台本概要
513 views
タイトル | 面白い話 |
---|---|
作者名 | 桃じー (@ARAKAN59) |
ジャンル | ミステリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
この台本はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 小鳥遊は会社の同期達との飲み会の帰り道、雰囲気の良いBARを見つける。終電までの時間少しだけ立ち寄るつもりが、お客の月子との話に夢中になってしまうのだった⋯。 話の流れを壊さ無い程度のアドリブは大丈夫です。語尾変更や方言なんかも楽しいかもしれませんね。 513 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
小鳥遊 | 男 | 112 | タカナシ、社会人、20代後半、偶然立ち寄ったBARで出会った女性客月子と、たわいも無い会話を始めるのだが⋯? |
月子 | 女 | 109 | ツキコ、先にBARで飲んでたミステリアスな美女、小鳥遊よりも歳上 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:()の中はモノローグです。
0:
小鳥遊:おう!お疲れー!またなー!
小鳥遊:て!おーい!お前ら酔すぎ!!気をつけろよー
0:間
小鳥遊:はぁー飲んだー、さてと·····駅は·····
小鳥遊:ん?こんな所にBARなんてあったんだ·····
小鳥遊:終電は⋯まだ大丈夫か·····
小鳥遊:ちょっと気になるな、よし!寄ってみるか
0:BARの中に入る
小鳥遊:(薄暗い店内には、お洒落なマスターとカウンターには、1人の女性客が居て、心地よい雰囲気のBARだった。)
小鳥遊:あ·····大丈夫ですか?
小鳥遊:ハイボール下さい、
小鳥遊:(お洒落だなぁー、こんな場所知っとくと良いよなぁ)
小鳥遊:あ、ありがとうございます。
小鳥遊:あ!そうです。終電までまだ時間あるし·····めっちゃいい雰囲気だなぁって
月子:フフフ·····
小鳥遊:あ·····すみません、うるさかったですか?
月子:いえ、大丈夫よ
小鳥遊:(綺麗な人だなぁ·····)
月子:貴方、学生さん?
小鳥遊:え?いや·····社会人です!
月子:そう?若く見えたから
小鳥遊:ありがとうございます!
月子:ごめんなさいね、少し人と話したかったから·····
小鳥遊:え?
月子:でも、こんなオバサンと話しても、面白く無いかしらね
小鳥遊:え!!そんな!とてもお綺麗ですし!
月子:フフッありがとうね
月子:じゃ乾杯
小鳥遊:あ!乾杯
0:グラスを合わせる
月子:今日は何をしてらしたの?
小鳥遊:今日は会社の同期と飲み会でして、楽しかったけど、帰るには早いかなって事で、ここを見つけて
月子:いいわね、同期かぁ·····
小鳥遊:えぇ、めっちゃ良いヤツらなんですよ!
小鳥遊:あ·····失礼かもしれませんが、今日はなにを?
月子:私?今日は諸用があってね、久々に外に出たから、少しだけ飲んで帰りたくて
小鳥遊:そうなんですね、ここにはよく来られるのですか?
月子:そうねぇ·····久しぶりかしら、でも雰囲気が好きだから、よく来てるわね
小鳥遊:お姉さん、このBARに似合いますもんね
月子:あら?ありがとう、お世辞でも嬉しいわ
小鳥遊:え?いえ!お世辞だなんて!
月子:フフフ
小鳥遊:お姉さんは、お酒強いんですか?
月子:あぁ⋯そうだわ、私ね、月子って言うの、お姉さんって呼ばれるの、なんだか恥ずかしいわ、名前で呼んでくれるかしら?
小鳥遊:あ!はい!あっ!僕は小鳥遊(タカナシ)と申します。
月子:タカナシ君ね
小鳥遊:読み方はそこまででも無いんですけど、書くとちょっと珍しい漢字なんです。
月子:へぇー、本当ね、私は平凡。月に子でツキコ
小鳥遊:素敵な名前です。
月子:フフ……ありがとう
月子:あ、お酒ね、普通かな、顔には出ないけど·····
小鳥遊:良いですね!僕はすぐ顔に出てしまうので
月子:可愛いじゃない
小鳥遊:いやぁ!全然ですよ!!
月子:ねぇ、タカナシ君、何か面白い話してくれない?
小鳥遊:えっ!?面白い話ですか?
月子:ええ、若い子の話って聞いてるだけでも面白いもの
小鳥遊:いやー!ハードル上げないでくださいよー、そんなに若くも無いんですけど、面白い話かぁ·····
月子:ウフフ
小鳥遊:大学の時の話なんですけど、いやー·····これ言うの·····んー
月子:なになに?
小鳥遊:すいません!酔ってるって事で許して下さい!大学1年⋯いや?2年⋯の夏、皆で花火しようってなりまして
月子:いいわね、楽しそう
小鳥遊:友達が原付で来てて、なんでしょうね·····?若気の至り?ってやつでしょうか?誰かが言ったんですよ、ゼンライダーしよーぜって
月子:ぜんらいだー?
小鳥遊:はい····素っ裸の全裸とライダーを、合わせた全裸イダー
月子:ええ?何それ?(笑)
小鳥遊:いやーお酒は飲んで無かったんですけど、深夜テンションと夏の暑さと若さですかね·····
月子:タカナシ君も全裸になったの?
小鳥遊:ええ(笑)誰が1番全裸イダーで長く原付を運転できるか?みたいな?チキンレース的なのを·····
月子:アッハハハ!馬鹿ねぇ!
小鳥遊:いやーー!!これチョイス間違えたかなー
月子:それで?それで?
小鳥遊:いやー何人目かの奴が、調子に乗って花火を口に咥えたまま、全裸ライダーしちゃって·····
月子:何やってるのよ!(笑)でも少し見てみたいかも!
小鳥遊:全裸じゃないですか?花火が風で全身に·····
月子:アハハハハ!!馬鹿じゃないの?
小鳥遊:いやー実際大バカっすよねー!でも皆笑い転げちゃって!まぁ·····いい思い出っすね
月子:もしかして⋯それしたの?タカナシ君?
小鳥遊:いやいやいやいや!!僕は普通の全裸ライダーっす!!
月子:普通の全裸ライダーって何よ?(笑)
小鳥遊:たしかに!!(笑)
小鳥遊:(いやー·····流石に花火全裸ライダーは俺ですとは言えないなー)
月子:はーー!面白かったわ
小鳥遊:すみません、なんか下ネタで·····
月子:全然大丈夫よ
小鳥遊:じゃあー次は月子さんも何か面白い話をしてくださいよー
月子:そうねぇ⋯
月子:面白いと言うよりは·····少し不思議なお話でもいい?
小鳥遊:おっ!不思議な話ですか?楽しみです!
月子:そうね·····どこから話そうかしら·····
小鳥遊:月子さんの昔話です?
月子:あっ·····私じゃないの
月子:私のお友達の話
小鳥遊:ほう
月子:その友達·····そうね名前をハナコちゃんとしようかしら
小鳥遊:ハナコさん
月子:彼女はね、学生の頃から真面目で、門限なんかもある、いわゆる箱入り娘だったの
小鳥遊:あー、良いとこのお嬢さんですね!
月子:そう·····
月子:恋愛なんかした事もなかったわ、なにせ中学からずっと女子校だったから
月子:社会人になった時、教育係の先輩が初めて、まともに話す歳の近い男性だったの
小鳥遊:おー!でもそういう人居ますよね!
月子:先輩はね、優しくて、モデルみたいに格好良くて、仕事も出来て、皆の憧れみたいな男の人だったの
小鳥遊:あーー!!完璧だ、パーフェクトヒューマンだ
月子:フフ、勿論、ハナコちゃんも気がついた時には彼に夢中だったの
小鳥遊:そりゃーそうですよねー
月子:けど、ハナコちゃんは異性とお付き合いした事も、勿論デートなんてした事もないの、なので、近くで見つめてるだけでも満足だったの
小鳥遊:恋に恋する乙女って奴だ
月子:そんな所かしらね、けどね⋯ある日、ハナコちゃん、先輩からデートのお誘い受けてしまうの
小鳥遊:えっ!?凄いじゃないですか!!ハナちゃん!!
月子:ハナちゃん?(笑)まぁいいわ、勿論、驚き、彼女は幸せの絶頂に居たわ
小鳥遊:そりゃあ⋯そうですよね、憧れてた人からデートに誘われるなんて
月子:そうなの、有頂天よね、デートした日の記憶なんて無いに等しい位、緊張したの
小鳥遊:⋯⋯(うん⋯?このハナちゃんって月子さんだよな⋯多分)
月子:何度かデートを重ねて、緊張もようやく、しなくなった時、彼に告白されたの
小鳥遊:わあ!!ハナちゃん!
月子:幸せ、なんて言葉では言い表せなかったわ⋯
小鳥遊:ですよね、ですよね!
月子:勿論⋯ハナコちゃんは泣きながらOKしたの、もしかしたら、人生の最高潮だったのかも知れないわね
小鳥遊:最高潮⋯?だって今からじゃないですか
月子:そうね⋯そうだったの
小鳥遊:⋯⋯
月子:付き合ってみてみないと解らない事もあるじゃない?
小鳥遊:ですね⋯ありますね
月子:初めは至って普通、むしろ完璧な彼は、レディファーストだし、まさにお姫様を扱うかの如く接してくれたの
小鳥遊:え?完璧じゃないですか?
月子:完璧⋯過ぎたのかしらね⋯
小鳥遊:と⋯言うと?
月子:タカナシ君は性癖ってある?
小鳥遊:えっ!!せ、性癖ですか?
月子:そっ
小鳥遊:い⋯や⋯、勿論あるにはありますが⋯
月子:あぁ、そんなに気にしないで
小鳥遊:はぁ⋯
月子:彼はね、いわゆる、女性の初めてを奪う事が、生きがいの様な人間だったの
小鳥遊:えっ⋯初めて⋯って
月子:ヴァージンの子にしか興奮しないの
小鳥遊:あ⋯そういう⋯事
月子:付き合って、彼と結ばれるまでそんなに時間はかからなかったわ
小鳥遊:⋯⋯
月子:初めて結ばれた日から、日に日に感じていく、興味の薄れていく様、勿論、常にレディファーストで男性としては完璧だけどね
小鳥遊:彼はそれが、性癖だったんですね⋯
月子:そうね、一言で言えば⋯だけど
小鳥遊:まだなにか!?
月子:ある日、彼がハナコちゃんの部屋にノートパソコンを忘れて行ったの、仕事用では無い個人用の
小鳥遊:個人用っすか⋯
月子:興味本位だった、勿論パスワードでロックされてたけど、運悪く偶然でしょうね、思ってたパスワードが合致しちゃったの
小鳥遊:見てはイケナイ様な⋯いわゆる個人情報の塊っすもんね
月子:デスクトップ画面に綺麗にフォルダが並んでたの、そして、フォルダにね⋯ハナコってフォルダが、あったわ
小鳥遊:フォルダ⋯
月子:もう止まらなかった⋯そのフォルダを開いたの、そしたら、事細かに書いてあったわ、付き合うまでの経緯、ハナコの性格、写真、行為の内容までも⋯
小鳥遊:うわ⋯
月子:フォルダは全部で12人分あったわ⋯
小鳥遊:12人⋯
月子:そういう性癖⋯もしくは、ハナコちゃんは男性は皆こうなのかとも、混乱したわ
小鳥遊:いやー⋯流石に⋯
月子:でね⋯
小鳥遊:はい
月子:ハナコフォルダの下に新しいフォルダがあったの
小鳥遊:えっ!?
月子:勿論まだ付き合ってる時期だった
小鳥遊:てことは⋯
月子:そうね⋯次の獲物を見つけたのよ、彼はね
小鳥遊:浮気って事ですよね?
月子:そうね、その新しいフォルダの子とは、まだ みたいだけど、お付き合いはしてるみたいだったわ、その子のフォルダにも事細かに書いてあるもの
小鳥遊:すげぇ⋯な
月子:凄い?
小鳥遊:あ⋯いや⋯すみません
月子:ハナコちゃんは、悲しみと怒りと絶望と辱めを一度に味わったの
小鳥遊:それは⋯確かに⋯初めて好きになった人がそれは
月子:少し世間知らずの娘にはレベルが高過ぎたのよ
小鳥遊:いやー⋯レベルっていうか、異常だと思いますが
月子:ハナコちゃんは別れを切り出す事にしたの
小鳥遊:そりゃ!!そうっすよね!!
月子:ハナコちゃんはね、初めてデートしたとき、緊張し過ぎて、まともに話せもしなかったのよ、けど、彼がたい焼きをね買ってきてくれて
小鳥遊:たい焼き⋯ですか?
月子:そう⋯ハナコちゃんはね、門限がある様な子だったから、唯一、家の近所にたまーに来てくれる、たい焼きの屋台をこっそり買い食いして帰る事が、凄い楽しみだったの
小鳥遊:普通の事ではありますが⋯それが凄く悪い事してるって感じなんですね
月子:そう!その話を覚えててくれたの彼が、初めてのデートの時、たい焼きを買ってきてくれたの、それが凄く嬉しくてね
小鳥遊:そりゃ⋯惚れますよね
月子:お別れを言う日に、予め今度は私が買っておいたの
小鳥遊:⋯⋯なんかちょっとエモいっすね
月子:エモい?フフ⋯、で、ハナコちゃんはたい焼きを彼に渡して、半分こにしてもらって、一緒に食べたのよ⋯
小鳥遊:最後の思い出的な⋯でも、まぁ⋯ヤバい彼ですもんね
月子:そう⋯、そしてしっかりとお別れを告げたの
小鳥遊:ハナちゃん、1つ大人になりましたね
月子:彼は驚き狼狽えてたわ、まさか振られるだなんて思って無かった、そしたらね
小鳥遊:そしたら?
月子:彼は顔面蒼白になり泡を拭いて倒れたの
小鳥遊:えええ!??倒れたんですか?はーー!!よっぽど信じられなかったんでしょうね!!
月子:そのまま病院に運ばれたわ
小鳥遊:え?
月子:倒れた時にね、頭を強く打ったみたい
小鳥遊:えっ⋯?
月子:そのまま帰らぬ人となったわ
小鳥遊:あ⋯⋯の⋯?てことは⋯そのー、亡くなられたって事ですか?
月子:そうね
小鳥遊:⋯⋯
月子:ハナコちゃんも色々と大変だったみたい
小鳥遊:え?と言うと?
月子:彼の死因は間違い無く、頭部を強く打った事なのだけど⋯倒れた原因が毒物による症状によく似ていてね、
小鳥遊:顔面蒼白、泡を吹く、昏睡⋯あっ⋯確かに⋯え?ツ⋯ハナちゃんは、もしかして
月子:さあね?でもハナコちゃんも同じたい焼きは食べてるから、たい焼きに毒物を仕込むのは無理だと思われたようね
小鳥遊:あ、そうか⋯たしか半分こにして2人で食べたんですもんね?
月子:そ、たい焼きを買ったお店や、彼の行動とか、アレルギーとかも色々調べたけど、結局解らなかったみたい。
小鳥遊:たしかに⋯不思議な話ですね、あっ!でも、普通ドラマとかで遺体を解剖とかしたら、毒物がでたりして、結局そこから解ったりするんじゃ
月子:検死解剖の事?彼の場合、死因もハッキリしてるし、なにより、ご遺族がとても嫌がったそうよ
小鳥遊:え?
月子:ハナコちゃんから聞いたけど、彼の御母様がね、綺麗なまま家に帰らせて欲しいと懇願されたと聞いたわ
小鳥遊:そっか⋯そりゃそうですよね
月子:だって、女に振られたショックで倒れて死んだ、だなんて、受け入れたくなかったんじゃない?
小鳥遊:完璧主義の彼の母親もまた完璧な⋯なんか深いっすね
月子:彼は本当に振られた事がショックだったのか?ハナコちゃんが毒を盛ったのか?は⋯結局藪の中って事ね
小鳥遊:いやーなんか⋯面白かったっす!!
月子:そう?良かったわ
!全裸イダーの後だから緊張したわ
小鳥遊:いやっ!全裸イダーの事は忘れてください!!
月子:アハハ!あら?もうこんな時間!タカナシ君は終電大丈夫?
小鳥遊:あ!!本当だ!そろそろ行かないと!
月子:今日は楽しかったわ
小鳥遊:こちらこそ!!なんか不思議かつ面白い話、ちょっと怖いけど。聞かせて貰えて良かったです!
月子:あっ!そーだ!
小鳥遊:はい?
月子:ハナコちゃんじゃないけど、私もさっきたい焼き買ったのよね、どう?食べる?
小鳥遊:た⋯⋯たい焼きっすか?
月子:ヤダ!毒なんて入ってないわよ!
小鳥遊:で!ですよね!!ありがとうございます!あっでも一個だけです?
月子:そうね、懐かしくて買っちゃったから⋯つい
小鳥遊:つい?ははは、じゃあ、ハナコちゃん達みたいに半分こにしましょう!
月子:そうね!こんな時間だしね!半分こが丁度良いわね
小鳥遊:はい!じゃあ⋯彼ほどじゃないけど、俺も一応レディファーストなんで、頭のあんこがよく入ってる方を月子さんに
月子:あら?ありがとう、いいの?
小鳥遊:勿論ですよ!貰ったものですし!
月子:まぁ!ウフフ!
小鳥遊:今日は楽しかったっす!もし!またここで会ったら、その時はまた、なにか面白い話しましょうね!
月子:またね!タカナシ君
小鳥遊:それじゃ!ごちほうはまです。(たい焼きをほうばりながら)
月子:ちょっと!慌てないで!(笑)気をつけてね!
小鳥遊:はい!ありがとうございます!!
0:BARを後にするタカナシ
月子:フゥ⋯彼と同じ事言うものだから、思わずびっくりして笑っちゃった⋯フフフ
0:間
小鳥遊:いやー⋯しかし、本当ははどっちなんだろ?毒だとしたら、月子さんも食べてるしなぁ⋯半分こかぁ⋯頭と尻尾⋯頭と⋯尻尾!?いやいや!!だって、しっぽ側を渡される可能性だってある訳だし!そんな危ない賭けするかなぁ⋯まぁ⋯そうなっても⋯良かったのか⋯な⋯うーん⋯⋯わかんねぇ⋯⋯怖ぇー
0:終
0:()の中はモノローグです。
0:
小鳥遊:おう!お疲れー!またなー!
小鳥遊:て!おーい!お前ら酔すぎ!!気をつけろよー
0:間
小鳥遊:はぁー飲んだー、さてと·····駅は·····
小鳥遊:ん?こんな所にBARなんてあったんだ·····
小鳥遊:終電は⋯まだ大丈夫か·····
小鳥遊:ちょっと気になるな、よし!寄ってみるか
0:BARの中に入る
小鳥遊:(薄暗い店内には、お洒落なマスターとカウンターには、1人の女性客が居て、心地よい雰囲気のBARだった。)
小鳥遊:あ·····大丈夫ですか?
小鳥遊:ハイボール下さい、
小鳥遊:(お洒落だなぁー、こんな場所知っとくと良いよなぁ)
小鳥遊:あ、ありがとうございます。
小鳥遊:あ!そうです。終電までまだ時間あるし·····めっちゃいい雰囲気だなぁって
月子:フフフ·····
小鳥遊:あ·····すみません、うるさかったですか?
月子:いえ、大丈夫よ
小鳥遊:(綺麗な人だなぁ·····)
月子:貴方、学生さん?
小鳥遊:え?いや·····社会人です!
月子:そう?若く見えたから
小鳥遊:ありがとうございます!
月子:ごめんなさいね、少し人と話したかったから·····
小鳥遊:え?
月子:でも、こんなオバサンと話しても、面白く無いかしらね
小鳥遊:え!!そんな!とてもお綺麗ですし!
月子:フフッありがとうね
月子:じゃ乾杯
小鳥遊:あ!乾杯
0:グラスを合わせる
月子:今日は何をしてらしたの?
小鳥遊:今日は会社の同期と飲み会でして、楽しかったけど、帰るには早いかなって事で、ここを見つけて
月子:いいわね、同期かぁ·····
小鳥遊:えぇ、めっちゃ良いヤツらなんですよ!
小鳥遊:あ·····失礼かもしれませんが、今日はなにを?
月子:私?今日は諸用があってね、久々に外に出たから、少しだけ飲んで帰りたくて
小鳥遊:そうなんですね、ここにはよく来られるのですか?
月子:そうねぇ·····久しぶりかしら、でも雰囲気が好きだから、よく来てるわね
小鳥遊:お姉さん、このBARに似合いますもんね
月子:あら?ありがとう、お世辞でも嬉しいわ
小鳥遊:え?いえ!お世辞だなんて!
月子:フフフ
小鳥遊:お姉さんは、お酒強いんですか?
月子:あぁ⋯そうだわ、私ね、月子って言うの、お姉さんって呼ばれるの、なんだか恥ずかしいわ、名前で呼んでくれるかしら?
小鳥遊:あ!はい!あっ!僕は小鳥遊(タカナシ)と申します。
月子:タカナシ君ね
小鳥遊:読み方はそこまででも無いんですけど、書くとちょっと珍しい漢字なんです。
月子:へぇー、本当ね、私は平凡。月に子でツキコ
小鳥遊:素敵な名前です。
月子:フフ……ありがとう
月子:あ、お酒ね、普通かな、顔には出ないけど·····
小鳥遊:良いですね!僕はすぐ顔に出てしまうので
月子:可愛いじゃない
小鳥遊:いやぁ!全然ですよ!!
月子:ねぇ、タカナシ君、何か面白い話してくれない?
小鳥遊:えっ!?面白い話ですか?
月子:ええ、若い子の話って聞いてるだけでも面白いもの
小鳥遊:いやー!ハードル上げないでくださいよー、そんなに若くも無いんですけど、面白い話かぁ·····
月子:ウフフ
小鳥遊:大学の時の話なんですけど、いやー·····これ言うの·····んー
月子:なになに?
小鳥遊:すいません!酔ってるって事で許して下さい!大学1年⋯いや?2年⋯の夏、皆で花火しようってなりまして
月子:いいわね、楽しそう
小鳥遊:友達が原付で来てて、なんでしょうね·····?若気の至り?ってやつでしょうか?誰かが言ったんですよ、ゼンライダーしよーぜって
月子:ぜんらいだー?
小鳥遊:はい····素っ裸の全裸とライダーを、合わせた全裸イダー
月子:ええ?何それ?(笑)
小鳥遊:いやーお酒は飲んで無かったんですけど、深夜テンションと夏の暑さと若さですかね·····
月子:タカナシ君も全裸になったの?
小鳥遊:ええ(笑)誰が1番全裸イダーで長く原付を運転できるか?みたいな?チキンレース的なのを·····
月子:アッハハハ!馬鹿ねぇ!
小鳥遊:いやーー!!これチョイス間違えたかなー
月子:それで?それで?
小鳥遊:いやー何人目かの奴が、調子に乗って花火を口に咥えたまま、全裸ライダーしちゃって·····
月子:何やってるのよ!(笑)でも少し見てみたいかも!
小鳥遊:全裸じゃないですか?花火が風で全身に·····
月子:アハハハハ!!馬鹿じゃないの?
小鳥遊:いやー実際大バカっすよねー!でも皆笑い転げちゃって!まぁ·····いい思い出っすね
月子:もしかして⋯それしたの?タカナシ君?
小鳥遊:いやいやいやいや!!僕は普通の全裸ライダーっす!!
月子:普通の全裸ライダーって何よ?(笑)
小鳥遊:たしかに!!(笑)
小鳥遊:(いやー·····流石に花火全裸ライダーは俺ですとは言えないなー)
月子:はーー!面白かったわ
小鳥遊:すみません、なんか下ネタで·····
月子:全然大丈夫よ
小鳥遊:じゃあー次は月子さんも何か面白い話をしてくださいよー
月子:そうねぇ⋯
月子:面白いと言うよりは·····少し不思議なお話でもいい?
小鳥遊:おっ!不思議な話ですか?楽しみです!
月子:そうね·····どこから話そうかしら·····
小鳥遊:月子さんの昔話です?
月子:あっ·····私じゃないの
月子:私のお友達の話
小鳥遊:ほう
月子:その友達·····そうね名前をハナコちゃんとしようかしら
小鳥遊:ハナコさん
月子:彼女はね、学生の頃から真面目で、門限なんかもある、いわゆる箱入り娘だったの
小鳥遊:あー、良いとこのお嬢さんですね!
月子:そう·····
月子:恋愛なんかした事もなかったわ、なにせ中学からずっと女子校だったから
月子:社会人になった時、教育係の先輩が初めて、まともに話す歳の近い男性だったの
小鳥遊:おー!でもそういう人居ますよね!
月子:先輩はね、優しくて、モデルみたいに格好良くて、仕事も出来て、皆の憧れみたいな男の人だったの
小鳥遊:あーー!!完璧だ、パーフェクトヒューマンだ
月子:フフ、勿論、ハナコちゃんも気がついた時には彼に夢中だったの
小鳥遊:そりゃーそうですよねー
月子:けど、ハナコちゃんは異性とお付き合いした事も、勿論デートなんてした事もないの、なので、近くで見つめてるだけでも満足だったの
小鳥遊:恋に恋する乙女って奴だ
月子:そんな所かしらね、けどね⋯ある日、ハナコちゃん、先輩からデートのお誘い受けてしまうの
小鳥遊:えっ!?凄いじゃないですか!!ハナちゃん!!
月子:ハナちゃん?(笑)まぁいいわ、勿論、驚き、彼女は幸せの絶頂に居たわ
小鳥遊:そりゃあ⋯そうですよね、憧れてた人からデートに誘われるなんて
月子:そうなの、有頂天よね、デートした日の記憶なんて無いに等しい位、緊張したの
小鳥遊:⋯⋯(うん⋯?このハナちゃんって月子さんだよな⋯多分)
月子:何度かデートを重ねて、緊張もようやく、しなくなった時、彼に告白されたの
小鳥遊:わあ!!ハナちゃん!
月子:幸せ、なんて言葉では言い表せなかったわ⋯
小鳥遊:ですよね、ですよね!
月子:勿論⋯ハナコちゃんは泣きながらOKしたの、もしかしたら、人生の最高潮だったのかも知れないわね
小鳥遊:最高潮⋯?だって今からじゃないですか
月子:そうね⋯そうだったの
小鳥遊:⋯⋯
月子:付き合ってみてみないと解らない事もあるじゃない?
小鳥遊:ですね⋯ありますね
月子:初めは至って普通、むしろ完璧な彼は、レディファーストだし、まさにお姫様を扱うかの如く接してくれたの
小鳥遊:え?完璧じゃないですか?
月子:完璧⋯過ぎたのかしらね⋯
小鳥遊:と⋯言うと?
月子:タカナシ君は性癖ってある?
小鳥遊:えっ!!せ、性癖ですか?
月子:そっ
小鳥遊:い⋯や⋯、勿論あるにはありますが⋯
月子:あぁ、そんなに気にしないで
小鳥遊:はぁ⋯
月子:彼はね、いわゆる、女性の初めてを奪う事が、生きがいの様な人間だったの
小鳥遊:えっ⋯初めて⋯って
月子:ヴァージンの子にしか興奮しないの
小鳥遊:あ⋯そういう⋯事
月子:付き合って、彼と結ばれるまでそんなに時間はかからなかったわ
小鳥遊:⋯⋯
月子:初めて結ばれた日から、日に日に感じていく、興味の薄れていく様、勿論、常にレディファーストで男性としては完璧だけどね
小鳥遊:彼はそれが、性癖だったんですね⋯
月子:そうね、一言で言えば⋯だけど
小鳥遊:まだなにか!?
月子:ある日、彼がハナコちゃんの部屋にノートパソコンを忘れて行ったの、仕事用では無い個人用の
小鳥遊:個人用っすか⋯
月子:興味本位だった、勿論パスワードでロックされてたけど、運悪く偶然でしょうね、思ってたパスワードが合致しちゃったの
小鳥遊:見てはイケナイ様な⋯いわゆる個人情報の塊っすもんね
月子:デスクトップ画面に綺麗にフォルダが並んでたの、そして、フォルダにね⋯ハナコってフォルダが、あったわ
小鳥遊:フォルダ⋯
月子:もう止まらなかった⋯そのフォルダを開いたの、そしたら、事細かに書いてあったわ、付き合うまでの経緯、ハナコの性格、写真、行為の内容までも⋯
小鳥遊:うわ⋯
月子:フォルダは全部で12人分あったわ⋯
小鳥遊:12人⋯
月子:そういう性癖⋯もしくは、ハナコちゃんは男性は皆こうなのかとも、混乱したわ
小鳥遊:いやー⋯流石に⋯
月子:でね⋯
小鳥遊:はい
月子:ハナコフォルダの下に新しいフォルダがあったの
小鳥遊:えっ!?
月子:勿論まだ付き合ってる時期だった
小鳥遊:てことは⋯
月子:そうね⋯次の獲物を見つけたのよ、彼はね
小鳥遊:浮気って事ですよね?
月子:そうね、その新しいフォルダの子とは、まだ みたいだけど、お付き合いはしてるみたいだったわ、その子のフォルダにも事細かに書いてあるもの
小鳥遊:すげぇ⋯な
月子:凄い?
小鳥遊:あ⋯いや⋯すみません
月子:ハナコちゃんは、悲しみと怒りと絶望と辱めを一度に味わったの
小鳥遊:それは⋯確かに⋯初めて好きになった人がそれは
月子:少し世間知らずの娘にはレベルが高過ぎたのよ
小鳥遊:いやー⋯レベルっていうか、異常だと思いますが
月子:ハナコちゃんは別れを切り出す事にしたの
小鳥遊:そりゃ!!そうっすよね!!
月子:ハナコちゃんはね、初めてデートしたとき、緊張し過ぎて、まともに話せもしなかったのよ、けど、彼がたい焼きをね買ってきてくれて
小鳥遊:たい焼き⋯ですか?
月子:そう⋯ハナコちゃんはね、門限がある様な子だったから、唯一、家の近所にたまーに来てくれる、たい焼きの屋台をこっそり買い食いして帰る事が、凄い楽しみだったの
小鳥遊:普通の事ではありますが⋯それが凄く悪い事してるって感じなんですね
月子:そう!その話を覚えててくれたの彼が、初めてのデートの時、たい焼きを買ってきてくれたの、それが凄く嬉しくてね
小鳥遊:そりゃ⋯惚れますよね
月子:お別れを言う日に、予め今度は私が買っておいたの
小鳥遊:⋯⋯なんかちょっとエモいっすね
月子:エモい?フフ⋯、で、ハナコちゃんはたい焼きを彼に渡して、半分こにしてもらって、一緒に食べたのよ⋯
小鳥遊:最後の思い出的な⋯でも、まぁ⋯ヤバい彼ですもんね
月子:そう⋯、そしてしっかりとお別れを告げたの
小鳥遊:ハナちゃん、1つ大人になりましたね
月子:彼は驚き狼狽えてたわ、まさか振られるだなんて思って無かった、そしたらね
小鳥遊:そしたら?
月子:彼は顔面蒼白になり泡を拭いて倒れたの
小鳥遊:えええ!??倒れたんですか?はーー!!よっぽど信じられなかったんでしょうね!!
月子:そのまま病院に運ばれたわ
小鳥遊:え?
月子:倒れた時にね、頭を強く打ったみたい
小鳥遊:えっ⋯?
月子:そのまま帰らぬ人となったわ
小鳥遊:あ⋯⋯の⋯?てことは⋯そのー、亡くなられたって事ですか?
月子:そうね
小鳥遊:⋯⋯
月子:ハナコちゃんも色々と大変だったみたい
小鳥遊:え?と言うと?
月子:彼の死因は間違い無く、頭部を強く打った事なのだけど⋯倒れた原因が毒物による症状によく似ていてね、
小鳥遊:顔面蒼白、泡を吹く、昏睡⋯あっ⋯確かに⋯え?ツ⋯ハナちゃんは、もしかして
月子:さあね?でもハナコちゃんも同じたい焼きは食べてるから、たい焼きに毒物を仕込むのは無理だと思われたようね
小鳥遊:あ、そうか⋯たしか半分こにして2人で食べたんですもんね?
月子:そ、たい焼きを買ったお店や、彼の行動とか、アレルギーとかも色々調べたけど、結局解らなかったみたい。
小鳥遊:たしかに⋯不思議な話ですね、あっ!でも、普通ドラマとかで遺体を解剖とかしたら、毒物がでたりして、結局そこから解ったりするんじゃ
月子:検死解剖の事?彼の場合、死因もハッキリしてるし、なにより、ご遺族がとても嫌がったそうよ
小鳥遊:え?
月子:ハナコちゃんから聞いたけど、彼の御母様がね、綺麗なまま家に帰らせて欲しいと懇願されたと聞いたわ
小鳥遊:そっか⋯そりゃそうですよね
月子:だって、女に振られたショックで倒れて死んだ、だなんて、受け入れたくなかったんじゃない?
小鳥遊:完璧主義の彼の母親もまた完璧な⋯なんか深いっすね
月子:彼は本当に振られた事がショックだったのか?ハナコちゃんが毒を盛ったのか?は⋯結局藪の中って事ね
小鳥遊:いやーなんか⋯面白かったっす!!
月子:そう?良かったわ
!全裸イダーの後だから緊張したわ
小鳥遊:いやっ!全裸イダーの事は忘れてください!!
月子:アハハ!あら?もうこんな時間!タカナシ君は終電大丈夫?
小鳥遊:あ!!本当だ!そろそろ行かないと!
月子:今日は楽しかったわ
小鳥遊:こちらこそ!!なんか不思議かつ面白い話、ちょっと怖いけど。聞かせて貰えて良かったです!
月子:あっ!そーだ!
小鳥遊:はい?
月子:ハナコちゃんじゃないけど、私もさっきたい焼き買ったのよね、どう?食べる?
小鳥遊:た⋯⋯たい焼きっすか?
月子:ヤダ!毒なんて入ってないわよ!
小鳥遊:で!ですよね!!ありがとうございます!あっでも一個だけです?
月子:そうね、懐かしくて買っちゃったから⋯つい
小鳥遊:つい?ははは、じゃあ、ハナコちゃん達みたいに半分こにしましょう!
月子:そうね!こんな時間だしね!半分こが丁度良いわね
小鳥遊:はい!じゃあ⋯彼ほどじゃないけど、俺も一応レディファーストなんで、頭のあんこがよく入ってる方を月子さんに
月子:あら?ありがとう、いいの?
小鳥遊:勿論ですよ!貰ったものですし!
月子:まぁ!ウフフ!
小鳥遊:今日は楽しかったっす!もし!またここで会ったら、その時はまた、なにか面白い話しましょうね!
月子:またね!タカナシ君
小鳥遊:それじゃ!ごちほうはまです。(たい焼きをほうばりながら)
月子:ちょっと!慌てないで!(笑)気をつけてね!
小鳥遊:はい!ありがとうございます!!
0:BARを後にするタカナシ
月子:フゥ⋯彼と同じ事言うものだから、思わずびっくりして笑っちゃった⋯フフフ
0:間
小鳥遊:いやー⋯しかし、本当ははどっちなんだろ?毒だとしたら、月子さんも食べてるしなぁ⋯半分こかぁ⋯頭と尻尾⋯頭と⋯尻尾!?いやいや!!だって、しっぽ側を渡される可能性だってある訳だし!そんな危ない賭けするかなぁ⋯まぁ⋯そうなっても⋯良かったのか⋯な⋯うーん⋯⋯わかんねぇ⋯⋯怖ぇー
0:終