台本概要
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タイトル | 魔王を倒しにきたら反抗期でした |
---|---|
作者名 | 桜蛇あねり(おうじゃあねり) (@aneri_writer) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 5人用台本(男3、女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
『魔王を倒しにきたらお留守でした』の世界から10年後の世界。 ロリが世界を支配して10年、ユーシャ一行の無念を果たすべく、立ち上がった者たちがいた。 ※『魔王を倒しにきたらお留守でした』の続きですが、読んでなくても大丈夫です。 ※なんでもアリです。節度を守って楽しく演じましょう。 1222 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
セイバー | 男 | 47 | 剣士。全力でツッコんでください。 魔王に敗れたソーリョの弟。 |
ウィッチ | 女 | 35 | 魔法使い。全力でギャルしてください。 魔王に勝てたら、彼氏が結婚してくれるらしい。 |
モンク | 男 | 32 | 修道士。全力でお父さんしてください。 14になる娘と妻が家で待っている…と信じたい。 |
魔王 | 男 | 39 | 魔族の頂点。全力で魔王とお父さんしてください。 15になる娘と妻が最近冷たい。 |
魔王の娘 | 女 | 26 | 魔王の娘。全力で反抗してください。 最近リザードマンの彼氏ができた。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:『魔王を倒しにきたら反抗期でした』
セイバー:この世界が魔族の手によって支配され、10年が経った。魔王の統治のもと、魔族の奴隷と化してしまった人間......。かつて、この村の勇者一行が魔王を倒さんと立ち向かったが、彼らは帰ってこなかった....。人間1の手練と言われた彼らが倒されてしまった......?いったい、魔王の力とはどれほどのものなのだろう......。魔王を倒そうとする者は現れなかった。
セイバー:しかし!今ここに!我らがユーシャ達の無念を晴らすべく、そして人間の自由のために!魔王に立ち向かうのだ!必ずや、勝利を我が手に......!!
ウィッチ:あー、はいはい、そーゆー暑苦しいのいいからさ、早く行こーよ。
モンク:同意見。私も、家で家族が待っているのでな。早急に済ませて帰りたい。
セイバー:もー!ノリ悪いなぁ!お前ら!魔王城の前なんだからさ、こう、テンションとかモチベーションを、だな!
ウィッチ:逆にテンションゲキ下げなんですけど。別にいいよ、そんなんなくても、サクッと倒せるんだからさ。
セイバー:いいか、相手は魔王なんだぞ?あのユーシャを倒したという、強大な敵だぞ!俺達も強くなったけど、きっとそれだけじゃ絶対倒せないんだ!この3人で力を合わせ、綿密な作戦を練った上で挑まないと、勝てないんだよ!!あの姉さんを!完全無敵と言われた姉さんを!倒した相手なんだぞ!
モンク:ふむ。確かにソーリョ殿は光魔法・回復魔法のエキスパート。素早い詠唱で敵を攻撃し、味方をすぐに回復させる。簡単に倒れるような人ではないな。
ウィッチ:それを言うんだったら、クロマドー様もでしょ?相手の徹底的なリサーチと、裏をかいたトリッキーな作戦の数々。あの人も倒されるような人じゃないのよね。はぁ......めちゃ推しだったのにな......。
セイバー:村1番の英雄、ユーシャさんも、素晴らしい剣術の持ち主だったのに......仲間への的確な指示と、皆をひっぱっていくカリスマ性......。この3人が揃って、倒せなかった相手なんだ!くそ......姉さんの仇は必ず......っ!!だけど......
モンク:臆するな!
セイバー:っ!!
モンク:心まで負けてどうする!我らは今宵、魔王に勝ちに来ているのだ!だったら!勝つ以外のことを考えるな!今日という日まで、各々強くなってきたのだろう!
セイバー:モンク......。
モンク:だったら!もう後は進むだけだ。大丈夫、護りならこの私に任せるが良い!
セイバー:そう、だよな!!悪ぃ、俺、弱気になってた......!モンク、俺!やるよ!!絶対に勝つ!!
モンク:そうだ!その意気やよし!共に魔王を…
ウィッチ:(さえぎって)ごめんくださーい。(魔王城へ入る)
セイバー:待ってぇぇぇ!?
ウィッチ:いや、だから、長いんだって。そういう暑苦しいノリ。嫌いなの!
セイバー:だからってさ、いきなり突入するの良くないよ!?心の準備!心の準備とか、3人で一緒に扉開けるとかさ!あるじゃん!なんか!
ウィッチ:あーはいはい、うざいうざい。魔王っち!倒しに来たよー!
モンク:相変わらず生意気というか、自由な娘よ....私の娘はもう少し謙虚だがなぁ...。
ウィッチ:おめぇの娘なんか知らねぇし。いいから、さっさと倒して、帰りたいんだよね。魔王倒したら、彼ピが結婚してくれるって言ってるし。
セイバー:緊張感なさすぎだろ......なんなの、もう......。
魔王:よく来たな、人間どもよ。
セイバー:あぁほら、もう最終決戦の雰囲気になっちゃったじゃん。
モンク:貴様が魔王か......!人間が貴様に支配されて10年......その終止符を、うちに来たぞ!!
魔王:笑わせるな、人間。貴様らごときに魔族は負けぬ。だが、我に挑むその心意気は褒めてや......
ウィッチ:火を噴けサラマンダー、地底から賜りしその業火をあびせよ、ファイヤーストーム!
魔王:えっ......?ぐあああぁっ!!
セイバー:ウィッチさん!?待って、え?戦闘まだ始まってないよ!?今、最終戦闘前に魔王と人間との分かり合えそうで分かり合えないそんなやり取りをするところだよ!?
ウィッチ:だから、そういうまどろっこしいの好きくないの。早く倒して帰ろ。
モンク:おい!不意打ちなんて卑怯な真似をするでない!今、お互いの士気を高めていたところだろう!!
ウィッチ:あたしの彼ピが言ってた。何がなんでも、勝てばよかろうなのだーって。
セイバー:あぁもう!あの、魔王さん?なんか、すいません......
魔王:いや、流石にビックリしたわ。ちょ、そこの娘。いきなり火を浴びせるなんて行儀の悪いこと、してはダメだぞ?我だったからよかったものの、普通の人間だと大怪我どころか、死んでしまうからな?
ウィッチ:えーちょーうざいんですけどー。パパと同じこと言わないでよね。
魔王:確かに、今はうざいと思うかもしれん。だがな、こういう礼儀はしっかり身につけておかないと、社会に出た時に恥をかくんだぞ?お前のためを思って言ってるんだ。
セイバー:あれ?お父さん?
モンク:そうだぞ、ウィッチ。ちゃんと大人の言うことは聞くんだ。後で後悔したくないだろう?
ウィッチ:まじウザイ。キモイからだまってて。
魔王:キモいとはなんだ!キモイとは!
モンク:そうだぞ!今どきの子は、すぐそうやってキモイだのウザイだの!
魔王:む、そこの人間よ。お主ももしかして、年頃の娘を持つ父なのか?
モンク:そうだ。14になる娘がいる。
魔王:そうか、そうかぁ。じゃあ今がお父さん、いちばん辛い時期だよなぁ....。
モンク:ぬっ!わ、わかってくれるか!魔王殿よ!!
セイバー:あれ、この展開......なに?
魔王:我もな、今年15になる娘が......
魔王の娘:おとーさーん、遊びに行くからお小遣いちょーだい。
魔王:ちょ、今、お父さん大事な戦闘の途中だから。言っただろう、今日は予約していた挑戦者が来るって。
セイバー:予約!?魔王倒すのって申し込み制なの!?
ウィッチ:3日前にあたしが申し込んでおいたから。
セイバー:そーゆーのあったの!?知らない、そんなシステム知らないよ!そこは律儀なのに、なんで不意打ちした!?
魔王:昔、な。社員旅行で魔王城を留守にしていたときに乗り込んできた人間がいたものでな。再発防止のため、予約制を導入した。
セイバー:社員旅行ってなに!?予約制ってなに!?そんな企業みたいな感じなの!?魔王城って!
魔王の娘:おとーさんの戦闘よりも、お小遣いの方が大事だから。ほら、待ち合わせ時間迫ってるから早く。
魔王:そうやっていつもいつもお小遣いと......。あのな、お金は無限にあるわけじゃないんだぞ?
魔王の娘:はぁ...。じゃあなに?ここの挑戦者倒せば、お金手に入る?
魔王:そーだけれども。まだお前には早いし危ないから下がってなさい。
セイバー:あの、すごーく日常感だすの、止めてもらっていいっすか?こう、緊張感が、ですね?
魔王の娘:そうやってさぁ、すぐ子ども扱いするよね。もう私も15なんだからさ、人間なんて簡単に倒せるって。
魔王:いーや、だめだ。いいから、下がっていなさい。早く遊びに行きなさい。
魔王の娘:いやまだお小遣いもらってないんだけど!.........いいの?お母さんにリリスさんのことバラすよ?
魔王:っ!?なぜそれを!?
魔王の娘:リリスさんと仲良いからさぁ。で?お小遣いは?
魔王:.........今日だけだぞ。
魔王の娘:はーい!ありがとー!
セイバー:魔王の......威厳が....なんだこれ....。
モンク:.........る、
セイバー:え?モンク、なんて?
モンク......わかる、わかるぞ!魔王殿っ!!
セイバー:は?
モンク:家にいても妻と娘から雑な扱いを受け、居場所がどこにもない...そんなときに、若い女性に優しくなんてされたら.......好きになってしまうだろうっ!!!
魔王:っ!!モンク、貴様......わかってくれるかぁぁぁぁ!!そうなのだよ!そうなのだよ!!家の女性陣からないがしろにされ、ただのATMと化したこの我に......優しくしてくれたんだ!癒しを、求めてしまったんだ!
セイバー:えぇー.........待って、そこ2人。それは意気投合しちゃいけないって!しかも魔王!?娘いる、娘いるよ!?
モンク:魔王殿...苦労しているんだなぁ......大変だよなぁ、父というのは...。
魔王:そうなのだ......。我を慕い、尊敬してくれていた妻はもういない.....あっちもご無沙汰で......辛いのだ......。
セイバー:だから!娘のいる前でする話じゃないでしょって!!落ち着け、お前ら!!
モンク:魔王殿ぉぉぉぉ!!
魔王:モンクぅぅぅぅ!!
セイバー:あー、ダメだこれ。
ウィッチ:ねー、そのイヤリングマジイケてんね。それ、魔界龍のウロコ?
魔王の娘:そーなの!こっちだったら結構手に入るからさ。そういうあなたは、それ、天使の羽のペンダントだよね?めちゃ可愛い!
ウィッチ:ふふっ、よく分かってんじゃん。いる?結構余ってんだよね。
魔王の娘:欲しい!!じゃあ魔界龍のイヤリングと交換!
ウィッチ:よし!のった!
セイバー:こっちも意気投合してるぅぅぅ!!
ウィッチ:娘っち、彼ピいんの?
魔王の娘:いるいる、リザードマンのね。マジイケメン。
ウィッチ:はー!魔族うらやま!私もいるけど、人間だからさぁ、魔族のスペックには勝てないよねー。
魔王の娘:えー、スペックあんま関係なくない?相性じゃん?やっぱ
ウィッチ:まぁ、そうだよね。やっぱ中身が1番的な?
セイバー:おーい、そこ2人も、恋バナに花咲かせないでくれー。
魔王:おい、今、彼氏....と言ったか?
魔王の娘:え、うん。ほら、リザードマンのサラマンいるじゃない、あの人。
魔王:なん......だと......。暗黒の森のボスにしているリザードマンか......!お前にはまだ早い!
魔王の娘:はぁ!?そんなん、私の勝手でしょ!?
セイバー:あの、ちょっと、みなさん?
ウィッチ:そーだそーだ!ウチらの恋に口出すなー!
魔王:よりによって、サラマン...アイツ、25になるんだぞ!?やめなさい、そんなやつ
モンク:そうだぞ!まだ君は未成年なのだから!危ない目に合う前にやめておきなさい!
魔王の娘:サラマンは大丈夫だから!すごく紳士でいい人なの!
ウィッチ:未成年とか関係ねぇし!恋する気持ちに恋愛とかないから!
セイバー:ねぇ、そろそろ戦闘しない?ねえ?
魔王:ダメだ!おとーさんは認めない!
魔王の娘:別に認められなくてもいい!ほっといてよ!
モンク:魔王殿は君のことを思って言っているのだぞ!危険な目にあってからじゃ遅いんだ!
ウィッチ:そういうのを経験して、女の子は強くなっていくんでしょ!?
:
セイバー:うるせぇぇぇぇぇぇ!!!光り輝け!!ストレートフラッシュ!!
:
魔王:ぬっ!
モンク:くっ!
ウィッチ:あっ、眩しっ!
セイバー:お前ら何しに来たの!?ねぇ!俺らは!魔王を倒しに来たの!!何、敵どうしで意気投合したり味方と敵対し合ってんの!?
モンク:む......つい......
ウィッチ:ご、ごめん。
セイバー:人間の自由を手に入れるんだろ!!だったら!魔王を倒さなきゃならないんだ!!魔王!お遊びは終わりだ!このセイバー、貴様を倒し!魔族の支配を終わらせる!覚悟しろ!
魔王:ふ......いいだろう......やれるものなら、やってみるがいい、人間よ!
セイバー:ウィッチ!頼んだ!
ウィッチ:おっけー!......ここに集え、地水火風の精霊よ。汝らの根源たる力、我ここに集約せよ。プロメテウス、ポセイドン、ガイア、ゼフュロス。轟かせ、大爆発、ビッグバン!
魔王:ぐぅっ!最大爆発魔法、か。なかなかやるではないか。
ウィッチ:ちっ、やっぱこれだけじゃだめか!
魔王:さあ、我の力を見せてやろう!闇夜の礎に目覚めしサタン、我が魔力の元、力を解き放て。全てを無に返し、全てを虚像で包みこめ。暗黒の星よ、ダークホール・ギガンテ!
セイバー:やべぇ、最大の闇魔法…!くるぞっ!
モンク:私に任せろ、うぉぉぉぉぉっっっ!精神統一!肉体強化!秘技、仁王立ちっ!
セイバー:モンクっ!
魔王:ふむ、良い守りだ。
モンク:ふっ…仲間をこの鋼の肉体で守るのが、このモンクの務めよ。
セイバー:モンク、ありがとうっ!よし、みんな、俺に力を貸してくれ!
ウィッチ:おっけー、決めてよね!
モンク:さあ、我らの力を!
セイバー:英雄の剣よ、ここに皆の力を集め、解放せよ!行くぞっ!三位一体、アルティメット・ソードっ!!!
魔王:なにっ!その強大な力は、なんだっ!?
:
3人:はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
:
魔王:ぐああああああああああああっ!!!
モンク:はぁ、はぁ、どうだ?
ウィッチ:はぁ、これやっぱ力持ってかれるわ…。
魔王:ぐ…ぐふっ、これほどの力を…人間が…侮って、いたようだ、な…
セイバー:さあ、最後だ!魔王!姉さんから授かりしこの魔法で終わらせてやる!太陽神アポロンよ、我にその輝きを与えたまえ、闇を滅ぼし、光で全てを照らせ、サンシャイン・グラマラス!
魔王:くっ…ここ、まで、か。
:
魔王の娘:詠唱略、フェアリー・パラディナー!
:
セイバー:なにっ!?
魔王:はっ!?魔法が…消えた?
魔王の娘:ごめんなさい、おとーさんを倒されるわけにはいかないの。悪いけど、こっちも本気でいかせてもらうから。
ウィッチ:うそ、でしょ?あの魔法…全ての魔法攻撃を防ぐと言われている伝説の防御魔法。存在、したんだ…。
モンク:なん、だと…?じゃあ、魔法攻撃は効かないということか…?
セイバー:くっ、だが!そんな伝説級の魔法なら、多様はできない、隙も大きいはずだ!今のうちに、次の攻撃を…。
魔王の娘:魔族をなめないでね、人間。……詠唱略、ビッグバン・テラ。
ウィッチ:きゃあああああ!
モンク:ぐああああああ!
セイバー:うわああああああああああああああ!
魔王の娘:……(聞こえないくらいの声で"スターシスフォース"とつぶやく)ふぅ。
魔王:え…。人間ども、跡形もなく消し炭になったんだが。娘!その魔法はなんだ!?ビッグバンのさらに上の爆発魔法があったのか!?
魔王の娘:んー?いや、自分で作り上げた魔法だけど。ビッグバンの威力に飽きてきたから、さらにパワーアップさせてみた。
魔王:なんという…しかも詠唱破棄…。その前に最大防御魔法も使ってるし。えぇー…一体何者なの。
魔王の娘:ふふっ。魔族の頂点に立ちし魔王の娘、だけど?おとーさんの名に恥じない魔王になるって決めてるの。これでも、頑張ってるんだから。
魔王:うぬぬ。父親として、娘の成長は嬉しいのだが、娘に護られたとなると、カッコ悪いな…。複雑な心境だ…。
魔王の娘:魔王とはいえど、不老不死じゃないんだから。老いには勝てないでしょ?もう引退して、私にこのお城任せてよ。
魔王:まだお前15歳ぞ?それに、我もまだ老いには負けん。今日は少し油断したが、人間にもまだまだ負けんよ。
魔王の娘:ふぅん?ま、私もまだまだ、未熟だからねー。おとーさんには遠く及ばないよ。
魔王:いや、だいぶ強くなりすぎてて我もビックリなのだが。
魔王の娘:攻撃、はね。ほら、強力な攻撃食らったんだから、おかーさんに治してもらいなって!
魔王:お、おう。行ってくる。
魔王の娘:はーい、いってらっしゃーい。……あのね、おとーさん…私…
:
セイバー:うわあっ!
モンク:ぐあっ!
ウィッチ:きゃっ!
:
セイバー:…あ、あれ?なんとも、ない?
モンク:ぬ。ここ、は?
ウィッチ:ここ…私たちの村!?
セイバー:飛ばされた、のか?
ウィッチ:うん、たぶんこれは、強制転移魔法スターシスフォース…。私たちにビッグバンが当たる前にあの子がかけたんだとおもう…。
モンク:ん?つまり、あの娘に…救われた?
セイバー:おいおい、どういうことだよ!?
ウィッチ:わかんないけど…。にしても、あの子の魔力、すごかったな…。詠唱破棄って、大魔法使いが最低でも30年はかけてようやく一つの呪文に対して習得できるようなスゴワザなのに…。
モンク:そうなのか!?
セイバー:強制転移魔法も、わからないように詠唱破棄してかけたってことだよな?しかも旅立ちのこの村までってことは…相当な魔力じゃないと無理だぞ!?
ウィッチ:どーしよ、また魔王に挑んでも、勝てる気しないんだけど…。
モンク:だがしかし、本当になんであの娘は我々を生かすような真似を?
セイバー:さあ?それはわかんない。
:
魔王の娘:私、やっぱり人間のことが、好きなんだよね。まだまだおとーさんみたいに、冷徹で悪虐非道にはなれないや。
:
0:【完】
0:『魔王を倒しにきたら反抗期でした』
セイバー:この世界が魔族の手によって支配され、10年が経った。魔王の統治のもと、魔族の奴隷と化してしまった人間......。かつて、この村の勇者一行が魔王を倒さんと立ち向かったが、彼らは帰ってこなかった....。人間1の手練と言われた彼らが倒されてしまった......?いったい、魔王の力とはどれほどのものなのだろう......。魔王を倒そうとする者は現れなかった。
セイバー:しかし!今ここに!我らがユーシャ達の無念を晴らすべく、そして人間の自由のために!魔王に立ち向かうのだ!必ずや、勝利を我が手に......!!
ウィッチ:あー、はいはい、そーゆー暑苦しいのいいからさ、早く行こーよ。
モンク:同意見。私も、家で家族が待っているのでな。早急に済ませて帰りたい。
セイバー:もー!ノリ悪いなぁ!お前ら!魔王城の前なんだからさ、こう、テンションとかモチベーションを、だな!
ウィッチ:逆にテンションゲキ下げなんですけど。別にいいよ、そんなんなくても、サクッと倒せるんだからさ。
セイバー:いいか、相手は魔王なんだぞ?あのユーシャを倒したという、強大な敵だぞ!俺達も強くなったけど、きっとそれだけじゃ絶対倒せないんだ!この3人で力を合わせ、綿密な作戦を練った上で挑まないと、勝てないんだよ!!あの姉さんを!完全無敵と言われた姉さんを!倒した相手なんだぞ!
モンク:ふむ。確かにソーリョ殿は光魔法・回復魔法のエキスパート。素早い詠唱で敵を攻撃し、味方をすぐに回復させる。簡単に倒れるような人ではないな。
ウィッチ:それを言うんだったら、クロマドー様もでしょ?相手の徹底的なリサーチと、裏をかいたトリッキーな作戦の数々。あの人も倒されるような人じゃないのよね。はぁ......めちゃ推しだったのにな......。
セイバー:村1番の英雄、ユーシャさんも、素晴らしい剣術の持ち主だったのに......仲間への的確な指示と、皆をひっぱっていくカリスマ性......。この3人が揃って、倒せなかった相手なんだ!くそ......姉さんの仇は必ず......っ!!だけど......
モンク:臆するな!
セイバー:っ!!
モンク:心まで負けてどうする!我らは今宵、魔王に勝ちに来ているのだ!だったら!勝つ以外のことを考えるな!今日という日まで、各々強くなってきたのだろう!
セイバー:モンク......。
モンク:だったら!もう後は進むだけだ。大丈夫、護りならこの私に任せるが良い!
セイバー:そう、だよな!!悪ぃ、俺、弱気になってた......!モンク、俺!やるよ!!絶対に勝つ!!
モンク:そうだ!その意気やよし!共に魔王を…
ウィッチ:(さえぎって)ごめんくださーい。(魔王城へ入る)
セイバー:待ってぇぇぇ!?
ウィッチ:いや、だから、長いんだって。そういう暑苦しいノリ。嫌いなの!
セイバー:だからってさ、いきなり突入するの良くないよ!?心の準備!心の準備とか、3人で一緒に扉開けるとかさ!あるじゃん!なんか!
ウィッチ:あーはいはい、うざいうざい。魔王っち!倒しに来たよー!
モンク:相変わらず生意気というか、自由な娘よ....私の娘はもう少し謙虚だがなぁ...。
ウィッチ:おめぇの娘なんか知らねぇし。いいから、さっさと倒して、帰りたいんだよね。魔王倒したら、彼ピが結婚してくれるって言ってるし。
セイバー:緊張感なさすぎだろ......なんなの、もう......。
魔王:よく来たな、人間どもよ。
セイバー:あぁほら、もう最終決戦の雰囲気になっちゃったじゃん。
モンク:貴様が魔王か......!人間が貴様に支配されて10年......その終止符を、うちに来たぞ!!
魔王:笑わせるな、人間。貴様らごときに魔族は負けぬ。だが、我に挑むその心意気は褒めてや......
ウィッチ:火を噴けサラマンダー、地底から賜りしその業火をあびせよ、ファイヤーストーム!
魔王:えっ......?ぐあああぁっ!!
セイバー:ウィッチさん!?待って、え?戦闘まだ始まってないよ!?今、最終戦闘前に魔王と人間との分かり合えそうで分かり合えないそんなやり取りをするところだよ!?
ウィッチ:だから、そういうまどろっこしいの好きくないの。早く倒して帰ろ。
モンク:おい!不意打ちなんて卑怯な真似をするでない!今、お互いの士気を高めていたところだろう!!
ウィッチ:あたしの彼ピが言ってた。何がなんでも、勝てばよかろうなのだーって。
セイバー:あぁもう!あの、魔王さん?なんか、すいません......
魔王:いや、流石にビックリしたわ。ちょ、そこの娘。いきなり火を浴びせるなんて行儀の悪いこと、してはダメだぞ?我だったからよかったものの、普通の人間だと大怪我どころか、死んでしまうからな?
ウィッチ:えーちょーうざいんですけどー。パパと同じこと言わないでよね。
魔王:確かに、今はうざいと思うかもしれん。だがな、こういう礼儀はしっかり身につけておかないと、社会に出た時に恥をかくんだぞ?お前のためを思って言ってるんだ。
セイバー:あれ?お父さん?
モンク:そうだぞ、ウィッチ。ちゃんと大人の言うことは聞くんだ。後で後悔したくないだろう?
ウィッチ:まじウザイ。キモイからだまってて。
魔王:キモいとはなんだ!キモイとは!
モンク:そうだぞ!今どきの子は、すぐそうやってキモイだのウザイだの!
魔王:む、そこの人間よ。お主ももしかして、年頃の娘を持つ父なのか?
モンク:そうだ。14になる娘がいる。
魔王:そうか、そうかぁ。じゃあ今がお父さん、いちばん辛い時期だよなぁ....。
モンク:ぬっ!わ、わかってくれるか!魔王殿よ!!
セイバー:あれ、この展開......なに?
魔王:我もな、今年15になる娘が......
魔王の娘:おとーさーん、遊びに行くからお小遣いちょーだい。
魔王:ちょ、今、お父さん大事な戦闘の途中だから。言っただろう、今日は予約していた挑戦者が来るって。
セイバー:予約!?魔王倒すのって申し込み制なの!?
ウィッチ:3日前にあたしが申し込んでおいたから。
セイバー:そーゆーのあったの!?知らない、そんなシステム知らないよ!そこは律儀なのに、なんで不意打ちした!?
魔王:昔、な。社員旅行で魔王城を留守にしていたときに乗り込んできた人間がいたものでな。再発防止のため、予約制を導入した。
セイバー:社員旅行ってなに!?予約制ってなに!?そんな企業みたいな感じなの!?魔王城って!
魔王の娘:おとーさんの戦闘よりも、お小遣いの方が大事だから。ほら、待ち合わせ時間迫ってるから早く。
魔王:そうやっていつもいつもお小遣いと......。あのな、お金は無限にあるわけじゃないんだぞ?
魔王の娘:はぁ...。じゃあなに?ここの挑戦者倒せば、お金手に入る?
魔王:そーだけれども。まだお前には早いし危ないから下がってなさい。
セイバー:あの、すごーく日常感だすの、止めてもらっていいっすか?こう、緊張感が、ですね?
魔王の娘:そうやってさぁ、すぐ子ども扱いするよね。もう私も15なんだからさ、人間なんて簡単に倒せるって。
魔王:いーや、だめだ。いいから、下がっていなさい。早く遊びに行きなさい。
魔王の娘:いやまだお小遣いもらってないんだけど!.........いいの?お母さんにリリスさんのことバラすよ?
魔王:っ!?なぜそれを!?
魔王の娘:リリスさんと仲良いからさぁ。で?お小遣いは?
魔王:.........今日だけだぞ。
魔王の娘:はーい!ありがとー!
セイバー:魔王の......威厳が....なんだこれ....。
モンク:.........る、
セイバー:え?モンク、なんて?
モンク......わかる、わかるぞ!魔王殿っ!!
セイバー:は?
モンク:家にいても妻と娘から雑な扱いを受け、居場所がどこにもない...そんなときに、若い女性に優しくなんてされたら.......好きになってしまうだろうっ!!!
魔王:っ!!モンク、貴様......わかってくれるかぁぁぁぁ!!そうなのだよ!そうなのだよ!!家の女性陣からないがしろにされ、ただのATMと化したこの我に......優しくしてくれたんだ!癒しを、求めてしまったんだ!
セイバー:えぇー.........待って、そこ2人。それは意気投合しちゃいけないって!しかも魔王!?娘いる、娘いるよ!?
モンク:魔王殿...苦労しているんだなぁ......大変だよなぁ、父というのは...。
魔王:そうなのだ......。我を慕い、尊敬してくれていた妻はもういない.....あっちもご無沙汰で......辛いのだ......。
セイバー:だから!娘のいる前でする話じゃないでしょって!!落ち着け、お前ら!!
モンク:魔王殿ぉぉぉぉ!!
魔王:モンクぅぅぅぅ!!
セイバー:あー、ダメだこれ。
ウィッチ:ねー、そのイヤリングマジイケてんね。それ、魔界龍のウロコ?
魔王の娘:そーなの!こっちだったら結構手に入るからさ。そういうあなたは、それ、天使の羽のペンダントだよね?めちゃ可愛い!
ウィッチ:ふふっ、よく分かってんじゃん。いる?結構余ってんだよね。
魔王の娘:欲しい!!じゃあ魔界龍のイヤリングと交換!
ウィッチ:よし!のった!
セイバー:こっちも意気投合してるぅぅぅ!!
ウィッチ:娘っち、彼ピいんの?
魔王の娘:いるいる、リザードマンのね。マジイケメン。
ウィッチ:はー!魔族うらやま!私もいるけど、人間だからさぁ、魔族のスペックには勝てないよねー。
魔王の娘:えー、スペックあんま関係なくない?相性じゃん?やっぱ
ウィッチ:まぁ、そうだよね。やっぱ中身が1番的な?
セイバー:おーい、そこ2人も、恋バナに花咲かせないでくれー。
魔王:おい、今、彼氏....と言ったか?
魔王の娘:え、うん。ほら、リザードマンのサラマンいるじゃない、あの人。
魔王:なん......だと......。暗黒の森のボスにしているリザードマンか......!お前にはまだ早い!
魔王の娘:はぁ!?そんなん、私の勝手でしょ!?
セイバー:あの、ちょっと、みなさん?
ウィッチ:そーだそーだ!ウチらの恋に口出すなー!
魔王:よりによって、サラマン...アイツ、25になるんだぞ!?やめなさい、そんなやつ
モンク:そうだぞ!まだ君は未成年なのだから!危ない目に合う前にやめておきなさい!
魔王の娘:サラマンは大丈夫だから!すごく紳士でいい人なの!
ウィッチ:未成年とか関係ねぇし!恋する気持ちに恋愛とかないから!
セイバー:ねぇ、そろそろ戦闘しない?ねえ?
魔王:ダメだ!おとーさんは認めない!
魔王の娘:別に認められなくてもいい!ほっといてよ!
モンク:魔王殿は君のことを思って言っているのだぞ!危険な目にあってからじゃ遅いんだ!
ウィッチ:そういうのを経験して、女の子は強くなっていくんでしょ!?
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セイバー:うるせぇぇぇぇぇぇ!!!光り輝け!!ストレートフラッシュ!!
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魔王:ぬっ!
モンク:くっ!
ウィッチ:あっ、眩しっ!
セイバー:お前ら何しに来たの!?ねぇ!俺らは!魔王を倒しに来たの!!何、敵どうしで意気投合したり味方と敵対し合ってんの!?
モンク:む......つい......
ウィッチ:ご、ごめん。
セイバー:人間の自由を手に入れるんだろ!!だったら!魔王を倒さなきゃならないんだ!!魔王!お遊びは終わりだ!このセイバー、貴様を倒し!魔族の支配を終わらせる!覚悟しろ!
魔王:ふ......いいだろう......やれるものなら、やってみるがいい、人間よ!
セイバー:ウィッチ!頼んだ!
ウィッチ:おっけー!......ここに集え、地水火風の精霊よ。汝らの根源たる力、我ここに集約せよ。プロメテウス、ポセイドン、ガイア、ゼフュロス。轟かせ、大爆発、ビッグバン!
魔王:ぐぅっ!最大爆発魔法、か。なかなかやるではないか。
ウィッチ:ちっ、やっぱこれだけじゃだめか!
魔王:さあ、我の力を見せてやろう!闇夜の礎に目覚めしサタン、我が魔力の元、力を解き放て。全てを無に返し、全てを虚像で包みこめ。暗黒の星よ、ダークホール・ギガンテ!
セイバー:やべぇ、最大の闇魔法…!くるぞっ!
モンク:私に任せろ、うぉぉぉぉぉっっっ!精神統一!肉体強化!秘技、仁王立ちっ!
セイバー:モンクっ!
魔王:ふむ、良い守りだ。
モンク:ふっ…仲間をこの鋼の肉体で守るのが、このモンクの務めよ。
セイバー:モンク、ありがとうっ!よし、みんな、俺に力を貸してくれ!
ウィッチ:おっけー、決めてよね!
モンク:さあ、我らの力を!
セイバー:英雄の剣よ、ここに皆の力を集め、解放せよ!行くぞっ!三位一体、アルティメット・ソードっ!!!
魔王:なにっ!その強大な力は、なんだっ!?
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3人:はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
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魔王:ぐああああああああああああっ!!!
モンク:はぁ、はぁ、どうだ?
ウィッチ:はぁ、これやっぱ力持ってかれるわ…。
魔王:ぐ…ぐふっ、これほどの力を…人間が…侮って、いたようだ、な…
セイバー:さあ、最後だ!魔王!姉さんから授かりしこの魔法で終わらせてやる!太陽神アポロンよ、我にその輝きを与えたまえ、闇を滅ぼし、光で全てを照らせ、サンシャイン・グラマラス!
魔王:くっ…ここ、まで、か。
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魔王の娘:詠唱略、フェアリー・パラディナー!
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セイバー:なにっ!?
魔王:はっ!?魔法が…消えた?
魔王の娘:ごめんなさい、おとーさんを倒されるわけにはいかないの。悪いけど、こっちも本気でいかせてもらうから。
ウィッチ:うそ、でしょ?あの魔法…全ての魔法攻撃を防ぐと言われている伝説の防御魔法。存在、したんだ…。
モンク:なん、だと…?じゃあ、魔法攻撃は効かないということか…?
セイバー:くっ、だが!そんな伝説級の魔法なら、多様はできない、隙も大きいはずだ!今のうちに、次の攻撃を…。
魔王の娘:魔族をなめないでね、人間。……詠唱略、ビッグバン・テラ。
ウィッチ:きゃあああああ!
モンク:ぐああああああ!
セイバー:うわああああああああああああああ!
魔王の娘:……(聞こえないくらいの声で"スターシスフォース"とつぶやく)ふぅ。
魔王:え…。人間ども、跡形もなく消し炭になったんだが。娘!その魔法はなんだ!?ビッグバンのさらに上の爆発魔法があったのか!?
魔王の娘:んー?いや、自分で作り上げた魔法だけど。ビッグバンの威力に飽きてきたから、さらにパワーアップさせてみた。
魔王:なんという…しかも詠唱破棄…。その前に最大防御魔法も使ってるし。えぇー…一体何者なの。
魔王の娘:ふふっ。魔族の頂点に立ちし魔王の娘、だけど?おとーさんの名に恥じない魔王になるって決めてるの。これでも、頑張ってるんだから。
魔王:うぬぬ。父親として、娘の成長は嬉しいのだが、娘に護られたとなると、カッコ悪いな…。複雑な心境だ…。
魔王の娘:魔王とはいえど、不老不死じゃないんだから。老いには勝てないでしょ?もう引退して、私にこのお城任せてよ。
魔王:まだお前15歳ぞ?それに、我もまだ老いには負けん。今日は少し油断したが、人間にもまだまだ負けんよ。
魔王の娘:ふぅん?ま、私もまだまだ、未熟だからねー。おとーさんには遠く及ばないよ。
魔王:いや、だいぶ強くなりすぎてて我もビックリなのだが。
魔王の娘:攻撃、はね。ほら、強力な攻撃食らったんだから、おかーさんに治してもらいなって!
魔王:お、おう。行ってくる。
魔王の娘:はーい、いってらっしゃーい。……あのね、おとーさん…私…
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セイバー:うわあっ!
モンク:ぐあっ!
ウィッチ:きゃっ!
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セイバー:…あ、あれ?なんとも、ない?
モンク:ぬ。ここ、は?
ウィッチ:ここ…私たちの村!?
セイバー:飛ばされた、のか?
ウィッチ:うん、たぶんこれは、強制転移魔法スターシスフォース…。私たちにビッグバンが当たる前にあの子がかけたんだとおもう…。
モンク:ん?つまり、あの娘に…救われた?
セイバー:おいおい、どういうことだよ!?
ウィッチ:わかんないけど…。にしても、あの子の魔力、すごかったな…。詠唱破棄って、大魔法使いが最低でも30年はかけてようやく一つの呪文に対して習得できるようなスゴワザなのに…。
モンク:そうなのか!?
セイバー:強制転移魔法も、わからないように詠唱破棄してかけたってことだよな?しかも旅立ちのこの村までってことは…相当な魔力じゃないと無理だぞ!?
ウィッチ:どーしよ、また魔王に挑んでも、勝てる気しないんだけど…。
モンク:だがしかし、本当になんであの娘は我々を生かすような真似を?
セイバー:さあ?それはわかんない。
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魔王の娘:私、やっぱり人間のことが、好きなんだよね。まだまだおとーさんみたいに、冷徹で悪虐非道にはなれないや。
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0:【完】