよ…死なないでくれ…… まゆ:なんで泣いてんの? 涼真:っ! 涼真:ね、寝たフリなんて卑怯だ! まゆ:なんでそっぽ向いちゃうの?こっち向いてよ 涼真:いやだね まゆ:もう、しょうがないなー 0:まゆは後ろから涼真を抱きしめる 涼真:……またハグかよ まゆ:嬉しいでしょ? 涼真:からかうなって まゆ:でもね、今回はハグじゃないよ 涼真:……? まゆ:聞こえる?私の心臓の音 涼真:……うん、少しだけ まゆ:私、この心臓が大嫌いだったんだ 涼真:そりゃそうだよな まゆ:気まぐれに発作が来るし、学校にも行けないし、夜も眠れないし まゆ:いっそ、死んじゃおっかなって思ったこともあるよ 涼真:……… まゆ:でも、私は生きてる。この心臓と一緒にまだ生きてる まゆ:この心臓は、私が涼真と出会うために動き続けてくれたんだよ 涼真:………まゆ 涼真:………うっ…うぅぅ。ありがとう まゆ:よく言えました まゆ:涼真に会えて私は幸せだよ 涼真:まゆがそう言ってくれるなら、俺だって同じ気持ちだよ 涼真:幸せだ まゆ:………うん 涼真:まゆが俺を海に連れ出した時、走る無邪気なまゆが眩しかった 涼真:まゆの髪が柔らかく揺れる様子も振り返るその笑顔も、キンと高い声も優しそうな眼差しも 涼真:俺はまゆとの思い出を絶対に忘れないよ。大切な思い出だ まゆ:………涼真 まゆ:涼真のその言葉が私の人生を幸せにしてくれる まゆ:生まれてきてよかったって何度も思わせてくれるの思わせてくれるの 涼真:……ありがとう まゆ:もう涼真は人に感謝出来る人だね 涼真:これもきっとまゆと過ごして、まゆに教えてもらったからだよ まゆ:……ありがと…グスン 涼真:まゆ、泣いてるの? まゆ:……私は涼真みたいに泣き虫じゃないから!泣いてないもん 涼真:じゃあ今すぐ離れて顔見せてよ まゆ:やだよ、離れたくない 涼真:……… まゆ:あ、今、涼真、顔赤くなってるでしょ? 涼真:な、なってない! まゆ:じゃあ顔見せてよ 0:涼真とまゆは顔を合わせる 涼真:………ふふっ まゆ:あははっ 涼真:泣いてるじゃん まゆ:涼真だって顔赤くなってるじゃん 涼真:うるさいなぁ まゆ:うるさくないよー 涼真:……ふふっ まゆ:………あははっ 涼真:……こんな時間がずっと続けばいいのにな まゆ:そんなこと言われたら私、嬉しすぎて今すぐに死んじゃうかも 涼真:そんな事言うなよ まゆ:冗談だよ。私はまだ死なないもん 涼真:まゆが居なくなっても俺はまゆみたいに笑顔で居続けたい まゆ:……ううん。涼真はもうずっと笑顔で居てくれたじゃん 涼真:………え? まゆ:私にはわかるよ 涼真:どういうこと? まゆ:それはまた明日教えるね 涼真:……じゃあ、明日も会える? まゆ:うん、私も会いたい 涼真:じゃあ、また明日ね まゆ:うん。ばいばい 0:涼真は病室を出る まゆ:……はあ……はあ まゆ:……私は涼真の心の中に居るよ まゆ:……さよなら 0:この言葉を残したまゆが帰らぬ人になった 0:その連絡が来たのは涼真がまゆの彼氏だと思ってるまゆの担当の先生からだった 0:心臓病が悪化し、まゆはその場で亡くなったのだった :新着のメッセージはありません 涼真:なんでだよ 涼真:また明日って言ったじゃねーかよ 涼真:ふざけんなよ!まゆ!! 涼真:俺は・・・君のそばでもっと笑いたかった 涼真:君に笑顔でありがとうって言えばよかった 涼真:もう一度君に・・・気持ちを伝えればよかった 涼真:いつも元気な君が居たから当たり前だと思っていた 涼真:君に甘えすぎていたのかもしれない 涼真:もう一度会えると思っていたのかもしれない 涼真:いつも彼女は言っていたはず、いつ死ぬかわからないって 涼真:彼女の涙で気付けなかった俺はバカだ 涼真:まゆの声が、まゆの笑顔が・・・今はたまらなく愛おしい 涼真:もう一度会いたいよ・・・まゆ :まゆが動画を送信しました 涼真:・・・え!? 涼真:な、なんで?まゆは亡くなったはずじゃ 0:恐る恐る涼真は送られた動画を開く 0:--場面転換-- :まゆが動画を送信しました まゆ:これ、本当に写ってるのかな? まゆ:あーあー!聞こえますかー? まゆ:まあ聞こえなかったらテイク2で行くかー まゆ:このビデオを見てる時はもしかしたら まゆ:私は君の前から二度と姿を現すことはないでしょう まゆ:怖いこと言ってごめんね? まゆ:私はおばけじゃないよ、予約送信ってやつで涼真に動画送ってるの まゆ:だから、私は居ないけどこの動画は送れるんだ まゆ:昨日、発作が起きた後に先生に言われたの まゆ:この発作は先天性心神経が終わる合図だって まゆ:治るじゃないよ?終わるの まゆ:だから、最後に涼真に言いたいことがある まゆ:涼真に言いたいことはね〜 まゆ:………っっはあ〜〜 まゆ:君はいつも頑固で頭でっかちで無愛想で まゆ:ほんっとーーーに!!自分を好きになれない人だったよね まゆ:私はそんな君とぶつかってきたけど まゆ:もっと私を知って欲しかったからだし まゆ:素直な君を見ていたかったからだよ? まゆ:何度も何度も話して知らない間にお互い泣いていたこともあったよね? まゆ:今思えば笑っちゃうけど まゆ:そんな日々が私にとっての幸せなんだって今なら言えるよ! まゆ:だんだん素直になっていく君は まゆ:私を抱きしめて離さなかった時 まゆ:私は本当の君の温かさを感じれてる気がしてすごく嬉しかった まゆ:でも・・・なんでだろう まゆ:言葉にするにはとても勇気がいることで まゆ:一生君と一緒に居られるなら簡単に言えるはずなのに まゆ:明日がいつ来なくなるかわからないって思ったら まゆ:私の言葉は君を傷つけてしまう気がして、怖かった まゆ:辛いのは私じゃなくて まゆ:君の方なんじゃないかなって思ってる まゆ:でも、私は君との距離が近づく度にいつも感じるの まゆ:一緒に居たのにずっと言えなくてごめんなさい まゆ:こんな形になっちゃったけど最後に言わせて? まゆ:ずっと まゆ:ずっと好きだったよ まゆ:君と話して、笑って、喧嘩して、泣いて、仲直りして、また笑って まゆ:君と過ごした1分1秒が私の生きた証なの まゆ:大切な思い出だよ? まゆ:私は居なくなるけど まゆ:君も同じ気持ちでいてくれたらいいな まゆ:思い出に残る私の一生の恋でした まゆ:ごめんこんなに泣いちゃったらテイク2なんて撮れないや まゆ:あーもうやめた!! まゆ:ばいばい・・・今までありがとう まゆ:大好き・・・ まゆ:さよなら 涼真:まゆ……… 涼真:俺だって……同じ気持ちだよ 涼真:俺だって……まゆの事が…… 涼真:何度も言おうと思ってた。何度もそう感じてた 涼真:それでも何も言えない俺は本当にバカだ 涼真:今更だけど……伝えたい 涼真:まゆに届くかわからないけど俺も送るか :涼真がメッセージを送信しました 涼真:俺も…好きだよ :まゆが画像を送信しました 涼真:………え? :まゆが画像を送信しました 涼真:俺との写真? 涼真:これも予約送信か? :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました 涼真:うっ…ううぅ……… 涼真:俺、まゆと一緒だとこんなに笑ってたんだな :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました 涼真:頑固で頭でっかちで無愛想な俺と一緒に居てくれてありがとう :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました :まゆが画像を送信しました 涼真:俺はまゆと一緒に居れて楽しかった 涼真:幸せだった 涼真:まゆの事が好きだった・・・ 涼真:まゆ・・・沢山思い出をくれてありがとう :まゆがメッセージを送信しました まゆ:ありがとう まゆ:私も大好き まゆ:涼真の笑顔は まゆ:私だけの宝物だよ 0:彼女の最後のビデオレター 0:〜END〜