台本概要

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タイトル 100円拾った
作者名 みのるしろいし  (@siroishi_jp)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1) ※兼役あり
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 100円拾ってここまで発展する訳がない・・・

【お願い】
事前・事後でも構いませんので、
上演時はX(旧Twitter)等でメンション付きでポストか、DM等でも良いですので
ご連絡頂けますと、喜びます。
何らかの形で上演内容を残して頂けますと、さらに喜びます。
これを機に他の台本も閲覧頂けますと、ハンパなく喜びます。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
白川 104 会社員。安定した生活をしている。
松宮 108 専業主婦。夫と上手く行っているように見せかけている。
店員 1 冒頭のみ登場。白川が兼ねる
車内放送 1 タイトルコール後1セリフ。松宮が兼ねる
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
店員:お会計450円になりますー 松宮:はーい 0:100円を落とす 松宮:あっ・・・ 白川:ん? 0:100円を拾い、無言で手渡す 松宮:ありがと(う・・・) 0:食い気味に手に持っていた小銭入れをひっくり返す 松宮:あっ! 白川:あーあー 0:小銭を数枚拾う 松宮:すいません、ご迷惑をおかけして 白川:いえいえ、お気になさらず。 : 松宮:「100円拾った。」(タイトルコール) : 車内放送:*九条《くじょう》、*九条《くじょう》です。お出口は右側です。 白川:(M)今日もいつもと変わらない1日が終わる。 白川:(M)仕事場と家を往復する生活、時折負けそうになるけど、*現状維持《げんじょういじ》も悪くない。 松宮:あのぅ・・ 白川:(M)最寄駅の改札抜ければ、いつもよりちょっと勇敢な・・・ 松宮:あのぅ・・・ 白川:何っ?! 松宮:あぁ!やっぱり! 白川:ん・・?あぁ!あの時の! 松宮:そうです!電車の中で見かけて、同じ駅で降りたものでつい 白川:あぁ、この辺に住んでらっしゃるんですね。 松宮:えぇ、3丁目の辺りです。 白川:あぁ!私二丁目ですよ。 松宮:そうなの!?帰り道も似てそう。 白川:恐らく先の分かれ道の違いくらいですかね? 松宮:そうかも!この辺最近なにかと物騒じゃない? 松宮:だから・・・あなたさえよければ、分かれ道まで一緒に帰れないかなって 白川:良いですよ! 松宮:ホント?ありがとう! 白川:そういえばお名前は 松宮:*松宮《まつみや》よ。 白川:僕は*白川《しらかわ》と言います。 松宮:よろしくね。 0:【間】 白川:あ、道路側歩きますよ。 松宮:そう?優しいのね、でも、私の声聴こえにくくない? 白川:え? 松宮:もし違ったら申し訳ないけど、左耳に何かあるのかなって。 白川:どうして? 松宮:さっき声をかけた時に、左から掛けたのに右を向いたじゃない? 松宮:その前の声かけにも気づいてなかったから、そう思ったの。 松宮:私、前の仕事で人の行動を研究してたことがあってね。 白川:へぇー、凄いですね。ご名答です。確かに私の左耳は聴こえません。 白川:生まれつき原因がわからないんですが、左耳がダメなんですよね。 松宮:大変ね・・・ 白川:幸い、右が聞こえるので日常生活に支障は無いんです。 白川:大勢の人がいるところだと難しいですがね。 松宮:そうなのね・・・大変だったわね。 松宮:聞こえやすい方がいいでしょ?だから気にしなくて良いのよ。 白川:恐縮です。 松宮:そういえば白川くん、お仕事は? 白川:今はSEをやっています。 松宮:パソコン仕事なのね・・・不規則? 白川:そうですね・・・今日はたまたま早かったです。 白川:*繁忙期《はんぼうき》には帰れないこともありますね 松宮:多忙なのね。 白川:えぇ、あ。*三叉路《さんさろ》ですね。 松宮:ありがとう。また時間があったらよろしくね。 白川:はい。おやすみなさい。 松宮:おやすみ。 : 0:3ヵ月後 : 松宮:*白川《しらかわ》くん! 白川:あぁ、*松宮《まつみや》さん。 松宮:覚えててくれたのね。 白川:えぇ。 松宮:前会った時からだいぶ経ったわね。 白川:そうですね、*繁忙期《はんぼうき》で時間が合わなくて 松宮:私も、結構駅を使う機会が少なくてね。 白川:そうなんですね、病院・・・ですか? 松宮:どうして? 白川:前にお会いした日も、同じ曜日だったと思います。 白川:そして、持ってる荷物も少ないと思ったからです。 松宮:凄いわね、そうよ。病院に通ってるの。 松宮:*皮膚《ひふ》が弱くてね。 松宮:*白川《しらかわ》くんも行動心理に興味が? 白川:そんなところですね。 松宮:そうなの、じゃあ私のこともっと当ててみてよ。 白川:そうですね・・・弱いのは腕ですかね? 白川:夏なのに長袖着てるなあって。 松宮:正解!腕にアザのようなシミがあってね 松宮:なかなか取れないのよ。 白川:なるほど。 松宮:結婚はしてると思う? 白川:左手の薬指、そして旦那さんは独占欲が強いと見ました。 松宮:どうして? 白川:病院に行く頻度が固定されていて、曜日が決まっているということは 白川:旦那さんが泊まりで出かけてるのかなって。 白川:そのタイミングで病院に行ってるのかもなと。 松宮:凄いわね・・・ 白川:まあ、大学も心理学を専攻していたので。 松宮:それにしてもよ。 白川:(笑) 松宮:*白川《しらかわ》くんは?結婚はしてないわね。 松宮:彼女も・・・いなさそう。 白川:その根拠はなんでしょう? 松宮:システムエンジニアって、勤務が不規則で男性が多いイメージ。 松宮:だから女性と付き合う暇がないってのが理由かなって。 白川:流石ですね、完答 松宮:私も、心理学を大学で(教えてたの) 白川:(前に被せる)教えてましたよね? 松宮:そこも!? 白川:ええ、実は名前を聞いて 白川:行動研究をされていたと聞いたら思い出したんです。 白川:著書も読んでました。 松宮:本当に!? 白川:はい、恐らく全部。 松宮:嬉しいわ・・・ 白川:ええ、僕も嬉しいです。 白川:著者に会えるなんて。 松宮:またゆっくり感想聞きたいわ。 白川:そうですね! 松宮:じゃあ、ここで。 白川:はい! : 0:3ヵ月後 : 白川:*松宮《まつみや》さん? 松宮:・・・ 白川:*松宮《まつみや》さん?? 松宮:・・・ん?あぁ!*白川《しらかわ》くん!お久しぶりね。 白川:考え事・・・ですか? 松宮:えぇ。ちょっとね。 白川:かなり深刻そうでしたけど・・・ 松宮:・・・あなたにはお見通し? 白川:何かまではわからないですが 白川:でも、軽いものでは無いと思います。 松宮:実はね・・・夫が別れたいって 白川:あら、また何故? 松宮:わからないのよ・・・不一致だって言うんだけど 白川:確か独占欲が強めだったはず・・・ 松宮:私も、夫が好きだったからなるべく併せるようにはしていたのに。 白川:でも、*松宮《まつみや》さんの意見が反映されたことってあるんですか? 松宮:・・・ 白川:それって夫婦なんでしょうか。 松宮:今となってはわからないわ。 白川:あの・・・1週間後って時間取れますか? 松宮:え? 白川:詳しく聞きたいなって。 松宮:良いわよ。夫ももう何日も帰ってきていないし。 白川:では、隣駅のカフェでお待ちしています。 松宮:わかったわ。 : 0:1週間後、隣駅のカフェ : 松宮:お待たせ。 白川:よかったです。連絡先もお渡ししてなかったので来てくれないかもしれないと。 白川:とりあえず座って話しましょうか。 : 0:席に座る2人 : 白川:*松宮《まつみや》さん、旦那さんが離婚したいと仰っている原因等、全てわかりました。 松宮:えっ?・・・えっ!?どう言うこと? 白川:旦那さんはやはり、浮気をしています。 松宮:浮気!? 白川:こちらが調査結果です。 松宮:嘘でしょ・・・なんで。 白川:私はこの1週間、あなたの夫の*身辺調査《しんぺんちょうさ》をしました。 松宮:夫のことは*白川《しらかわ》くんには何も話していないはず・・・ 白川:ええ。1週間前、私はあなたの夫についてはほとんど情報がありませんでした。 松宮:だったらどうして! 白川:私について、まだお話ししていないことが。 白川:実は私、SEをやる前に*興信所《こうしんじょ》を経営していたんですよ。 松宮:こ、*興信所《こうしんじょ》!? 白川:まあ、世間的に*需要《じゅよう》が無くなり閉業したんですがね。 松宮:なるほど、だから行動心理学を 白川:そうですね。 白川:で、私は結果気づいてしまった。 松宮:ウチの夫には問題がありすぎると? 白川:そうです。まずは浮気。 松宮:夫に限ってそんなことはないと思ってた・・・ 白川:いいえ、嘘です。 白川:あなたほどの心理学の*権威《けんい》がある方なら、夫の浮気になんて気づいているはず。 松宮:そんなわけない! 白川:そうです。 松宮:は? 白川:そんなわけないと思いたくなるでしょう。 白川:「私の職業を理解している夫なら、浮気なんてするわけがない。」 白川:あなたはそう「思いたかった」 松宮:違う・・・ 白川:でも、違うと言いたくなる気持ちも次の問題点で肯定出来ます。 松宮:何よ・・・? 白川:松宮さん、DVを受けていますよね? 松宮:DV!? 白川:それも、洗脳に近いDVです。 松宮:そんなわけが・・・ 白川:まず、*皮膚科《ひふか》への通院 白川:これは、病気では無くてDVの*痕跡《こんせき》を隠したかった。 松宮:っ・・・!? 白川:恐らく、固定の位置にアザをつけることで、独占しているという権力の証にしたかったのでしょう。 白川:そのアザが他人にバレるとまずいので、不明なアザとして通院させた。 : 松宮:嘘よ・・・ 白川:そして、こちらも調査の結果ですが 白川:旦那さんは、恐らく仕事をしていません。 松宮:あの人は毎日仕事のために出て、給料も入れてくれています! 白川:その給料の出所、あなたの独身時代の貯金ですよ?後は借金と。 松宮:嘘・・・ 白川:帰ってから早めにご自身の通帳を確認した方が良いですね。 白川:もしかすると、借金については勝手に連帯保証人にされているかも。 松宮:・・・確かに、金銭管理もさせてもらえなかった。 白川:あなたは、旦那さんのことを愛していた。 白川:愛していたからこそ、何をされても別れたくは無かった。 白川:そんなに尽くしている旦那が「浮気なんてするわけがない」と 白川:「思わざるを得なかった」というわけです。 松宮:ひぐっ・・・ 白川:その弱みにつけ込んで、旦那さんは*詮索《せんさく》されないことを良いことに、堂々と浮気をしていた。 松宮:・・・ねぇ。 白川:どうしました? 松宮:どうして・・・どうして赤の他人の私のためにそこまで? 白川:あなたには・・・幸せになる。 白川:幸せを追い求める権利があるからです。 松宮:・・・!それって。 白川:あなたの著書に書いてあった言葉です。 白川:確かに、あの日コンビニで100円を拾った私と再会して、声をかけた。 白川:それだけの関係だったかもしれない。 白川:でも、それはあなたの最後のサインだったのかもしれない。 白川:夫の気持ちが離れていると気づいたあなたが、誰でもいいから話を聞いてくれるだけでも良い、 白川:とにかく幸せになりたかったから。 松宮:・・・あなたには、何も隠せないわね。 白川:覚めましたか? 松宮:えぇ、長い夢を見ていたのかも知れない。 白川:良かった。さあ、後は何をすべきかわかりますね。 松宮:・・・えぇ。 白川:では、これを。私の友人の弁護士です。 白川:離婚問題に強い弁護士ですので、力になると思います。 白川:この証拠も全てお渡しします。 松宮:本当に・・・いいの? 白川:えぇ、使っていただかないと私が報われないです。 : 0:半年後 : 松宮:*直人《なおと》。 白川:あぁ、*美来《みく》さん。 松宮:出かける時、傘持って無かったなって思って。迎えに来た。 白川:ありがとうございます! 松宮:しかし・・・さん付けとか敬語のクセはまだ抜けないのね。 白川:どうしても・・・年上ですしね。 松宮:全然気にしないのに。もしかしてまだ隣で歩くの緊張してる? 白川:ヘヘッ、どうしても。 白川:そういえば、これ。 松宮:あっ、ちゃんと覚えててくれたんだ。 白川:そう、一年前の今日、コンビニで*美来《みく》さんが落とした100円を拾いました。 松宮:あの100円、今も持ってる。って言ったらビックリする? 白川:マジ!? 松宮:流石に無いわ(笑) 松宮:あ、今の「マジ!?」なんかドキッとした。 白川:何でですか(笑) 松宮:だって、そんな言葉遣いしなかったもの。 白川:あー、確かに。 松宮:こうして2人で歩くのも久しぶりね。 白川:アイツなら、居ない間の行動も何かで監視してそうでしたけど 白川:そこまで手は回らなかったみたいですね。 松宮:えぇ、今考えたらナメられすぎてたわね 白川:高学歴ほど洗脳されやすい。宗教団体のような手口でしたね。 松宮:救い出してくれた*直人《なおと》には感謝してる。 白川:実は、今だから言えるんですけどね? 松宮:なに? 白川:2回目に会った時のこと、覚えてますか? 松宮:通院の都合や、あなたの都合で2ヶ月ぐらい空いたよね。 白川:実は、あの前に何度か美来さんを待ったことがあるって言ったら、笑ってくれますか? 松宮:あらぁ!そうなのぉ〜? 0:頭を撫でる 松宮:可愛いとこあるんじゃーん♪ 白川:あ、あくまで行動探るためであって! 松宮:本当は? 白川:あわよくば・・・一緒に帰れれば良いかなって(声をすぼめていく) 松宮:ほらぁー!素直になりなって。 白川:こうなるから本音は隠したかったんですよぉ・・・ 松宮:いいじゃない。ようやく年下なんだなって思ったわよ。 白川:あぁ!*三叉路《さんさろ》ですね。 松宮:そうね。あの時はここで別れた。 白川:今は同じ方向ですよ。 松宮:そうね。これからも・・・ずっと。 白川:帰ったら、ささやかですがお祝いしましょうか。 松宮:そうね!

店員:お会計450円になりますー 松宮:はーい 0:100円を落とす 松宮:あっ・・・ 白川:ん? 0:100円を拾い、無言で手渡す 松宮:ありがと(う・・・) 0:食い気味に手に持っていた小銭入れをひっくり返す 松宮:あっ! 白川:あーあー 0:小銭を数枚拾う 松宮:すいません、ご迷惑をおかけして 白川:いえいえ、お気になさらず。 : 松宮:「100円拾った。」(タイトルコール) : 車内放送:*九条《くじょう》、*九条《くじょう》です。お出口は右側です。 白川:(M)今日もいつもと変わらない1日が終わる。 白川:(M)仕事場と家を往復する生活、時折負けそうになるけど、*現状維持《げんじょういじ》も悪くない。 松宮:あのぅ・・ 白川:(M)最寄駅の改札抜ければ、いつもよりちょっと勇敢な・・・ 松宮:あのぅ・・・ 白川:何っ?! 松宮:あぁ!やっぱり! 白川:ん・・?あぁ!あの時の! 松宮:そうです!電車の中で見かけて、同じ駅で降りたものでつい 白川:あぁ、この辺に住んでらっしゃるんですね。 松宮:えぇ、3丁目の辺りです。 白川:あぁ!私二丁目ですよ。 松宮:そうなの!?帰り道も似てそう。 白川:恐らく先の分かれ道の違いくらいですかね? 松宮:そうかも!この辺最近なにかと物騒じゃない? 松宮:だから・・・あなたさえよければ、分かれ道まで一緒に帰れないかなって 白川:良いですよ! 松宮:ホント?ありがとう! 白川:そういえばお名前は 松宮:*松宮《まつみや》よ。 白川:僕は*白川《しらかわ》と言います。 松宮:よろしくね。 0:【間】 白川:あ、道路側歩きますよ。 松宮:そう?優しいのね、でも、私の声聴こえにくくない? 白川:え? 松宮:もし違ったら申し訳ないけど、左耳に何かあるのかなって。 白川:どうして? 松宮:さっき声をかけた時に、左から掛けたのに右を向いたじゃない? 松宮:その前の声かけにも気づいてなかったから、そう思ったの。 松宮:私、前の仕事で人の行動を研究してたことがあってね。 白川:へぇー、凄いですね。ご名答です。確かに私の左耳は聴こえません。 白川:生まれつき原因がわからないんですが、左耳がダメなんですよね。 松宮:大変ね・・・ 白川:幸い、右が聞こえるので日常生活に支障は無いんです。 白川:大勢の人がいるところだと難しいですがね。 松宮:そうなのね・・・大変だったわね。 松宮:聞こえやすい方がいいでしょ?だから気にしなくて良いのよ。 白川:恐縮です。 松宮:そういえば白川くん、お仕事は? 白川:今はSEをやっています。 松宮:パソコン仕事なのね・・・不規則? 白川:そうですね・・・今日はたまたま早かったです。 白川:*繁忙期《はんぼうき》には帰れないこともありますね 松宮:多忙なのね。 白川:えぇ、あ。*三叉路《さんさろ》ですね。 松宮:ありがとう。また時間があったらよろしくね。 白川:はい。おやすみなさい。 松宮:おやすみ。 : 0:3ヵ月後 : 松宮:*白川《しらかわ》くん! 白川:あぁ、*松宮《まつみや》さん。 松宮:覚えててくれたのね。 白川:えぇ。 松宮:前会った時からだいぶ経ったわね。 白川:そうですね、*繁忙期《はんぼうき》で時間が合わなくて 松宮:私も、結構駅を使う機会が少なくてね。 白川:そうなんですね、病院・・・ですか? 松宮:どうして? 白川:前にお会いした日も、同じ曜日だったと思います。 白川:そして、持ってる荷物も少ないと思ったからです。 松宮:凄いわね、そうよ。病院に通ってるの。 松宮:*皮膚《ひふ》が弱くてね。 松宮:*白川《しらかわ》くんも行動心理に興味が? 白川:そんなところですね。 松宮:そうなの、じゃあ私のこともっと当ててみてよ。 白川:そうですね・・・弱いのは腕ですかね? 白川:夏なのに長袖着てるなあって。 松宮:正解!腕にアザのようなシミがあってね 松宮:なかなか取れないのよ。 白川:なるほど。 松宮:結婚はしてると思う? 白川:左手の薬指、そして旦那さんは独占欲が強いと見ました。 松宮:どうして? 白川:病院に行く頻度が固定されていて、曜日が決まっているということは 白川:旦那さんが泊まりで出かけてるのかなって。 白川:そのタイミングで病院に行ってるのかもなと。 松宮:凄いわね・・・ 白川:まあ、大学も心理学を専攻していたので。 松宮:それにしてもよ。 白川:(笑) 松宮:*白川《しらかわ》くんは?結婚はしてないわね。 松宮:彼女も・・・いなさそう。 白川:その根拠はなんでしょう? 松宮:システムエンジニアって、勤務が不規則で男性が多いイメージ。 松宮:だから女性と付き合う暇がないってのが理由かなって。 白川:流石ですね、完答 松宮:私も、心理学を大学で(教えてたの) 白川:(前に被せる)教えてましたよね? 松宮:そこも!? 白川:ええ、実は名前を聞いて 白川:行動研究をされていたと聞いたら思い出したんです。 白川:著書も読んでました。 松宮:本当に!? 白川:はい、恐らく全部。 松宮:嬉しいわ・・・ 白川:ええ、僕も嬉しいです。 白川:著者に会えるなんて。 松宮:またゆっくり感想聞きたいわ。 白川:そうですね! 松宮:じゃあ、ここで。 白川:はい! : 0:3ヵ月後 : 白川:*松宮《まつみや》さん? 松宮:・・・ 白川:*松宮《まつみや》さん?? 松宮:・・・ん?あぁ!*白川《しらかわ》くん!お久しぶりね。 白川:考え事・・・ですか? 松宮:えぇ。ちょっとね。 白川:かなり深刻そうでしたけど・・・ 松宮:・・・あなたにはお見通し? 白川:何かまではわからないですが 白川:でも、軽いものでは無いと思います。 松宮:実はね・・・夫が別れたいって 白川:あら、また何故? 松宮:わからないのよ・・・不一致だって言うんだけど 白川:確か独占欲が強めだったはず・・・ 松宮:私も、夫が好きだったからなるべく併せるようにはしていたのに。 白川:でも、*松宮《まつみや》さんの意見が反映されたことってあるんですか? 松宮:・・・ 白川:それって夫婦なんでしょうか。 松宮:今となってはわからないわ。 白川:あの・・・1週間後って時間取れますか? 松宮:え? 白川:詳しく聞きたいなって。 松宮:良いわよ。夫ももう何日も帰ってきていないし。 白川:では、隣駅のカフェでお待ちしています。 松宮:わかったわ。 : 0:1週間後、隣駅のカフェ : 松宮:お待たせ。 白川:よかったです。連絡先もお渡ししてなかったので来てくれないかもしれないと。 白川:とりあえず座って話しましょうか。 : 0:席に座る2人 : 白川:*松宮《まつみや》さん、旦那さんが離婚したいと仰っている原因等、全てわかりました。 松宮:えっ?・・・えっ!?どう言うこと? 白川:旦那さんはやはり、浮気をしています。 松宮:浮気!? 白川:こちらが調査結果です。 松宮:嘘でしょ・・・なんで。 白川:私はこの1週間、あなたの夫の*身辺調査《しんぺんちょうさ》をしました。 松宮:夫のことは*白川《しらかわ》くんには何も話していないはず・・・ 白川:ええ。1週間前、私はあなたの夫についてはほとんど情報がありませんでした。 松宮:だったらどうして! 白川:私について、まだお話ししていないことが。 白川:実は私、SEをやる前に*興信所《こうしんじょ》を経営していたんですよ。 松宮:こ、*興信所《こうしんじょ》!? 白川:まあ、世間的に*需要《じゅよう》が無くなり閉業したんですがね。 松宮:なるほど、だから行動心理学を 白川:そうですね。 白川:で、私は結果気づいてしまった。 松宮:ウチの夫には問題がありすぎると? 白川:そうです。まずは浮気。 松宮:夫に限ってそんなことはないと思ってた・・・ 白川:いいえ、嘘です。 白川:あなたほどの心理学の*権威《けんい》がある方なら、夫の浮気になんて気づいているはず。 松宮:そんなわけない! 白川:そうです。 松宮:は? 白川:そんなわけないと思いたくなるでしょう。 白川:「私の職業を理解している夫なら、浮気なんてするわけがない。」 白川:あなたはそう「思いたかった」 松宮:違う・・・ 白川:でも、違うと言いたくなる気持ちも次の問題点で肯定出来ます。 松宮:何よ・・・? 白川:松宮さん、DVを受けていますよね? 松宮:DV!? 白川:それも、洗脳に近いDVです。 松宮:そんなわけが・・・ 白川:まず、*皮膚科《ひふか》への通院 白川:これは、病気では無くてDVの*痕跡《こんせき》を隠したかった。 松宮:っ・・・!? 白川:恐らく、固定の位置にアザをつけることで、独占しているという権力の証にしたかったのでしょう。 白川:そのアザが他人にバレるとまずいので、不明なアザとして通院させた。 : 松宮:嘘よ・・・ 白川:そして、こちらも調査の結果ですが 白川:旦那さんは、恐らく仕事をしていません。 松宮:あの人は毎日仕事のために出て、給料も入れてくれています! 白川:その給料の出所、あなたの独身時代の貯金ですよ?後は借金と。 松宮:嘘・・・ 白川:帰ってから早めにご自身の通帳を確認した方が良いですね。 白川:もしかすると、借金については勝手に連帯保証人にされているかも。 松宮:・・・確かに、金銭管理もさせてもらえなかった。 白川:あなたは、旦那さんのことを愛していた。 白川:愛していたからこそ、何をされても別れたくは無かった。 白川:そんなに尽くしている旦那が「浮気なんてするわけがない」と 白川:「思わざるを得なかった」というわけです。 松宮:ひぐっ・・・ 白川:その弱みにつけ込んで、旦那さんは*詮索《せんさく》されないことを良いことに、堂々と浮気をしていた。 松宮:・・・ねぇ。 白川:どうしました? 松宮:どうして・・・どうして赤の他人の私のためにそこまで? 白川:あなたには・・・幸せになる。 白川:幸せを追い求める権利があるからです。 松宮:・・・!それって。 白川:あなたの著書に書いてあった言葉です。 白川:確かに、あの日コンビニで100円を拾った私と再会して、声をかけた。 白川:それだけの関係だったかもしれない。 白川:でも、それはあなたの最後のサインだったのかもしれない。 白川:夫の気持ちが離れていると気づいたあなたが、誰でもいいから話を聞いてくれるだけでも良い、 白川:とにかく幸せになりたかったから。 松宮:・・・あなたには、何も隠せないわね。 白川:覚めましたか? 松宮:えぇ、長い夢を見ていたのかも知れない。 白川:良かった。さあ、後は何をすべきかわかりますね。 松宮:・・・えぇ。 白川:では、これを。私の友人の弁護士です。 白川:離婚問題に強い弁護士ですので、力になると思います。 白川:この証拠も全てお渡しします。 松宮:本当に・・・いいの? 白川:えぇ、使っていただかないと私が報われないです。 : 0:半年後 : 松宮:*直人《なおと》。 白川:あぁ、*美来《みく》さん。 松宮:出かける時、傘持って無かったなって思って。迎えに来た。 白川:ありがとうございます! 松宮:しかし・・・さん付けとか敬語のクセはまだ抜けないのね。 白川:どうしても・・・年上ですしね。 松宮:全然気にしないのに。もしかしてまだ隣で歩くの緊張してる? 白川:ヘヘッ、どうしても。 白川:そういえば、これ。 松宮:あっ、ちゃんと覚えててくれたんだ。 白川:そう、一年前の今日、コンビニで*美来《みく》さんが落とした100円を拾いました。 松宮:あの100円、今も持ってる。って言ったらビックリする? 白川:マジ!? 松宮:流石に無いわ(笑) 松宮:あ、今の「マジ!?」なんかドキッとした。 白川:何でですか(笑) 松宮:だって、そんな言葉遣いしなかったもの。 白川:あー、確かに。 松宮:こうして2人で歩くのも久しぶりね。 白川:アイツなら、居ない間の行動も何かで監視してそうでしたけど 白川:そこまで手は回らなかったみたいですね。 松宮:えぇ、今考えたらナメられすぎてたわね 白川:高学歴ほど洗脳されやすい。宗教団体のような手口でしたね。 松宮:救い出してくれた*直人《なおと》には感謝してる。 白川:実は、今だから言えるんですけどね? 松宮:なに? 白川:2回目に会った時のこと、覚えてますか? 松宮:通院の都合や、あなたの都合で2ヶ月ぐらい空いたよね。 白川:実は、あの前に何度か美来さんを待ったことがあるって言ったら、笑ってくれますか? 松宮:あらぁ!そうなのぉ〜? 0:頭を撫でる 松宮:可愛いとこあるんじゃーん♪ 白川:あ、あくまで行動探るためであって! 松宮:本当は? 白川:あわよくば・・・一緒に帰れれば良いかなって(声をすぼめていく) 松宮:ほらぁー!素直になりなって。 白川:こうなるから本音は隠したかったんですよぉ・・・ 松宮:いいじゃない。ようやく年下なんだなって思ったわよ。 白川:あぁ!*三叉路《さんさろ》ですね。 松宮:そうね。あの時はここで別れた。 白川:今は同じ方向ですよ。 松宮:そうね。これからも・・・ずっと。 白川:帰ったら、ささやかですがお祝いしましょうか。 松宮:そうね!