台本概要

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タイトル Home Villains
作者名 VAL  (@bakemonohouse)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ホームヴィランズ。

家庭には様々な敵がいる。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ディオ 103
ミーシャ 101
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:深夜、帰宅する男。 ディオ:ただいま。 ミーシャ:おかえり。 0:電気をつけると女がテーブルに向かい1人座っている。 ディオ:っ……何だ。起きてたのか。 ミーシャ:ええ。 ディオ:……そうか。 ミーシャ:ご飯は? ディオ:食べてきたよ。 ミーシャ:そう。 ディオ:……じゃあそろそろ── ミーシャ:少し話さない? ディオ:今からか?勘弁してくれ。任務で疲れてるんだ。 ミーシャ:あら、貴方だけが任務終わりだと思ってるの? ディオ:やめてくれよ。言い争いたくない。 ミーシャ:貴方っていっつもそうよね。私と話すのが嫌みたい。 ディオ:そういう訳じゃ── 0:机を叩き立つミーシャ ミーシャ:じゃあ最後に話したのはいつ!? ディオ:毎日話してるじゃないか! ミーシャ:挨拶だけね!おはよう、いってきます、ただいま、おやすみ!今の時代スマホだってカーナビだって言えることだわ! ディオ:お前が悪いんだろう!話す時はいつも怒ってる! ミーシャ:怒らせてるのは貴方でしょう!? ディオ:俺がいつ怒らせたんだよ!お前がいつも不機嫌そうにしてる時、聞いたよな?どうした?って!それに答えないくせに後出しなんだよお前は! ミーシャ:後出しですって?どうしたもこうしたも無いわよ!私は貴方の母親じゃないの!どうして私が貴方の過ちを1つ1つ教えてあげなきゃいけないわけ!? ディオ:言われなきゃわからないだろう!いつも言葉が足りないんだよ! ミーシャ:今言おうとしたら拒否したのはどっち!?言葉をいつも聞かないのはどっちよ!! ディオ:……わかった。なら言えよ。普段から思ってる俺への恨み言を並べたらいいさ。聞いてやる。 ミーシャ:聞いてやる?どこまでも上から目線よね。やっぱりスーパーヒーロー様は私みたいな兼業ヒーローなんて目もくれないってわけなの? ディオ:俺が兼業しろって言ったかよ!お前が選んだんだろ! ミーシャ:そうね!家事もしないお金の管理もしない旦那が居たらそうするしかないもの!家の中じゃ貴方は……ヴィランよ…… ディオ:お前……なんて事を…… ミーシャ:だってそうじゃない。自分の気付かないうちに貴方は……私の心を蝕んでる。 ディオ:……お前だってそうじゃないか。 ミーシャ:え? ディオ:お前だってそうじゃないか!俺が家庭に求めるのは安らぎだ!外じゃいつでも気を張ってる!家でいる時くらい楽に過ごさせてくれてもいいだろう! ミーシャ:じゃあその分、私はずっと我慢してればいいの!?私は家政婦じゃないのよ!!大体、外で気を張るって何によ! ディオ:ヒーローは平和の象徴であらなければならない!ファンの前では常に気丈に振る舞い、突然やってくるヴィランに即座に対応しなければならないんだ!お前もわかるだろう! ミーシャ:ええそうね!私だってヒーローやってるんだから当たり前よ。疲れるのもお互い様じゃないの!? ディオ:お前は!……っ 0:そんなに働いていない。という言葉を飲み込む。 ミーシャ:……何よ。はっきり言えば良いじゃない。 ディオ:いや……何でもない。 ミーシャ:言ってよ。 ディオ:何でもないんだ。 ミーシャ:言ってってば!! ディオ:心に無い言葉だ。俺の言葉じゃない。 ミーシャ:何でよ……貴方がそう言ってくれたら、私は…… ディオ:言わせようとしてたのか?俺を挑発して…… ミーシャ:……そうよ。私は貴方とバディに戻りたいの。 ディオ:ミーシャ…… ミーシャ:久しぶりに名前を呼んでくれたわね。 ディオ:そんなこと……そうだな。久しく呼んで無かった。すまない。 ミーシャ:良いわよ。私も最近は呼んでいなかったもの。 0:ディオ、ミーシャの向かいに座る。 ディオ:……ミーシャ。少し話をしよう。 ミーシャ:ええ。最初からそう言って欲しかったわ。 0:ミーシャ再度座る。 ディオ:いつからそう思ってた? ミーシャ:そう……って? ディオ:仕事に戻りたいんだろ? ミーシャ:そうね。 ディオ:俺から上に掛け合ってみるよ。そうすればすぐにでも── ミーシャ:何も分かってくれてない。 ディオ:は? ミーシャ:貴方は私の何もわかってくれてない! ディオ:落ち着けよ。言われないと分からない。 ミーシャ:ずっとわかってたわよ……貴方の目に映る色とりどりの世界に私はいないって…… ディオ:何言って── ミーシャ:だってそうでしょう!?自分が下手に出たフリして結局、話を早く終わらせたいだけよ! ディオ:何でそうなるんだ!俺はお前のために── ミーシャ:話を聞いてやってる?そうよね!仕事してない私と違って多忙なあなたは疲れてる!そう言いたいんでしょ!? ディオ:いい加減にしろよ!俺にこれ以上、何を望むって言うんだ!? ミーシャ:…… ディオ:聞こえなかったのか? ミーシャ:聞こえてるわよ…… ディオ:こんなんじゃ話し合いにもならない…… ミーシャ:そうね。私たちは話し合いに向いていないもの。 0:ミーシャ、キッチンへ移動する。 ディオ:おい……何をする気だ? ミーシャ:ヒーローならヒーローらしく戦いで決めるべきよ。そう思わない? ディオ:よせミーシャ。俺はお前と戦いなんて── 0:フライパンでディオの頭を叩く。頭はフライパンを貫いた。 ミーシャ:まだやる気は起きない? ディオ:……だからミーシャ、俺は── 0:ミーシャは椅子を持ち上げ振り抜く、椅子は粉々に砕け散る。 ミーシャ:これでどうかしら。 ディオ:……わかった。 ミーシャ:そ。安心したわ。さあどこからでも── ディオ:俺はお前を殴らない。 0:立ち上がり距離を取るディオ。 ミーシャ:じゃあ私の独壇場よ! ディオ:攻撃しないとは言ってない! 0:ディオはオーブンレンジを叩き割った。 ミーシャ:嘘……信じらんない!貴方正気!?それいくらしたか知ってるの!? ディオ:さあいくらだろうな!生憎俺は家計の管理はしてないんでね! ミーシャ:1500ドルよ!初任給でギリギリ足りないくらいだわ! ディオ:そうなのか!俺はヒーローしかやったことがないから相場がわからなかったよ。すまないな! ミーシャ:あーそう!そうくるわけね!絶対に沈めてやる! ディオ:お、おい!ミーシャどこへ行くんだ! ミーシャ:貴方がそのつもりなら私もそうするまでよ! 0:階段を駆け上がるミーシャ ディオ:まさか……俺の部屋か! ミーシャ:私知ってるのよ?貴方が休みの日、部屋から出ずに何をしてるのか。 ディオ:わかった!わかったから早まるのはよせミーシャ! 0:扉を引きちぎる。壁の棚にはたくさんのプラモデル。 ディオ:少し待て!それ1つ作るのにどれだけ時間がかかったか……普通の人でも繊細な作業なんだ。俺みたいなスーパーパワーを持つ人間はパーツ1つ持つだけでも── ミーシャ:それにかかった時間はね……貴方が家庭をかえりみなかった時間よ! 0:息を大きく吸い込み吐き出すとプラモデルが粉々になり舞った。 ディオ:なっ……お前……やっていいことと悪いことがあるだろう!! ミーシャ:なら私を止めてみなさいよ!殴るでも蹴るでも好きにすれば良いわ!得意のスーパーパワーを使えば? ディオ:だからそれは── ミーシャ:大体ね。最初に貴方が物に当たったんじゃない。貴方に文句を言う権利は無いわ! ディオ:……そうか。そうだよな。ははっ……ははははははは!!! ミーシャ:な、何笑ってるのよ。 ディオ:なあミーシャ。俺はお金持ちだ。 ミーシャ:……は? ディオ:別に贅沢が好きってわけでも無い。給与も適当に渡してる。 ミーシャ:え!?貴方まさか金額を誤魔化してたの!? ディオ:そうじゃない。ちゃんと調べたんだ。一般企業のサラリーマンの収入を。それをそのまま渡してる。 ミーシャ:一向に給料が上がらないと思ってたのはそのせいだったのね……それで?何が言いたいわけ? ディオ:その気になればこの家ごと新品に変えれるわけさ! ミーシャ:あらそう。好きなだけ壊せって事かしら? ディオ:いや、違うな。 ミーシャ:は? ディオ:俺も存分に暴れさせてもらうぞ! 0:ディオはミーシャの部屋に視線を移す。 ミーシャ:まさか……本気じゃ無いわよね? ディオ:もちろん。 0:ミーシャ、一瞬ホッとした様子。 ディオ:本気さ! ミーシャ:え、ええ!? ディオ:はぁ!!! 0:渾身のパンチ。壁が衝撃で吹き飛び部屋が消滅。 ミーシャ:ちょっと!信じられない!あのベッド気に入ってたのに! ディオ:また買ってやる!何の問題も無いだろ? ミーシャ:薬箱も無くなってるじゃない!どうするのよ!私、薬が無いと最近眠れないのよ!? ディオ:ははっ!ついにおかしくなったか?お前みたいな頑丈なヒーローに薬物の効果が出るわけ無いだろ! ミーシャ:実際に効かなくても効果はあるのよ!人助けばかりしてきたヒーロー様には教養が足りないのかもね!プラシーボって言うのよ!聞いた事ない!?プラシーボ効果! ディオ:それぐらい知ってるさ!君の期待に応えられず、すまないな!一般的な教養は身につけてしまってるようだ。と言うかあれは暗示によるものだろう!自分でプラシーボとか言いながら飲んで効くわけがない! ミーシャ:貴方もまだまだね!3日くらい起きてた後に薬を飲むとすぐ寝れるのよ?しっかりと効果は立証されてるわよ! ディオ:ボロを出したなあ?普通の人間は1日起きて過ごすのすら難しい。俺でも2日がパフォーマンスを保てる限度だ。3日だと?お前が寝れてるのは薬の効果じゃなく眠気だ!た・だ・の・眠気! ミーシャ:へえー!弱くなったものね!昔の貴方は1週間も寝ずに侵略者から地球を守ったっていうのに、今や2日?スーパーヒーローも潮時じゃないかしらぁ!? ディオ:おっと聞こえてなかったかあ?それとももう認知症が始まってしまったのかあ?パフォーマンスを保てる限度と言ったんだ。ただヴィランを切って捨てるくらいなら2週間は寝ずに出来るね! ミーシャ:寝言は寝て言ったらどうなの?この間の1週間の出張で帰って来た時に貴方言ってたわよね?あー眠い。もう何も出来ない……って!しかもその仕事内容って防衛設備の相談だったんでしょ?戦ってもないのに1週間で根を上げてるじゃないのよ! ディオ:俺は前線ヒーローだからな!事務仕事とかには向いて無いんだよ!戦っている方が体は楽なんだ! ミーシャ:じゃあ今日のは何?任務で疲れてるって言ってたじゃないの。 ディオ:あのな?誰でも逃げたくなるだろ!真っ暗な部屋の電気をつけたら、部屋より暗い顔で妻がいるんだぞ?心臓が止まりかけたわ! ミーシャ:最近ずっと捕まらないからでしょ!?任務の終わりを待つしか無かったの! ディオ:捕まりたく無かったんだよ!最近、君の笑った顔を全然見てない。いつも怒ってるか悲しんでる。気を回そうとしても上手くいかない。 ミーシャ:いつよ。貴方がいつ私に気を回してくれたって言うの!? ディオ:いつもだよ!俺が何かをしようとすると君はいつも言うだろ!?放っておいて!って!だから距離を置いたんだ! ミーシャ:そんなの……言ってくれないとわからない。わかるわけ無いじゃない! ディオ:うぉ! 0:ミーシャが力一杯ディオの肩を叩く。床が抜け再びキッチンへ。そこへ降りるミーシャ。 ディオ:……ふぅ。冷蔵庫が死んだな。 ミーシャ:買ってくれるんでしょ? ディオ:ああ。いっそのこと最新型に変えるよ。俺が落ちても潰れないようにタングステン製にでもするか? ミーシャ:それは名案ね…… ディオ:……ミーシャ。もう逃げないよ。全部受け止める。 ミーシャ:何よ……いきなり。 ディオ:最初からこうしておけば良かった。中途半端に気を遣うよりも全力でぶつかる方が俺たちには合ってる。 ミーシャ:そうね……何だか私もすっきりしちゃった。今思うとそんなに怒らなくて良かったような事ばっかりね。 ディオ:俺が溜め込ませたからだ。すまなかった。 ミーシャ:私も余計な気を遣わせちゃったわ。ごめんなさい。……お腹空かない? ディオ:実は少し。 ミーシャ:何か食べましょ?……でも食材は無事かしら。 ディオ:ああ、俺の下敷きになってる事を除けば無事なはずだ。 ミーシャ:私の懸念はそれだけなんだけど。 ディオ:ん?何だこれ……赤い……きのみか? ミーシャ:あーそれ?それは梅干しって言うのよ。任務で日本に行った時に知ったんだけど、すっっっごく酸っぱいの! ディオ:レモンも沢山……好きだったっけ? ミーシャ:んー最近なぜか酸っぱい物が食べたくなるのよ。いつからだったかしら。 ディオ:……まさか。 ミーシャ:どうかしたの? ディオ:これらを食べたくなったのはストレスを感じるようになったあたりか? ミーシャ:言われてみれば……そうかも。 ディオ:……行かないと。 ミーシャ:え? ディオ:今すぐ病院に行くぞ! ミーシャ:え?は?何でまた急に…… ディオ:君の中に小さなヴィランがいるかも知れないんだ! ミーシャ:そんなわけ── ディオ:いいから!ほら、捕まって! ミーシャ:わ、わかったわよ! ディオ:飛ぶぞ!離すなよ! ミーシャ:ちょ、ちょっとディオ! 0:ミーシャを背負い飛び立つディオ。 ミーシャ:もう!そんなに急ぐから家が全壊じゃない! ディオ:大丈夫だ!どうせ建て直さなきゃならないからな。もっと大きな家がいる! ミーシャ:はぁ!?ちゃんと説明しなさいよ! ディオ:お、おい!暴れるなって!あとでちゃんと説明するから! ミーシャ:……約束よ! 0:朝焼けに染まる道、歩く2人。 ミーシャ:ねぇディオ。 ディオ:ん? ミーシャ:少し飛んで帰らない? ディオ:ダメだよ。先生も言ってたじゃ無いか。適度な運動は大事って。 ミーシャ:一般人基準の話でしょ? ディオ:その一般人みたいに振り回されたのはどなたでしたっけ? ミーシャ:し、仕方ないでしょ!?初めてのことなんだし…… ディオ:まあ確かに。……まだ全然実感が湧かないな。 ミーシャ:私もよ。先輩ヒーローが言うには産まれて少し経ったくらいに急に感じるらしいわよ。 ディオ:そうか。ゆっくり待つとしよう。 ミーシャ:……この子も私たちみたいな力を持って産まれてくるのかしら。 ディオ:きっとね。 ミーシャ:振り回されないか心配だわ。 ディオ:俺たちも昔は困惑したからな。でも、この力のおかげでミーシャ。君に出会えた。 ミーシャ:ディオ…… ディオ:素敵な力だ。きっと気に入るよ。 ミーシャ:そうね。もし女の子だったら酸っぱい物が食べたくなったら夫に泣きつけって教えるわ。 ディオ:男の子だったら暗闇から妻が現れても驚くなって教えるよ。 0:2人笑い合う。 ディオ:さ、帰ろう、ミーシャ。 ミーシャ:ええ。帰りましょう、ディオ。 0:手を繋いで少し歩く。 ミーシャ:あ。 ディオ:ん?どうした? ミーシャ:どこに帰るの? ディオ:家に……あ。 ミーシャ:ホテル……取りましょうか。 ディオ:ああ……頼むよ。 0:吹き出すように笑う2人。 ミーシャ:大きな家、建てなきゃね。 ディオ:ああ。小さなヒーローが飛び回っても平気なくらいなのを建てよう。 ミーシャ:約束よ。 ディオ:ああ。約束だ。 0:fin──

0:深夜、帰宅する男。 ディオ:ただいま。 ミーシャ:おかえり。 0:電気をつけると女がテーブルに向かい1人座っている。 ディオ:っ……何だ。起きてたのか。 ミーシャ:ええ。 ディオ:……そうか。 ミーシャ:ご飯は? ディオ:食べてきたよ。 ミーシャ:そう。 ディオ:……じゃあそろそろ── ミーシャ:少し話さない? ディオ:今からか?勘弁してくれ。任務で疲れてるんだ。 ミーシャ:あら、貴方だけが任務終わりだと思ってるの? ディオ:やめてくれよ。言い争いたくない。 ミーシャ:貴方っていっつもそうよね。私と話すのが嫌みたい。 ディオ:そういう訳じゃ── 0:机を叩き立つミーシャ ミーシャ:じゃあ最後に話したのはいつ!? ディオ:毎日話してるじゃないか! ミーシャ:挨拶だけね!おはよう、いってきます、ただいま、おやすみ!今の時代スマホだってカーナビだって言えることだわ! ディオ:お前が悪いんだろう!話す時はいつも怒ってる! ミーシャ:怒らせてるのは貴方でしょう!? ディオ:俺がいつ怒らせたんだよ!お前がいつも不機嫌そうにしてる時、聞いたよな?どうした?って!それに答えないくせに後出しなんだよお前は! ミーシャ:後出しですって?どうしたもこうしたも無いわよ!私は貴方の母親じゃないの!どうして私が貴方の過ちを1つ1つ教えてあげなきゃいけないわけ!? ディオ:言われなきゃわからないだろう!いつも言葉が足りないんだよ! ミーシャ:今言おうとしたら拒否したのはどっち!?言葉をいつも聞かないのはどっちよ!! ディオ:……わかった。なら言えよ。普段から思ってる俺への恨み言を並べたらいいさ。聞いてやる。 ミーシャ:聞いてやる?どこまでも上から目線よね。やっぱりスーパーヒーロー様は私みたいな兼業ヒーローなんて目もくれないってわけなの? ディオ:俺が兼業しろって言ったかよ!お前が選んだんだろ! ミーシャ:そうね!家事もしないお金の管理もしない旦那が居たらそうするしかないもの!家の中じゃ貴方は……ヴィランよ…… ディオ:お前……なんて事を…… ミーシャ:だってそうじゃない。自分の気付かないうちに貴方は……私の心を蝕んでる。 ディオ:……お前だってそうじゃないか。 ミーシャ:え? ディオ:お前だってそうじゃないか!俺が家庭に求めるのは安らぎだ!外じゃいつでも気を張ってる!家でいる時くらい楽に過ごさせてくれてもいいだろう! ミーシャ:じゃあその分、私はずっと我慢してればいいの!?私は家政婦じゃないのよ!!大体、外で気を張るって何によ! ディオ:ヒーローは平和の象徴であらなければならない!ファンの前では常に気丈に振る舞い、突然やってくるヴィランに即座に対応しなければならないんだ!お前もわかるだろう! ミーシャ:ええそうね!私だってヒーローやってるんだから当たり前よ。疲れるのもお互い様じゃないの!? ディオ:お前は!……っ 0:そんなに働いていない。という言葉を飲み込む。 ミーシャ:……何よ。はっきり言えば良いじゃない。 ディオ:いや……何でもない。 ミーシャ:言ってよ。 ディオ:何でもないんだ。 ミーシャ:言ってってば!! ディオ:心に無い言葉だ。俺の言葉じゃない。 ミーシャ:何でよ……貴方がそう言ってくれたら、私は…… ディオ:言わせようとしてたのか?俺を挑発して…… ミーシャ:……そうよ。私は貴方とバディに戻りたいの。 ディオ:ミーシャ…… ミーシャ:久しぶりに名前を呼んでくれたわね。 ディオ:そんなこと……そうだな。久しく呼んで無かった。すまない。 ミーシャ:良いわよ。私も最近は呼んでいなかったもの。 0:ディオ、ミーシャの向かいに座る。 ディオ:……ミーシャ。少し話をしよう。 ミーシャ:ええ。最初からそう言って欲しかったわ。 0:ミーシャ再度座る。 ディオ:いつからそう思ってた? ミーシャ:そう……って? ディオ:仕事に戻りたいんだろ? ミーシャ:そうね。 ディオ:俺から上に掛け合ってみるよ。そうすればすぐにでも── ミーシャ:何も分かってくれてない。 ディオ:は? ミーシャ:貴方は私の何もわかってくれてない! ディオ:落ち着けよ。言われないと分からない。 ミーシャ:ずっとわかってたわよ……貴方の目に映る色とりどりの世界に私はいないって…… ディオ:何言って── ミーシャ:だってそうでしょう!?自分が下手に出たフリして結局、話を早く終わらせたいだけよ! ディオ:何でそうなるんだ!俺はお前のために── ミーシャ:話を聞いてやってる?そうよね!仕事してない私と違って多忙なあなたは疲れてる!そう言いたいんでしょ!? ディオ:いい加減にしろよ!俺にこれ以上、何を望むって言うんだ!? ミーシャ:…… ディオ:聞こえなかったのか? ミーシャ:聞こえてるわよ…… ディオ:こんなんじゃ話し合いにもならない…… ミーシャ:そうね。私たちは話し合いに向いていないもの。 0:ミーシャ、キッチンへ移動する。 ディオ:おい……何をする気だ? ミーシャ:ヒーローならヒーローらしく戦いで決めるべきよ。そう思わない? ディオ:よせミーシャ。俺はお前と戦いなんて── 0:フライパンでディオの頭を叩く。頭はフライパンを貫いた。 ミーシャ:まだやる気は起きない? ディオ:……だからミーシャ、俺は── 0:ミーシャは椅子を持ち上げ振り抜く、椅子は粉々に砕け散る。 ミーシャ:これでどうかしら。 ディオ:……わかった。 ミーシャ:そ。安心したわ。さあどこからでも── ディオ:俺はお前を殴らない。 0:立ち上がり距離を取るディオ。 ミーシャ:じゃあ私の独壇場よ! ディオ:攻撃しないとは言ってない! 0:ディオはオーブンレンジを叩き割った。 ミーシャ:嘘……信じらんない!貴方正気!?それいくらしたか知ってるの!? ディオ:さあいくらだろうな!生憎俺は家計の管理はしてないんでね! ミーシャ:1500ドルよ!初任給でギリギリ足りないくらいだわ! ディオ:そうなのか!俺はヒーローしかやったことがないから相場がわからなかったよ。すまないな! ミーシャ:あーそう!そうくるわけね!絶対に沈めてやる! ディオ:お、おい!ミーシャどこへ行くんだ! ミーシャ:貴方がそのつもりなら私もそうするまでよ! 0:階段を駆け上がるミーシャ ディオ:まさか……俺の部屋か! ミーシャ:私知ってるのよ?貴方が休みの日、部屋から出ずに何をしてるのか。 ディオ:わかった!わかったから早まるのはよせミーシャ! 0:扉を引きちぎる。壁の棚にはたくさんのプラモデル。 ディオ:少し待て!それ1つ作るのにどれだけ時間がかかったか……普通の人でも繊細な作業なんだ。俺みたいなスーパーパワーを持つ人間はパーツ1つ持つだけでも── ミーシャ:それにかかった時間はね……貴方が家庭をかえりみなかった時間よ! 0:息を大きく吸い込み吐き出すとプラモデルが粉々になり舞った。 ディオ:なっ……お前……やっていいことと悪いことがあるだろう!! ミーシャ:なら私を止めてみなさいよ!殴るでも蹴るでも好きにすれば良いわ!得意のスーパーパワーを使えば? ディオ:だからそれは── ミーシャ:大体ね。最初に貴方が物に当たったんじゃない。貴方に文句を言う権利は無いわ! ディオ:……そうか。そうだよな。ははっ……ははははははは!!! ミーシャ:な、何笑ってるのよ。 ディオ:なあミーシャ。俺はお金持ちだ。 ミーシャ:……は? ディオ:別に贅沢が好きってわけでも無い。給与も適当に渡してる。 ミーシャ:え!?貴方まさか金額を誤魔化してたの!? ディオ:そうじゃない。ちゃんと調べたんだ。一般企業のサラリーマンの収入を。それをそのまま渡してる。 ミーシャ:一向に給料が上がらないと思ってたのはそのせいだったのね……それで?何が言いたいわけ? ディオ:その気になればこの家ごと新品に変えれるわけさ! ミーシャ:あらそう。好きなだけ壊せって事かしら? ディオ:いや、違うな。 ミーシャ:は? ディオ:俺も存分に暴れさせてもらうぞ! 0:ディオはミーシャの部屋に視線を移す。 ミーシャ:まさか……本気じゃ無いわよね? ディオ:もちろん。 0:ミーシャ、一瞬ホッとした様子。 ディオ:本気さ! ミーシャ:え、ええ!? ディオ:はぁ!!! 0:渾身のパンチ。壁が衝撃で吹き飛び部屋が消滅。 ミーシャ:ちょっと!信じられない!あのベッド気に入ってたのに! ディオ:また買ってやる!何の問題も無いだろ? ミーシャ:薬箱も無くなってるじゃない!どうするのよ!私、薬が無いと最近眠れないのよ!? ディオ:ははっ!ついにおかしくなったか?お前みたいな頑丈なヒーローに薬物の効果が出るわけ無いだろ! ミーシャ:実際に効かなくても効果はあるのよ!人助けばかりしてきたヒーロー様には教養が足りないのかもね!プラシーボって言うのよ!聞いた事ない!?プラシーボ効果! ディオ:それぐらい知ってるさ!君の期待に応えられず、すまないな!一般的な教養は身につけてしまってるようだ。と言うかあれは暗示によるものだろう!自分でプラシーボとか言いながら飲んで効くわけがない! ミーシャ:貴方もまだまだね!3日くらい起きてた後に薬を飲むとすぐ寝れるのよ?しっかりと効果は立証されてるわよ! ディオ:ボロを出したなあ?普通の人間は1日起きて過ごすのすら難しい。俺でも2日がパフォーマンスを保てる限度だ。3日だと?お前が寝れてるのは薬の効果じゃなく眠気だ!た・だ・の・眠気! ミーシャ:へえー!弱くなったものね!昔の貴方は1週間も寝ずに侵略者から地球を守ったっていうのに、今や2日?スーパーヒーローも潮時じゃないかしらぁ!? ディオ:おっと聞こえてなかったかあ?それとももう認知症が始まってしまったのかあ?パフォーマンスを保てる限度と言ったんだ。ただヴィランを切って捨てるくらいなら2週間は寝ずに出来るね! ミーシャ:寝言は寝て言ったらどうなの?この間の1週間の出張で帰って来た時に貴方言ってたわよね?あー眠い。もう何も出来ない……って!しかもその仕事内容って防衛設備の相談だったんでしょ?戦ってもないのに1週間で根を上げてるじゃないのよ! ディオ:俺は前線ヒーローだからな!事務仕事とかには向いて無いんだよ!戦っている方が体は楽なんだ! ミーシャ:じゃあ今日のは何?任務で疲れてるって言ってたじゃないの。 ディオ:あのな?誰でも逃げたくなるだろ!真っ暗な部屋の電気をつけたら、部屋より暗い顔で妻がいるんだぞ?心臓が止まりかけたわ! ミーシャ:最近ずっと捕まらないからでしょ!?任務の終わりを待つしか無かったの! ディオ:捕まりたく無かったんだよ!最近、君の笑った顔を全然見てない。いつも怒ってるか悲しんでる。気を回そうとしても上手くいかない。 ミーシャ:いつよ。貴方がいつ私に気を回してくれたって言うの!? ディオ:いつもだよ!俺が何かをしようとすると君はいつも言うだろ!?放っておいて!って!だから距離を置いたんだ! ミーシャ:そんなの……言ってくれないとわからない。わかるわけ無いじゃない! ディオ:うぉ! 0:ミーシャが力一杯ディオの肩を叩く。床が抜け再びキッチンへ。そこへ降りるミーシャ。 ディオ:……ふぅ。冷蔵庫が死んだな。 ミーシャ:買ってくれるんでしょ? ディオ:ああ。いっそのこと最新型に変えるよ。俺が落ちても潰れないようにタングステン製にでもするか? ミーシャ:それは名案ね…… ディオ:……ミーシャ。もう逃げないよ。全部受け止める。 ミーシャ:何よ……いきなり。 ディオ:最初からこうしておけば良かった。中途半端に気を遣うよりも全力でぶつかる方が俺たちには合ってる。 ミーシャ:そうね……何だか私もすっきりしちゃった。今思うとそんなに怒らなくて良かったような事ばっかりね。 ディオ:俺が溜め込ませたからだ。すまなかった。 ミーシャ:私も余計な気を遣わせちゃったわ。ごめんなさい。……お腹空かない? ディオ:実は少し。 ミーシャ:何か食べましょ?……でも食材は無事かしら。 ディオ:ああ、俺の下敷きになってる事を除けば無事なはずだ。 ミーシャ:私の懸念はそれだけなんだけど。 ディオ:ん?何だこれ……赤い……きのみか? ミーシャ:あーそれ?それは梅干しって言うのよ。任務で日本に行った時に知ったんだけど、すっっっごく酸っぱいの! ディオ:レモンも沢山……好きだったっけ? ミーシャ:んー最近なぜか酸っぱい物が食べたくなるのよ。いつからだったかしら。 ディオ:……まさか。 ミーシャ:どうかしたの? ディオ:これらを食べたくなったのはストレスを感じるようになったあたりか? ミーシャ:言われてみれば……そうかも。 ディオ:……行かないと。 ミーシャ:え? ディオ:今すぐ病院に行くぞ! ミーシャ:え?は?何でまた急に…… ディオ:君の中に小さなヴィランがいるかも知れないんだ! ミーシャ:そんなわけ── ディオ:いいから!ほら、捕まって! ミーシャ:わ、わかったわよ! ディオ:飛ぶぞ!離すなよ! ミーシャ:ちょ、ちょっとディオ! 0:ミーシャを背負い飛び立つディオ。 ミーシャ:もう!そんなに急ぐから家が全壊じゃない! ディオ:大丈夫だ!どうせ建て直さなきゃならないからな。もっと大きな家がいる! ミーシャ:はぁ!?ちゃんと説明しなさいよ! ディオ:お、おい!暴れるなって!あとでちゃんと説明するから! ミーシャ:……約束よ! 0:朝焼けに染まる道、歩く2人。 ミーシャ:ねぇディオ。 ディオ:ん? ミーシャ:少し飛んで帰らない? ディオ:ダメだよ。先生も言ってたじゃ無いか。適度な運動は大事って。 ミーシャ:一般人基準の話でしょ? ディオ:その一般人みたいに振り回されたのはどなたでしたっけ? ミーシャ:し、仕方ないでしょ!?初めてのことなんだし…… ディオ:まあ確かに。……まだ全然実感が湧かないな。 ミーシャ:私もよ。先輩ヒーローが言うには産まれて少し経ったくらいに急に感じるらしいわよ。 ディオ:そうか。ゆっくり待つとしよう。 ミーシャ:……この子も私たちみたいな力を持って産まれてくるのかしら。 ディオ:きっとね。 ミーシャ:振り回されないか心配だわ。 ディオ:俺たちも昔は困惑したからな。でも、この力のおかげでミーシャ。君に出会えた。 ミーシャ:ディオ…… ディオ:素敵な力だ。きっと気に入るよ。 ミーシャ:そうね。もし女の子だったら酸っぱい物が食べたくなったら夫に泣きつけって教えるわ。 ディオ:男の子だったら暗闇から妻が現れても驚くなって教えるよ。 0:2人笑い合う。 ディオ:さ、帰ろう、ミーシャ。 ミーシャ:ええ。帰りましょう、ディオ。 0:手を繋いで少し歩く。 ミーシャ:あ。 ディオ:ん?どうした? ミーシャ:どこに帰るの? ディオ:家に……あ。 ミーシャ:ホテル……取りましょうか。 ディオ:ああ……頼むよ。 0:吹き出すように笑う2人。 ミーシャ:大きな家、建てなきゃね。 ディオ:ああ。小さなヒーローが飛び回っても平気なくらいなのを建てよう。 ミーシャ:約束よ。 ディオ:ああ。約束だ。 0:fin──