台本概要
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タイトル | チックタックのチーズはどこへ消えた? |
---|---|
作者名 | レンga (@renganovel) |
ジャンル | 童話 |
演者人数 | 3人用台本(不問3) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
チックタックシリーズ第七弾 ◆◆あらすじ◆◆ ある日の朝、タックが目を覚ますと コツコツ貯めていた、チーズがすべてなくなっていた。 チーズが消えた。 チーズ大好きなチックは発狂し タックはおびえながらも、推理する。 チーズを盗んだ泥棒と、その手口を。 消えたチーズを巡る、絵本風カートゥーンコメディ! 「チックタックのチーズはどこへ消えた?」 ◆◆◆◆◆◆◆◆ ディズニーチックな、カートゥーンな雰囲気の台本です。 登場人物がネズミなので どちらも男女不問です。 男×男 女×女 男×女 語り部も、男女不問となっています。 好きな組み合わせで楽しんでいただけます。 987 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
チック | 不問 | 46 | 楽観主義、何とかなると思ってる。 チーズが大好き。 金色の懐中時計が宝物。 ひらめきが得意。 他の鼠より長いしっぽがトレードマーク 探偵を目指している。 タックは友人兼助手だと思ってる。 |
タック | 不問 | 48 | 現実主義で心配性であわてんぼう 昔ねこにしっぽを半分かじられて 猫が大嫌い。 茶色のハンチング帽を被ってる。 夢は探偵になること。 チックは友人兼助手だと思ってる。 |
語り部 | 不問 | 35 | 絵本を読むように、楽しくナレーションを読むことが生きがいのストーリーテラー。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
語り部:タイトルコール
タック:「チックタックの!」
チック:「チーズはどこへ消えた?」(しらじらしく)
:
0:間
:
語り部:食いしん坊でマイペースなネズミ、チックと
語り部:あわてんぼうで臆病なネズミ、タックは
語り部:とあるホテルに巣を作り、しばらくのんびり暮らしていました。
:
タック:――チック!チックー!大変だ!
タック:大変なことになったぞ!チック!
語り部:ある日の朝、タックが必死にチックを起こそうとしています。
タック:チック!……チック!
チック:……ぐー(寝てる)
タック:ああもう、こんな大変な時に!
タック:なんでこんなにぐっすり寝ていられるんだ?
タック:チック!起きておくれよ!大変なことになったぞ!
チック:……ぐー。
語り部:タックが、チックのおなかをゆすったり、ほっぺたを叩いてみても
語り部:なかなかチックは目を覚ましません。
語り部:タックは、チックの周りをバタバタと走り始めました。
語り部:居ても立っても居られない様子です。
:
タック:チック!君にもかかわる大変なことだ!
チック:むにゃむにゃ……まったく、タック。
タック:ああ!目を覚ましたかい!チック!
タック:聞いておくれよ、とにかく大変なんだ!
チック:タック、君は騒いでいないと気が済まないのかい?
チック:僕はまだ寝ていたいのだけど……
:
語り部:チックは、片方の目だけを薄ーく開けて、めんどくさそうに口を開きます。
チック:また、人間に見つかったかい?
チック:それとも、猫でも現れたかい?
チック:僕はもう、おどろかないよ。
チック:なんとかなるさ。
チック:じゃ、おやすみ、タック。
語り部:チックはそう言うと、もう一度目を閉じて
語り部:半分ずり落ちていた布切れをめんどくさそうに上げなおし
語り部:またもや寝る体制に入りました。
:
タック:チック!全く君はいつもそうだ!
タック:もっと、関心を持つべきだよ!とにかく、大変なんだから!
チック:むにゃむにゃ……
チック:なにが、そんなに大変なんだい、タック。
チック:それを言ってくれなきゃ、僕には何が何だか分からないよ……
語り部:チックは片目だけ開けて、タックを見ます。
語り部:口からよだれを垂らしているので、きっとチーズを食べる夢を見ていたのでしょう。
タック:驚かずに聞いておくれよ、チック。
チック:もったいぶらずに、早く言っておくれよ、タック
チック:……ふわあ。
:
語り部:タックは、少しだけ深呼吸して、口を開きます。
タック:俺たちが集めたチーズが、全部盗まれてしまったんだ!
チック:な、な、な……
チック:な……
チック:なんだってーーーーーーー!!!!!
語り部:チックはまんまるな目をクリっと見開いて、寝転がった体制から、でんぐり返しを5回すると
語り部:壁にダーッンと音を立ててぶつかってしまいます。
タック:わあ!チック!驚きすぎて壁にぶつかるなんて!
タック:大丈夫かい!チック!
語り部:タックは、チックに駆け寄ります。
チック:いててて……
チック:タック、僕は大丈夫さ。
チック:それより、チーズさ、僕たちのチーズは、本当に無くなってしまったのかい?
タック:そうなんだ、チック。
タック:ほら、こっちに来ておくれよ、信じられないなら、自分の目で確かめた方がいい。
語り部:タックはチックに手を伸ばし、グイっと引き上げます。
語り部:まだ信じられていないチックは、おめめをくるくるしながら、
語り部:タックと手をつないだまま、チーズが置いてあった場所までついて行きます。
:
0:間
:
タック:ほら、ここ。
タック:俺たちは、チーズをここに集めていたはずなのに
タック:すっかり空っぽになっちゃったんだ。チック。
語り部:タックはそういうと、からっぽの場所の真ん中に立ちます。
チック:……ほ、本当だ……
チック:ぼ、ぼ、僕のチーズが……
タック:俺たちのチーズね。
チック:僕のチーズが、空っぽだ……
タック:俺たちのな。
語り部:チックは、短いひざからガックシと崩れ落ち
語り部:床に少しだけ残ったチーズの残骸をなめ始めました。
チック:まって、ぺろぺろ……タック……
チック:ここのゆか……ちょっとだけまだチーズの味がするよ……(ぺろぺろ)
タック:チック……床をなめるなんてやめるんだ!
チック:で、でも、タック……
チック:チーズがないと、僕たち……
タック:チーズがなければ、木のみを食べればいいじゃないか。
タック:ヒマワリの種だっていい。パスタの麺だっていい。
チック:……めん。
タック:俺たちはなんだって食べられる。
:
語り部:タックがそう言うと、チックは勢いよく立ち上がります。
語り部:そうして、両手をばっと開いて、真剣な顔で言うのです。
チック:な、なにを言っているんだ、タック!!
タック:どうしたんだい、チック。
タック:いきなり大きい声を出さないでおくれよ。
:
チック:大きい声を出さずにはいられないよ!タック!
チック:チーズは僕たちの宝物のはずだろう!
チック:チーズをあれだけ集めるのに、どれだけ時間がかかった?
チック:僕たちは、あのチーズを食べるために、頑張ってきたんだろう!
チック:それなのに……それなのに、そのチーズが
チック:全部盗まれてしまうなんて……
チック:そしてあろうことか、ヒマワリの種を食べればいいだなんて……!!
チック:パスタの、めんを……食べればいいだなんて!!
語り部:半分泣きながら、チックはまくしたてます。
チック:僕は、僕は……!信じられない……!
チック:絶対に、泥棒を見つけ出して……チーズを返してもらうんだ……!!
:
語り部:猫に襲われた時よりも、人間につかまりそうになった時よりも
語り部:バケモノに食べられてしまった時よりも、その顔は真剣でした。
タック:悪かったよ、チック……!
語り部:そのただ事ではない表情に、タックも気持ちが奮い立ったようです。
語り部:チックに向き合い、覚悟をもって、言葉を続けました。
タック:確かにそうだ、俺と君とで一生懸命集めたチーズが
タック:どこの誰とも知らないネズミに盗まれて
タック:全部食べられてしまったなんて、信じられないもんな!
チック:食べられた……?
タック:ああそうさ、チーズは食べられてしまったんだ。
チック:どうして、食べられたってわかったんだい、タック。
語り部:タックの言葉に、チックは顔を青くして首をかしげます。
語り部:チックにそう聞かれると、タックはかぶっていたハンチング帽を被り直し
語り部:推理を披露する探偵のように、語り始めるのです。
:
タック:俺は昨日の朝、いつも通り、あそこにチーズがあることを確認した。
タック:それはチック、君も知っているはずだ。
チック:僕も一緒に確認したからね、昨日の朝にはあった。間違いないよ。
タック:そうして夜、俺は君より早く寝た。
チック:タックは早起きだからね。
タック:チック、君は俺が寝る間際まで、チーズをつまんでいたね。
チック:うん、そうだよ。
チック:チーズをかじりながら、いつの間にか眠っている。
チック:それが僕の幸せなのさ。
タック:俺が寝る直前、しっかりとチーズが残っていることを確認しているんだ。
タック:寝る直前までチーズを食べていたチックも、チーズが寝るまであったことはわかってるはず!
語り部:タックは、ゆっくりと歩きながら、人差し指をぴんと立てて話を続けました。
タック:つまり、俺とチックが寝る前は、チーズはあった。
タック:でも、起きたらなくなっていた。
タック:ようするに!
:
タック:――俺が寝ている間に、チーズは消えたのだ。
チック:チーズはどこへ消えた!?
:
タック:俺は、こう推理するね!チック!
語り部:タックは、てってけ、とっとこと、巣の出口まで走っていきました。
語り部:そうして、そこで両手を広げて話を続けます。
タック:あれだけのチーズをもって、この出口から出ていくなんてことができるだろうか……?
タック:いや!できない!(反語)
チック:つまり、タックはこう言いたいんだね。
チック:泥棒ネズミは、僕とタックが眠っている間に……チーズを全部この場で食べちゃって
チック:それから、その出口から逃げて行ったって!
タック:そう……!チックくん、その通り!
チック:チックくん……?
語り部:タックのしゃべり方に少しの違和感を感じながらも
語り部:チックはおなかをさすりながら、独り言のようにつぶやきます。
チック:そうなると……僕たちのチーズはもうないんだね……
チック:そうか……食べられちゃったのか……
チック:……食べ……そうか……食べられ……ん?
タック:チックくん、君がショックを受けているのはとてもよくわかる。
タック:君はチーズが大好きだからね、いつも頭はチーズの事ばかり
タック:そんなチックくんから、チーズを奪うだなんて、なんて残酷なんだ!
語り部:タックは、だんだんと探偵風にしゃべるのが楽しくなってきたようで
語り部:その辺に立てかけてあった小さな木の枝を杖のようにして、ふんふんと振り回し始めました。
チック:……あれ?
チック:チーズ……あれ?
語り部:チックは、そんなタックには目もくれず、自分のおなかをさすっています。
語り部:なんだかやけにお腹がいっぱいで、なんだかとっても幸せそうなおなかをしていることに気が付いたのでしょう。
語り部:チックは、頭にハテナを浮かべたままおなかをさすっています。
:
タック:チックくん!君はどう思うかね……?
タック:……あれ?チックくん?……チックくん?……チック?
タック:――おーい!チック?どうしたんだ?チック?
タック:チックってば!おーーい!
チック:……げ
:
語り部:チックは思い出しました。
語り部:昨日の夜、寝ぼけたままチーズを食べ続け……
語り部:そしてそのまま、眠りながらもチーズを食べ。
語り部:半分起きて、最後のチーズをかじって、もう一度寝たことを。
語り部:チックは、思い出してしまいました。
:
タック:チック、大丈夫か?顔色が良くないぞ!
タック:やっぱり、チーズを泥棒に食べられたのがショックだったんだな……!
チック:あ、あはは、そう、みたいだね……あはは……
タック:チック、君のためにも、チーズを盗んだ泥棒を見つけよう!
タック:俺たちは、二匹で一匹だ!
タック:チック!君の悲しみは俺の悲しみさ!
チック:ぼ、ぼく……ちょーっと、外の空気にあたってくるよ……!
語り部:チックは、気まずそうな表情を浮かべ、ふらりふらりと出口に向かって歩いていきます。
タック:チック……
語り部:タックが心配そうに見つめるものですから、チックはますます気まずくなって
語り部:少し早足で出口から出ようとするのですが……
チック:――ぐえっ!
語り部:チックのおおきなお腹が、出口に挟まってしまいました。
タック:わあ!大変だ!チックが出口に挟まっちゃった!
タック:まったく、チック!君は最近太りすぎだよ!出口に挟まるなんて!
チック:むきー!なんだいタック!ひどいことを言うなあ!
チック:僕は少しも太ってなんかないやい!
タック:俺がしっぽを引っ張ってやる!そうすればきっと簡単に引っこ抜けるはずさ!
語り部:タックが、騒ぐチックを横目に、しっぽを強くつかみます。
語り部:チックは考えました。タックが一生懸命、引っ張ってくれている最中に
語り部:本当のことを告げれば、なんだかんだうやむやになってくれるんじゃないかと。
チック:わ、わかったよ……!痛くしないでおくれよ……!?タック。
タック:任せな!いくぞー!
チック:あ、そうだタック!実は……
:
タック:いち!にの!さーん!(チックがすっぽんと抜ける)
チック:うわあああああああ!(抜けた勢いで飛んでく)
:
語り部:話す間もなく、勢いよく引っこ抜かれたチックは、
語り部:タックと一緒に、後ろの壁までひゅーんと飛んでいき、壁にぶつかってしまいます。
:
チック:いてててて……タック、勢いよく引っ張りすぎだよ……
タック:ごめんよチック、あんなにすっぽりとハマっているなんて思わなかったんだ。
語り部:チックは、話すなら今しかない!と、思いました。
チック:今の衝撃で思い出したけど。
タック:どうしたんだい、チック。
チック:あのう……えっと……
チック:チーズを全部食べちゃったのは……
チック:僕みたいなんだ、えへへ……ごめんね……タック……
タック:……!!
タック:ああ!なんだ!チックだったのか!
タック:外から泥棒が入ってきたわけじゃなくてよかった!
:
語り部:チックは、しめしめ、うまくいったぞ、うまくごまかせたぞ、と思いました。
タック:つまり!チーズ泥棒はチックだったわけだな!
チック:そ、そうなるね……いやあ、ついついおいしくて、寝ながら食べちゃってたみたいで……あはは……
タック:……チック!!!
チック:な、なんでしょー?
タック:これからしばらく、チックはパスタの麺しか食べちゃダメ!
チック:め……めん。
チック:ぼ、僕から……チーズを奪うの……?
タック:俺の分のチーズを食べた罰!
語り部:チックは、目に涙を浮かべながら、タックにすがりつきます。
チック:タック……!お許しを……ごめんだから……!
チック:めん。めんだけは……せめてヒマワリの種も……!
タック:ないてもダメ!ダメったらダメ!
チック:ちゅーちゅー
タック:鳴いてもだめ!
チック:わあああああ!!!
チック:タックのー!!!
チック:いじわるうううううう!!!(フェードアウト)
:
0:間
:
語り部:それからしばらく、チックの鳴き声はホテル中に響き渡り……
語り部:ネズミの鳴き声がするとのことで、ラットバスターズが出動し
語り部:チックとタックは、また彼らから逃げ延びて
語り部:次の巣を作るために、ホテルから飛び出したのでした。
:
語り部:めでたし、めでたし。
チック:めでたくないよ!
:
語り部:おしまい。
:
:
語り部:タイトルコール
タック:「チックタックの!」
チック:「チーズはどこへ消えた?」(しらじらしく)
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0:間
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語り部:食いしん坊でマイペースなネズミ、チックと
語り部:あわてんぼうで臆病なネズミ、タックは
語り部:とあるホテルに巣を作り、しばらくのんびり暮らしていました。
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タック:――チック!チックー!大変だ!
タック:大変なことになったぞ!チック!
語り部:ある日の朝、タックが必死にチックを起こそうとしています。
タック:チック!……チック!
チック:……ぐー(寝てる)
タック:ああもう、こんな大変な時に!
タック:なんでこんなにぐっすり寝ていられるんだ?
タック:チック!起きておくれよ!大変なことになったぞ!
チック:……ぐー。
語り部:タックが、チックのおなかをゆすったり、ほっぺたを叩いてみても
語り部:なかなかチックは目を覚ましません。
語り部:タックは、チックの周りをバタバタと走り始めました。
語り部:居ても立っても居られない様子です。
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タック:チック!君にもかかわる大変なことだ!
チック:むにゃむにゃ……まったく、タック。
タック:ああ!目を覚ましたかい!チック!
タック:聞いておくれよ、とにかく大変なんだ!
チック:タック、君は騒いでいないと気が済まないのかい?
チック:僕はまだ寝ていたいのだけど……
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語り部:チックは、片方の目だけを薄ーく開けて、めんどくさそうに口を開きます。
チック:また、人間に見つかったかい?
チック:それとも、猫でも現れたかい?
チック:僕はもう、おどろかないよ。
チック:なんとかなるさ。
チック:じゃ、おやすみ、タック。
語り部:チックはそう言うと、もう一度目を閉じて
語り部:半分ずり落ちていた布切れをめんどくさそうに上げなおし
語り部:またもや寝る体制に入りました。
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タック:チック!全く君はいつもそうだ!
タック:もっと、関心を持つべきだよ!とにかく、大変なんだから!
チック:むにゃむにゃ……
チック:なにが、そんなに大変なんだい、タック。
チック:それを言ってくれなきゃ、僕には何が何だか分からないよ……
語り部:チックは片目だけ開けて、タックを見ます。
語り部:口からよだれを垂らしているので、きっとチーズを食べる夢を見ていたのでしょう。
タック:驚かずに聞いておくれよ、チック。
チック:もったいぶらずに、早く言っておくれよ、タック
チック:……ふわあ。
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語り部:タックは、少しだけ深呼吸して、口を開きます。
タック:俺たちが集めたチーズが、全部盗まれてしまったんだ!
チック:な、な、な……
チック:な……
チック:なんだってーーーーーーー!!!!!
語り部:チックはまんまるな目をクリっと見開いて、寝転がった体制から、でんぐり返しを5回すると
語り部:壁にダーッンと音を立ててぶつかってしまいます。
タック:わあ!チック!驚きすぎて壁にぶつかるなんて!
タック:大丈夫かい!チック!
語り部:タックは、チックに駆け寄ります。
チック:いててて……
チック:タック、僕は大丈夫さ。
チック:それより、チーズさ、僕たちのチーズは、本当に無くなってしまったのかい?
タック:そうなんだ、チック。
タック:ほら、こっちに来ておくれよ、信じられないなら、自分の目で確かめた方がいい。
語り部:タックはチックに手を伸ばし、グイっと引き上げます。
語り部:まだ信じられていないチックは、おめめをくるくるしながら、
語り部:タックと手をつないだまま、チーズが置いてあった場所までついて行きます。
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タック:ほら、ここ。
タック:俺たちは、チーズをここに集めていたはずなのに
タック:すっかり空っぽになっちゃったんだ。チック。
語り部:タックはそういうと、からっぽの場所の真ん中に立ちます。
チック:……ほ、本当だ……
チック:ぼ、ぼ、僕のチーズが……
タック:俺たちのチーズね。
チック:僕のチーズが、空っぽだ……
タック:俺たちのな。
語り部:チックは、短いひざからガックシと崩れ落ち
語り部:床に少しだけ残ったチーズの残骸をなめ始めました。
チック:まって、ぺろぺろ……タック……
チック:ここのゆか……ちょっとだけまだチーズの味がするよ……(ぺろぺろ)
タック:チック……床をなめるなんてやめるんだ!
チック:で、でも、タック……
チック:チーズがないと、僕たち……
タック:チーズがなければ、木のみを食べればいいじゃないか。
タック:ヒマワリの種だっていい。パスタの麺だっていい。
チック:……めん。
タック:俺たちはなんだって食べられる。
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語り部:タックがそう言うと、チックは勢いよく立ち上がります。
語り部:そうして、両手をばっと開いて、真剣な顔で言うのです。
チック:な、なにを言っているんだ、タック!!
タック:どうしたんだい、チック。
タック:いきなり大きい声を出さないでおくれよ。
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チック:大きい声を出さずにはいられないよ!タック!
チック:チーズは僕たちの宝物のはずだろう!
チック:チーズをあれだけ集めるのに、どれだけ時間がかかった?
チック:僕たちは、あのチーズを食べるために、頑張ってきたんだろう!
チック:それなのに……それなのに、そのチーズが
チック:全部盗まれてしまうなんて……
チック:そしてあろうことか、ヒマワリの種を食べればいいだなんて……!!
チック:パスタの、めんを……食べればいいだなんて!!
語り部:半分泣きながら、チックはまくしたてます。
チック:僕は、僕は……!信じられない……!
チック:絶対に、泥棒を見つけ出して……チーズを返してもらうんだ……!!
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語り部:猫に襲われた時よりも、人間につかまりそうになった時よりも
語り部:バケモノに食べられてしまった時よりも、その顔は真剣でした。
タック:悪かったよ、チック……!
語り部:そのただ事ではない表情に、タックも気持ちが奮い立ったようです。
語り部:チックに向き合い、覚悟をもって、言葉を続けました。
タック:確かにそうだ、俺と君とで一生懸命集めたチーズが
タック:どこの誰とも知らないネズミに盗まれて
タック:全部食べられてしまったなんて、信じられないもんな!
チック:食べられた……?
タック:ああそうさ、チーズは食べられてしまったんだ。
チック:どうして、食べられたってわかったんだい、タック。
語り部:タックの言葉に、チックは顔を青くして首をかしげます。
語り部:チックにそう聞かれると、タックはかぶっていたハンチング帽を被り直し
語り部:推理を披露する探偵のように、語り始めるのです。
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タック:俺は昨日の朝、いつも通り、あそこにチーズがあることを確認した。
タック:それはチック、君も知っているはずだ。
チック:僕も一緒に確認したからね、昨日の朝にはあった。間違いないよ。
タック:そうして夜、俺は君より早く寝た。
チック:タックは早起きだからね。
タック:チック、君は俺が寝る間際まで、チーズをつまんでいたね。
チック:うん、そうだよ。
チック:チーズをかじりながら、いつの間にか眠っている。
チック:それが僕の幸せなのさ。
タック:俺が寝る直前、しっかりとチーズが残っていることを確認しているんだ。
タック:寝る直前までチーズを食べていたチックも、チーズが寝るまであったことはわかってるはず!
語り部:タックは、ゆっくりと歩きながら、人差し指をぴんと立てて話を続けました。
タック:つまり、俺とチックが寝る前は、チーズはあった。
タック:でも、起きたらなくなっていた。
タック:ようするに!
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タック:――俺が寝ている間に、チーズは消えたのだ。
チック:チーズはどこへ消えた!?
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タック:俺は、こう推理するね!チック!
語り部:タックは、てってけ、とっとこと、巣の出口まで走っていきました。
語り部:そうして、そこで両手を広げて話を続けます。
タック:あれだけのチーズをもって、この出口から出ていくなんてことができるだろうか……?
タック:いや!できない!(反語)
チック:つまり、タックはこう言いたいんだね。
チック:泥棒ネズミは、僕とタックが眠っている間に……チーズを全部この場で食べちゃって
チック:それから、その出口から逃げて行ったって!
タック:そう……!チックくん、その通り!
チック:チックくん……?
語り部:タックのしゃべり方に少しの違和感を感じながらも
語り部:チックはおなかをさすりながら、独り言のようにつぶやきます。
チック:そうなると……僕たちのチーズはもうないんだね……
チック:そうか……食べられちゃったのか……
チック:……食べ……そうか……食べられ……ん?
タック:チックくん、君がショックを受けているのはとてもよくわかる。
タック:君はチーズが大好きだからね、いつも頭はチーズの事ばかり
タック:そんなチックくんから、チーズを奪うだなんて、なんて残酷なんだ!
語り部:タックは、だんだんと探偵風にしゃべるのが楽しくなってきたようで
語り部:その辺に立てかけてあった小さな木の枝を杖のようにして、ふんふんと振り回し始めました。
チック:……あれ?
チック:チーズ……あれ?
語り部:チックは、そんなタックには目もくれず、自分のおなかをさすっています。
語り部:なんだかやけにお腹がいっぱいで、なんだかとっても幸せそうなおなかをしていることに気が付いたのでしょう。
語り部:チックは、頭にハテナを浮かべたままおなかをさすっています。
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タック:チックくん!君はどう思うかね……?
タック:……あれ?チックくん?……チックくん?……チック?
タック:――おーい!チック?どうしたんだ?チック?
タック:チックってば!おーーい!
チック:……げ
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語り部:チックは思い出しました。
語り部:昨日の夜、寝ぼけたままチーズを食べ続け……
語り部:そしてそのまま、眠りながらもチーズを食べ。
語り部:半分起きて、最後のチーズをかじって、もう一度寝たことを。
語り部:チックは、思い出してしまいました。
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タック:チック、大丈夫か?顔色が良くないぞ!
タック:やっぱり、チーズを泥棒に食べられたのがショックだったんだな……!
チック:あ、あはは、そう、みたいだね……あはは……
タック:チック、君のためにも、チーズを盗んだ泥棒を見つけよう!
タック:俺たちは、二匹で一匹だ!
タック:チック!君の悲しみは俺の悲しみさ!
チック:ぼ、ぼく……ちょーっと、外の空気にあたってくるよ……!
語り部:チックは、気まずそうな表情を浮かべ、ふらりふらりと出口に向かって歩いていきます。
タック:チック……
語り部:タックが心配そうに見つめるものですから、チックはますます気まずくなって
語り部:少し早足で出口から出ようとするのですが……
チック:――ぐえっ!
語り部:チックのおおきなお腹が、出口に挟まってしまいました。
タック:わあ!大変だ!チックが出口に挟まっちゃった!
タック:まったく、チック!君は最近太りすぎだよ!出口に挟まるなんて!
チック:むきー!なんだいタック!ひどいことを言うなあ!
チック:僕は少しも太ってなんかないやい!
タック:俺がしっぽを引っ張ってやる!そうすればきっと簡単に引っこ抜けるはずさ!
語り部:タックが、騒ぐチックを横目に、しっぽを強くつかみます。
語り部:チックは考えました。タックが一生懸命、引っ張ってくれている最中に
語り部:本当のことを告げれば、なんだかんだうやむやになってくれるんじゃないかと。
チック:わ、わかったよ……!痛くしないでおくれよ……!?タック。
タック:任せな!いくぞー!
チック:あ、そうだタック!実は……
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タック:いち!にの!さーん!(チックがすっぽんと抜ける)
チック:うわあああああああ!(抜けた勢いで飛んでく)
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語り部:話す間もなく、勢いよく引っこ抜かれたチックは、
語り部:タックと一緒に、後ろの壁までひゅーんと飛んでいき、壁にぶつかってしまいます。
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チック:いてててて……タック、勢いよく引っ張りすぎだよ……
タック:ごめんよチック、あんなにすっぽりとハマっているなんて思わなかったんだ。
語り部:チックは、話すなら今しかない!と、思いました。
チック:今の衝撃で思い出したけど。
タック:どうしたんだい、チック。
チック:あのう……えっと……
チック:チーズを全部食べちゃったのは……
チック:僕みたいなんだ、えへへ……ごめんね……タック……
タック:……!!
タック:ああ!なんだ!チックだったのか!
タック:外から泥棒が入ってきたわけじゃなくてよかった!
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語り部:チックは、しめしめ、うまくいったぞ、うまくごまかせたぞ、と思いました。
タック:つまり!チーズ泥棒はチックだったわけだな!
チック:そ、そうなるね……いやあ、ついついおいしくて、寝ながら食べちゃってたみたいで……あはは……
タック:……チック!!!
チック:な、なんでしょー?
タック:これからしばらく、チックはパスタの麺しか食べちゃダメ!
チック:め……めん。
チック:ぼ、僕から……チーズを奪うの……?
タック:俺の分のチーズを食べた罰!
語り部:チックは、目に涙を浮かべながら、タックにすがりつきます。
チック:タック……!お許しを……ごめんだから……!
チック:めん。めんだけは……せめてヒマワリの種も……!
タック:ないてもダメ!ダメったらダメ!
チック:ちゅーちゅー
タック:鳴いてもだめ!
チック:わあああああ!!!
チック:タックのー!!!
チック:いじわるうううううう!!!(フェードアウト)
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0:間
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語り部:それからしばらく、チックの鳴き声はホテル中に響き渡り……
語り部:ネズミの鳴き声がするとのことで、ラットバスターズが出動し
語り部:チックとタックは、また彼らから逃げ延びて
語り部:次の巣を作るために、ホテルから飛び出したのでした。
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語り部:めでたし、めでたし。
チック:めでたくないよ!
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語り部:おしまい。
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