台本概要

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タイトル 鹿野財閥直営フラワー探偵事務所
作者名 VAL  (@bakemonohouse)
ジャンル コメディ
演者人数 3人用台本(男1、女2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 短めのコメディです。
特に制限はありませんので
楽しんでくださいまし。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
61 鹿野花(しかのはな)お嬢様
ラピス 53 柊ラピス(ひいらぎらぴす)メイド
桃谷 75 桃谷次郎(ももだにじろう)警部
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
花:ふぅ……今日もお客様はいらっしゃらないのかしら。 ラピス:お嬢様、そんなに気を落とさないでください。先日も依頼を完璧にこなしたではありませんか。 花:それはいつの話をしているのかしら? ラピス:2週間ほど前ですね。あの時のお嬢様は立派でした! 花:ラピス。冗談はよして頂戴。あれは依頼とは呼べないわ。 ラピス:何をおっしゃいますか。あの子供はお嬢様が居なければ一生、お母様と会うことが叶わなかったかもしれないのです。お嬢様があの子供の未来を救ったのですよ。 花:本当? ラピス:もちろんです! 花:えへへ。じゃあこれからも頑張らないとですわね! ラピス:その意気です!お嬢様! 花:でも私、もっと事件を解決したいのよ。 ラピス:事件……ですか? 花:そうよ!3億円強奪事件、パラコート連続毒殺事件、八王子スーパーナンペイ事件。こんな事件を解決に導きたいのです! ラピス:お嬢様……それは警察でも未解決の超難解事件ですよ。いくらお嬢様といえど…… 花:やっぱり、私では人々の役に立てないのかしら…… ラピス:そんなことはありません!きっとお嬢様ならどんな事件も解決に導くことができます! 花:……でも、依頼が来ないわ。 ラピス:お嬢様…… ラピス:(こうなったら仕方ないわね……またあの男を頼るしか無いわ。) 花:ラピス、どうかしまして? ラピス:いえ!何もございませんよ!少しお電話をしてきますね。 花:ええ。わかったわ。 ラピス:では。失礼致します。 0:どこかに電話をかけるラピス ラピス:今すぐ事務所近くの喫茶店まで来て。後悔はさせないわ。よろしく。 0:喫茶店にて── 桃谷:おい、なんなんだよ。急に呼びつけやがって。俺は今じゃ警部だぞ?そんなおいそれと呼ばれて行ける立場じゃ無いんだわ。 ラピス:モモジローお座り。 桃谷:俺は犬か! ラピス:名実共に国の犬には変わりないでしょ。 桃谷:だとして、お前に何の関係があるって言うんだよ。 ラピス:鹿野財閥は1つの国と言っても過言では無いわ。 桃谷:流石に過言だな。 ラピス:ところで桃谷警部。あなたに頼みがあるのよ。 桃谷:どうせろくでもない話── ラピス:難事件を寄越しなさい。今すぐ。 桃谷:……アホか!そんな要望を飲む警察がどこの国にいるんだよ! ラピス:ここにいるじゃない。 桃谷:あのなあ?確かにお前とは腐れ縁だが、そこまでやってやる義理は無いぞ。 ラピス:本当に? 桃谷:な、何だよ。 ラピス:あなた。借金があるわよね? 桃谷:……調べたのか。 ラピス:ええ。交渉にたくさんの材料を用意するのは当たり前よ。随分たくさんの所から借りているのね。 桃谷:……だが、それと何の関係が── ラピス:全ての債権を鹿野金融が買い取ったわ。事実上私があなたにお金を貸してるというわけ。 桃谷:これは脅迫だぞ? ラピス:違うわよ。今回の働きに応じて減額。もしくは完済扱いにしてあげる提案をしてるの。 桃谷:…… ラピス:どうするの? 桃谷:……明日、11時に事務所に行く。 ラピス:そう。良い返事で助かるわ。これからもよろしく。 桃谷:……糞女狐が。 0:翌日、事務所── 花:今日こそ誰か来てくれるかしら。 ラピス:ええ!お嬢様。今日こそはきっといらっしゃいますよ! 花:でもここ最近ずっと誰も来てくださいませんわ…… 桃谷:失礼するぞ。 花:あ、刑事さん。 ラピス:ほら!お嬢様来ましたわよ!くたびれた男ですけど客は客です! 花:ラピス、お客様にそんな言い方はいけませんわ。 桃谷:そうだそうだ。大体お前が―― ラピス:あ? 桃谷:……実は嬢ちゃんに解いて欲しい難事件があるんだ。 花:難事件ですか!?どんな事件なんです!?刑事さん!! 桃谷:ちょ、ちょっと落ち着けよ。それに俺は今、警部だ。 花:そうなんですか!?凄いじゃないですか!それでどんな事件ですか!? 桃谷:興味ねーのな……まあ言ってみれば殺人事件だ。 0:花の雰囲気が変わる。 花:殺人ですか。 桃谷:お、おう……大丈夫か? 花:ええ。続けてくださいますか? 桃谷:……わかった。ここの近くのアパートで30代の男性が包丁による刺殺体で見つかったんだ。男性はかなり鍛えていた男性なんだが、争った形跡が見られないし、凶器から指紋も検出されなかった。そして何より、完全な密室だ。 花:密室殺人……それは大変ですね。 桃谷:まあな。無理にとは言わん。他にもたくさんあるからな。20歳の男女4人が行方不明だとか、町の外れに住む怪しい5人組の捜査だとかな。 花:お受けしますわ。 桃谷:え、どれをだ? 花:もちろん密室殺人でございます。 桃谷:本当か? 花:ええ!ようやく私の憧れた明智小五郎様に一歩近づきましたわ! 桃谷:てっきりホームズだと思ってたよ。 花:ホームズ様も素敵ですが、小五郎様が至高でございます! 桃谷:そ、そうか。俺はそっちの方はあんまり知らなくてな。 花:そうなのですね。きっとモモジロー警部も中村警部のようになれると思いましたのに。 桃谷:……桃谷な。 花:あら、失礼致しましたわ。いつもラピスからそう伺っているものでして。 桃谷:ああ。そうだと思ったよ。 花:では私、少し用意をしてきます。 桃谷:え? 花:今から事件現場に向かうのでしょう?善は急げですわ! 0:花、別室へ捌ける。 ラピス:……意外ね。 桃谷:何がだ? ラピス:どうしてお嬢様にあんな事件を持ってきたの? 桃谷:お前が言ったんだろ?難事件を寄越せって。 ラピス:そうよ。でもいつもは違うじゃない。猫探しとか人探しばかりで。 桃谷:警部に上がると多少自由が効くんだ。それに、お嬢ちゃんは確かに世間知らずだが聡明だからな。解決できずとも何かのヒントはきっと貰える。俺にも利益はちゃんとあるんだ。 ラピス:ふふ。 桃谷:何だ?笑うところあったか? ラピス:いいえ。お嬢様をちゃんと見てくれる大人がいて嬉しかっただけよ。 花:お待たせしました!! 桃谷:そ、その格好で行くのか? 花:もちろんです!木綿の着物は探偵の正装ですから! 桃谷:あまり目立つ格好は避けた方が……まだ犯人は捕まえれてない―― ラピス:大丈夫よ。お嬢様に近づく怪しい者は私が…… 桃谷:事件が増えないことを祈ってるよ…… 花:では行きましょう!モモジロー警部! 桃谷:桃谷だ!! 0:事件現場に着く3人。 桃谷:ここだ。 ラピス:本当に近いのね。それにしてはニュースになってないけど。 桃谷:殺人の証拠がまだ不十分だからな。じゃあ2人とも靴のカバーを。 花:あ、私は自前の物がありますので。 桃谷:……そうか。準備出来たら入るぞ。 0:アパートの一室に移動。 桃谷:一応、鑑識は終わってるが、あまり色々触らないように頼むぞ。 花:わかりました! ラピス:…… 桃谷:どうかしたか? ラピス:ん?いいえ、もし何も見つからなかったらどうやってお嬢様を慰めようか考えてるだけよ。 桃谷:過保護すぎやしねえか? ラピス:探偵業はね。お嬢様が初めて言ったワガママなの。せめて悪い思い出にはなって欲しく無いわ。 桃谷:失敗も嫌な思い出も、大人になるには必要な事だ。 ラピス:人一倍知ってるわよ。お嬢様は。 桃谷:かもな。一般市民の俺には想像も出来ないがね。 花:警部さん。少しいいですか? 桃谷:お、どうした? 花:血痕を見る限り、キッチン辺りで刺されたんですよね? 桃谷:ああ。そうだと思うぞ。 花:そこからリビングの途中まで血痕が続いています。その場所で息絶えた……という訳ですか? 桃谷:そうだ。死因は失血死。死亡推定時刻は朝7時。リビングにはスマホが置いてあった。警察を呼ぼうとしたんだと思うが…… ラピス:それを犯人はただ見つめていたのかしら。 桃谷:さあな。犯人像が全くつかめん。 花:完全な密室だったんですよね? 桃谷:ああ。入口はチェーンまでかけられていたし、窓も全て鍵がかかっていた。隣や上下の部屋からも行き来することは出来ない。 花:誰が遺体を発見したんですか? 桃谷:ここの大家だ。警官と一緒にな。友人から通報があったらしい。連絡がつかないから家を調べてくれとな。 花:大家……友人…… ラピス:鍵を持ってるなら大家が1番怪しいけど……チェーンは無理よね。 花:その御友人の方はどんな方なのでしょうか。 桃谷:ん?あー趣味仲間らしいぞ。 花:どんな趣味ですか? 桃谷:確か……ボルなんとか言ってたような…… ラピス:ボルダリングかしら。 桃谷:おお!それだ!……ボルダリングって何だ? 花:最低限の荷物で岩壁や人口の壁を登るスポーツです。……なるほど。 桃谷:何かわかったか? 花:まだです。……キッチンの床に窪みがありますが、それは? 桃谷:ん?何か落としただけじゃ…… 花:ラピス。ここの男性の通院記録等は分かるかしら。 ラピス:既に調べておりますわ! 桃谷:お前いつの間に…… 花:眼科の通院記録はある? ラピス:ここに! 花:……これで繋がったわ。 桃谷:本当か!?犯人は誰なんだ? 花:犯人はいません。 桃谷:……は? 花:これは事故です。 桃谷:お嬢ちゃん。いくら鍛えてる男でも自分で刺すのは難しいぞ。 花:刺したのではないんです。 桃谷:どういうことだ? 花:キッチンの窪み。あれは転倒した際についたものだと思います。凶器の包丁の柄とピッタリはまると思いますよ。 桃谷:転倒した拍子に自分の下に包丁が入ったのか…… 花:眼科の記録を見るに、彼は相当目が悪かったでしょう。朝ということもあり眼鏡を忘れていたのかもしれません。朝食を作ろうとしたけどよく見えなかったのでしょう。それで取りにいこうとした。包丁を手にしたままで。 桃谷:それは無い。包丁から指紋が出なかったんだぞ。 ラピス:ボルダリングのせいよ。早い人なら数週間で指紋が消えてしまうの。 花:そうです。これは悲しい事故です。だから犯人はいません。 桃谷:なるほど……確かにそれなら辻褄が合う。ちょっと本部に戻っても構わないか!? 花:はい!間違っていたらすみません。 桃谷:いいや!俺たちは全く手がつけれなかった。どちらにせよ進展はありそうだ!ありがとう! ラピス:じゃあ私たちは帰りましょうかお嬢様。 花:そうね!今日は美味しいケーキを食べましょう! ラピス:すぐ手配いたしますわ! 桃谷:また明日、事務所に行かせてもらう。報告も兼ねてな。 花:はい!お待ちしております。 0:翌日、事務所。 ラピス:昨日はお疲れ様でした。お嬢様。 花:大丈夫よ。これでまた1歩、明智小五郎様に近づいた気がするの。 桃谷:邪魔するぞ! ラピス:邪魔するなら帰りなさい。 桃谷:はいよー!……じゃないんだよ! 花:これがノリツッコミ……初めて見ましたわ! 桃谷:あー……お喜びのところ悪いが、昨日の話をしにきたぞ。 花:……どうでしたか? 桃谷:全くその通りだった!お嬢ちゃんの推理は完璧だったよ! 花:本当ですか!? ラピス:良かったですね!お嬢様!名探偵への大躍進です! 花:ええ!待っていてくださいまし、小五郎様…… 桃谷:……架空の人物なんだけどなあ。 ラピス:今回は世話になったわ。ありがとう。 桃谷:お互い様だ。俺も助かった。 ラピス:またお願いするわね。 桃谷:やめてくれ。俺の立場が―― ラピス:駅前のパチンコ屋。指定台の情報が回ってきたのだけれど…… 桃谷:検討しておく。 花:またいつでも依頼お待ちしてますね!モモジロー警部! 桃谷:ふっ……桃谷だ!! 0:fin...

花:ふぅ……今日もお客様はいらっしゃらないのかしら。 ラピス:お嬢様、そんなに気を落とさないでください。先日も依頼を完璧にこなしたではありませんか。 花:それはいつの話をしているのかしら? ラピス:2週間ほど前ですね。あの時のお嬢様は立派でした! 花:ラピス。冗談はよして頂戴。あれは依頼とは呼べないわ。 ラピス:何をおっしゃいますか。あの子供はお嬢様が居なければ一生、お母様と会うことが叶わなかったかもしれないのです。お嬢様があの子供の未来を救ったのですよ。 花:本当? ラピス:もちろんです! 花:えへへ。じゃあこれからも頑張らないとですわね! ラピス:その意気です!お嬢様! 花:でも私、もっと事件を解決したいのよ。 ラピス:事件……ですか? 花:そうよ!3億円強奪事件、パラコート連続毒殺事件、八王子スーパーナンペイ事件。こんな事件を解決に導きたいのです! ラピス:お嬢様……それは警察でも未解決の超難解事件ですよ。いくらお嬢様といえど…… 花:やっぱり、私では人々の役に立てないのかしら…… ラピス:そんなことはありません!きっとお嬢様ならどんな事件も解決に導くことができます! 花:……でも、依頼が来ないわ。 ラピス:お嬢様…… ラピス:(こうなったら仕方ないわね……またあの男を頼るしか無いわ。) 花:ラピス、どうかしまして? ラピス:いえ!何もございませんよ!少しお電話をしてきますね。 花:ええ。わかったわ。 ラピス:では。失礼致します。 0:どこかに電話をかけるラピス ラピス:今すぐ事務所近くの喫茶店まで来て。後悔はさせないわ。よろしく。 0:喫茶店にて── 桃谷:おい、なんなんだよ。急に呼びつけやがって。俺は今じゃ警部だぞ?そんなおいそれと呼ばれて行ける立場じゃ無いんだわ。 ラピス:モモジローお座り。 桃谷:俺は犬か! ラピス:名実共に国の犬には変わりないでしょ。 桃谷:だとして、お前に何の関係があるって言うんだよ。 ラピス:鹿野財閥は1つの国と言っても過言では無いわ。 桃谷:流石に過言だな。 ラピス:ところで桃谷警部。あなたに頼みがあるのよ。 桃谷:どうせろくでもない話── ラピス:難事件を寄越しなさい。今すぐ。 桃谷:……アホか!そんな要望を飲む警察がどこの国にいるんだよ! ラピス:ここにいるじゃない。 桃谷:あのなあ?確かにお前とは腐れ縁だが、そこまでやってやる義理は無いぞ。 ラピス:本当に? 桃谷:な、何だよ。 ラピス:あなた。借金があるわよね? 桃谷:……調べたのか。 ラピス:ええ。交渉にたくさんの材料を用意するのは当たり前よ。随分たくさんの所から借りているのね。 桃谷:……だが、それと何の関係が── ラピス:全ての債権を鹿野金融が買い取ったわ。事実上私があなたにお金を貸してるというわけ。 桃谷:これは脅迫だぞ? ラピス:違うわよ。今回の働きに応じて減額。もしくは完済扱いにしてあげる提案をしてるの。 桃谷:…… ラピス:どうするの? 桃谷:……明日、11時に事務所に行く。 ラピス:そう。良い返事で助かるわ。これからもよろしく。 桃谷:……糞女狐が。 0:翌日、事務所── 花:今日こそ誰か来てくれるかしら。 ラピス:ええ!お嬢様。今日こそはきっといらっしゃいますよ! 花:でもここ最近ずっと誰も来てくださいませんわ…… 桃谷:失礼するぞ。 花:あ、刑事さん。 ラピス:ほら!お嬢様来ましたわよ!くたびれた男ですけど客は客です! 花:ラピス、お客様にそんな言い方はいけませんわ。 桃谷:そうだそうだ。大体お前が―― ラピス:あ? 桃谷:……実は嬢ちゃんに解いて欲しい難事件があるんだ。 花:難事件ですか!?どんな事件なんです!?刑事さん!! 桃谷:ちょ、ちょっと落ち着けよ。それに俺は今、警部だ。 花:そうなんですか!?凄いじゃないですか!それでどんな事件ですか!? 桃谷:興味ねーのな……まあ言ってみれば殺人事件だ。 0:花の雰囲気が変わる。 花:殺人ですか。 桃谷:お、おう……大丈夫か? 花:ええ。続けてくださいますか? 桃谷:……わかった。ここの近くのアパートで30代の男性が包丁による刺殺体で見つかったんだ。男性はかなり鍛えていた男性なんだが、争った形跡が見られないし、凶器から指紋も検出されなかった。そして何より、完全な密室だ。 花:密室殺人……それは大変ですね。 桃谷:まあな。無理にとは言わん。他にもたくさんあるからな。20歳の男女4人が行方不明だとか、町の外れに住む怪しい5人組の捜査だとかな。 花:お受けしますわ。 桃谷:え、どれをだ? 花:もちろん密室殺人でございます。 桃谷:本当か? 花:ええ!ようやく私の憧れた明智小五郎様に一歩近づきましたわ! 桃谷:てっきりホームズだと思ってたよ。 花:ホームズ様も素敵ですが、小五郎様が至高でございます! 桃谷:そ、そうか。俺はそっちの方はあんまり知らなくてな。 花:そうなのですね。きっとモモジロー警部も中村警部のようになれると思いましたのに。 桃谷:……桃谷な。 花:あら、失礼致しましたわ。いつもラピスからそう伺っているものでして。 桃谷:ああ。そうだと思ったよ。 花:では私、少し用意をしてきます。 桃谷:え? 花:今から事件現場に向かうのでしょう?善は急げですわ! 0:花、別室へ捌ける。 ラピス:……意外ね。 桃谷:何がだ? ラピス:どうしてお嬢様にあんな事件を持ってきたの? 桃谷:お前が言ったんだろ?難事件を寄越せって。 ラピス:そうよ。でもいつもは違うじゃない。猫探しとか人探しばかりで。 桃谷:警部に上がると多少自由が効くんだ。それに、お嬢ちゃんは確かに世間知らずだが聡明だからな。解決できずとも何かのヒントはきっと貰える。俺にも利益はちゃんとあるんだ。 ラピス:ふふ。 桃谷:何だ?笑うところあったか? ラピス:いいえ。お嬢様をちゃんと見てくれる大人がいて嬉しかっただけよ。 花:お待たせしました!! 桃谷:そ、その格好で行くのか? 花:もちろんです!木綿の着物は探偵の正装ですから! 桃谷:あまり目立つ格好は避けた方が……まだ犯人は捕まえれてない―― ラピス:大丈夫よ。お嬢様に近づく怪しい者は私が…… 桃谷:事件が増えないことを祈ってるよ…… 花:では行きましょう!モモジロー警部! 桃谷:桃谷だ!! 0:事件現場に着く3人。 桃谷:ここだ。 ラピス:本当に近いのね。それにしてはニュースになってないけど。 桃谷:殺人の証拠がまだ不十分だからな。じゃあ2人とも靴のカバーを。 花:あ、私は自前の物がありますので。 桃谷:……そうか。準備出来たら入るぞ。 0:アパートの一室に移動。 桃谷:一応、鑑識は終わってるが、あまり色々触らないように頼むぞ。 花:わかりました! ラピス:…… 桃谷:どうかしたか? ラピス:ん?いいえ、もし何も見つからなかったらどうやってお嬢様を慰めようか考えてるだけよ。 桃谷:過保護すぎやしねえか? ラピス:探偵業はね。お嬢様が初めて言ったワガママなの。せめて悪い思い出にはなって欲しく無いわ。 桃谷:失敗も嫌な思い出も、大人になるには必要な事だ。 ラピス:人一倍知ってるわよ。お嬢様は。 桃谷:かもな。一般市民の俺には想像も出来ないがね。 花:警部さん。少しいいですか? 桃谷:お、どうした? 花:血痕を見る限り、キッチン辺りで刺されたんですよね? 桃谷:ああ。そうだと思うぞ。 花:そこからリビングの途中まで血痕が続いています。その場所で息絶えた……という訳ですか? 桃谷:そうだ。死因は失血死。死亡推定時刻は朝7時。リビングにはスマホが置いてあった。警察を呼ぼうとしたんだと思うが…… ラピス:それを犯人はただ見つめていたのかしら。 桃谷:さあな。犯人像が全くつかめん。 花:完全な密室だったんですよね? 桃谷:ああ。入口はチェーンまでかけられていたし、窓も全て鍵がかかっていた。隣や上下の部屋からも行き来することは出来ない。 花:誰が遺体を発見したんですか? 桃谷:ここの大家だ。警官と一緒にな。友人から通報があったらしい。連絡がつかないから家を調べてくれとな。 花:大家……友人…… ラピス:鍵を持ってるなら大家が1番怪しいけど……チェーンは無理よね。 花:その御友人の方はどんな方なのでしょうか。 桃谷:ん?あー趣味仲間らしいぞ。 花:どんな趣味ですか? 桃谷:確か……ボルなんとか言ってたような…… ラピス:ボルダリングかしら。 桃谷:おお!それだ!……ボルダリングって何だ? 花:最低限の荷物で岩壁や人口の壁を登るスポーツです。……なるほど。 桃谷:何かわかったか? 花:まだです。……キッチンの床に窪みがありますが、それは? 桃谷:ん?何か落としただけじゃ…… 花:ラピス。ここの男性の通院記録等は分かるかしら。 ラピス:既に調べておりますわ! 桃谷:お前いつの間に…… 花:眼科の通院記録はある? ラピス:ここに! 花:……これで繋がったわ。 桃谷:本当か!?犯人は誰なんだ? 花:犯人はいません。 桃谷:……は? 花:これは事故です。 桃谷:お嬢ちゃん。いくら鍛えてる男でも自分で刺すのは難しいぞ。 花:刺したのではないんです。 桃谷:どういうことだ? 花:キッチンの窪み。あれは転倒した際についたものだと思います。凶器の包丁の柄とピッタリはまると思いますよ。 桃谷:転倒した拍子に自分の下に包丁が入ったのか…… 花:眼科の記録を見るに、彼は相当目が悪かったでしょう。朝ということもあり眼鏡を忘れていたのかもしれません。朝食を作ろうとしたけどよく見えなかったのでしょう。それで取りにいこうとした。包丁を手にしたままで。 桃谷:それは無い。包丁から指紋が出なかったんだぞ。 ラピス:ボルダリングのせいよ。早い人なら数週間で指紋が消えてしまうの。 花:そうです。これは悲しい事故です。だから犯人はいません。 桃谷:なるほど……確かにそれなら辻褄が合う。ちょっと本部に戻っても構わないか!? 花:はい!間違っていたらすみません。 桃谷:いいや!俺たちは全く手がつけれなかった。どちらにせよ進展はありそうだ!ありがとう! ラピス:じゃあ私たちは帰りましょうかお嬢様。 花:そうね!今日は美味しいケーキを食べましょう! ラピス:すぐ手配いたしますわ! 桃谷:また明日、事務所に行かせてもらう。報告も兼ねてな。 花:はい!お待ちしております。 0:翌日、事務所。 ラピス:昨日はお疲れ様でした。お嬢様。 花:大丈夫よ。これでまた1歩、明智小五郎様に近づいた気がするの。 桃谷:邪魔するぞ! ラピス:邪魔するなら帰りなさい。 桃谷:はいよー!……じゃないんだよ! 花:これがノリツッコミ……初めて見ましたわ! 桃谷:あー……お喜びのところ悪いが、昨日の話をしにきたぞ。 花:……どうでしたか? 桃谷:全くその通りだった!お嬢ちゃんの推理は完璧だったよ! 花:本当ですか!? ラピス:良かったですね!お嬢様!名探偵への大躍進です! 花:ええ!待っていてくださいまし、小五郎様…… 桃谷:……架空の人物なんだけどなあ。 ラピス:今回は世話になったわ。ありがとう。 桃谷:お互い様だ。俺も助かった。 ラピス:またお願いするわね。 桃谷:やめてくれ。俺の立場が―― ラピス:駅前のパチンコ屋。指定台の情報が回ってきたのだけれど…… 桃谷:検討しておく。 花:またいつでも依頼お待ちしてますね!モモジロー警部! 桃谷:ふっ……桃谷だ!! 0:fin...