台本概要
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タイトル | 桜舞うころまた君に会いに行く |
---|---|
作者名 | そらいろ (@sorairo_0801) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
3月24日 それは僕たちがこの公園で出会った日。毎年この日になると彼女と2人でこの公園に来て桜を見に来ていた。 こうして彼女と一緒に桜を見れるだけで…僕は本当に幸せだったんだ。 これは少し切ない男女二人の物語り。 ・一人称、語尾変更、アドリブ◎ ・世界観を壊すような過度なアドリブはご遠慮ください ・台本利用の際は、作者名・タイトル・URLの記載をよろしくお願いします 886 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
夏樹 | 男 | 48 | 加奈の彼氏 |
加奈 | 女 | 50 | 夏樹の彼女 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
夏樹(M):桜舞う4月
夏樹(M):僕と加奈は二人の思い出のこの場所で一緒に桜を眺めていた
0:
加奈:「桜…綺麗だね」
夏樹:「…ああ。綺麗だな」
加奈:「2年前。ここで私たち出会ったのよね」
夏樹:「懐かしいな」
加奈:「2年前の今日、私はこの公園のベンチで桜を見ながら泣いてた。仕事や人間関係、もう何もかもが嫌になって…。綺麗な桜でも見たら…少しでも気持ちが落ち着くかなと思って一人でここへ来たの。そんな時夏樹が声をかけてくれた」
夏樹:「そうだったな」
加奈:「桜綺麗ですね。なんて知らない男の人からいきなり声をかけられたから驚いちゃった笑」
夏樹:「だってなんて声をかければいいか分からなかったんだ。綺麗な女性が夜のベンチで一人泣いているんだぞ。声かけるのだって相当な勇気が必要だったんだからな」
加奈:「ふふ。夏樹は本当に優しいよね。…だから好きになったの」
夏樹:「な、なんだよ…いきなり」
加奈:「いやー。なんか桜を前にすると急に素直になっちゃうみたい」
夏樹:「なんだそれ笑」
加奈:「私は桜のおかげでこうして夏樹と出会えたと思ってる」
夏樹:「加奈…」
加奈:「だからね、私が一番好きな花は桜なの。こうして二人で桜が見れる春が毎年待ち遠しいんだ」
0:
夏樹(M):彼女は昔と変わらない笑顔で僕に言った
夏樹(M):そう、僕はそんな彼女の笑顔に惹かれたんだ
0:
加奈:「こうしてさ。綺麗な景色を二人で一緒に見られるのって本当に素敵なことよね」
夏樹:「そうだな」
加奈:「夏樹とこの先もずっとこうして一緒にいたいな…」
夏樹:「…っ!」
加奈:「あ、…わ、わたし、何言ってるんだろ、恥ずかし笑」
夏樹:「…」
加奈:「…夏樹?」
夏樹:「…僕だって叶うなら…これから先もずっと、加奈と同じ景色を隣で見ていたかったよ」
加奈:「夏樹こそいきなりなーに?」
夏樹:「なぁ加奈…。加奈の瞳には今、どんな景色がうつっているんだ?」
加奈:「え、どんな景色?なーに言ってるの。夏樹にも見えてるでしょう、目の前に広がる綺麗な満開の桜が」
0:
夏樹(M):彼女の笑顔を見てこんなに胸が苦しくなったのは初めてだった
0:
夏樹:「ごめんな。加奈。僕にはもう…加奈と同じ景色は見れないんだよ」
加奈:「ちょ…夏樹…どうして泣いてるの?」
夏樹:「昨年この公園の桜の木は全て切り倒されたんだ。だから、もうここには桜の木はないんだ」
加奈:「ちょっと。私をからかわないでよ。あ、昨日夏樹のプリンを勝手に食べたこと怒ってるんでしょう」
夏樹:「プリン?…はは。懐かしいなぁ。やっぱりあのプリンを食べたのは加奈だったのか」
加奈:「懐かしいって…昨日のことじゃない。ごめんね。ほんとは明日買ってそっと戻しておこうと思ってたの」
夏樹:「明日…か」
加奈:「いや、この後買って帰るから!あ、あと、今度の休みに夏樹の好きなオムライス作るから、ね」
夏樹:「加奈のオムライスは本当に美味しいんだよな。いまだに加奈のオムライスを超えるオムライスに僕は出会ってないよ。また…食べたいなぁ」
加奈:「またって大袈裟ね。いつでも作ってあげるのに…って。夏樹…怒ってるわけじゃないの?」
夏樹:「あぁ。怒ってないよ。なんだか…懐かしくてさ」
加奈:「懐かしいって…さっきから、ここに桜はないとか、同じ景色はもう見れないとか、変なことばっかり。本当にどうしちゃったの?」
夏樹:「…」
加奈:「どうして…ずっと…泣いてるの…?」
0:
夏樹(M):俺は十年前と変わらない君を抱きしめた
0:
加奈:「ちょちょっと夏樹!いきなりど…」
夏樹:「加奈は春が待ち遠しいといったけど、僕は春が一番嫌いなんだよ」
加奈:「え…」
夏樹:「だって、だって何よりも大切な君を失った季節なんだから」
加奈:「どういうこと…」
夏樹:「加奈は6年前の今日。事故で…死んだんだよ」
加奈:「事故で…死んだ?ちょっと夏樹、冗談でも言っていいことと悪いことがあるでしょう」
夏樹:「加奈。嘘じゃないんだよ」
加奈:「…っ」
夏樹:「事故があった一年後、僕はすがる思いで一人でこの場所に来たんだ。そしたら…当時と変わらない姿の加奈がここにいて…笑顔で僕を待っていたんだ。本当は事故なんて全て夢だったんじゃないかって思った。でも0時になると…いつも加奈は僕の目の前から消えてしまうんだ」
加奈:「当時のままの姿って…私の時が…止まっているって…こと?」
夏樹:「あぁ。そうだ」
加奈:「うそっ…だって今日は2017年3月24日でしょう?」
夏樹:「違う。今は2023年3月24日だよ」
加奈:「2023年…?冗談…だよね…。私…本当に…死んじゃったの…?」
夏樹:「毎年この日に加奈と同じ景色を見れるだけで僕は幸せだった」
夏樹:「でも作年桜の木が切り倒されたことによって、加奈と同じ景色を見ることすら叶わなくなった」
加奈:「夏樹…」
夏樹:「ごめん加奈。僕は最低だよ。もっと早く加奈に伝えることもできたのに…。どうしても加奈に会いたくて…加奈を失いたくなくて…幽霊でもいい…幻覚でもいいから…側にいたいと思ってずっと言えなかった…」
加奈:「…」
夏樹:「加奈に…もう一度名前を呼んでもらえたことが、もう一度加奈の笑顔を見れたことが本当に嬉しくてさ。加奈に真実を伝えたら今度こそもう二度と会えなくなるんじゃないかって…怖くて…毎回言えなくて…。ごめん。本当に…」
加奈:「…ねぇ。死んだときの私、変な顔してなかった?」
夏樹:「し、してないよ…まるで眠っているようだった。…って僕の話、信じてくれるの?」
加奈:「よかった。最後の最後に不細工な顔、恋人に見られたくないもんね。最初は驚いちゃったけど…信じるよ。夏樹がそんな嘘、言うわけないもの。言われてみると確かに今の夏樹、ちょっと大人っぽくなってるし。それに…随分痩せたでしょう?」
夏樹:「…」
加奈:「私がいなくなってから、ちゃんとご飯食べてる?まさかカップラーメンばっかり食べてるんじゃないでしょうね。ダメよ、ちゃんと栄養のあるものを食べないと!」
夏樹:「う…すみません。でも、一人で食べるご飯は何を食べても味がしなくてさ。加奈と食べてた頃は何を食べてもおいしかったのに」
加奈:「夏樹…。ごめんね。夏樹にばっかり辛い思いさせちゃったんだね」
夏樹:「違う僕が…」
加奈:「もう謝らないで。夏樹は最低なんかじゃない。私は今日を繰り返しているみたいだけど、きっと毎回私は幸せだった。例え前回の記憶がなかったとしても、今の私はとっても幸せな気持ちだもん。だから自分を責めないで」
夏樹:「加奈…」
加奈:「ほら、0時まであと1時間しかないんだからさ、泣いてないでたくさん話そう。ね?」
夏樹:「ああ。そうだな」
0:
夏樹(M):それから僕たちは、色々な話をした
夏樹(M):出会ったときの話や2人で大喧嘩した日の話。楽しかった思い出や、もう来ることの無い2人の未来の話
夏樹(M):このまま時間が止まってしまえばいいのにと願ったが、気づけば時計の針は23時50分を指していた
0:
加奈:「…もうすぐお別れなんだね」
0:
夏樹(M):そう言う加奈の手は少し震えていた
0:
夏樹:「…」
夏樹:「加奈。本当はあの日、加奈にこれを渡すつもりだったんだ」
0:
夏樹(M):僕は加奈が亡くなってからずっと引き出しにしまっていた加奈へのプレゼントを渡した
0:
加奈:「これ…指輪…」
夏樹:「ああ。あの日からずっと大切にしまってあったんだ。ごめん、こんな形で渡すことになって…」
加奈:「……。ずっと待ってたんだよ」
夏樹:「遅くなってごめん。」
加奈:「ううん。とっても嬉しい。…でももう受け取れないよ。だって私はもう死んじゃってるんだもん。指輪はこれからも夏樹と共に歩める…ちゃんと生きてる…夏樹のお嫁さんになる人に渡さないと。私にはもう受け取る資格がないよ…」
夏樹:「加奈。俺はきっと加奈より好きになる人なんてこの先表れないとい思ってるんだ。誰よりも優しくて思いやりがあって、自分のことより人のために行動できて、笑顔が素敵で。僕はそんな加奈にいつも支えられていたんだ。加奈が亡くなって改めて実感したよ」
加奈:「夏樹…」
夏樹:「だから、これから先も…たとえ生きている世界が違っても…僕の妻でいてください」
加奈:「…うん…もちろんだよ…私…夏樹のこと…大好きだもん」
夏樹:「愛してるよ。加奈」
加奈:「ふふ、どう、指輪似合う?」
夏樹:「あぁ。とっても綺麗だ」
加奈:「私、幽霊になっても気づかずに夏樹に会いに来るなんて、愛が重いのかな」
夏樹:「はは。そうかもね。でもそんな加奈に会いに来る僕も負けないくらい愛が重いかもしれないな」
加奈:「確かにそうかも。また、桜が私たちを出会わせてくれたんだね」
0:
夏樹(M):そういうと彼女は綺麗な瞳に涙を浮かべ、冷たい手で僕の頬を触り優しく口づけをした
夏樹(M):そのとき、僕にはもう見えるはずのない綺麗な桜の花びらが僕たちの周りを舞っていた
0:
夏樹:「…桜…?」
加奈:「夏樹にも見えるの?」
夏樹:「…あぁ。僕にも見えるよ。綺麗だな」
加奈:「うん。とっても綺麗」
夏樹:「また同じ景色を二人で見れたな」
加奈:「ふふ。そうだね」
0:
夏樹(M):そうして僕たち2人は綺麗に舞う桜をじっと眺めていた
0:
夏樹:「…!!」
0:
夏樹:「っ…加奈?…加奈!!」
0:
夏樹(M):気づくとあんなに綺麗に咲いていた桜や加奈の姿はもうそこにはなく
夏樹(M):僕の足元には指輪が一つ落ちていた
0:
加奈:「夏樹、私に会いに来てくれてありがとう」
0:
夏樹(M):そう言って笑う加奈の声がどこからか聞こえたような気がした
夏樹(M):桜舞う4月
夏樹(M):僕と加奈は二人の思い出のこの場所で一緒に桜を眺めていた
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加奈:「桜…綺麗だね」
夏樹:「…ああ。綺麗だな」
加奈:「2年前。ここで私たち出会ったのよね」
夏樹:「懐かしいな」
加奈:「2年前の今日、私はこの公園のベンチで桜を見ながら泣いてた。仕事や人間関係、もう何もかもが嫌になって…。綺麗な桜でも見たら…少しでも気持ちが落ち着くかなと思って一人でここへ来たの。そんな時夏樹が声をかけてくれた」
夏樹:「そうだったな」
加奈:「桜綺麗ですね。なんて知らない男の人からいきなり声をかけられたから驚いちゃった笑」
夏樹:「だってなんて声をかければいいか分からなかったんだ。綺麗な女性が夜のベンチで一人泣いているんだぞ。声かけるのだって相当な勇気が必要だったんだからな」
加奈:「ふふ。夏樹は本当に優しいよね。…だから好きになったの」
夏樹:「な、なんだよ…いきなり」
加奈:「いやー。なんか桜を前にすると急に素直になっちゃうみたい」
夏樹:「なんだそれ笑」
加奈:「私は桜のおかげでこうして夏樹と出会えたと思ってる」
夏樹:「加奈…」
加奈:「だからね、私が一番好きな花は桜なの。こうして二人で桜が見れる春が毎年待ち遠しいんだ」
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夏樹(M):彼女は昔と変わらない笑顔で僕に言った
夏樹(M):そう、僕はそんな彼女の笑顔に惹かれたんだ
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加奈:「こうしてさ。綺麗な景色を二人で一緒に見られるのって本当に素敵なことよね」
夏樹:「そうだな」
加奈:「夏樹とこの先もずっとこうして一緒にいたいな…」
夏樹:「…っ!」
加奈:「あ、…わ、わたし、何言ってるんだろ、恥ずかし笑」
夏樹:「…」
加奈:「…夏樹?」
夏樹:「…僕だって叶うなら…これから先もずっと、加奈と同じ景色を隣で見ていたかったよ」
加奈:「夏樹こそいきなりなーに?」
夏樹:「なぁ加奈…。加奈の瞳には今、どんな景色がうつっているんだ?」
加奈:「え、どんな景色?なーに言ってるの。夏樹にも見えてるでしょう、目の前に広がる綺麗な満開の桜が」
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夏樹(M):彼女の笑顔を見てこんなに胸が苦しくなったのは初めてだった
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夏樹:「ごめんな。加奈。僕にはもう…加奈と同じ景色は見れないんだよ」
加奈:「ちょ…夏樹…どうして泣いてるの?」
夏樹:「昨年この公園の桜の木は全て切り倒されたんだ。だから、もうここには桜の木はないんだ」
加奈:「ちょっと。私をからかわないでよ。あ、昨日夏樹のプリンを勝手に食べたこと怒ってるんでしょう」
夏樹:「プリン?…はは。懐かしいなぁ。やっぱりあのプリンを食べたのは加奈だったのか」
加奈:「懐かしいって…昨日のことじゃない。ごめんね。ほんとは明日買ってそっと戻しておこうと思ってたの」
夏樹:「明日…か」
加奈:「いや、この後買って帰るから!あ、あと、今度の休みに夏樹の好きなオムライス作るから、ね」
夏樹:「加奈のオムライスは本当に美味しいんだよな。いまだに加奈のオムライスを超えるオムライスに僕は出会ってないよ。また…食べたいなぁ」
加奈:「またって大袈裟ね。いつでも作ってあげるのに…って。夏樹…怒ってるわけじゃないの?」
夏樹:「あぁ。怒ってないよ。なんだか…懐かしくてさ」
加奈:「懐かしいって…さっきから、ここに桜はないとか、同じ景色はもう見れないとか、変なことばっかり。本当にどうしちゃったの?」
夏樹:「…」
加奈:「どうして…ずっと…泣いてるの…?」
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夏樹(M):俺は十年前と変わらない君を抱きしめた
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加奈:「ちょちょっと夏樹!いきなりど…」
夏樹:「加奈は春が待ち遠しいといったけど、僕は春が一番嫌いなんだよ」
加奈:「え…」
夏樹:「だって、だって何よりも大切な君を失った季節なんだから」
加奈:「どういうこと…」
夏樹:「加奈は6年前の今日。事故で…死んだんだよ」
加奈:「事故で…死んだ?ちょっと夏樹、冗談でも言っていいことと悪いことがあるでしょう」
夏樹:「加奈。嘘じゃないんだよ」
加奈:「…っ」
夏樹:「事故があった一年後、僕はすがる思いで一人でこの場所に来たんだ。そしたら…当時と変わらない姿の加奈がここにいて…笑顔で僕を待っていたんだ。本当は事故なんて全て夢だったんじゃないかって思った。でも0時になると…いつも加奈は僕の目の前から消えてしまうんだ」
加奈:「当時のままの姿って…私の時が…止まっているって…こと?」
夏樹:「あぁ。そうだ」
加奈:「うそっ…だって今日は2017年3月24日でしょう?」
夏樹:「違う。今は2023年3月24日だよ」
加奈:「2023年…?冗談…だよね…。私…本当に…死んじゃったの…?」
夏樹:「毎年この日に加奈と同じ景色を見れるだけで僕は幸せだった」
夏樹:「でも作年桜の木が切り倒されたことによって、加奈と同じ景色を見ることすら叶わなくなった」
加奈:「夏樹…」
夏樹:「ごめん加奈。僕は最低だよ。もっと早く加奈に伝えることもできたのに…。どうしても加奈に会いたくて…加奈を失いたくなくて…幽霊でもいい…幻覚でもいいから…側にいたいと思ってずっと言えなかった…」
加奈:「…」
夏樹:「加奈に…もう一度名前を呼んでもらえたことが、もう一度加奈の笑顔を見れたことが本当に嬉しくてさ。加奈に真実を伝えたら今度こそもう二度と会えなくなるんじゃないかって…怖くて…毎回言えなくて…。ごめん。本当に…」
加奈:「…ねぇ。死んだときの私、変な顔してなかった?」
夏樹:「し、してないよ…まるで眠っているようだった。…って僕の話、信じてくれるの?」
加奈:「よかった。最後の最後に不細工な顔、恋人に見られたくないもんね。最初は驚いちゃったけど…信じるよ。夏樹がそんな嘘、言うわけないもの。言われてみると確かに今の夏樹、ちょっと大人っぽくなってるし。それに…随分痩せたでしょう?」
夏樹:「…」
加奈:「私がいなくなってから、ちゃんとご飯食べてる?まさかカップラーメンばっかり食べてるんじゃないでしょうね。ダメよ、ちゃんと栄養のあるものを食べないと!」
夏樹:「う…すみません。でも、一人で食べるご飯は何を食べても味がしなくてさ。加奈と食べてた頃は何を食べてもおいしかったのに」
加奈:「夏樹…。ごめんね。夏樹にばっかり辛い思いさせちゃったんだね」
夏樹:「違う僕が…」
加奈:「もう謝らないで。夏樹は最低なんかじゃない。私は今日を繰り返しているみたいだけど、きっと毎回私は幸せだった。例え前回の記憶がなかったとしても、今の私はとっても幸せな気持ちだもん。だから自分を責めないで」
夏樹:「加奈…」
加奈:「ほら、0時まであと1時間しかないんだからさ、泣いてないでたくさん話そう。ね?」
夏樹:「ああ。そうだな」
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夏樹(M):それから僕たちは、色々な話をした
夏樹(M):出会ったときの話や2人で大喧嘩した日の話。楽しかった思い出や、もう来ることの無い2人の未来の話
夏樹(M):このまま時間が止まってしまえばいいのにと願ったが、気づけば時計の針は23時50分を指していた
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加奈:「…もうすぐお別れなんだね」
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夏樹(M):そう言う加奈の手は少し震えていた
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夏樹:「…」
夏樹:「加奈。本当はあの日、加奈にこれを渡すつもりだったんだ」
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夏樹(M):僕は加奈が亡くなってからずっと引き出しにしまっていた加奈へのプレゼントを渡した
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加奈:「これ…指輪…」
夏樹:「ああ。あの日からずっと大切にしまってあったんだ。ごめん、こんな形で渡すことになって…」
加奈:「……。ずっと待ってたんだよ」
夏樹:「遅くなってごめん。」
加奈:「ううん。とっても嬉しい。…でももう受け取れないよ。だって私はもう死んじゃってるんだもん。指輪はこれからも夏樹と共に歩める…ちゃんと生きてる…夏樹のお嫁さんになる人に渡さないと。私にはもう受け取る資格がないよ…」
夏樹:「加奈。俺はきっと加奈より好きになる人なんてこの先表れないとい思ってるんだ。誰よりも優しくて思いやりがあって、自分のことより人のために行動できて、笑顔が素敵で。僕はそんな加奈にいつも支えられていたんだ。加奈が亡くなって改めて実感したよ」
加奈:「夏樹…」
夏樹:「だから、これから先も…たとえ生きている世界が違っても…僕の妻でいてください」
加奈:「…うん…もちろんだよ…私…夏樹のこと…大好きだもん」
夏樹:「愛してるよ。加奈」
加奈:「ふふ、どう、指輪似合う?」
夏樹:「あぁ。とっても綺麗だ」
加奈:「私、幽霊になっても気づかずに夏樹に会いに来るなんて、愛が重いのかな」
夏樹:「はは。そうかもね。でもそんな加奈に会いに来る僕も負けないくらい愛が重いかもしれないな」
加奈:「確かにそうかも。また、桜が私たちを出会わせてくれたんだね」
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夏樹(M):そういうと彼女は綺麗な瞳に涙を浮かべ、冷たい手で僕の頬を触り優しく口づけをした
夏樹(M):そのとき、僕にはもう見えるはずのない綺麗な桜の花びらが僕たちの周りを舞っていた
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夏樹:「…桜…?」
加奈:「夏樹にも見えるの?」
夏樹:「…あぁ。僕にも見えるよ。綺麗だな」
加奈:「うん。とっても綺麗」
夏樹:「また同じ景色を二人で見れたな」
加奈:「ふふ。そうだね」
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夏樹(M):そうして僕たち2人は綺麗に舞う桜をじっと眺めていた
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夏樹:「…!!」
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夏樹:「っ…加奈?…加奈!!」
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夏樹(M):気づくとあんなに綺麗に咲いていた桜や加奈の姿はもうそこにはなく
夏樹(M):僕の足元には指輪が一つ落ちていた
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加奈:「夏樹、私に会いに来てくれてありがとう」
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夏樹(M):そう言って笑う加奈の声がどこからか聞こえたような気がした