台本概要

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タイトル ふたりの時間
作者名 まりおん  (@marion2009)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(女2)
時間 40 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 わたしに実害が無い範囲で、有料無料に関わらず全て自由にお使いください。
過度のアドリブ、内容や性別、役名の改編も好きにしてください。
わたしへの連絡や、作者名の表記なども特に必要ありません。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
紗奈 236
凛子 236
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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タイトル:『ふたりの時間』  :   :  紗奈:「(寝息)すーすー。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ん・・・んん・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・んん・・・ぁんぉ・・・ん・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ん・・・・・・ん?・・・んん・・・。」 凛子:「・・・おはよ。」 紗奈:「・・・ん・・・おはよ、凛子さん・・・。」 凛子:「ふふ。」 紗奈:「ん~、・・・今何時?」 凛子:「今?今ね・・・、十時半。」 紗奈:「・・・んん。」 凛子:「まだ眠い?」 紗奈:「うん・・・。」 凛子:「いいよ、寝てて。」 紗奈:「ん・・・。凛子さんは、何時に起きたの?」 凛子:「わたし?わたしは、十時前くらいかな。」 紗奈:「ん・・・。何してたの?」 凛子:「別に。・・・紗奈ちゃんの寝顔見てた。」 紗奈:「え~。」 凛子:「なに?」 紗奈:「・・・恥ずかしい。」 凛子:「可愛かったよ。」 紗奈:「むぅ。」 凛子:「ふふ。」 紗奈:「・・・わたし、何か言ってなかった?」 凛子:「なにか?」 紗奈:「寝言・・・。」 凛子:「あ~。」 紗奈:「言ってた?」 凛子:「う~ん。なにかもぞもぞ言ってたけど、なに言ってるかまではわからなかった。」 紗奈:「ほんとに?」 凛子:「うん。ほんと。」 紗奈:「そっか。」 凛子:「うん。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・このまま黙ってたら、また寝ちゃいそう。」 凛子:「いいよ。寝ても。」 紗奈:「う~ん。でも、もったいないじゃん?」 凛子:「なにが?」 紗奈:「せっかくの凛子さんと一緒にいられる時間が。」 凛子:「ここのところ、毎週ずっと一緒にいるじゃん。」 紗奈:「そうだけどぉ・・・。」 凛子:「・・・なに?」 紗奈:「・・・もっと一緒にいたい。」 凛子:「・・・嬉しいこと言ってくれるじゃない。」 紗奈:「だって、本当のことだもん。」 凛子:「ありがと。」 紗奈:「うん・・・。」 凛子:「お水飲む?」 紗奈:「うん。」 凛子:「はい。」(ペットボトルを渡す) 紗奈:「ありがと。(水を飲む)んぐんぐんぐ・・・、はぁ。」 凛子:「はい。」(ペットボトルを受け取る) 紗奈:「あ、うん。ありがと。」 凛子:「・・・今日、いい天気だね。」 紗奈:「・・・そうだね。」 凛子:「どこか行く?」 紗奈:「・・・ん~。」 凛子:「ん?」 紗奈:「・・・行かない。」 凛子:「行かない?」 紗奈:「うん。家で凛子さんとふたりでごろごろしてるほうがいい。」 凛子:「そう?」 紗奈:「うん。」 凛子:「・・・じゃあ、そうしよっか。」 紗奈:「うん。」 凛子:「一日中お布団でごろごろ。」 紗奈:「うん。」 凛子:「・・・たまにはいいよね。」 紗奈:「・・・うん。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・・・・ねえ。」 凛子:「うん?」 紗奈:「こっちきて。」 凛子:「・・・うん。・・・はい。」 紗奈:「ぎゅ~ってして。」 凛子:「・・・ふふ。はい。」 紗奈:「・・・ん。」 凛子:「なに?」 紗奈:「あったかい。」 凛子:「そう?」 紗奈:「うん。」 凛子:「そっか。」 紗奈:「あと・・・。」 凛子:「あと?」 紗奈:「やわらかい。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「わたしね、大きい胸にあこがれた事なかったんだ。」 凛子:「ふぅん。そうなんだ?」 紗奈:「うん。でも、凛子さんの胸は、なんかいいよね。」 凛子:「なにが?」 紗奈:「なんかさ、おっぱいって感じ。」 凛子:「ちょっと。どういうこと?」 紗奈:「んん?」 凛子:「他人(ひと)の胸をいやらしい目で見ないでください。」 紗奈:「違うよ?そういうんじゃないよ。」 凛子:「じゃあ、どういうこと?」 紗奈:「なんかね。安心するって言うか、ママのおっぱいみたい。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「ん?どうしたの?」 凛子:「・・・あのね。」 紗奈:「うん。」 凛子:「わたしと紗奈ちゃん、そこまで歳変わらないよね?」 紗奈:「うん。」 凛子:「っていうか、わたしまだ結婚もしてないんだけど。」 紗奈:「うん。あ、違うよ?凛子さんがお母さんみたいって言ってるんじゃないの。」 凛子:「じゃあなに?」 紗奈:「凛子さんのおっぱいが、お母さんみたいだって言ってるの。」 凛子:「・・・どう違うの?」 紗奈:「う~ん・・・、言葉じゃうまく伝えられないんだけど・・・。」 凛子:「・・・なに?」 紗奈:「とにかく、あったかくて柔らかくて、ずっと触れてたい気持ちになるってこと。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・だめ?」 凛子:「・・・おっきい赤ちゃんだね。」 紗奈:「え?」 凛子:「わたしがお母さんなんじゃなくて、紗奈ちゃんがおっきい赤ちゃんなんだなって。」 紗奈:「わたし・・・、赤ちゃん?」 凛子:「うん。赤ちゃん。」 紗奈:「う~ん・・・。そうかなぁ?」 凛子:「おっぱいが好きなんでしょ?」 紗奈:「うん・・・。」 凛子:「じゃあ、赤ちゃんだ。」 紗奈:「う~ん・・・。」 凛子:「ん?」 紗奈:「・・・でも。」 凛子:「でも?」 紗奈:「凛子さんの赤ちゃんなら、いいかな。」 凛子:「ふふ・・・。いいの?」 紗奈:「うん。凛子さんの赤ちゃんになら、なりたいかも。」 凛子:「・・・こんなに大きな赤ちゃんは困るなぁ。」 紗奈:「・・・だめ?」 凛子:「う~ん・・・、・・・いいよ。」 紗奈:「やった。んんんん。」 凛子:「ちょっと。こら。顔押し付けないで。」 紗奈:「んふふ。」 凛子:「もう。いたずらっこ。」 紗奈:「ママ~。」 凛子:「ん?」 紗奈:「おっぱい。」 凛子:「え?あ、こら。ちょっ、ん。だめ。」 紗奈:「んふ。気持ちいい?」 凛子:「もう。・・・赤ちゃんがそんなことしちゃダメでしょ。」 紗奈:「赤ちゃんだからするんだよ。」 凛子:「そんな子にはおしおき。あむ、ん・・・。」 紗奈:「ん、・・・んぅ、・・・はぁ。・・・キスがおしおきなの?」 凛子:「・・・もっと、する?」 紗奈:「・・・うん。・・・んん・・・んはぁ・・・ん・・・はぁ・・・はぁ・・・。」 凛子:「・・・紗奈ちゃんってさ、キスすると、泣きそうな顔するよね。」 紗奈:「・・・え?」 凛子:「目が潤んでさ、今にも涙がこぼれそう。」 紗奈:「そう?」 凛子:「うん。・・・それがすごく可愛くて、もっともっとしたくなる。」 紗奈:「・・・いいよ。」 凛子:「え?」 紗奈:「凛子さんがしたいなら、いいよ。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「わたし、凛子さんがしたいこと、全部してあげたい・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・なに?」 凛子:「ん~・・・、なんていうかさ、こういうのが幸せなのかなぁって・・・。」 紗奈:「幸せ?」 凛子:「うん・・・。・・・わたしね、今まで何人かの男の人とつき合ってきたけど、こういう穏やかな幸せって感じたことなかったんだ・・・。」 紗奈:「そうなの?」 凛子:「うん・・・。別に、男の人が嫌いってわけじゃないのよ? 凛子: でも、なんだか、ぐいぐい求められる感じが、受け入れられないというか・・・。」 紗奈:「うん。」 凛子:「誰かに求められること自体は嬉しいんだけどね。 凛子: でも、なんていうか・・・、わたしが消費されていくみたいな感覚?なんだよね。」 紗奈:「消費・・・?」 凛子:「うん。なんて言えばいいかな・・・。 凛子: きっと相手が求めているのは、本当のわたしじゃなくて、わたしの体とか、理想の中のわたしで・・・。 凛子: 相手の求めに応じれば応じるほど、本当のわたしが少しずつ消えてなくなっていく、みたいな・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「そうして、だんだんと本当の自分がわからなくなってた。 凛子: でも、こうして紗奈ちゃんと一緒にいると、わたしはわたしでいられる。 凛子: 本当のわたしのまま、幸せを感じられるの。」 紗奈:「・・・そっか。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「そうなんだとしたら、嬉しい。」 凛子:「本当?」 紗奈:「うん。嬉しい。凛子さんが幸せなら、わたしも嬉しい。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・どうしたの?」 凛子:「・・・でも、時々いいのかなって思うの。」 紗奈:「なにが?」 凛子:「紗奈ちゃんを、わたしにつき合わせて。」 紗奈:「・・・どういうこと?」 凛子:「紗奈ちゃんはまだ若いし。」 紗奈:「歳はそんなに変わらないって言ったじゃん。」 凛子:「・・・女の人が好きなわけじゃないし。」 紗奈:「それは、凛子さんだってそうでしょ?」 凛子:「そうだけど・・・。でもわたしは、男の人はもう無理かなって思ったから・・・。 凛子: でも、紗奈ちゃんはそうじゃないでしょ?」 紗奈:「関係ないよ。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「わたしは凛子さんのこと好きだよ。男とか女とか、そういうの関係なく好き。 紗奈: 好きだから一緒にいたいし、一緒にいると幸せな気持ちになる。」 凛子:「・・・紗奈ちゃんも、幸せな気持ちになる?」 紗奈:「うん。なるよ。凛子さんといると、とっても安心するし幸せ。」 凛子:「・・・そっか。」 紗奈:「うん。・・・難しいことなんていいよ。今こうして幸せなんだから。」 凛子:「・・・うん。そうだね。難しいことなんて、考えなくてもいいか。」 紗奈:「うん。だから、・・・キスしたかったら、していいんだよ?」 凛子:「・・・女の子同士なのに?」 紗奈:「うん・・・。ん・・・んぁ・・・んん・・・はぁ・・・ん・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん・・・、可愛い・・・。」 紗奈:「凛子さんも、すごく可愛いよ・・・。」 凛子:「・・・なんでだろうね。」 紗奈:「・・・なにが?」 凛子:「同じ行為でも、紗奈ちゃんとすると、こんなに幸せが溢れてくるの。」 紗奈:「・・・わたし、知ってるよ。」 凛子:「え?」 紗奈:「昔、お婆ちゃんが言ってたの。『愛は、求めれば苦しむけど、与えれば幸せになれるんだよ』って。」 凛子:「与えれば幸せになれる・・・。」 紗奈:「凛子さんは、わたしに愛情を持って接してくれてるから幸せなんだよ。」 凛子:「愛情を・・・?」 紗奈:「うん。わたしのことを考えてくれたでしょ?自分のことよりわたしのことを。」 凛子:「だってそれは、紗奈ちゃんには幸せになって欲しいから。」 紗奈:「ほら、ね?だから、幸せなんだよ。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「わたしも、凛子さんに幸せになってほしい。だから心がぽかぽかするし、幸せな気持ちになる。」 凛子:「・・・そっか。」 紗奈:「うん・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・どうしたの?」 凛子:「・・・うん。・・・あのね。」 紗奈:「うん。」 凛子:「紗奈ちゃんと・・・、その、初めてそういう風になったとき・・・。」 紗奈:「うん。」 凛子:「紗奈ちゃんの方から、されたじゃない?」 紗奈:「うん。」 凛子:「その時、女同士なのにってビックリしたんだけど、・・・なぜだか嫌じゃなかったっていうか、不思議な心地よさを感じたんだけど・・・。 凛子: それがなんでだかわかった気がする・・・。」 紗奈:「そう?」 凛子:「うん。・・・きっとさ、求める以上に、与えてくれてたからなんだなって・・・。」 紗奈:「あ~・・・、たしかに。わたし、凛子さんの感じてる顔が好き。」 凛子:「か、感じてる顔って・・・。」 紗奈:「凛子さんが気持ち良さそうにしてるのを見るのが好きなの。だから、ついついしちゃう、みたいな?」 凛子:「なんだかそれ、いたずらっ子の言い分みたい。」 紗奈:「凛子さんは?凛子さんもそうじゃない?」 凛子:「・・・そうね。わたしもそうかも。自分がって言うよりは、紗奈ちゃんを気持ちよくしてあげたい。」 紗奈:「なんか、ときどき戦いみたいになってるときあるよね。負けるか~って。」 凛子:「それは、紗奈ちゃんがそういう風な雰囲気にするから。」 紗奈:「ふふふ。なんか楽しくなっちゃって。」 凛子:「もう、ふふ。」 紗奈:「・・・わたしね、初めてのとき、なんだかよくわからないうちに、いきなりされちゃって。」 凛子:「初めてのとき・・・?」 紗奈:「うん。え?なになに?なにするの?ええ?って思ってたら、終わってた。」 凛子:「・・・それって、・・・相手は?」 紗奈:「同級生。少し前につき合ってって言われてOKしてたんだけど。 紗奈: 初めてその彼の家に呼ばれて遊びに行ったら、いきなり。」 凛子:「・・・そう。」 紗奈:「なんか変な雰囲気だな~とは思ってたんだけどさ。その頃はまだよくわかってなくて・・・。 紗奈: で、終わった後でさ、『ごめん』とか言ってくるの。謝るくらいならしなきゃいいのにね。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「その後なんだか気まずくなって、結局そのまま自然消滅。なんだったんだろって感じ。 紗奈: ・・・その後も何人かとエッチしたんだけど、やっぱりなんだかよくわからなくて。 紗奈: でも、凛子さんみたいに相手に合わせようとしなかったからかな? 紗奈: そんなに傷ついたりはしなかったんだ。ただ、こんなものかぁって思っただけで。」 凛子:「・・・うん。」 紗奈:「でもね。お婆ちゃんが亡くなって、わがまま言ってこの家を残してもらって、一人で住むようになってちょうど一年経ったくらいかなぁ。 紗奈: ある晩ね、庭に男の人が入ってきたの。」 凛子:「男の人?」 紗奈:「うん。なんか酔っ払って庭に入り込んできたの。」 凛子:「え?大丈夫なの?それ。」 紗奈:「うん。庭のね、桜の木を見に来たんだって。」 凛子:「・・・知らない人なんだよね?」 紗奈:「うん。・・・でね、ふたりで一緒に桜を見たんだ。」 凛子:「その人と?」 紗奈:「うん。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・その人ね、数日前に大切な人を亡くしたんだって言ってた。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「大の大人がさ、見ず知らずの女の前で涙ぼろぼろ流して泣いてんの・・・。 紗奈: それ見たらさぁ、わたしもお婆ちゃんのこと思い出して泣いちゃって・・・。 紗奈: 知らないふたりが、並んで桜を見ながら泣いてんの。・・・よく考えたら笑っちゃうよね。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「それから、その人とちょくちょく、うちで会うようになって・・・。 紗奈: ・・・その人とは、嫌じゃなかったんだ・・・。キスをするのも、エッチするのも・・・。」 凛子:「好き・・・だったの?」 紗奈:「・・・・・・わかんない。嫌じゃなかったよ。あの人のすることは全部。嫌じゃなかった・・・。でも・・・。」 凛子:「・・・でも?」 紗奈:「死んじゃったから。」 凛子:「・・・え?死んだ・・・?」 紗奈:「うん・・・。死んじゃった。マンションから飛び降りたんだって。」 凛子:「え・・・?どうして?」 紗奈:「・・・理由はわかんない。でも、そのちょっと前に連絡が来て・・・。」 凛子:「・・・なんて?」 紗奈:「・・・『もう行けない。ごめん』って。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・元々、空気みたいな人だったんだ。ここにいるのに、いない、みたいな・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・あ。」 凛子:「・・・なに?」 紗奈:「そういえば、その一ヶ月前くらいに。」 凛子:「うん。」 紗奈:「うちに猫が来たんだ。」 凛子:「猫が?」 紗奈:「うん。」 凛子:「・・・それで?」 紗奈:「それで・・・、なんとなく、その人がいなくなっちゃう気がしたの。」 凛子:「・・・なんで?」 紗奈:「・・・わかんない。なんとなく。」 凛子:「・・・そう。」 紗奈:「うん・・・。それを伝えたらね、『そんなこと言うと思わなかった』って言われた。」 凛子:「・・・どういうこと?」 紗奈:「ん~、なんかね、わたしはこの世界の何にも興味がなさそうに見えるらしいよ。 紗奈: ・・・わかる?」 凛子:「・・・ちょっとわかるかも。」 紗奈:「・・・そうなんだ。」 凛子:「・・・・・・その人ってどんな人だったの?」 紗奈:「その人?」 凛子:「うん。」 紗奈:「ん~・・・、寂しそう・・・な人?」 凛子:「寂しそう?」 紗奈:「全てをあきらめてるって言うか・・・。ここにいるのに、ここにいない感じ。」 凛子:「それ、さっきも言ってたね。」 紗奈:「うん。人がいる安心感はあるんだけど、人がいる面倒くささはないっていうか。」 凛子:「ああ、なんとなくわかるかも。」 紗奈:「ほんと?」 凛子:「うちのお父さんがそんな感じかも。存在感がないっていうか。邪魔せずそこにいるって感じ?」 紗奈:「そうなんだ?うちはお父さん、小さい頃からいないからよくわからないけど。」 凛子:「紗奈ちゃん、お父さんいないんだ?」 紗奈:「うん。小さい頃に離婚して、お母さんとお婆ちゃん家に住んでたの。」 凛子:「そうだったんだ。」 紗奈:「うん。高校に上がるときにお母さんの仕事の都合で一度ここを離れたんだけど、お婆ちゃんが亡くなってまた帰ってきたの。」 凛子:「そっか。」 紗奈:「うん。」 凛子:「あ、話が脱線しちゃったね。ごめん。」 紗奈:「ううん。」 凛子:「・・・その男の人は、なんで紗奈ちゃんのところに来るようになったの?」 紗奈:「え?」 凛子:「ほら、最初は桜を見に入ってきたって言ってたじゃない?」 紗奈:「ああ、うん。」 凛子:「それから、なんでまた来るようになったの?」 紗奈:「うんと、その日、桜を見たまま縁側で寝そうになったから、その部屋にお布団敷いてあげたの。」 凛子:「うん。」 紗奈:「それで、次の日起きたらすごい申し訳なさそうにしてて・・・。 紗奈: だから、『気にしないでください』って。 紗奈: 『なんなら、毎日ひとりで寂しいから、時々遊びに来てください』って言ったの。」 凛子:「え?そしたら本当に来たの?」 紗奈:「・・・うん。」 凛子:「え?そんなの社交辞令でしょ?普通来る?」 紗奈:「う~ん、でも、結構強引に誘っちゃったし。」 凛子:「え?そんなに?」 紗奈:「・・・うん。」 凛子:「なんで?」 紗奈:「・・・なんとなく?」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ん?凛子さん?」 凛子:「やっぱり紗奈ちゃん、その人のこと好きだったんじゃない?」 紗奈:「ん~、どうだろ。」 凛子:「絶対そうだよ。」 紗奈:「ん~、なんていうか、雰囲気とかは確かに好きだったと思う。」 凛子:「ほら。」 紗奈:「でも、あの人のことを好きだったかと聞かれると、いまいち・・・しっくりこない。」 凛子:「なんで?」 紗奈:「・・・だって、あの人が亡くなったって知ったとき、涙が出てこなかったんだよ。」 凛子:「え?」 紗奈:「ああ、そうかぁ。やっぱりなぁって思った。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「やっぱりあの人はいなくなっちゃうんだなぁって・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん・・・。」 紗奈:「だからやっぱり、好きではなかったんだと思う。気の合う仲間ではあったけどね。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「なに?」 凛子:「・・・こっちきて。」 紗奈:「ん?」 凛子:「抱きしめてあげるから。」 紗奈:「んふ。大丈夫だよ。」 凛子:「いいから。」 紗奈:「・・・うん。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・凛子さんにこうしてもらうと安心する・・・。」 凛子:「・・・そう?」 紗奈:「うん・・・。」 凛子:「・・・・・・紗奈ちゃん。」 紗奈:「ん?なに?」 凛子:「その人のさぁ、好きだったところ、教えて。」 紗奈:「好きだったところ?」 凛子:「うん。」 紗奈:「・・・・・・手。」 凛子:「手?」 紗奈:「うん。手がね、すごく大きかった。」 凛子:「そう。他には?」 紗奈:「あとは~、髪がサラサラだった。」 凛子:「そうなんだ?」 紗奈:「うん。あと、パスタ作るのが上手だった。」 凛子:「美味しかった?」 紗奈:「うん。カルボナーラが絶品だった。」 凛子:「へえ。」 紗奈:「あと、声が好きだったなぁ。」 凛子:「声?」 紗奈:「うん。とっても柔らかい声してた。」 凛子:「そう・・・。他には?」 紗奈:「とっても・・・、優しかった・・・。」 凛子:「そう・・・。」 紗奈:「・・・・・・なにこれ。・・・なんで、今ごろ・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん・・・。」 紗奈:「・・・やだ。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・いやだよ・・・。」 凛子:「・・・ごめん。」 紗奈:「・・・なんで・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「気付きたくなかった・・・。」 凛子:「・・・ごめんね。」 紗奈:「・・・みんな・・・いなくなるの・・・。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「・・・わたしが好きな人、・・・みんないなくなっちゃうの・・・。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「お父さんも、お婆ちゃんも、ゆきちゃんも・・・。みんな・・・。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「・・・どうしてかな・・・。わたしが悪い子だからかな・・・。」 凛子:「ううん。そうじゃないよ・・・。そうじゃない・・・。」 紗奈:「大人になんかなりたくなかった・・・。ずっと子供でいたかったのに・・・。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「それでも体は勝手に大人になるし、周りもどんどん変わっていくし・・・。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「わたしが大事に思う人がいなくなるのなら、わたしは誰も好きになんかならない。 紗奈: どうせみんないなくなるのなら、誰のことも好きになんかならない。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「ひとりでいい。ずっとひとりでいいの・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん・・・。」 紗奈:「わたしは、ひとりでいい・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん、あなたの大事な人がいなくなったのは、紗奈ちゃんが悪いからじゃない。 凛子: 紗奈ちゃんが好きになったから、いなくなったんじゃない。 凛子: ただみんな、一生懸命生きた結果、そうなってしまっただけなの。 凛子: あなたのせいじゃない。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「・・・一生懸命生きたって、思い通りになるわけじゃないし、必ず幸せになれるわけでもないけど。 凛子: でも、だからこそ、今を大事にして欲しいの。過去に囚われず、未来を恐れずに。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「・・・はっきり言ってわたしも、紗奈ちゃんのところに逃げ込んだ人間だから、あんまり偉そうなこと言えないけど。 凛子: それでも、紗奈ちゃんには幸せになってもらいたいから。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「そばにいて欲しいときはそばにいる。甘えたいときは甘えさせてあげる。 凛子: だからさ、ひとりでいいなんて言わないで。・・・わたしはここにいるよ。」 紗奈:「…うん・・・。」 凛子:「ひとりじゃ抱えきれないことも、ふたりなら支え合っていけるよ。ね?」 紗奈:「・・・うん。」 凛子:「泣きたい時はわたしが胸を貸してあげるから。わたしのおっぱい好きでしょ?」 紗奈:「ふふ。・・・・・・ありがと。凛子さん。」 凛子:「ううん。わたしこそ、ありがとう。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「わたしを、受け入れてくれて。ありがとう。」 紗奈:「・・・凛子さんのことは大好きだよ。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ん?どうしたの?」 凛子:「うん・・・。あのね。」 紗奈:「うん。」 凛子:「その男の人のことは好きかどうかわからないって言ってたのに、わたしのことは好きって言ってくれるんだな~って。」 紗奈:「・・・ああ、・・・うん。」 凛子:「・・・なんだかちょっと妬ける。」 紗奈:「え?なんで?」 凛子:「・・・内緒。」 紗奈:「え?なんで?好きって言ってるのに、なんで?」 凛子:「わからないならいい。」 紗奈:「ええ~、なんで~。教えて~。」 凛子:「ほら、もうそろそろ起きよ。お昼なに食べる?」 紗奈:「あ~、話そらした~。」 凛子:「もう十一時過ぎたし、わたしお腹空いた。」 紗奈:「ぶぅ~。」 凛子:「何か出前でもとる?」 紗奈:「ん~、じゃあ、久しぶりにピザ食べたい。」 凛子:「え?ピザ、嫌いじゃなかったっけ?」 紗奈:「ううん。好き。でも、食べないようにしてたの。」 凛子:「え?なんで?」 紗奈:「ん~、なんとなく。」 凛子:「そう。じゃあ、ピザにする?」 紗奈:「うん。」 凛子:「どれがいい?」 紗奈:「えびタルタル。」 凛子:「一種類のでいいの?」 紗奈:「うん。好きなので埋め尽くされてるのがいい。」 凛子:「そっか。」 紗奈:「うん。」 凛子:「じゃあ、注文するね。」 紗奈:「うん。じゃあわたし、お布団たたむね。」 凛子:「いいよ。」 紗奈:「え?」 凛子:「お昼食べたら、またごろごろしよ。」 紗奈:「・・・太るよ。」 凛子:「・・・太ったら嫌いになる?」 紗奈:「・・・ううん。大丈夫。」 凛子:「じゃあ、ごろごろする。」 紗奈:「ふふ。」 凛子:「なに?」 紗奈:「なんでも。」 凛子:「んん?」 紗奈:「ほら、注文は?」 凛子:「はい、じゃあポチりま~す。」  :  0:おわり

タイトル:『ふたりの時間』  :   :  紗奈:「(寝息)すーすー。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ん・・・んん・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・んん・・・ぁんぉ・・・ん・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ん・・・・・・ん?・・・んん・・・。」 凛子:「・・・おはよ。」 紗奈:「・・・ん・・・おはよ、凛子さん・・・。」 凛子:「ふふ。」 紗奈:「ん~、・・・今何時?」 凛子:「今?今ね・・・、十時半。」 紗奈:「・・・んん。」 凛子:「まだ眠い?」 紗奈:「うん・・・。」 凛子:「いいよ、寝てて。」 紗奈:「ん・・・。凛子さんは、何時に起きたの?」 凛子:「わたし?わたしは、十時前くらいかな。」 紗奈:「ん・・・。何してたの?」 凛子:「別に。・・・紗奈ちゃんの寝顔見てた。」 紗奈:「え~。」 凛子:「なに?」 紗奈:「・・・恥ずかしい。」 凛子:「可愛かったよ。」 紗奈:「むぅ。」 凛子:「ふふ。」 紗奈:「・・・わたし、何か言ってなかった?」 凛子:「なにか?」 紗奈:「寝言・・・。」 凛子:「あ~。」 紗奈:「言ってた?」 凛子:「う~ん。なにかもぞもぞ言ってたけど、なに言ってるかまではわからなかった。」 紗奈:「ほんとに?」 凛子:「うん。ほんと。」 紗奈:「そっか。」 凛子:「うん。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・このまま黙ってたら、また寝ちゃいそう。」 凛子:「いいよ。寝ても。」 紗奈:「う~ん。でも、もったいないじゃん?」 凛子:「なにが?」 紗奈:「せっかくの凛子さんと一緒にいられる時間が。」 凛子:「ここのところ、毎週ずっと一緒にいるじゃん。」 紗奈:「そうだけどぉ・・・。」 凛子:「・・・なに?」 紗奈:「・・・もっと一緒にいたい。」 凛子:「・・・嬉しいこと言ってくれるじゃない。」 紗奈:「だって、本当のことだもん。」 凛子:「ありがと。」 紗奈:「うん・・・。」 凛子:「お水飲む?」 紗奈:「うん。」 凛子:「はい。」(ペットボトルを渡す) 紗奈:「ありがと。(水を飲む)んぐんぐんぐ・・・、はぁ。」 凛子:「はい。」(ペットボトルを受け取る) 紗奈:「あ、うん。ありがと。」 凛子:「・・・今日、いい天気だね。」 紗奈:「・・・そうだね。」 凛子:「どこか行く?」 紗奈:「・・・ん~。」 凛子:「ん?」 紗奈:「・・・行かない。」 凛子:「行かない?」 紗奈:「うん。家で凛子さんとふたりでごろごろしてるほうがいい。」 凛子:「そう?」 紗奈:「うん。」 凛子:「・・・じゃあ、そうしよっか。」 紗奈:「うん。」 凛子:「一日中お布団でごろごろ。」 紗奈:「うん。」 凛子:「・・・たまにはいいよね。」 紗奈:「・・・うん。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・・・・ねえ。」 凛子:「うん?」 紗奈:「こっちきて。」 凛子:「・・・うん。・・・はい。」 紗奈:「ぎゅ~ってして。」 凛子:「・・・ふふ。はい。」 紗奈:「・・・ん。」 凛子:「なに?」 紗奈:「あったかい。」 凛子:「そう?」 紗奈:「うん。」 凛子:「そっか。」 紗奈:「あと・・・。」 凛子:「あと?」 紗奈:「やわらかい。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「わたしね、大きい胸にあこがれた事なかったんだ。」 凛子:「ふぅん。そうなんだ?」 紗奈:「うん。でも、凛子さんの胸は、なんかいいよね。」 凛子:「なにが?」 紗奈:「なんかさ、おっぱいって感じ。」 凛子:「ちょっと。どういうこと?」 紗奈:「んん?」 凛子:「他人(ひと)の胸をいやらしい目で見ないでください。」 紗奈:「違うよ?そういうんじゃないよ。」 凛子:「じゃあ、どういうこと?」 紗奈:「なんかね。安心するって言うか、ママのおっぱいみたい。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「ん?どうしたの?」 凛子:「・・・あのね。」 紗奈:「うん。」 凛子:「わたしと紗奈ちゃん、そこまで歳変わらないよね?」 紗奈:「うん。」 凛子:「っていうか、わたしまだ結婚もしてないんだけど。」 紗奈:「うん。あ、違うよ?凛子さんがお母さんみたいって言ってるんじゃないの。」 凛子:「じゃあなに?」 紗奈:「凛子さんのおっぱいが、お母さんみたいだって言ってるの。」 凛子:「・・・どう違うの?」 紗奈:「う~ん・・・、言葉じゃうまく伝えられないんだけど・・・。」 凛子:「・・・なに?」 紗奈:「とにかく、あったかくて柔らかくて、ずっと触れてたい気持ちになるってこと。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・だめ?」 凛子:「・・・おっきい赤ちゃんだね。」 紗奈:「え?」 凛子:「わたしがお母さんなんじゃなくて、紗奈ちゃんがおっきい赤ちゃんなんだなって。」 紗奈:「わたし・・・、赤ちゃん?」 凛子:「うん。赤ちゃん。」 紗奈:「う~ん・・・。そうかなぁ?」 凛子:「おっぱいが好きなんでしょ?」 紗奈:「うん・・・。」 凛子:「じゃあ、赤ちゃんだ。」 紗奈:「う~ん・・・。」 凛子:「ん?」 紗奈:「・・・でも。」 凛子:「でも?」 紗奈:「凛子さんの赤ちゃんなら、いいかな。」 凛子:「ふふ・・・。いいの?」 紗奈:「うん。凛子さんの赤ちゃんになら、なりたいかも。」 凛子:「・・・こんなに大きな赤ちゃんは困るなぁ。」 紗奈:「・・・だめ?」 凛子:「う~ん・・・、・・・いいよ。」 紗奈:「やった。んんんん。」 凛子:「ちょっと。こら。顔押し付けないで。」 紗奈:「んふふ。」 凛子:「もう。いたずらっこ。」 紗奈:「ママ~。」 凛子:「ん?」 紗奈:「おっぱい。」 凛子:「え?あ、こら。ちょっ、ん。だめ。」 紗奈:「んふ。気持ちいい?」 凛子:「もう。・・・赤ちゃんがそんなことしちゃダメでしょ。」 紗奈:「赤ちゃんだからするんだよ。」 凛子:「そんな子にはおしおき。あむ、ん・・・。」 紗奈:「ん、・・・んぅ、・・・はぁ。・・・キスがおしおきなの?」 凛子:「・・・もっと、する?」 紗奈:「・・・うん。・・・んん・・・んはぁ・・・ん・・・はぁ・・・はぁ・・・。」 凛子:「・・・紗奈ちゃんってさ、キスすると、泣きそうな顔するよね。」 紗奈:「・・・え?」 凛子:「目が潤んでさ、今にも涙がこぼれそう。」 紗奈:「そう?」 凛子:「うん。・・・それがすごく可愛くて、もっともっとしたくなる。」 紗奈:「・・・いいよ。」 凛子:「え?」 紗奈:「凛子さんがしたいなら、いいよ。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「わたし、凛子さんがしたいこと、全部してあげたい・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・なに?」 凛子:「ん~・・・、なんていうかさ、こういうのが幸せなのかなぁって・・・。」 紗奈:「幸せ?」 凛子:「うん・・・。・・・わたしね、今まで何人かの男の人とつき合ってきたけど、こういう穏やかな幸せって感じたことなかったんだ・・・。」 紗奈:「そうなの?」 凛子:「うん・・・。別に、男の人が嫌いってわけじゃないのよ? 凛子: でも、なんだか、ぐいぐい求められる感じが、受け入れられないというか・・・。」 紗奈:「うん。」 凛子:「誰かに求められること自体は嬉しいんだけどね。 凛子: でも、なんていうか・・・、わたしが消費されていくみたいな感覚?なんだよね。」 紗奈:「消費・・・?」 凛子:「うん。なんて言えばいいかな・・・。 凛子: きっと相手が求めているのは、本当のわたしじゃなくて、わたしの体とか、理想の中のわたしで・・・。 凛子: 相手の求めに応じれば応じるほど、本当のわたしが少しずつ消えてなくなっていく、みたいな・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「そうして、だんだんと本当の自分がわからなくなってた。 凛子: でも、こうして紗奈ちゃんと一緒にいると、わたしはわたしでいられる。 凛子: 本当のわたしのまま、幸せを感じられるの。」 紗奈:「・・・そっか。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「そうなんだとしたら、嬉しい。」 凛子:「本当?」 紗奈:「うん。嬉しい。凛子さんが幸せなら、わたしも嬉しい。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・どうしたの?」 凛子:「・・・でも、時々いいのかなって思うの。」 紗奈:「なにが?」 凛子:「紗奈ちゃんを、わたしにつき合わせて。」 紗奈:「・・・どういうこと?」 凛子:「紗奈ちゃんはまだ若いし。」 紗奈:「歳はそんなに変わらないって言ったじゃん。」 凛子:「・・・女の人が好きなわけじゃないし。」 紗奈:「それは、凛子さんだってそうでしょ?」 凛子:「そうだけど・・・。でもわたしは、男の人はもう無理かなって思ったから・・・。 凛子: でも、紗奈ちゃんはそうじゃないでしょ?」 紗奈:「関係ないよ。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「わたしは凛子さんのこと好きだよ。男とか女とか、そういうの関係なく好き。 紗奈: 好きだから一緒にいたいし、一緒にいると幸せな気持ちになる。」 凛子:「・・・紗奈ちゃんも、幸せな気持ちになる?」 紗奈:「うん。なるよ。凛子さんといると、とっても安心するし幸せ。」 凛子:「・・・そっか。」 紗奈:「うん。・・・難しいことなんていいよ。今こうして幸せなんだから。」 凛子:「・・・うん。そうだね。難しいことなんて、考えなくてもいいか。」 紗奈:「うん。だから、・・・キスしたかったら、していいんだよ?」 凛子:「・・・女の子同士なのに?」 紗奈:「うん・・・。ん・・・んぁ・・・んん・・・はぁ・・・ん・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん・・・、可愛い・・・。」 紗奈:「凛子さんも、すごく可愛いよ・・・。」 凛子:「・・・なんでだろうね。」 紗奈:「・・・なにが?」 凛子:「同じ行為でも、紗奈ちゃんとすると、こんなに幸せが溢れてくるの。」 紗奈:「・・・わたし、知ってるよ。」 凛子:「え?」 紗奈:「昔、お婆ちゃんが言ってたの。『愛は、求めれば苦しむけど、与えれば幸せになれるんだよ』って。」 凛子:「与えれば幸せになれる・・・。」 紗奈:「凛子さんは、わたしに愛情を持って接してくれてるから幸せなんだよ。」 凛子:「愛情を・・・?」 紗奈:「うん。わたしのことを考えてくれたでしょ?自分のことよりわたしのことを。」 凛子:「だってそれは、紗奈ちゃんには幸せになって欲しいから。」 紗奈:「ほら、ね?だから、幸せなんだよ。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「わたしも、凛子さんに幸せになってほしい。だから心がぽかぽかするし、幸せな気持ちになる。」 凛子:「・・・そっか。」 紗奈:「うん・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・どうしたの?」 凛子:「・・・うん。・・・あのね。」 紗奈:「うん。」 凛子:「紗奈ちゃんと・・・、その、初めてそういう風になったとき・・・。」 紗奈:「うん。」 凛子:「紗奈ちゃんの方から、されたじゃない?」 紗奈:「うん。」 凛子:「その時、女同士なのにってビックリしたんだけど、・・・なぜだか嫌じゃなかったっていうか、不思議な心地よさを感じたんだけど・・・。 凛子: それがなんでだかわかった気がする・・・。」 紗奈:「そう?」 凛子:「うん。・・・きっとさ、求める以上に、与えてくれてたからなんだなって・・・。」 紗奈:「あ~・・・、たしかに。わたし、凛子さんの感じてる顔が好き。」 凛子:「か、感じてる顔って・・・。」 紗奈:「凛子さんが気持ち良さそうにしてるのを見るのが好きなの。だから、ついついしちゃう、みたいな?」 凛子:「なんだかそれ、いたずらっ子の言い分みたい。」 紗奈:「凛子さんは?凛子さんもそうじゃない?」 凛子:「・・・そうね。わたしもそうかも。自分がって言うよりは、紗奈ちゃんを気持ちよくしてあげたい。」 紗奈:「なんか、ときどき戦いみたいになってるときあるよね。負けるか~って。」 凛子:「それは、紗奈ちゃんがそういう風な雰囲気にするから。」 紗奈:「ふふふ。なんか楽しくなっちゃって。」 凛子:「もう、ふふ。」 紗奈:「・・・わたしね、初めてのとき、なんだかよくわからないうちに、いきなりされちゃって。」 凛子:「初めてのとき・・・?」 紗奈:「うん。え?なになに?なにするの?ええ?って思ってたら、終わってた。」 凛子:「・・・それって、・・・相手は?」 紗奈:「同級生。少し前につき合ってって言われてOKしてたんだけど。 紗奈: 初めてその彼の家に呼ばれて遊びに行ったら、いきなり。」 凛子:「・・・そう。」 紗奈:「なんか変な雰囲気だな~とは思ってたんだけどさ。その頃はまだよくわかってなくて・・・。 紗奈: で、終わった後でさ、『ごめん』とか言ってくるの。謝るくらいならしなきゃいいのにね。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「その後なんだか気まずくなって、結局そのまま自然消滅。なんだったんだろって感じ。 紗奈: ・・・その後も何人かとエッチしたんだけど、やっぱりなんだかよくわからなくて。 紗奈: でも、凛子さんみたいに相手に合わせようとしなかったからかな? 紗奈: そんなに傷ついたりはしなかったんだ。ただ、こんなものかぁって思っただけで。」 凛子:「・・・うん。」 紗奈:「でもね。お婆ちゃんが亡くなって、わがまま言ってこの家を残してもらって、一人で住むようになってちょうど一年経ったくらいかなぁ。 紗奈: ある晩ね、庭に男の人が入ってきたの。」 凛子:「男の人?」 紗奈:「うん。なんか酔っ払って庭に入り込んできたの。」 凛子:「え?大丈夫なの?それ。」 紗奈:「うん。庭のね、桜の木を見に来たんだって。」 凛子:「・・・知らない人なんだよね?」 紗奈:「うん。・・・でね、ふたりで一緒に桜を見たんだ。」 凛子:「その人と?」 紗奈:「うん。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・その人ね、数日前に大切な人を亡くしたんだって言ってた。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「大の大人がさ、見ず知らずの女の前で涙ぼろぼろ流して泣いてんの・・・。 紗奈: それ見たらさぁ、わたしもお婆ちゃんのこと思い出して泣いちゃって・・・。 紗奈: 知らないふたりが、並んで桜を見ながら泣いてんの。・・・よく考えたら笑っちゃうよね。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「それから、その人とちょくちょく、うちで会うようになって・・・。 紗奈: ・・・その人とは、嫌じゃなかったんだ・・・。キスをするのも、エッチするのも・・・。」 凛子:「好き・・・だったの?」 紗奈:「・・・・・・わかんない。嫌じゃなかったよ。あの人のすることは全部。嫌じゃなかった・・・。でも・・・。」 凛子:「・・・でも?」 紗奈:「死んじゃったから。」 凛子:「・・・え?死んだ・・・?」 紗奈:「うん・・・。死んじゃった。マンションから飛び降りたんだって。」 凛子:「え・・・?どうして?」 紗奈:「・・・理由はわかんない。でも、そのちょっと前に連絡が来て・・・。」 凛子:「・・・なんて?」 紗奈:「・・・『もう行けない。ごめん』って。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・元々、空気みたいな人だったんだ。ここにいるのに、いない、みたいな・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・あ。」 凛子:「・・・なに?」 紗奈:「そういえば、その一ヶ月前くらいに。」 凛子:「うん。」 紗奈:「うちに猫が来たんだ。」 凛子:「猫が?」 紗奈:「うん。」 凛子:「・・・それで?」 紗奈:「それで・・・、なんとなく、その人がいなくなっちゃう気がしたの。」 凛子:「・・・なんで?」 紗奈:「・・・わかんない。なんとなく。」 凛子:「・・・そう。」 紗奈:「うん・・・。それを伝えたらね、『そんなこと言うと思わなかった』って言われた。」 凛子:「・・・どういうこと?」 紗奈:「ん~、なんかね、わたしはこの世界の何にも興味がなさそうに見えるらしいよ。 紗奈: ・・・わかる?」 凛子:「・・・ちょっとわかるかも。」 紗奈:「・・・そうなんだ。」 凛子:「・・・・・・その人ってどんな人だったの?」 紗奈:「その人?」 凛子:「うん。」 紗奈:「ん~・・・、寂しそう・・・な人?」 凛子:「寂しそう?」 紗奈:「全てをあきらめてるって言うか・・・。ここにいるのに、ここにいない感じ。」 凛子:「それ、さっきも言ってたね。」 紗奈:「うん。人がいる安心感はあるんだけど、人がいる面倒くささはないっていうか。」 凛子:「ああ、なんとなくわかるかも。」 紗奈:「ほんと?」 凛子:「うちのお父さんがそんな感じかも。存在感がないっていうか。邪魔せずそこにいるって感じ?」 紗奈:「そうなんだ?うちはお父さん、小さい頃からいないからよくわからないけど。」 凛子:「紗奈ちゃん、お父さんいないんだ?」 紗奈:「うん。小さい頃に離婚して、お母さんとお婆ちゃん家に住んでたの。」 凛子:「そうだったんだ。」 紗奈:「うん。高校に上がるときにお母さんの仕事の都合で一度ここを離れたんだけど、お婆ちゃんが亡くなってまた帰ってきたの。」 凛子:「そっか。」 紗奈:「うん。」 凛子:「あ、話が脱線しちゃったね。ごめん。」 紗奈:「ううん。」 凛子:「・・・その男の人は、なんで紗奈ちゃんのところに来るようになったの?」 紗奈:「え?」 凛子:「ほら、最初は桜を見に入ってきたって言ってたじゃない?」 紗奈:「ああ、うん。」 凛子:「それから、なんでまた来るようになったの?」 紗奈:「うんと、その日、桜を見たまま縁側で寝そうになったから、その部屋にお布団敷いてあげたの。」 凛子:「うん。」 紗奈:「それで、次の日起きたらすごい申し訳なさそうにしてて・・・。 紗奈: だから、『気にしないでください』って。 紗奈: 『なんなら、毎日ひとりで寂しいから、時々遊びに来てください』って言ったの。」 凛子:「え?そしたら本当に来たの?」 紗奈:「・・・うん。」 凛子:「え?そんなの社交辞令でしょ?普通来る?」 紗奈:「う~ん、でも、結構強引に誘っちゃったし。」 凛子:「え?そんなに?」 紗奈:「・・・うん。」 凛子:「なんで?」 紗奈:「・・・なんとなく?」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ん?凛子さん?」 凛子:「やっぱり紗奈ちゃん、その人のこと好きだったんじゃない?」 紗奈:「ん~、どうだろ。」 凛子:「絶対そうだよ。」 紗奈:「ん~、なんていうか、雰囲気とかは確かに好きだったと思う。」 凛子:「ほら。」 紗奈:「でも、あの人のことを好きだったかと聞かれると、いまいち・・・しっくりこない。」 凛子:「なんで?」 紗奈:「・・・だって、あの人が亡くなったって知ったとき、涙が出てこなかったんだよ。」 凛子:「え?」 紗奈:「ああ、そうかぁ。やっぱりなぁって思った。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「やっぱりあの人はいなくなっちゃうんだなぁって・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん・・・。」 紗奈:「だからやっぱり、好きではなかったんだと思う。気の合う仲間ではあったけどね。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「なに?」 凛子:「・・・こっちきて。」 紗奈:「ん?」 凛子:「抱きしめてあげるから。」 紗奈:「んふ。大丈夫だよ。」 凛子:「いいから。」 紗奈:「・・・うん。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・凛子さんにこうしてもらうと安心する・・・。」 凛子:「・・・そう?」 紗奈:「うん・・・。」 凛子:「・・・・・・紗奈ちゃん。」 紗奈:「ん?なに?」 凛子:「その人のさぁ、好きだったところ、教えて。」 紗奈:「好きだったところ?」 凛子:「うん。」 紗奈:「・・・・・・手。」 凛子:「手?」 紗奈:「うん。手がね、すごく大きかった。」 凛子:「そう。他には?」 紗奈:「あとは~、髪がサラサラだった。」 凛子:「そうなんだ?」 紗奈:「うん。あと、パスタ作るのが上手だった。」 凛子:「美味しかった?」 紗奈:「うん。カルボナーラが絶品だった。」 凛子:「へえ。」 紗奈:「あと、声が好きだったなぁ。」 凛子:「声?」 紗奈:「うん。とっても柔らかい声してた。」 凛子:「そう・・・。他には?」 紗奈:「とっても・・・、優しかった・・・。」 凛子:「そう・・・。」 紗奈:「・・・・・・なにこれ。・・・なんで、今ごろ・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん・・・。」 紗奈:「・・・やだ。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・いやだよ・・・。」 凛子:「・・・ごめん。」 紗奈:「・・・なんで・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「気付きたくなかった・・・。」 凛子:「・・・ごめんね。」 紗奈:「・・・みんな・・・いなくなるの・・・。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「・・・わたしが好きな人、・・・みんないなくなっちゃうの・・・。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「お父さんも、お婆ちゃんも、ゆきちゃんも・・・。みんな・・・。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「・・・どうしてかな・・・。わたしが悪い子だからかな・・・。」 凛子:「ううん。そうじゃないよ・・・。そうじゃない・・・。」 紗奈:「大人になんかなりたくなかった・・・。ずっと子供でいたかったのに・・・。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「それでも体は勝手に大人になるし、周りもどんどん変わっていくし・・・。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「わたしが大事に思う人がいなくなるのなら、わたしは誰も好きになんかならない。 紗奈: どうせみんないなくなるのなら、誰のことも好きになんかならない。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「ひとりでいい。ずっとひとりでいいの・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん・・・。」 紗奈:「わたしは、ひとりでいい・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「紗奈ちゃん、あなたの大事な人がいなくなったのは、紗奈ちゃんが悪いからじゃない。 凛子: 紗奈ちゃんが好きになったから、いなくなったんじゃない。 凛子: ただみんな、一生懸命生きた結果、そうなってしまっただけなの。 凛子: あなたのせいじゃない。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「・・・一生懸命生きたって、思い通りになるわけじゃないし、必ず幸せになれるわけでもないけど。 凛子: でも、だからこそ、今を大事にして欲しいの。過去に囚われず、未来を恐れずに。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「・・・はっきり言ってわたしも、紗奈ちゃんのところに逃げ込んだ人間だから、あんまり偉そうなこと言えないけど。 凛子: それでも、紗奈ちゃんには幸せになってもらいたいから。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「そばにいて欲しいときはそばにいる。甘えたいときは甘えさせてあげる。 凛子: だからさ、ひとりでいいなんて言わないで。・・・わたしはここにいるよ。」 紗奈:「…うん・・・。」 凛子:「ひとりじゃ抱えきれないことも、ふたりなら支え合っていけるよ。ね?」 紗奈:「・・・うん。」 凛子:「泣きたい時はわたしが胸を貸してあげるから。わたしのおっぱい好きでしょ?」 紗奈:「ふふ。・・・・・・ありがと。凛子さん。」 凛子:「ううん。わたしこそ、ありがとう。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「わたしを、受け入れてくれて。ありがとう。」 紗奈:「・・・凛子さんのことは大好きだよ。」 凛子:「うん・・・。」 紗奈:「・・・・・・。」 凛子:「・・・・・・。」 紗奈:「・・・ん?どうしたの?」 凛子:「うん・・・。あのね。」 紗奈:「うん。」 凛子:「その男の人のことは好きかどうかわからないって言ってたのに、わたしのことは好きって言ってくれるんだな~って。」 紗奈:「・・・ああ、・・・うん。」 凛子:「・・・なんだかちょっと妬ける。」 紗奈:「え?なんで?」 凛子:「・・・内緒。」 紗奈:「え?なんで?好きって言ってるのに、なんで?」 凛子:「わからないならいい。」 紗奈:「ええ~、なんで~。教えて~。」 凛子:「ほら、もうそろそろ起きよ。お昼なに食べる?」 紗奈:「あ~、話そらした~。」 凛子:「もう十一時過ぎたし、わたしお腹空いた。」 紗奈:「ぶぅ~。」 凛子:「何か出前でもとる?」 紗奈:「ん~、じゃあ、久しぶりにピザ食べたい。」 凛子:「え?ピザ、嫌いじゃなかったっけ?」 紗奈:「ううん。好き。でも、食べないようにしてたの。」 凛子:「え?なんで?」 紗奈:「ん~、なんとなく。」 凛子:「そう。じゃあ、ピザにする?」 紗奈:「うん。」 凛子:「どれがいい?」 紗奈:「えびタルタル。」 凛子:「一種類のでいいの?」 紗奈:「うん。好きなので埋め尽くされてるのがいい。」 凛子:「そっか。」 紗奈:「うん。」 凛子:「じゃあ、注文するね。」 紗奈:「うん。じゃあわたし、お布団たたむね。」 凛子:「いいよ。」 紗奈:「え?」 凛子:「お昼食べたら、またごろごろしよ。」 紗奈:「・・・太るよ。」 凛子:「・・・太ったら嫌いになる?」 紗奈:「・・・ううん。大丈夫。」 凛子:「じゃあ、ごろごろする。」 紗奈:「ふふ。」 凛子:「なに?」 紗奈:「なんでも。」 凛子:「んん?」 紗奈:「ほら、注文は?」 凛子:「はい、じゃあポチりま~す。」  :  0:おわり