台本概要

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タイトル 俺と彼女の最後の日常
作者名 桜蛇あねり(おうじゃあねり)  (@aneri_writer)
ジャンル コメディ
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 これは俺と、同棲している彼女との、騒がしい毎日のお話。
日常ラブコメ。

※アドリブ、改変、名前変更、何でもありです。
節度を守って、楽しく演じてください。
※直接の描写や表現はないですが、会話の中で少しセンシティブな内容が含まれます。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
一星 99 いっせい。27歳。紅音と同棲中。 あまり感情を表に出さない、クールなやつ。
紅音 89 あかね。25歳。一星と同棲中。 ハイテンションでアホ。とにかくうるさい。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:「俺と彼女の最後の日常」 : 一星:(M)俺には、同棲を始めて1年の彼女がいる。名前は紅音(あかね)。お互い社会人で、家事やもろもろのお金などはいい感じに折半しながら、日々を過ごしている。仕事は違えども、休みはお互い土日なので、休日は二人で過ごせるし、お互いひとりの時間も好きなので、自分の好きなことをする時間もほどほどに取りながら、日々を過ごしている。 一星:なんてことのない、穏やかな日常……だと思うだろうか。……残念ながら、こいつと同棲を始めて、穏やかな時間を過ごした覚えはない。なぜならこいつは、 : 紅音:ねーえ!一星(いっせい)見て見て見て!今日のヘアセットとメイクマジで神がかってる!マジで私かわいい!ねえ!かわいくない!?今私、世界で一番かわいいと思うわ!ねえねえ、かわいくね!?私マジでかわいくね!? 一星:あーはいはい、かわいいかわいい。 紅音:これは世の中の男が全員私に惚れるね。やばいね。世界戦争に発展するね。 一星:そうだねー、罪な女だねー。 紅音:あー!テンション上がってきたぁぁぁ!ちょっと今から散歩行ってくるっ! 一星:おう。ちゃんとスカートはけよ。下、パンツじゃねぇか。 紅音:あ、スカートはくの忘れてた!んじゃ、スカートはいて、行ってきまぁすっ! : 一星:なぜならこいつは、マジでうるさいうえにとんでもないアホだからだ。 : 一星:「俺と彼女の最後の日常」 : 一星:(M)それはある日の夜のできごと。 : 紅音:一星、一星!今日ね、ケーキ買ってきたの!食べよ食べよ! 一星:おー!やった。何買ってきたの? 紅音:ふっふっふ、貴様に選ばせてやろう。抹茶のミルフィーユか、ザッハトルテか!さあ!好きなのをとるがいい。 一星:うーわ、どっちも俺の好きなやつじゃん。いいよ、紅音が食べたい方選べよ。 紅音:私もどっちでも好きだから、一星選んでってば。 一星:俺が選んでいいのか。 紅音:うん! 一星:好きなのを選んでいいんだな? 紅音:もちろん! 一星:じゃあどっちも。 紅音:…え? 一星:好きなのをとるがいいって言ったよな。だから、どっちも。 紅音:なんでそーゆーことするの! 一星:だから俺が選んでいいんだろって。 紅音:いやだよぉぉ!なんで独り占めするのぉ!二つ食べたいなら半分こすればいいじゃん!半分こしよーよぉ! 一星:じゃあ最初から半分にすればいいじゃねぇか。 紅音:二つともとられるなんて思わないじゃんかぁ!ああああああ!この欲張り悪魔がああああ!私はっ!一星とっ!二人で!食べたいと思って!今日!ケーキを……あ、紅茶いれるけど、いる? 一星:もらう。 紅音:飲み方はおまかせで? 一星:おう、任せた。 紅音:任された。 0:間 紅音:んはぁ。やっぱりケーキはおいしいねぇ。 一星:だな。お、紅茶うめぇ。 紅音:でしょ。とっておきの茶葉。 一星:うーま。 0:間 一星:(M)それはある仕事から帰ってきたときのできごと。 : 一星:ただいま~。あれ、いない……あー、風呂場か。 紅音:(ハイテンションで歌っている)はーいはーいはーいはーい!わったしは可愛い~♪女の子~!あれ!?パンツないんだけど!持ってきてないじゃーん!ぱーんつぱんつー!私のパンツを迎えに、いっきまー…(全裸でお風呂場から出てくる) 一星:ただいま。 紅音:……帰ってたの。おかえり。 一星:めちゃくちゃノリノリだな。全裸で。 紅音:……。……はーい!エブリバデーセイっ!はいはいはいはいっ!一星も一緒に!レッツソングトゥゲザー!いえあー!!! 一星:恥じらいはないのか。 紅音:そんなものお母さんのお腹の中に置いて生まれてきたわ。パンツ何色にしようかなー。 一星:それは仕方ないな、二度と取り戻せない。 紅音:赤にしよ。いえいいえいいえい!パンツ!パンツ! 一星:全裸でパンツを振り回すな。あーあー、お前体拭かずに出てきただろ、床濡れてんじゃねぇかよ。 紅音:あとで拭くー! 一星:はぁ…パンツを振り回す25歳。 紅音:おい年齢は言うなしばくぞ。 一星:年不相応(としふそうおう)の自覚はあるようで安心したわ。 0:間 一星:(M)それはとある日の休日。 紅音:ねぇ!アゴンにご飯あげよ! 一星:おっけー。 : 一星:(M)アゴンとは、俺たちふたりと一緒に暮らしている、フトアゴヒゲトカゲだ。ちなみに、アゴンと言うのは愛称で、本名はフトアゴン・アカボシ50世。もちろん、命名は紅音だ。 紅音:ほーらアゴン、こっちおいで〜!ケージ綺麗にするからねいたたたたた。アゴン痛い、痛いです。噛まないで。 一星:お前、アゴンから餌だとしか思われてないんだから、ケージから出す時は俺がやるって言ってんだろ。ほーら、アゴン。よしよし、いい子だ。少し外で待ってような。 紅音:なんで一星には噛みつかないんだろうね? 一星:俺のことはちゃんと飼い主だって認識してんだよ、アゴンはかしこいから。ねー。紅音、お前はただの餌だ。 紅音:...............。 一星:...............なに嬉しそうな顔してんだよ気持ち悪いな。 紅音:ふへへ、アゴンに餌って思われてるのかぁ。ふへへへへ、アゴン、食べていいよ、私のこといっぱい食べていいよ!あああああ、アゴンかっこいいよぉぉぉぉ! 一星:やめろ、アゴンを性的な目で見るなド変態。教育に悪いから近づくな。 紅音:いーじゃんかぁ!こんなにカッコイイんだよ!惚れない方がおかしいって! 一星:惚れた惚れないじゃねぇの!性的な目で見るなっつってんの!いいから早く掃除しろ! 紅音:ぶー。噛まれたら興奮するじゃん.....性的な目じゃなかったらどういう目で見ればいいの....。 一星:いいか、アゴン。こいつとだけは絶対に2人きりになるなよ。なにかあったら、テレパシーでもいい、俺を呼べ。全力で守ってやるからな。 紅音:なんでよー!そんな変なことまでしないってばぁ! 0:間 : 一星:(M)それはとある休日前の夜のこと。 紅音:一星!お酒買ってきたから今夜は飲も! 一星:お!いいな。俺なんかつまみ買ってくるわ。 紅音:よっしゃぁ!飲むぞぉ! : 一星:(M)お酒を飲み始めて1時間後。 紅音:っひゃあ〜!酔ったァ!あひゃひゃひゃひゃ! 一星:楽しそうだな。 紅音:めちゃくちゃたのしひ〜っ!うへへへへへ! 一星:お前顔赤いぞ。 紅音:酔ってるからねぇー!....あっ!一星、一星! 一星:なに? 紅音:見てて、見てて(洗濯物からブラジャーを持ってくる)ブラが......ブーラブラ! 一星:おう。 紅音:ぐふっ!アッハッハッハッハッ!ブラがっ!あひゃひゃひゃ、ブーラブラって!あはははは!あっあっ!ブラがっ!や、やばっ!つぼっ!つぼった、あひゃひゃひゃっ! 一星:楽しそうだな。 紅音:あっひゃっひゃっひゃっ!あーやば、面白すぎっ!ひゃひゃ!あー、最高!っとうわぁ!(椅子から転げ落ちる)いたたた、あひゃひゃひゃひゃ! 一星:あーあ、椅子から落ちて…。お前、同じボケ明日この時間にやってみろ。絶対に面白くねぇから。 紅音:え?当たり前じゃん。明日はシラケるに決まってんじゃん。 一星:お前のテンションどうなってんの。 紅音:あー!あー!動けなーい!へいこーかんかくがー!なーいー!床がひんやりしててきもちーいーなー!うっひゃっひゃっひゃっ! 一星:テンションの高低差激しいな。ジェットコースター通り過ぎて瞬間移動だよ。 紅音:なんでそーゆー事言うの!そんなこと言わないでよぉぉ!瞬間移動じゃなくてテレポートって言えよぉぉ!そっちの方がカッコイイじゃんかぁぁぁ! 一星:はいはい、じゃあさっさと布団にテレポートして寝てください。 紅音:え?テレポートなんてできるわけないじゃん。あれは漫画とかゲームの世界でしか使えないよ?現実でできるわけないじゃん。バカなの? 一星:よーしわかった、じゃあもうそこで寝ろ。そんで、俺がそこ通る度にお前のこと踏み抜いてやるから。 紅音:なんでそんな酷いことするのぉぉぉ!!ねぇぇぇぇ!! 一星:.......(無言でゲーム機を取り出す) 紅音:ねぇぇぇ!無視しないでよぉぉぉ!構ってよぉぉぉ!紅音ちゃん寂しがってるよぉぉぉ!!! 一星:(M)俺はガン無視して、ゲームを始めた。紅音は5分くらい、床でギャーギャー騒いでいたが、急に静かになった。相変わらず、スイッチが切れたように寝落ちるな、こいつ。俺はそんな紅音にそっと布団をかけ、背中を軽く踏みつけた後、自分は布団に潜り、眠った。次の日の朝、どうして布団に連れてってくれなかったのかと騒ぎ立てる紅音を横目に、俺は二度寝に入っていった。 0:間 : 一星:(M)とまぁ、こんな毎日を過ごしているわけだが。毎日毎日、こいつのアホな言動にはいつも振り回されている。俺は、そんな彼女に今日、いつもの仕返しをしてやろうと思った。 : 一星:(M)それは、俺と彼女の最後の日の夜。 : 一星:紅音、話がある。 紅音:んー?どしたのー?正座した方がいい? 一星:いや。とりあえず座って。 紅音:はーい。 一星:俺たち、同棲してまぁ長いよな。 紅音:1年経とうとしてるね。 一星:この1年、お前には毎日毎日振り回されてきた。わけわからんことで騒ぐし、恥じらいもなく騒ぐし、酒癖悪いし。 紅音:そだね。 一星:だからな......俺たち、もう、終わりにしよう。 : 紅音:うんっ!わかった! : 一星:........え、そんないつものノリで言うなよ。せめてもう少し、こう..... : 紅音:で、入籍はいつにする? : 一星:.....え? : 紅音:私たちの今の関係を終わらせて、結婚しよ、ってことでしょ? : 一星:..........エスパーかよ。別れ話っぽくして、あとでネタばらししてプロポーズの予定だったんだけど。 紅音:わかるよ、一星の考えてることくらい。別れよ、じゃなくて、終わりにしよ、って言ったら、もうそれしかないじゃん? 一星:お前にはやっぱかなわねぇや。全部お見通しだもんな。俺、結構感情表に出さないタイプだからわかりにくい、とか言われるんだけど。 紅音:だろうね。でも、よく見てたら結構わかるよ。あー、今機嫌悪そうだなーとか、今日はハイテンションだなー、とか。 一星:そういうもんか。お前はめちゃくちゃわかりやすいけどな。 紅音:感情全部表に出すからねー。ま、お互いにちゃんとわかってるからさ、あんまぶつかることなかったじゃん。お互い察して、自分のテンション調整したり、話しかけなかったり。 一星:そうだな。確かに、俺の機嫌悪いときはお前静かにしてくれてたな…。あんま気にしたことなかったけど。 紅音:それでいいんだよ。無意識でやってるからさ。無理なく。 一星:えーと、何の話だっけ? 紅音:私をだましてサプライズしようなんて、無理な話だよってこと。 一星:無理だったかぁ。いい案だと思ったのに。……こんなことならもっとロマンチックにやればよかったかな、プロポーズ。 紅音:それも無理でしょ。 一星:無理だな。 紅音:ロマンチックなんて言葉、私たちに一番似合わないよ。 一星:それな。 紅音:思えばさ、そういう雰囲気というかムードというか…カップルっぽい事っていうのかな。してこなかったよね、私たち。 一星:そーいえばそうだよな。 紅音:手をつないだこともないし、 一星:片手の自由が奪われるの嫌だもんな。 紅音:エッチしてる時だって、そんな雰囲気ないもんね、私たち。 一星:そうだな。お前が俺の上にのってしてたとき、「流鏑馬(やぶさめ)のマネ!」とか言って腰振りながら弓構えるポーズした時は、こいつついにイカれたかって思ったわ。イカれてるけども。 紅音:なんか思いついちゃって。その時に言っとかないと忘れるじゃん。 一星:ムードのかけらもねぇな。 紅音:真剣に好きって言ったこともないし、 一星:そういうストレートな言葉、苦手だからなぁ、俺ら。 紅音:あれ…? 一星:どした? 紅音:私たち、告白イベやってなくね? 一星:……やってねぇな。 紅音:"好きです、付き合ってください!""私もです!付き合いましょう!”のやり取りしてなくね? 一星:……やってねぇな。 紅音:もしかして……私ら、付き合っていなかった…? 一星:……付き合ってなかったのか、俺ら。 紅音:恋人の定義として、そういうやり取りが必要って言うんだったら、付き合ってないね、私たち。 一星:その定義だと付き合ってねぇな。お前、俺の彼女じゃなかったのか。 紅音:え、謎すぎる。謎すぎる関係なんだけど。 一星:どんな関係だよ。ただの同居人じゃねぇかよ。 紅音:いや、やることやってるから、セフ…。 一星:違う。違わねぇかもだけど、認めたくねぇから違う。……なんで俺ら同棲してんだっけ。 紅音:それはあれじゃん。アゴンだよ。 一星:あー…そういえばなんか…思い出してきた気がする…。 紅音:二人でお酒飲みながら爬虫類のすばらしさについて語り合って、そのノリで爬虫類専門店行ってさ。そこでアゴンに一目ぼれして。んで、一星が「飼いたいけど、一人で飼えるか不安」っていうから、私が「じゃあ一緒に飼おうぜ!私も飼いたい!」ってなって、同棲し始めたよね。アゴン一緒に飼うために。 一星:そうだわ。アゴン飼うからって一緒に住むことにしたんだわ。好きとか付き合うとか、そういうの一切なかったな。 紅音:ねー。カップルっぽいことしたことないとか思ってたけど、カップルですらなかったとは。 一星:ホント謎だな。 紅音:あ、ちょっとまってて。(席を立ち、アゴンのケージへ).....ほーら、おいで。........アゴン連れてきた。 一星:そっとしといてやれよ、寝起きだろアゴン。 紅音:そーだけど、大切な話だから、アゴンも聞いてもらおうと思って。はい、アゴン、おやつだよ。起こしてごめんね。 一星:......わかったわかった、じゃあアゴンも一緒に聞こう。 紅音:ねぇ。アゴンってさ、私と一星の家族じゃん? 一星:そうだな。 紅音:私とアゴンは家族。一星とアゴンも家族。なのに、私と一星が家族じゃないの、おかしくね? 一星:そうだな。 紅音:じゃあ、私達も家族になろっか。そしたら、皆で家族になれるね。アゴンのために、私と結婚してよ、一星。 一星:なにそれ、プロポーズ? 紅音:うん。最高でしょ? 一星:お前らしいな。最高。 紅音:これでみんな家族だね。よかったね、アゴン......いててててて、アゴン痛い、痛いです。噛まないで。 一星:ま、俺らが家族になったところで、アゴンにとってお前は餌であることに変わりねぇみたいだけどな。……それに、俺達も、家族になったところで、日常はこれまでと変わんねぇだろうな。 紅音:あはは、そうだね。…あのさ、この先、子どもができたとするじゃん? 一星:おう。 紅音:私の遺伝子を受け継いだ子が生まれたらさ、一星は嫁と子どもに振り回されるお父さんの毎日が待ってるだろうし、一星の遺伝子を受け継いだ子が生まれたら、私には、子どもとお父さんが一緒に呆れながらお母さんのアホな話を聞いてるっていう毎日が待ってるんだろうなって。 一星:......容易に想像できるな。 紅音:でしょ?将来が簡単にイメージできちゃうってことは、きっと結婚向いてんだよ、私たち。 一星:そうだな。 紅音:あ、そだ。私たちの子供できたらさ、アゴンのお嫁さんも探して家族増やそうよ。2世帯住宅にしよ。 一星:ふっ....2世帯住宅って(笑) 紅音:いいじゃん。絶対楽しいよ。 一星:だろうなぁ。 紅音:じゃあ、これで晴れて私たちは謎の他人関係から、婚約関係になれたね! 一星:ようやくな。 紅音:ま、これからも変わんないだろうけど、よろしく。 一星:おう。 : 一星:(M)さて、これで俺と彼女の最後の日常が終わった。これからは、俺と嫁の.....あぁごめん、お前も、だよな。これからは、俺と嫁とトカゲの騒がしい毎日が、始まるのだ。 : 0:【完】

0:「俺と彼女の最後の日常」 : 一星:(M)俺には、同棲を始めて1年の彼女がいる。名前は紅音(あかね)。お互い社会人で、家事やもろもろのお金などはいい感じに折半しながら、日々を過ごしている。仕事は違えども、休みはお互い土日なので、休日は二人で過ごせるし、お互いひとりの時間も好きなので、自分の好きなことをする時間もほどほどに取りながら、日々を過ごしている。 一星:なんてことのない、穏やかな日常……だと思うだろうか。……残念ながら、こいつと同棲を始めて、穏やかな時間を過ごした覚えはない。なぜならこいつは、 : 紅音:ねーえ!一星(いっせい)見て見て見て!今日のヘアセットとメイクマジで神がかってる!マジで私かわいい!ねえ!かわいくない!?今私、世界で一番かわいいと思うわ!ねえねえ、かわいくね!?私マジでかわいくね!? 一星:あーはいはい、かわいいかわいい。 紅音:これは世の中の男が全員私に惚れるね。やばいね。世界戦争に発展するね。 一星:そうだねー、罪な女だねー。 紅音:あー!テンション上がってきたぁぁぁ!ちょっと今から散歩行ってくるっ! 一星:おう。ちゃんとスカートはけよ。下、パンツじゃねぇか。 紅音:あ、スカートはくの忘れてた!んじゃ、スカートはいて、行ってきまぁすっ! : 一星:なぜならこいつは、マジでうるさいうえにとんでもないアホだからだ。 : 一星:「俺と彼女の最後の日常」 : 一星:(M)それはある日の夜のできごと。 : 紅音:一星、一星!今日ね、ケーキ買ってきたの!食べよ食べよ! 一星:おー!やった。何買ってきたの? 紅音:ふっふっふ、貴様に選ばせてやろう。抹茶のミルフィーユか、ザッハトルテか!さあ!好きなのをとるがいい。 一星:うーわ、どっちも俺の好きなやつじゃん。いいよ、紅音が食べたい方選べよ。 紅音:私もどっちでも好きだから、一星選んでってば。 一星:俺が選んでいいのか。 紅音:うん! 一星:好きなのを選んでいいんだな? 紅音:もちろん! 一星:じゃあどっちも。 紅音:…え? 一星:好きなのをとるがいいって言ったよな。だから、どっちも。 紅音:なんでそーゆーことするの! 一星:だから俺が選んでいいんだろって。 紅音:いやだよぉぉ!なんで独り占めするのぉ!二つ食べたいなら半分こすればいいじゃん!半分こしよーよぉ! 一星:じゃあ最初から半分にすればいいじゃねぇか。 紅音:二つともとられるなんて思わないじゃんかぁ!ああああああ!この欲張り悪魔がああああ!私はっ!一星とっ!二人で!食べたいと思って!今日!ケーキを……あ、紅茶いれるけど、いる? 一星:もらう。 紅音:飲み方はおまかせで? 一星:おう、任せた。 紅音:任された。 0:間 紅音:んはぁ。やっぱりケーキはおいしいねぇ。 一星:だな。お、紅茶うめぇ。 紅音:でしょ。とっておきの茶葉。 一星:うーま。 0:間 一星:(M)それはある仕事から帰ってきたときのできごと。 : 一星:ただいま~。あれ、いない……あー、風呂場か。 紅音:(ハイテンションで歌っている)はーいはーいはーいはーい!わったしは可愛い~♪女の子~!あれ!?パンツないんだけど!持ってきてないじゃーん!ぱーんつぱんつー!私のパンツを迎えに、いっきまー…(全裸でお風呂場から出てくる) 一星:ただいま。 紅音:……帰ってたの。おかえり。 一星:めちゃくちゃノリノリだな。全裸で。 紅音:……。……はーい!エブリバデーセイっ!はいはいはいはいっ!一星も一緒に!レッツソングトゥゲザー!いえあー!!! 一星:恥じらいはないのか。 紅音:そんなものお母さんのお腹の中に置いて生まれてきたわ。パンツ何色にしようかなー。 一星:それは仕方ないな、二度と取り戻せない。 紅音:赤にしよ。いえいいえいいえい!パンツ!パンツ! 一星:全裸でパンツを振り回すな。あーあー、お前体拭かずに出てきただろ、床濡れてんじゃねぇかよ。 紅音:あとで拭くー! 一星:はぁ…パンツを振り回す25歳。 紅音:おい年齢は言うなしばくぞ。 一星:年不相応(としふそうおう)の自覚はあるようで安心したわ。 0:間 一星:(M)それはとある日の休日。 紅音:ねぇ!アゴンにご飯あげよ! 一星:おっけー。 : 一星:(M)アゴンとは、俺たちふたりと一緒に暮らしている、フトアゴヒゲトカゲだ。ちなみに、アゴンと言うのは愛称で、本名はフトアゴン・アカボシ50世。もちろん、命名は紅音だ。 紅音:ほーらアゴン、こっちおいで〜!ケージ綺麗にするからねいたたたたた。アゴン痛い、痛いです。噛まないで。 一星:お前、アゴンから餌だとしか思われてないんだから、ケージから出す時は俺がやるって言ってんだろ。ほーら、アゴン。よしよし、いい子だ。少し外で待ってような。 紅音:なんで一星には噛みつかないんだろうね? 一星:俺のことはちゃんと飼い主だって認識してんだよ、アゴンはかしこいから。ねー。紅音、お前はただの餌だ。 紅音:...............。 一星:...............なに嬉しそうな顔してんだよ気持ち悪いな。 紅音:ふへへ、アゴンに餌って思われてるのかぁ。ふへへへへ、アゴン、食べていいよ、私のこといっぱい食べていいよ!あああああ、アゴンかっこいいよぉぉぉぉ! 一星:やめろ、アゴンを性的な目で見るなド変態。教育に悪いから近づくな。 紅音:いーじゃんかぁ!こんなにカッコイイんだよ!惚れない方がおかしいって! 一星:惚れた惚れないじゃねぇの!性的な目で見るなっつってんの!いいから早く掃除しろ! 紅音:ぶー。噛まれたら興奮するじゃん.....性的な目じゃなかったらどういう目で見ればいいの....。 一星:いいか、アゴン。こいつとだけは絶対に2人きりになるなよ。なにかあったら、テレパシーでもいい、俺を呼べ。全力で守ってやるからな。 紅音:なんでよー!そんな変なことまでしないってばぁ! 0:間 : 一星:(M)それはとある休日前の夜のこと。 紅音:一星!お酒買ってきたから今夜は飲も! 一星:お!いいな。俺なんかつまみ買ってくるわ。 紅音:よっしゃぁ!飲むぞぉ! : 一星:(M)お酒を飲み始めて1時間後。 紅音:っひゃあ〜!酔ったァ!あひゃひゃひゃひゃ! 一星:楽しそうだな。 紅音:めちゃくちゃたのしひ〜っ!うへへへへへ! 一星:お前顔赤いぞ。 紅音:酔ってるからねぇー!....あっ!一星、一星! 一星:なに? 紅音:見てて、見てて(洗濯物からブラジャーを持ってくる)ブラが......ブーラブラ! 一星:おう。 紅音:ぐふっ!アッハッハッハッハッ!ブラがっ!あひゃひゃひゃ、ブーラブラって!あはははは!あっあっ!ブラがっ!や、やばっ!つぼっ!つぼった、あひゃひゃひゃっ! 一星:楽しそうだな。 紅音:あっひゃっひゃっひゃっ!あーやば、面白すぎっ!ひゃひゃ!あー、最高!っとうわぁ!(椅子から転げ落ちる)いたたた、あひゃひゃひゃひゃ! 一星:あーあ、椅子から落ちて…。お前、同じボケ明日この時間にやってみろ。絶対に面白くねぇから。 紅音:え?当たり前じゃん。明日はシラケるに決まってんじゃん。 一星:お前のテンションどうなってんの。 紅音:あー!あー!動けなーい!へいこーかんかくがー!なーいー!床がひんやりしててきもちーいーなー!うっひゃっひゃっひゃっ! 一星:テンションの高低差激しいな。ジェットコースター通り過ぎて瞬間移動だよ。 紅音:なんでそーゆー事言うの!そんなこと言わないでよぉぉ!瞬間移動じゃなくてテレポートって言えよぉぉ!そっちの方がカッコイイじゃんかぁぁぁ! 一星:はいはい、じゃあさっさと布団にテレポートして寝てください。 紅音:え?テレポートなんてできるわけないじゃん。あれは漫画とかゲームの世界でしか使えないよ?現実でできるわけないじゃん。バカなの? 一星:よーしわかった、じゃあもうそこで寝ろ。そんで、俺がそこ通る度にお前のこと踏み抜いてやるから。 紅音:なんでそんな酷いことするのぉぉぉ!!ねぇぇぇぇ!! 一星:.......(無言でゲーム機を取り出す) 紅音:ねぇぇぇ!無視しないでよぉぉぉ!構ってよぉぉぉ!紅音ちゃん寂しがってるよぉぉぉ!!! 一星:(M)俺はガン無視して、ゲームを始めた。紅音は5分くらい、床でギャーギャー騒いでいたが、急に静かになった。相変わらず、スイッチが切れたように寝落ちるな、こいつ。俺はそんな紅音にそっと布団をかけ、背中を軽く踏みつけた後、自分は布団に潜り、眠った。次の日の朝、どうして布団に連れてってくれなかったのかと騒ぎ立てる紅音を横目に、俺は二度寝に入っていった。 0:間 : 一星:(M)とまぁ、こんな毎日を過ごしているわけだが。毎日毎日、こいつのアホな言動にはいつも振り回されている。俺は、そんな彼女に今日、いつもの仕返しをしてやろうと思った。 : 一星:(M)それは、俺と彼女の最後の日の夜。 : 一星:紅音、話がある。 紅音:んー?どしたのー?正座した方がいい? 一星:いや。とりあえず座って。 紅音:はーい。 一星:俺たち、同棲してまぁ長いよな。 紅音:1年経とうとしてるね。 一星:この1年、お前には毎日毎日振り回されてきた。わけわからんことで騒ぐし、恥じらいもなく騒ぐし、酒癖悪いし。 紅音:そだね。 一星:だからな......俺たち、もう、終わりにしよう。 : 紅音:うんっ!わかった! : 一星:........え、そんないつものノリで言うなよ。せめてもう少し、こう..... : 紅音:で、入籍はいつにする? : 一星:.....え? : 紅音:私たちの今の関係を終わらせて、結婚しよ、ってことでしょ? : 一星:..........エスパーかよ。別れ話っぽくして、あとでネタばらししてプロポーズの予定だったんだけど。 紅音:わかるよ、一星の考えてることくらい。別れよ、じゃなくて、終わりにしよ、って言ったら、もうそれしかないじゃん? 一星:お前にはやっぱかなわねぇや。全部お見通しだもんな。俺、結構感情表に出さないタイプだからわかりにくい、とか言われるんだけど。 紅音:だろうね。でも、よく見てたら結構わかるよ。あー、今機嫌悪そうだなーとか、今日はハイテンションだなー、とか。 一星:そういうもんか。お前はめちゃくちゃわかりやすいけどな。 紅音:感情全部表に出すからねー。ま、お互いにちゃんとわかってるからさ、あんまぶつかることなかったじゃん。お互い察して、自分のテンション調整したり、話しかけなかったり。 一星:そうだな。確かに、俺の機嫌悪いときはお前静かにしてくれてたな…。あんま気にしたことなかったけど。 紅音:それでいいんだよ。無意識でやってるからさ。無理なく。 一星:えーと、何の話だっけ? 紅音:私をだましてサプライズしようなんて、無理な話だよってこと。 一星:無理だったかぁ。いい案だと思ったのに。……こんなことならもっとロマンチックにやればよかったかな、プロポーズ。 紅音:それも無理でしょ。 一星:無理だな。 紅音:ロマンチックなんて言葉、私たちに一番似合わないよ。 一星:それな。 紅音:思えばさ、そういう雰囲気というかムードというか…カップルっぽい事っていうのかな。してこなかったよね、私たち。 一星:そーいえばそうだよな。 紅音:手をつないだこともないし、 一星:片手の自由が奪われるの嫌だもんな。 紅音:エッチしてる時だって、そんな雰囲気ないもんね、私たち。 一星:そうだな。お前が俺の上にのってしてたとき、「流鏑馬(やぶさめ)のマネ!」とか言って腰振りながら弓構えるポーズした時は、こいつついにイカれたかって思ったわ。イカれてるけども。 紅音:なんか思いついちゃって。その時に言っとかないと忘れるじゃん。 一星:ムードのかけらもねぇな。 紅音:真剣に好きって言ったこともないし、 一星:そういうストレートな言葉、苦手だからなぁ、俺ら。 紅音:あれ…? 一星:どした? 紅音:私たち、告白イベやってなくね? 一星:……やってねぇな。 紅音:"好きです、付き合ってください!""私もです!付き合いましょう!”のやり取りしてなくね? 一星:……やってねぇな。 紅音:もしかして……私ら、付き合っていなかった…? 一星:……付き合ってなかったのか、俺ら。 紅音:恋人の定義として、そういうやり取りが必要って言うんだったら、付き合ってないね、私たち。 一星:その定義だと付き合ってねぇな。お前、俺の彼女じゃなかったのか。 紅音:え、謎すぎる。謎すぎる関係なんだけど。 一星:どんな関係だよ。ただの同居人じゃねぇかよ。 紅音:いや、やることやってるから、セフ…。 一星:違う。違わねぇかもだけど、認めたくねぇから違う。……なんで俺ら同棲してんだっけ。 紅音:それはあれじゃん。アゴンだよ。 一星:あー…そういえばなんか…思い出してきた気がする…。 紅音:二人でお酒飲みながら爬虫類のすばらしさについて語り合って、そのノリで爬虫類専門店行ってさ。そこでアゴンに一目ぼれして。んで、一星が「飼いたいけど、一人で飼えるか不安」っていうから、私が「じゃあ一緒に飼おうぜ!私も飼いたい!」ってなって、同棲し始めたよね。アゴン一緒に飼うために。 一星:そうだわ。アゴン飼うからって一緒に住むことにしたんだわ。好きとか付き合うとか、そういうの一切なかったな。 紅音:ねー。カップルっぽいことしたことないとか思ってたけど、カップルですらなかったとは。 一星:ホント謎だな。 紅音:あ、ちょっとまってて。(席を立ち、アゴンのケージへ).....ほーら、おいで。........アゴン連れてきた。 一星:そっとしといてやれよ、寝起きだろアゴン。 紅音:そーだけど、大切な話だから、アゴンも聞いてもらおうと思って。はい、アゴン、おやつだよ。起こしてごめんね。 一星:......わかったわかった、じゃあアゴンも一緒に聞こう。 紅音:ねぇ。アゴンってさ、私と一星の家族じゃん? 一星:そうだな。 紅音:私とアゴンは家族。一星とアゴンも家族。なのに、私と一星が家族じゃないの、おかしくね? 一星:そうだな。 紅音:じゃあ、私達も家族になろっか。そしたら、皆で家族になれるね。アゴンのために、私と結婚してよ、一星。 一星:なにそれ、プロポーズ? 紅音:うん。最高でしょ? 一星:お前らしいな。最高。 紅音:これでみんな家族だね。よかったね、アゴン......いててててて、アゴン痛い、痛いです。噛まないで。 一星:ま、俺らが家族になったところで、アゴンにとってお前は餌であることに変わりねぇみたいだけどな。……それに、俺達も、家族になったところで、日常はこれまでと変わんねぇだろうな。 紅音:あはは、そうだね。…あのさ、この先、子どもができたとするじゃん? 一星:おう。 紅音:私の遺伝子を受け継いだ子が生まれたらさ、一星は嫁と子どもに振り回されるお父さんの毎日が待ってるだろうし、一星の遺伝子を受け継いだ子が生まれたら、私には、子どもとお父さんが一緒に呆れながらお母さんのアホな話を聞いてるっていう毎日が待ってるんだろうなって。 一星:......容易に想像できるな。 紅音:でしょ?将来が簡単にイメージできちゃうってことは、きっと結婚向いてんだよ、私たち。 一星:そうだな。 紅音:あ、そだ。私たちの子供できたらさ、アゴンのお嫁さんも探して家族増やそうよ。2世帯住宅にしよ。 一星:ふっ....2世帯住宅って(笑) 紅音:いいじゃん。絶対楽しいよ。 一星:だろうなぁ。 紅音:じゃあ、これで晴れて私たちは謎の他人関係から、婚約関係になれたね! 一星:ようやくな。 紅音:ま、これからも変わんないだろうけど、よろしく。 一星:おう。 : 一星:(M)さて、これで俺と彼女の最後の日常が終わった。これからは、俺と嫁の.....あぁごめん、お前も、だよな。これからは、俺と嫁とトカゲの騒がしい毎日が、始まるのだ。 : 0:【完】