台本概要

 196 views 

タイトル never wonderland
作者名 てくす  (@daihooon)
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(女2)
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 好きなものを好きと言えない女の子と
自分を好きになれずにいる女の子が
出会い、そして
声と音で繋がる物語

 196 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
217 はる。ファンタジーを愛する女の子。ベースボーカル。
211 なお。自分が嫌いな女の子。ギター。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
春:私は昔から不思議なものが好きだった 春:子どもの頃、流行っていた魔法少女アニメにハマったのが始まり 春:魔女や魔法使い、妖精、ドラゴン… 春:そんな物語…だけど一番心を奪われたのは 春:アリスの物語 春:不思議の国でアリスが出会う少し不気味な世界 春:不気味だけど綺麗だと思った 春:そんな不思議でどこか暗くて、どこか綺麗で 春:ますますその世界に惹かれていった 直:「椎名 直です。よろしくお願いします」 春:そんな不思議の世界に入り込んだ私の目の前に 春:不思議なものが入り込んだ 春:第一印象は"綺麗な人" 春:目を奪われたと言う表現がピッタリとハマった 0: 直:私は昔から 直:"人とは違う" 直:そんなことを思いながら生きてきた 直:別にひねくれた人間というわけではない 直:ただ、私の見た目が、特徴がそうさせる 直:興味、畏怖、嫌悪… 直:色んな感情を見てきたから 直:そんなものだ、と思うしかなかった 春:「七原 春です! えっと…よろしくお願いしましゅ!」 直:高校でもまた同じことの繰り返しかな、と 直:少し俯瞰していた私に飛び込んだ声 直:第一印象は"可愛らしい子" 直:噛んだあと頬を赤らめる姿も 直:可愛らしい、そう思った 0: 春:話しかけたのは私の方だった 春:それはもう人見知りとかそういうの抜きで 春:この人と話したかったから 直:話しかけられた時はびっくりした 直:けどこの子の顔を見ると 直:あぁ、興味か 直:そう思った 春:「直さん…ですよね?えっと、その」 直:「直でいいよ、同い年でしょ?」 春:「えぇ!?いきなり呼び捨ては無理だよ! 春:じゃあ、直ちゃんでいい?」 直:「何でもいいよ、そっちは春?だっけ」 春:「うん!あ、あのね!急に話しかけてごめんね? 春:えっと、私さ… 直:「この目のこと?」 春:「え?あ、…うん。ごめんなさい、迷惑だったよね」 直:「別に、もう慣れてるから」 春:「えっと…うーん…」 直:要領を得ない、何が言いたいのか 直:俯いてモジモジして 直:嫌いなタイプだと思った 直:正直、私の特徴に興味があるなら聞けばいい 直:今までだってそうだったから 直:興味本位で聞いて、気持ち悪いと虐めて 直:結局この子も… 春:「私!アリスが好きで!」 直:「…は?」 春:「あ、えっと…不思議の国のアリスって知ってる?」 直:「知ってるよ、詳しくないけど」 春:「私ね、高校生にもなって、おかしいかもしれないけど 春:不思議なものが好きなの!魔女とか妖精とかドラゴンとか」 直:「男の子みたい、何だっけ?厨二病?」 春:「そういうんじゃなくて!そういう世界観?っていうのかな? 春:それが好きで、一番好きなのがアリスなの!」 直:「それで、それと私が何なの?」 春:「今日の自己紹介の時に直ちゃんの目を見て 春:凄く綺麗だと思ったの!初めて見たから」 直:「珍しいみたいだね」 春:「それと…ね?違ってたらごめんね? 春:綺麗だったけど、暗かったの」 直:「は?」 春:「闇を抱えてる?って言うのかな 春:皆んなを見てなかったし」 直:見透かされたと思った 直:今までは誰も私を見ていなかったから 直:「…よく見てんだね」 春:「そう…かな?」 直:「私、貴方みたいな人、嫌いなんだよね 直:興味で関わってきて飽きたら飽きたで… 直:だから昔からこの見た目も貴方みたいな人も嫌いなのよ」 春:「あ…ごめんなさい…けど私気になって… 直:「だけど!…だけど私をちゃんと見たのは貴方が初めて 直:ちょっと興味が出ちゃった。ねぇ、今日一緒に帰らない?」 春:嫌われたと思った。言われた通りだったから 春:興味本位で話しかけたのは本当だったから。 春:だから一緒に帰るなんて言われたのは驚いた 0: 0:ーー放課後 春:…… 直:…… 春:…… 直:「…ねぇ、何か喋ってよ」 春:「え!?…あ、うん」 直:「はぁ…じゃあ好きなものは何?」 春:「えっと不思議の国のアリス」 直:「それはさっき聞いた 直:じゃなくて他に好きなもの 直:例えば私たち高校生なんだしドラマとか俳優とか」 春:「うーん…」 直:「え?もしかして知らないの?」 春:「そういうわけじゃないんだけど! 春:友達と話す時はそういう話題も出るし 春:えっと、最近の流行だと『しら恋』とか?」 直:「なんだ、知ってるんだ」 春:「話題に付いていくために見てるんだ 春:面白いと思うんだけどね」 直:「だったら如月唯斗とか好きなの?」 春:「確かにかっこいいなとは思うんだけど 春:だったらマッドハッターの方が惹かれるかな」 直:「マッドハッター?」 春:「あ!アリスの登場人物のね!帽子屋さん! 春:狂ってるとか言われてるけどね!世界観的にも」 直:「はいはい、わかったわかった! 直:本当に好きなのね」 春:「変…だよね、わかってるんだけど 春:みんながドラマとかアイドルとか 春:そういうの好きなの 春:けど私はハマれないというか…」 直:「何かわかる気がする、そういうの」 春:「直ちゃんは好きなものないの?」 直:「私は別に普通だよ?しら恋も見てるし 直:そこら辺の女子高生と変わらない 直:イケメンを見ればイケメンだと思うし 直:あ、」 春:「ん?どうしたの?」 直:「……音楽の趣味は違うかも」 春:「音楽?」 直:「私、バンドが好きなんだ」 春:「へぇ、バンド…かぁ」 直:「その反応、聴いてないな?」 春:「あ、うん、そういうの好きな子いなかったし 春:みんな最近だとK-POPとかだし」 直:「わかるわかる、だよねー」 春:「なんでバンドが好きなの?」 直:「…私の目、変でしょ?」 春:「そんなことない!綺麗だし、不思議だし!」 直:「不思議って感想は初めてだなぁ 直:私ね、この目…オッドアイっていうの 直:凄く珍しいらしいんだけどさ 直:この目のせいで色んな人に色んな感情をぶつけられた 直:最初は興味から、それが段々気持ち悪がられたり 直:まぁ…色々」 春:「酷い!そんなことないよ! 春:私は凄く素敵だと思う」 直:「だからかなぁ、春に最初、暗いって言われたの 直:けど初めてだったなちゃんと目を見てくれたの」 春:「そうなのかな?」 直:「見た目が普通じゃないから普通のものを 直:好きになろうとしたの、それは春と一緒かも 直:最初は友達と話を合わせるための道具 直:けど最近は自分から面白いって思って見てるよ」 春:「そっか」 直:「けどね、ある一つのバンドに出会ったの 直:マイナーだし、インディーズだから知らないだろうけど 直:『Over Drive』って日本のバンドね」 春:「ごめん、知らないや」 直:「いいって 直:その人たちのライブを観てかっこよかった 直:その時にボーカルの人が言ってたんだ 直:人とは違う何かがあったとしてもそれは大切な宝物だから 直:って」 春:「へぇ…素敵な言葉だね」 直:「多分それは曲の前振りだったんだけど 直:自分の欠点も本当は自分の一番いいところ 直:みたいな曲だったしね 直:ただ、曲もそうだけど、そんなクサい台詞を 直:歌に乗せて届けてる姿が輝いて見えた 直:自分のこの見た目も本当は宝物なのかなって 直:そう思えるようにもなった」 春:「運命の出会いだね、いいなぁ、そういうの」 直:「だけど現実は違ったんだ 直:やっぱりさっき言ったような人ばかりだった」 直:「だから音楽を聴いてる時だけは幸せだった 直:自信が持てた、だから好きになった」 春:「私も何となくわかるかも 春:私は見た目とかじゃないけど自分の本当に好きなもの 春:人に伝えるのはどこか変に思われるって蓋してる 春:直ちゃんが初めてだったの、話したの」 直:「そうなんだ」 春:「うん、周りの目って気になっちゃうよね 春:私と直ちゃんは違うかもしれないけど 春:なんとなく、わかるな」 直:「ねぇ、時間ある?」 春:「え?うん、大丈夫だよ」 直:「カラオケ、行こっか」 春:「えぇ!?カラオケ!?」 直:「何その反応、私が好きなバンド教えるからさ」 春:「本当!あ…けど実は行ったことなくて」 直:「じゃあ今日が春のカラオケデビューだね」 春:「うぅ…緊張するなぁ…」 直:「大丈夫大丈夫、私も歌は上手くないし」 0: 直:「春って何歌えるの?」 春:「一応流行りは知ってるよ」 直:「なるほどね、じゃあ私から」 0: 春:「凄い!上手だね!」 直:「ありがと 直:さっきのが一押しのバンド 直:ちょっと最近有名になりつつあって 直:微妙だけど」 春:「あー、わかるよ、その気持ち 春:自分だけが好きだったのにーってやつ」 直:「春もわかるんだ、そういうの」 春:「友達とは全然そんなことないんだけどね 春:ネットだと私みたいに好きな人いたりするから」 直:「なるほどね〜 直:じゃあ次は春の番」 春:「んと、じゃあこれ歌おうかな」 0: 春:「ふぅ…ど、どうだった?」 直:「春…あんた…」 春:「え!?ごめん!音痴だったかな!?」 直:「どんな才能隠してるのよ!」 春:「へ!?」 直:「上手いってレベルじゃない!なんかもっとこう… 直:あぁぁあー!凄すぎ!」 春:「ちょ、ちょっと、褒めすぎ…」 直:「決めた」 春:「え?」 直:「バンドしよう!春!」 春:「えぇぇ!?」 春:第一印象は綺麗な人、話してみたら普通の女の子 春:一緒に遊んでみたら少し強引な女の子だった 直:第一印象は可愛らしい子、話してみたら変わった子 直:一緒に遊んでみたら才能のある子だった 春:それが出会いで 直:それが始まり 0: 直:「考えてくれた?」 春:「…うん」 直:「あら、これはダメそうかな」 春:「やる、私やってみる」 直:「え?」 春:「私、もっと直ちゃんと仲良くなりたい! 春:それに知らないことも挑戦したい!」 直:「意外とそういうとこもあるのか… 直:びっくりしたよ…けど、嬉しい!春!」 春:「わっ!わ!直ちゃん!急に抱きつかれると!」 直:「いいじゃん、友達同士」 春:「ぅうん…それで私は何をすればいいの?」 直:「ベースボーカル」 春:「うわぁ…難しそう」 直:「大丈夫!実はさ、バンド好きなだけじゃなくて 直:憧れもあったんだ。だから練習してた」 春:「え!?そうなの!?」 直:「うん、一人じゃ何もできないけどさ 直:だからギターは弾けるよ、ベースも貸したげる 直:ドラムは…私才能なかった…」 春:「ドラムどうするの?」 直:「まだライブするって決まってないし 直:先ずは春の特訓からだね」 春:「優しくお願いします…」 直:「あははは!任せて!それに難しい技とか要求しないから!」 春:「あ!」 直:「何?」 春:「笑った!笑った顔も可愛い!」 直:「ばっ!何言ってんの!」 春:「やっぱりいいなぁ、好きなものを共有するって」 直:「…あのさ、春」 春:「何?」 直:「まだライブするって決まってないよ 直:たがら最初は簡単なやつコピーして練習すると思う」 春:「うん、わかった」 直:「だけど、もしよかったら… 直:春が曲書かない?私たちの歌」 春:「え、えぇぇぇ!?」 直:「私は春にバンドって好きなもの共有した 直:だから春は歌詞で共有してみない? 直:ほら、歌ならなんでも乗せれるって言ったでしょ? 直:春の世界、私に教えてよ」 春:「あ…っ…」 直:「嫌だった?」 春:「わ、私でいいのかな?上手く書ける自信ないし 春:それにおかしくないかな?笑われないかな?」 直:「大丈夫、笑わない、おかしくない。だから書いて」 春:「わ…わかった、やってみる」 直:「楽しみにしてる」 0: 春:それから私は練習をした 春:凄く難しかったけど頑張った 春:それと練習以外にも直ちゃんと遊んだ 直:「流石、ファンタジーが好きなだけあるね」 春:「変かな?」 直:「個性的な部屋だね」 春:「変なんじゃん!」 直:「嘘嘘!凄くいい部屋だよ」 春:「今度は直ちゃんの部屋見せてよね!」 直:「考えとく」 春:お互いの家に行ったり 0: 直:「初めてだよね?」 春:「う、うん…」 直:「そんな緊張しなくても…あ、500円出してて」 春:「なんで?」 直:「あー、大体それがドリンク代みたいな」 春:「高っ!」 直:「お酒も飲めたりするからね…学生には高いよねー… 直:物販も見たいし、そろそろ行くよ」 0: 春:「うわぁー…スピーカー大きい…」 直:「メインスピーカーだね、あの近くに行くと死ぬよ」 春:「死ぬの!?」 直:「嘘。だけどホントうるさいから慣れるまでは 直:離れた方がいいかも」 春:「どこで見るの?席もないし」 直:「基本どこでもいいけど…あー、今回は 直:少し後ろに行こうかな激しいの1つあるし」 春:「激しい?」 直:「うん、最前はファンの子たちに押し潰される 直:中盤はモッシュピットになるかもだから」 春:「モッシュピット?」 直:「この前動画で見せたじゃん」 春:「あ!あの走ったり押したりするやつ!」 直:「そー、そ!初めてだから少し後ろで様子見よ 直:行きたくなったら行けばいいし」 春:「大丈夫なの?」 直:「運動会と思えばヘーキ」 春:「そんな軽いものなの!?」 0: 直:「春、面白かっ……よかった」 直:(その笑顔が見れただけで…) 0: 春:「耳がキーーンって…」 直:「あはは!それは大変よろしい!」 春:「凄かったよぉ…」 直:「楽しかった?」 春:「うん!モッシュ?も生で見れたし!」 直:「次はフェスにも行きたいねー」 春:「私ね、あの2番目のバンド好きだった!」 直:「そんな気がしてた。曲の雰囲気とか歌詞とか 直:好きそうだったもん」 春:「バレた?」 直:「バレバレ」 春:「いいなぁ、楽しそうだったなぁ 春:私もいつか…」 直:「ん?」 春:「ううん、なんでもない!私も夏フェス行ってみたい!」 直:「いいねぇ、ノってきたねぇ!」 春:ライブハウスにフェス 春:色んな音楽祭にも行った. 春:そして… 0: 直:「いいね、上手くなった」 春:「ほんと!?」 直:「ちゃんと弾きながら歌えてるし 直:うん!偉い!まさか半年で様になるとはねー」 春:「やったー!」 直:「もっと色んな技とかあるけど 直:それはまずは合格です!」 春:「ん〜!ありがとう直!」 直:「春が頑張ったんだよ…って、え?」 春:「え?…あ…ごめん!」 直:「やっと…やっと呼び捨てにしてくれた! 直:待ってたんだぞ!実は!」 春:「私もいつ変えようか迷ってて」 直:「そういうのはすぐぶつけて! 直:ちゃんと受け止める!」 春:「あはは!何それ!……じゃあ 春:ぶつけてもいいかな?」 直:「おいで!」 春:「直!これ読んで!」 直:「え?これって…」 春:「書いたの!本当はずっと持ってきてた 春:だけど勇気が出なくて渡せなくて 春:けど今ならいけそうだったから!」 直:「うん、見せて」 0: 直:「一人の女の子は暗い闇の中を歩いていました 直:誰も彼女のことを見てくれる人はいませんでした 直:家族も友達も誰も彼女を知ろうとしません 直:一人の女の子は世界が嫌になってしまいました 直:一人暗い森の中を彷徨い歩いて 直:出逢ってしまった 直:彼は言います「どうしてここに?」 直:彼女は言います「消えたくなった」 直:彼は言います「だったら連れて行く」 直:彼は人に無いものを持っていました 直:彼女はそれが自由に見えました 直:彼女は彼の背に乗って旅に出るのでした 直: 直:…が一番の歌詞かな」 春:「おかしいかな?初めて書いたからよくわかんなくて 春:歌詞っていうより小説みたいになっちゃった」 直:「…うん、そっか2番で…」 春:「……」 直:「これ曲名は?」 春:「あ!えっと…ソラ」 直:「空?」 春:「漢字じゃなくてカタカナかローマ字かな? 春:2番に書いてる通り、出会ったドラゴンと旅をする 春:私の好きなファンタジーみたいな… 春:だけど幸せな話にしたかったの! 春:それでね!そのドラゴンの名前を曲名にしたくて 春:ソラっていうのは私が昔好きだったアニメ映画の 春:ドラゴンの名前がソラだったから!」 直:「春って好きなものの話になると饒舌だよね 直:…うん、凄くいいと思う」 春:「本当?」 直:「だけどこれ、日本語だと歌うの難しいかも 直:春も言ってたけど歌詞って感じゃないから 直:…英語歌詞にするってのもアリかも 直:ねぇ、英語で歌えたりする?」 春:「えっと…実は…コレ」 直:「何これ!?英語歌詞じゃん!どうしたの?」 春:「私のお母さん外国語教師でね 春:直のこととかバンドのこと…話したの 春:それと、やっぱり日本語で自分の話をするのちょっと恥ずかしくて… 春:お母さんに頼んで英語にしてもらっちゃった」 直:「アンタって何か…いや、凄いよ春 直:英語だから言葉で伝わるかは別として 直:今の春の顔見たら皆んなわかってくれる」 春:「私そんな変な顔してる!?」 直:「楽しそうな顔だよ 直:よし!この調子であと3つ!よろしく!」 春:「3つ!?…う、うん!頑張る!」 0: 直:「Sora、ウサギの小話、ミルクティー、謎謎 直:ウサギとミルクティーはアリスっぽいね」 春:「そう!書きやすいってなったらやっぱりアリスかなって 春:けど…頑張ったよー私、頑張ったよー」 直:「偉い、偉い!どれも私は好きだよ 直:春の世界観がわかって楽しい 直:1番はSoraかな、初めて春が作ったってこともあるけど 直:何度も読み返してやっぱ好きだなって」 春:「ありがとう直!」 直:「曲は作ったから今度からこの4曲を練習するよ 直:いつライブに呼ばれてもいいように」 春:「もうそこまで考えてるの!?私まだまだなのにー… 春:けど直って凄いよね、そんなすぐに曲にするなんて」 直:「春の歌詞がいいからだよ、スッと入ってくるんだ 直:だから早く表現したくて頑張った!」 春:「褒めすぎ!」 直:「そうだ、バンド名!何にする?」 春:「バンド名かぁ…考えてなかったね」 直:「実はさ、私も春に影響されて好きになっちゃった」 春:「え?何を?」 直:「不思議の国のアリス、だからこんなのどう?」 春:「Never Wonderland…」 直:「私、春に出会えてよかった 直:最初は興味だったかもしれない、けどちゃんと私を見てくれたのは 直:春が初めてだったから…他の人は皆んな… 直:違うか、私が壁を作ってたんだ、それに気づけた 直:春が教えてくれたんだ」 春:「そんな!私何もしてないよ!」 直:「春が私に春の世界を見せてくれたように 直:変かもしれないって思ってもずっと好きで居続けられる春を見て 直:私も…私のコレを大切にすることにしたんだ 直:それは春が教えてくれたことだから」 春:「直…私も直に出会えてよかったよ! 春:私の好きなものを聞いてくれたのも 春:それを伝えようって歌詞にしたことも 春:直がいてくれたから出来たんだ!」 直:「春の才能も凄いんだけどね 直:バンド名のネバーは何時でもって意味だけど 直:私は春とこれからもずっと友達でいたい 直:本当はずっとって意味ならモアかもしれないけど 直:ワンダーランドって入れたかったから 直:いつでもずっと不思議の国って意味でそうしたんだ」 春:「私も直とずっと友達でいたい!だから… 春:凄くいいと思う!それと実は私も…ほら!」 直:「え!?Over Driveのアルバム!?」 春:「直にバンドを教えてもらって一緒にライブに行ったりして 春:私もハマったんだ!新曲はダウンロードしたよ! 春:けど私が一番ハマってるのはNullなんだけど」 直:「春の口からバンドの名前があがるとは…! 直:Nullいいよね」 春:「好きなものの話ができるって楽しいね」 直:「そうだね、よし!この調子で曲の練習だ!」 春:「うん!」 0: 0:ーー2週間後 直:「決まった…」 春:「どうしたの?」 直:「初ライブ!私たちの!」 春:「え!?え!?えーー!?」 直:「今度の土曜日!時間は14時…あー、けど 直:リハあるから私たちは12時には入らないと」 春:「き、緊張してきた…」 直:「大丈夫!ちゃんと練習してきたし春なら大丈夫」 春:「う、うん…」 直:「失敗してもいいじゃん!楽しもうよ! 直:それに、やっと伝えられんだよ」 春:「そうだね…うん!頑張ろう直!」 直:「ドラムは一緒に練習してた美咲さんに頼むから」 春:「美咲さん大丈夫なの?」 直:「その美咲さんからの連絡です! 直:ていうかコレ、多分美咲さんの仕業だな… 直:こんな急にライブの枠に入るなんてそうないから」 春:「そういうことか…じゃあ土曜日だね」 直:「私たちは初めてだからってことで 直:持ち時間が25分らしいから… 直:今の4曲とあとはMCすれば大丈夫かな」 春:「何話せばいいんだろー…やっぱり緊張する…」 直:「意外と大丈夫だから!」 春:「直ってライブ出たことあるんだっけ?」 直:「ないよ」 春:「なんでそんなに冷静なの!?」 直:「憧れてたからね!緊張より楽しいが勝ってる」 春:「強いなぁ…」 直:「さぁ!春!土曜日まで追い込みだー!」 春:「おーー!」 0: 0:ーー土曜日 直:「そのスピーカーは返しって言って 直:音響さんに欲しい音を言ったらもらえるよ」 春:「欲しい音?」 直:「歌う時、何を聴いたら歌いやすいかとか… 直:まぁリハやりながら分かればいいと思うけど 直:自分の声は全く聞こえないから自分の声はもらったほうがいいよ」 春:「よく知ってるね」 直:「ライブハウスで手伝いはやってたからね 直:あ、始まるよ、とりあえず言われた通りに音出して」 春:「何すればいいの?」 直:「とりあえずなんでもいいから一曲弾いてみて! 直:大丈夫だったらOKって言われるから 直:わからなそうなら私がサポートするから大丈夫!」 春:「わかった…!」 0: 春:「終わったー!」 直:「まだまだこれからだよ!けどリハお疲れ様!」 春:「直もお疲れ様!ありがと、音作り手伝ってもらって」 直:「いいって!にしてもPAさん驚いてたね、春の歌声に」 春:「え!?そう!?」 直:「他の人も言ってたよ、上手だって」 春:「恐縮です…」 直:「ははは!何それ!さ、私たちの出番は3番目だから 直:待機だね、他のバンド見るなら上から見れるよ 直:あそこのPAさんの卓の近く…ほら別のバンドの人見てるでしょ?」 春:「なんか関係者席って感じで凄い!」 直:「いやいや!関係者じゃん!」 0: 0:ーー出番が近く 春:「やっぱり、緊張が…」 直:「私も美咲さんもいるから!それに失敗してもいい! 直:あ、そうだ、今のうちに客席覗いてみて」 春:「なんで?」 直:「意外とステージから客席見えないんだよ 直:ステージのライトで逆光になるのかな?」 春:「そうなんだ」 直:「だから本番はそんなに気にならないから 直:曲に集中してたら大丈夫だよ」 春:「そっか…あ!」 直:「どうした?」 春:「お母さんきてる…」 直:「うそ!?どこ!?」 春:「今日のこと話だけど興味なさそうだったのに」 直:「娘の晴れ舞台は見たいんじゃない?」 春:「直の家族は来ないの?」 直:「あー、私はなんかそういうの恥ずかしくて言えない 直:もし有名になったら言うかな」 春:「じゃあ有名にならなきゃね」 直:「え?」 春:「直が楽しんでるところ見てもらいたいじゃん!」 直:「………、春…頑張ろうね」 春:「うん!」 0: 0:ーーライブスタート 春:「うっわ…あ、えっと…」 直:「はじめまして!Never Wonderlandです!」 春:「直…!あ、私たちは今日が初めてのライブで! 春:緊張してますが!最後まで楽しんでくだちゃい!あ!」 直:「ぷっ…自己紹介の時と一緒じゃん… 直:一曲目!行くよ!」 0: 春:「ありがとうございましたー!」 0:拍手があがる 春:「噛んじゃっだーー!あーー!」 直:「アハハハハ!けど皆んな楽しんでたよ!」 春:「それはわかった!皆んな私たちを知らないはずなのに 春:盛り上がってくれてた!」 直:「うん!楽しかったね、凄く痺れた!」 春:「凄い緊張したけどそれ以上に楽しかった!」 直:「またやりたい?」 春:「もちろん!有名にならなきゃ!」 直:「春って時々凄いこと言うよね 直:よーし!そこまで春が言うなら目標は夏フェスに出る!」 春:「夏フェスかぁ…あのステージで歌うって 春:今日以上に噛んじゃいそう…」 直:「それはそれでキャラとして愛されそうだけど」 春:「私は嫌だからね!あ、少しお母さんのとこ行ってきていい?」 直:「うん!話してきな!」 春:「行ってくる!」 0: 春:「ただいまぁー…」 直:「なんでテンション下がって帰ってくるの!?」 春:「怒られた…発音がなってない!って怒られた…」 直:「何それ!春のお母さんもすごい人だね」 春:「けど楽しそうにしてるところは良かったって 春:こういうのに興味持ったのも驚かれた 春:あとは私の好きなものを見せてくれてありがとうって」 直:「良いお母さんだね」 春:「直のことも言ってたよ!凄い美人だーって!」 直:「て、照れるな…」 春:「大切な友達なら大事にしなさいって」 直:「大切にしてね?」 春:「…あはは!もちろん!」 0: 0:ライブから何日か過ぎた頃 直:「余韻が…ライブの余韻が抜けない…」 春:「テスト近いから勉強もしないとダメだよ?」 直:「親みたいなこと言うね…その点、真面目だなぁ春は」 春:「バンドするのはいいけど勉強はちゃんとしなさいって 春:本気でするにしても学生の内は勉強も本気で、だって」 直:「お母さんが?」 春:「うん」 直:「一応許してもらえた…みたいな感じか」 春:「実は私の歌のことお母さんとお父さん前々から 春:気になってたんだって」 直:「そうなの?」 春:「けど私がそんなに目立つタイプでもなかったし 春:本人が歌手目指すとか言ってこないから 春:何も言わなかったんだって」 直:「なるほどね」 春:「だからちょっと甘いというか 春:音楽をするってことに疑問はなかったみたい」 直:「そっか、それは良かった…あ、ちょっとごめん電話だ」 春:「うん」 直:「美咲さん、どうした…はい…はい 直:え…嘘…?はい。………あ、あ、えっと…」 春:「な、直?」 直:「は、はじめまして!あ、あの!私! 直:え?ほ、本当ですか!?はい!はい!ありがとうございます! 直:はい!わかりました!よろしくお願いします!」 春:「どうしたの?あんな慌ててる直初めて見た」 直:「ライブ決まった…」 春:「本当?いつ?」 直:「2週間後の日曜日」 春:「ねぇ、どうしたの?直?」 直:「Over Driveとの対バン…」 春:「え!?」 直:「どうしよ…ねぇ、どうしよう春!」 春:「ちょ、落ち着いて!」 直:「元々予定してたバンドが1組ダメになったみたい…それで 直:この前のライブをたまたまボーカルのヒロさんが見てたみたいで 直:気になってたからって声をかけてきてくれたみたい」 春:「よかったじゃん!」 直:「ダメ…緊張してきた…」 春:「大丈夫!直が言ってくれたんだよ楽しもうって 春:そりゃファンの人から言われたら緊張するけど! 春:楽しもうよ!絶対凄い楽しいから!」 直:「はぁるぅ…けどね対バンでも4組出るんだって 直:それで多分持ち時間、この前より多いからあと一曲作んないと」 春:「その曲、書きたいのあるんだけどいい?」 直:「え?そうなの?」 春:「うん、もう少しだけ書いててね 春:明日には書きあげるから見て!」 直:「わかった…春、よろしくお願いします!」 春:「こちらこそ!よろしくお願いします!」 0: 直::「じゃあ、見るね?」 春:「うん!」 直:「………」 春:「……」 直:「え…これって」 春:「うん、それも私が好きな世界だよ」 直:「そっか…」 春:私が書いたのは出会いの歌 春:それは今まで言っていたファンタジーなんかじゃくて 春:凄くリアルで、それでも不思議で、大切な世界だから 春:私はあなたと出会ってリアルだけど不思議な世界が 春:一緒に見ることができたから 春:本当はずっと伝えたいと思ってた 春:口では出会えてよかったなんて言えるけど 春:歌詞なら…歌なら想いもちゃんと伝わるはずだから… 直:「伝わったよ、春」 春:「え!?あ…うん、ありがとう」 直:「うん、曲も浮かんだ 直:待ってて!すぐ作って聴かせる!」 春:「楽しみにしてる!」 0: 直:「どうだった?」 春:「凄く良いと思う!私も頭の中で歌ってたけどぴったりだった!」 直:「良かった〜…あれ?これ英語歌詞じゃないの?」 春:「うん…この歌だけはちゃんと伝わる言葉で 春:歌いたいなって…そう思ったんだ」 直:「うん、わかった。そうしよう 直:あと1週間…頑張ろう春」 春:「うん!憧れの人にも見てもらえるからね!」 直:「ちょ!それ言わないで!考えないようにしてるんだから! 直:あぁぁ!また緊張してきた…」 春:「あはは!ごめんごめん!」 0: 0:ーーライブ当日 春:「直!顔!顔!」 直:「さっき…さっきヒロさんが頑張れって… 直:あれ?私さっきヒロさんと喋ってた?」 春:「もぉー!本当に好きなのわかったから! 春:出番だよ!直!」 直:「んんー!…よし!大丈夫!顔、引きつってない?」 春:「うん!大丈夫!いつもの直だ!」 直:「よし…行こう!」 0: 直:「次が最後の曲です! 直:春!MC!」 春:「あ…うん!」 0:春は深呼吸をし、気持ちを整える 春:「今日は観に来てくれてありがとうございます 春:少し私の話をさせてください 春:あ!先ずは呼んでくれた 春:Over Driveの皆さんありがとうございます! 春:えっと、私は普通の女子高生が好きなものより違うものが好きでした 春:それは不思議なもの、ファンタジー、特に不思議の国のアリスです 春:高校生にもなって、なんて笑う人もいるかもしれません 春:私自身も変なのかな?って 春:自分の好きなものに正直になれない、窮屈だなって思ってました 春:だけどそんな時、直に出会いました 春:直も私とは違うけど同じような思いを持ってて 春:そこで教えてもらったのが音楽、バンドでした 春:こんなこと言うとダメかもしれないけど 春:私はバンドに興味ありませんでした 春:そんな私をこの世界に、バントを好きにさせてくれたのは直で 春:この世界なら自分の好きなものを表現できるって教えてくれて…」 直:「春だけじゃありません 直:私も私の見た目を好きになれませんでした 直:この中にも私の目のこと、変に思っている人もいるかもしれません」 春:「直…」 直:「だけど今日呼んでくれたOver Driveさんのステージを見て 直:私はこの世界が好きになって、春と出会って 直:この見た目も欠点も本当は宝物だって!気付きました! 直:だから春とならこの道を目指してみようってそう思えるようになって」 春:「自分の好きなものも、自分の欠点も 春:考えも、伝えたいことも歌になら乗せられる」 直:「少し恥ずかしいけど私たちの歌で皆んなに少しでも 直:私がもらったように勇気をあげられたらいいなって思います」 春:「自己満かもしれません 春:今までの曲は伝えるのが恥ずかしくて英語歌詞だったけど! 春:だけど皆んなに聴いて欲しくて 春:今回は新曲で私と直の出会いを歌にしました! 春:…届いてくれるといいな」 直:「届くよ、絶対」 春:「…うん!」 春:私たちがファンタジーの主人公ならこの物語は 春:多分続くんだと思う 春:新しいメンバーとか新曲とか 春:いつかは大きいステージに立ったり、有名な音楽番組 春:なんかに呼ばれたり…なんて 春:だけどこれはファンタジーでも何でもない現実 春:…だけど直とならこれからも歌詞で、音で、声で… 春:音楽で私たちを伝えられるはず 春:いつまでも…いつまでもずっとこの不思議な世界で… 春:「……聴いてください」 春:『Alice』 0:おわり

春:私は昔から不思議なものが好きだった 春:子どもの頃、流行っていた魔法少女アニメにハマったのが始まり 春:魔女や魔法使い、妖精、ドラゴン… 春:そんな物語…だけど一番心を奪われたのは 春:アリスの物語 春:不思議の国でアリスが出会う少し不気味な世界 春:不気味だけど綺麗だと思った 春:そんな不思議でどこか暗くて、どこか綺麗で 春:ますますその世界に惹かれていった 直:「椎名 直です。よろしくお願いします」 春:そんな不思議の世界に入り込んだ私の目の前に 春:不思議なものが入り込んだ 春:第一印象は"綺麗な人" 春:目を奪われたと言う表現がピッタリとハマった 0: 直:私は昔から 直:"人とは違う" 直:そんなことを思いながら生きてきた 直:別にひねくれた人間というわけではない 直:ただ、私の見た目が、特徴がそうさせる 直:興味、畏怖、嫌悪… 直:色んな感情を見てきたから 直:そんなものだ、と思うしかなかった 春:「七原 春です! えっと…よろしくお願いしましゅ!」 直:高校でもまた同じことの繰り返しかな、と 直:少し俯瞰していた私に飛び込んだ声 直:第一印象は"可愛らしい子" 直:噛んだあと頬を赤らめる姿も 直:可愛らしい、そう思った 0: 春:話しかけたのは私の方だった 春:それはもう人見知りとかそういうの抜きで 春:この人と話したかったから 直:話しかけられた時はびっくりした 直:けどこの子の顔を見ると 直:あぁ、興味か 直:そう思った 春:「直さん…ですよね?えっと、その」 直:「直でいいよ、同い年でしょ?」 春:「えぇ!?いきなり呼び捨ては無理だよ! 春:じゃあ、直ちゃんでいい?」 直:「何でもいいよ、そっちは春?だっけ」 春:「うん!あ、あのね!急に話しかけてごめんね? 春:えっと、私さ… 直:「この目のこと?」 春:「え?あ、…うん。ごめんなさい、迷惑だったよね」 直:「別に、もう慣れてるから」 春:「えっと…うーん…」 直:要領を得ない、何が言いたいのか 直:俯いてモジモジして 直:嫌いなタイプだと思った 直:正直、私の特徴に興味があるなら聞けばいい 直:今までだってそうだったから 直:興味本位で聞いて、気持ち悪いと虐めて 直:結局この子も… 春:「私!アリスが好きで!」 直:「…は?」 春:「あ、えっと…不思議の国のアリスって知ってる?」 直:「知ってるよ、詳しくないけど」 春:「私ね、高校生にもなって、おかしいかもしれないけど 春:不思議なものが好きなの!魔女とか妖精とかドラゴンとか」 直:「男の子みたい、何だっけ?厨二病?」 春:「そういうんじゃなくて!そういう世界観?っていうのかな? 春:それが好きで、一番好きなのがアリスなの!」 直:「それで、それと私が何なの?」 春:「今日の自己紹介の時に直ちゃんの目を見て 春:凄く綺麗だと思ったの!初めて見たから」 直:「珍しいみたいだね」 春:「それと…ね?違ってたらごめんね? 春:綺麗だったけど、暗かったの」 直:「は?」 春:「闇を抱えてる?って言うのかな 春:皆んなを見てなかったし」 直:見透かされたと思った 直:今までは誰も私を見ていなかったから 直:「…よく見てんだね」 春:「そう…かな?」 直:「私、貴方みたいな人、嫌いなんだよね 直:興味で関わってきて飽きたら飽きたで… 直:だから昔からこの見た目も貴方みたいな人も嫌いなのよ」 春:「あ…ごめんなさい…けど私気になって… 直:「だけど!…だけど私をちゃんと見たのは貴方が初めて 直:ちょっと興味が出ちゃった。ねぇ、今日一緒に帰らない?」 春:嫌われたと思った。言われた通りだったから 春:興味本位で話しかけたのは本当だったから。 春:だから一緒に帰るなんて言われたのは驚いた 0: 0:ーー放課後 春:…… 直:…… 春:…… 直:「…ねぇ、何か喋ってよ」 春:「え!?…あ、うん」 直:「はぁ…じゃあ好きなものは何?」 春:「えっと不思議の国のアリス」 直:「それはさっき聞いた 直:じゃなくて他に好きなもの 直:例えば私たち高校生なんだしドラマとか俳優とか」 春:「うーん…」 直:「え?もしかして知らないの?」 春:「そういうわけじゃないんだけど! 春:友達と話す時はそういう話題も出るし 春:えっと、最近の流行だと『しら恋』とか?」 直:「なんだ、知ってるんだ」 春:「話題に付いていくために見てるんだ 春:面白いと思うんだけどね」 直:「だったら如月唯斗とか好きなの?」 春:「確かにかっこいいなとは思うんだけど 春:だったらマッドハッターの方が惹かれるかな」 直:「マッドハッター?」 春:「あ!アリスの登場人物のね!帽子屋さん! 春:狂ってるとか言われてるけどね!世界観的にも」 直:「はいはい、わかったわかった! 直:本当に好きなのね」 春:「変…だよね、わかってるんだけど 春:みんながドラマとかアイドルとか 春:そういうの好きなの 春:けど私はハマれないというか…」 直:「何かわかる気がする、そういうの」 春:「直ちゃんは好きなものないの?」 直:「私は別に普通だよ?しら恋も見てるし 直:そこら辺の女子高生と変わらない 直:イケメンを見ればイケメンだと思うし 直:あ、」 春:「ん?どうしたの?」 直:「……音楽の趣味は違うかも」 春:「音楽?」 直:「私、バンドが好きなんだ」 春:「へぇ、バンド…かぁ」 直:「その反応、聴いてないな?」 春:「あ、うん、そういうの好きな子いなかったし 春:みんな最近だとK-POPとかだし」 直:「わかるわかる、だよねー」 春:「なんでバンドが好きなの?」 直:「…私の目、変でしょ?」 春:「そんなことない!綺麗だし、不思議だし!」 直:「不思議って感想は初めてだなぁ 直:私ね、この目…オッドアイっていうの 直:凄く珍しいらしいんだけどさ 直:この目のせいで色んな人に色んな感情をぶつけられた 直:最初は興味から、それが段々気持ち悪がられたり 直:まぁ…色々」 春:「酷い!そんなことないよ! 春:私は凄く素敵だと思う」 直:「だからかなぁ、春に最初、暗いって言われたの 直:けど初めてだったなちゃんと目を見てくれたの」 春:「そうなのかな?」 直:「見た目が普通じゃないから普通のものを 直:好きになろうとしたの、それは春と一緒かも 直:最初は友達と話を合わせるための道具 直:けど最近は自分から面白いって思って見てるよ」 春:「そっか」 直:「けどね、ある一つのバンドに出会ったの 直:マイナーだし、インディーズだから知らないだろうけど 直:『Over Drive』って日本のバンドね」 春:「ごめん、知らないや」 直:「いいって 直:その人たちのライブを観てかっこよかった 直:その時にボーカルの人が言ってたんだ 直:人とは違う何かがあったとしてもそれは大切な宝物だから 直:って」 春:「へぇ…素敵な言葉だね」 直:「多分それは曲の前振りだったんだけど 直:自分の欠点も本当は自分の一番いいところ 直:みたいな曲だったしね 直:ただ、曲もそうだけど、そんなクサい台詞を 直:歌に乗せて届けてる姿が輝いて見えた 直:自分のこの見た目も本当は宝物なのかなって 直:そう思えるようにもなった」 春:「運命の出会いだね、いいなぁ、そういうの」 直:「だけど現実は違ったんだ 直:やっぱりさっき言ったような人ばかりだった」 直:「だから音楽を聴いてる時だけは幸せだった 直:自信が持てた、だから好きになった」 春:「私も何となくわかるかも 春:私は見た目とかじゃないけど自分の本当に好きなもの 春:人に伝えるのはどこか変に思われるって蓋してる 春:直ちゃんが初めてだったの、話したの」 直:「そうなんだ」 春:「うん、周りの目って気になっちゃうよね 春:私と直ちゃんは違うかもしれないけど 春:なんとなく、わかるな」 直:「ねぇ、時間ある?」 春:「え?うん、大丈夫だよ」 直:「カラオケ、行こっか」 春:「えぇ!?カラオケ!?」 直:「何その反応、私が好きなバンド教えるからさ」 春:「本当!あ…けど実は行ったことなくて」 直:「じゃあ今日が春のカラオケデビューだね」 春:「うぅ…緊張するなぁ…」 直:「大丈夫大丈夫、私も歌は上手くないし」 0: 直:「春って何歌えるの?」 春:「一応流行りは知ってるよ」 直:「なるほどね、じゃあ私から」 0: 春:「凄い!上手だね!」 直:「ありがと 直:さっきのが一押しのバンド 直:ちょっと最近有名になりつつあって 直:微妙だけど」 春:「あー、わかるよ、その気持ち 春:自分だけが好きだったのにーってやつ」 直:「春もわかるんだ、そういうの」 春:「友達とは全然そんなことないんだけどね 春:ネットだと私みたいに好きな人いたりするから」 直:「なるほどね〜 直:じゃあ次は春の番」 春:「んと、じゃあこれ歌おうかな」 0: 春:「ふぅ…ど、どうだった?」 直:「春…あんた…」 春:「え!?ごめん!音痴だったかな!?」 直:「どんな才能隠してるのよ!」 春:「へ!?」 直:「上手いってレベルじゃない!なんかもっとこう… 直:あぁぁあー!凄すぎ!」 春:「ちょ、ちょっと、褒めすぎ…」 直:「決めた」 春:「え?」 直:「バンドしよう!春!」 春:「えぇぇ!?」 春:第一印象は綺麗な人、話してみたら普通の女の子 春:一緒に遊んでみたら少し強引な女の子だった 直:第一印象は可愛らしい子、話してみたら変わった子 直:一緒に遊んでみたら才能のある子だった 春:それが出会いで 直:それが始まり 0: 直:「考えてくれた?」 春:「…うん」 直:「あら、これはダメそうかな」 春:「やる、私やってみる」 直:「え?」 春:「私、もっと直ちゃんと仲良くなりたい! 春:それに知らないことも挑戦したい!」 直:「意外とそういうとこもあるのか… 直:びっくりしたよ…けど、嬉しい!春!」 春:「わっ!わ!直ちゃん!急に抱きつかれると!」 直:「いいじゃん、友達同士」 春:「ぅうん…それで私は何をすればいいの?」 直:「ベースボーカル」 春:「うわぁ…難しそう」 直:「大丈夫!実はさ、バンド好きなだけじゃなくて 直:憧れもあったんだ。だから練習してた」 春:「え!?そうなの!?」 直:「うん、一人じゃ何もできないけどさ 直:だからギターは弾けるよ、ベースも貸したげる 直:ドラムは…私才能なかった…」 春:「ドラムどうするの?」 直:「まだライブするって決まってないし 直:先ずは春の特訓からだね」 春:「優しくお願いします…」 直:「あははは!任せて!それに難しい技とか要求しないから!」 春:「あ!」 直:「何?」 春:「笑った!笑った顔も可愛い!」 直:「ばっ!何言ってんの!」 春:「やっぱりいいなぁ、好きなものを共有するって」 直:「…あのさ、春」 春:「何?」 直:「まだライブするって決まってないよ 直:たがら最初は簡単なやつコピーして練習すると思う」 春:「うん、わかった」 直:「だけど、もしよかったら… 直:春が曲書かない?私たちの歌」 春:「え、えぇぇぇ!?」 直:「私は春にバンドって好きなもの共有した 直:だから春は歌詞で共有してみない? 直:ほら、歌ならなんでも乗せれるって言ったでしょ? 直:春の世界、私に教えてよ」 春:「あ…っ…」 直:「嫌だった?」 春:「わ、私でいいのかな?上手く書ける自信ないし 春:それにおかしくないかな?笑われないかな?」 直:「大丈夫、笑わない、おかしくない。だから書いて」 春:「わ…わかった、やってみる」 直:「楽しみにしてる」 0: 春:それから私は練習をした 春:凄く難しかったけど頑張った 春:それと練習以外にも直ちゃんと遊んだ 直:「流石、ファンタジーが好きなだけあるね」 春:「変かな?」 直:「個性的な部屋だね」 春:「変なんじゃん!」 直:「嘘嘘!凄くいい部屋だよ」 春:「今度は直ちゃんの部屋見せてよね!」 直:「考えとく」 春:お互いの家に行ったり 0: 直:「初めてだよね?」 春:「う、うん…」 直:「そんな緊張しなくても…あ、500円出してて」 春:「なんで?」 直:「あー、大体それがドリンク代みたいな」 春:「高っ!」 直:「お酒も飲めたりするからね…学生には高いよねー… 直:物販も見たいし、そろそろ行くよ」 0: 春:「うわぁー…スピーカー大きい…」 直:「メインスピーカーだね、あの近くに行くと死ぬよ」 春:「死ぬの!?」 直:「嘘。だけどホントうるさいから慣れるまでは 直:離れた方がいいかも」 春:「どこで見るの?席もないし」 直:「基本どこでもいいけど…あー、今回は 直:少し後ろに行こうかな激しいの1つあるし」 春:「激しい?」 直:「うん、最前はファンの子たちに押し潰される 直:中盤はモッシュピットになるかもだから」 春:「モッシュピット?」 直:「この前動画で見せたじゃん」 春:「あ!あの走ったり押したりするやつ!」 直:「そー、そ!初めてだから少し後ろで様子見よ 直:行きたくなったら行けばいいし」 春:「大丈夫なの?」 直:「運動会と思えばヘーキ」 春:「そんな軽いものなの!?」 0: 直:「春、面白かっ……よかった」 直:(その笑顔が見れただけで…) 0: 春:「耳がキーーンって…」 直:「あはは!それは大変よろしい!」 春:「凄かったよぉ…」 直:「楽しかった?」 春:「うん!モッシュ?も生で見れたし!」 直:「次はフェスにも行きたいねー」 春:「私ね、あの2番目のバンド好きだった!」 直:「そんな気がしてた。曲の雰囲気とか歌詞とか 直:好きそうだったもん」 春:「バレた?」 直:「バレバレ」 春:「いいなぁ、楽しそうだったなぁ 春:私もいつか…」 直:「ん?」 春:「ううん、なんでもない!私も夏フェス行ってみたい!」 直:「いいねぇ、ノってきたねぇ!」 春:ライブハウスにフェス 春:色んな音楽祭にも行った. 春:そして… 0: 直:「いいね、上手くなった」 春:「ほんと!?」 直:「ちゃんと弾きながら歌えてるし 直:うん!偉い!まさか半年で様になるとはねー」 春:「やったー!」 直:「もっと色んな技とかあるけど 直:それはまずは合格です!」 春:「ん〜!ありがとう直!」 直:「春が頑張ったんだよ…って、え?」 春:「え?…あ…ごめん!」 直:「やっと…やっと呼び捨てにしてくれた! 直:待ってたんだぞ!実は!」 春:「私もいつ変えようか迷ってて」 直:「そういうのはすぐぶつけて! 直:ちゃんと受け止める!」 春:「あはは!何それ!……じゃあ 春:ぶつけてもいいかな?」 直:「おいで!」 春:「直!これ読んで!」 直:「え?これって…」 春:「書いたの!本当はずっと持ってきてた 春:だけど勇気が出なくて渡せなくて 春:けど今ならいけそうだったから!」 直:「うん、見せて」 0: 直:「一人の女の子は暗い闇の中を歩いていました 直:誰も彼女のことを見てくれる人はいませんでした 直:家族も友達も誰も彼女を知ろうとしません 直:一人の女の子は世界が嫌になってしまいました 直:一人暗い森の中を彷徨い歩いて 直:出逢ってしまった 直:彼は言います「どうしてここに?」 直:彼女は言います「消えたくなった」 直:彼は言います「だったら連れて行く」 直:彼は人に無いものを持っていました 直:彼女はそれが自由に見えました 直:彼女は彼の背に乗って旅に出るのでした 直: 直:…が一番の歌詞かな」 春:「おかしいかな?初めて書いたからよくわかんなくて 春:歌詞っていうより小説みたいになっちゃった」 直:「…うん、そっか2番で…」 春:「……」 直:「これ曲名は?」 春:「あ!えっと…ソラ」 直:「空?」 春:「漢字じゃなくてカタカナかローマ字かな? 春:2番に書いてる通り、出会ったドラゴンと旅をする 春:私の好きなファンタジーみたいな… 春:だけど幸せな話にしたかったの! 春:それでね!そのドラゴンの名前を曲名にしたくて 春:ソラっていうのは私が昔好きだったアニメ映画の 春:ドラゴンの名前がソラだったから!」 直:「春って好きなものの話になると饒舌だよね 直:…うん、凄くいいと思う」 春:「本当?」 直:「だけどこれ、日本語だと歌うの難しいかも 直:春も言ってたけど歌詞って感じゃないから 直:…英語歌詞にするってのもアリかも 直:ねぇ、英語で歌えたりする?」 春:「えっと…実は…コレ」 直:「何これ!?英語歌詞じゃん!どうしたの?」 春:「私のお母さん外国語教師でね 春:直のこととかバンドのこと…話したの 春:それと、やっぱり日本語で自分の話をするのちょっと恥ずかしくて… 春:お母さんに頼んで英語にしてもらっちゃった」 直:「アンタって何か…いや、凄いよ春 直:英語だから言葉で伝わるかは別として 直:今の春の顔見たら皆んなわかってくれる」 春:「私そんな変な顔してる!?」 直:「楽しそうな顔だよ 直:よし!この調子であと3つ!よろしく!」 春:「3つ!?…う、うん!頑張る!」 0: 直:「Sora、ウサギの小話、ミルクティー、謎謎 直:ウサギとミルクティーはアリスっぽいね」 春:「そう!書きやすいってなったらやっぱりアリスかなって 春:けど…頑張ったよー私、頑張ったよー」 直:「偉い、偉い!どれも私は好きだよ 直:春の世界観がわかって楽しい 直:1番はSoraかな、初めて春が作ったってこともあるけど 直:何度も読み返してやっぱ好きだなって」 春:「ありがとう直!」 直:「曲は作ったから今度からこの4曲を練習するよ 直:いつライブに呼ばれてもいいように」 春:「もうそこまで考えてるの!?私まだまだなのにー… 春:けど直って凄いよね、そんなすぐに曲にするなんて」 直:「春の歌詞がいいからだよ、スッと入ってくるんだ 直:だから早く表現したくて頑張った!」 春:「褒めすぎ!」 直:「そうだ、バンド名!何にする?」 春:「バンド名かぁ…考えてなかったね」 直:「実はさ、私も春に影響されて好きになっちゃった」 春:「え?何を?」 直:「不思議の国のアリス、だからこんなのどう?」 春:「Never Wonderland…」 直:「私、春に出会えてよかった 直:最初は興味だったかもしれない、けどちゃんと私を見てくれたのは 直:春が初めてだったから…他の人は皆んな… 直:違うか、私が壁を作ってたんだ、それに気づけた 直:春が教えてくれたんだ」 春:「そんな!私何もしてないよ!」 直:「春が私に春の世界を見せてくれたように 直:変かもしれないって思ってもずっと好きで居続けられる春を見て 直:私も…私のコレを大切にすることにしたんだ 直:それは春が教えてくれたことだから」 春:「直…私も直に出会えてよかったよ! 春:私の好きなものを聞いてくれたのも 春:それを伝えようって歌詞にしたことも 春:直がいてくれたから出来たんだ!」 直:「春の才能も凄いんだけどね 直:バンド名のネバーは何時でもって意味だけど 直:私は春とこれからもずっと友達でいたい 直:本当はずっとって意味ならモアかもしれないけど 直:ワンダーランドって入れたかったから 直:いつでもずっと不思議の国って意味でそうしたんだ」 春:「私も直とずっと友達でいたい!だから… 春:凄くいいと思う!それと実は私も…ほら!」 直:「え!?Over Driveのアルバム!?」 春:「直にバンドを教えてもらって一緒にライブに行ったりして 春:私もハマったんだ!新曲はダウンロードしたよ! 春:けど私が一番ハマってるのはNullなんだけど」 直:「春の口からバンドの名前があがるとは…! 直:Nullいいよね」 春:「好きなものの話ができるって楽しいね」 直:「そうだね、よし!この調子で曲の練習だ!」 春:「うん!」 0: 0:ーー2週間後 直:「決まった…」 春:「どうしたの?」 直:「初ライブ!私たちの!」 春:「え!?え!?えーー!?」 直:「今度の土曜日!時間は14時…あー、けど 直:リハあるから私たちは12時には入らないと」 春:「き、緊張してきた…」 直:「大丈夫!ちゃんと練習してきたし春なら大丈夫」 春:「う、うん…」 直:「失敗してもいいじゃん!楽しもうよ! 直:それに、やっと伝えられんだよ」 春:「そうだね…うん!頑張ろう直!」 直:「ドラムは一緒に練習してた美咲さんに頼むから」 春:「美咲さん大丈夫なの?」 直:「その美咲さんからの連絡です! 直:ていうかコレ、多分美咲さんの仕業だな… 直:こんな急にライブの枠に入るなんてそうないから」 春:「そういうことか…じゃあ土曜日だね」 直:「私たちは初めてだからってことで 直:持ち時間が25分らしいから… 直:今の4曲とあとはMCすれば大丈夫かな」 春:「何話せばいいんだろー…やっぱり緊張する…」 直:「意外と大丈夫だから!」 春:「直ってライブ出たことあるんだっけ?」 直:「ないよ」 春:「なんでそんなに冷静なの!?」 直:「憧れてたからね!緊張より楽しいが勝ってる」 春:「強いなぁ…」 直:「さぁ!春!土曜日まで追い込みだー!」 春:「おーー!」 0: 0:ーー土曜日 直:「そのスピーカーは返しって言って 直:音響さんに欲しい音を言ったらもらえるよ」 春:「欲しい音?」 直:「歌う時、何を聴いたら歌いやすいかとか… 直:まぁリハやりながら分かればいいと思うけど 直:自分の声は全く聞こえないから自分の声はもらったほうがいいよ」 春:「よく知ってるね」 直:「ライブハウスで手伝いはやってたからね 直:あ、始まるよ、とりあえず言われた通りに音出して」 春:「何すればいいの?」 直:「とりあえずなんでもいいから一曲弾いてみて! 直:大丈夫だったらOKって言われるから 直:わからなそうなら私がサポートするから大丈夫!」 春:「わかった…!」 0: 春:「終わったー!」 直:「まだまだこれからだよ!けどリハお疲れ様!」 春:「直もお疲れ様!ありがと、音作り手伝ってもらって」 直:「いいって!にしてもPAさん驚いてたね、春の歌声に」 春:「え!?そう!?」 直:「他の人も言ってたよ、上手だって」 春:「恐縮です…」 直:「ははは!何それ!さ、私たちの出番は3番目だから 直:待機だね、他のバンド見るなら上から見れるよ 直:あそこのPAさんの卓の近く…ほら別のバンドの人見てるでしょ?」 春:「なんか関係者席って感じで凄い!」 直:「いやいや!関係者じゃん!」 0: 0:ーー出番が近く 春:「やっぱり、緊張が…」 直:「私も美咲さんもいるから!それに失敗してもいい! 直:あ、そうだ、今のうちに客席覗いてみて」 春:「なんで?」 直:「意外とステージから客席見えないんだよ 直:ステージのライトで逆光になるのかな?」 春:「そうなんだ」 直:「だから本番はそんなに気にならないから 直:曲に集中してたら大丈夫だよ」 春:「そっか…あ!」 直:「どうした?」 春:「お母さんきてる…」 直:「うそ!?どこ!?」 春:「今日のこと話だけど興味なさそうだったのに」 直:「娘の晴れ舞台は見たいんじゃない?」 春:「直の家族は来ないの?」 直:「あー、私はなんかそういうの恥ずかしくて言えない 直:もし有名になったら言うかな」 春:「じゃあ有名にならなきゃね」 直:「え?」 春:「直が楽しんでるところ見てもらいたいじゃん!」 直:「………、春…頑張ろうね」 春:「うん!」 0: 0:ーーライブスタート 春:「うっわ…あ、えっと…」 直:「はじめまして!Never Wonderlandです!」 春:「直…!あ、私たちは今日が初めてのライブで! 春:緊張してますが!最後まで楽しんでくだちゃい!あ!」 直:「ぷっ…自己紹介の時と一緒じゃん… 直:一曲目!行くよ!」 0: 春:「ありがとうございましたー!」 0:拍手があがる 春:「噛んじゃっだーー!あーー!」 直:「アハハハハ!けど皆んな楽しんでたよ!」 春:「それはわかった!皆んな私たちを知らないはずなのに 春:盛り上がってくれてた!」 直:「うん!楽しかったね、凄く痺れた!」 春:「凄い緊張したけどそれ以上に楽しかった!」 直:「またやりたい?」 春:「もちろん!有名にならなきゃ!」 直:「春って時々凄いこと言うよね 直:よーし!そこまで春が言うなら目標は夏フェスに出る!」 春:「夏フェスかぁ…あのステージで歌うって 春:今日以上に噛んじゃいそう…」 直:「それはそれでキャラとして愛されそうだけど」 春:「私は嫌だからね!あ、少しお母さんのとこ行ってきていい?」 直:「うん!話してきな!」 春:「行ってくる!」 0: 春:「ただいまぁー…」 直:「なんでテンション下がって帰ってくるの!?」 春:「怒られた…発音がなってない!って怒られた…」 直:「何それ!春のお母さんもすごい人だね」 春:「けど楽しそうにしてるところは良かったって 春:こういうのに興味持ったのも驚かれた 春:あとは私の好きなものを見せてくれてありがとうって」 直:「良いお母さんだね」 春:「直のことも言ってたよ!凄い美人だーって!」 直:「て、照れるな…」 春:「大切な友達なら大事にしなさいって」 直:「大切にしてね?」 春:「…あはは!もちろん!」 0: 0:ライブから何日か過ぎた頃 直:「余韻が…ライブの余韻が抜けない…」 春:「テスト近いから勉強もしないとダメだよ?」 直:「親みたいなこと言うね…その点、真面目だなぁ春は」 春:「バンドするのはいいけど勉強はちゃんとしなさいって 春:本気でするにしても学生の内は勉強も本気で、だって」 直:「お母さんが?」 春:「うん」 直:「一応許してもらえた…みたいな感じか」 春:「実は私の歌のことお母さんとお父さん前々から 春:気になってたんだって」 直:「そうなの?」 春:「けど私がそんなに目立つタイプでもなかったし 春:本人が歌手目指すとか言ってこないから 春:何も言わなかったんだって」 直:「なるほどね」 春:「だからちょっと甘いというか 春:音楽をするってことに疑問はなかったみたい」 直:「そっか、それは良かった…あ、ちょっとごめん電話だ」 春:「うん」 直:「美咲さん、どうした…はい…はい 直:え…嘘…?はい。………あ、あ、えっと…」 春:「な、直?」 直:「は、はじめまして!あ、あの!私! 直:え?ほ、本当ですか!?はい!はい!ありがとうございます! 直:はい!わかりました!よろしくお願いします!」 春:「どうしたの?あんな慌ててる直初めて見た」 直:「ライブ決まった…」 春:「本当?いつ?」 直:「2週間後の日曜日」 春:「ねぇ、どうしたの?直?」 直:「Over Driveとの対バン…」 春:「え!?」 直:「どうしよ…ねぇ、どうしよう春!」 春:「ちょ、落ち着いて!」 直:「元々予定してたバンドが1組ダメになったみたい…それで 直:この前のライブをたまたまボーカルのヒロさんが見てたみたいで 直:気になってたからって声をかけてきてくれたみたい」 春:「よかったじゃん!」 直:「ダメ…緊張してきた…」 春:「大丈夫!直が言ってくれたんだよ楽しもうって 春:そりゃファンの人から言われたら緊張するけど! 春:楽しもうよ!絶対凄い楽しいから!」 直:「はぁるぅ…けどね対バンでも4組出るんだって 直:それで多分持ち時間、この前より多いからあと一曲作んないと」 春:「その曲、書きたいのあるんだけどいい?」 直:「え?そうなの?」 春:「うん、もう少しだけ書いててね 春:明日には書きあげるから見て!」 直:「わかった…春、よろしくお願いします!」 春:「こちらこそ!よろしくお願いします!」 0: 直::「じゃあ、見るね?」 春:「うん!」 直:「………」 春:「……」 直:「え…これって」 春:「うん、それも私が好きな世界だよ」 直:「そっか…」 春:私が書いたのは出会いの歌 春:それは今まで言っていたファンタジーなんかじゃくて 春:凄くリアルで、それでも不思議で、大切な世界だから 春:私はあなたと出会ってリアルだけど不思議な世界が 春:一緒に見ることができたから 春:本当はずっと伝えたいと思ってた 春:口では出会えてよかったなんて言えるけど 春:歌詞なら…歌なら想いもちゃんと伝わるはずだから… 直:「伝わったよ、春」 春:「え!?あ…うん、ありがとう」 直:「うん、曲も浮かんだ 直:待ってて!すぐ作って聴かせる!」 春:「楽しみにしてる!」 0: 直:「どうだった?」 春:「凄く良いと思う!私も頭の中で歌ってたけどぴったりだった!」 直:「良かった〜…あれ?これ英語歌詞じゃないの?」 春:「うん…この歌だけはちゃんと伝わる言葉で 春:歌いたいなって…そう思ったんだ」 直:「うん、わかった。そうしよう 直:あと1週間…頑張ろう春」 春:「うん!憧れの人にも見てもらえるからね!」 直:「ちょ!それ言わないで!考えないようにしてるんだから! 直:あぁぁ!また緊張してきた…」 春:「あはは!ごめんごめん!」 0: 0:ーーライブ当日 春:「直!顔!顔!」 直:「さっき…さっきヒロさんが頑張れって… 直:あれ?私さっきヒロさんと喋ってた?」 春:「もぉー!本当に好きなのわかったから! 春:出番だよ!直!」 直:「んんー!…よし!大丈夫!顔、引きつってない?」 春:「うん!大丈夫!いつもの直だ!」 直:「よし…行こう!」 0: 直:「次が最後の曲です! 直:春!MC!」 春:「あ…うん!」 0:春は深呼吸をし、気持ちを整える 春:「今日は観に来てくれてありがとうございます 春:少し私の話をさせてください 春:あ!先ずは呼んでくれた 春:Over Driveの皆さんありがとうございます! 春:えっと、私は普通の女子高生が好きなものより違うものが好きでした 春:それは不思議なもの、ファンタジー、特に不思議の国のアリスです 春:高校生にもなって、なんて笑う人もいるかもしれません 春:私自身も変なのかな?って 春:自分の好きなものに正直になれない、窮屈だなって思ってました 春:だけどそんな時、直に出会いました 春:直も私とは違うけど同じような思いを持ってて 春:そこで教えてもらったのが音楽、バンドでした 春:こんなこと言うとダメかもしれないけど 春:私はバンドに興味ありませんでした 春:そんな私をこの世界に、バントを好きにさせてくれたのは直で 春:この世界なら自分の好きなものを表現できるって教えてくれて…」 直:「春だけじゃありません 直:私も私の見た目を好きになれませんでした 直:この中にも私の目のこと、変に思っている人もいるかもしれません」 春:「直…」 直:「だけど今日呼んでくれたOver Driveさんのステージを見て 直:私はこの世界が好きになって、春と出会って 直:この見た目も欠点も本当は宝物だって!気付きました! 直:だから春とならこの道を目指してみようってそう思えるようになって」 春:「自分の好きなものも、自分の欠点も 春:考えも、伝えたいことも歌になら乗せられる」 直:「少し恥ずかしいけど私たちの歌で皆んなに少しでも 直:私がもらったように勇気をあげられたらいいなって思います」 春:「自己満かもしれません 春:今までの曲は伝えるのが恥ずかしくて英語歌詞だったけど! 春:だけど皆んなに聴いて欲しくて 春:今回は新曲で私と直の出会いを歌にしました! 春:…届いてくれるといいな」 直:「届くよ、絶対」 春:「…うん!」 春:私たちがファンタジーの主人公ならこの物語は 春:多分続くんだと思う 春:新しいメンバーとか新曲とか 春:いつかは大きいステージに立ったり、有名な音楽番組 春:なんかに呼ばれたり…なんて 春:だけどこれはファンタジーでも何でもない現実 春:…だけど直とならこれからも歌詞で、音で、声で… 春:音楽で私たちを伝えられるはず 春:いつまでも…いつまでもずっとこの不思議な世界で… 春:「……聴いてください」 春:『Alice』 0:おわり