台本概要

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タイトル 朝をさがして
作者名 卯佐美 満月。  (@33nekko)
ジャンル 童話
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
不問 -
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
:「君は……アサを知ってるかい?」 :ここは月と星が優しく灯る :安息の王が治める夜の国。 : :夜の国の北端。 :淡く七色に煌めく雪が降りつもり :煉瓦造りの町並みが美しい : :針のない大きな時計塔がある此処が、僕の住む町。 : :〝トゥルムドルフ〟 : :僕は宙鯨が星吹く日に産まれてから、今日までずっとアサを探している。 : :世界が力強さと暖かさに包まれて、 :目も眩むような光に満ちる時を「アサ」と名付け :アサに恋をした月の民ハーゼ。 : :けれど、傍に行く事は叶わず見つめるだけだった。 : :恋に焦がれたハーゼは、共に生きてはゆけない時を嘆き、 :時計の針を夜に隠してしまった。 : :時を止め、アサを忘れようとしても眩い光への想いは募るばかり……。 :そして、アサに恋したハーゼが夜空に溶けた日から、 :七色の淡雪が降るようになった……。 : :それがこの町の物語。 : :「僕は、アサを知りたい。」 : :夜に隠した時計の針を見つけられたらアサに出会えるはずなんだ。 :いつか、雲のパン屋さんがそう言って笑ってた。 :だから僕は旅に出た。 : :黒い夜の煌めきと囁きの隙間を :僕は探して、探して、探して。 : :銀河の湖のフラミンゴがフラリとふらつくほど :僕は歩いて、歩いて、歩いて。 : :探し、歩き続けて十日ほど経った。 :十の月が空に踊る日に、気まぐれなオーロラの揺りかごに包まれた時計の針を、見つけたんだ。 : :オーロラの揺りかごを揺らす片翼のピューマは、僕に問いかける。 : :〝貴方は、どうして朝を知りたいのですか……?〟 : :「僕は産まれてから、ずっとアサを探しているんだ。」 : :「だけどね、わからないんだ……。何故探しているのか。」 : :「だから僕はアサに会いたい!!僕は、アサを知りたいんだ……。」 : : :片翼のピューマは、瞳から星屑を零すと、伏し目がちに微笑み、時計の針を差し出してくれた。 : :僕は、大切に時計の針を抱き締めて町へと急いだ。 : : :流れ星より早く、早く、早く……! : : :僕は時計塔を駆け上がり、そっと針をはめ込んだ。 : :「カチリ」 : :時計の鐘の音が響く。 :高らかに、誇らしげに、動き始めた時を歌う。 : : :ここは夜の国の北端。 :淡く七色に煌めく雪が降りつもり、 :煉瓦造りの町並みが美しい :大きな時計塔がある町 :〝トゥルムドルフ〟 : :十日毎、十の月が踊る夜の先に朝がやって来る町。 : :「ーーー僕はね、朝を知っていたよ。」

:「君は……アサを知ってるかい?」 :ここは月と星が優しく灯る :安息の王が治める夜の国。 : :夜の国の北端。 :淡く七色に煌めく雪が降りつもり :煉瓦造りの町並みが美しい : :針のない大きな時計塔がある此処が、僕の住む町。 : :〝トゥルムドルフ〟 : :僕は宙鯨が星吹く日に産まれてから、今日までずっとアサを探している。 : :世界が力強さと暖かさに包まれて、 :目も眩むような光に満ちる時を「アサ」と名付け :アサに恋をした月の民ハーゼ。 : :けれど、傍に行く事は叶わず見つめるだけだった。 : :恋に焦がれたハーゼは、共に生きてはゆけない時を嘆き、 :時計の針を夜に隠してしまった。 : :時を止め、アサを忘れようとしても眩い光への想いは募るばかり……。 :そして、アサに恋したハーゼが夜空に溶けた日から、 :七色の淡雪が降るようになった……。 : :それがこの町の物語。 : :「僕は、アサを知りたい。」 : :夜に隠した時計の針を見つけられたらアサに出会えるはずなんだ。 :いつか、雲のパン屋さんがそう言って笑ってた。 :だから僕は旅に出た。 : :黒い夜の煌めきと囁きの隙間を :僕は探して、探して、探して。 : :銀河の湖のフラミンゴがフラリとふらつくほど :僕は歩いて、歩いて、歩いて。 : :探し、歩き続けて十日ほど経った。 :十の月が空に踊る日に、気まぐれなオーロラの揺りかごに包まれた時計の針を、見つけたんだ。 : :オーロラの揺りかごを揺らす片翼のピューマは、僕に問いかける。 : :〝貴方は、どうして朝を知りたいのですか……?〟 : :「僕は産まれてから、ずっとアサを探しているんだ。」 : :「だけどね、わからないんだ……。何故探しているのか。」 : :「だから僕はアサに会いたい!!僕は、アサを知りたいんだ……。」 : : :片翼のピューマは、瞳から星屑を零すと、伏し目がちに微笑み、時計の針を差し出してくれた。 : :僕は、大切に時計の針を抱き締めて町へと急いだ。 : : :流れ星より早く、早く、早く……! : : :僕は時計塔を駆け上がり、そっと針をはめ込んだ。 : :「カチリ」 : :時計の鐘の音が響く。 :高らかに、誇らしげに、動き始めた時を歌う。 : : :ここは夜の国の北端。 :淡く七色に煌めく雪が降りつもり、 :煉瓦造りの町並みが美しい :大きな時計塔がある町 :〝トゥルムドルフ〟 : :十日毎、十の月が踊る夜の先に朝がやって来る町。 : :「ーーー僕はね、朝を知っていたよ。」