台本概要
634 views
タイトル | 花をつくる妖精のおはなし |
---|---|
作者名 | 桜蛇あねり(おうじゃあねり) (@aneri_writer) |
ジャンル | 童話 |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
とある森にすむ、花をつくるのが好きな妖精の話。 ※世界観を壊さない程度のアドリブや改変はOKです。 634 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
語り | 不問 | 12 | お話をよむ語り手。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:『花をつくる妖精のおはなし』
:
語り:「花をつくる妖精のおはなし」
語り:ある小さな森に、花をつくることが大好きな妖精がいました。
語り:彼女は、花をつくっては、森を訪れる人にあげていました。
語り:花をもらった人は、笑顔で受け取ってくれました。ある人は、その花を自分の家に飾り、ある人は誰かのお祝いにその花を送り、ある人はその花で大切な人に想いを伝えました。
語り:妖精は、自分のつくった花がどのように使われたのかを聞くのが好きでした。
語り:ある日、妖精のもとに男の子がやってきました。
語り:その男の子は、「僕の妹が、最近元気がないんだ。妖精さん、お花がつくれるって聞いたんだけど、妹が元気になるようなお花、つくれないかなぁ」といいました。
語り:妖精は、男の子の妹が元気になるような、そんな花をつくりました。男の子は嬉しそうにその花を持って帰りました。
語り:次の日。男の子がやってきて、「昨日もらった花を妹にあげたら、とても元気になって喜んでくれたんだ!妖精さん、ありがとう!」と妖精にお礼をいいました。妖精も男の子と一緒に、とても喜びました。
語り:その日から、男の子は毎日森にやってきては、妖精とおしゃべりをして、帰るときは彼女のつくった花を持って帰りました。妖精にとって、男の子と過ごし、花をつくる毎日はとても楽しいものでした。
0:間
語り:そんなある日のことでした。仲間の妖精が、彼女のもとへ訪れます。
語り:仲間の妖精は言いました。「私は今、この世界に住む人々に歌を捧げているの。みんな、私の歌を聞いて、称(たた)えてくれるの。あなたも一緒に、歌ってみない?」
語り:その誘(さそ)いに、妖精は興味を惹かれました。彼女は歌を歌うことも好きだったからです。
語り:彼女は仲間の妖精とともに、歌の広場へ行くことに決めました。
語り:広場にはたくさんの人がいました。また、歌う妖精もたくさんいました。
語り:彼女たちは順番に、自分の歌を披露していきます。妖精は初めての経験でドキドキしましたが、ちゃんと歌うことができました。歌い終わった後、たくさんの人が妖精の歌を褒めてくれました。
語り:たくさん拍手してくれました。妖精はそれがとても気持ちいいと、感じました。
0:間
語り:それから、妖精は歌をたくさん歌いました。
語り:花をつくることは、日に日に減っていきました。男の子と会うことも減りました。
語り:男の子は妖精に「ねえ妖精さん。お花はもう、つくってくれないの?」そう聞きました。
語り:妖精は少し困ったようにほほえんだだけでした。
語り:そしてついに、妖精は花をつくることをやめてしまいました。
0:間
語り:妖精は必死に歌を歌いました。誰かに褒められるために。
語り:妖精は必死に歌を歌いました。自分のことを見てもらうために。
語り:妖精は必死に歌を歌いました。人々に求められる歌を歌えるように。
語り:妖精は必死に歌を歌いました。他の妖精に負けない様に。
語り:必死に、必死に、必死に。
語り:いつしか歌を歌うことが、妖精にとって苦痛に感じるようになっていきました。
語り:自分よりもうまく歌う妖精のことが憎いと思うようになっていきました。
語り:自分が歌いたい歌じゃなく、人々が求めている歌を歌うようになっていきました。
語り:妖精の顔から、いつの間にか笑顔が消えていました。
0:間
語り:疲れてしまった妖精は、ふと森に帰り、花をひとつ作りました。
語り:その花を眺めていると、あの男の子がやってきました。
語り:「妖精さん!戻ってきたの?そのお花、つくったの?僕、そのお花欲しいな!」
語り:妖精は驚きました。自分がこの森に戻ってきたのは1年ぶりだったからです。その間も、この男の子は毎日森に通い、妖精の帰りを待っていたからです。
語り:妖精は、その花を男の子に渡しました。
語り:「ありがとう!僕ね、妖精さんのお花が一番好きだよ!また作ってほしいな!」
語り:男の子のその笑顔に、妖精の目から涙があふれてきました。
語り:求められた歌を歌って、たくさんの人からもらった称える言葉よりも、
語り:自分が作りたい花をつくって言われた、ひとりの男の子の言葉が、
語り:妖精には何倍も何倍も嬉しかったからです。
0:間
語り:妖精は少しの間、森で過ごした後、また歌を歌いに広場へと戻りました。
語り:誰も、妖精が歌の広場からいなくなっていたことを気づいていませんでした。
語り:妖精はまた、歌を歌いました。その歌を聞いた人は、妖精のことを褒めてくれました。
語り:だけど、妖精は満たされない気持ちでいっぱいでした。
語り:自分を褒めてくれた人々は、別の妖精の歌も同じように、それ以上に褒めていたからです。
語り:妖精は自分だけを求めてくれる人は、ここにはいないのだと悟りました。
0:間
語り:そして、妖精は森に戻りました。
語り:男の子は妖精の帰りを待っていてくれました。
語り:妖精はまた、花をつくってその男の子に渡しました。
語り:男の子は喜んでその花を受け取ってくれました。
語り:妖精はまた、花をつくり始めました。
語り:その男の子のために、その男の子が気に入ってくれる花を考えて、たくさんつくりました。
0:間
語り:ある日、男の子が女の子を連れてきました。
語り:「僕の妹、外を歩けるくらい元気になったんだ。妖精さんのお花のおかげだよ」
語り:妖精は嬉しくなって、二人に花をつくりました。女の子もとても喜んでくれました。
語り:ある日、見知らぬ男の人がやってきました。
語り:「隣の家の子供たちが、毎日綺麗な花を飾っているんだ。聞くと、あなたがつくっているそうじゃないか。私にももらえないだろうか」
語り:妖精はその男の人に似あう色で、花をつくりました。男の人は笑顔でその花を持って帰りました。
語り:ある日、綺麗な女性がやってきました。
語り:「お父さんが綺麗な花の飾りをつけているの。私も欲しいのだけれど、いただけるのかしら?」
語り:妖精はその女性を美しく魅(み)せられるような花をつくりました。女の人はとびきり綺麗な笑顔で帰っていきました。
0:間
語り:いつしか、妖精のもとにはたくさんの人が訪れるようになりました。
語り:歌を歌っていた時よりも大変な毎日でしたが、妖精の心はとても満たされていました。
語り:その人のことを想い、その人のために花をつくる。
語り:それが一番大好きなんだと、妖精は気づいたのです。
語り:たくさんの人が訪れる中、あの男の子も毎日妖精の元を訪れました。
語り:妖精は、その男の子の好きな花を毎日つくりました。
語り:感謝の気持ちを込めて。
語り:この先、何があっても、この男の子に送る花だけは、つくりつづけよう。
語り:妖精はそう、心に決めていました。
0:間
語り:長い年月が経ち、その妖精は人々の間で『綺麗な花をつくる妖精』と呼ばれるようになっていきました。
語り:妖精は花をつくり続けます。それが自分の一番やりたいことだから。
語り:妖精は花をつくり続けます。その花を求めてくれる人がいるから。
語り:妖精は幸せでした。
0:間
語り:さらに長い年月が経った、ある日のことです。
語り:妖精は今日だけ花をつくるのをお休みしました。
語り:行かなければならないところがあったからです。
語り:妖精はあるお墓の前にたって、花をつくりました。
語り:それは一番最初に男の子にあげた花でした。
語り:その花をそっとお墓にそえ、妖精は祈りを捧げます。
語り:長い長い、祈りでした。
0:
語り:「花をつくる妖精のおはなし」おわり。
0:『花をつくる妖精のおはなし』
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語り:「花をつくる妖精のおはなし」
語り:ある小さな森に、花をつくることが大好きな妖精がいました。
語り:彼女は、花をつくっては、森を訪れる人にあげていました。
語り:花をもらった人は、笑顔で受け取ってくれました。ある人は、その花を自分の家に飾り、ある人は誰かのお祝いにその花を送り、ある人はその花で大切な人に想いを伝えました。
語り:妖精は、自分のつくった花がどのように使われたのかを聞くのが好きでした。
語り:ある日、妖精のもとに男の子がやってきました。
語り:その男の子は、「僕の妹が、最近元気がないんだ。妖精さん、お花がつくれるって聞いたんだけど、妹が元気になるようなお花、つくれないかなぁ」といいました。
語り:妖精は、男の子の妹が元気になるような、そんな花をつくりました。男の子は嬉しそうにその花を持って帰りました。
語り:次の日。男の子がやってきて、「昨日もらった花を妹にあげたら、とても元気になって喜んでくれたんだ!妖精さん、ありがとう!」と妖精にお礼をいいました。妖精も男の子と一緒に、とても喜びました。
語り:その日から、男の子は毎日森にやってきては、妖精とおしゃべりをして、帰るときは彼女のつくった花を持って帰りました。妖精にとって、男の子と過ごし、花をつくる毎日はとても楽しいものでした。
0:間
語り:そんなある日のことでした。仲間の妖精が、彼女のもとへ訪れます。
語り:仲間の妖精は言いました。「私は今、この世界に住む人々に歌を捧げているの。みんな、私の歌を聞いて、称(たた)えてくれるの。あなたも一緒に、歌ってみない?」
語り:その誘(さそ)いに、妖精は興味を惹かれました。彼女は歌を歌うことも好きだったからです。
語り:彼女は仲間の妖精とともに、歌の広場へ行くことに決めました。
語り:広場にはたくさんの人がいました。また、歌う妖精もたくさんいました。
語り:彼女たちは順番に、自分の歌を披露していきます。妖精は初めての経験でドキドキしましたが、ちゃんと歌うことができました。歌い終わった後、たくさんの人が妖精の歌を褒めてくれました。
語り:たくさん拍手してくれました。妖精はそれがとても気持ちいいと、感じました。
0:間
語り:それから、妖精は歌をたくさん歌いました。
語り:花をつくることは、日に日に減っていきました。男の子と会うことも減りました。
語り:男の子は妖精に「ねえ妖精さん。お花はもう、つくってくれないの?」そう聞きました。
語り:妖精は少し困ったようにほほえんだだけでした。
語り:そしてついに、妖精は花をつくることをやめてしまいました。
0:間
語り:妖精は必死に歌を歌いました。誰かに褒められるために。
語り:妖精は必死に歌を歌いました。自分のことを見てもらうために。
語り:妖精は必死に歌を歌いました。人々に求められる歌を歌えるように。
語り:妖精は必死に歌を歌いました。他の妖精に負けない様に。
語り:必死に、必死に、必死に。
語り:いつしか歌を歌うことが、妖精にとって苦痛に感じるようになっていきました。
語り:自分よりもうまく歌う妖精のことが憎いと思うようになっていきました。
語り:自分が歌いたい歌じゃなく、人々が求めている歌を歌うようになっていきました。
語り:妖精の顔から、いつの間にか笑顔が消えていました。
0:間
語り:疲れてしまった妖精は、ふと森に帰り、花をひとつ作りました。
語り:その花を眺めていると、あの男の子がやってきました。
語り:「妖精さん!戻ってきたの?そのお花、つくったの?僕、そのお花欲しいな!」
語り:妖精は驚きました。自分がこの森に戻ってきたのは1年ぶりだったからです。その間も、この男の子は毎日森に通い、妖精の帰りを待っていたからです。
語り:妖精は、その花を男の子に渡しました。
語り:「ありがとう!僕ね、妖精さんのお花が一番好きだよ!また作ってほしいな!」
語り:男の子のその笑顔に、妖精の目から涙があふれてきました。
語り:求められた歌を歌って、たくさんの人からもらった称える言葉よりも、
語り:自分が作りたい花をつくって言われた、ひとりの男の子の言葉が、
語り:妖精には何倍も何倍も嬉しかったからです。
0:間
語り:妖精は少しの間、森で過ごした後、また歌を歌いに広場へと戻りました。
語り:誰も、妖精が歌の広場からいなくなっていたことを気づいていませんでした。
語り:妖精はまた、歌を歌いました。その歌を聞いた人は、妖精のことを褒めてくれました。
語り:だけど、妖精は満たされない気持ちでいっぱいでした。
語り:自分を褒めてくれた人々は、別の妖精の歌も同じように、それ以上に褒めていたからです。
語り:妖精は自分だけを求めてくれる人は、ここにはいないのだと悟りました。
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語り:そして、妖精は森に戻りました。
語り:男の子は妖精の帰りを待っていてくれました。
語り:妖精はまた、花をつくってその男の子に渡しました。
語り:男の子は喜んでその花を受け取ってくれました。
語り:妖精はまた、花をつくり始めました。
語り:その男の子のために、その男の子が気に入ってくれる花を考えて、たくさんつくりました。
0:間
語り:ある日、男の子が女の子を連れてきました。
語り:「僕の妹、外を歩けるくらい元気になったんだ。妖精さんのお花のおかげだよ」
語り:妖精は嬉しくなって、二人に花をつくりました。女の子もとても喜んでくれました。
語り:ある日、見知らぬ男の人がやってきました。
語り:「隣の家の子供たちが、毎日綺麗な花を飾っているんだ。聞くと、あなたがつくっているそうじゃないか。私にももらえないだろうか」
語り:妖精はその男の人に似あう色で、花をつくりました。男の人は笑顔でその花を持って帰りました。
語り:ある日、綺麗な女性がやってきました。
語り:「お父さんが綺麗な花の飾りをつけているの。私も欲しいのだけれど、いただけるのかしら?」
語り:妖精はその女性を美しく魅(み)せられるような花をつくりました。女の人はとびきり綺麗な笑顔で帰っていきました。
0:間
語り:いつしか、妖精のもとにはたくさんの人が訪れるようになりました。
語り:歌を歌っていた時よりも大変な毎日でしたが、妖精の心はとても満たされていました。
語り:その人のことを想い、その人のために花をつくる。
語り:それが一番大好きなんだと、妖精は気づいたのです。
語り:たくさんの人が訪れる中、あの男の子も毎日妖精の元を訪れました。
語り:妖精は、その男の子の好きな花を毎日つくりました。
語り:感謝の気持ちを込めて。
語り:この先、何があっても、この男の子に送る花だけは、つくりつづけよう。
語り:妖精はそう、心に決めていました。
0:間
語り:長い年月が経ち、その妖精は人々の間で『綺麗な花をつくる妖精』と呼ばれるようになっていきました。
語り:妖精は花をつくり続けます。それが自分の一番やりたいことだから。
語り:妖精は花をつくり続けます。その花を求めてくれる人がいるから。
語り:妖精は幸せでした。
0:間
語り:さらに長い年月が経った、ある日のことです。
語り:妖精は今日だけ花をつくるのをお休みしました。
語り:行かなければならないところがあったからです。
語り:妖精はあるお墓の前にたって、花をつくりました。
語り:それは一番最初に男の子にあげた花でした。
語り:その花をそっとお墓にそえ、妖精は祈りを捧げます。
語り:長い長い、祈りでした。
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語り:「花をつくる妖精のおはなし」おわり。