台本概要

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タイトル チックタックの温泉パニック!
作者名 レンga  (@renganovel)
ジャンル 童話
演者人数 2人用台本(不問2)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 チックタックシリーズ第十弾

◆◆あらすじ◆◆

二匹のネズミ
チックとタックはのんびり露天風呂に来ていました。
そこに、人間の足音が……

急いで逃げ出したいタックと
一秒でも長くお湯につかっていたいチックの
言い争いが始まります。

そして、ようやく逃げ出した先は……!

二匹のネズミが織りなす
ハイテンションカートゥーンコメディ!

「チックタックの温泉パニック!」

◆◆◆◆◆◆◆◆

ディズニーチックな、カートゥーンな雰囲気の台本です。
登場人物がネズミなので
どちらも男女不問です。

男×男 女×女 男×女

好きな組み合わせで楽しんでいただけます。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
チック 不問 53 楽観主義、何とかなると思ってる。 チーズが大好き。 金色の懐中時計が宝物。 ひらめきが得意。 他の鼠より長いしっぽがトレードマーク 探偵を目指している。 タックは友人兼助手だと思ってる。
タック 不問 58 現実主義で心配性であわてんぼう 昔ねこにしっぽを半分かじられて 猫が大嫌い。 茶色のハンチング帽を被ってる。 夢は探偵になること。 チックは友人兼助手だと思ってる。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
:     :     :    0:タイトル 0:『チックタックの温泉パニック!』 0:作・★レンga★  :     :    タック:チックタックの~! チック:温泉!パニック~!!  :    0:間  :    0:二匹のネズミ、チックとタックは、森の中にある温泉に来ていました。 0:のんびりと露天風呂に浸かるチックと対照的に 0:タックは、大慌てで風呂の周りを走り回っています。  :   タック:おーい!チックー!チックってば!  :    チック:なんだい、タック! チック:まったく、君はいつもいつも騒がしいなぁ タック:チック!君がのんびり屋さんすぎるのさ! タック:なんでこんな時に、のんびりお湯に浸かってられるんだ!  :    チック:なんでって、せっかくの露天風呂だろう? チック:のんびりせずに何をするっていうのさ! チック:そもそも君は、温泉でのマナーを知らなさすぎるぞ! チック:温泉に限らず、慌てていても走ったらダメさ!危険だろう?!  :    タック:慌てずにはいられないよ!チック! タック:だって!、、、っあ!  :    0:タックは、塗れた床に足を取られて 0:すってんころりん! 0:と、転んでしまいます。  :    タック:いったたたたっ! チック:ほーら、言わんこっちゃない チック:濡れた場所を走ってたら、そりゃこけるさ、タック! チック:まったく君は世話が焼けるネズミだよー。  :    0:タックは、床にぶつけて赤くなった鼻をさすりながら 0:居心地が悪そうにしています。  :    タック:チック、君の言う通り、濡れた場所は走らない方が良さそうだ チック:君は慌てん坊すぎるのさ タック:でもチック! タック:君は逆にのんびりしすぎだ!  :    0:タックは、大声をあげました。 0:チックは、露天風呂に肩までつかりながら首をかしげます。  :    チック:タック。さっきから、君はなんでそんなに慌ててるんだい? チック:観たいドラマが始まるなら、先に行っててくれてかまわないよ タック:違うさ!全然違うよ!チック! チック:じゃあなんだって言うんだい?  :    0:タックは、脱衣室の方をばっと指さして  :    タック:チック!この温泉に、もうすぐ人間が来るんだ! タック:さっき向こうで服を脱いでた! タック:きっと大人数だよ、チック!  :    0:チックは、やれやれこのネズミは 0:と言った様子で話しかけます。  :    チック:大丈夫さ、タック!僕たち小さなネズミだろう? チック:気付かれやしないさ! タック:チック!それは楽観的すぎるよ! タック:たしかに、俺たちは小さなネズミさ!もしかしたら、うまく誤魔化してバレずに何とかなるかもしれない! チック:そうだろうとも!何とかなるさ! チック:ほら、よくサルたちが言ってるじゃないか チック:人間と露天風呂に入ったって! タック:サルは別さ!彼らは半分人間みたいなものじゃないか! チック:そうだろうかなぁ?人間に比べて、サルはずいぶんと毛むくじゃらな気がするけど  :    0:チックは、毛むくじゃらな人間と、つるつるなサルを思い浮かべて 0:少しばかり可笑しくなります。  :    タック:とにかく!一緒に入ったとして、もしうまくいかなかったら、俺たちはきっと捕まってしまうんだ! タック:人間に捕まったら、どうなるかわかったもんじゃない!これは大変なことだ! タック:だからチック!わかるかい? タック:俺たちは一目散に逃げるべきなのさ!  :    0:チックは、露天風呂の端の方にすいすいと泳いでいき  :    チック:すみっこでもダメかい? タック:すみっこでもダメだよ、チック! タック:ほら、そこの岩に置いてある懐中時計を持って! タック:早く服を着るんだ! チック:タック、君は何を言っているんだい? チック:僕たちはいつも服なんか着てないじゃないかー! タック:そうか!どおりで探しても見つからないわけだ!うっかりしてたよ、チック! チック:まったく!タック、君は慌てん坊だなぁ!  :    0:チックは近くの岩場の懐中時計を手に取り 0:しぶしぶ、露天風呂から出ることにしました。  :    チック:よっこらせっと チック:ほら、名残惜しいけどお湯から上がったよ タック:君ならわかってくれると思ってたよ! タック:さあ、逃げよう、チック! チック:ところで、タック チック:君はどうやって、あの人間たちから逃げる気だい? タック:それはもちろん、外に飛び出すのさ! タック:俺たちがいるのは、露天風呂だろう? タック:ほら、すぐ向こうに走っていけば、施設の外に出れるはずさ!  :    0:チックは、手をポンと叩きます。  :    チック:なるほど、確かにそうだね チック:タックにしてはちゃんと考えてるじゃないか〜! タック:そうさ!俺はちゃんと頭も使えるネズミなのさ! タック:ほら、ぐずぐずしてるとすぐに人間たちが来てしまうよ  :    0:チックは、大したことではなさそうに 0:更衣室の方を指さしました。  :    チック:タック、もう数人入ってきてるよ タック:ええー!?!? タック:ほ、ほんとうだ!いつからだい!? タック:早く言ってくれよ!チック! タック:どどどど、どうしよう!逃げなきゃ!早く逃げなきゃ! チック:タック、落ち着きなよ〜 チック:まだ見つかってないんだからさ、ゆっくり逃げれば大丈夫だよ タック:こ、こっちに逃げよう!  :    0:タックは大慌てで、すぐ近くにあった塀を指さします。 0:黄色く細い竹を、緑色のひもでくくって作られているようで 0:紐に手をかければ、普通のネズミならいともたやすく登れることでしょう。  :    タック:この竹でできた塀を登れば、人間たちは来れないはずさ! タック:外に逃げただけだと、追いかけられるかもしれない! チック:タック!今日の君は頭が冴えてるね! チック:それはいいアイデアだけど…… チック:僕は、壁を登るのがちょっとばかし苦手なんだよね  :    0:チックが少し恥ずかしそうにそう言うと 0:タックは自信満々で声を上げます。  :    タック:わかった!じゃあ、俺が下から押してあげるから! タック:それならチック、君も登れるだろう!? チック:あんまり強く押さないでおくれよ? チック:君は慌てると、加減がわからなくなるからね  :    0:タックは、腕を回して軽くストレッチをした後 0:小さくぴょんぴょんと跳ねました。  :    タック:よーし、いくぞー! チック:タック?僕の声、聞こえていたかい? タック:いちにのさんで、押し上げるからね! チック:タック!タック!聞いていたかい?頼むからゆっくり押しておくれよ?  :    タック:いち! チック:タック!聞こえてるなら返信をしてくれ! タック:にの! チック:タック!大丈夫かい?タック! タック:さーん! チック:タック!? チック:ああ!そんなに勢いよく押したらっ!!! タック:そーーっれ! チック:塀を飛び越えちゃうよぉおおお!!  :    0:タックにお尻を押され、塀を勢いよく上ったチックは 0:その勢いのまま、塀の向こう側へ飛んでいきました。  :    チック:わああああああああああああ!!! タック:とりゃあああああああ!!!  :   0:じゃぽん 0:チックは、塀の向こう側にもあった 0:露天風呂に頭から落っこちてしまいました。  :   タック:っと!塀のてっぺんまで来たぞー! タック:チック、どうだい?あっという間だっただろう? タック:あれ?チック?どこに行ったんだい? タック:おーい!チックー!チックってばー!  :   0:タックは塀の上から、チックを探して大声を上げます。 0:ぶくぶくと音がして、露天風呂の水面下から 0:チックが浮いてくるのが分かりました。  :   チック:(お湯から上がってきて)……タック!ここさ!塀の向こう側だよ! タック:わあ!チック!なんでまたお湯に入ってるんだい!? タック:しかもそこは、女湯じゃないか!!!  :    0:女湯です。 0:タックは少し恥ずかしくなってしまいました。  :    チック:タック!!君が勢いよく押すもんだから チック:塀のこっち側まで飛ばされちゃったんだよ! チック:だからこれは君のせいさ!タック! タック:わわわ! タック:それは本当かい、チック!  :    0:本当です。  :    タック:ごめんよ!チック!そんなつもりじゃなかったんだ! チック:まったくもう!びっくりしたよ! チック:落ちた先がお湯でよかった! チック:石だったら、気絶してたかもしれないよ!まったく!  :    0:チックは、あきれたような表情をしましたが 0:少しでもまた、露天風呂に浸かれて満足しているようにも見えました。  :    タック:本当にごめんよ! タック:俺もそっちに降りるから、一緒に逃げよう チック:まだ逃げるのかい? チック:せっかくこっちにもお湯があるんだから、ゆっくり浸かってしまおうよ タック:ななななな、何を言ってるんだい、チック!!! タック:君は周りが見えていないんだね! チック:ん?どういうことだい? タック:君の周りに、たくさん人間の女の子がいるじゃないか!!  :    0:女の子の悲鳴が聞こえます。 0:女湯に入り込んだ二匹のネズミを、誰かが見つけてしまったのでしょう。 0:女湯が、バタバタと騒がしくなるのが分かりました。  :    チック:わわわ!気づかなかった! タック:よっと!降りてきたよ!チック! タック:ほら、この手に捕まって!早くお湯から上がるんだ!  :    0:タックが、お湯の中にいるチックに手を伸ばします。  :    チック:ありがとうタック! チック:よっこいしょっとぉ! タック:ささ、早く逃げなきゃ!人間の女の子に捕まっちゃうよ! チック:今度こそ、外に逃げよう、タック! タック:そうだね、チック!外に逃げよう!  :    0:と、その時 0:タックめがけて、何かが飛んでくるのが分かります。 0:それはおそらく、歯ブラシのようでした。  :    タック:わあ!何か飛んできた! チック:女の子が僕たちに向かって、石鹸とか桶とかを投げているのさ! タック:チック!当たらないようにちゃんと避けるんだよ! タック:よっと! チック:だ、大丈夫さ、問題ないね! チック:よよいっと! タック:本当かい?君はのんびり屋さんだから、あたっちゃうんじゃないかい? タック:ひょいっと! チック:あ、タック!危ない!石鹸が! タック:……え? タック:わあっ!避けなきゃ! チック:ジャンプだよ! タック:よっ、、、わああああああ  :    0:タックは石鹸をよけようとジャンプしますが 0:ちょうど着地するタイミングで、石鹸の上に載ってしまいました。 0:勢いのまま、石鹸はタックを乗せて 0:高スピードで滑っていきます。  :    タック:石鹸に乗っちゃったよ!!! タック:すごいスピードだあああああ!!! チック:タック!僕の手を取るんだ! タック:ありがとうっ!  :    0:手を取るタイミングで 0:チックはうっかり、石鹸に乗ってしまいました。  :    チック:わあああああ!!!僕も一緒に乗っちゃったよおおお!!! タック:大変だ!大変なことになった!! チック:このまま外に投げ出されちゃうよ!!!  :   チック:わあああああああああああ!!!!(同時 タック:わあああああああああああ!!!!(同時  :   0:ドンガラガッシャーン 0:と、いう音は聞こえませんでしたが 0:そんな音が聞こえてきそうなほどの勢いで 0:二人は露天風呂の外に飛ばされてしまいました。  :    0:間  :    0:先に意識が戻ったタックが 0:チックの肩をゆすります。  :    チック:うう... タック:チック、チック タック:大丈夫かい、チック チック:タック、大丈夫かい? チック:タック、僕の声が聞こえるかい? タック:ああ、よかった タック:どうやら僕たち、外の草むらがクッションになって チック:どうにかなったみたいだね  :    タック:慌ただしかった、全然ゆっくりできなかったね、チック チック:その通りだよ、タック。全然ゆっくりできなかった チック:だからその分、何かでゆっくりするべきだと僕は思うのさ タック:チック、何をする気だい? チック:そうだなぁ チック:お風呂はもうこりごりだし チック:しばらくこの草むらでゴロゴロするってのはどうかな?タック  :    0:タックは、それはいいアイデアだと手をポンと叩きました。  :    タック:チック!君にしては、やけに平和的な提案だね! タック:俺も、それがいいと思うよ! タック:ほら、夜空がとてもきれいだし タック:大きな三日月だって、こっちを見てるよ、チック!  :    チック:美味しそうだねえ タック:そうだね、チック。 タック:なんだか、今日は俺も タック:チーズを食べたくなってきたよ  :    0:タックがチーズと口にすると 0:チックは目をまんまるにして、タックを見つめました。  :    チック:チーズ……? チック:チーズ、チーズ タック:チック?どうしたんだい? チック:チーズ!そうだ!チーズだ!  :    0:チックは、寝転がっていた身体を 0:ばね仕掛けの人形のように、ビョインと起き上がらせます。  :    タック:チック?ばっと起き上がって、どうしたのさ、なんだか怖いよ? チック:タック!大変だ! タック:な、何が大変なのさ、チック! チック:僕、今日、チーズを食べていないよ! チック:チーズを食べなきゃ! チック:僕は、チーズを探してくるよ!! チック:きっと、温泉チーズがあるはずさ!  :    0:チックは、周りをきょろきょろと見回し 0:くんかくんかの匂いを嗅ぐと 0:先ほどいた温泉の方に、一目散に駆けていきました  :    タック:チック!のんびりするんじゃないのかい!? タック:ゴロゴロするんじゃないのかい! タック:チック!チックってばー!!  :   タック:チックゥゥゥゥゥゥ!!!!!!  :    0:タックの大きな呼び声は、夜の森に響き渡り 0:眠っていた三日月が、うるさそうな顔をして目を覚まし 0:もう一度、眠りにつきました。  :   0:おしまい   :    :

:     :     :    0:タイトル 0:『チックタックの温泉パニック!』 0:作・★レンga★  :     :    タック:チックタックの~! チック:温泉!パニック~!!  :    0:間  :    0:二匹のネズミ、チックとタックは、森の中にある温泉に来ていました。 0:のんびりと露天風呂に浸かるチックと対照的に 0:タックは、大慌てで風呂の周りを走り回っています。  :   タック:おーい!チックー!チックってば!  :    チック:なんだい、タック! チック:まったく、君はいつもいつも騒がしいなぁ タック:チック!君がのんびり屋さんすぎるのさ! タック:なんでこんな時に、のんびりお湯に浸かってられるんだ!  :    チック:なんでって、せっかくの露天風呂だろう? チック:のんびりせずに何をするっていうのさ! チック:そもそも君は、温泉でのマナーを知らなさすぎるぞ! チック:温泉に限らず、慌てていても走ったらダメさ!危険だろう?!  :    タック:慌てずにはいられないよ!チック! タック:だって!、、、っあ!  :    0:タックは、塗れた床に足を取られて 0:すってんころりん! 0:と、転んでしまいます。  :    タック:いったたたたっ! チック:ほーら、言わんこっちゃない チック:濡れた場所を走ってたら、そりゃこけるさ、タック! チック:まったく君は世話が焼けるネズミだよー。  :    0:タックは、床にぶつけて赤くなった鼻をさすりながら 0:居心地が悪そうにしています。  :    タック:チック、君の言う通り、濡れた場所は走らない方が良さそうだ チック:君は慌てん坊すぎるのさ タック:でもチック! タック:君は逆にのんびりしすぎだ!  :    0:タックは、大声をあげました。 0:チックは、露天風呂に肩までつかりながら首をかしげます。  :    チック:タック。さっきから、君はなんでそんなに慌ててるんだい? チック:観たいドラマが始まるなら、先に行っててくれてかまわないよ タック:違うさ!全然違うよ!チック! チック:じゃあなんだって言うんだい?  :    0:タックは、脱衣室の方をばっと指さして  :    タック:チック!この温泉に、もうすぐ人間が来るんだ! タック:さっき向こうで服を脱いでた! タック:きっと大人数だよ、チック!  :    0:チックは、やれやれこのネズミは 0:と言った様子で話しかけます。  :    チック:大丈夫さ、タック!僕たち小さなネズミだろう? チック:気付かれやしないさ! タック:チック!それは楽観的すぎるよ! タック:たしかに、俺たちは小さなネズミさ!もしかしたら、うまく誤魔化してバレずに何とかなるかもしれない! チック:そうだろうとも!何とかなるさ! チック:ほら、よくサルたちが言ってるじゃないか チック:人間と露天風呂に入ったって! タック:サルは別さ!彼らは半分人間みたいなものじゃないか! チック:そうだろうかなぁ?人間に比べて、サルはずいぶんと毛むくじゃらな気がするけど  :    0:チックは、毛むくじゃらな人間と、つるつるなサルを思い浮かべて 0:少しばかり可笑しくなります。  :    タック:とにかく!一緒に入ったとして、もしうまくいかなかったら、俺たちはきっと捕まってしまうんだ! タック:人間に捕まったら、どうなるかわかったもんじゃない!これは大変なことだ! タック:だからチック!わかるかい? タック:俺たちは一目散に逃げるべきなのさ!  :    0:チックは、露天風呂の端の方にすいすいと泳いでいき  :    チック:すみっこでもダメかい? タック:すみっこでもダメだよ、チック! タック:ほら、そこの岩に置いてある懐中時計を持って! タック:早く服を着るんだ! チック:タック、君は何を言っているんだい? チック:僕たちはいつも服なんか着てないじゃないかー! タック:そうか!どおりで探しても見つからないわけだ!うっかりしてたよ、チック! チック:まったく!タック、君は慌てん坊だなぁ!  :    0:チックは近くの岩場の懐中時計を手に取り 0:しぶしぶ、露天風呂から出ることにしました。  :    チック:よっこらせっと チック:ほら、名残惜しいけどお湯から上がったよ タック:君ならわかってくれると思ってたよ! タック:さあ、逃げよう、チック! チック:ところで、タック チック:君はどうやって、あの人間たちから逃げる気だい? タック:それはもちろん、外に飛び出すのさ! タック:俺たちがいるのは、露天風呂だろう? タック:ほら、すぐ向こうに走っていけば、施設の外に出れるはずさ!  :    0:チックは、手をポンと叩きます。  :    チック:なるほど、確かにそうだね チック:タックにしてはちゃんと考えてるじゃないか〜! タック:そうさ!俺はちゃんと頭も使えるネズミなのさ! タック:ほら、ぐずぐずしてるとすぐに人間たちが来てしまうよ  :    0:チックは、大したことではなさそうに 0:更衣室の方を指さしました。  :    チック:タック、もう数人入ってきてるよ タック:ええー!?!? タック:ほ、ほんとうだ!いつからだい!? タック:早く言ってくれよ!チック! タック:どどどど、どうしよう!逃げなきゃ!早く逃げなきゃ! チック:タック、落ち着きなよ〜 チック:まだ見つかってないんだからさ、ゆっくり逃げれば大丈夫だよ タック:こ、こっちに逃げよう!  :    0:タックは大慌てで、すぐ近くにあった塀を指さします。 0:黄色く細い竹を、緑色のひもでくくって作られているようで 0:紐に手をかければ、普通のネズミならいともたやすく登れることでしょう。  :    タック:この竹でできた塀を登れば、人間たちは来れないはずさ! タック:外に逃げただけだと、追いかけられるかもしれない! チック:タック!今日の君は頭が冴えてるね! チック:それはいいアイデアだけど…… チック:僕は、壁を登るのがちょっとばかし苦手なんだよね  :    0:チックが少し恥ずかしそうにそう言うと 0:タックは自信満々で声を上げます。  :    タック:わかった!じゃあ、俺が下から押してあげるから! タック:それならチック、君も登れるだろう!? チック:あんまり強く押さないでおくれよ? チック:君は慌てると、加減がわからなくなるからね  :    0:タックは、腕を回して軽くストレッチをした後 0:小さくぴょんぴょんと跳ねました。  :    タック:よーし、いくぞー! チック:タック?僕の声、聞こえていたかい? タック:いちにのさんで、押し上げるからね! チック:タック!タック!聞いていたかい?頼むからゆっくり押しておくれよ?  :    タック:いち! チック:タック!聞こえてるなら返信をしてくれ! タック:にの! チック:タック!大丈夫かい?タック! タック:さーん! チック:タック!? チック:ああ!そんなに勢いよく押したらっ!!! タック:そーーっれ! チック:塀を飛び越えちゃうよぉおおお!!  :    0:タックにお尻を押され、塀を勢いよく上ったチックは 0:その勢いのまま、塀の向こう側へ飛んでいきました。  :    チック:わああああああああああああ!!! タック:とりゃあああああああ!!!  :   0:じゃぽん 0:チックは、塀の向こう側にもあった 0:露天風呂に頭から落っこちてしまいました。  :   タック:っと!塀のてっぺんまで来たぞー! タック:チック、どうだい?あっという間だっただろう? タック:あれ?チック?どこに行ったんだい? タック:おーい!チックー!チックってばー!  :   0:タックは塀の上から、チックを探して大声を上げます。 0:ぶくぶくと音がして、露天風呂の水面下から 0:チックが浮いてくるのが分かりました。  :   チック:(お湯から上がってきて)……タック!ここさ!塀の向こう側だよ! タック:わあ!チック!なんでまたお湯に入ってるんだい!? タック:しかもそこは、女湯じゃないか!!!  :    0:女湯です。 0:タックは少し恥ずかしくなってしまいました。  :    チック:タック!!君が勢いよく押すもんだから チック:塀のこっち側まで飛ばされちゃったんだよ! チック:だからこれは君のせいさ!タック! タック:わわわ! タック:それは本当かい、チック!  :    0:本当です。  :    タック:ごめんよ!チック!そんなつもりじゃなかったんだ! チック:まったくもう!びっくりしたよ! チック:落ちた先がお湯でよかった! チック:石だったら、気絶してたかもしれないよ!まったく!  :    0:チックは、あきれたような表情をしましたが 0:少しでもまた、露天風呂に浸かれて満足しているようにも見えました。  :    タック:本当にごめんよ! タック:俺もそっちに降りるから、一緒に逃げよう チック:まだ逃げるのかい? チック:せっかくこっちにもお湯があるんだから、ゆっくり浸かってしまおうよ タック:ななななな、何を言ってるんだい、チック!!! タック:君は周りが見えていないんだね! チック:ん?どういうことだい? タック:君の周りに、たくさん人間の女の子がいるじゃないか!!  :    0:女の子の悲鳴が聞こえます。 0:女湯に入り込んだ二匹のネズミを、誰かが見つけてしまったのでしょう。 0:女湯が、バタバタと騒がしくなるのが分かりました。  :    チック:わわわ!気づかなかった! タック:よっと!降りてきたよ!チック! タック:ほら、この手に捕まって!早くお湯から上がるんだ!  :    0:タックが、お湯の中にいるチックに手を伸ばします。  :    チック:ありがとうタック! チック:よっこいしょっとぉ! タック:ささ、早く逃げなきゃ!人間の女の子に捕まっちゃうよ! チック:今度こそ、外に逃げよう、タック! タック:そうだね、チック!外に逃げよう!  :    0:と、その時 0:タックめがけて、何かが飛んでくるのが分かります。 0:それはおそらく、歯ブラシのようでした。  :    タック:わあ!何か飛んできた! チック:女の子が僕たちに向かって、石鹸とか桶とかを投げているのさ! タック:チック!当たらないようにちゃんと避けるんだよ! タック:よっと! チック:だ、大丈夫さ、問題ないね! チック:よよいっと! タック:本当かい?君はのんびり屋さんだから、あたっちゃうんじゃないかい? タック:ひょいっと! チック:あ、タック!危ない!石鹸が! タック:……え? タック:わあっ!避けなきゃ! チック:ジャンプだよ! タック:よっ、、、わああああああ  :    0:タックは石鹸をよけようとジャンプしますが 0:ちょうど着地するタイミングで、石鹸の上に載ってしまいました。 0:勢いのまま、石鹸はタックを乗せて 0:高スピードで滑っていきます。  :    タック:石鹸に乗っちゃったよ!!! タック:すごいスピードだあああああ!!! チック:タック!僕の手を取るんだ! タック:ありがとうっ!  :    0:手を取るタイミングで 0:チックはうっかり、石鹸に乗ってしまいました。  :    チック:わあああああ!!!僕も一緒に乗っちゃったよおおお!!! タック:大変だ!大変なことになった!! チック:このまま外に投げ出されちゃうよ!!!  :   チック:わあああああああああああ!!!!(同時 タック:わあああああああああああ!!!!(同時  :   0:ドンガラガッシャーン 0:と、いう音は聞こえませんでしたが 0:そんな音が聞こえてきそうなほどの勢いで 0:二人は露天風呂の外に飛ばされてしまいました。  :    0:間  :    0:先に意識が戻ったタックが 0:チックの肩をゆすります。  :    チック:うう... タック:チック、チック タック:大丈夫かい、チック チック:タック、大丈夫かい? チック:タック、僕の声が聞こえるかい? タック:ああ、よかった タック:どうやら僕たち、外の草むらがクッションになって チック:どうにかなったみたいだね  :    タック:慌ただしかった、全然ゆっくりできなかったね、チック チック:その通りだよ、タック。全然ゆっくりできなかった チック:だからその分、何かでゆっくりするべきだと僕は思うのさ タック:チック、何をする気だい? チック:そうだなぁ チック:お風呂はもうこりごりだし チック:しばらくこの草むらでゴロゴロするってのはどうかな?タック  :    0:タックは、それはいいアイデアだと手をポンと叩きました。  :    タック:チック!君にしては、やけに平和的な提案だね! タック:俺も、それがいいと思うよ! タック:ほら、夜空がとてもきれいだし タック:大きな三日月だって、こっちを見てるよ、チック!  :    チック:美味しそうだねえ タック:そうだね、チック。 タック:なんだか、今日は俺も タック:チーズを食べたくなってきたよ  :    0:タックがチーズと口にすると 0:チックは目をまんまるにして、タックを見つめました。  :    チック:チーズ……? チック:チーズ、チーズ タック:チック?どうしたんだい? チック:チーズ!そうだ!チーズだ!  :    0:チックは、寝転がっていた身体を 0:ばね仕掛けの人形のように、ビョインと起き上がらせます。  :    タック:チック?ばっと起き上がって、どうしたのさ、なんだか怖いよ? チック:タック!大変だ! タック:な、何が大変なのさ、チック! チック:僕、今日、チーズを食べていないよ! チック:チーズを食べなきゃ! チック:僕は、チーズを探してくるよ!! チック:きっと、温泉チーズがあるはずさ!  :    0:チックは、周りをきょろきょろと見回し 0:くんかくんかの匂いを嗅ぐと 0:先ほどいた温泉の方に、一目散に駆けていきました  :    タック:チック!のんびりするんじゃないのかい!? タック:ゴロゴロするんじゃないのかい! タック:チック!チックってばー!!  :   タック:チックゥゥゥゥゥゥ!!!!!!  :    0:タックの大きな呼び声は、夜の森に響き渡り 0:眠っていた三日月が、うるさそうな顔をして目を覚まし 0:もう一度、眠りにつきました。  :   0:おしまい   :    :