台本概要
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タイトル | 漫画家と弁護士 |
---|---|
作者名 | 葵琥珀 (@atelierASINOURA) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
利用方法に関してはあんまり細かい事を言いたくないので、 「常識の範囲でご自由にご利用下さい」 とだけ。 【あらすじ】 漫画家を志す七瀬星夜は、弁護士の松本翔平に見初められて同棲している。 日々家事とアルバイトをこなしながら漫画を描いては賞に応募していた星夜だったが、 受賞する事は無かった。 ある日、出版社に原稿の持ち込みをした星夜だったが……。 〇数字は柱書きです。 昔、ボイコネに投稿していた漫画家と弁護士の物語です。 今になって読むと何の台本なのかよく解らないですね。 それでも、純粋に書くことを楽しんでいた昔の自分に出会えました。 135 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
星夜 | 男 | 104 | 七瀬 星夜 ななせ せいや 23歳 身長168㎝ 体重60㎏ 誕生日 12月3日 大学卒業後、アルバイトをしながら漫画家を目指していたところ、 当時司法修習生だった松本翔平と出会い翔平宅に転がり込んだ。 翔平に支えて貰いながら日々漫画家を目指して活動しているが、 漫画家としての仕事はなく要するに翔平のヒモ。 翔平の前では明るく振る舞っているが、自分に自信がもてず些細な事で傷つく。 |
翔平 | 男 | 105 | 松本 翔平 まつもと しょうへい 25歳 身長185㎝ 体重70㎏ 誕生日 8月5日 超一流大学の法学部在学中に司法試験に合格する秀才。 大学卒業後、司法修習中に星夜と出会い一目惚れし、以降星夜と同棲している。 今は某大手事務所で弁護士をしている。 非常に真面目な性格だが、ムッツリスケベで変態チックなプレイが好き。 星夜の事をよく理解していて、時々「愛の鞭」と言わんばかりに厳しく接する。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
①:二人の自宅
①:夜、翔平が帰宅する時間。
①:星夜が黙々と漫画の原稿を描いていると、玄関扉が開き翔平が帰ってきた。
翔平:ただいま
星夜:あっ!
星夜:翔くんお帰りなさい!
0:星夜、翔平から鞄を受け取る。
翔平:いつもお出迎えありがとう。
翔平:今日もクタクタだよ
星夜:お疲れ様でした!
星夜:また寝る前に沢山マッサージしてあげるね
翔平:いつも悪いね
星夜:だって、翔くんにはお金の事とか沢山助けてもらっているから
星夜:これくらいの事はしないと……
翔平:ありがとう。
翔平:星夜だって、お掃除してくれたり、色々助かっているよ
星夜:それならよかった!
翔平:それに星夜のマッサージはとっても気持ちいいから、
翔平:毎日元気になるんだ
星夜:じゃあ、今日もたっぷり足ツボマッサージするね!
翔平:よろしくね。
翔平:でも、たまには足の裏だけじゃなくて、
翔平:肩とか腰もお願いしていいかな?
星夜:もちろんです!
星夜:全身隈無くマッサージします!
0:二人はリビングへと移動する。
0:翔平、リビングの机上にある漫画の原稿を手に取る。
翔平:今日も漫画を描いていたんだね
星夜:うん!
星夜:次の新人賞に応募しようと思ってて、それ用の作品だよ
翔平:そっか!
翔平:星夜は頑張り屋さんだね
0:翔平、原稿をパラパラと捲り漫画を読む。
翔平:うん! いいね!
翔平:絵もとっても綺麗だし、ストーリーも解りやすい!
翔平:でも――
星夜:(翔平の「でも」に被る様に)
星夜:本当! ありがとう!
星夜:へへん! 今回の漫画は自信があるんだ!
星夜:過去の受賞作品を沢山読んで賞のことをしっかりと研究したからね!
星夜:その上で練りに練った作品だから、大賞間違い無しだよ!
翔平:……そっか、星夜は勉強熱心だからね。
翔平:いつか必ず、星夜の大切な夢が叶う日が来ると思うよ
星夜:翔くん、ありがとう!
星夜:僕、絶対に頑張るからね!
翔平:うん、頑張ってね。
翔平:僕も明日提出する裁判資料を作らないといけないから、
翔平:頑張り屋さんの星夜の隣で仕事していいかな?
星夜:うん!
星夜:えへへ、翔くんの隣で漫画を描けて幸せ!
翔平:僕も可愛い星夜の隣にいれて幸せだよ
②:二人の自宅
②:数ヶ月後、星夜が応募した賞の結果発表の日。
②:星夜は応募した結果を確認する為に出版社のホームページを閲覧していた。
星夜:翔くん……。
星夜:今、ホームページを見たんだけれど結果が出ているよ
翔平:そっか。……結果はどうかな?
星夜:うーんと、ちょっと待ってね
0:星夜、ページ閲覧の為にマウスをカチカチとクリックする。
星夜:あっ……(落選して肩を落とす)
翔平:(星夜の態度に結果を察する)
翔平:お疲れ様
星夜:……
翔平:……今日はゆっくり休憩しようね
翔平:翔平、星夜を抱き締める。
星夜:ごめんなさい
翔平:ん?
翔平:何に対して"ごめんなさい"って謝っているの?
星夜:……賞がとれなくてごめんなさい
翔平:それは残念だけれど、僕に謝る事じゃないよ
星夜:……うん
翔平:……漫画家は諦める?
星夜:……漫画家になりたい
翔平:うん。星夜なら次は大丈夫だよ
星夜:ありがとう。
星夜:しばらく応募できる賞がないから、
星夜:今度は出版社に持ち込んでみるよ
翔平:おっ!
翔平:持ち込みなんて漫画家志望って感じでいいね!
星夜:ありがとう!
星夜:よーし!
星夜:そうと決まれば出版社が発行している漫画雑誌を読んで研究するよ
翔平:それは大切な事だね。でもそれは星夜が――
星夜:(翔平の「星夜が」に被る様に)
星夜:よーし!
星夜:そうと決まれば早速準備にとりかかるぞ!
翔平:……頑張ってね。
翔平:星夜が納得出来る作品が描けるように応援しているからね
③:二人の自宅
③:数週間後、
③:出版社に持ち込む漫画の原稿を描き上げた星夜は、
③:担当者にアポイントントを取り付けた。
③:持ち込み当日の夜。
翔平:ただいま。
翔平:(星夜の返事を待つ間)
翔平:……あれ? 返事が無いし部屋も暗い。
翔平:そういえば星夜、今日は出版社に漫画を持ち込むって言っていたから
翔平:もしかしてまだ帰ってきてないのかな?
0:翔平、リビングへと向かい暗い部屋の電気をつける。
0:明るくなった部屋には、机に突っ伏した星夜がいた。
翔平:うわっ、びっくりした。
翔平:星夜、いたのか?
星夜:……翔くん
翔平:どうしたの?
翔平:電気もつけないで……
星夜:……なんでもない。大丈夫だから。
星夜:……夜ご飯の準備をするね
0:星夜、立ち上がりキッチンに向かおうとする。
翔平:……なんでもなくって、大丈夫なんだね
星夜:……うん
翔平:そっか
星夜:……あっ
翔平:ん?
星夜:いや、……何でも無い
翔平:ふふふ
0:翔平、星夜を背中から優しく抱き締める。
星夜:え?
翔平:星夜の"大丈夫"は、いつも大丈夫じゃないでしょ?
星夜:うっ
翔平:……漫画家の道は険しくて、甘えが許されないのは解る。
翔平:けれど
0:翔平、星夜を抱き締める力を強める。
翔平:僕には甘えていいんだよ
星夜:でも……
翔平:でも?
星夜:迷惑じゃないかな?
翔平:迷惑じゃ無いよ。
翔平:仮に迷惑だったとしても、星夜は僕の恋人なんだから
0:翔平、星夜を一度離して正面から抱き締める。
星夜:わっ!
翔平:僕には沢山甘えていいんだよ
星夜:う……、ううう……(泣く)
翔平:遠慮なく泣いていいんだよ
星夜:(泣きながら)
星夜:僕、今まで沢山勉強して、下手なりに必死で練習して、
星夜:少しずつ上手くなっていったんだけれど……
翔平:うん
星夜:(泣きながら)
星夜:……今日、君には才能がないってハッキリと言われちゃった
翔平:……そっか
星夜:翔くん、今まで応援してくれたのにごめんね。
星夜:もう、僕疲れちゃった
翔平:……疲れたんだね
星夜:……だから、もう、諦めるよ
翔平:解ったよ。
翔平:……とりあえず夕食にしよう。
翔平:お腹も空いているでしょう?
星夜:……うん
翔平:今後どうするかは、沢山食べて、ゆっくり寝て、
翔平:星夜が元気になってから一緒に考えよう
星夜:……うん
0:翔平、星夜を離してキッチンに向かおうとする。
星夜:(独り言の様にぽつりと)
星夜:……足手まといだよね、僕
翔平:え?
星夜:翔くんはいいよね。
星夜:苦労もせずに司法試験に受かって、
星夜:弁護士になるって夢を叶えているのに……
星夜:僕は未だにスタートラインにも立てていない。
星夜:その上、才能がないってハッキリと言われた
翔平:星夜?
翔平:突然何を言っているんだ?
星夜:翔くんには僕の気持ちなんて解らないよ
翔平:そんな事ないよ。
翔平:星夜の気持ちはよく解るよ
星夜:……そんな訳無いよ。
星夜:僕みたいななんの取り柄も無い人間と違って、
星夜:翔くんは超一流大学の在学中に司法試験に受かるくらい優秀なんだから
翔平:(笑いながら)
翔平:星夜、疲れているんだね。今日はゆっくり休もうね。
翔平:夕食は僕が作るからゆっくり座っててよ
0:翔平、椅子を引き星夜を座らせようとする。
星夜:翔くんは優しいから僕の事を大切にしてくれているけれど、
星夜:本当は僕なんかいらないって思っているんでしょ?
翔平:星夜。今日はどうしたんだ?
翔平:そんな訳ないじゃないか。僕は星夜の事が――
星夜:(「星夜の事が」に被せて大声で)
星夜:嘘だ!
翔平:っ!
翔平:何だよ、大きな声を出して……
星夜:僕なんか誰にも必要とされていない!
星夜:僕なんか……
星夜:僕なんか死んじゃえばいいんだ!
翔平:星夜!
0:翔平、星夜の頬を平手打ちする。
星夜:痛っ
翔平:……そうか
0:翔平、怒りに満ちた表情で星夜に近づく。
星夜:し……翔くん?
0:星夜、恐怖に満ちた表情で逃げようとする。
翔平:どうしたの?
翔平:逃げなくていいでしょ?
星夜:いや……
星夜:だって……怒っている……
翔平:怒ってないよ。
翔平:ただ、星夜の願いを叶えてあげようかな?
翔平:って思っただけだから
星夜:え?
星夜:願い? 叶える?
0:翔平、星夜を捕まえて床に押し倒す。
0:ゆっくりと星夜の首を締める。
星夜:なっ?
星夜:し……翔……くん
翔平:僕なんか死んじゃえばいいんでしょ?
翔平:星夜が死んで欲しいと思う人は、僕が殺してあげるよ
0:翔平、星夜の首を絞める手を強める。
星夜:ぐあっ……や……やめて……よ……
翔平:やめないよ。
翔平:そんな言葉を口にするって事は
翔平:星夜も死にたかったんでしょ?
翔平:よかったね、星夜の願いが叶って
星夜:い……いや……ちが……う……
星夜:や……やめて……ください……
翔平:それに僕は何の苦労もせずに
翔平:司法試験に受かったから、
翔平:星夜の気持ちは解らないんでしょ?
星夜:あ……あの……
星夜:ごめん……なさい……
翔平:謝るのは僕の方だよ。
翔平:ごめんね、星夜の気持ちもわからない彼氏で。
翔平:お詫びに、星夜の最期の願いはこの手で叶えてあげるからね
星夜:い……いや……
星夜:いやだ……
星夜:し……死にたく……ない……
0:翔平、星夜の「死にたくない」を聞いて首から手を離す。
星夜:(大声で)死にたくない!
星夜:はぁ…はぁ…(肩で息をする)
翔平:……死にたくないなら、そんな事言わないでよ
翔平:僕も悲しくなる
星夜:……ごめんなさい
0:翔平、星夜の顔のすぐ横の床をドンと1回殴る。
翔平:謝る暇があるなら、今すぐ漫画描いて
星夜:え?
星夜:今はそんなキモチじゃあ……
翔平:僕だってそんなキモチじゃない日にも、
翔平:法律の専門書を読んで勉強したから司法試験に受かったんだ。
翔平:それを苦労じゃ無いって言ったのは星夜だよ
0:翔平、星夜の首根っこを掴んで星夜を椅子に座らせる。
星夜:うわぁ
翔平:さあ、今すぐ描いて僕に見せてね。
翔平:描き終わるまで、睡眠も休憩も食事もトイレも禁止
星夜:と……トイレも?
翔平:はいはい。
翔平:早く手を動かして完成させないと、
翔平:いい歳してお漏らしする事になるよ?
星夜:ううう……厳しいなぁ……
星夜:もっと優しくして欲しい
0:翔平、机をバンと1度叩く。
翔平:甘やかすだけが優しさじゃないからね
星夜:は……はい……
④:二人の自宅
④:翌朝。
④:星夜は徹夜で描いた漫画を翔平に見せる。
翔平:うん。
翔平:この短い時間でよく描けたね
星夜:お……お褒め頂き、ありがとうございます
0:星夜、翔平の顔色をチラチラと伺う。
翔平:(星夜の意図に気付いているので笑いながら)
翔平:どうしたの?
星夜:……翔くんに酷い事を言ったり、
星夜:死にたいとか言ってごめんなさい
翔平:解ればよろしい
星夜:……怒ってる?
翔平:もう怒ってないよ。ホラ
0:翔平、星夜を抱き締める。
星夜:わぁっ、ありがとう。
星夜:えへへ、翔くん暖かい
翔平:星夜。
翔平:落ち着いたところで思い出して欲しいことがあるんだ
星夜:え?
翔平:漫画雑誌の編集者に言われた言葉って
翔平:才能が無いだけ?
翔平:その前後に何も言われていない?
星夜:え?
星夜:えーっと?
翔平:そこだけでは思い出しにくかったら、
翔平:当日の事を最初から話してくれるかい?
星夜:うん……
星夜:えっと、まず出版社に行って応接ブースで待たされたんだ
翔平:うんうん
星夜:そして担当者の人が来て、原稿を渡して読んでもらったの
翔平:うんうん
星夜:5分くらいだったかな?
星夜:その人は原稿を机にパッと投げ捨てて
星夜:絵は綺麗だけれど、ストーリーが全然面白くないって言われた
翔平:それから?
星夜:えーっと
星夜:……"今の君にはストーリーを作る才能がないと思う"
星夜:って……言われた
翔平:……星夜も自分で言ってて気がついたみたいだけれど、
翔平:漫画を描く才能が無いとは言われていないよね?
星夜:う……うん……
翔平:そうか……ストーリーを作る才能か……
0:翔平、星夜の肩を優しく揉む。
星夜:(くすぐったそうにしながら)
星夜:え?
星夜:急に肩なんか揉んでどうしたの?
星夜:くすぐったいよ~
翔平:もっと早く言うべきだったかな?
翔平:僕も星夜の漫画は少し前から面白くないって感じていたんだ
星夜:え?
翔平:絵は日ごとに上手くなっているのはよく解るし、
翔平:賞を取る為に毎晩遅くまで研究していたから、
翔平:素人の僕が口を出さない方がいいかな? って思っていたけれど
翔平:星夜の漫画、すごく変な力が入っている様にずっと感じていた
星夜:そっか。翔くんもそんな風に感じていたんだ
翔平:うん。
翔平:この際だからハッキリ言うけれど、
翔平:星夜は本当に自分が描きたい漫画を描いているの?
翔平:って気持ちになったんだ
星夜:僕が描きたい漫画か……
翔平:もちろん、仕事で描きたくない内容の漫画を描く事もあるだろうし、
翔平:兎に角デビューするために賞を狙うことも大事だと思う。
翔平:でも、ここ最近の星夜が描いた漫画は、
翔平:そういう気持ちばっかりが前面に出ていて、
翔平:星夜らしさが全く感じられないんだ
星夜:僕らしさ?
翔平:以前の漫画は、絵は下手だったけれど
翔平:星夜が描きたい世界観がよく表れていた。
翔平:今は、"こんな感じの内容にしたら賞をとれるでしょう?"
翔平:みたいな気持ちが漫画から読み取れて、
翔平:内容が凄く薄っぺらく感じるんだ。
翔平:だから、読んでいて面白さを感じなかった
星夜:そっか……
星夜:でも、そうかも……
星夜:僕の考えるストーリーなんて誰かの下位交換か劣化版としか思えなくなって
星夜:自分を信じられなくなっていたのかも
翔平:例え下位交換でも、劣化版でも、
翔平:星夜には星夜しか描けない世界を
翔平:他ならぬ僕が描いて欲しいんだよ
星夜:そっか……
翔平:星夜、もし駄目でも僕が支えるから
翔平:星夜は自分の描きたい世界を描いてみてよ。
翔平:星夜の漫画家になりたいって気持ちは、
翔平:金とか名誉とかが目的じゃ無くて、
翔平:星夜の思い描いた世界を表現する為じゃないの?
星夜:うーん。
星夜:確かにお金もある程度稼ぎたいし、
星夜:有名な漫画家になりたいって気持ちもあるけれど……
星夜:僕はいつの間にかそっちばっかりを追求していて、
星夜:それが目的になっていたのかもしれない。
星夜:翔くんの言う通りだよ。
星夜:僕が漫画家になりたい理由は、
星夜:自分の世界を表現したいからだった!
翔平:星夜、応援しているからね。
翔平:世間がどんな評価をしても、僕は星夜のファンだからね。
星夜:ありがとう! よーし!
星夜:そうと決まれば描くぞー!
翔平:はははっ、星夜は元気だな!
翔平:そういう明るい星夜も僕は大好きだよ
星夜:こうなったら賞への応募も持ち込みもガンガンやって、
星夜:僕の描きたい世界を絶対に認めさせてやるぞ!
翔平:おっ!
翔平:星夜が不撓不屈モードになった。
翔平:頼もしいな!
④:二人の自宅
④:数ヶ月後。
④:星夜はまた賞に応募し、その結果発表の日を迎えた。
星夜:うーんと……
0:星夜、漫画雑誌のページをめくり発表のページを探す。
翔平:どうかな?
星夜:えーっと……、
星夜:あっ、……僕の名前があった!
翔平:すごいじゃないか!
星夜:努力賞って感じだけれど
翔平:努力賞?
星夜:うーん。
星夜:補欠合格みたいな感じって言った方が伝わるかな?
翔平:それでも受賞でしょ?
翔平:それは星夜が描きたい世界が一定の評価を受けた証拠じゃないか!
星夜:そ……そうだね!
翔平:そうだよ!
翔平:不満ならばここから上を目指したらいいんだよ。
翔平:星夜だってまだまだやる気でしょ?
星夜:ま……まあ、
星夜:このままここで終わる気は無いけれど……
翔平:兎に角、今日はお祝いだね!
翔平:賞金も出るんでしょ?
星夜:賞金って、ほんの少しだよ
翔平:ほんの少しでもいいんだよ。
翔平:星夜も漫画で稼いで偉いぞー!
0:翔平、星夜を抱き締める。
0:その時、星夜のスマホが鳴る。
星夜:あっ、電話だ
翔平:誰から?
星夜:えっと……
星夜:知らない番号だ
星夜:……とりあえず出てみるね
翔平:うん
星夜:もしもし?
星夜:……はい、……そうですけれど
星夜:あっ、はい!見ました!
星夜:……はい、……はい、え?
星夜:本当ですか?
星夜:はい! わかりました! 宜しくお願い致します!
0:星夜、電話を切り翔平に抱きつく。
翔平:その様子だといい知らせの様だね
星夜:うん!
星夜:僕の漫画が雑誌に掲載されるって!
星夜:読者アンケートとかの結果によっては連載の道もあるって!
翔平:すごいじゃないか!
星夜:えへへ、ありがとう
翔平:流石星夜だよ!
0:星夜、抱きついていた翔平から離れて翔平の目をじっと見つめる。
星夜:翔くん。これでようやく僕もスタートラインに立てました
翔平:うん?
星夜:僕の親も、友達も、誰も僕を応援してくれなかった。
星夜:漫画家になるなんて無理だって切り捨てられた。
星夜:馬鹿じゃ無いかって笑いものにされた。
星夜:ネットに漫画を投稿したら、"下手糞死ね"ってコメントされた。
星夜:そんな事があったから、いつからか僕は夢を口にしなくなった
翔平:うん
星夜:でも、翔くんは違った。
星夜:本気で僕の夢を応援してくれた。
星夜:馬鹿にせず、真剣に向き合ってくれた。
星夜:本当にありがとう
翔平:……いいんだよ。
翔平:僕も星夜に受け入れてもらえて嬉しいから!
翔平:これからも沢山甘えてね!
星夜:うん!
星夜:翔くん大好き!
翔平:僕も星夜が大好きだよ
星夜:えへへ
星夜:……あっそうだ!
翔平:ん? どうしたの?
星夜:翔くん。
星夜:これから契約とか色々手続きが必要になるんだ。
星夜:だから……、その……、
星夜:僕の顧問弁護士になってもらえませんか?
翔平:顧問弁護士?
翔平:ふふふ、僕の顧問料は高いけれど大丈夫?
星夜:え?
星夜:恋人の僕からお金取るの?
翔平:当たり前じゃないか!
星夜:ううう、顧問料払えるくらい原稿料とか印税もらえるかな?
翔平:大丈夫。星夜だけは特別に
翔平:オカラダでのお支払いも認めますから
0:翔平、星夜の服をゆっくりと脱がそうとする
星夜:え? え?
翔平:さて、久しぶりに星夜の柔肌を楽しませてもらいますか!
星夜:ええー!
翔平:星夜、大好きだよ
①:二人の自宅
①:夜、翔平が帰宅する時間。
①:星夜が黙々と漫画の原稿を描いていると、玄関扉が開き翔平が帰ってきた。
翔平:ただいま
星夜:あっ!
星夜:翔くんお帰りなさい!
0:星夜、翔平から鞄を受け取る。
翔平:いつもお出迎えありがとう。
翔平:今日もクタクタだよ
星夜:お疲れ様でした!
星夜:また寝る前に沢山マッサージしてあげるね
翔平:いつも悪いね
星夜:だって、翔くんにはお金の事とか沢山助けてもらっているから
星夜:これくらいの事はしないと……
翔平:ありがとう。
翔平:星夜だって、お掃除してくれたり、色々助かっているよ
星夜:それならよかった!
翔平:それに星夜のマッサージはとっても気持ちいいから、
翔平:毎日元気になるんだ
星夜:じゃあ、今日もたっぷり足ツボマッサージするね!
翔平:よろしくね。
翔平:でも、たまには足の裏だけじゃなくて、
翔平:肩とか腰もお願いしていいかな?
星夜:もちろんです!
星夜:全身隈無くマッサージします!
0:二人はリビングへと移動する。
0:翔平、リビングの机上にある漫画の原稿を手に取る。
翔平:今日も漫画を描いていたんだね
星夜:うん!
星夜:次の新人賞に応募しようと思ってて、それ用の作品だよ
翔平:そっか!
翔平:星夜は頑張り屋さんだね
0:翔平、原稿をパラパラと捲り漫画を読む。
翔平:うん! いいね!
翔平:絵もとっても綺麗だし、ストーリーも解りやすい!
翔平:でも――
星夜:(翔平の「でも」に被る様に)
星夜:本当! ありがとう!
星夜:へへん! 今回の漫画は自信があるんだ!
星夜:過去の受賞作品を沢山読んで賞のことをしっかりと研究したからね!
星夜:その上で練りに練った作品だから、大賞間違い無しだよ!
翔平:……そっか、星夜は勉強熱心だからね。
翔平:いつか必ず、星夜の大切な夢が叶う日が来ると思うよ
星夜:翔くん、ありがとう!
星夜:僕、絶対に頑張るからね!
翔平:うん、頑張ってね。
翔平:僕も明日提出する裁判資料を作らないといけないから、
翔平:頑張り屋さんの星夜の隣で仕事していいかな?
星夜:うん!
星夜:えへへ、翔くんの隣で漫画を描けて幸せ!
翔平:僕も可愛い星夜の隣にいれて幸せだよ
②:二人の自宅
②:数ヶ月後、星夜が応募した賞の結果発表の日。
②:星夜は応募した結果を確認する為に出版社のホームページを閲覧していた。
星夜:翔くん……。
星夜:今、ホームページを見たんだけれど結果が出ているよ
翔平:そっか。……結果はどうかな?
星夜:うーんと、ちょっと待ってね
0:星夜、ページ閲覧の為にマウスをカチカチとクリックする。
星夜:あっ……(落選して肩を落とす)
翔平:(星夜の態度に結果を察する)
翔平:お疲れ様
星夜:……
翔平:……今日はゆっくり休憩しようね
翔平:翔平、星夜を抱き締める。
星夜:ごめんなさい
翔平:ん?
翔平:何に対して"ごめんなさい"って謝っているの?
星夜:……賞がとれなくてごめんなさい
翔平:それは残念だけれど、僕に謝る事じゃないよ
星夜:……うん
翔平:……漫画家は諦める?
星夜:……漫画家になりたい
翔平:うん。星夜なら次は大丈夫だよ
星夜:ありがとう。
星夜:しばらく応募できる賞がないから、
星夜:今度は出版社に持ち込んでみるよ
翔平:おっ!
翔平:持ち込みなんて漫画家志望って感じでいいね!
星夜:ありがとう!
星夜:よーし!
星夜:そうと決まれば出版社が発行している漫画雑誌を読んで研究するよ
翔平:それは大切な事だね。でもそれは星夜が――
星夜:(翔平の「星夜が」に被る様に)
星夜:よーし!
星夜:そうと決まれば早速準備にとりかかるぞ!
翔平:……頑張ってね。
翔平:星夜が納得出来る作品が描けるように応援しているからね
③:二人の自宅
③:数週間後、
③:出版社に持ち込む漫画の原稿を描き上げた星夜は、
③:担当者にアポイントントを取り付けた。
③:持ち込み当日の夜。
翔平:ただいま。
翔平:(星夜の返事を待つ間)
翔平:……あれ? 返事が無いし部屋も暗い。
翔平:そういえば星夜、今日は出版社に漫画を持ち込むって言っていたから
翔平:もしかしてまだ帰ってきてないのかな?
0:翔平、リビングへと向かい暗い部屋の電気をつける。
0:明るくなった部屋には、机に突っ伏した星夜がいた。
翔平:うわっ、びっくりした。
翔平:星夜、いたのか?
星夜:……翔くん
翔平:どうしたの?
翔平:電気もつけないで……
星夜:……なんでもない。大丈夫だから。
星夜:……夜ご飯の準備をするね
0:星夜、立ち上がりキッチンに向かおうとする。
翔平:……なんでもなくって、大丈夫なんだね
星夜:……うん
翔平:そっか
星夜:……あっ
翔平:ん?
星夜:いや、……何でも無い
翔平:ふふふ
0:翔平、星夜を背中から優しく抱き締める。
星夜:え?
翔平:星夜の"大丈夫"は、いつも大丈夫じゃないでしょ?
星夜:うっ
翔平:……漫画家の道は険しくて、甘えが許されないのは解る。
翔平:けれど
0:翔平、星夜を抱き締める力を強める。
翔平:僕には甘えていいんだよ
星夜:でも……
翔平:でも?
星夜:迷惑じゃないかな?
翔平:迷惑じゃ無いよ。
翔平:仮に迷惑だったとしても、星夜は僕の恋人なんだから
0:翔平、星夜を一度離して正面から抱き締める。
星夜:わっ!
翔平:僕には沢山甘えていいんだよ
星夜:う……、ううう……(泣く)
翔平:遠慮なく泣いていいんだよ
星夜:(泣きながら)
星夜:僕、今まで沢山勉強して、下手なりに必死で練習して、
星夜:少しずつ上手くなっていったんだけれど……
翔平:うん
星夜:(泣きながら)
星夜:……今日、君には才能がないってハッキリと言われちゃった
翔平:……そっか
星夜:翔くん、今まで応援してくれたのにごめんね。
星夜:もう、僕疲れちゃった
翔平:……疲れたんだね
星夜:……だから、もう、諦めるよ
翔平:解ったよ。
翔平:……とりあえず夕食にしよう。
翔平:お腹も空いているでしょう?
星夜:……うん
翔平:今後どうするかは、沢山食べて、ゆっくり寝て、
翔平:星夜が元気になってから一緒に考えよう
星夜:……うん
0:翔平、星夜を離してキッチンに向かおうとする。
星夜:(独り言の様にぽつりと)
星夜:……足手まといだよね、僕
翔平:え?
星夜:翔くんはいいよね。
星夜:苦労もせずに司法試験に受かって、
星夜:弁護士になるって夢を叶えているのに……
星夜:僕は未だにスタートラインにも立てていない。
星夜:その上、才能がないってハッキリと言われた
翔平:星夜?
翔平:突然何を言っているんだ?
星夜:翔くんには僕の気持ちなんて解らないよ
翔平:そんな事ないよ。
翔平:星夜の気持ちはよく解るよ
星夜:……そんな訳無いよ。
星夜:僕みたいななんの取り柄も無い人間と違って、
星夜:翔くんは超一流大学の在学中に司法試験に受かるくらい優秀なんだから
翔平:(笑いながら)
翔平:星夜、疲れているんだね。今日はゆっくり休もうね。
翔平:夕食は僕が作るからゆっくり座っててよ
0:翔平、椅子を引き星夜を座らせようとする。
星夜:翔くんは優しいから僕の事を大切にしてくれているけれど、
星夜:本当は僕なんかいらないって思っているんでしょ?
翔平:星夜。今日はどうしたんだ?
翔平:そんな訳ないじゃないか。僕は星夜の事が――
星夜:(「星夜の事が」に被せて大声で)
星夜:嘘だ!
翔平:っ!
翔平:何だよ、大きな声を出して……
星夜:僕なんか誰にも必要とされていない!
星夜:僕なんか……
星夜:僕なんか死んじゃえばいいんだ!
翔平:星夜!
0:翔平、星夜の頬を平手打ちする。
星夜:痛っ
翔平:……そうか
0:翔平、怒りに満ちた表情で星夜に近づく。
星夜:し……翔くん?
0:星夜、恐怖に満ちた表情で逃げようとする。
翔平:どうしたの?
翔平:逃げなくていいでしょ?
星夜:いや……
星夜:だって……怒っている……
翔平:怒ってないよ。
翔平:ただ、星夜の願いを叶えてあげようかな?
翔平:って思っただけだから
星夜:え?
星夜:願い? 叶える?
0:翔平、星夜を捕まえて床に押し倒す。
0:ゆっくりと星夜の首を締める。
星夜:なっ?
星夜:し……翔……くん
翔平:僕なんか死んじゃえばいいんでしょ?
翔平:星夜が死んで欲しいと思う人は、僕が殺してあげるよ
0:翔平、星夜の首を絞める手を強める。
星夜:ぐあっ……や……やめて……よ……
翔平:やめないよ。
翔平:そんな言葉を口にするって事は
翔平:星夜も死にたかったんでしょ?
翔平:よかったね、星夜の願いが叶って
星夜:い……いや……ちが……う……
星夜:や……やめて……ください……
翔平:それに僕は何の苦労もせずに
翔平:司法試験に受かったから、
翔平:星夜の気持ちは解らないんでしょ?
星夜:あ……あの……
星夜:ごめん……なさい……
翔平:謝るのは僕の方だよ。
翔平:ごめんね、星夜の気持ちもわからない彼氏で。
翔平:お詫びに、星夜の最期の願いはこの手で叶えてあげるからね
星夜:い……いや……
星夜:いやだ……
星夜:し……死にたく……ない……
0:翔平、星夜の「死にたくない」を聞いて首から手を離す。
星夜:(大声で)死にたくない!
星夜:はぁ…はぁ…(肩で息をする)
翔平:……死にたくないなら、そんな事言わないでよ
翔平:僕も悲しくなる
星夜:……ごめんなさい
0:翔平、星夜の顔のすぐ横の床をドンと1回殴る。
翔平:謝る暇があるなら、今すぐ漫画描いて
星夜:え?
星夜:今はそんなキモチじゃあ……
翔平:僕だってそんなキモチじゃない日にも、
翔平:法律の専門書を読んで勉強したから司法試験に受かったんだ。
翔平:それを苦労じゃ無いって言ったのは星夜だよ
0:翔平、星夜の首根っこを掴んで星夜を椅子に座らせる。
星夜:うわぁ
翔平:さあ、今すぐ描いて僕に見せてね。
翔平:描き終わるまで、睡眠も休憩も食事もトイレも禁止
星夜:と……トイレも?
翔平:はいはい。
翔平:早く手を動かして完成させないと、
翔平:いい歳してお漏らしする事になるよ?
星夜:ううう……厳しいなぁ……
星夜:もっと優しくして欲しい
0:翔平、机をバンと1度叩く。
翔平:甘やかすだけが優しさじゃないからね
星夜:は……はい……
④:二人の自宅
④:翌朝。
④:星夜は徹夜で描いた漫画を翔平に見せる。
翔平:うん。
翔平:この短い時間でよく描けたね
星夜:お……お褒め頂き、ありがとうございます
0:星夜、翔平の顔色をチラチラと伺う。
翔平:(星夜の意図に気付いているので笑いながら)
翔平:どうしたの?
星夜:……翔くんに酷い事を言ったり、
星夜:死にたいとか言ってごめんなさい
翔平:解ればよろしい
星夜:……怒ってる?
翔平:もう怒ってないよ。ホラ
0:翔平、星夜を抱き締める。
星夜:わぁっ、ありがとう。
星夜:えへへ、翔くん暖かい
翔平:星夜。
翔平:落ち着いたところで思い出して欲しいことがあるんだ
星夜:え?
翔平:漫画雑誌の編集者に言われた言葉って
翔平:才能が無いだけ?
翔平:その前後に何も言われていない?
星夜:え?
星夜:えーっと?
翔平:そこだけでは思い出しにくかったら、
翔平:当日の事を最初から話してくれるかい?
星夜:うん……
星夜:えっと、まず出版社に行って応接ブースで待たされたんだ
翔平:うんうん
星夜:そして担当者の人が来て、原稿を渡して読んでもらったの
翔平:うんうん
星夜:5分くらいだったかな?
星夜:その人は原稿を机にパッと投げ捨てて
星夜:絵は綺麗だけれど、ストーリーが全然面白くないって言われた
翔平:それから?
星夜:えーっと
星夜:……"今の君にはストーリーを作る才能がないと思う"
星夜:って……言われた
翔平:……星夜も自分で言ってて気がついたみたいだけれど、
翔平:漫画を描く才能が無いとは言われていないよね?
星夜:う……うん……
翔平:そうか……ストーリーを作る才能か……
0:翔平、星夜の肩を優しく揉む。
星夜:(くすぐったそうにしながら)
星夜:え?
星夜:急に肩なんか揉んでどうしたの?
星夜:くすぐったいよ~
翔平:もっと早く言うべきだったかな?
翔平:僕も星夜の漫画は少し前から面白くないって感じていたんだ
星夜:え?
翔平:絵は日ごとに上手くなっているのはよく解るし、
翔平:賞を取る為に毎晩遅くまで研究していたから、
翔平:素人の僕が口を出さない方がいいかな? って思っていたけれど
翔平:星夜の漫画、すごく変な力が入っている様にずっと感じていた
星夜:そっか。翔くんもそんな風に感じていたんだ
翔平:うん。
翔平:この際だからハッキリ言うけれど、
翔平:星夜は本当に自分が描きたい漫画を描いているの?
翔平:って気持ちになったんだ
星夜:僕が描きたい漫画か……
翔平:もちろん、仕事で描きたくない内容の漫画を描く事もあるだろうし、
翔平:兎に角デビューするために賞を狙うことも大事だと思う。
翔平:でも、ここ最近の星夜が描いた漫画は、
翔平:そういう気持ちばっかりが前面に出ていて、
翔平:星夜らしさが全く感じられないんだ
星夜:僕らしさ?
翔平:以前の漫画は、絵は下手だったけれど
翔平:星夜が描きたい世界観がよく表れていた。
翔平:今は、"こんな感じの内容にしたら賞をとれるでしょう?"
翔平:みたいな気持ちが漫画から読み取れて、
翔平:内容が凄く薄っぺらく感じるんだ。
翔平:だから、読んでいて面白さを感じなかった
星夜:そっか……
星夜:でも、そうかも……
星夜:僕の考えるストーリーなんて誰かの下位交換か劣化版としか思えなくなって
星夜:自分を信じられなくなっていたのかも
翔平:例え下位交換でも、劣化版でも、
翔平:星夜には星夜しか描けない世界を
翔平:他ならぬ僕が描いて欲しいんだよ
星夜:そっか……
翔平:星夜、もし駄目でも僕が支えるから
翔平:星夜は自分の描きたい世界を描いてみてよ。
翔平:星夜の漫画家になりたいって気持ちは、
翔平:金とか名誉とかが目的じゃ無くて、
翔平:星夜の思い描いた世界を表現する為じゃないの?
星夜:うーん。
星夜:確かにお金もある程度稼ぎたいし、
星夜:有名な漫画家になりたいって気持ちもあるけれど……
星夜:僕はいつの間にかそっちばっかりを追求していて、
星夜:それが目的になっていたのかもしれない。
星夜:翔くんの言う通りだよ。
星夜:僕が漫画家になりたい理由は、
星夜:自分の世界を表現したいからだった!
翔平:星夜、応援しているからね。
翔平:世間がどんな評価をしても、僕は星夜のファンだからね。
星夜:ありがとう! よーし!
星夜:そうと決まれば描くぞー!
翔平:はははっ、星夜は元気だな!
翔平:そういう明るい星夜も僕は大好きだよ
星夜:こうなったら賞への応募も持ち込みもガンガンやって、
星夜:僕の描きたい世界を絶対に認めさせてやるぞ!
翔平:おっ!
翔平:星夜が不撓不屈モードになった。
翔平:頼もしいな!
④:二人の自宅
④:数ヶ月後。
④:星夜はまた賞に応募し、その結果発表の日を迎えた。
星夜:うーんと……
0:星夜、漫画雑誌のページをめくり発表のページを探す。
翔平:どうかな?
星夜:えーっと……、
星夜:あっ、……僕の名前があった!
翔平:すごいじゃないか!
星夜:努力賞って感じだけれど
翔平:努力賞?
星夜:うーん。
星夜:補欠合格みたいな感じって言った方が伝わるかな?
翔平:それでも受賞でしょ?
翔平:それは星夜が描きたい世界が一定の評価を受けた証拠じゃないか!
星夜:そ……そうだね!
翔平:そうだよ!
翔平:不満ならばここから上を目指したらいいんだよ。
翔平:星夜だってまだまだやる気でしょ?
星夜:ま……まあ、
星夜:このままここで終わる気は無いけれど……
翔平:兎に角、今日はお祝いだね!
翔平:賞金も出るんでしょ?
星夜:賞金って、ほんの少しだよ
翔平:ほんの少しでもいいんだよ。
翔平:星夜も漫画で稼いで偉いぞー!
0:翔平、星夜を抱き締める。
0:その時、星夜のスマホが鳴る。
星夜:あっ、電話だ
翔平:誰から?
星夜:えっと……
星夜:知らない番号だ
星夜:……とりあえず出てみるね
翔平:うん
星夜:もしもし?
星夜:……はい、……そうですけれど
星夜:あっ、はい!見ました!
星夜:……はい、……はい、え?
星夜:本当ですか?
星夜:はい! わかりました! 宜しくお願い致します!
0:星夜、電話を切り翔平に抱きつく。
翔平:その様子だといい知らせの様だね
星夜:うん!
星夜:僕の漫画が雑誌に掲載されるって!
星夜:読者アンケートとかの結果によっては連載の道もあるって!
翔平:すごいじゃないか!
星夜:えへへ、ありがとう
翔平:流石星夜だよ!
0:星夜、抱きついていた翔平から離れて翔平の目をじっと見つめる。
星夜:翔くん。これでようやく僕もスタートラインに立てました
翔平:うん?
星夜:僕の親も、友達も、誰も僕を応援してくれなかった。
星夜:漫画家になるなんて無理だって切り捨てられた。
星夜:馬鹿じゃ無いかって笑いものにされた。
星夜:ネットに漫画を投稿したら、"下手糞死ね"ってコメントされた。
星夜:そんな事があったから、いつからか僕は夢を口にしなくなった
翔平:うん
星夜:でも、翔くんは違った。
星夜:本気で僕の夢を応援してくれた。
星夜:馬鹿にせず、真剣に向き合ってくれた。
星夜:本当にありがとう
翔平:……いいんだよ。
翔平:僕も星夜に受け入れてもらえて嬉しいから!
翔平:これからも沢山甘えてね!
星夜:うん!
星夜:翔くん大好き!
翔平:僕も星夜が大好きだよ
星夜:えへへ
星夜:……あっそうだ!
翔平:ん? どうしたの?
星夜:翔くん。
星夜:これから契約とか色々手続きが必要になるんだ。
星夜:だから……、その……、
星夜:僕の顧問弁護士になってもらえませんか?
翔平:顧問弁護士?
翔平:ふふふ、僕の顧問料は高いけれど大丈夫?
星夜:え?
星夜:恋人の僕からお金取るの?
翔平:当たり前じゃないか!
星夜:ううう、顧問料払えるくらい原稿料とか印税もらえるかな?
翔平:大丈夫。星夜だけは特別に
翔平:オカラダでのお支払いも認めますから
0:翔平、星夜の服をゆっくりと脱がそうとする
星夜:え? え?
翔平:さて、久しぶりに星夜の柔肌を楽しませてもらいますか!
星夜:ええー!
翔平:星夜、大好きだよ