台本概要

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タイトル 愛しているのは君だけだ。
作者名 瀬川こゆ  (@@hiina_segawa)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 3人用台本(男1、女1、不問1) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明
誰かが見ている夢の中の話です。


※ 非商用時は連絡不要ですが、投げ銭機能のある配信媒体等で記録が残る場合はご一報と、概要欄等にクレジット表記をお願いします。

過度なアドリブ、改変、無許可での男女表記のあるキャラの性別変更は御遠慮ください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
アリス 134 不思議の国に迷い込んだ女の子。
チェシャ猫 131 アリスが出会った不思議の国の住人。
看守 不問 4 アリスが収監されている所の看守。※チェシャ猫が兼役推奨。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
チェシャ猫:嗚呼、君はまた堕ちたんだ。 チェシャ猫:ここから見えるよ。 チェシャ猫:うん、見える。 チェシャ猫:堕ちてく君がよぉく見える。 チェシャ猫:結局君は…………。 チェシャ猫:いいや、そんな事。  :  アリス(M):私はアリス!元気な女の子。 アリス(M):なんでも興味があって、 アリス(M):なんでも気になって、 アリス(M):そのせいでお母様によく怒られてしまうの。 アリス(M):今日だって白い兎が気になって、 アリス(M):追いかけたら大きな穴に落ちてしまって……。  :  0:間  :  アリス:ここはどこかしら? アリス:きっと私はまだ夢を見ているのよ。 アリス:そうに違いないわ! アリス:だってそうじゃなきゃおかしいもの。 アリス:お喋りが煩い花だとか、 アリス:嗚呼そうだ! アリス:あのシロップもクッキーも何かがおかしかったわ! アリス:だから、 チェシャ猫:(被せる)やぁ、こんにちは。 アリス:アナタはだぁれ? チェシャ猫:おやおや今日は君が聞く方だったのか。 アリス:? チェシャ猫:まぁいいや。 チェシャ猫:それは些細な事であって、 チェシャ猫:問題ですらないんだから。 アリス:アナタ独り言が多いのね? チェシャ猫:それは君には言われたくないなぁ。 アリス:あら? アリス:どうして私が独り言が多いって、 アリス:アナタは知っているのかしら? チェシャ猫:そりゃあ僕は君について、 チェシャ猫:知らない事なんてなぁんにも無いからだよ。 アリス:どうして? アリス:初対面でしょう?私達。 チェシャ猫:そうだよ。 チェシャ猫:初対面さ!僕達は。 アリス:それなのにどうして知っているの? チェシャ猫:相変わらず君は、 チェシャ猫:何故? チェシャ猫:なんで? チェシャ猫:どうして?が多い子だ。 0:アリス、ムッとする。 アリス:アナタはだぁれ?! チェシャ猫:君の方こそ誰なんだい? アリス:先に聞いたのは私よ! アリス:でも教えてあげるわ。 アリス:私はアリス! チェシャ猫:そう、なら僕はチェシャ猫。 チェシャ猫:君がアリスなら僕はチェシャ猫だよ。 アリス:どう言う事? チェシャ猫:君も僕もなんにでもなれるって事さ。 アリス:なんにでも? チェシャ猫:嗚呼、なんにでも! アリス:それなら私お姫様になりたいわ! チェシャ猫:なればいいさ。 チェシャ猫:君が望めばお姫様にでも、 チェシャ猫:なんにでもなれる筈だよ? チェシャ猫:なんにでも、ねぇ。 アリス:(不自然な間) アリス:嗚呼そうだ! アリス:こんな所で話してる場合じゃないのよ私! チェシャ猫:と、言うと? アリス:私はね、お家に帰りたいの! アリス:ここから帰る為にはどうすればいいのかしら? アリス:何か知らない?猫さん。 チェシャ猫:猫さんっっ?! チェシャ猫:あははははは! アリス:ちょっと!どうして笑うのよ! チェシャ猫:はははは、いやぁ、うん。 チェシャ猫:そうだね。 チェシャ猫:確かに君は"そう"だった! アリス:変なの! アリス:おかしな国に住んでいるから、 アリス:きっと頭もおかしくなっちゃうのよ。 チェシャ猫:と言うと君は、 チェシャ猫:自分はこの国の住人ではない、と? アリス:そうよ? チェシャ猫:どうして断言出来るんだい? アリス:えっ? チェシャ猫:君はこの国の住人じゃないと、 チェシャ猫:いったい誰がそう言ったのかな? アリス:それは勿論! アリス:……誰だったかしら? アリス:……なんだったかしら? チェシャ猫:ほぉらね。 アリス:でも私はここに住んでいないわ! チェシャ猫:でも君はアリスだろう? アリス:えぇ、そうよ! アリス:私はアリス! チェシャ猫:じゃあ君はやっぱり、 チェシャ猫:この国に住んでいないとは言えないじゃないか。 アリス:どうして? チェシャ猫:アリスだからさ。 アリス:うぅん……。 チェシャ猫:まぁいいよ。 チェシャ猫:帽子屋にはもう会ったのかい? アリス:いいえ? アリス:帽子屋のお家にはまだ行ってないの。 チェシャ猫:三月ウサギには? アリス:それもまだ。 アリス:お茶会に行けばみんな居るかしら? チェシャ猫:ふふふふ。 アリス:? チェシャ猫:ううん、こっちの話。 チェシャ猫:気にしないで。 アリス:アナタ変わってるってよく言われない? チェシャ猫:言われるよ? チェシャ猫:でも1番初めに、 チェシャ猫:僕をおかしいと言ったのは君だった。 アリス:それじゃあ、よくとは言わないわ。 チェシャ猫:よくだよ? チェシャ猫:よく1番初めに君は、 チェシャ猫:僕をおかしいと言ったんだから。 アリス:アナタきっと本を読んだ事がないのね。 チェシャ猫:どうして? アリス:本を読んでいれば、 アリス:そんなおかしな言葉は出てこないもの! チェシャ猫:だってそんな物読まなくたって、 チェシャ猫:この世界がそもそも、 チェシャ猫:創作上の産物だからねぇ。 アリス:はあ? チェシャ猫:おいで、案内してあげる。 チェシャ猫:君が気が付くまで何度でも。 アリス:意味分かんないの。  :  チェシャ猫(M):おはよう、アリス。 チェシャ猫(M):僕は今日も話しかける。 チェシャ猫(M):鏡の向こう側は楽しいかい?と。 チェシャ猫(M):人生はなんてつまらないのだろうか。 チェシャ猫(M):でも君が微笑みかけてくれる瞬間だけは、 チェシャ猫(M):僕は退屈していないのもまた事実。 チェシャ猫(M):矛盾をしているのは分かっている。 チェシャ猫(M):だって僕は楽しければ楽しいほど、 チェシャ猫(M):グチャグチャに壊したくなる。 0:一拍 チェシャ猫(M):そう言う思考回路しか出来ない生き物だから。  :  0:一拍  :  アリス:どこまで行くの? チェシャ猫:どこにでも。 アリス:何をするの? チェシャ猫:なんにでも。 アリス:はぁ……。 チェシャ猫:ん?どうしたの? チェシャ猫:疲れちゃった? アリス:いいえ、違うわ。 アリス:私お喋りは好きな方でね。 アリス:放っておかれてもずーっと話しちゃうの。 チェシャ猫:うん。 アリス:でもね、 チェシャ猫:うん? アリス:「アナタと話すのは疲れた」 チェシャ猫:だろうねぇ。 アリス:どうしてかしら? アリス:こんな事思った事なんてないのに。 チェシャ猫:そうでもないよ? チェシャ猫:君はいつでも最終的には、 チェシャ猫:僕の相手が疲れたと言うのさ。 アリス:(不自然な間) アリス:ねぇ、あれはなぁに? チェシャ猫:うん? チェシャ猫:あれはお城だよ。 チェシャ猫:ハートの女王が住んでいるんだ。 アリス:ハートの女王? アリス:女王様が居るのね! チェシャ猫:嗚呼、居るさ。 チェシャ猫:女王が居るのは当たり前だろう? チェシャ猫:何をそんなに驚いているんだい? アリス:当たり前? アリス:そうね、そうよ、当たり前だったわ。 チェシャ猫:ふふふ、少し休憩をしようか? アリス:あら、どうして? チェシャ猫:やっぱりなんだかどうしても、 チェシャ猫:君は疲れてる気がするからさ。 アリス:疲れてる? アリス:疲れてたかしら? アリス:うん、疲れてたのよ私! チェシャ猫:何に対して疲れてたの? アリス:何って……。 アリス:なんだったかしら……。 チェシャ猫:また思い出せないんだ? アリス:えぇ……そうよ。 アリス:私何に疲れたのかしら? アリス:……何に。 チェシャ猫:良い言葉を教えてあげるよ。 アリス:どんな事? チェシャ猫:全てを諦めて生きていれば、 チェシャ猫:どんな些細なことでも嬉しくなる! アリス:そんな事しなくたって、 アリス:私はいつでも楽しいわよ? チェシャ猫:本当に? アリス:えぇ。 チェシャ猫:不思議の国に来てしまっているのに? アリス:だってここは夢の中でしょう? チェシャ猫:いったい誰がそんな事を言ったんだい? アリス:それは……だって……。 チェシャ猫:ここは不思議だ、不思議の国だ。 チェシャ猫:常識はいっそ非常識なのだと、 チェシャ猫:誰もが理解している世界だよ? アリス:非常識……。 アリス:確かにそうね。 アリス:正当な言葉ほど、 アリス:腹の立つ事は無かったわ。 チェシャ猫:その調子その調子! アリス:それに、それに。 0:一拍 アリス:私は信じていて。 チェシャ猫:何を? アリス:それは! アリス:……何を信じていたのかしら。 チェシャ猫:(笑いをかみ殺す) アリス:間違った事をしたのよ。 アリス:きっと私は。 チェシャ猫:間違ってる? アリス:えぇ、そうなの。 チェシャ猫:どこがどうしてなんで! チェシャ猫:間違っていると言えるんだい? アリス:だってそれは! アリス:間違ってるって言われて……。 アリス:だから私は! アリス:……私は。 チェシャ猫:私は? アリス:………何をしたんだっけ? チェシャ猫:ふぅん、まだ駄目みたいだね。 アリス:……。 アリス:もう少し先に行ってもいいかしら? チェシャ猫:どうぞ。 チェシャ猫:君の気が済むまでどこへでも。 チェシャ猫:僕は歩くだけさ! チェシャ猫:君と2人でね。  :  アリス(M):私はアリス!元気な女の子。 アリス(M):なんでも興味があって、 アリス(M):なんでも気になって、 アリス(M):そのせいでお母様によく怒られてしまうの。 アリス(M):今日だって白い兎が気になって、 アリス(M):追いかけたら大きな穴に落ちてしまって……。  :  0:一拍  :  チェシャ猫:あれをごらん、アリス。 アリス:あれはなぁに? チェシャ猫:トランプ兵さ! チェシャ猫:正確には、 チェシャ猫:トランプ兵だったモノ、だけどねぇ。 アリス:あの人の頭はどこに行ってしまったの? チェシャ猫:たぶんハートの女王が主催の、 チェシャ猫:クロッケーのボールになったのさ。 アリス:酷い! アリス:随分残酷な事をするのね。 チェシャ猫:そんな事ないよ? チェシャ猫:ボールが無いんだから仕方ないだろう? アリス:他の物で代用すればいいじゃない! チェシャ猫:だから代用してるじゃないか。 チェシャ猫:ボールの代わりにトランプ兵の頭を。 アリス:私が言ってるのはそう言う事じゃないの! チェシャ猫:なら君がアレになればいいだろう? アリス:えっっ。 チェシャ猫:知りもしない人を哀れむくらいなんだ。 チェシャ猫:代わりになってやればいいじゃないか! アリス:それは、 チェシャ猫:君にそんな事は出来ない。 アリス:出来るかもしれないじゃない。 チェシャ猫:出来ないよ。 アリス:決め付けないで! チェシャ猫:なら今すぐあのクロッケー会場に行って、 チェシャ猫:「どうか私の頭を使ってください」 チェシャ猫:と言ってきてごらんよ? アリス:……。 チェシャ猫:出来ないだろう? アリス:えぇ……出来ないわ。 チェシャ猫:それでいいんだよ。 チェシャ猫:君はそれで。 0:一拍 アリス:はぁ、なんだか今日は、 アリス:見たくないものばかり、 アリス:見せられている気がするわ? チェシャ猫:そうなのかい? アリス:そうよ? チェシャ猫:何が見たくなかったんだい? アリス:全部よ! アリス:全部見たくなかったし、 アリス:全部知りたくなかったのよ。 チェシャ猫:君は何を見て、 チェシャ猫:何を知ってしまったのかな? アリス:えっと……。 チェシャ猫:分からない? アリス:いいえ。 アリス:分かってた筈なのよ? アリス:分かってた筈なのに、 アリス:何を分かっていたのか、が、 アリス:それが私分からないの。 チェシャ猫:少なくとも君が、 チェシャ猫:分からないんだって事を、 チェシャ猫:僕は分かっているよ。 アリス:それじゃあ分からない事は分からないままじゃない! チェシャ猫:その方がいい事だって、 チェシャ猫:時と場合によってはあるものさ。 アリス:今は? チェシャ猫:ん? アリス:今はどうなのよ? チェシャ猫:今は、そうだなぁ。 チェシャ猫:時と場合に該当するかなぁ。 アリス:はぁ……。 チェシャ猫:まぁそう哀しい顔をしないで?アリス。 アリス:でも……。 チェシャ猫:君はアリスなんだろう? アリス:えぇ、そうよ……。 アリス:私はアリス。 チェシャ猫:なら笑わなくちゃ! チェシャ猫:なんでも興味があって、 チェシャ猫:なんでも気になって、 チェシャ猫:そのせいでお母様によく怒られてしまう。 チェシャ猫:そんなアリスは笑っていなくちゃ! アリス:今は笑いたくないわ。 チェシャ猫:でも君はアリスだ。 アリス:どうして笑わなくちゃいけないの? チェシャ猫:君がアリスだからだよ。 アリス:笑いたくない! チェシャ猫:だめ。 アリス:どうしてアナタまで私がやりたくない事をさせようとするのよ! チェシャ猫:(笑いをかみ殺す) アリス:アナタはチェシャ猫なんでしょう? アリス:私はアリスよ! アリス:アナタは私が嫌がる事をしない筈なのよ! チェシャ猫:ふふふふ、そうだね? チェシャ猫:そもそも初めはそうだったよ。 チェシャ猫:ずっとず~っと、 チェシャ猫:もう思い出せないくらい初めには。 アリス:……私我慢しなくちゃいけないのよ。 チェシャ猫:耐えて耐えて、 チェシャ猫:耐えて耐えて耐えて耐えて! チェシャ猫:君はその先で何か見付けたかい? アリス:……なんにも無かったわ。 チェシャ猫:沢山の物を失ったのに、 チェシャ猫:得た物はなんにも無かった? アリス:えぇ、そうよ。 アリス:なんにも無かったの。 チェシャ猫:だから君はこの世界を捨てたんだよ。 アリス:捨ててないわ。 チェシャ猫:いいや、捨てたさ。 アリス:捨てられこっなんてないもの。 チェシャ猫:ここは君にとっては正(まさ)しく、 チェシャ猫:唯一の逃げ場所だからねぇ。 アリス:……。 チェシャ猫:でも捨てた! アリス:捨ててない。 チェシャ猫:捨てるしかなかったから捨てたんだ! アリス:捨ててない! チェシャ猫:君は少女のままでありたかった。 チェシャ猫:天真爛漫で無垢な少女のままで。 チェシャ猫:自分はなんにでもなれるんだって、 チェシャ猫:そう信じていたかった! アリス:なんにでもなれるのよ。 アリス:だって私はアリスよ。 アリス:アリスだから。 チェシャ猫:夢ばかり見て、空想が大好きで。 チェシャ猫:そんな自分を好きでいたかった。 アリス:私はアリスよ。 アリス:アリスなのよ。 チェシャ猫:でも世界は許さなかったんだ。 チェシャ猫:ここじゃないよ? チェシャ猫:この世界は君の為のもの。 チェシャ猫:アリスの為のワンダーランド! アリス:……私の為の? チェシャ猫:嗚呼、君の為に。 チェシャ猫:君自身が作ったおとぎ話さ。 アリス:……私の為の世界なんかある筈がないわ。 チェシャ猫:無いから作ったんだろう? アリス:っっ?! チェシャ猫:元々君は君が嫌いだった。 チェシャ猫:殺してしまいたくなるくらいに。 アリス:そんな事ないわ! チェシャ猫:いいや?そんな事あるんだ。 チェシャ猫:じゃなきゃ僕は生まれなかった! チェシャ猫:いつでも笑っていたいのに、 チェシャ猫:ヘラヘラヘラヘラしていたかったのに。 アリス:やめて……。 チェシャ猫:笑えなくなってしまった。 チェシャ猫:嘘吐きが嫌いなくせに、 チェシャ猫:自分自身に嘘を吐いてしまった! アリス:やめてよ! チェシャ猫:そんな君の為の僕さ!!!! 0:一拍 アリス:アナタはだぁれ。 チェシャ猫:だから僕はチェシャ猫だよ。 アリス:違うわ! アリス:チェシャ猫は私に嫌な事なんて言わないもの。 チェシャ猫:君が作ったキャラクターだから? アリス:そう、そうよ、そうなのよ。 チェシャ猫:でもね? チェシャ猫:君が忘れてしまっているだけで、 チェシャ猫:或いはもしかしたら、 チェシャ猫:忘れたフリをしているだけで。 アリス:……。 チェシャ猫:君は間違いなくこの世界を捨てたんだよ? チェシャ猫:何回も何十回も何百回も何千回も! 0:一拍 チェシャ猫:君は自分自身を捨てたんだ。 アリス:違うわ。 チェシャ猫:思い出して?アリス。 アリス:嫌よ。 チェシャ猫:少女のままでは生きられないと、 チェシャ猫:そう知った君は何をした? アリス:何もしてないわ。 チェシャ猫:自分を捨てて、世界を捨てて。 チェシャ猫:好きな物を嫌いなフリをして。 アリス:やめて、やめてよ。 チェシャ猫:嘘が嫌いな嘘吐きアリス。 アリス:違うわ。 チェシャ猫:それでも大人にはなれなかった。 チェシャ猫:それでも上手くは生きれなかった。 チェシャ猫:……。 チェシャ猫:君は何をした? アリス:私はアリスよ……アリスなのよ。 チェシャ猫:アリス? チェシャ猫:アリスアリスアリスアリス! チェシャ猫:あははははははははは! アリス:っっ?! チェシャ猫:あはははは、は、はー……。 チェシャ猫:何回だって、 チェシャ猫:その名で呼んであげるよアリス。 アリス:私はアリス……。 アリス:なんでも興味があって……。 アリス:なんでも気になって……。 チェシャ猫:でも僕の喉が枯れたって、 チェシャ猫:言い過ぎたせいで君の為の言葉が無くなったって。 アリス:そのせいでお母様に……よく怒られてしまうの。 チェシャ猫:君はほんの少しも満足する事なんて無いのにねぇ。 アリス:今日だって、白い兎が、兎が、兎が。 アリス:気になって、気になってしまって……。 アリス:私は、えっと、私は、私は、 チェシャ猫:アリス。 アリス:そうよ、私はアリス。 アリス:アリスなの。 チェシャ猫:そうさ、君はアリスだ。 アリス:私はアリス私はアリス私はアリス私はアリス私はアリス私はアリス、 チェシャ猫:聞いて、アリス。 アリス:私はアリス、アリスなの、アリスなのよ。 アリス:でもね、でも。 チェシャ猫:君がここを捨てる度に、 チェシャ猫:君が帰ってくるまで僕は待っていたよ。 アリス:私はアリスだったけどね、でもね。 チェシャ猫:泣いていないならそれでいい。 チェシャ猫:君はアリスだから。 チェシャ猫:笑っているのがアリスなんだから。 アリス:でも、アリスは、私は、 チェシャ猫:君がアリスになれない時は、 チェシャ猫:僕が君をアリスにしてあげる。 アリス:私は、 チェシャ猫:だって愛してるんだ。 チェシャ猫:君だけを。 0:一拍 アリス:人を殺してしまったのよ。  :  0:間  :  チェシャ猫(M):おはよう、アリス。 チェシャ猫(M):僕は今日も話しかける。 チェシャ猫(M):鏡の向こう側は楽しいかい?と。 チェシャ猫(M):人生はなんてつまらないのだろうか。 チェシャ猫(M):でも君が微笑みかけてくれる瞬間だけは、 チェシャ猫(M):僕は退屈していないのもまた事実。 チェシャ猫(M):矛盾をしているのは分かっている。 チェシャ猫(M):だって僕は楽しければ楽しいほど、 チェシャ猫(M):グチャグチャに壊したくなる。 0:一拍 チェシャ猫(M):そう言う思考回路しか出来ない生き物だから。  :  0:一拍  :  看守:129番。 アリス:ふふ、うふふ。 アリス:ハンプティ・ダンプティが塀に座ったぁ。 アリス:あははは、 アリス:ハンプティ・ダンプティが落っこちたぁ。 看守:129番! アリス:王様の馬と家来の全部がかかっても、 看守:129番!返事は! アリス:ハンプティ・ダンプティを、 アリス:元に戻せなかったぁあははははははは! 看守:ちっ……すっかりイカレちまってやがる。 アリス:ふふ……うふふふ……うふふふふふふ。 0:アリス笑い続ける。 0:チェシャ猫、切り替えやすいタイミングで入る。 チェシャ猫:アーリス。 アリス:うふふふふふふ。 チェシャ猫:機嫌がいいね? チェシャ猫:いい事だ。 チェシャ猫:いつもそうやって笑っていて、アリス。 アリス:ここは私の為のワンダーランドなのよぉ。 チェシャ猫:そうだよ? チェシャ猫:僕が君だけの僕であるように、 チェシャ猫:君は僕だけの君で居なくちゃね? アリス:そうね、そうよ、分かっているわ。 チェシャ猫:嗚呼、分かっているだろうとも。 チェシャ猫:そうでなくっちゃ! アリス:私、何回でも夢を見るの。 アリス:アナタが望むからよ? チェシャ猫:うん、見ていて。 チェシャ猫:ずっとず~っと僕だけを。 アリス:うふふふふ! アリス:でも、もしかしたら。 アリス:そう、もしかしたらぁ、 アリス:もうとぉぉっっくに! アリス:夢じゃないのかもしれないけれど。 チェシャ猫:アリス、ねぇアーリス。 アリス:うふ、ふふふふふ。 アリス:あははははははは! アリス:嗚呼…………死にたぁい♡ チェシャ猫:愛しているのは君だけだ。  :   :   : 

チェシャ猫:嗚呼、君はまた堕ちたんだ。 チェシャ猫:ここから見えるよ。 チェシャ猫:うん、見える。 チェシャ猫:堕ちてく君がよぉく見える。 チェシャ猫:結局君は…………。 チェシャ猫:いいや、そんな事。  :  アリス(M):私はアリス!元気な女の子。 アリス(M):なんでも興味があって、 アリス(M):なんでも気になって、 アリス(M):そのせいでお母様によく怒られてしまうの。 アリス(M):今日だって白い兎が気になって、 アリス(M):追いかけたら大きな穴に落ちてしまって……。  :  0:間  :  アリス:ここはどこかしら? アリス:きっと私はまだ夢を見ているのよ。 アリス:そうに違いないわ! アリス:だってそうじゃなきゃおかしいもの。 アリス:お喋りが煩い花だとか、 アリス:嗚呼そうだ! アリス:あのシロップもクッキーも何かがおかしかったわ! アリス:だから、 チェシャ猫:(被せる)やぁ、こんにちは。 アリス:アナタはだぁれ? チェシャ猫:おやおや今日は君が聞く方だったのか。 アリス:? チェシャ猫:まぁいいや。 チェシャ猫:それは些細な事であって、 チェシャ猫:問題ですらないんだから。 アリス:アナタ独り言が多いのね? チェシャ猫:それは君には言われたくないなぁ。 アリス:あら? アリス:どうして私が独り言が多いって、 アリス:アナタは知っているのかしら? チェシャ猫:そりゃあ僕は君について、 チェシャ猫:知らない事なんてなぁんにも無いからだよ。 アリス:どうして? アリス:初対面でしょう?私達。 チェシャ猫:そうだよ。 チェシャ猫:初対面さ!僕達は。 アリス:それなのにどうして知っているの? チェシャ猫:相変わらず君は、 チェシャ猫:何故? チェシャ猫:なんで? チェシャ猫:どうして?が多い子だ。 0:アリス、ムッとする。 アリス:アナタはだぁれ?! チェシャ猫:君の方こそ誰なんだい? アリス:先に聞いたのは私よ! アリス:でも教えてあげるわ。 アリス:私はアリス! チェシャ猫:そう、なら僕はチェシャ猫。 チェシャ猫:君がアリスなら僕はチェシャ猫だよ。 アリス:どう言う事? チェシャ猫:君も僕もなんにでもなれるって事さ。 アリス:なんにでも? チェシャ猫:嗚呼、なんにでも! アリス:それなら私お姫様になりたいわ! チェシャ猫:なればいいさ。 チェシャ猫:君が望めばお姫様にでも、 チェシャ猫:なんにでもなれる筈だよ? チェシャ猫:なんにでも、ねぇ。 アリス:(不自然な間) アリス:嗚呼そうだ! アリス:こんな所で話してる場合じゃないのよ私! チェシャ猫:と、言うと? アリス:私はね、お家に帰りたいの! アリス:ここから帰る為にはどうすればいいのかしら? アリス:何か知らない?猫さん。 チェシャ猫:猫さんっっ?! チェシャ猫:あははははは! アリス:ちょっと!どうして笑うのよ! チェシャ猫:はははは、いやぁ、うん。 チェシャ猫:そうだね。 チェシャ猫:確かに君は"そう"だった! アリス:変なの! アリス:おかしな国に住んでいるから、 アリス:きっと頭もおかしくなっちゃうのよ。 チェシャ猫:と言うと君は、 チェシャ猫:自分はこの国の住人ではない、と? アリス:そうよ? チェシャ猫:どうして断言出来るんだい? アリス:えっ? チェシャ猫:君はこの国の住人じゃないと、 チェシャ猫:いったい誰がそう言ったのかな? アリス:それは勿論! アリス:……誰だったかしら? アリス:……なんだったかしら? チェシャ猫:ほぉらね。 アリス:でも私はここに住んでいないわ! チェシャ猫:でも君はアリスだろう? アリス:えぇ、そうよ! アリス:私はアリス! チェシャ猫:じゃあ君はやっぱり、 チェシャ猫:この国に住んでいないとは言えないじゃないか。 アリス:どうして? チェシャ猫:アリスだからさ。 アリス:うぅん……。 チェシャ猫:まぁいいよ。 チェシャ猫:帽子屋にはもう会ったのかい? アリス:いいえ? アリス:帽子屋のお家にはまだ行ってないの。 チェシャ猫:三月ウサギには? アリス:それもまだ。 アリス:お茶会に行けばみんな居るかしら? チェシャ猫:ふふふふ。 アリス:? チェシャ猫:ううん、こっちの話。 チェシャ猫:気にしないで。 アリス:アナタ変わってるってよく言われない? チェシャ猫:言われるよ? チェシャ猫:でも1番初めに、 チェシャ猫:僕をおかしいと言ったのは君だった。 アリス:それじゃあ、よくとは言わないわ。 チェシャ猫:よくだよ? チェシャ猫:よく1番初めに君は、 チェシャ猫:僕をおかしいと言ったんだから。 アリス:アナタきっと本を読んだ事がないのね。 チェシャ猫:どうして? アリス:本を読んでいれば、 アリス:そんなおかしな言葉は出てこないもの! チェシャ猫:だってそんな物読まなくたって、 チェシャ猫:この世界がそもそも、 チェシャ猫:創作上の産物だからねぇ。 アリス:はあ? チェシャ猫:おいで、案内してあげる。 チェシャ猫:君が気が付くまで何度でも。 アリス:意味分かんないの。  :  チェシャ猫(M):おはよう、アリス。 チェシャ猫(M):僕は今日も話しかける。 チェシャ猫(M):鏡の向こう側は楽しいかい?と。 チェシャ猫(M):人生はなんてつまらないのだろうか。 チェシャ猫(M):でも君が微笑みかけてくれる瞬間だけは、 チェシャ猫(M):僕は退屈していないのもまた事実。 チェシャ猫(M):矛盾をしているのは分かっている。 チェシャ猫(M):だって僕は楽しければ楽しいほど、 チェシャ猫(M):グチャグチャに壊したくなる。 0:一拍 チェシャ猫(M):そう言う思考回路しか出来ない生き物だから。  :  0:一拍  :  アリス:どこまで行くの? チェシャ猫:どこにでも。 アリス:何をするの? チェシャ猫:なんにでも。 アリス:はぁ……。 チェシャ猫:ん?どうしたの? チェシャ猫:疲れちゃった? アリス:いいえ、違うわ。 アリス:私お喋りは好きな方でね。 アリス:放っておかれてもずーっと話しちゃうの。 チェシャ猫:うん。 アリス:でもね、 チェシャ猫:うん? アリス:「アナタと話すのは疲れた」 チェシャ猫:だろうねぇ。 アリス:どうしてかしら? アリス:こんな事思った事なんてないのに。 チェシャ猫:そうでもないよ? チェシャ猫:君はいつでも最終的には、 チェシャ猫:僕の相手が疲れたと言うのさ。 アリス:(不自然な間) アリス:ねぇ、あれはなぁに? チェシャ猫:うん? チェシャ猫:あれはお城だよ。 チェシャ猫:ハートの女王が住んでいるんだ。 アリス:ハートの女王? アリス:女王様が居るのね! チェシャ猫:嗚呼、居るさ。 チェシャ猫:女王が居るのは当たり前だろう? チェシャ猫:何をそんなに驚いているんだい? アリス:当たり前? アリス:そうね、そうよ、当たり前だったわ。 チェシャ猫:ふふふ、少し休憩をしようか? アリス:あら、どうして? チェシャ猫:やっぱりなんだかどうしても、 チェシャ猫:君は疲れてる気がするからさ。 アリス:疲れてる? アリス:疲れてたかしら? アリス:うん、疲れてたのよ私! チェシャ猫:何に対して疲れてたの? アリス:何って……。 アリス:なんだったかしら……。 チェシャ猫:また思い出せないんだ? アリス:えぇ……そうよ。 アリス:私何に疲れたのかしら? アリス:……何に。 チェシャ猫:良い言葉を教えてあげるよ。 アリス:どんな事? チェシャ猫:全てを諦めて生きていれば、 チェシャ猫:どんな些細なことでも嬉しくなる! アリス:そんな事しなくたって、 アリス:私はいつでも楽しいわよ? チェシャ猫:本当に? アリス:えぇ。 チェシャ猫:不思議の国に来てしまっているのに? アリス:だってここは夢の中でしょう? チェシャ猫:いったい誰がそんな事を言ったんだい? アリス:それは……だって……。 チェシャ猫:ここは不思議だ、不思議の国だ。 チェシャ猫:常識はいっそ非常識なのだと、 チェシャ猫:誰もが理解している世界だよ? アリス:非常識……。 アリス:確かにそうね。 アリス:正当な言葉ほど、 アリス:腹の立つ事は無かったわ。 チェシャ猫:その調子その調子! アリス:それに、それに。 0:一拍 アリス:私は信じていて。 チェシャ猫:何を? アリス:それは! アリス:……何を信じていたのかしら。 チェシャ猫:(笑いをかみ殺す) アリス:間違った事をしたのよ。 アリス:きっと私は。 チェシャ猫:間違ってる? アリス:えぇ、そうなの。 チェシャ猫:どこがどうしてなんで! チェシャ猫:間違っていると言えるんだい? アリス:だってそれは! アリス:間違ってるって言われて……。 アリス:だから私は! アリス:……私は。 チェシャ猫:私は? アリス:………何をしたんだっけ? チェシャ猫:ふぅん、まだ駄目みたいだね。 アリス:……。 アリス:もう少し先に行ってもいいかしら? チェシャ猫:どうぞ。 チェシャ猫:君の気が済むまでどこへでも。 チェシャ猫:僕は歩くだけさ! チェシャ猫:君と2人でね。  :  アリス(M):私はアリス!元気な女の子。 アリス(M):なんでも興味があって、 アリス(M):なんでも気になって、 アリス(M):そのせいでお母様によく怒られてしまうの。 アリス(M):今日だって白い兎が気になって、 アリス(M):追いかけたら大きな穴に落ちてしまって……。  :  0:一拍  :  チェシャ猫:あれをごらん、アリス。 アリス:あれはなぁに? チェシャ猫:トランプ兵さ! チェシャ猫:正確には、 チェシャ猫:トランプ兵だったモノ、だけどねぇ。 アリス:あの人の頭はどこに行ってしまったの? チェシャ猫:たぶんハートの女王が主催の、 チェシャ猫:クロッケーのボールになったのさ。 アリス:酷い! アリス:随分残酷な事をするのね。 チェシャ猫:そんな事ないよ? チェシャ猫:ボールが無いんだから仕方ないだろう? アリス:他の物で代用すればいいじゃない! チェシャ猫:だから代用してるじゃないか。 チェシャ猫:ボールの代わりにトランプ兵の頭を。 アリス:私が言ってるのはそう言う事じゃないの! チェシャ猫:なら君がアレになればいいだろう? アリス:えっっ。 チェシャ猫:知りもしない人を哀れむくらいなんだ。 チェシャ猫:代わりになってやればいいじゃないか! アリス:それは、 チェシャ猫:君にそんな事は出来ない。 アリス:出来るかもしれないじゃない。 チェシャ猫:出来ないよ。 アリス:決め付けないで! チェシャ猫:なら今すぐあのクロッケー会場に行って、 チェシャ猫:「どうか私の頭を使ってください」 チェシャ猫:と言ってきてごらんよ? アリス:……。 チェシャ猫:出来ないだろう? アリス:えぇ……出来ないわ。 チェシャ猫:それでいいんだよ。 チェシャ猫:君はそれで。 0:一拍 アリス:はぁ、なんだか今日は、 アリス:見たくないものばかり、 アリス:見せられている気がするわ? チェシャ猫:そうなのかい? アリス:そうよ? チェシャ猫:何が見たくなかったんだい? アリス:全部よ! アリス:全部見たくなかったし、 アリス:全部知りたくなかったのよ。 チェシャ猫:君は何を見て、 チェシャ猫:何を知ってしまったのかな? アリス:えっと……。 チェシャ猫:分からない? アリス:いいえ。 アリス:分かってた筈なのよ? アリス:分かってた筈なのに、 アリス:何を分かっていたのか、が、 アリス:それが私分からないの。 チェシャ猫:少なくとも君が、 チェシャ猫:分からないんだって事を、 チェシャ猫:僕は分かっているよ。 アリス:それじゃあ分からない事は分からないままじゃない! チェシャ猫:その方がいい事だって、 チェシャ猫:時と場合によってはあるものさ。 アリス:今は? チェシャ猫:ん? アリス:今はどうなのよ? チェシャ猫:今は、そうだなぁ。 チェシャ猫:時と場合に該当するかなぁ。 アリス:はぁ……。 チェシャ猫:まぁそう哀しい顔をしないで?アリス。 アリス:でも……。 チェシャ猫:君はアリスなんだろう? アリス:えぇ、そうよ……。 アリス:私はアリス。 チェシャ猫:なら笑わなくちゃ! チェシャ猫:なんでも興味があって、 チェシャ猫:なんでも気になって、 チェシャ猫:そのせいでお母様によく怒られてしまう。 チェシャ猫:そんなアリスは笑っていなくちゃ! アリス:今は笑いたくないわ。 チェシャ猫:でも君はアリスだ。 アリス:どうして笑わなくちゃいけないの? チェシャ猫:君がアリスだからだよ。 アリス:笑いたくない! チェシャ猫:だめ。 アリス:どうしてアナタまで私がやりたくない事をさせようとするのよ! チェシャ猫:(笑いをかみ殺す) アリス:アナタはチェシャ猫なんでしょう? アリス:私はアリスよ! アリス:アナタは私が嫌がる事をしない筈なのよ! チェシャ猫:ふふふふ、そうだね? チェシャ猫:そもそも初めはそうだったよ。 チェシャ猫:ずっとず~っと、 チェシャ猫:もう思い出せないくらい初めには。 アリス:……私我慢しなくちゃいけないのよ。 チェシャ猫:耐えて耐えて、 チェシャ猫:耐えて耐えて耐えて耐えて! チェシャ猫:君はその先で何か見付けたかい? アリス:……なんにも無かったわ。 チェシャ猫:沢山の物を失ったのに、 チェシャ猫:得た物はなんにも無かった? アリス:えぇ、そうよ。 アリス:なんにも無かったの。 チェシャ猫:だから君はこの世界を捨てたんだよ。 アリス:捨ててないわ。 チェシャ猫:いいや、捨てたさ。 アリス:捨てられこっなんてないもの。 チェシャ猫:ここは君にとっては正(まさ)しく、 チェシャ猫:唯一の逃げ場所だからねぇ。 アリス:……。 チェシャ猫:でも捨てた! アリス:捨ててない。 チェシャ猫:捨てるしかなかったから捨てたんだ! アリス:捨ててない! チェシャ猫:君は少女のままでありたかった。 チェシャ猫:天真爛漫で無垢な少女のままで。 チェシャ猫:自分はなんにでもなれるんだって、 チェシャ猫:そう信じていたかった! アリス:なんにでもなれるのよ。 アリス:だって私はアリスよ。 アリス:アリスだから。 チェシャ猫:夢ばかり見て、空想が大好きで。 チェシャ猫:そんな自分を好きでいたかった。 アリス:私はアリスよ。 アリス:アリスなのよ。 チェシャ猫:でも世界は許さなかったんだ。 チェシャ猫:ここじゃないよ? チェシャ猫:この世界は君の為のもの。 チェシャ猫:アリスの為のワンダーランド! アリス:……私の為の? チェシャ猫:嗚呼、君の為に。 チェシャ猫:君自身が作ったおとぎ話さ。 アリス:……私の為の世界なんかある筈がないわ。 チェシャ猫:無いから作ったんだろう? アリス:っっ?! チェシャ猫:元々君は君が嫌いだった。 チェシャ猫:殺してしまいたくなるくらいに。 アリス:そんな事ないわ! チェシャ猫:いいや?そんな事あるんだ。 チェシャ猫:じゃなきゃ僕は生まれなかった! チェシャ猫:いつでも笑っていたいのに、 チェシャ猫:ヘラヘラヘラヘラしていたかったのに。 アリス:やめて……。 チェシャ猫:笑えなくなってしまった。 チェシャ猫:嘘吐きが嫌いなくせに、 チェシャ猫:自分自身に嘘を吐いてしまった! アリス:やめてよ! チェシャ猫:そんな君の為の僕さ!!!! 0:一拍 アリス:アナタはだぁれ。 チェシャ猫:だから僕はチェシャ猫だよ。 アリス:違うわ! アリス:チェシャ猫は私に嫌な事なんて言わないもの。 チェシャ猫:君が作ったキャラクターだから? アリス:そう、そうよ、そうなのよ。 チェシャ猫:でもね? チェシャ猫:君が忘れてしまっているだけで、 チェシャ猫:或いはもしかしたら、 チェシャ猫:忘れたフリをしているだけで。 アリス:……。 チェシャ猫:君は間違いなくこの世界を捨てたんだよ? チェシャ猫:何回も何十回も何百回も何千回も! 0:一拍 チェシャ猫:君は自分自身を捨てたんだ。 アリス:違うわ。 チェシャ猫:思い出して?アリス。 アリス:嫌よ。 チェシャ猫:少女のままでは生きられないと、 チェシャ猫:そう知った君は何をした? アリス:何もしてないわ。 チェシャ猫:自分を捨てて、世界を捨てて。 チェシャ猫:好きな物を嫌いなフリをして。 アリス:やめて、やめてよ。 チェシャ猫:嘘が嫌いな嘘吐きアリス。 アリス:違うわ。 チェシャ猫:それでも大人にはなれなかった。 チェシャ猫:それでも上手くは生きれなかった。 チェシャ猫:……。 チェシャ猫:君は何をした? アリス:私はアリスよ……アリスなのよ。 チェシャ猫:アリス? チェシャ猫:アリスアリスアリスアリス! チェシャ猫:あははははははははは! アリス:っっ?! チェシャ猫:あはははは、は、はー……。 チェシャ猫:何回だって、 チェシャ猫:その名で呼んであげるよアリス。 アリス:私はアリス……。 アリス:なんでも興味があって……。 アリス:なんでも気になって……。 チェシャ猫:でも僕の喉が枯れたって、 チェシャ猫:言い過ぎたせいで君の為の言葉が無くなったって。 アリス:そのせいでお母様に……よく怒られてしまうの。 チェシャ猫:君はほんの少しも満足する事なんて無いのにねぇ。 アリス:今日だって、白い兎が、兎が、兎が。 アリス:気になって、気になってしまって……。 アリス:私は、えっと、私は、私は、 チェシャ猫:アリス。 アリス:そうよ、私はアリス。 アリス:アリスなの。 チェシャ猫:そうさ、君はアリスだ。 アリス:私はアリス私はアリス私はアリス私はアリス私はアリス私はアリス、 チェシャ猫:聞いて、アリス。 アリス:私はアリス、アリスなの、アリスなのよ。 アリス:でもね、でも。 チェシャ猫:君がここを捨てる度に、 チェシャ猫:君が帰ってくるまで僕は待っていたよ。 アリス:私はアリスだったけどね、でもね。 チェシャ猫:泣いていないならそれでいい。 チェシャ猫:君はアリスだから。 チェシャ猫:笑っているのがアリスなんだから。 アリス:でも、アリスは、私は、 チェシャ猫:君がアリスになれない時は、 チェシャ猫:僕が君をアリスにしてあげる。 アリス:私は、 チェシャ猫:だって愛してるんだ。 チェシャ猫:君だけを。 0:一拍 アリス:人を殺してしまったのよ。  :  0:間  :  チェシャ猫(M):おはよう、アリス。 チェシャ猫(M):僕は今日も話しかける。 チェシャ猫(M):鏡の向こう側は楽しいかい?と。 チェシャ猫(M):人生はなんてつまらないのだろうか。 チェシャ猫(M):でも君が微笑みかけてくれる瞬間だけは、 チェシャ猫(M):僕は退屈していないのもまた事実。 チェシャ猫(M):矛盾をしているのは分かっている。 チェシャ猫(M):だって僕は楽しければ楽しいほど、 チェシャ猫(M):グチャグチャに壊したくなる。 0:一拍 チェシャ猫(M):そう言う思考回路しか出来ない生き物だから。  :  0:一拍  :  看守:129番。 アリス:ふふ、うふふ。 アリス:ハンプティ・ダンプティが塀に座ったぁ。 アリス:あははは、 アリス:ハンプティ・ダンプティが落っこちたぁ。 看守:129番! アリス:王様の馬と家来の全部がかかっても、 看守:129番!返事は! アリス:ハンプティ・ダンプティを、 アリス:元に戻せなかったぁあははははははは! 看守:ちっ……すっかりイカレちまってやがる。 アリス:ふふ……うふふふ……うふふふふふふ。 0:アリス笑い続ける。 0:チェシャ猫、切り替えやすいタイミングで入る。 チェシャ猫:アーリス。 アリス:うふふふふふふ。 チェシャ猫:機嫌がいいね? チェシャ猫:いい事だ。 チェシャ猫:いつもそうやって笑っていて、アリス。 アリス:ここは私の為のワンダーランドなのよぉ。 チェシャ猫:そうだよ? チェシャ猫:僕が君だけの僕であるように、 チェシャ猫:君は僕だけの君で居なくちゃね? アリス:そうね、そうよ、分かっているわ。 チェシャ猫:嗚呼、分かっているだろうとも。 チェシャ猫:そうでなくっちゃ! アリス:私、何回でも夢を見るの。 アリス:アナタが望むからよ? チェシャ猫:うん、見ていて。 チェシャ猫:ずっとず~っと僕だけを。 アリス:うふふふふ! アリス:でも、もしかしたら。 アリス:そう、もしかしたらぁ、 アリス:もうとぉぉっっくに! アリス:夢じゃないのかもしれないけれど。 チェシャ猫:アリス、ねぇアーリス。 アリス:うふ、ふふふふふ。 アリス:あははははははは! アリス:嗚呼…………死にたぁい♡ チェシャ猫:愛しているのは君だけだ。  :   :   :