台本概要

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タイトル ふたりの関係
作者名 まりおん  (@marion2009)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 40 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 わたしに実害が無い範囲で、有料無料に関わらず全て自由にお使いください。
過度のアドリブ、内容や性別、役名の改編も好きにしてください。
わたしへの連絡や、作者名の表記なども特に必要ありません。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
雪人 233
紗奈 233
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
タイトル:『ふたりの関係』  :  雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ねえ。」 雪人:「・・・ん?」 紗奈:「今日さ・・・。」 雪人:「・・・うん。」 紗奈:「何曜日?」 雪人:「・・・え?」 紗奈:「・・・今日、何曜日?」 雪人:「今日は・・・、日曜日?」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「なんで疑問形?」 雪人:「・・・確信がない。」 紗奈:「雪ちゃんさ・・・、昨日から、うち来てたよね?」 雪人:「うん。」 紗奈:「じゃあ、今日は日曜日なんじゃない?」 雪人:「・・・そっか。」 紗奈:「そうだよ、きっと・・・。」 雪人:「・・・うん。」 紗奈:「・・・って、わたしが聞いたのにね。」 雪人:「え?」 紗奈:「曜日。最初に聞いたのわたしじゃん。」 雪人:「そういえばそうだね。」 紗奈:「そうだよ・・・。」 雪人:「うん・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・猫がね。」 雪人:「うん?」 紗奈:「猫が、うちの中庭に来たの。」 雪人:「・・・猫が?」 紗奈:「うん。」 雪人:「・・・珍しいね。」 紗奈:「珍しい・・・。そうだね。珍しい。」 雪人:「・・・それで?」 紗奈:「ん?」 雪人:「どうしたの?」 紗奈:「何が?」 雪人:「猫。」 紗奈:「ああ、猫。」 雪人:「うん。」 紗奈:「どうもしないよ。ただ、猫が来たよって。」 雪人:「・・・それだけ?」 紗奈:「うん。それだけ。」 雪人:「そっか。」 紗奈:「うん。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・あ。」 雪人:「ん?」 紗奈:「猫。」 雪人:「猫?」 紗奈:「うん。それだけじゃなかった。」 雪人:「・・・何かあったの?」 紗奈:「ううん。何も。」 雪人:「・・・ん?どういうこと?」 紗奈:「・・・思い出した。」 雪人:「思い出した?」 紗奈:「雪ちゃんと初めて会った日のこと。」 雪人:「ああ・・・。」 紗奈:「可愛かったね。」 雪人:「可愛くはないよ。」 紗奈:「今も可愛いよ。」 雪人:「・・・そう。」 紗奈:「うん。・・・可愛い。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「あのさ・・・。」 紗奈:「ん?」 雪人:「キッチンのところの・・・」 紗奈:「お勝手。」 雪人:「・・・え?」 紗奈:「いつも言ってるでしょ。うちにキッチンはありません。お勝手。」 雪人:「・・・お勝手の、鉢植え?あれ、どうしたの?」 紗奈:「鉢植え?」 雪人:「ほら。なんか水あげてたじゃん。」 紗奈:「ああ。・・・捨てた。」 雪人:「捨てた?」 紗奈:「うん。捨てた。」 雪人:「なんで?」 紗奈:「面倒になったから。」 雪人:「面倒?」 紗奈:「うん。毎日お水あげて話しかけて。面倒。」 雪人:「あれ、買ったんじゃなかった?」 紗奈:「そう。近所のホームセンターで。」 雪人:「でも、捨てたんだ?」 紗奈:「うん。捨てた。面倒だから。」 雪人:「・・・そっか。」 紗奈:「うん・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ねえ、キスしていい?」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ダメ?」 雪人:「・・・どうしたの?」 紗奈:「え?何が?」 雪人:「いつもはそんなこと聞かないじゃん。」 紗奈:「そう?」 雪人:「そうだよ。何も聞かずにいきなり来るじゃん。」 紗奈:「・・・その言い方はちょっと嫌。」 雪人:「・・・ごめん。」 紗奈:「・・・いいよ。許す。」 雪人:「・・・どうしたの?」 紗奈:「何が?」 雪人:「だから、・・・なんでそんなこと聞いたの?」 紗奈:「・・・う~ん、嫌じゃないかなって思って。」 雪人:「今日いきなり?」 紗奈:「いきなりじゃないよ。いつもどうかな~とは思ってる。」 雪人:「そうなんだ?」 紗奈:「そう。で、今日は思い切って聞いてみただけ。」 雪人:「なるほど。」 紗奈:「で、どうなの?」 雪人:「何が?」 紗奈:「だから、嫌じゃない?」 雪人:「・・・別に。」 紗奈:「・・・別にってどっち?」 雪人:「どっち?何が?」 紗奈:「嬉しいのか、嫌なのか。」 雪人:「・・・嫌でもないし嬉しくもない。だから、別に。」 紗奈:「・・・ケチ。」 雪人:「・・・それは言葉の使い方として間違ってる。」 紗奈:「けちけちけちけち。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「一言嬉しいって言ってくれたっていいじゃん。」 雪人:「・・・嘘でもいいの?」 紗奈:「女の子は嘘でもそう言って欲しいものだよ?」 雪人:「・・・紗奈は女の子なの?」 紗奈:「はあ?」 雪人:「紗奈は、俺の前で、女の子なの?」 紗奈:「・・・どうだろ。」 雪人:「・・・紗奈は紗奈だよ。女の子じゃない。」 紗奈:「・・・そう?」 雪人:「うん。」 紗奈:「・・・そっか。」 雪人:「・・・ん。」 紗奈:「んん・・・、雪人の味がする・・・。」 雪人:「・・・紗奈の香りがする。」 紗奈:「わたしの香り?ふんふん、なんだろ?汗?シャンプー?」 雪人:「わかんない。そういうの全部ひっくるめてかもしれない。」 紗奈:「そっか・・・。」 雪人:「うん・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・今日さ。」 雪人:「・・・ん?」 紗奈:「・・・日曜日じゃん?」 雪人:「・・・うん。」 紗奈:「・・・家、帰るの?」 雪人:「・・・なんで?」 紗奈:「・・・なんとなく。」 雪人:「・・・帰るよ。」 紗奈:「・・・明日でもよくない?歩いて5分のところなんだし。」 雪人:「帰る。」 紗奈:「・・・そう。」 雪人:「・・・うん。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・何かあった?」 紗奈:「え?」 雪人:「・・・今日、いつもと違うから。」 紗奈:「・・・そうかな?」 雪人:「うん・・・。」 紗奈:「・・・猫のせい・・・かな?」 雪人:「猫の?」 紗奈:「うん・・・。」 雪人:「・・・猫、怖いの?」 紗奈:「え?ううん。怖くないよ。どっちかっていうと好き。」 雪人:「ふぅん。・・・じゃあ、なんで?」 紗奈:「・・・猫見て、雪人と初めて会った日のこと思い出したって言ったでしょ?」 雪人:「うん。」 紗奈:「雪人もさ、うちの庭にいきなり入ってきて。」 雪人:「酔ってたから。」 紗奈:「『綺麗な桜ですね』って。ヒトの家の庭に入り込んでよく言ったものよね。」 雪人:「だから、酔ってたんだって。」 紗奈:「知ってる。」 雪人:「紗奈だって、『良かったらこちらに座って見ませんか?』って。普通言わないだろ。」 紗奈:「だって、悪い人には見えなかったから。」 雪人:「酔っぱらって勝手にヒトの庭に入ってくるような奴なのにか?」 紗奈:「寂しそうだったから・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「あ、この人もわたしと同じなのかなって・・・。そう思ったの。」 雪人:「・・・・・・。それで?」 紗奈:「え?」 雪人:「猫の話は?」 紗奈:「えっと、猫をね、見てたの。」 雪人:「うん・・・。」 紗奈:「そうしたらね。わたし何もしてないのに、目が合ったら逃げちゃったの。」 雪人:「うん・・・。」 紗奈:「・・・それだけ。」 雪人:「・・・ん?」 紗奈:「ん?」 雪人:「え?おしまい?」 紗奈:「うん。おしまい。」 雪人:「・・・それで、なんで今日はいつもと違うの?」 紗奈:「・・・なんとなく。」 雪人:「・・・なんとなく?」 紗奈:「・・・雪ちゃんも、ある日突然いなくならないかと・・・思って・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・雪ちゃん?」 雪人:「・・・紗奈もそんなこと考えるんだね。」 紗奈:「ね・・・。わたしもびっくり。」 雪人:「そっか。それでか。」 紗奈:「うん。」 雪人:「そんな自分にびっくりして、なんだか今日は変なんだ?」 紗奈:「・・・なのかな。」 雪人:「そうだよ・・・。」 紗奈:「う~ん・・・。」 雪人:「何日かすれば、いつも通りに戻るよ。」 紗奈:「いつも通り?」 雪人:「そう。」 紗奈:「・・・いつも通りのわたしって、どんな感じ?」 雪人:「・・・う~ん。興味がない感じ?」 紗奈:「雪ちゃんに?」 雪人:「ううん。俺にって言うか、この世界に?」 紗奈:「・・・世界に興味なさそう?」 雪人:「なさそう。」 紗奈:「・・・そうかなぁ。」 雪人:「そうだよ。」 紗奈:「・・・でも、雪ちゃんも興味なさそうだよね。」 雪人:「・・・世界に?」 紗奈:「うん。」 雪人:「・・・そうだね。そういうところ、俺らは似てるね。・・・だから一緒にいるんだと思う。」 紗奈:「・・・そうなの?」 雪人:「紗奈も前に言ってたじゃん。縛られるのが嫌だって。」 紗奈:「そんなこと言った?」 雪人:「俺が、『なんで彼氏作らないの?』って聞いたとき。」 紗奈:「ああ。」 雪人:「『だって、誰かの大切な人になったら生きてなきゃいけないじゃない。』って。」 紗奈:「・・・言った・・・気がする。」 雪人:「『明日急に死にたくなるかもしれないのに、その人のせいで死ねないのは困るわ。』」 紗奈:「その気持ちは今も変わってない。」 雪人:「それを聞いて、『ああ、ここならいてもいいかな』って思ったんだよ。」 紗奈:「・・・わたしが言うのもなんだけど、雪ちゃんって変な人ね。」 雪人:「なんで?」 紗奈:「それはこっちの台詞でしょ。なんでここにいてもいいかなって思うのよ?だいたい、興味がないって言うのと束縛されたくないっていうのは関係ないでしょ?」 雪人:「あるよ。」 紗奈:「あるの?」 雪人:「相手に興味を持ったら相手にも興味を持ってほしいと思うでしょ?興味を持ってほしいって言うのは、構ってほしいってことで、つまり束縛されたいってこと。」 紗奈:「・・・よくわかんない。」 雪人:「そう?でもそういうことだよ。」 紗奈:「ん~、じゃあ、ここにいてもいいかなって思ったのはなんで?」 雪人:「・・・ここには『俺』は存在してないって思ったからかな。」 紗奈:「え?」 雪人:「紗奈は俺に興味がない。俺が明日死んでも、変わらない毎日を送るだろうって。」 紗奈:「・・・だからここならいてもいいの?」 雪人:「そう・・・。」 紗奈:「・・・よくわかんない。」 雪人:「嘘・・・。紗奈はわかってるよ。だって、紗奈も同じだから・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「俺たちは、自分たちの人生までも客観的に見ている。そして、俺たちに共通している価値観がある。それは・・・。」 紗奈:「等価値・・・。」 雪人:「・・・そう。すべてのものは等価値であるという考え。幸せも不幸も生も死も。あらゆるものは客観的に見ると等価値なんだ。だからこそ、その中で何かを選ぶことの無意味さを知ってる。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「紗奈・・・、紗奈は何か望むことはある?」 紗奈:「・・・・・・ない。」 雪人:「・・・俺もない。それが俺らなんだ。」 紗奈:「・・・なんだか少し、悲しいね。」 雪人:「・・・その悲しみすらも、幸せとなんら変わりがないんだよ。」 紗奈:「・・・そうだね。・・・そうかも。」 雪人:「・・・だから、さっき紗奈が言ったこと、ちょっとびっくりした。」 紗奈:「・・・猫のこと?」 雪人:「それから、俺が来なくなるかもって思ったって話。」 紗奈:「・・・そうだね。わたし自身びっくりした。」 雪人:「・・・もし、俺が今日を境にここへ来なくなったら・・・、家まで訪ねて来る?」 紗奈:「・・・ううん。きっと行かないと思う。」 雪人:「うん・・・。俺も紗奈はそうだろうなって思ってる。」 紗奈:「そう?」 雪人:「うん。」 紗奈:「それは少し悔しい。」 雪人:「なんで?」 紗奈:「う~ん、なんとなく。」 雪人:「何それ?」 紗奈:「いいじゃない。別に。」 雪人:「・・・まあいっか。別に。」 紗奈:「・・・でもね、雪ちゃんが作ってくれるパスタは好きだよ。」 雪人:「・・・それしか作れないけどね。」 紗奈:「いいじゃん。美味しいんだから。」 雪人:「紗奈は何も作れないもんね。」 紗奈:「ご飯は炊けるよ。」 雪人:「おかずは?」 紗奈:「・・・卵かけごはん。」 雪人:「それはおかずとは言いません。」 紗奈:「今は美味しいお惣菜があるからいいもん。」 雪人:「・・・太るよ。」 紗奈:「・・・太ったら嫌いになる?」 雪人:「・・・どうだろ?太ってみないとわからない。」 紗奈:「今の体型は?」 雪人:「・・・別に。」 紗奈:「・・・別に何?」 雪人:「・・・嫌いじゃない。」 紗奈:「・・・どっち?」 雪人:「・・・好き・・・かも。」 紗奈:「・・・そう。よく言えました。ん・・・。」 雪人:「んん・・・、ん・・・はぁ・・・。」 紗奈:「・・・今度は聞かなかったよ?」 雪人:「・・・うん。」 紗奈:「キスは好き?」 雪人:「・・・わかんない。」 紗奈:「わからないの?自分のことなのに?」 雪人:「でも・・・、紗奈とのキスは、好き・・・。」 紗奈:「・・・合格。ん・・・ん・・・。」 雪人:「ん・・・んん・・・、はぁ、はぁ・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「このままなんにもしたくないね・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・あ、雪ちゃんは、したくなっちゃった?」 雪人:「ばか・・・。」 紗奈:「いいよ、しても・・・。」 雪人:「いいよ、しなくて・・・。」 紗奈:「・・・いいの?」 雪人:「いいよ。」 紗奈:「・・・でも、ここはしたいって言ってるよ?」 雪人:「それはただの反射現象。」 紗奈:「・・・嫌じゃないよ?」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「じゃあ、お口でしてあげるね。」 雪人:「いいから!」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・いいから。このままここで寝てろって。」 紗奈:「・・・・・・うん。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・わたしたちさ。」 雪人:「・・・ん?」 紗奈:「こういうの何て言うんだろうね。」 雪人:「・・・何が?」 紗奈:「関係・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「恋人ではないし、友達・・・でも、エッチしてるし・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「ん~・・・、セックスフレンド?」 雪人:「ばか。」 紗奈:「あ~、また馬鹿って言った。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・だって、何なんだろうなって時々思うんだ。わたしたちの関係・・・。」 雪人:「・・・名前が必要か?」 紗奈:「え?」 雪人:「俺たちの関係に、名前って必要?」 紗奈:「う~ん・・・、ヒトに聞かれたときに?」 雪人:「ヒトに聞かれることなんてあるか?俺たちの関係を。」 紗奈:「・・・・・・無いね。」 雪人:「無いよ。」 紗奈:「・・・う~ん、でも、なんかなぁ。」 雪人:「なに?」 紗奈:「ん~・・・、納得したい?みたいな?」 雪人:「何を?」 紗奈:「自分の中で、こういう関係!みたいなはっきりとした何かが欲しい、みたいな。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「そういうの無い?」 雪人:「俺はない。」 紗奈:「そっか・・・。これって男女の違いみたいなものかな?」 雪人:「どうかな。」 紗奈:「・・・やっぱりセックスフレンドなのかな。」 雪人:「・・・仲間、でいいんじゃない?」 紗奈:「仲間?なんの?」 雪人:「この空虚な世界を共に生きる仲間。」 紗奈:「・・・雪ちゃん、時々詩人だよね。」 雪人:「なっ!?」 紗奈:「ロマンチスト。」 雪人:「うるさい。セックスフレンド。」 紗奈:「ふふ。照れてる。」 雪人:「照れてない。」 紗奈:「嘘。照れてる。」 雪人:「照れてない!」 紗奈:「ふふ、可愛い。」 雪人:「ったく・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・今日さ、ご飯どうする?」 雪人:「・・・食べに行く?」 紗奈:「・・・めんどくさい。」 雪人:「・・・何それ。じゃあなんで聞いた。」 紗奈:「・・・雪ちゃんがどうにかしてくれると思って。」 雪人:「・・・俺は何でも屋じゃない。」 紗奈:「・・・ちょっとお腹すいてきた。」 雪人:「・・・出前とるか。」 紗奈:「ピザ?」 雪人:「・・・ピザ好きだよね。」 紗奈:「だって、一人じゃ食べきれないから。・・・ピザ嫌い?」 雪人:「嫌いじゃないけど・・・。」 紗奈:「けど?」 雪人:「・・・太るよ。」 紗奈:「全部胸に行くように頑張る。」 雪人:「そんなに世の中甘くない。」 紗奈:「ええ~。」 雪人:「・・・で、どれ?このミックスのやつ?」 紗奈:「ううん。この海老タルタル。」 雪人:「一種類のでいいの?」 紗奈:「うん。好きなので埋め尽くされてるのがいいの。」 雪人:「・・・はい。」 紗奈:「じゃあ、ご飯食べたら一緒にお風呂入る?」 雪人:「・・・そうだな。どれくらいお腹に肉がついたか見てあげよう。」 紗奈:「ん~、雪ちゃんの意地悪。」 雪人:「むしろ優しさだよ。」 紗奈:「じゃあ、お風呂にお湯入れてこようか。」 雪人:「まだ早いでしょ。ピザ届いてからでいいよ。」 紗奈:「そう?」 雪人:「うん。・・・あ。」 紗奈:「ん?何?」 雪人:「・・・猫。」 紗奈:「え?猫?」 雪人:「うん。猫。ほら、あそこ。」 紗奈:「あ、ホントだ。この前の猫だ。」 雪人:「・・・首輪は、付いてないっぽいね。野良猫かな?」 紗奈:「そうかも。かなり警戒心強いみたいだったから。」 雪人:「・・・餌あげたりしたの?」 紗奈:「ううん。あげる間もなく逃げちゃったから。」 雪人:「そっか・・・。でも、また来たね。」 紗奈:「うん。来たね。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・何か猫が食べるものあるかな?」 紗奈:「う~ん、鰹節がどこかにあったような・・・。」 雪人:「ちょっと見て来るよ。」 紗奈:「食器棚の下の扉のところにあるかも。」 雪人:「わかった。見てくる。」 紗奈:「うん。」 雪人:「・・・う~ん、見つからないなぁ。」 紗奈:「食器棚の下のとこに無い?」 雪人:「たぶん無いね。」 紗奈:「じゃあ無いかも。」 雪人:「そっか。じゃあ仕方ない。」 紗奈:「今度買っておくよ。」 雪人:「鰹節?」 紗奈:「猫の餌の方がいい?」 雪人:「いきなり猫の餌は贅沢じゃないかな。」 紗奈:「そう?」 雪人:「まずは人間様の食べ残しからでしょ。」 紗奈:「普段鰹節使わないから同じだと思うけど。」 雪人:「気持ちだよ、気持ち。」 紗奈:「あ・・・。」 雪人:「どうした?」 紗奈:「また、目が合ったら逃げちゃった・・・。」 雪人:「・・・よっぽど紗奈が怖いのかな?」 紗奈:「そんなことないよ。」 雪人:「そうかな?」 紗奈:「そうだよ。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ピザ早く来ないかな。」 雪人:「お腹すいた?」 紗奈:「うん。あと、早くお風呂に入りたい。」 雪人:「お風呂入った後は?」 紗奈:「・・・えっち。」 雪人:「俺は何も言ってないよ?」 紗奈:「一緒に入るんでしょ?」 雪人:「入るよ。紗奈が一緒に入ろうって言ったから。」 紗奈:「・・・じゃあ、雪ちゃんは一緒に入りたくないの?」 雪人:「・・・別に。」 紗奈:「別には許しません。どっち?」 雪人:「・・・入り・・・たい!」 紗奈:「きゃあ!っ、もう!」 雪人:「ははは。・・・ちゅっ。」 紗奈:「・・・いいんですか?仲間にこんなことして。」 雪人:「あれ?セックスフレンドじゃなかったの?」 紗奈:「違います。この空虚なせk、んん!んん~。」 雪人:「ん~んっ・・・。なんか言った?」 紗奈:「もう、ずるいんだから・・・。」 雪人:「あ、雨・・・。」 紗奈:「え?あ、ホントだ・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・・・・雨の音っていいよね。わたし好き。」 雪人:「そう?」 紗奈:「うん・・・。」 雪人:「・・・ピザとどっちが好き?」 紗奈:「・・・同じくらい・」 雪人:「・・・それは好きだね。」 紗奈:「うん・・・。」 雪人:「ピザ、早く届くといいね・・・。」 紗奈:「うん・・・。」  :  0:終わり

タイトル:『ふたりの関係』  :  雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ねえ。」 雪人:「・・・ん?」 紗奈:「今日さ・・・。」 雪人:「・・・うん。」 紗奈:「何曜日?」 雪人:「・・・え?」 紗奈:「・・・今日、何曜日?」 雪人:「今日は・・・、日曜日?」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「なんで疑問形?」 雪人:「・・・確信がない。」 紗奈:「雪ちゃんさ・・・、昨日から、うち来てたよね?」 雪人:「うん。」 紗奈:「じゃあ、今日は日曜日なんじゃない?」 雪人:「・・・そっか。」 紗奈:「そうだよ、きっと・・・。」 雪人:「・・・うん。」 紗奈:「・・・って、わたしが聞いたのにね。」 雪人:「え?」 紗奈:「曜日。最初に聞いたのわたしじゃん。」 雪人:「そういえばそうだね。」 紗奈:「そうだよ・・・。」 雪人:「うん・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・猫がね。」 雪人:「うん?」 紗奈:「猫が、うちの中庭に来たの。」 雪人:「・・・猫が?」 紗奈:「うん。」 雪人:「・・・珍しいね。」 紗奈:「珍しい・・・。そうだね。珍しい。」 雪人:「・・・それで?」 紗奈:「ん?」 雪人:「どうしたの?」 紗奈:「何が?」 雪人:「猫。」 紗奈:「ああ、猫。」 雪人:「うん。」 紗奈:「どうもしないよ。ただ、猫が来たよって。」 雪人:「・・・それだけ?」 紗奈:「うん。それだけ。」 雪人:「そっか。」 紗奈:「うん。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・あ。」 雪人:「ん?」 紗奈:「猫。」 雪人:「猫?」 紗奈:「うん。それだけじゃなかった。」 雪人:「・・・何かあったの?」 紗奈:「ううん。何も。」 雪人:「・・・ん?どういうこと?」 紗奈:「・・・思い出した。」 雪人:「思い出した?」 紗奈:「雪ちゃんと初めて会った日のこと。」 雪人:「ああ・・・。」 紗奈:「可愛かったね。」 雪人:「可愛くはないよ。」 紗奈:「今も可愛いよ。」 雪人:「・・・そう。」 紗奈:「うん。・・・可愛い。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「あのさ・・・。」 紗奈:「ん?」 雪人:「キッチンのところの・・・」 紗奈:「お勝手。」 雪人:「・・・え?」 紗奈:「いつも言ってるでしょ。うちにキッチンはありません。お勝手。」 雪人:「・・・お勝手の、鉢植え?あれ、どうしたの?」 紗奈:「鉢植え?」 雪人:「ほら。なんか水あげてたじゃん。」 紗奈:「ああ。・・・捨てた。」 雪人:「捨てた?」 紗奈:「うん。捨てた。」 雪人:「なんで?」 紗奈:「面倒になったから。」 雪人:「面倒?」 紗奈:「うん。毎日お水あげて話しかけて。面倒。」 雪人:「あれ、買ったんじゃなかった?」 紗奈:「そう。近所のホームセンターで。」 雪人:「でも、捨てたんだ?」 紗奈:「うん。捨てた。面倒だから。」 雪人:「・・・そっか。」 紗奈:「うん・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ねえ、キスしていい?」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ダメ?」 雪人:「・・・どうしたの?」 紗奈:「え?何が?」 雪人:「いつもはそんなこと聞かないじゃん。」 紗奈:「そう?」 雪人:「そうだよ。何も聞かずにいきなり来るじゃん。」 紗奈:「・・・その言い方はちょっと嫌。」 雪人:「・・・ごめん。」 紗奈:「・・・いいよ。許す。」 雪人:「・・・どうしたの?」 紗奈:「何が?」 雪人:「だから、・・・なんでそんなこと聞いたの?」 紗奈:「・・・う~ん、嫌じゃないかなって思って。」 雪人:「今日いきなり?」 紗奈:「いきなりじゃないよ。いつもどうかな~とは思ってる。」 雪人:「そうなんだ?」 紗奈:「そう。で、今日は思い切って聞いてみただけ。」 雪人:「なるほど。」 紗奈:「で、どうなの?」 雪人:「何が?」 紗奈:「だから、嫌じゃない?」 雪人:「・・・別に。」 紗奈:「・・・別にってどっち?」 雪人:「どっち?何が?」 紗奈:「嬉しいのか、嫌なのか。」 雪人:「・・・嫌でもないし嬉しくもない。だから、別に。」 紗奈:「・・・ケチ。」 雪人:「・・・それは言葉の使い方として間違ってる。」 紗奈:「けちけちけちけち。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「一言嬉しいって言ってくれたっていいじゃん。」 雪人:「・・・嘘でもいいの?」 紗奈:「女の子は嘘でもそう言って欲しいものだよ?」 雪人:「・・・紗奈は女の子なの?」 紗奈:「はあ?」 雪人:「紗奈は、俺の前で、女の子なの?」 紗奈:「・・・どうだろ。」 雪人:「・・・紗奈は紗奈だよ。女の子じゃない。」 紗奈:「・・・そう?」 雪人:「うん。」 紗奈:「・・・そっか。」 雪人:「・・・ん。」 紗奈:「んん・・・、雪人の味がする・・・。」 雪人:「・・・紗奈の香りがする。」 紗奈:「わたしの香り?ふんふん、なんだろ?汗?シャンプー?」 雪人:「わかんない。そういうの全部ひっくるめてかもしれない。」 紗奈:「そっか・・・。」 雪人:「うん・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・今日さ。」 雪人:「・・・ん?」 紗奈:「・・・日曜日じゃん?」 雪人:「・・・うん。」 紗奈:「・・・家、帰るの?」 雪人:「・・・なんで?」 紗奈:「・・・なんとなく。」 雪人:「・・・帰るよ。」 紗奈:「・・・明日でもよくない?歩いて5分のところなんだし。」 雪人:「帰る。」 紗奈:「・・・そう。」 雪人:「・・・うん。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・何かあった?」 紗奈:「え?」 雪人:「・・・今日、いつもと違うから。」 紗奈:「・・・そうかな?」 雪人:「うん・・・。」 紗奈:「・・・猫のせい・・・かな?」 雪人:「猫の?」 紗奈:「うん・・・。」 雪人:「・・・猫、怖いの?」 紗奈:「え?ううん。怖くないよ。どっちかっていうと好き。」 雪人:「ふぅん。・・・じゃあ、なんで?」 紗奈:「・・・猫見て、雪人と初めて会った日のこと思い出したって言ったでしょ?」 雪人:「うん。」 紗奈:「雪人もさ、うちの庭にいきなり入ってきて。」 雪人:「酔ってたから。」 紗奈:「『綺麗な桜ですね』って。ヒトの家の庭に入り込んでよく言ったものよね。」 雪人:「だから、酔ってたんだって。」 紗奈:「知ってる。」 雪人:「紗奈だって、『良かったらこちらに座って見ませんか?』って。普通言わないだろ。」 紗奈:「だって、悪い人には見えなかったから。」 雪人:「酔っぱらって勝手にヒトの庭に入ってくるような奴なのにか?」 紗奈:「寂しそうだったから・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「あ、この人もわたしと同じなのかなって・・・。そう思ったの。」 雪人:「・・・・・・。それで?」 紗奈:「え?」 雪人:「猫の話は?」 紗奈:「えっと、猫をね、見てたの。」 雪人:「うん・・・。」 紗奈:「そうしたらね。わたし何もしてないのに、目が合ったら逃げちゃったの。」 雪人:「うん・・・。」 紗奈:「・・・それだけ。」 雪人:「・・・ん?」 紗奈:「ん?」 雪人:「え?おしまい?」 紗奈:「うん。おしまい。」 雪人:「・・・それで、なんで今日はいつもと違うの?」 紗奈:「・・・なんとなく。」 雪人:「・・・なんとなく?」 紗奈:「・・・雪ちゃんも、ある日突然いなくならないかと・・・思って・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・雪ちゃん?」 雪人:「・・・紗奈もそんなこと考えるんだね。」 紗奈:「ね・・・。わたしもびっくり。」 雪人:「そっか。それでか。」 紗奈:「うん。」 雪人:「そんな自分にびっくりして、なんだか今日は変なんだ?」 紗奈:「・・・なのかな。」 雪人:「そうだよ・・・。」 紗奈:「う~ん・・・。」 雪人:「何日かすれば、いつも通りに戻るよ。」 紗奈:「いつも通り?」 雪人:「そう。」 紗奈:「・・・いつも通りのわたしって、どんな感じ?」 雪人:「・・・う~ん。興味がない感じ?」 紗奈:「雪ちゃんに?」 雪人:「ううん。俺にって言うか、この世界に?」 紗奈:「・・・世界に興味なさそう?」 雪人:「なさそう。」 紗奈:「・・・そうかなぁ。」 雪人:「そうだよ。」 紗奈:「・・・でも、雪ちゃんも興味なさそうだよね。」 雪人:「・・・世界に?」 紗奈:「うん。」 雪人:「・・・そうだね。そういうところ、俺らは似てるね。・・・だから一緒にいるんだと思う。」 紗奈:「・・・そうなの?」 雪人:「紗奈も前に言ってたじゃん。縛られるのが嫌だって。」 紗奈:「そんなこと言った?」 雪人:「俺が、『なんで彼氏作らないの?』って聞いたとき。」 紗奈:「ああ。」 雪人:「『だって、誰かの大切な人になったら生きてなきゃいけないじゃない。』って。」 紗奈:「・・・言った・・・気がする。」 雪人:「『明日急に死にたくなるかもしれないのに、その人のせいで死ねないのは困るわ。』」 紗奈:「その気持ちは今も変わってない。」 雪人:「それを聞いて、『ああ、ここならいてもいいかな』って思ったんだよ。」 紗奈:「・・・わたしが言うのもなんだけど、雪ちゃんって変な人ね。」 雪人:「なんで?」 紗奈:「それはこっちの台詞でしょ。なんでここにいてもいいかなって思うのよ?だいたい、興味がないって言うのと束縛されたくないっていうのは関係ないでしょ?」 雪人:「あるよ。」 紗奈:「あるの?」 雪人:「相手に興味を持ったら相手にも興味を持ってほしいと思うでしょ?興味を持ってほしいって言うのは、構ってほしいってことで、つまり束縛されたいってこと。」 紗奈:「・・・よくわかんない。」 雪人:「そう?でもそういうことだよ。」 紗奈:「ん~、じゃあ、ここにいてもいいかなって思ったのはなんで?」 雪人:「・・・ここには『俺』は存在してないって思ったからかな。」 紗奈:「え?」 雪人:「紗奈は俺に興味がない。俺が明日死んでも、変わらない毎日を送るだろうって。」 紗奈:「・・・だからここならいてもいいの?」 雪人:「そう・・・。」 紗奈:「・・・よくわかんない。」 雪人:「嘘・・・。紗奈はわかってるよ。だって、紗奈も同じだから・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「俺たちは、自分たちの人生までも客観的に見ている。そして、俺たちに共通している価値観がある。それは・・・。」 紗奈:「等価値・・・。」 雪人:「・・・そう。すべてのものは等価値であるという考え。幸せも不幸も生も死も。あらゆるものは客観的に見ると等価値なんだ。だからこそ、その中で何かを選ぶことの無意味さを知ってる。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「紗奈・・・、紗奈は何か望むことはある?」 紗奈:「・・・・・・ない。」 雪人:「・・・俺もない。それが俺らなんだ。」 紗奈:「・・・なんだか少し、悲しいね。」 雪人:「・・・その悲しみすらも、幸せとなんら変わりがないんだよ。」 紗奈:「・・・そうだね。・・・そうかも。」 雪人:「・・・だから、さっき紗奈が言ったこと、ちょっとびっくりした。」 紗奈:「・・・猫のこと?」 雪人:「それから、俺が来なくなるかもって思ったって話。」 紗奈:「・・・そうだね。わたし自身びっくりした。」 雪人:「・・・もし、俺が今日を境にここへ来なくなったら・・・、家まで訪ねて来る?」 紗奈:「・・・ううん。きっと行かないと思う。」 雪人:「うん・・・。俺も紗奈はそうだろうなって思ってる。」 紗奈:「そう?」 雪人:「うん。」 紗奈:「それは少し悔しい。」 雪人:「なんで?」 紗奈:「う~ん、なんとなく。」 雪人:「何それ?」 紗奈:「いいじゃない。別に。」 雪人:「・・・まあいっか。別に。」 紗奈:「・・・でもね、雪ちゃんが作ってくれるパスタは好きだよ。」 雪人:「・・・それしか作れないけどね。」 紗奈:「いいじゃん。美味しいんだから。」 雪人:「紗奈は何も作れないもんね。」 紗奈:「ご飯は炊けるよ。」 雪人:「おかずは?」 紗奈:「・・・卵かけごはん。」 雪人:「それはおかずとは言いません。」 紗奈:「今は美味しいお惣菜があるからいいもん。」 雪人:「・・・太るよ。」 紗奈:「・・・太ったら嫌いになる?」 雪人:「・・・どうだろ?太ってみないとわからない。」 紗奈:「今の体型は?」 雪人:「・・・別に。」 紗奈:「・・・別に何?」 雪人:「・・・嫌いじゃない。」 紗奈:「・・・どっち?」 雪人:「・・・好き・・・かも。」 紗奈:「・・・そう。よく言えました。ん・・・。」 雪人:「んん・・・、ん・・・はぁ・・・。」 紗奈:「・・・今度は聞かなかったよ?」 雪人:「・・・うん。」 紗奈:「キスは好き?」 雪人:「・・・わかんない。」 紗奈:「わからないの?自分のことなのに?」 雪人:「でも・・・、紗奈とのキスは、好き・・・。」 紗奈:「・・・合格。ん・・・ん・・・。」 雪人:「ん・・・んん・・・、はぁ、はぁ・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「このままなんにもしたくないね・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・あ、雪ちゃんは、したくなっちゃった?」 雪人:「ばか・・・。」 紗奈:「いいよ、しても・・・。」 雪人:「いいよ、しなくて・・・。」 紗奈:「・・・いいの?」 雪人:「いいよ。」 紗奈:「・・・でも、ここはしたいって言ってるよ?」 雪人:「それはただの反射現象。」 紗奈:「・・・嫌じゃないよ?」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「じゃあ、お口でしてあげるね。」 雪人:「いいから!」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・いいから。このままここで寝てろって。」 紗奈:「・・・・・・うん。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・わたしたちさ。」 雪人:「・・・ん?」 紗奈:「こういうの何て言うんだろうね。」 雪人:「・・・何が?」 紗奈:「関係・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「恋人ではないし、友達・・・でも、エッチしてるし・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「ん~・・・、セックスフレンド?」 雪人:「ばか。」 紗奈:「あ~、また馬鹿って言った。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・だって、何なんだろうなって時々思うんだ。わたしたちの関係・・・。」 雪人:「・・・名前が必要か?」 紗奈:「え?」 雪人:「俺たちの関係に、名前って必要?」 紗奈:「う~ん・・・、ヒトに聞かれたときに?」 雪人:「ヒトに聞かれることなんてあるか?俺たちの関係を。」 紗奈:「・・・・・・無いね。」 雪人:「無いよ。」 紗奈:「・・・う~ん、でも、なんかなぁ。」 雪人:「なに?」 紗奈:「ん~・・・、納得したい?みたいな?」 雪人:「何を?」 紗奈:「自分の中で、こういう関係!みたいなはっきりとした何かが欲しい、みたいな。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「そういうの無い?」 雪人:「俺はない。」 紗奈:「そっか・・・。これって男女の違いみたいなものかな?」 雪人:「どうかな。」 紗奈:「・・・やっぱりセックスフレンドなのかな。」 雪人:「・・・仲間、でいいんじゃない?」 紗奈:「仲間?なんの?」 雪人:「この空虚な世界を共に生きる仲間。」 紗奈:「・・・雪ちゃん、時々詩人だよね。」 雪人:「なっ!?」 紗奈:「ロマンチスト。」 雪人:「うるさい。セックスフレンド。」 紗奈:「ふふ。照れてる。」 雪人:「照れてない。」 紗奈:「嘘。照れてる。」 雪人:「照れてない!」 紗奈:「ふふ、可愛い。」 雪人:「ったく・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・今日さ、ご飯どうする?」 雪人:「・・・食べに行く?」 紗奈:「・・・めんどくさい。」 雪人:「・・・何それ。じゃあなんで聞いた。」 紗奈:「・・・雪ちゃんがどうにかしてくれると思って。」 雪人:「・・・俺は何でも屋じゃない。」 紗奈:「・・・ちょっとお腹すいてきた。」 雪人:「・・・出前とるか。」 紗奈:「ピザ?」 雪人:「・・・ピザ好きだよね。」 紗奈:「だって、一人じゃ食べきれないから。・・・ピザ嫌い?」 雪人:「嫌いじゃないけど・・・。」 紗奈:「けど?」 雪人:「・・・太るよ。」 紗奈:「全部胸に行くように頑張る。」 雪人:「そんなに世の中甘くない。」 紗奈:「ええ~。」 雪人:「・・・で、どれ?このミックスのやつ?」 紗奈:「ううん。この海老タルタル。」 雪人:「一種類のでいいの?」 紗奈:「うん。好きなので埋め尽くされてるのがいいの。」 雪人:「・・・はい。」 紗奈:「じゃあ、ご飯食べたら一緒にお風呂入る?」 雪人:「・・・そうだな。どれくらいお腹に肉がついたか見てあげよう。」 紗奈:「ん~、雪ちゃんの意地悪。」 雪人:「むしろ優しさだよ。」 紗奈:「じゃあ、お風呂にお湯入れてこようか。」 雪人:「まだ早いでしょ。ピザ届いてからでいいよ。」 紗奈:「そう?」 雪人:「うん。・・・あ。」 紗奈:「ん?何?」 雪人:「・・・猫。」 紗奈:「え?猫?」 雪人:「うん。猫。ほら、あそこ。」 紗奈:「あ、ホントだ。この前の猫だ。」 雪人:「・・・首輪は、付いてないっぽいね。野良猫かな?」 紗奈:「そうかも。かなり警戒心強いみたいだったから。」 雪人:「・・・餌あげたりしたの?」 紗奈:「ううん。あげる間もなく逃げちゃったから。」 雪人:「そっか・・・。でも、また来たね。」 紗奈:「うん。来たね。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 雪人:「・・・何か猫が食べるものあるかな?」 紗奈:「う~ん、鰹節がどこかにあったような・・・。」 雪人:「ちょっと見て来るよ。」 紗奈:「食器棚の下の扉のところにあるかも。」 雪人:「わかった。見てくる。」 紗奈:「うん。」 雪人:「・・・う~ん、見つからないなぁ。」 紗奈:「食器棚の下のとこに無い?」 雪人:「たぶん無いね。」 紗奈:「じゃあ無いかも。」 雪人:「そっか。じゃあ仕方ない。」 紗奈:「今度買っておくよ。」 雪人:「鰹節?」 紗奈:「猫の餌の方がいい?」 雪人:「いきなり猫の餌は贅沢じゃないかな。」 紗奈:「そう?」 雪人:「まずは人間様の食べ残しからでしょ。」 紗奈:「普段鰹節使わないから同じだと思うけど。」 雪人:「気持ちだよ、気持ち。」 紗奈:「あ・・・。」 雪人:「どうした?」 紗奈:「また、目が合ったら逃げちゃった・・・。」 雪人:「・・・よっぽど紗奈が怖いのかな?」 紗奈:「そんなことないよ。」 雪人:「そうかな?」 紗奈:「そうだよ。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ピザ早く来ないかな。」 雪人:「お腹すいた?」 紗奈:「うん。あと、早くお風呂に入りたい。」 雪人:「お風呂入った後は?」 紗奈:「・・・えっち。」 雪人:「俺は何も言ってないよ?」 紗奈:「一緒に入るんでしょ?」 雪人:「入るよ。紗奈が一緒に入ろうって言ったから。」 紗奈:「・・・じゃあ、雪ちゃんは一緒に入りたくないの?」 雪人:「・・・別に。」 紗奈:「別には許しません。どっち?」 雪人:「・・・入り・・・たい!」 紗奈:「きゃあ!っ、もう!」 雪人:「ははは。・・・ちゅっ。」 紗奈:「・・・いいんですか?仲間にこんなことして。」 雪人:「あれ?セックスフレンドじゃなかったの?」 紗奈:「違います。この空虚なせk、んん!んん~。」 雪人:「ん~んっ・・・。なんか言った?」 紗奈:「もう、ずるいんだから・・・。」 雪人:「あ、雨・・・。」 紗奈:「え?あ、ホントだ・・・。」 雪人:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・・・・雨の音っていいよね。わたし好き。」 雪人:「そう?」 紗奈:「うん・・・。」 雪人:「・・・ピザとどっちが好き?」 紗奈:「・・・同じくらい・」 雪人:「・・・それは好きだね。」 紗奈:「うん・・・。」 雪人:「ピザ、早く届くといいね・・・。」 紗奈:「うん・・・。」  :  0:終わり