台本概要
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タイトル | オカ魔王さま(前編) |
---|---|
作者名 | ヒデじい |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 4人用台本(男1、女3) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
モテないオカマの魔王様が異世界に行くお話
500 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
魔王 | 男 | 84 | オカマ |
ヴァイオレット | 女 | 61 | 魔王様の部下。独身 |
聖女 | 女 | 50 | かわいいけど毒舌。14歳 |
女神 | 女 | 18 | 癒やし系 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ヴァイオレット:魔王様! おめでとうございます!
魔王:ふふふふふ、ホッホッホッ。オーホッホッホ!
魔王:ありがとう! 耳が早いわね。ヴァイオレット。
ヴァイオレット:ついに・・・ついに・・・レベルアップされたそうでございますね!
魔王:そうなの! ついにレベル70になったのよ!
魔王:全く、このレベルになるとなかなか経験値がたまらなくて苦労したわ・・・。
ヴァイオレット:レベル69になってから早30年、でしょうか。
ヴァイオレット:いやー、30年間、来る日も来る日も頑張ってトレーニングされていたかいがありましたね!
魔王:ええ、ついにワタシも大台に到達したわっ!
ヴァイオレット:先代が超えられなかった壁をついに超えられたのですね。
ヴァイオレット:これで魔王様は名実ともに魔界最強!
ヴァイオレット:いや、世界最強! 宇宙最強と言っても過言ではありません。
魔王:オーホッホッホ! ありがとう!! そう、宇宙最強よ〜!!
魔王:でもね・・・悩みがあるの。
ヴァイオレット:悩み・・・ですか・・・?
魔王:ええ・・・。
ヴァイオレット:は・・・!
ヴァイオレット:やはり・・・800歳を超えても結婚できないことでございますか・・・?
魔王:そうなの・・・。
魔王:子供の頃は16歳で結婚するのが夢だったのに・・・・・まさかこの年まで独身だなんて・・・。
魔王:てか・・・あなたもそうじゃない!
ヴァイオレット:うう・・・。
ヴァイオレット:我々の何がいけないのでしょう・・・?
ヴァイオレット:やはり強すぎるからでしょうか?
魔王:そうね・・・。美しさだけでなく、強さも罪なのよね。
魔王:でも仕方がないの。これが戦士の運命。
ヴァイオレット:ええ、これが強さを追い求めたものの宿命・・・。
ヴァイオレット:力と青春は決して両立できないのです。
魔王:・・・じゃなくて!!!
魔王:・・・それも悩みだけど!
魔王:別の悩みがあるの・・・!!
ヴァイオレット:し、失礼しました!
魔王:あのね・・・ワタシ、強すぎてフルパワーで闘える相手がいないの!
魔王:まいったわ〜! せっかくレベルアップしたのに、この最強のパワーを試す機会がなくて・・・・。
ヴァイオレット:おお、それは深刻な悩みでございますね!
ヴァイオレット:いやー、でも魔王様がお強すぎますから! 仕方がございません。
魔王:オーホッホッホ!
魔王:一度で良いからワタシより強い相手と戦ってみたいものね〜。
魔王:強すぎるって罪だわ〜!
魔王:
魔王:
魔王:
0:突如、あたりに警報が鳴り響く
魔王:ん・・・何かしら? この音は?
ヴァイオレット:これは・・・。
ヴァイオレット:侵入者を知らせる警報でございます!
魔王:侵入者・・・!?
ヴァイオレット:はい。我が魔王城に・・・侵入者が現れた模様です!
魔王:オーホッホッホ!
魔王:侵入者なんて何百年ぶりかしらね〜。
魔王:丁度いいわ!
魔王:早くいらっしゃい、侵入者ちゃん。
魔王:全宇宙最強! レベル70の力を見せてあげるわ!
ヴァイオレット:しかし・・・まさか、この城の結界を破るものが現れるとは・・・。
ヴァイオレット:いったいどんな奴が・・・。
魔王:恐らく屈強な戦士か魔道士といったところかしら。
魔王:良い暇つぶしにはなりそうだわ。
魔王:
魔王:
魔王:
0:部屋の扉が開く
魔王:来たわね! って・・・ん?
聖女:あのー・・・こんにちは。
ヴァイオレット:はい、こんにちは。子供ではないですか? 誰ですか? 貴方は。
聖女:はじめまして。私は聖女エリカと言います。
ヴァイオレット:自分のことを聖女と名乗るなんて・・・、なかなかに図太い方ですね。
聖女:あなたが魔王さん・・・ですか?
魔王:ええ、そうよ。私が魔王オカ。
魔王:私になんの用?
聖女:すみません、突然ですが、私と戦っていただけませんか?
ヴァイオレット:戦う・・・魔王様と?
魔王:あなた、年はおいくつ?
聖女:14歳です。
魔王:・・・ワタシと戦いたいの?
聖女:はい。貴方に特に恨みはないのですが、魔王さんを倒してほしいと私の国の王様に頼まれてしまって。
ヴァイオレット:なんと・・・。
ヴァイオレット:まったく・・・こんな小さな子を魔王城に送り込むなんて、酷い王様もいたものですね。
魔王:あなたも大変ね。
魔王:きっといろんな人の期待を背負って苦労しているんでしょう?
聖女:はい・・・。
聖女:でも、引き受けた以上、このまま帰るわけには行かなくて。戦っていただけませんか?
魔王:仕方ないわね。今日のワタシは機嫌がいいの。
魔王:特別に。特別に戦ってあげるわ。
魔王:でもただ戦うだけじゃつまらないし・・・。そうだわ、お稽古をつけてあげる!
聖女:え? お稽古ですか?
ヴァイオレット:あら、良かったですね!
ヴァイオレット:とーってもお強い魔王様に稽古をつけてもらえるなんて、超幸運なのですよ!
聖女:は、はい・・・! ありがとうございます。
聖女:ちなみに、魔王さんのレベルはおいくつぐらいなのでしょう?
魔王:ふふん。
ヴァイオレット:ふふふ・・・。
魔王:それじゃあ参考までに教えてあげるわ。
魔王:ワタシのレベルは70!
ヴァイオレット:そう、そして年は801歳!
魔王:ですがもちろんフルパワーであなたと戦うつもりはないからご安心なさい!
聖女:ええ!? レベル70・・・!!??
聖女:そんな・・・!! 信じられません・・・!!
魔王:そうなの! オーーホッホ!! 驚いた?
聖女:すみません。せっかく戦っていただけるのに、これだとまともな戦いになるかどうか・・・。
魔王:あら・・・大丈夫よ!
魔王:レベル差なんてあっても仕方ないの!
魔王:ワタシは宇宙最強だからね。
魔王:それにね、レベルなんて単なる飾りよ、飾り!
ヴァイオレット:そうですよ。人間たるもの、大事なのは中身!
ヴァイオレット:あなたまだ若いのですから。
ヴァイオレット:レベルが低くても気にしてはいけません!
聖女:そうですね・・・! 気にしないことにします。
魔王:オーーホッホ! 良い心がけね。
魔王:そうだわ。一つハンデをあげるわ。
魔王:ワタシは魔王。魔法を使えば右に出るものはいないわ。
魔王:せっかくだから最近覚えた魔法を使いたいところだけど・・・。
魔王:物騒だからお互い魔法は禁止にしましょう?
ヴァイオレット:おお、それは良いアイデアでございます。
ヴァイオレット:では、危険なので、武器も禁止いたしましょうか。
魔王:そうね、素手で戦おうかしら。
聖女:え、魔法無しで、素手で・・・ですか?
魔王:ふふ、そう。これならうっかり致命傷を与えることもないし、安全でしょう?
聖女:なるほど・・・! お気遣い、ありがとうございます。
聖女:
聖女:
聖女:
0:魔王、構える
魔王:それじゃあ、かかってらっしゃい? 遠慮はいらないわ!
聖女:はいっ! ありがとうございます!
聖女:じゃあ行きますねっ。
聖女:必殺・・・!!
聖女:聖女ぱーーーーんち!
ヴァイオレット:ふふ、可愛らしい技ですね。
魔王:さてさて、初手ぐらいは食らってあげようかしら。
魔王:ふんふーん・・・。
魔王:ん・・・?
魔王:は・・・?
魔王:ほげえええええええ!
魔王:
魔王:
魔王:
0:魔王、部屋の隅まで吹っ飛ぶ
聖女:ああ! すみません! 私・・・またやりすぎちゃいました!?
魔王:ピクピク・・・。
ヴァイオレット:ま、魔王様!!!!
聖女:ああ・・・私、いつもこうなんです。
聖女:うまく手加減ができなくて・・・。
ヴァイオレット:て、手加減・・・?
魔王:な・・・なかなかやるじゃない・・・。
魔王:見た目に騙されて、ちょーーーっとばかり油断しちゃったみたいね。
魔王:お、おほん。
魔王:参考までに聞いていいかしら?
魔王:あなた・・・レベルはおいくつ?
聖女:え・・・それ、聞いちゃいます・・・?
聖女:魔王さんのレベル・・・70なんですよね?
魔王:そうよ! レベル70! 宇宙最強よ!
聖女:私は・・・。
聖女:レベル999です。
魔王:999・・・!?
ヴァイオレット:999・・・!?!?!?
聖女:ああ! ごめんなさい!
聖女:まさか魔王さんがこんなに弱いだなんて思わなくて・・・。
聖女:でも大丈夫です! 元気出してください!
聖女:レベルなんて単なる飾りですから!
聖女:大事なのは中身ですよ! 中身!
魔王:そ、そうね・・・。
聖女:じゃあ、続けましょっか。
聖女:お稽古、つけてくれるんですよね?
聖女:遠慮はいらないんですよね?(ニッコリ)
魔王:・・・。
ヴァイオレット:・・・。
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
0:2時間後
魔王:ぐ・・・ぐふっ・・・。
ヴァイオレット:魔王様ああああ!!
魔王:ワタシはもう駄目だわ・・・。
魔王:ありがとう、ヴァイオレット・・・。
魔王:貴方と共に生きた800年、良い人生だったわ。
ヴァイオレット:魔王様! 嫌ですわ! おいていかないでくださいまし・・・。
魔王:バカね。泣くんじゃないわよ。これからの魔王軍はあなたが引っ張っていくの。
ヴァイオレット:そんな・・・嫌でございます。
ヴァイオレット:魔王様がいない世界なんて・・・耐えられません・・・。
魔王:強く生きなさい。別れは終わりじゃないの。
魔王:この悲しみがあなたを強くしてくれるわ。
ヴァイオレット:魔王さま・・・・。
魔王:それじゃあ最後は・・・このセリフで締めようかしらね・・・!!
魔王:オーホッホッホ!
魔王:結婚はできなかったけど・・・わが人生に・・・一片の悔いなし・・・!!!
魔王:ぐふっ・・・!!
ヴァイオレット:魔王様あああああ!!!
ヴァイオレット:うう・・・私もすぐにあとをお追いいたします。
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
0:聖女、おずおずと話しかける
聖女:あのー・・・。
ヴァイオレット:・・・。
聖女:ヒール。
魔王:あ、治ったわ。
ヴァイオレット:ま、魔王様!!
聖女:回復させていただきました。ご無事なようで何よりです。
魔王:お、おほん・・・。私のかっこいいセリフが・・・。
聖女:すみません、私、うまく手加減ができなくて・・・。
魔王:な・・・なかなかやるじゃない、聖女ちゃん。
魔王:ちょーっっとだけ私よりお強いみたいね・・・。
聖女:そ、そうですね!
聖女:ほんのちょっと・・・たったの15倍だけ私の方が強かっただけなので・・・。
聖女:お気になさらず・・・!
魔王:えぐるわね・・・。
魔王:おほん・・・まあいいわ・・・。
魔王:あなた、きっと今まで死にものぐるいで特訓して、その強さを身に着けたのよね。
魔王:私と同じく、青春すべてをトレーニングに捧げてきたのでしょう?
ヴァイオレット:ええ、きっとそのせいで色恋沙汰とは無縁の人生を送ってきたに違いありません。
ヴァイオレット:我々と同じ。素晴らしい根性ではないですか!
魔王:うんうん、認めてあげる。
魔王:聖女ちゃん、アナタはワタシ達と同じ存在。これを期にお友達になりましょう?
魔王:強い者同士、そしてモテない女同士。3人で同盟を作りましょう。
ヴァイオレット:ええ!
ヴァイオレット:そして今後は3人でトレーニングしてお互い強さを高め合いましょう!
魔王:良いわね〜! 女子会もやりましょ!
ヴァイオレット:楽しみですね!
聖女:あのー・・・盛り上がってるところ申し訳ないのですが・・・
聖女:私はトレーニングなんて一度もしたことがないので・・・ついていけるかどうか・・・。
魔王:は・・・!?
聖女:私はこの世界に来た時から、つまり最初からずっとレベル999なので・・・。
魔王:は・・・・!?!?!?
ヴァイオレット:あの・・・この世界・・・というのは・・・?
聖女:あ、私、異世界から転生してきた、『異世界人』なんです。
魔王:異世界・・・!?
聖女:はい。
聖女:私の元いた世界、『地球』では、異世界転生が大流行していて、
聖女:トラックに轢かれたり、過労死してしまった不幸な人たちが沢山異世界に転生しているんです。
魔王:・・・。
聖女:私も元の世界では冴えない一般人だったんですけど、
聖女:何故かこちらの世界では美少女の姿になっていて、
聖女:そして何故か異世界なのにここでは日本語が通じて、
聖女:何故か私は最強の魔力を持っていて、
聖女:みんなから聖女様と呼ばれて・・・。
聖女:それで、王様から頼まれて、魔王さんを討伐しに来たんです。
ヴァイオレット:なるほど・・・。
魔王:・・・ヴァイオレット・・・どうしましょ。1ミリもわからないわ・・・!!
ヴァイオレット:私、古文書で読んだことがございます・・・。
ヴァイオレット:なんでも異世界から転移した者は、漏れなくチート級の能力を持ち、
ヴァイオレット:美男美女に生まれ変わって、なおかつ大金持ちになり、ウッハウハな第二の人生を送ると・・・。
聖女:そうなのです!
聖女:何かよく分からないけど転生したら最強になれる!
聖女:それが異世界転生なのです。地球では常識なのですよ〜♪
魔王:異世界に行くだけで最強? なによそれ・・・ずるいじゃない・・・。
ヴァイオレット:魔王様なんてレベルを1上げるのに30年もかかったのに・・・。
聖女:そうなのですね・・・。
聖女:すみません、私は元から最強なので、一般庶民の魔王さんの苦労がわからなくて・・・・。
魔王:ぐぬぬ・・・。
ヴァイオレット:しかし、すごいのですね、異世界転生というのは・・・。
聖女:あ、そうだ!
聖女:何だったら魔王さんたちも異世界に行ってみたらどうですか?
聖女:私をこっちの世界に連れてきた神様を紹介して差し上げますよ?
聖女:今はまだ弱い・・・もとい、レベルの低い魔王さん達でも・・・きっと異世界に行けば強くなれますよ?
魔王:ふっ。
ヴァイオレット:フッフッフッ。
魔王:ホッホッホ。オーーホッホ!
魔王:見くびらないでくれる!?
魔王:そんなワケの分からない理由で最強になってもつまらないじゃない。
ヴァイオレット:ええ、そのとおりです。
魔王:力っていうのはね、己の努力で身につけてこそ意味があるの。
魔王:私は誇り高き魔王!!
魔王:たとえ何千年、何万年かかったところで自力で修行してあなたより強くなってみせるわ!
ヴァイオレット:そのとおり! さすが魔王様!
ヴァイオレット:それでこそ誇り高き魔族の王でございます!
聖女:なんと・・・。
聖女:あ、でもでも、異世界に行くと他にもいろんな良いことがあるんですよ!
聖女:元の世界の知識を生かして大金持ちになれたり、美男美女になれたりするんです。
魔王:お金ねえ・・・? 興味ないわね。
ヴァイオレット:ええ、その通り。
ヴァイオレット:それに我々はもともと美しすぎるぐらいですからね。
聖女:すみません、愚問でした。さすがは魔王さん達、ご立派ですね。
魔王:いえいえ、気にしなくて良いわ〜。
魔王:
魔王:
魔王:
0:聖女、立ち上がって帰り支度をする
聖女:さてと。それじゃあそろそろ失礼しますね。
魔王:あら・・・もう帰っちゃうの?
魔王:ふふ、異世界の話、なかなかおもしろかったわ。
聖女:はい、百人の彼氏が待ってるから、早く帰らないといけないんです。
聖女:魔王さんを倒したら全員と結婚式をあげる約束なので。
聖女:ふんふ〜ん♪
魔王:え?
魔王:今・・・なんて言ったかしら?
魔王:彼氏が・・・何人・・・?
聖女:え? はい、彼氏が百人いて・・・
魔王:百人・・・!!?
ヴァイオレット:・・・そういえば、古文書によると、異世界から転生した人間は無条件でモテモテになれるとか・・・。
聖女:はい。異世界に行った人間はよくわからないけどモテる。
聖女:これも地球では常識なのです。
聖女:私、昔は三十代独身のいわゆる喪女(もじょ)だったんですけど・・・。
聖女:この世界に来たときからイケメンに大量に言い寄られちゃって・・・。
聖女:えへへ、もうモテてモテて困っちゃいます♪
魔王:・・・。
ヴァイオレット:・・・。
魔王:行くわ! 異世界!!
聖女:え。
ヴァイオレット:ええ、行きましょう!! 異世界!!
ヴァイオレット:そして我々も結婚相手を見つけるのです!!
聖女:ええ・・・。
魔王:あなたを異世界につれてきた神様とやら、紹介して頂戴!!
ヴァイオレット:お願いいたします!!
聖女:わ、分かりました。
聖女:
聖女:
聖女:
0:女神が現れる
女神:こんにちは〜。私は女神、マリアと申します。
魔王:なるほど・・・あなたが噂の神様ね。
ヴァイオレット:自らを女神と名乗るとは・・・この人もまたなかなかに図太いですね。
聖女:女神さん、お久しぶりです。
女神:聖女さん、お疲れ様です。異世界を満喫されているようですね。
聖女:はい、異世界最高ですっ♪
女神:それは何よりです。それで、なんの御用でしょうか?
聖女:あのですね、この魔王さんがお話があるそうで・・・。
聖女:
聖女:
聖女:
0:女神、魔王に向き合う
女神:あらあら、まあまあ、あなたは誇り高き魔族の王、魔王さんですね。
女神:私にどのような御用でしょうか?
魔王:ふふん。
魔王:あのね、私達もちょーっっとばかり、異世界というものに行ってみたくてね・・・。
魔王:どう? 連れて行ってもらえるかしら?
ヴァイオレット:私もぜひ、お願いいたします!
女神:あらあら、まあまあ!
女神:魔王さん達ともあろうお方が、この魔界をほっぽりだして異世界に行きたいのですか?
女神:参考までに動機をお聞きしても?
女神:申し訳ありませんが、不順な動機の方は遠慮させていただきますので。
魔王:う・・・うむ・・・!!!
ヴァイオレット:魔王様! ここはなにか適当な理由をこしらえましょう・・・!
魔王:まあ、あれね。
魔王:己を磨きたいと言ったところかしら。
魔王:ワタシはこの世界で最強を極めてしまった・・・。
魔王:でもね、違う世界を見て知見を深めてみたいの。
魔王:そして、一から己の心身を鍛えて、人として成長したいのよ。
女神:なるほど・・・別の世界で己を磨きたい、と! 素晴らしい心がけです!!
女神:了解しました。
女神:そんなあなたにピッタリの異世界を用意して差し上げます。
女神:凶悪な悪党たちがはびこる世界ですが、見事世界を救われた暁には貴方の目的も叶うことでしょう。
魔王:おお!
ヴァイオレット:ワクワクしますね! 魔王様!
女神:ただし、異世界への旅には危険が伴います。二度と帰ってこれない可能性もございます。
魔王:危険・・・。
女神:ええ、これは向こうの世界についての注意事項をまとめた説明書です。
女神:よーく熟読されて、その上で本当に異世界に行くかどうかをお決めになってくださいね。
女神:
女神:
女神:
0:魔王、本を受け取る
魔王:説明書・・・。ぶ、分厚いわね・・・。
ヴァイオレット:魔王様! ここはサクッと読んで、早く異世界に行きましょう!
魔王:ふふん! そうね。時間がもったいないわ。
魔王:いくわよ・・・秘技・・・・『速読』のフリ!!
魔王:
魔王:
魔王:
0:魔王、ページを凄い速さでめくって読んだふりをする
魔王:パラパラパラ〜っと。はい、バッチリ読み終えたわ。
女神:おお! 素晴らしい速さ! さすがは魔王様ですね。
女神:それでは、最後にステータス設定に入りましょう。あちらの世界でのステータスを自由にお決めになってください。
魔王:ステータスを決める・・・!?
ヴァイオレット:ほほう。なるほど、つまりレベルやスキルを自分で設定できるということですか。
女神:ええ、強いステータスを設定すれば向こうの世界で最強気分を味わえますし、
女神:逆に弱めのステータスを設定すれば、ハンデを追うことになり、心身ともに鍛えられるでしょう。
魔王:なるほどね・・・。
ヴァイオレット:魔王様! どうします?
魔王:・・・そうね・・・。それじゃあ・・・これで行こうかしら・・・。
ヴァイオレット:おお、気が合いますね! では私も。
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
0:女神、紙を受け取って読み上げる
女神:はい、では読み上げますね。
女神:『レベル999、力999、魔力999、美しさ999』
女神:『スキル・・・人気者、モテモテ』
女神:これは・・・。
聖女:うわあ・・・・。
女神:あの、ほんとにこれで良いのですか・・・?
女神:確か先ほどは、心身を鍛える・・・とか、なんとか。
女神:これではあまりにも難易度が・・・。
魔王:ふふん。良いのよ、良いの! 細かいことは気にしないで頂戴。
女神:かしこまりました。
女神:それでは、最後に向こうの世界での目的を決めてください。
魔王:なるほど、目的ね・・・。
女神:何でも構いません。
女神:『のんびりスローライフを送る』でも構いませんし、『英雄になる』でも構いません。
魔王:なるほどね。もちろん、ワタシは最強!
魔王:向こうの世界の強い奴らをすべてやっつけてやるわ!
ヴァイオレット:ええ! 我々は最強ですから!
女神:おお・・・なるほど! これぞ勇者ですね!
女神:ふふ、面白くなってきました。
女神:本来、女神の立場である私は異世界に同行しないのですが・・・今回は楽しそうなのでご一緒させていただきますね。
魔王:あら、賑やかでいいわね。歓迎よ。
女神:では、早速行きましょうか。準備はよろしいですか?
魔王:ええ、いつでも良いわ!
ヴァイオレット:ついに異世界に行けますね・・・!! ワクワクしますね・・・! 魔王様!
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
0:聖女、魔王に近づいて見送る
聖女:魔王さん、行ってらっしゃい! 異世界旅行、楽しまれてくださいね。
魔王:聖女ちゃん・・・。
魔王:ワタシ、異世界でモテモテハッピーな人生を送って・・・素敵な相手を見つけて今度こそ結婚してみせるわ・・・!!
魔王:結婚式はこちらで挙げるから、ぜひ来てね!
聖女:はいっ。楽しみにしていますね!
女神:それじゃあ行きますよ〜。
女神:魔王さん、ヴァイオレットさん、しっかり掴まっててください!
魔王:分かったわ!
ヴァイオレット:はいっ!
女神:ワープ!!
女神:
女神:
女神:
0:3人の姿が消える
聖女:行っちゃった。
聖女:あ・・・さっきの説明書が落ちてる・・・。
聖女:なになに・・・。え・・・?
聖女:そ、そうなんだ・・・魔王さん達、大丈夫かな・・・。
ヴァイオレット:魔王様! おめでとうございます!
魔王:ふふふふふ、ホッホッホッ。オーホッホッホ!
魔王:ありがとう! 耳が早いわね。ヴァイオレット。
ヴァイオレット:ついに・・・ついに・・・レベルアップされたそうでございますね!
魔王:そうなの! ついにレベル70になったのよ!
魔王:全く、このレベルになるとなかなか経験値がたまらなくて苦労したわ・・・。
ヴァイオレット:レベル69になってから早30年、でしょうか。
ヴァイオレット:いやー、30年間、来る日も来る日も頑張ってトレーニングされていたかいがありましたね!
魔王:ええ、ついにワタシも大台に到達したわっ!
ヴァイオレット:先代が超えられなかった壁をついに超えられたのですね。
ヴァイオレット:これで魔王様は名実ともに魔界最強!
ヴァイオレット:いや、世界最強! 宇宙最強と言っても過言ではありません。
魔王:オーホッホッホ! ありがとう!! そう、宇宙最強よ〜!!
魔王:でもね・・・悩みがあるの。
ヴァイオレット:悩み・・・ですか・・・?
魔王:ええ・・・。
ヴァイオレット:は・・・!
ヴァイオレット:やはり・・・800歳を超えても結婚できないことでございますか・・・?
魔王:そうなの・・・。
魔王:子供の頃は16歳で結婚するのが夢だったのに・・・・・まさかこの年まで独身だなんて・・・。
魔王:てか・・・あなたもそうじゃない!
ヴァイオレット:うう・・・。
ヴァイオレット:我々の何がいけないのでしょう・・・?
ヴァイオレット:やはり強すぎるからでしょうか?
魔王:そうね・・・。美しさだけでなく、強さも罪なのよね。
魔王:でも仕方がないの。これが戦士の運命。
ヴァイオレット:ええ、これが強さを追い求めたものの宿命・・・。
ヴァイオレット:力と青春は決して両立できないのです。
魔王:・・・じゃなくて!!!
魔王:・・・それも悩みだけど!
魔王:別の悩みがあるの・・・!!
ヴァイオレット:し、失礼しました!
魔王:あのね・・・ワタシ、強すぎてフルパワーで闘える相手がいないの!
魔王:まいったわ〜! せっかくレベルアップしたのに、この最強のパワーを試す機会がなくて・・・・。
ヴァイオレット:おお、それは深刻な悩みでございますね!
ヴァイオレット:いやー、でも魔王様がお強すぎますから! 仕方がございません。
魔王:オーホッホッホ!
魔王:一度で良いからワタシより強い相手と戦ってみたいものね〜。
魔王:強すぎるって罪だわ〜!
魔王:
魔王:
魔王:
0:突如、あたりに警報が鳴り響く
魔王:ん・・・何かしら? この音は?
ヴァイオレット:これは・・・。
ヴァイオレット:侵入者を知らせる警報でございます!
魔王:侵入者・・・!?
ヴァイオレット:はい。我が魔王城に・・・侵入者が現れた模様です!
魔王:オーホッホッホ!
魔王:侵入者なんて何百年ぶりかしらね〜。
魔王:丁度いいわ!
魔王:早くいらっしゃい、侵入者ちゃん。
魔王:全宇宙最強! レベル70の力を見せてあげるわ!
ヴァイオレット:しかし・・・まさか、この城の結界を破るものが現れるとは・・・。
ヴァイオレット:いったいどんな奴が・・・。
魔王:恐らく屈強な戦士か魔道士といったところかしら。
魔王:良い暇つぶしにはなりそうだわ。
魔王:
魔王:
魔王:
0:部屋の扉が開く
魔王:来たわね! って・・・ん?
聖女:あのー・・・こんにちは。
ヴァイオレット:はい、こんにちは。子供ではないですか? 誰ですか? 貴方は。
聖女:はじめまして。私は聖女エリカと言います。
ヴァイオレット:自分のことを聖女と名乗るなんて・・・、なかなかに図太い方ですね。
聖女:あなたが魔王さん・・・ですか?
魔王:ええ、そうよ。私が魔王オカ。
魔王:私になんの用?
聖女:すみません、突然ですが、私と戦っていただけませんか?
ヴァイオレット:戦う・・・魔王様と?
魔王:あなた、年はおいくつ?
聖女:14歳です。
魔王:・・・ワタシと戦いたいの?
聖女:はい。貴方に特に恨みはないのですが、魔王さんを倒してほしいと私の国の王様に頼まれてしまって。
ヴァイオレット:なんと・・・。
ヴァイオレット:まったく・・・こんな小さな子を魔王城に送り込むなんて、酷い王様もいたものですね。
魔王:あなたも大変ね。
魔王:きっといろんな人の期待を背負って苦労しているんでしょう?
聖女:はい・・・。
聖女:でも、引き受けた以上、このまま帰るわけには行かなくて。戦っていただけませんか?
魔王:仕方ないわね。今日のワタシは機嫌がいいの。
魔王:特別に。特別に戦ってあげるわ。
魔王:でもただ戦うだけじゃつまらないし・・・。そうだわ、お稽古をつけてあげる!
聖女:え? お稽古ですか?
ヴァイオレット:あら、良かったですね!
ヴァイオレット:とーってもお強い魔王様に稽古をつけてもらえるなんて、超幸運なのですよ!
聖女:は、はい・・・! ありがとうございます。
聖女:ちなみに、魔王さんのレベルはおいくつぐらいなのでしょう?
魔王:ふふん。
ヴァイオレット:ふふふ・・・。
魔王:それじゃあ参考までに教えてあげるわ。
魔王:ワタシのレベルは70!
ヴァイオレット:そう、そして年は801歳!
魔王:ですがもちろんフルパワーであなたと戦うつもりはないからご安心なさい!
聖女:ええ!? レベル70・・・!!??
聖女:そんな・・・!! 信じられません・・・!!
魔王:そうなの! オーーホッホ!! 驚いた?
聖女:すみません。せっかく戦っていただけるのに、これだとまともな戦いになるかどうか・・・。
魔王:あら・・・大丈夫よ!
魔王:レベル差なんてあっても仕方ないの!
魔王:ワタシは宇宙最強だからね。
魔王:それにね、レベルなんて単なる飾りよ、飾り!
ヴァイオレット:そうですよ。人間たるもの、大事なのは中身!
ヴァイオレット:あなたまだ若いのですから。
ヴァイオレット:レベルが低くても気にしてはいけません!
聖女:そうですね・・・! 気にしないことにします。
魔王:オーーホッホ! 良い心がけね。
魔王:そうだわ。一つハンデをあげるわ。
魔王:ワタシは魔王。魔法を使えば右に出るものはいないわ。
魔王:せっかくだから最近覚えた魔法を使いたいところだけど・・・。
魔王:物騒だからお互い魔法は禁止にしましょう?
ヴァイオレット:おお、それは良いアイデアでございます。
ヴァイオレット:では、危険なので、武器も禁止いたしましょうか。
魔王:そうね、素手で戦おうかしら。
聖女:え、魔法無しで、素手で・・・ですか?
魔王:ふふ、そう。これならうっかり致命傷を与えることもないし、安全でしょう?
聖女:なるほど・・・! お気遣い、ありがとうございます。
聖女:
聖女:
聖女:
0:魔王、構える
魔王:それじゃあ、かかってらっしゃい? 遠慮はいらないわ!
聖女:はいっ! ありがとうございます!
聖女:じゃあ行きますねっ。
聖女:必殺・・・!!
聖女:聖女ぱーーーーんち!
ヴァイオレット:ふふ、可愛らしい技ですね。
魔王:さてさて、初手ぐらいは食らってあげようかしら。
魔王:ふんふーん・・・。
魔王:ん・・・?
魔王:は・・・?
魔王:ほげえええええええ!
魔王:
魔王:
魔王:
0:魔王、部屋の隅まで吹っ飛ぶ
聖女:ああ! すみません! 私・・・またやりすぎちゃいました!?
魔王:ピクピク・・・。
ヴァイオレット:ま、魔王様!!!!
聖女:ああ・・・私、いつもこうなんです。
聖女:うまく手加減ができなくて・・・。
ヴァイオレット:て、手加減・・・?
魔王:な・・・なかなかやるじゃない・・・。
魔王:見た目に騙されて、ちょーーーっとばかり油断しちゃったみたいね。
魔王:お、おほん。
魔王:参考までに聞いていいかしら?
魔王:あなた・・・レベルはおいくつ?
聖女:え・・・それ、聞いちゃいます・・・?
聖女:魔王さんのレベル・・・70なんですよね?
魔王:そうよ! レベル70! 宇宙最強よ!
聖女:私は・・・。
聖女:レベル999です。
魔王:999・・・!?
ヴァイオレット:999・・・!?!?!?
聖女:ああ! ごめんなさい!
聖女:まさか魔王さんがこんなに弱いだなんて思わなくて・・・。
聖女:でも大丈夫です! 元気出してください!
聖女:レベルなんて単なる飾りですから!
聖女:大事なのは中身ですよ! 中身!
魔王:そ、そうね・・・。
聖女:じゃあ、続けましょっか。
聖女:お稽古、つけてくれるんですよね?
聖女:遠慮はいらないんですよね?(ニッコリ)
魔王:・・・。
ヴァイオレット:・・・。
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
0:2時間後
魔王:ぐ・・・ぐふっ・・・。
ヴァイオレット:魔王様ああああ!!
魔王:ワタシはもう駄目だわ・・・。
魔王:ありがとう、ヴァイオレット・・・。
魔王:貴方と共に生きた800年、良い人生だったわ。
ヴァイオレット:魔王様! 嫌ですわ! おいていかないでくださいまし・・・。
魔王:バカね。泣くんじゃないわよ。これからの魔王軍はあなたが引っ張っていくの。
ヴァイオレット:そんな・・・嫌でございます。
ヴァイオレット:魔王様がいない世界なんて・・・耐えられません・・・。
魔王:強く生きなさい。別れは終わりじゃないの。
魔王:この悲しみがあなたを強くしてくれるわ。
ヴァイオレット:魔王さま・・・・。
魔王:それじゃあ最後は・・・このセリフで締めようかしらね・・・!!
魔王:オーホッホッホ!
魔王:結婚はできなかったけど・・・わが人生に・・・一片の悔いなし・・・!!!
魔王:ぐふっ・・・!!
ヴァイオレット:魔王様あああああ!!!
ヴァイオレット:うう・・・私もすぐにあとをお追いいたします。
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
0:聖女、おずおずと話しかける
聖女:あのー・・・。
ヴァイオレット:・・・。
聖女:ヒール。
魔王:あ、治ったわ。
ヴァイオレット:ま、魔王様!!
聖女:回復させていただきました。ご無事なようで何よりです。
魔王:お、おほん・・・。私のかっこいいセリフが・・・。
聖女:すみません、私、うまく手加減ができなくて・・・。
魔王:な・・・なかなかやるじゃない、聖女ちゃん。
魔王:ちょーっっとだけ私よりお強いみたいね・・・。
聖女:そ、そうですね!
聖女:ほんのちょっと・・・たったの15倍だけ私の方が強かっただけなので・・・。
聖女:お気になさらず・・・!
魔王:えぐるわね・・・。
魔王:おほん・・・まあいいわ・・・。
魔王:あなた、きっと今まで死にものぐるいで特訓して、その強さを身に着けたのよね。
魔王:私と同じく、青春すべてをトレーニングに捧げてきたのでしょう?
ヴァイオレット:ええ、きっとそのせいで色恋沙汰とは無縁の人生を送ってきたに違いありません。
ヴァイオレット:我々と同じ。素晴らしい根性ではないですか!
魔王:うんうん、認めてあげる。
魔王:聖女ちゃん、アナタはワタシ達と同じ存在。これを期にお友達になりましょう?
魔王:強い者同士、そしてモテない女同士。3人で同盟を作りましょう。
ヴァイオレット:ええ!
ヴァイオレット:そして今後は3人でトレーニングしてお互い強さを高め合いましょう!
魔王:良いわね〜! 女子会もやりましょ!
ヴァイオレット:楽しみですね!
聖女:あのー・・・盛り上がってるところ申し訳ないのですが・・・
聖女:私はトレーニングなんて一度もしたことがないので・・・ついていけるかどうか・・・。
魔王:は・・・!?
聖女:私はこの世界に来た時から、つまり最初からずっとレベル999なので・・・。
魔王:は・・・・!?!?!?
ヴァイオレット:あの・・・この世界・・・というのは・・・?
聖女:あ、私、異世界から転生してきた、『異世界人』なんです。
魔王:異世界・・・!?
聖女:はい。
聖女:私の元いた世界、『地球』では、異世界転生が大流行していて、
聖女:トラックに轢かれたり、過労死してしまった不幸な人たちが沢山異世界に転生しているんです。
魔王:・・・。
聖女:私も元の世界では冴えない一般人だったんですけど、
聖女:何故かこちらの世界では美少女の姿になっていて、
聖女:そして何故か異世界なのにここでは日本語が通じて、
聖女:何故か私は最強の魔力を持っていて、
聖女:みんなから聖女様と呼ばれて・・・。
聖女:それで、王様から頼まれて、魔王さんを討伐しに来たんです。
ヴァイオレット:なるほど・・・。
魔王:・・・ヴァイオレット・・・どうしましょ。1ミリもわからないわ・・・!!
ヴァイオレット:私、古文書で読んだことがございます・・・。
ヴァイオレット:なんでも異世界から転移した者は、漏れなくチート級の能力を持ち、
ヴァイオレット:美男美女に生まれ変わって、なおかつ大金持ちになり、ウッハウハな第二の人生を送ると・・・。
聖女:そうなのです!
聖女:何かよく分からないけど転生したら最強になれる!
聖女:それが異世界転生なのです。地球では常識なのですよ〜♪
魔王:異世界に行くだけで最強? なによそれ・・・ずるいじゃない・・・。
ヴァイオレット:魔王様なんてレベルを1上げるのに30年もかかったのに・・・。
聖女:そうなのですね・・・。
聖女:すみません、私は元から最強なので、一般庶民の魔王さんの苦労がわからなくて・・・・。
魔王:ぐぬぬ・・・。
ヴァイオレット:しかし、すごいのですね、異世界転生というのは・・・。
聖女:あ、そうだ!
聖女:何だったら魔王さんたちも異世界に行ってみたらどうですか?
聖女:私をこっちの世界に連れてきた神様を紹介して差し上げますよ?
聖女:今はまだ弱い・・・もとい、レベルの低い魔王さん達でも・・・きっと異世界に行けば強くなれますよ?
魔王:ふっ。
ヴァイオレット:フッフッフッ。
魔王:ホッホッホ。オーーホッホ!
魔王:見くびらないでくれる!?
魔王:そんなワケの分からない理由で最強になってもつまらないじゃない。
ヴァイオレット:ええ、そのとおりです。
魔王:力っていうのはね、己の努力で身につけてこそ意味があるの。
魔王:私は誇り高き魔王!!
魔王:たとえ何千年、何万年かかったところで自力で修行してあなたより強くなってみせるわ!
ヴァイオレット:そのとおり! さすが魔王様!
ヴァイオレット:それでこそ誇り高き魔族の王でございます!
聖女:なんと・・・。
聖女:あ、でもでも、異世界に行くと他にもいろんな良いことがあるんですよ!
聖女:元の世界の知識を生かして大金持ちになれたり、美男美女になれたりするんです。
魔王:お金ねえ・・・? 興味ないわね。
ヴァイオレット:ええ、その通り。
ヴァイオレット:それに我々はもともと美しすぎるぐらいですからね。
聖女:すみません、愚問でした。さすがは魔王さん達、ご立派ですね。
魔王:いえいえ、気にしなくて良いわ〜。
魔王:
魔王:
魔王:
0:聖女、立ち上がって帰り支度をする
聖女:さてと。それじゃあそろそろ失礼しますね。
魔王:あら・・・もう帰っちゃうの?
魔王:ふふ、異世界の話、なかなかおもしろかったわ。
聖女:はい、百人の彼氏が待ってるから、早く帰らないといけないんです。
聖女:魔王さんを倒したら全員と結婚式をあげる約束なので。
聖女:ふんふ〜ん♪
魔王:え?
魔王:今・・・なんて言ったかしら?
魔王:彼氏が・・・何人・・・?
聖女:え? はい、彼氏が百人いて・・・
魔王:百人・・・!!?
ヴァイオレット:・・・そういえば、古文書によると、異世界から転生した人間は無条件でモテモテになれるとか・・・。
聖女:はい。異世界に行った人間はよくわからないけどモテる。
聖女:これも地球では常識なのです。
聖女:私、昔は三十代独身のいわゆる喪女(もじょ)だったんですけど・・・。
聖女:この世界に来たときからイケメンに大量に言い寄られちゃって・・・。
聖女:えへへ、もうモテてモテて困っちゃいます♪
魔王:・・・。
ヴァイオレット:・・・。
魔王:行くわ! 異世界!!
聖女:え。
ヴァイオレット:ええ、行きましょう!! 異世界!!
ヴァイオレット:そして我々も結婚相手を見つけるのです!!
聖女:ええ・・・。
魔王:あなたを異世界につれてきた神様とやら、紹介して頂戴!!
ヴァイオレット:お願いいたします!!
聖女:わ、分かりました。
聖女:
聖女:
聖女:
0:女神が現れる
女神:こんにちは〜。私は女神、マリアと申します。
魔王:なるほど・・・あなたが噂の神様ね。
ヴァイオレット:自らを女神と名乗るとは・・・この人もまたなかなかに図太いですね。
聖女:女神さん、お久しぶりです。
女神:聖女さん、お疲れ様です。異世界を満喫されているようですね。
聖女:はい、異世界最高ですっ♪
女神:それは何よりです。それで、なんの御用でしょうか?
聖女:あのですね、この魔王さんがお話があるそうで・・・。
聖女:
聖女:
聖女:
0:女神、魔王に向き合う
女神:あらあら、まあまあ、あなたは誇り高き魔族の王、魔王さんですね。
女神:私にどのような御用でしょうか?
魔王:ふふん。
魔王:あのね、私達もちょーっっとばかり、異世界というものに行ってみたくてね・・・。
魔王:どう? 連れて行ってもらえるかしら?
ヴァイオレット:私もぜひ、お願いいたします!
女神:あらあら、まあまあ!
女神:魔王さん達ともあろうお方が、この魔界をほっぽりだして異世界に行きたいのですか?
女神:参考までに動機をお聞きしても?
女神:申し訳ありませんが、不順な動機の方は遠慮させていただきますので。
魔王:う・・・うむ・・・!!!
ヴァイオレット:魔王様! ここはなにか適当な理由をこしらえましょう・・・!
魔王:まあ、あれね。
魔王:己を磨きたいと言ったところかしら。
魔王:ワタシはこの世界で最強を極めてしまった・・・。
魔王:でもね、違う世界を見て知見を深めてみたいの。
魔王:そして、一から己の心身を鍛えて、人として成長したいのよ。
女神:なるほど・・・別の世界で己を磨きたい、と! 素晴らしい心がけです!!
女神:了解しました。
女神:そんなあなたにピッタリの異世界を用意して差し上げます。
女神:凶悪な悪党たちがはびこる世界ですが、見事世界を救われた暁には貴方の目的も叶うことでしょう。
魔王:おお!
ヴァイオレット:ワクワクしますね! 魔王様!
女神:ただし、異世界への旅には危険が伴います。二度と帰ってこれない可能性もございます。
魔王:危険・・・。
女神:ええ、これは向こうの世界についての注意事項をまとめた説明書です。
女神:よーく熟読されて、その上で本当に異世界に行くかどうかをお決めになってくださいね。
女神:
女神:
女神:
0:魔王、本を受け取る
魔王:説明書・・・。ぶ、分厚いわね・・・。
ヴァイオレット:魔王様! ここはサクッと読んで、早く異世界に行きましょう!
魔王:ふふん! そうね。時間がもったいないわ。
魔王:いくわよ・・・秘技・・・・『速読』のフリ!!
魔王:
魔王:
魔王:
0:魔王、ページを凄い速さでめくって読んだふりをする
魔王:パラパラパラ〜っと。はい、バッチリ読み終えたわ。
女神:おお! 素晴らしい速さ! さすがは魔王様ですね。
女神:それでは、最後にステータス設定に入りましょう。あちらの世界でのステータスを自由にお決めになってください。
魔王:ステータスを決める・・・!?
ヴァイオレット:ほほう。なるほど、つまりレベルやスキルを自分で設定できるということですか。
女神:ええ、強いステータスを設定すれば向こうの世界で最強気分を味わえますし、
女神:逆に弱めのステータスを設定すれば、ハンデを追うことになり、心身ともに鍛えられるでしょう。
魔王:なるほどね・・・。
ヴァイオレット:魔王様! どうします?
魔王:・・・そうね・・・。それじゃあ・・・これで行こうかしら・・・。
ヴァイオレット:おお、気が合いますね! では私も。
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
0:女神、紙を受け取って読み上げる
女神:はい、では読み上げますね。
女神:『レベル999、力999、魔力999、美しさ999』
女神:『スキル・・・人気者、モテモテ』
女神:これは・・・。
聖女:うわあ・・・・。
女神:あの、ほんとにこれで良いのですか・・・?
女神:確か先ほどは、心身を鍛える・・・とか、なんとか。
女神:これではあまりにも難易度が・・・。
魔王:ふふん。良いのよ、良いの! 細かいことは気にしないで頂戴。
女神:かしこまりました。
女神:それでは、最後に向こうの世界での目的を決めてください。
魔王:なるほど、目的ね・・・。
女神:何でも構いません。
女神:『のんびりスローライフを送る』でも構いませんし、『英雄になる』でも構いません。
魔王:なるほどね。もちろん、ワタシは最強!
魔王:向こうの世界の強い奴らをすべてやっつけてやるわ!
ヴァイオレット:ええ! 我々は最強ですから!
女神:おお・・・なるほど! これぞ勇者ですね!
女神:ふふ、面白くなってきました。
女神:本来、女神の立場である私は異世界に同行しないのですが・・・今回は楽しそうなのでご一緒させていただきますね。
魔王:あら、賑やかでいいわね。歓迎よ。
女神:では、早速行きましょうか。準備はよろしいですか?
魔王:ええ、いつでも良いわ!
ヴァイオレット:ついに異世界に行けますね・・・!! ワクワクしますね・・・! 魔王様!
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
ヴァイオレット:
0:聖女、魔王に近づいて見送る
聖女:魔王さん、行ってらっしゃい! 異世界旅行、楽しまれてくださいね。
魔王:聖女ちゃん・・・。
魔王:ワタシ、異世界でモテモテハッピーな人生を送って・・・素敵な相手を見つけて今度こそ結婚してみせるわ・・・!!
魔王:結婚式はこちらで挙げるから、ぜひ来てね!
聖女:はいっ。楽しみにしていますね!
女神:それじゃあ行きますよ〜。
女神:魔王さん、ヴァイオレットさん、しっかり掴まっててください!
魔王:分かったわ!
ヴァイオレット:はいっ!
女神:ワープ!!
女神:
女神:
女神:
0:3人の姿が消える
聖女:行っちゃった。
聖女:あ・・・さっきの説明書が落ちてる・・・。
聖女:なになに・・・。え・・・?
聖女:そ、そうなんだ・・・魔王さん達、大丈夫かな・・・。