台本概要
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タイトル | アンダーインクコリダー第5場(完結) |
---|---|
作者名 | 冷凍みかん-光柑- (@mikanchilled) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 5人用台本(男1、女1、不問3) ※兼役あり |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
第5場”底の底”オラトリオの兵器ペーパーワームスケルターによって最下層アンダーインクコリダーへ堕ちるアイオリス。崩壊していく地下世界の中でルビはアイオリスに何を伝えるのか。アンダーインクコリダー完結。
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
アイオリス | 不問 | 15 | ドーリアやイオニアとの再会を果たし、ずっとそばにいてくれたルビのことに気づく |
ルビ | 女 | 14 | 崩壊していく世界の中で、大切なモノを失い続け、自ら手放すことを学ぶ。 |
脳喰い | 不問 | 17 | アイオリスの願いを受け入れ、巨大なクロウタドリに変身する。 |
ノヴァ | 不問 | 5 | ルビのために命を落とすよう作られた人工精霊。 |
オラトリオ | 男 | 8 | 兼ね役はイオニア。創世記の再現を夢見る孤独な狂人。製紙工場で紙製の兵器、紙細工(ペーパーワークス)を製造している。 |
イオニア | 男 | 4 | 兼ね役はオラトリオ。12月の焚書を実行したロザリオブルク家の末裔。ロザリオに乗っ取られている。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
脳喰い:夜の静寂(しじま)に啼く鳥よ…
脳喰い:折れた翼を携えて…
脳喰い:汝は夜明けを待ちわびる…
脳喰い:いつか輝く暁の空を…
脳喰い:空へ羽ばたくその時を…
脳喰い:静かに唄い、待ちわびる…
ルビ:『アンダーインクコリダー第5章”底の底”』
アイオリス:ここは、どこだ…
0:最下層の洞窟には真っ黒なインクが溜まっていて、アイオリスは身体だけを浸からせて岸辺に横たわっている。
アイオリス:落ちてきた穴が、あんなにも小さい。まるで星のようだ…
脳喰い:ほしのよう
アイオリス:ッ!?
0:アイオリスの脚の傷をつないでいた脳喰いがもぞもぞと喋り出す。
アイオリス:お前、喋れたのか
脳喰い:もにゃっ!
アイオリス:いや、ははは…そうだよな。さっきのは僕が作り出した幻聴か。
脳喰い:それでもいいじゃないか。君はいま独りきりで、それでも誰かといたいのだから
アイオリス:…おかしな話だよね。ドーリアとイオニアがいなくなった時、僕はとても寂しいと思った。
アイオリス:誰でもいいから助けてほしいと思った。
脳喰い:君のそばにはいつもルビがいたじゃないか。
アイオリス:その通りだ…なのに僕は、2人と再会することばかりに気を割いて…
脳喰い:それは違うよ。
アイオリス:何がさ。
脳喰い:ノヴァの秘密を知ったとき、美味しいウドンを食べたとき、ルビと肩を寄せて泣いたとき…
脳喰い:君の心は確かにそこにあった。
アイオリス:そんな、でも…
脳喰い:気づいていたんだよ、アイオリス。きみの心はどこにも行きやしない。
アイオリス:…
脳喰い:君が向き合っていないだけだ。
0:巨大な穴が開いた製紙工場は、瓦礫を撒きながらゆっくりと崩落していく。
ルビ:そんな…アイオリス…
ルビ:また失くしちゃった。私の友達、大切な記憶。
ルビ:お気に入りの物語…
0:ルビの頭上の瓦礫が崩れる。
ルビ:ああ、暗い。私の最期は瓦礫の下敷き…?
ルビ:土に埋もれた少女の夢は
ルビ:ぱちんと消えてお蔵入り?
ルビ:これが結末?これが報いなの?
ルビ:こんなことなら読まなきゃよかった…
ノヴァ:ルビ…大丈夫…ですか…?
ルビ:ノヴァ…!ノヴァなの!?
ノヴァ:ええ、ノヴァです。前任者の救難信号を受けて…
ノヴァ:ずっと…あなたたちを追っていました…
ルビ:ノヴァ…鉄筋が刺さってるよ…平気なの…?
ノヴァ:ええ。兵器、ですから…
0:鉄筋はノヴァの体躯を貫いて、地面に固定されている。ノヴァは二度と動かない。
ノヴァ:ルビ…ここに来るまで、ずいぶん、冒険をしたんですね…
ルビ:でも駄目だった…アイオリスは落ちて死んじゃった。
ノヴァ:私は幾らでも替えがききます。だからこそ、かけがえのないあなた達が、ほんとうに命惜しく思われます。
ノヴァ:この体の損傷も、少しも痛みを感じませんが…
ノヴァ:ルビ、あなたの痛みが少しでも、分かってあげられたら。いいのに…
ルビ:ノヴァ…?ノヴァ!!
0:
アイオリス:…もう一度、ルビに会いたい
脳喰い:それがキミの心なら、この折れた翼も使い物になるはずだ…
0:脳喰いは周囲のインクを吸い上げて、広げた翼をみるみる大きくしていく。
アイオリス:脳喰い。いいや、クロウタドリよ。僕を上まで連れて行ってくれ。
脳喰い:任せて。さあ、夜明けに向けて飛び立つ時だ。
0:
オラトリオ:ここにいたのですか、ルビ。遅くなってすみませんでした。
オラトリオ:用済みのPBS02を”解体する”のに手間取ってしまいまして。頑丈すぎるのも考えものだ。
オラトリオ:瓦礫に潰されていないようで何よりでした。
オラトリオ:ノヴァは、ちゃんと”機能した”ようですね。
ルビ:オラトリオ…!
オラトリオ:そう睨まないで下さい。ノヴァシリーズはですね、人格は個別に存在するけれど、
オラトリオ:記憶はバックアップデータから共有できるんです。
オラトリオ:それって同一人物と変わりないと思いませんか?
ルビ:もういいわ、オラトリオ。
オラトリオ:いいとは?
ルビ:絶交よ。
0:ルビの背後の穴から、巨大な黒い翼が舞い上がる
オラトリオ:絶交、ですか。
オラトリオ:?この音は…?
脳喰い:会いに来たよ。ルビ。
オラトリオ:なにッ!!なんてことだ!
ルビ:クロウタドリ…あなたなの…?アイオリス!
オラトリオ:素晴らしい!漆黒の巨大な翼が、アンダーインクコリダーから舞い上がったッ!!
オラトリオ:創世記と同じだ!さあ、黒き翼よッ!紙は私だッ!!
オラトリオ:ともに新たなる地下世界を創ろうッ!!
脳喰い:〈物々しい声〉ほう、貴様が紙とはな。
脳喰い:ならば私がすべての生命から脳を喰らい、地下に溜めた知識の全てを
脳喰い:貴様に記そうじゃないか。
0:真っ黒な尾羽がオラトリオの体に巻き付き、浸蝕していく。
オラトリオ:ぐああああ!なんだ!?膨大な知識が頭に流れ込んでくるッ!
オラトリオ:あらゆる悦楽と絶望が同時に押し寄せて来るなんてッ!!
オラトリオ:そうか…!これがッ…これがッ…”孤独”!!
オラトリオ:寒い…震える…こ、これこそが、至高の知識なのかッ!?
脳喰い:相(あい)なき知識に価値などはない。
オラトリオ:そんな…!駄目だア!!消える、消える!なんて…!なんて無意味なんだアッ!!
0:オラトリオは黒炭になってぼろぼろと崩れ去った。
ルビ:アイオリス…アイオリスなんでしょ?
脳喰い:…
ルビ:私ね、あなたとは行けないの…
ルビ:やり残したことがあるから
脳喰い:わかっているよ。僕との出会いが、君を使命から遠ざけてしまっていた。
脳喰い:約束する。君が心置きなく励むように、いつも地上から祈ると。
ルビ:ありがとうアイオリス。あなたとの思い出だって、私の大切な物語だから、忘れないわ。
ルビ:さようなら、アイオリス。
脳喰い:さようならルビ。
0:大地が割れて大空が開ける。
0:まばゆい光が洞窟に差し込み、クロウタドリはその美しい翼を輝かせ、地上へと飛び立った。
イオニア:アイオリス、気がついたか…
アイオリス:ッ…ここは…
イオニア:洞窟を爆破したら落盤してね。君は頭を瓦礫に打たれて気絶していたんだ。
アイオリス:…ドーリアは?
イオニア:崩落に巻き込まれて死んだよ。洞窟はまるっきり空っぽで、支えとなるものが無かったんだ。
アイオリス:イオニア…きみは本当にイオニアだよな?
イオニア:…当たり前だろ?さあ、政府に報告しよう。
イオニア:洞窟には何もなかったとね
0:洞窟の暗がりには少女の白骨死体が祈るようにしてうずくまっていた。
0:FIN
脳喰い:夜の静寂(しじま)に啼く鳥よ…
脳喰い:折れた翼を携えて…
脳喰い:汝は夜明けを待ちわびる…
脳喰い:いつか輝く暁の空を…
脳喰い:空へ羽ばたくその時を…
脳喰い:静かに唄い、待ちわびる…
ルビ:『アンダーインクコリダー第5章”底の底”』
アイオリス:ここは、どこだ…
0:最下層の洞窟には真っ黒なインクが溜まっていて、アイオリスは身体だけを浸からせて岸辺に横たわっている。
アイオリス:落ちてきた穴が、あんなにも小さい。まるで星のようだ…
脳喰い:ほしのよう
アイオリス:ッ!?
0:アイオリスの脚の傷をつないでいた脳喰いがもぞもぞと喋り出す。
アイオリス:お前、喋れたのか
脳喰い:もにゃっ!
アイオリス:いや、ははは…そうだよな。さっきのは僕が作り出した幻聴か。
脳喰い:それでもいいじゃないか。君はいま独りきりで、それでも誰かといたいのだから
アイオリス:…おかしな話だよね。ドーリアとイオニアがいなくなった時、僕はとても寂しいと思った。
アイオリス:誰でもいいから助けてほしいと思った。
脳喰い:君のそばにはいつもルビがいたじゃないか。
アイオリス:その通りだ…なのに僕は、2人と再会することばかりに気を割いて…
脳喰い:それは違うよ。
アイオリス:何がさ。
脳喰い:ノヴァの秘密を知ったとき、美味しいウドンを食べたとき、ルビと肩を寄せて泣いたとき…
脳喰い:君の心は確かにそこにあった。
アイオリス:そんな、でも…
脳喰い:気づいていたんだよ、アイオリス。きみの心はどこにも行きやしない。
アイオリス:…
脳喰い:君が向き合っていないだけだ。
0:巨大な穴が開いた製紙工場は、瓦礫を撒きながらゆっくりと崩落していく。
ルビ:そんな…アイオリス…
ルビ:また失くしちゃった。私の友達、大切な記憶。
ルビ:お気に入りの物語…
0:ルビの頭上の瓦礫が崩れる。
ルビ:ああ、暗い。私の最期は瓦礫の下敷き…?
ルビ:土に埋もれた少女の夢は
ルビ:ぱちんと消えてお蔵入り?
ルビ:これが結末?これが報いなの?
ルビ:こんなことなら読まなきゃよかった…
ノヴァ:ルビ…大丈夫…ですか…?
ルビ:ノヴァ…!ノヴァなの!?
ノヴァ:ええ、ノヴァです。前任者の救難信号を受けて…
ノヴァ:ずっと…あなたたちを追っていました…
ルビ:ノヴァ…鉄筋が刺さってるよ…平気なの…?
ノヴァ:ええ。兵器、ですから…
0:鉄筋はノヴァの体躯を貫いて、地面に固定されている。ノヴァは二度と動かない。
ノヴァ:ルビ…ここに来るまで、ずいぶん、冒険をしたんですね…
ルビ:でも駄目だった…アイオリスは落ちて死んじゃった。
ノヴァ:私は幾らでも替えがききます。だからこそ、かけがえのないあなた達が、ほんとうに命惜しく思われます。
ノヴァ:この体の損傷も、少しも痛みを感じませんが…
ノヴァ:ルビ、あなたの痛みが少しでも、分かってあげられたら。いいのに…
ルビ:ノヴァ…?ノヴァ!!
0:
アイオリス:…もう一度、ルビに会いたい
脳喰い:それがキミの心なら、この折れた翼も使い物になるはずだ…
0:脳喰いは周囲のインクを吸い上げて、広げた翼をみるみる大きくしていく。
アイオリス:脳喰い。いいや、クロウタドリよ。僕を上まで連れて行ってくれ。
脳喰い:任せて。さあ、夜明けに向けて飛び立つ時だ。
0:
オラトリオ:ここにいたのですか、ルビ。遅くなってすみませんでした。
オラトリオ:用済みのPBS02を”解体する”のに手間取ってしまいまして。頑丈すぎるのも考えものだ。
オラトリオ:瓦礫に潰されていないようで何よりでした。
オラトリオ:ノヴァは、ちゃんと”機能した”ようですね。
ルビ:オラトリオ…!
オラトリオ:そう睨まないで下さい。ノヴァシリーズはですね、人格は個別に存在するけれど、
オラトリオ:記憶はバックアップデータから共有できるんです。
オラトリオ:それって同一人物と変わりないと思いませんか?
ルビ:もういいわ、オラトリオ。
オラトリオ:いいとは?
ルビ:絶交よ。
0:ルビの背後の穴から、巨大な黒い翼が舞い上がる
オラトリオ:絶交、ですか。
オラトリオ:?この音は…?
脳喰い:会いに来たよ。ルビ。
オラトリオ:なにッ!!なんてことだ!
ルビ:クロウタドリ…あなたなの…?アイオリス!
オラトリオ:素晴らしい!漆黒の巨大な翼が、アンダーインクコリダーから舞い上がったッ!!
オラトリオ:創世記と同じだ!さあ、黒き翼よッ!紙は私だッ!!
オラトリオ:ともに新たなる地下世界を創ろうッ!!
脳喰い:〈物々しい声〉ほう、貴様が紙とはな。
脳喰い:ならば私がすべての生命から脳を喰らい、地下に溜めた知識の全てを
脳喰い:貴様に記そうじゃないか。
0:真っ黒な尾羽がオラトリオの体に巻き付き、浸蝕していく。
オラトリオ:ぐああああ!なんだ!?膨大な知識が頭に流れ込んでくるッ!
オラトリオ:あらゆる悦楽と絶望が同時に押し寄せて来るなんてッ!!
オラトリオ:そうか…!これがッ…これがッ…”孤独”!!
オラトリオ:寒い…震える…こ、これこそが、至高の知識なのかッ!?
脳喰い:相(あい)なき知識に価値などはない。
オラトリオ:そんな…!駄目だア!!消える、消える!なんて…!なんて無意味なんだアッ!!
0:オラトリオは黒炭になってぼろぼろと崩れ去った。
ルビ:アイオリス…アイオリスなんでしょ?
脳喰い:…
ルビ:私ね、あなたとは行けないの…
ルビ:やり残したことがあるから
脳喰い:わかっているよ。僕との出会いが、君を使命から遠ざけてしまっていた。
脳喰い:約束する。君が心置きなく励むように、いつも地上から祈ると。
ルビ:ありがとうアイオリス。あなたとの思い出だって、私の大切な物語だから、忘れないわ。
ルビ:さようなら、アイオリス。
脳喰い:さようならルビ。
0:大地が割れて大空が開ける。
0:まばゆい光が洞窟に差し込み、クロウタドリはその美しい翼を輝かせ、地上へと飛び立った。
イオニア:アイオリス、気がついたか…
アイオリス:ッ…ここは…
イオニア:洞窟を爆破したら落盤してね。君は頭を瓦礫に打たれて気絶していたんだ。
アイオリス:…ドーリアは?
イオニア:崩落に巻き込まれて死んだよ。洞窟はまるっきり空っぽで、支えとなるものが無かったんだ。
アイオリス:イオニア…きみは本当にイオニアだよな?
イオニア:…当たり前だろ?さあ、政府に報告しよう。
イオニア:洞窟には何もなかったとね
0:洞窟の暗がりには少女の白骨死体が祈るようにしてうずくまっていた。
0:FIN