台本概要
117 views
タイトル | Fighting Nurse ~ケースA_蓮沼瑞穂の場合~ |
---|---|
作者名 | Danzig |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) ※兼役あり |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
汐崎(しおざき)総合病院、個人経営の中規模な大きさの病院 見た目はごく普通の病院だが、ここには特殊病棟がある。 そこに勤務する看護師の話。 117 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
蓮沼 | 女 | 87 | 蓮沼 瑞穂(はすぬま みずほ) 看護師 |
佐藤 | 男 | 84 | 佐藤健太(さとうけんた) 入院患者 |
西村 | 女 | 6 | 西村 麻里(にしむら まり) 蓮沼と同じ看護師 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:Fighting Nurse(ファイティング・ナース)
:ファイルA
:蓮沼 瑞穂(はすぬま みずほ)のケース。
:
:
蓮沼(M):ここは、汐崎(しおざき)総合病院、個人経営の中規模な大きさの病院。
蓮沼(M):見た目はごく普通の病院だけど、ここには特殊病棟があり、この特殊病棟に入院する人間はみな、ちょっと特殊なやつばかり・・・
:
:(院長室での会話)
:
蓮沼:院長、今日、うちに入院患者が来るんですか?
蓮沼:へー、で、今回はどんな・・・・え? チンピラ?
蓮沼:普通のチンピラがうちに来るんですか? ・・・そうですか・・・
:
:
蓮沼(M):院長からは、詳しい事情は教えて貰えなかったが、なんでも警察からの依頼があったという事らしい
蓮沼(M):犯罪関連の患者なら、普通は警察病院に入院させると思うんだけど・・・
蓮沼(M):そう思ってたところへ、患者が運ばれてきた。
:
佐藤:放せよ、放せっつってんだろが!
佐藤:痛ててて・・・痛てぇだろうが! 気安く俺に触るんじゃねぇよ、向こう行け、クソが!
:
:
蓮沼:おやおや、今度の患者さんは随分元気がいいんだね。
蓮沼:(患者を運んできた救急車の隊員に向かって)
蓮沼:
蓮沼:患者の搬送(はんそう)ご苦労様です。
蓮沼:後はこちらでやりますから、もう大丈夫です。
蓮沼:ええ、連絡簿も私が預かっておきます、はい、有難うございました。
蓮沼:
蓮沼:さて、じゃぁ患者さん、早速病室に行こうか
:
佐藤:何だよてめぇは
:
蓮沼:私はここの看護師だよ
蓮沼:ここでは私が、あんたの面倒を見るのさ
蓮沼:しかし、拘束器具(こうそくきぐ)を付けられて搬送(はんそう)だなんて、あんた、随分暴れたんだね。
:
佐藤:うるせぇ!
:
蓮沼:まぁいいさ、ここでは大人しくしてなさいよ
蓮沼:さぁ、病室まで連れて行こうか、このストレッチャーのままでね
:
:(ストレッチャーを動かす蓮沼)
:
佐藤:ちょっ、どこに連れて行くんだよ
佐藤:ここから降ろせよ! おい、聞いてんのかよ、降ろせって
:
蓮沼:病室に着いたら降ろしてあげるさ
:
佐藤:てめぇ、こんな事してタダで済むと思ってんのかよ、おい、聞いてんのか、ごらぁ 降ろせ!
:
:(病室につく)
:
蓮沼:さぁ、着いたよ。 ここがあんたの病室。
蓮沼:自分でベッドに移動できるね
:
佐藤:出来ねぇ、
:
蓮沼:どうしてさ、ストレッチャーを、ベッドの横に付けてあげてるんだから、そのまま横に移動するだけだろ?
:
佐藤:出来ねぇっつってんだろ、俺は怪我人だぞ、お前が俺を抱きかかえて、ベッドまで運べよ
:
蓮沼:あっそ、じゃぁ、このまま転がすけど、それでいいんだね。
:
佐藤:チッ!
佐藤:分かったよ、自分で移動すりゃいいんだろ。
佐藤:じゃぁ、自分で移動するから、まず、この拘束器具を外せよ
:
蓮沼:外すのはいいけど、暴れるんじゃないよ
:
佐藤:分かったよ、分かったから外せよ
:
:(拘束器具を外す蓮沼)
:
蓮沼:ほら、取れたよ、これで動けるだろ
:
佐藤:ふー、やっと外れたぜ、窮屈(きゅうくつ)な想いさせやがって・・・
佐藤:へへへ、器具が取れりゃこっちのもんよ
佐藤:おめぇにも世話になったな、これはそのお礼だ!
:
:(看護師に殴りかかる佐藤)、
:
佐藤:痛たたたたたた・・・
佐藤:何すんだよ!、放せ・・・たたたた・・・
:
:(パンチをかわされ、逆に腕をひねられる)
:
蓮沼:さっき、暴れるなって言っただろ?
蓮沼:それに、女に手を上げるなんて、あんた最低だな
:
佐藤:人の手を捻(ひね)り上げといて、何言ってやがる
:
蓮沼:何? これじゃ足らないのかい?
:
:(もっと捻り上げる)
:
佐藤:痛い痛い痛い痛い・・・おい、それが、怪我人に対する態度かよ
:
蓮沼:怪我人なら、怪我人らしく、ちゃんとベッドに移動しなさい
:
佐藤:分かったよ、分かったから、放せよ
:
蓮沼:放したらちゃんとベッドに行く? ん?
:
佐藤:痛たたた・・行くよ、行くから、放してくれよ
:
蓮沼:・・・ほら
:
:(手を離す蓮沼)
:
佐藤:・・・・
:
蓮沼:放してあげたんだから、大人しくベッドに行きなさい
:
佐藤:チッ、分かったよ・・・よっ・・と・・
:
:(ベッドに寝転ぶ佐藤)
:
蓮沼:そう、そうやって大人しくしてるんだよ
蓮沼:
蓮沼:えーっと、これが、連絡簿(れんらくぼ)だね・・・これによると・・・なになに
蓮沼:佐藤健太(さとうけんた)、28歳・・無職
蓮沼:で・・・怪我は、全身打撲と、左足骨折か・・・
蓮沼:これは、階段から転げ落ちたってとこか
:
佐藤:ふん、放っとけ
:
蓮沼:ところで、あんた、何やったのさ
:
佐藤:何って何だよ?
:
蓮沼:あんたは、もともと警察病院に行くはずの患者だったんだよ。
蓮沼:そういう人間は、大概(たいがい)何かやらかしてるし、ここに来る患者は、それに加えてもっと変な事情を抱えてる人間が多いのさ
:
佐藤:知らねぇよ
:
蓮沼:ふーん
:
佐藤:何だよ
:
蓮沼:別に話したくなけりゃ、話さなくてもいいさ、個人情報ってやつだからね。
蓮沼:でも、ここは病院
蓮沼:黙ってちゃ、助かるもんも助からなくなる事だってあるんだよ
:
佐藤:・・・・・
:
蓮沼:まぁ好きにすればいいよ
:
佐藤:・・・あんた、変わった看護師だな
:
蓮沼:そう? ごく普通の看護師でしょ
:
佐藤:んな訳あるかよ・・・・ところで、あんた名前は?
:
蓮沼:私? 私は蓮沼(はすぬま)、胸のバッチにもそう書いてあるだろ?
:
佐藤:へー、はすぬ・・・痛たたたたた
:
蓮沼:女性の胸に気安く手を伸ばすんじゃないよ
:
佐藤:たたたた・・・わかった、わかったよ
:
蓮沼:ったく
:
佐藤:ふーててて・・・
佐藤:へへへ、「蓮沼」だな、覚えたぞ
:
蓮沼:あそ、そりゃ、どうも
:
佐藤:ふん、今のうちにせいぜい強がってるがいいぜ、
佐藤:俺に手を出したらどうなるか、そのうち思い知る事になると思うぜ、蓮沼さんよぉ
:
蓮沼:おー、怖い怖い、怖いから思わずフラフラしちゃて・・・
:
佐藤:痛たたたたた、何しやがんだよ
:
蓮沼:おや、怪我した場所だったね、ごめんごめん
蓮沼:つい怖くて、ふら付いちゃった
:
佐藤:チッ・・・白々しい
佐藤:おめえ、覚えてろよ
:
:
:(その日の夜、夜道を歩く蓮沼)
:
蓮沼:じゃぁお先に失礼します
蓮沼:あー、ようやく帰れるよ、今日は遅くなったから、コンビニで何か買って帰るかな
:
:(物陰から出てきた男に囲まれる)
:
蓮沼:ん?ちょっと・・何? あんた達、物陰からもそもそ出てきて
蓮沼:道を塞いだら通れないでしょ・・・邪魔だからどいてくんない?
蓮沼:え? 確かに私は蓮沼だけど、どうして私の名前を知ってるのさ・・
蓮沼:1,2,3、・・・6人で寄ってたかって女性を囲むなんて、どういうつもり?
:
:(次の日)
:
西村:佐藤さ~ん、朝の検温ですよ
:
佐藤:あぁ・・
:
西村:はい、じゃぁこの体温計を脇に挟んでくださいね。
:
:(体温計を脇に挟む佐藤)
:
佐藤:そういえばよぉ、蓮沼っていう看護師はどうしてる?
:
西村:蓮沼さん? まだ交代時間じゃないので来てませんよ?
:
佐藤:へへへ、そうかい、だが、蓮沼っていう看護師は、今日は来ねぇと思うぜ
:
西村:あら、どうして分かるんですか?
:
佐藤:昨日の帰り道で、俺の仲間達に囲まれたはずだ、今頃、どこかの病院か、ひょっとしたら、その辺りで死んでるかもな
:
西村:まぁ、可哀想に・・・
:
佐藤:だろ?
佐藤:あんたも痛い目に会いたくなかったら、俺に逆らわない方が身のためだぜ
:
西村:いや、可哀想というのは、あなたのお仲間の方よ
:
佐藤:何・・・おめぇ何言ってやがる、こっちは何人もいるんだぞ、あいつが幾ら強いからって・・・
:
蓮沼:佐藤さ~ん、朝の注射のお時間ですよ
:
佐藤:何・・・蓮沼・・・どうしてお前が、ここにいるんだよ
:
蓮沼:どうしてって、これが仕事だからね
:
佐藤:そうじゃねぇよ、お前、昨日男達に囲まれたはずだろ・・・
:
蓮沼:あぁ、あれはやっぱりあんたの仕業だったのか
蓮沼:どうせ、そんな事だろと思ったよ
蓮沼:その連中なら、今頃は、どこかの病院にいるだろうね
:
佐藤:そんな馬鹿な・・・
:
蓮沼:さて、まずは携帯電話は没収させてもらおうかな
:
佐藤:あ、何しやがる、返せよ!
:
蓮沼:ここは病院だから携帯電話は禁止
蓮沼:退院の時に返してあげるさ、麻里(まり)、これ持って行って頂戴
:
佐藤:ちょっ・・待て、返せって!
:
蓮沼:さてと・・・
:
佐藤:な・・・何だよ・・・
:
蓮沼:悪戯(いたずら)をするような悪い子には、注射の前に、昨日のオイタのお仕置きをしなきゃね
蓮沼:二度と、こういう事をしようと思わないくらいにね
:
佐藤:ちょっと待て・・・待ってくれよ・・・悪かった、悪かったって
:
蓮沼:ダメだね、あんたのようなチンピラは、身体で分からせないとな
:
佐藤:そんな・・おい、そこの看護師さん、助けてくれよ
佐藤:ちょっと看護師さん、どこ行くんだよ・・・・行くなよ・・助けてくれよ
:
蓮沼:さて・・・大人しくしてなさい
:
佐藤:痛たたたたた・・・ひぃ・・・助け・・・痛い痛い痛い痛い・・
:
:(その少し後、すっかり大人しくなった佐藤の包帯を変えながら話をする二人)
:
蓮沼:はい、次はそっちの腕の包帯変えるから
:
佐藤:あぁ・・・
:
:(包帯を変える蓮沼)
:
蓮沼:で、あんたは運び屋をやってたの
:
佐藤:あぁ・・
:
蓮沼:それで、やばい物運んで、警察に追われたと
:
佐藤:あぁ・・・それで逃げる時に階段踏み外しちまってよ・・・このザマだよ・・
:
蓮沼:そういう事か・・・
蓮沼:まぁ、お説教をする訳じゃないけど、なんでそんな仕事をしたのさ
:
佐藤:金が要るんだよ・・・結構な額の金が
:
蓮沼:どうしているのよ
:
佐藤:うちのチームの家族がよ、何か難しい病気になっちまったみたいでよぉ
佐藤:その治療費に・・・
佐藤:俺、チームのリーダーだし、俺が稼(かせ)いでやらないとと思って・・・
:
蓮沼:へー、案外いいとこもあるんだね。
蓮沼:はい、包帯おわり!
:
:(ぺちっと叩く)
:
佐藤:痛っ・・・もっと優しくしてくれよ
:
蓮沼:あんたが全部話したら、もう少し優しくしてあげるよ
:
佐藤:全部ってなんだよ・・・話したじゃねぇかよ
:
蓮沼:ふーん
:
佐藤:何だよ、ふーんって、俺が何を隠してるって言うんだよ
:
蓮沼:そんな程度の話なら、あんたは今頃、警察病院にいるんだよ
蓮沼:この病院に来たって事は、もっと他に理由があるって事
:
佐藤:し、知らねぇよ、そんな事・・・
佐藤:例え知ってたって・・・言わねぇから・・
:
蓮沼:あっそ、まぁいいさ、私には関係ない事だしね
蓮沼:まぁ、あんたは大人しく、治療に専念するんだね。
:
佐藤:あぁ・・・分かってるよ・・・
:
:
:(そして、その日の帰り)
:
蓮沼:じゃぁお先に失礼します
蓮沼:んー、今日は久しぶりに早く帰れるし、帰ったら録りためておいたドラマでも見るかなぁ
:
:(帰り道、数人の男に囲まれる)
:
蓮沼:ん? 何よあんた達、いきなり現れて・・・
蓮沼:それに、みんな同じような恰好して・・気持ち悪い
蓮沼:
蓮沼:この前のチンピラとは違いそうだね・・・それに、どう見ても堅気(かたぎ)な商売には見えないけど
:
:(男が蓮沼に話しかける)
:
蓮沼:え? 佐藤健太(さとうけんた)?
蓮沼:その人がどうかしたの?
:
:(男が話す)
:
蓮沼:うちの病院に居るかって?
蓮沼:あのね、私達看護師には『守秘義務(しゅひぎむ)』ってのがあるのさ
蓮沼:その人を知っているかどうかも言えないね
蓮沼:
蓮沼:ちょっと、何よ、放しなさいよ・・・
:
:(数分後)
:
蓮沼:ふー・・・あぁーあ、服が汚れちゃったじゃない、ったく
蓮沼:でも、何となく黒幕っぽいのが分かって来たな。
蓮沼:それにしても、うちの院長、この事知ってたな・・・あのタヌキめ・・・
:
:(次の日)
:
蓮沼:佐藤さ~ん、検温のお時間ですよ
:
佐藤:なんだよ、まだそんな時間じゃないだろ?
:
蓮沼:あんたに聞きたい事があって来たんだよ
:
佐藤:なんだよ聞きたい事って・・・俺はもう何も話す事なんてねぇぞ
:
蓮沼:あんた、運び屋で何運んだのさ
:
佐藤:知らねぇよ、中身は見るなって言われてたし
:
蓮沼:あそう・・・
蓮沼:で、仲間の家族の治療費って幾ら必要なの?
:
佐藤:そんな事、お前には関係ねぇよ、幾らだっていいだろ
:
蓮沼:最初に言っただろ、黙ってちゃ、助かるもんも助からなくなるって
:
佐藤:・・・・
:
蓮沼:いくら?
:
佐藤:・・・三千万
:
蓮沼:へ、結構いるんだね・・・で、運び屋の報酬は?
:
佐藤:・・・一千万
:
蓮沼:その一千万円は貰えたの?
:
佐藤:あぁ現金で貰った
:
蓮沼:じゃぁ、あと二千万円足らないね
:
佐藤:・・・あ・・あぁ・・・
:
蓮沼:それで、運び屋の荷物に手を付けたの?
:
佐藤:俺はそんな事・・・
:
蓮沼:昨日の夜、私はマフィアみたいな男達に囲まれたんだよ
蓮沼:奴ら、あんたを探してたよ
:
佐藤:そんな・・・
:
蓮沼:取ったんだね?
:
佐藤:・・・あぁ・・・
:
蓮沼:中身は何だったの?
:
佐藤:・・・・それは・・・
:
蓮沼:中身は?
:
佐藤:・・・宝石・・
佐藤:バレるとは思わなかったんだよ、ケースの中にぐちゃぐちゃに入ってたし、
佐藤:麻薬とかだったら、俺達が持ってたって売れねぇけど、宝石なら何とかなるかもって・・・
佐藤:一番・・・小さい奴を・・・
:
蓮沼:そう・・・
蓮沼:それで、それは今どこにあるの?
:
佐藤:それを聞いてどうすんだよ
:
蓮沼:返すに決まってるでしょ
:
佐藤:何言ってんだよ、折角苦労して・・・
:
蓮沼:あんたマフィアに命狙われてんだよ、このままだと殺されるんだよ
:
佐藤:それは・・・
:
蓮沼:さっき、院長室に行って、院長から話を聞いて来たよ。
蓮沼:警察もマフィアも、あんたが荷物の中身を盗んだ事を、知ってるってさ。
蓮沼:あんたが警察病院じゃなくて、ここに来たのはね、あんたを餌(えさ)にしてマフィアを炙(あぶ)り出す為だったんだよ。
:
佐藤:そんな・・・嘘だろ・・・
:
蓮沼:警察もマフィアも、あんたの命なんてどうでもいいのさ
:
佐藤:・・・・
:
蓮沼:このままその宝石が出て来ないと、あんただけじゃなくて、あんたのチームや、その家族にまで手が伸びるよ
蓮沼:そうなると、誰かが死ぬかもしれないけど、あんたは、それでもいいの?
:
佐藤:・・・それは・・・
:
蓮沼:宝石はどこにあるの?
:
佐藤:・・・でも・・・
:
蓮沼:そんなに時間はないんだよ
:
佐藤:・・・サ・・サンエイデパートの・・・地下駐車場・・・
:
蓮沼(M):私は、佐藤健太(さとうけんた)の言った場所から、宝石を探し出し、院長室へと向かった
:
蓮沼:はい院長、これがお目当ての宝石。これを手に入れるために、佐藤健太をうちに入院させたんですよね?
:
蓮沼:これ、パチンコ玉より少し大きいくらいですけど、これってダイヤですよね? 10カラットはあるかなぁ・・・
蓮沼:売ったら1億は下らないですよね?
蓮沼:これが無事に帰って来たとなると、院長も、さぞ警察に貸しが出来るんでしょうねぇ・・・・
蓮沼:
蓮沼:さて、
蓮沼:ではこれを探し出した善良な市民と、この事を私に隠してた貸しとして、ご褒美をいただけますか?
蓮沼:でないと、このダイヤ・・・どこかに落としちゃうかも・・・
蓮沼:それか、パチンコ玉に混ぜて、パチンコしてみたら面白いかもしれませんね。
蓮沼:
蓮沼:
蓮沼:フフフ、そうですか、そうですよね♪
蓮沼:それじゃ、三千万円の治療の手配をして下さい。
蓮沼:どうやら、お金がかかる病気の患者さんがいるみたいなんで。
蓮沼:なぁに、病院同士のコネを使えば、もっと安く済むでしょ、フフフ
蓮沼:
蓮沼:ええ、それは勿論、分かってますよ。
蓮沼:その代わりに、今からそのマフィアの所に行って、この件は諦めろって、キッチリ釘を刺して来ますから
:
:
蓮沼(M):そして、それから間もなく、佐藤健太(さとうけんた)は警察病院に転院する事となった
:
:
蓮沼:じゃぁ元気でね、警察病院に行っても暴れるんじゃないよ
:
佐藤:あぁ・・・
佐藤:あんたには、いろいろ世話になったな
:
蓮沼:それが看護師の仕事だからね。
:
佐藤:いや、そうじゃねえよ
佐藤:チームの奴から連絡があったよ、家族が治療出来るようになったって・・・
佐藤:これ、あんたが何かしてくれたんだろ?
:
蓮沼:さぁ、私はよく知らないけど、あんたがそう思うなら、それでいいさ。
蓮沼:お礼がしたいなら、出所したら菓子折りでも持って来なよ
蓮沼:まぁ、運び屋の刑は軽いから、直ぐに刑務所から出て来れるさ
:
佐藤:あぁ・・・分かった、そうするよ。
佐藤:銀座で一番いい菓子を買ってくるよ
:
蓮沼:ははは、冗談だよ、ってか、チンピラに病院来られても困るから、もう此処へは来なくていいよ
:
佐藤:フ・・・分かったよ
佐藤:ありがとうな、やっぱ、あんたみたいな看護師は初めてだよ
:
蓮沼:そう? ごく普通の看護師だと思うけど
:
佐藤:んな訳あるかよ
佐藤:あんたみたいな看護師ばっかって、考えただけでも恐ろしいわ
:
蓮沼:そうかい? 案外いいかもよ
:
佐藤:冗談じゃねぇよ、そんなとこ
:
蓮沼:フ・・・・ほら、もう行きな
:
佐藤:あぁ、そするよ。
佐藤:じゃぁ、蓮沼さんも元気だな
:
蓮沼:あぁ、分かったよ。
蓮沼:じゃぁな。
:
:
蓮沼(M):こうして、佐藤健太は警察病院に運ばれて行った。。
蓮沼(M):私は暫くの間、彼を乗せた救急車を見送っていた。
:
完
:Fighting Nurse(ファイティング・ナース)
:ファイルA
:蓮沼 瑞穂(はすぬま みずほ)のケース。
:
:
蓮沼(M):ここは、汐崎(しおざき)総合病院、個人経営の中規模な大きさの病院。
蓮沼(M):見た目はごく普通の病院だけど、ここには特殊病棟があり、この特殊病棟に入院する人間はみな、ちょっと特殊なやつばかり・・・
:
:(院長室での会話)
:
蓮沼:院長、今日、うちに入院患者が来るんですか?
蓮沼:へー、で、今回はどんな・・・・え? チンピラ?
蓮沼:普通のチンピラがうちに来るんですか? ・・・そうですか・・・
:
:
蓮沼(M):院長からは、詳しい事情は教えて貰えなかったが、なんでも警察からの依頼があったという事らしい
蓮沼(M):犯罪関連の患者なら、普通は警察病院に入院させると思うんだけど・・・
蓮沼(M):そう思ってたところへ、患者が運ばれてきた。
:
佐藤:放せよ、放せっつってんだろが!
佐藤:痛ててて・・・痛てぇだろうが! 気安く俺に触るんじゃねぇよ、向こう行け、クソが!
:
:
蓮沼:おやおや、今度の患者さんは随分元気がいいんだね。
蓮沼:(患者を運んできた救急車の隊員に向かって)
蓮沼:
蓮沼:患者の搬送(はんそう)ご苦労様です。
蓮沼:後はこちらでやりますから、もう大丈夫です。
蓮沼:ええ、連絡簿も私が預かっておきます、はい、有難うございました。
蓮沼:
蓮沼:さて、じゃぁ患者さん、早速病室に行こうか
:
佐藤:何だよてめぇは
:
蓮沼:私はここの看護師だよ
蓮沼:ここでは私が、あんたの面倒を見るのさ
蓮沼:しかし、拘束器具(こうそくきぐ)を付けられて搬送(はんそう)だなんて、あんた、随分暴れたんだね。
:
佐藤:うるせぇ!
:
蓮沼:まぁいいさ、ここでは大人しくしてなさいよ
蓮沼:さぁ、病室まで連れて行こうか、このストレッチャーのままでね
:
:(ストレッチャーを動かす蓮沼)
:
佐藤:ちょっ、どこに連れて行くんだよ
佐藤:ここから降ろせよ! おい、聞いてんのかよ、降ろせって
:
蓮沼:病室に着いたら降ろしてあげるさ
:
佐藤:てめぇ、こんな事してタダで済むと思ってんのかよ、おい、聞いてんのか、ごらぁ 降ろせ!
:
:(病室につく)
:
蓮沼:さぁ、着いたよ。 ここがあんたの病室。
蓮沼:自分でベッドに移動できるね
:
佐藤:出来ねぇ、
:
蓮沼:どうしてさ、ストレッチャーを、ベッドの横に付けてあげてるんだから、そのまま横に移動するだけだろ?
:
佐藤:出来ねぇっつってんだろ、俺は怪我人だぞ、お前が俺を抱きかかえて、ベッドまで運べよ
:
蓮沼:あっそ、じゃぁ、このまま転がすけど、それでいいんだね。
:
佐藤:チッ!
佐藤:分かったよ、自分で移動すりゃいいんだろ。
佐藤:じゃぁ、自分で移動するから、まず、この拘束器具を外せよ
:
蓮沼:外すのはいいけど、暴れるんじゃないよ
:
佐藤:分かったよ、分かったから外せよ
:
:(拘束器具を外す蓮沼)
:
蓮沼:ほら、取れたよ、これで動けるだろ
:
佐藤:ふー、やっと外れたぜ、窮屈(きゅうくつ)な想いさせやがって・・・
佐藤:へへへ、器具が取れりゃこっちのもんよ
佐藤:おめぇにも世話になったな、これはそのお礼だ!
:
:(看護師に殴りかかる佐藤)、
:
佐藤:痛たたたたたた・・・
佐藤:何すんだよ!、放せ・・・たたたた・・・
:
:(パンチをかわされ、逆に腕をひねられる)
:
蓮沼:さっき、暴れるなって言っただろ?
蓮沼:それに、女に手を上げるなんて、あんた最低だな
:
佐藤:人の手を捻(ひね)り上げといて、何言ってやがる
:
蓮沼:何? これじゃ足らないのかい?
:
:(もっと捻り上げる)
:
佐藤:痛い痛い痛い痛い・・・おい、それが、怪我人に対する態度かよ
:
蓮沼:怪我人なら、怪我人らしく、ちゃんとベッドに移動しなさい
:
佐藤:分かったよ、分かったから、放せよ
:
蓮沼:放したらちゃんとベッドに行く? ん?
:
佐藤:痛たたた・・行くよ、行くから、放してくれよ
:
蓮沼:・・・ほら
:
:(手を離す蓮沼)
:
佐藤:・・・・
:
蓮沼:放してあげたんだから、大人しくベッドに行きなさい
:
佐藤:チッ、分かったよ・・・よっ・・と・・
:
:(ベッドに寝転ぶ佐藤)
:
蓮沼:そう、そうやって大人しくしてるんだよ
蓮沼:
蓮沼:えーっと、これが、連絡簿(れんらくぼ)だね・・・これによると・・・なになに
蓮沼:佐藤健太(さとうけんた)、28歳・・無職
蓮沼:で・・・怪我は、全身打撲と、左足骨折か・・・
蓮沼:これは、階段から転げ落ちたってとこか
:
佐藤:ふん、放っとけ
:
蓮沼:ところで、あんた、何やったのさ
:
佐藤:何って何だよ?
:
蓮沼:あんたは、もともと警察病院に行くはずの患者だったんだよ。
蓮沼:そういう人間は、大概(たいがい)何かやらかしてるし、ここに来る患者は、それに加えてもっと変な事情を抱えてる人間が多いのさ
:
佐藤:知らねぇよ
:
蓮沼:ふーん
:
佐藤:何だよ
:
蓮沼:別に話したくなけりゃ、話さなくてもいいさ、個人情報ってやつだからね。
蓮沼:でも、ここは病院
蓮沼:黙ってちゃ、助かるもんも助からなくなる事だってあるんだよ
:
佐藤:・・・・・
:
蓮沼:まぁ好きにすればいいよ
:
佐藤:・・・あんた、変わった看護師だな
:
蓮沼:そう? ごく普通の看護師でしょ
:
佐藤:んな訳あるかよ・・・・ところで、あんた名前は?
:
蓮沼:私? 私は蓮沼(はすぬま)、胸のバッチにもそう書いてあるだろ?
:
佐藤:へー、はすぬ・・・痛たたたたた
:
蓮沼:女性の胸に気安く手を伸ばすんじゃないよ
:
佐藤:たたたた・・・わかった、わかったよ
:
蓮沼:ったく
:
佐藤:ふーててて・・・
佐藤:へへへ、「蓮沼」だな、覚えたぞ
:
蓮沼:あそ、そりゃ、どうも
:
佐藤:ふん、今のうちにせいぜい強がってるがいいぜ、
佐藤:俺に手を出したらどうなるか、そのうち思い知る事になると思うぜ、蓮沼さんよぉ
:
蓮沼:おー、怖い怖い、怖いから思わずフラフラしちゃて・・・
:
佐藤:痛たたたたた、何しやがんだよ
:
蓮沼:おや、怪我した場所だったね、ごめんごめん
蓮沼:つい怖くて、ふら付いちゃった
:
佐藤:チッ・・・白々しい
佐藤:おめえ、覚えてろよ
:
:
:(その日の夜、夜道を歩く蓮沼)
:
蓮沼:じゃぁお先に失礼します
蓮沼:あー、ようやく帰れるよ、今日は遅くなったから、コンビニで何か買って帰るかな
:
:(物陰から出てきた男に囲まれる)
:
蓮沼:ん?ちょっと・・何? あんた達、物陰からもそもそ出てきて
蓮沼:道を塞いだら通れないでしょ・・・邪魔だからどいてくんない?
蓮沼:え? 確かに私は蓮沼だけど、どうして私の名前を知ってるのさ・・
蓮沼:1,2,3、・・・6人で寄ってたかって女性を囲むなんて、どういうつもり?
:
:(次の日)
:
西村:佐藤さ~ん、朝の検温ですよ
:
佐藤:あぁ・・
:
西村:はい、じゃぁこの体温計を脇に挟んでくださいね。
:
:(体温計を脇に挟む佐藤)
:
佐藤:そういえばよぉ、蓮沼っていう看護師はどうしてる?
:
西村:蓮沼さん? まだ交代時間じゃないので来てませんよ?
:
佐藤:へへへ、そうかい、だが、蓮沼っていう看護師は、今日は来ねぇと思うぜ
:
西村:あら、どうして分かるんですか?
:
佐藤:昨日の帰り道で、俺の仲間達に囲まれたはずだ、今頃、どこかの病院か、ひょっとしたら、その辺りで死んでるかもな
:
西村:まぁ、可哀想に・・・
:
佐藤:だろ?
佐藤:あんたも痛い目に会いたくなかったら、俺に逆らわない方が身のためだぜ
:
西村:いや、可哀想というのは、あなたのお仲間の方よ
:
佐藤:何・・・おめぇ何言ってやがる、こっちは何人もいるんだぞ、あいつが幾ら強いからって・・・
:
蓮沼:佐藤さ~ん、朝の注射のお時間ですよ
:
佐藤:何・・・蓮沼・・・どうしてお前が、ここにいるんだよ
:
蓮沼:どうしてって、これが仕事だからね
:
佐藤:そうじゃねぇよ、お前、昨日男達に囲まれたはずだろ・・・
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蓮沼:あぁ、あれはやっぱりあんたの仕業だったのか
蓮沼:どうせ、そんな事だろと思ったよ
蓮沼:その連中なら、今頃は、どこかの病院にいるだろうね
:
佐藤:そんな馬鹿な・・・
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蓮沼:さて、まずは携帯電話は没収させてもらおうかな
:
佐藤:あ、何しやがる、返せよ!
:
蓮沼:ここは病院だから携帯電話は禁止
蓮沼:退院の時に返してあげるさ、麻里(まり)、これ持って行って頂戴
:
佐藤:ちょっ・・待て、返せって!
:
蓮沼:さてと・・・
:
佐藤:な・・・何だよ・・・
:
蓮沼:悪戯(いたずら)をするような悪い子には、注射の前に、昨日のオイタのお仕置きをしなきゃね
蓮沼:二度と、こういう事をしようと思わないくらいにね
:
佐藤:ちょっと待て・・・待ってくれよ・・・悪かった、悪かったって
:
蓮沼:ダメだね、あんたのようなチンピラは、身体で分からせないとな
:
佐藤:そんな・・おい、そこの看護師さん、助けてくれよ
佐藤:ちょっと看護師さん、どこ行くんだよ・・・・行くなよ・・助けてくれよ
:
蓮沼:さて・・・大人しくしてなさい
:
佐藤:痛たたたたた・・・ひぃ・・・助け・・・痛い痛い痛い痛い・・
:
:(その少し後、すっかり大人しくなった佐藤の包帯を変えながら話をする二人)
:
蓮沼:はい、次はそっちの腕の包帯変えるから
:
佐藤:あぁ・・・
:
:(包帯を変える蓮沼)
:
蓮沼:で、あんたは運び屋をやってたの
:
佐藤:あぁ・・
:
蓮沼:それで、やばい物運んで、警察に追われたと
:
佐藤:あぁ・・・それで逃げる時に階段踏み外しちまってよ・・・このザマだよ・・
:
蓮沼:そういう事か・・・
蓮沼:まぁ、お説教をする訳じゃないけど、なんでそんな仕事をしたのさ
:
佐藤:金が要るんだよ・・・結構な額の金が
:
蓮沼:どうしているのよ
:
佐藤:うちのチームの家族がよ、何か難しい病気になっちまったみたいでよぉ
佐藤:その治療費に・・・
佐藤:俺、チームのリーダーだし、俺が稼(かせ)いでやらないとと思って・・・
:
蓮沼:へー、案外いいとこもあるんだね。
蓮沼:はい、包帯おわり!
:
:(ぺちっと叩く)
:
佐藤:痛っ・・・もっと優しくしてくれよ
:
蓮沼:あんたが全部話したら、もう少し優しくしてあげるよ
:
佐藤:全部ってなんだよ・・・話したじゃねぇかよ
:
蓮沼:ふーん
:
佐藤:何だよ、ふーんって、俺が何を隠してるって言うんだよ
:
蓮沼:そんな程度の話なら、あんたは今頃、警察病院にいるんだよ
蓮沼:この病院に来たって事は、もっと他に理由があるって事
:
佐藤:し、知らねぇよ、そんな事・・・
佐藤:例え知ってたって・・・言わねぇから・・
:
蓮沼:あっそ、まぁいいさ、私には関係ない事だしね
蓮沼:まぁ、あんたは大人しく、治療に専念するんだね。
:
佐藤:あぁ・・・分かってるよ・・・
:
:
:(そして、その日の帰り)
:
蓮沼:じゃぁお先に失礼します
蓮沼:んー、今日は久しぶりに早く帰れるし、帰ったら録りためておいたドラマでも見るかなぁ
:
:(帰り道、数人の男に囲まれる)
:
蓮沼:ん? 何よあんた達、いきなり現れて・・・
蓮沼:それに、みんな同じような恰好して・・気持ち悪い
蓮沼:
蓮沼:この前のチンピラとは違いそうだね・・・それに、どう見ても堅気(かたぎ)な商売には見えないけど
:
:(男が蓮沼に話しかける)
:
蓮沼:え? 佐藤健太(さとうけんた)?
蓮沼:その人がどうかしたの?
:
:(男が話す)
:
蓮沼:うちの病院に居るかって?
蓮沼:あのね、私達看護師には『守秘義務(しゅひぎむ)』ってのがあるのさ
蓮沼:その人を知っているかどうかも言えないね
蓮沼:
蓮沼:ちょっと、何よ、放しなさいよ・・・
:
:(数分後)
:
蓮沼:ふー・・・あぁーあ、服が汚れちゃったじゃない、ったく
蓮沼:でも、何となく黒幕っぽいのが分かって来たな。
蓮沼:それにしても、うちの院長、この事知ってたな・・・あのタヌキめ・・・
:
:(次の日)
:
蓮沼:佐藤さ~ん、検温のお時間ですよ
:
佐藤:なんだよ、まだそんな時間じゃないだろ?
:
蓮沼:あんたに聞きたい事があって来たんだよ
:
佐藤:なんだよ聞きたい事って・・・俺はもう何も話す事なんてねぇぞ
:
蓮沼:あんた、運び屋で何運んだのさ
:
佐藤:知らねぇよ、中身は見るなって言われてたし
:
蓮沼:あそう・・・
蓮沼:で、仲間の家族の治療費って幾ら必要なの?
:
佐藤:そんな事、お前には関係ねぇよ、幾らだっていいだろ
:
蓮沼:最初に言っただろ、黙ってちゃ、助かるもんも助からなくなるって
:
佐藤:・・・・
:
蓮沼:いくら?
:
佐藤:・・・三千万
:
蓮沼:へ、結構いるんだね・・・で、運び屋の報酬は?
:
佐藤:・・・一千万
:
蓮沼:その一千万円は貰えたの?
:
佐藤:あぁ現金で貰った
:
蓮沼:じゃぁ、あと二千万円足らないね
:
佐藤:・・・あ・・あぁ・・・
:
蓮沼:それで、運び屋の荷物に手を付けたの?
:
佐藤:俺はそんな事・・・
:
蓮沼:昨日の夜、私はマフィアみたいな男達に囲まれたんだよ
蓮沼:奴ら、あんたを探してたよ
:
佐藤:そんな・・・
:
蓮沼:取ったんだね?
:
佐藤:・・・あぁ・・・
:
蓮沼:中身は何だったの?
:
佐藤:・・・・それは・・・
:
蓮沼:中身は?
:
佐藤:・・・宝石・・
佐藤:バレるとは思わなかったんだよ、ケースの中にぐちゃぐちゃに入ってたし、
佐藤:麻薬とかだったら、俺達が持ってたって売れねぇけど、宝石なら何とかなるかもって・・・
佐藤:一番・・・小さい奴を・・・
:
蓮沼:そう・・・
蓮沼:それで、それは今どこにあるの?
:
佐藤:それを聞いてどうすんだよ
:
蓮沼:返すに決まってるでしょ
:
佐藤:何言ってんだよ、折角苦労して・・・
:
蓮沼:あんたマフィアに命狙われてんだよ、このままだと殺されるんだよ
:
佐藤:それは・・・
:
蓮沼:さっき、院長室に行って、院長から話を聞いて来たよ。
蓮沼:警察もマフィアも、あんたが荷物の中身を盗んだ事を、知ってるってさ。
蓮沼:あんたが警察病院じゃなくて、ここに来たのはね、あんたを餌(えさ)にしてマフィアを炙(あぶ)り出す為だったんだよ。
:
佐藤:そんな・・・嘘だろ・・・
:
蓮沼:警察もマフィアも、あんたの命なんてどうでもいいのさ
:
佐藤:・・・・
:
蓮沼:このままその宝石が出て来ないと、あんただけじゃなくて、あんたのチームや、その家族にまで手が伸びるよ
蓮沼:そうなると、誰かが死ぬかもしれないけど、あんたは、それでもいいの?
:
佐藤:・・・それは・・・
:
蓮沼:宝石はどこにあるの?
:
佐藤:・・・でも・・・
:
蓮沼:そんなに時間はないんだよ
:
佐藤:・・・サ・・サンエイデパートの・・・地下駐車場・・・
:
蓮沼(M):私は、佐藤健太(さとうけんた)の言った場所から、宝石を探し出し、院長室へと向かった
:
蓮沼:はい院長、これがお目当ての宝石。これを手に入れるために、佐藤健太をうちに入院させたんですよね?
:
蓮沼:これ、パチンコ玉より少し大きいくらいですけど、これってダイヤですよね? 10カラットはあるかなぁ・・・
蓮沼:売ったら1億は下らないですよね?
蓮沼:これが無事に帰って来たとなると、院長も、さぞ警察に貸しが出来るんでしょうねぇ・・・・
蓮沼:
蓮沼:さて、
蓮沼:ではこれを探し出した善良な市民と、この事を私に隠してた貸しとして、ご褒美をいただけますか?
蓮沼:でないと、このダイヤ・・・どこかに落としちゃうかも・・・
蓮沼:それか、パチンコ玉に混ぜて、パチンコしてみたら面白いかもしれませんね。
蓮沼:
蓮沼:
蓮沼:フフフ、そうですか、そうですよね♪
蓮沼:それじゃ、三千万円の治療の手配をして下さい。
蓮沼:どうやら、お金がかかる病気の患者さんがいるみたいなんで。
蓮沼:なぁに、病院同士のコネを使えば、もっと安く済むでしょ、フフフ
蓮沼:
蓮沼:ええ、それは勿論、分かってますよ。
蓮沼:その代わりに、今からそのマフィアの所に行って、この件は諦めろって、キッチリ釘を刺して来ますから
:
:
蓮沼(M):そして、それから間もなく、佐藤健太(さとうけんた)は警察病院に転院する事となった
:
:
蓮沼:じゃぁ元気でね、警察病院に行っても暴れるんじゃないよ
:
佐藤:あぁ・・・
佐藤:あんたには、いろいろ世話になったな
:
蓮沼:それが看護師の仕事だからね。
:
佐藤:いや、そうじゃねえよ
佐藤:チームの奴から連絡があったよ、家族が治療出来るようになったって・・・
佐藤:これ、あんたが何かしてくれたんだろ?
:
蓮沼:さぁ、私はよく知らないけど、あんたがそう思うなら、それでいいさ。
蓮沼:お礼がしたいなら、出所したら菓子折りでも持って来なよ
蓮沼:まぁ、運び屋の刑は軽いから、直ぐに刑務所から出て来れるさ
:
佐藤:あぁ・・・分かった、そうするよ。
佐藤:銀座で一番いい菓子を買ってくるよ
:
蓮沼:ははは、冗談だよ、ってか、チンピラに病院来られても困るから、もう此処へは来なくていいよ
:
佐藤:フ・・・分かったよ
佐藤:ありがとうな、やっぱ、あんたみたいな看護師は初めてだよ
:
蓮沼:そう? ごく普通の看護師だと思うけど
:
佐藤:んな訳あるかよ
佐藤:あんたみたいな看護師ばっかって、考えただけでも恐ろしいわ
:
蓮沼:そうかい? 案外いいかもよ
:
佐藤:冗談じゃねぇよ、そんなとこ
:
蓮沼:フ・・・・ほら、もう行きな
:
佐藤:あぁ、そするよ。
佐藤:じゃぁ、蓮沼さんも元気だな
:
蓮沼:あぁ、分かったよ。
蓮沼:じゃぁな。
:
:
蓮沼(M):こうして、佐藤健太は警察病院に運ばれて行った。。
蓮沼(M):私は暫くの間、彼を乗せた救急車を見送っていた。
:
完