台本概要

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タイトル アビス イン マーダーランド
作者名 アール/ドラゴス  (@Dragoss_R)
ジャンル ミステリー
演者人数 5人用台本(男1、女1、不問3) ※兼役あり
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 舞台はとある高級レストラン。
表の世界でも有名な武器商人“ジェントル・キャタピラー”は“クイーン・ミリオン”と呼ばれる富豪と取引をしていた。
その最中、停電が起こり、再び電気がついた時にはナイフが胸に突き刺さり死んでいるキャタピラ。
一体誰が、どのような意思をもってキャタピラを殺したのか?
ダークな殺し屋ミステリー、開幕。

「マーダー、マーダー!ようこそ、殺人の国へ♪」


【アビスシリーズ】第一話

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
アビス 不問 75 幼い体つき、幼い声をした愉快犯の殺し屋。 クイーンの護衛だというが…?
クイーン 72 複数の異名を持つ大富豪。 一見事件に巻き込まれただけのように見える…?
チェシャー 60 キャタピラの護衛兼殺し屋。いつもニヤニヤと嗤っている。 クイーンやアビスとは付き合いがあるようで…?
ラビット 不問 67 顔に切り刻まれたような痕がある殺し屋。ゆったりと話す。 ハッターとチームを組んでいるようで…? ※マーチの台詞も読んでください。
ハッター 不問 69 シルクハットがトレードマークの殺し屋。 アビスと面識があるようだが…?
キャタピラ 10 表の世界でも名高い武器商。今回の事件の被害者。 ※チェシャーと兼ね役です。
マーチ 不問 4 ラビットの人が台詞を読む。 元クイーンの護衛。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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とても嬉しい気持ち でっち上げる 一応言われてたよ。 チッ ただ無意味にソイツを→ただ無意味にそいつを、眠りネズミを殺したわけじゃねえ。 待ってくれ→こものっぽいからなおす 0:とある高級レストランの個室。男女が会食をしている。 0: キャタピラ:ふふふ、今回も商談成立ですなあ。 クイーン:えぇ。こちらとしても良い契約を結べたから、とても嬉しい気持ちだわ、 キャタピラ:それはなにより。いやぁ、本当いつも“ダイヤのクイーン”さんには助けられていますよ。流石、大富豪でございます。 クイーン:もう、その名前で呼ぶのはやめて頂戴。本当ならわたしも“ハート”のマークを名乗りたかったのだから。 キャタピラ:おっと、これは失礼いたしました。 クイーン:ふふ。まぁ…、夜は長いわ。せっかくなのだし、思い出話に花を咲かせるとしましょう? シーン転換。 0:同時刻、同レストラン内にて。 0:シルクハットの人物と純白の眼に顔が傷だらけの人物がテーブルについている。 0: ハッター:…勢いでここまで来たは良いですが、ここからどうするのでしょう? ラビット:うん、ぼくもすっかり頭になかったや、それ。ここ結構警備が厳重で忍び込むの難しそうだしなあー。 ハッター:…とりあえず、料理いただきますか☆ ラビット:そうだねえ。せっかくのフルコースだもの。味わわなくちゃ損だよなあ。 ハッター:そう考えると別行動の“彼”、ご飯食べられなくて可哀想ですねぇー。 0: アビス:ねぇ、アナタたちなにしてるのー?♪ 0: ラビット:へっ?…あー、ぼくたちかい? アビス:勿論。なんだかあそこの個室を気にしている感じだったからさ♪ ハッター:いや?気のせいじゃあないですか…って、あれ!?アナタ、いつぞやのー!? アビス:んー?…あ、“帽子屋”さん? ハッター:そうですー!いやぁ、覚えていてくれたのですね、“アリスちゃん”☆ アビス:ちょっとー?その名前は恥ずかしいからやめてって言ったでしょー? ラビット:あー、えーっと。知り合いかい、ハッター? ハッター:えぇ、“お茶会”の前に一度だけ一緒に仕事をしたことがありまして。 アビス:初めまして、“傷顔”さん! ラビット:おお、はじめましてー。…あれ、でも待ってよ?今ここにぼくたちの同類がいるってことはー…? アビス:あはは、どうだろうねっ!…あっ、そろそろ時間だから行かなきゃ!またあとで話そうね! 0: 0:そう言って“アリスちゃん”はふらりと立ち去る。 0: ハッター:はぁー、やっぱり“アリスちゃん”はかわいいですねぇ…。 ラビット:ハッター、もしかしたら今の子、ぼくたちの敵かもよ? ハッター:えぇ?まーさーか☆“アリスちゃん”に限ってそんなことありえませんってー! ラビット:でも、あの子がぼくたちと同類なら、意味もなくこんなところにいるわけが―――。 シーン転換。真っ黒背景。 0:突然ブレーカーが落ちて暗闇になる。 0: ラビット:ありゃあ、停電だ。 ハッター:停電ですねぇ。つまり、今が「チャンス」。 ラビット:だねえ、行こう。 ハッター:はっ!もしかして“眠りネズミ”さんがワタシたちのためにブレーカーを落としてくれたのでは!? ラビット:なるほど、そういうことか!ありがとう“眠りネズミ”!きみの犠牲は無駄にしないぞお。 ハッター:死んだことになっていらっしゃるー。 シーン転換。 0:先ほどの個室の戻る。 0: キャタピラ:―――なるほど…。いやはや、わかりますよ。私も何度か、自分の信頼する部下を失ったことがありますから。 クイーン:…えぇ。それに加えて私は、五年前に身内を殺されているから。お金に換えられないモノの価値は、誰よりもよく知っているつもりよ。 キャタピラ:それはそれは…。災難続きだったのですね。しかし、そこからまた這い上がる精神力、尊敬します。 クイーン:……ふざけないで。(小声) キャタピラ:えっ? クイーン:なんでもないわ。あぁところで、話は変わるのだけれど―――。 シーン転換。 0:停電。 0: キャタピラ:おや、停電ですな…。直ぐ復旧すると思われるので、もうしばしお待ちを。 クイーン:今日に限って…。少しツイてないわね。 キャタピラ:はは、そうかもしれませんな―――、っ!? 0: 0:何やらガタガタと音が聞こえる。 0: キャタピラ:誰です!?くっ、警備員!侵入者が、んぐっ!?(何者かに口を塞がれる) クイーン:ちょっと、キャタピラ!? 0: 0:キャタピラが何かに抵抗している物音のようだ。 0: キャタピラ:(口を塞がれた状態で)んー、んーー!!んぐぁ……っ!!(何者かに攻撃を受けているようだ) クイーン:何が起こっているの!?護衛のひとはいないの!?誰か、“ジェントル・キャタピラー”が!!誰かーっ!! シーン転換。 0:やがて照明が復旧し、そこには、人間が『三人』と…。 0: 0:心臓部にナイフが突き刺さったキャタピラの死体。 0: クイーン:キャタピラっ!! ハッター:…あれ、なんでこの人死んでるんですー? ラビット:そんなのぼくが聞きたいけどー! クイーン:っ…!?あなたたちは誰!? ハッター:おーっと、見つかってしまいましたぁ☆どうしますかラビット? ラビット:…あれ、おかしいなあ…。まあいいや、そりゃもちろん、目的は達成したも同然だし逃げるが勝ちだよ、脱兎(だっと)の如く! ハッター:かしこまりました☆ ラビット:じゃあね、“女王さま”!できればまたお会いしたいなあー! 0: 0:そうして二人は逃げおおせようとするが…。 0: チェシャー:全員動くな。 0: 0:扉の前を一人の真面目な顔の男性が塞ぐ。彼の手には拳銃。 0: ハッター:あーらーら!塞がれてしまいましたよラビット? ラビット:……知らなーい!道がないならこじ開けるまでさあ!こいつ殺すよ! ハッター:はいはい、かしこまりました! チェシャー:させるわけないだろっ…! 0: 0:そう言って二人が武器を構える前に男は二人の肩を撃ち抜く。 0: ラビット:うぐっ…。 ハッター:痛ぁっ!何をするのですか! チェシャー:お前たちが“ミスター・ジェントル”を殺した犯人だな? ラビット:違うよ…!えーっと、ぼくたちはさっき停電中この部屋で騒ぎがしたから気になってきたただの一般人だよお…! チェシャー:へぇ?じゃあなぜオレをみて武器を抜こうとした? ハッター:そーれーは!テンパっちゃったんです!だってここにいたら疑われると思ったから!すみませんどうか勘弁してください! クイーン:でも、停電が復旧して部屋にいたのはこの二人だったわ! チェシャー:本当ですか、“ミス・ミリオン”? ハッター:でも本当に違うんですー! チェシャー:諦めろ。そんな誤魔化しは通用しない。目撃者がいる以上な。 ハッター:あ、じゃあ目撃者であるクイーンを殺れば無実になるのでは!? ラビット:それはもう殺しちゃってるよハッター! クイーン:チェシャー、早く捕まえてちょうだい! チェシャー:はっ。ですがその前に“ミス・ミリオン”は安全のため、こちらへ。 クイーン:…は、はい。 0: 0: 0: アビス:あー、目を離した隙になんか楽しそうなことになってるー♪ 0: チェシャー:っ!? 0: 0:ドアの方から幼い声してそちらを向くと、 0:そこにはさっきハッターたちが話していた子供?の姿。 0: チェシャー:なに、お前は…っ!? ハッター:あーれーれ!?“アリスちゃん”じゃないですか!またまた奇遇ですね☆ アビス:やあ、“帽子屋”さん♪あと、何回も言ってるけどボクは“アビス”!そんなにファンシーな名前してないよぉ? ラビット:ええ?アビス…? チェシャー:…お前が、“ミスター・ジェントル”を殺したのか? アビス:あはは!ボクが殺すと思うかい、“チェシャー”? チェシャー:な、なぜオレの名前を…っ!? クイーン:…下手な芝居は止しなさい、“チェシャ猫”。大丈夫よ。どうやらこの二人も、アビスの知り合いのようだし。 アビス:そーそー!真面目な護衛のフリする必要ないよぉ?だってきっと、ここにいる人は全員「狂ってる」んだからさ♪ チェシャー:…わかったよ。確かに、このままだと気味が悪いだろうしなぁ。実際オレすらも調子が狂う。…ヒヒヒッ。 0: 0:そういうとチェシャーはにやりと口角を上げる。 0: チェシャー:あぁ、このニタニタ顔を隠すのがこんなに辛いだなんてな!あー、クッソ楽でいいねぇ…。ヒヒヒッ…! ラビット:うわあ、なんという「The・本性表しました!」感だあ。 ハッター:えーっと、ということはこの三人は知り合い…? アビス:そうだよ♪今回ボクはクイーンに雇われて護衛をしてて、チェシャーはそこで死んでるキャタピラのボディガードだよ♪ ハッター:おやおや、そうだったのですね。…あれ、だとすれば何故チェシャーさんはキャタピラの近くにいなかったのですか? クイーン:ええ、わたしもずっと気になっていたわ。あなた、確か十分ほど前にこの部屋を出てから帰ってこなかったわよね。…なぜあなたはレストランを出たのかしらチェシャー? チェシャー:そりゃあ仕事のためさ、女王殿下。この部屋を気にしながらこの階をうろうろしていた不審者を見つけてよ。案の定殺し屋のようだったから始末してたんだ。 チェシャー:…しかし、どうやらそれはオレの気を引くための囮だったらしい。気をひかれているうちに停電を起こされ、戻ったときには時すでに遅し。…言い逃れをするつもりもねぇさ。この事態はオレの責任だ。 ラビット:この部屋を気にしながらうろうろしていた…? ハッター:不審者で、案の定殺し屋…? クイーン:なるほど。…しかし、起こったことはもう取り返せないわ。せめてキャタピラに報いるために、キャタピラ殺しを突き止めるとしましょう。 アビス:えぇー、今は一回帰って犯人探しが得意なトコに任せた方がよくないー? クイーン:いやよ。キャタピラが殺されたということは、もしかしたらわたしが狙われているかもしれないでしょう?もしもの話でも不安は今解消しておきたいの。わたしの性格、知ってるでしょう? アビス:…ふふーん、なるほどね!りょーかい♪ ハッター:と、なると今から犯人捜しが始まるんですね。あぁー、怖いですねぇ☆「メーデー、メーデー!助けてください!」って感じです! ラビット:なに言ってるんだハッター。きみらしくないぞお。この場合は、「マーダー、マーダー!楽しんでください!」だろう? ハッター:ハハハッ!そうですね!そっちの方がよっぽどマッドで、ワタシたちらしい! チェシャー:楽しそうなところ申し訳ねえが、今のところ一番怪しいのはお前たちだぜ? ラビット:え、ぼくたち疑われてるの? アビス:そりゃ勿論!だってボクとチェシャー、クイーンさんには今のところ動機がないけれど…。“帽子屋”さんたちはまだ何が目的なのかも不明だからね♪キミたちも殺し屋なんだし、動機はあるよね? ハッター:うーむーむ。…もうここらで白状しておきますか? ラビット:そうだねえ…。…そうしようかあ。だってぼくたち、やってないもんねえ。 クイーン:白状、ですって? ハッター:ええ!…ワタシたちがもともとここに来た目的は、キャタピラを始末せよという依頼が入ったからです。つまり、キャタピラを殺しに来ました。 チェシャー:なんだと? クイーン:…でも、“もともと”ってことは、弁解があるってことかしら? ラビット:さすが“女王さま”は聡明(そうめい)でいらっしゃるう!そうなんです! ハッター:先の停電で絶好のチャンスだと思いまして、この部屋に忍び込んでサクッ☆と殺ってしまおうと思ったら、その時にはもうキャタピラが何者かと争ってる声が聞こえて。 ラビット:そして電気が回復して、なにがなんだかわからないぼくたちとキャタピラの死体、そして“女王さま”が残ったということなんです!つまり、真犯人は電気がついたその時もう部屋にいなかった! アビス:ふぅん?こっちの視点で聞いたらだいぶ疑わしい主張だけどー? ハッター:かと言って隠していたら余計疑われるでしょう?だから、せめてもの無罪主張ですよ! クイーン:そう。…開き直ってるだけのようにも聞こえるけれど。 ラビット:どうとるかはあなた次第ですよお。ぼくらは本当のことを言ってるだけですからねー! チェシャー:なるほど。ヒヒっ、オレはなんだか嘘をついてるようには見えねえ気がするがねぇ。 アビス:そうだねえ。というか普通殺し屋って自分がやった殺人を隠さないし…。もう逃げられたか、何かしらの理由で言えないのか…、そんな感じじゃないかな?♪ クイーン:……。 ハッター:となると今のところ完全に手掛かりがありませんねえ。 チェシャー:…いやァ?一つだけあるぜ。 ラビット:え、どこどこお? チェシャー:さっきオレが始末した殺し屋の死体だ。アイツの所属を探っていったらいい。犯人はそいつとグルな可能性大なんだからよォ。 アビス:なるほど、名案だね♪ ハッター:…あー。 クイーン:その死体は今どこにあるのかしら? チェシャー:このフロアのレストランを出てすぐの場所だ。きちんとカメラ映らないように殺ったしばれない場所だからそこは心配しなくていいぜェ。 クイーン:わかったわ。…全員で見に行くわよ。全員潔白であるという証明ができていないのだから。 ラビット:勿論ですよお。ぼくはただの疵(きず)しかない“ウサギ”ですから。白であると訴えず、黒であると自嘲(じちょう)せず、灰であると迷いもしませんとも! アビス:え、なにその香り高い文句!面白い♪ ラビット:でしょお?今考えたにしてはなかなかかっこいいでしょお♡ ハッター:ラビット。 転換。 ラビット:なんだい? ハッター:気づかないフリはやめてください。多分チェシャーさんが始末した暗殺者ってウチの…。 ラビット:だいじょぶ、気づいてるよお。そして、そうするとぼくたちへの疑いがさらに深まってしまう可能性がとても大きいことも。 ハッター:…ならいいのです。まぁ、どう転んだとしても楽しめば問題ないですね☆ ラビット:そうそう。狂っていこうよ、ハッター。それこそ、「気が触れ茶(ちゃ)った三月のウサギのように。」! シーン転換。 0:同フロア、倉庫。 0: 0:チェシャーに連れられたそこには別の死体。 0:無精ひげを生やした男のようだ。 0: チェシャー:ほら、こいつだ。 ハッター:あーらーら…。眉間に一発、どうやら即死ですね…。…本当に死んでいらっしゃる。 アビス:…あれ?この人って。 クイーン:何か心当たりがあるの、アビス? アビス:うん。だって…。さっきあのレストランでこの人が“帽子屋”さんたちと話してるの見たもん♪ ラビット:ぎくり。 チェシャー:へェ?コンビじゃなくてトリオだったってわけか? クイーン:トリオで、ハッターと…、ラビット。…あぁ、なるほど。どおりで聞いたことがあると思ったわ。 ラビット:ど、どういうことでしょうかあ。 クイーン:あら、とぼけるつもり?あなたたちが一番わかっているはずでしょう、“お茶会”さん? ハッター:あーれーま。 ラビット:もしかして、ぼくたちのこと知ってるんですかあ…? クイーン:ええ。最近勢いを増している殺し屋トリオ。構成員は“眠りネズミ”、“帽子屋”、“兎”の三人。どこに属してもいないけれど、仕事内容に忠実であるため各方面からの信頼は厚い…。 ラビット:おお、本当によく知ってくれていますねえ、“女王さま”。…あははは、光栄の極みです! クイーン:これでもわたしは裏のセカイをかき乱す“ダイヤのクイーン”。これくらいの情報はすぐ耳に入ってくるの。最近勢いを増している殺し屋なんて特にね。 チェシャー:つまり、オレが殺(と)ったのは残った一人、“眠りネズミ”か。 ハッター:ご名答☆“眠りネズミ”さんには部屋に入るための工作をお願いしてたんですが、まさか始末されてしまっているとは…。哀悼(あいとう)の意を表します…。 ラビット:同じくー。 アビス:あはは、二人とも顔がちっとも寂しがってないけどねー♪ チェシャー:…だが、これではっきりしたんじゃないか?ヒヒヒヒ…ッ!“ミスター・ジェントル”を殺したのはこいつらってことがよ。 クイーン:ええ、そうね。確定的だと思うわ。 ハッター:あー、やっぱりそうなっちゃいますよねぇ…。 ラビット:でも、ぼくたちは本当にやってないんだよお!…信じてくれないよねえ。 アビス:いや?ボクは信じるよ。なんなら味方になってあげてもいい♪ クイーン:…なんですって? ハッター:本当ですか、“アリスちゃん”!? チェシャー:おぉいおい、ついに思考回路まで狂ったかアビス? アビス:思考が回ってないのはそっちの方だよー!キミたち、きっとこの二人…、いや三人に濡れ衣を着せたくて必死なんじゃない?♪ クイーン:なにを言っているの!? アビス:だってよく考えてみてよ♪なんで今この三人は疑われてるんだっけー? チェシャー:そりゃ、状況証拠から明らかだろうよ。この二人は停電が復旧した後の部屋にいた。さらにこいつらには“眠りネズミ”という工作要因もいた。 チェシャー:さらにこいつらはさっき“ジェントル”を殺す依頼を受けていたと白状もしている。…これでどうこいつら以外に犯人がいるとォ? アビス:チェシャー、色々忘れすぎだよ!「眠りネズミ」さんを殺したのはキミなのに気づかないのかい?♪ クイーン:…あなた、何が言いたいの? アビス:思い出してみて欲しいんだけどさあ。…チェシャーが会食部屋を出たのは停電の約十分前。そしてその間にチェシャーは「眠りネズミ」さんを始末している。…この時系列でどうやって停電を起こすのさ? ハッター:自分で自分の首を絞めるようなことを言ってみますけど、そういう工作を事前に“眠りネズミ”さんが行っていたとしたら説明がつくんじゃないですか? アビス:いや、無理だよー。だって、チェシャー。“眠りネズミ”さんはずっと「このフロアを」うろついていたんだろ?♪ ラビット:さっきそう言ってたねえ。ちなみに、一応ぼくたちもこのフロアから構造を観察するって言われてたよお。 アビス:ありがとう「疵(きず)だけのウサギ」さん♪…そしてボクは知っている。このビルの照明を管理する部屋はこのフロアから三階も下にあるんだよ♪ クイーン:っ…。 ハッター:なるほど、このフロアでずっと不審者ムーブをしていた“眠りネズミ”さんには到底そこをいじることはできませんね☆ ラビット:あっ、それに部屋を十分も前に出ていた“チェシャ猫”なら、頑張れば工作することができる…? アビス:いや、それ以前にボクとチェシャーは今日このビルで会食があることを一週間以上前から知っていた。…余裕で工作できちゃうんだよー♪ チェシャー:なにを、ほざきやがる…?オレが“ジェントル”を殺したとでも!? アビス:いいや、キミだけじゃない…♪ ハッター:と、言いますと? アビス:断言しようー!今回の「武器商人“イモムシ”殺人事件(仮)」の犯人はチェシャー。…そして、クイーンさんだ♪ クイーン:なっ…、あなた、何を言っているの!?なんでわたしがチェシャーと組んでないといけないわけ!? ラビット:…あはは。 アビス:だって、そうとしか考えられないんだもん♪あの「凶器」からして、さ? チェシャー:凶器、だと…?…確かに、“ジェントル”はナイフで殺されていた。いや、待て。ナイフだと? アビス:そう、ナイフ。…きっとラビットさん以外は知ってると思うケド、ボクのいつも使ってる得物(えもの)はナイフなんだぁ♪ アビス:そしてキャタピラさんに突き刺さってるナイフ。なんかボクのに似てるなあって思ってたんだけど…、さっき確認したら、本当にボクのナイフが「一本なくなってたんだよ」♪ ハッター:…まさか、“アリスちゃん”のナイフをクイーンさんが盗んで、それで殺したって言いたいんですか!? アビス:そーゆーこと♪どう?辻褄はあってると思うケド。 チェシャー:なにを言ってるんだ、オレたちには動機がねぇだろ!? アビス:確定的な動機はないけど、予想はいくつかできるさ♪だってキミ、もう五年もキャタピラさんに仕えてるんだろ?もしかしたらなんらかの不満を持っていた、とも考えられるし、 アビス:今やキャタピラさんはクイーンさんと肩を並べるほどに有名な武器商だ。“ダイヤのキング”とまではいかないけれど、かなり多いであろう資金を狙っていた、なんて考えることもできる♪ ラビット:それに、“女王さま”もキャタピラとは長い付き合いでしょお?「何らかの恨み」は持っててもおかしくないよねえ。 クイーン:っ!(少しこわばった表情を見せる) ラビット:あれえ?あははは、図星?図星だったかなあ…?あははははは、やっぱりいい顔するなあ、“女王さま”。そんな顔が見たかったよお。 クイーン:アビス!わたしを裏切る気なの!?あなたは何がしたいの!? アビス:あはは、さて、何がしたいんだろうねえ♪と、いうわけだよ二人とも。“眠りネズミ”さんも身代わりにするためにチェシャーが殺した。…殺しの予定が同日にブッキングだなんて、災難だったねえ♪ ハッター:いえいえ!わたしとしては楽しかったのでオールオッケーです☆楽しかったですよ、“アリスちゃん”の推理ショー! ラビット:確かに、今考えてみれば“女王さま”、キャタピラの死体見て全然ショック受けてなさそうだったもんねえ。 クイーン:そんなの後付けよ!ほざくのもいい加減にして! チェシャー:チッ、こんなことでっち上げて、本当にどういうつもりなんだ、“深淵”(しんえん)! アビス:だから事実だって、でっち上げてないもん、ボク。 チェシャー:クソったれ…。 ハッター:さて、では事件は解決ですが…。一応ワタシたち仲間を殺されてるので、流石に仇を取らないと“眠りネズミ”さんがいたたまれません。…だから“アリスちゃん”、殺しましょう?ねぇ、ねぇ?☆ ラビット:…そうだねえ、それがいいやあ。 クイーン:い、いや…。なんでこんなことにっ…。わたしは、ただっ…。(恐怖で少し涙ぐんでいる) チェシャー:“ミリオン”、安心してくれ、アンタはオレが護る。…命に代えても。 クイーン:……。 アビス:…でもねえ。残念なお知らせなんだけど。これだけまくしたててみたけど、ボクの立ち位置はあくまで「クイーンさんの護衛」。…いくら狂いきってるボクでも、護衛対象を殺すことはできないよ。 クイーン:えっ?…あぁ、なんだ。そういうこと。(少し笑う) ハッター:そーおーか…。じゃあ、「遊べるのは一人だけ」、ですね…☆ アビス:「二人とも」、そゆこと♪ チェシャー:チッ…!! 0: 0:チェシャーは拳銃を取り出し三人に向けて発砲する。 0:今回は全員避ける。 0: ラビット:おあっ! アビス:おーっと、危ないじゃんかチェシャー♪もしクイーンさんに当たったらどうするのさ? ハッター:いや、それでいいのですよ“アリスちゃん”☆そっちのほうがはらはらして…、楽しいでしょう!? アビス:あはは、一理あるかもー?♪ 0: 0:そう言いながらアビスはナイフを、ハッターは銃剣を取り出す。 0: チェシャー:チッ、なんだってこんなことにっ…!?クソッ!!(部屋を飛び出す) ハッター:あはは、待ってくださーい☆(追いかけていく) アビス:さあて…、ね、クイーンさん。大丈夫だったでしょ?怖がらせてごめんね!♪じゃあ…、ちょっと行ってくる♪(さらに続いて部屋を飛び出す) 0: 0: クイーン:…ふふ、本当に頭のいい子…。 ラビット:……。 クイーン:…あら、あなたはいかないのかしら?傷顔(きずがお)の殺し屋さん。 ラビット:…なんで。 クイーン:え? ラビット:なんで、笑うんですか?“女王さま”。 クイーン:…なん、で? ラビット:ぼくは、あなたの…、 0: 0: ラビット:暗い暗い、土砂降りの顔が見たいのに!! 0: 0: クイーン:あなた、なにを…!? ラビット:あはははは。でも、いいや。顔なんてこれから歪めればいいんだもんねえ♡こうしてまた、「ぼくの“女王さま”」と一緒になれたんだもん。えへへ、ふふ、あはははははは。えいっ! 0: 0:ラビットがクイーンを押し倒し、覆いかぶさる。 0: クイーン:い、いや…、なんなのっ…。 ラビット:えへへ、その顔、久しぶりだあ…♡ずっと、ずっとその顔が見たかったんだよお…?♡五年以上我慢したんだもん…♡ クイーン:っ…!?待って、その純白の眼っ…、あなた、まさか…!? ラビット:やっと思い出してくれたあ?えへへへへ。五年以上ぶりだねえ、“女王さま”…♡ずぅーーっと、会いたかったよ…♡ クイーン:なんで、なんのつもりなの、“マーチ”!? 転換。 0:ビルの通路。 0: 0:笑いながら追いかける二人と、なんとか凌ぐチェシャー。 0: アビス:もう、にゃんこは逃げ足が速いなあ…♪ ハッター:あ、“アリスちゃん”ストップー!ワタシ、そういえばさっき肩抜かれてるので結構消耗激しいですっ! アビス:えー、でも仇討つんだろっ?♪がんばれがんばれー♪ ハッター:はあい、“帽子屋”さん、アリスちゃんのために頑張りまあす☆ チェシャー:くっ、流石に二人がかりはきついなぁっ…! アビス:そこだっ!♪ チェシャー:ぐぁっ、ちぃ…! 0: 0:アビスのナイフがチェシャーの左足を貫く。 0:チェシャーは足が動かせないようで、移動が遅くなり、迎撃もほとんどできなくなる。 0: ハッター:ナイスです、流石“アリスちゃん”☆ アビス:いやいやー、“帽子屋”さんの誘導サポートがよかったからやりやすかったよー♪ ハッター:やりました!“アリスちゃん”にお褒め頂きましてワタシ大歓喜です☆ アビス:もう、大げさだよぉ♪ 0: 0:笑いながらチェシャーに詰め寄る二人。 0: チェシャー:くっそ、ここまで、か…。 ハッター:ええ、終わりです☆よくも身代わりに“眠りネズミ”さんを殺してくれましたねえ…?☆ チェシャー:待ってくれ、オレは本当に“ジェントル”のボディガードをしていただけなんだ!ただ無意味にそいつを殺したわけじゃねえ、本当なんだ…! アビス:うん。「知ってる」♪ チェシャー:っ…!そりゃ、お前だよなぁ…。アビス…。 ハッター:えぇ?どういうことです? アビス:じゃあ、答え合わせしよっかぁ♪ 0: アビス:キャタピラさんを殺したのは、このボクさ♪ 0: ハッター:あれぇ!?じゃあさっきの推理なんだったんですー!? アビス:状況に合うようにでっち上げただけだよ♪それに、今更気づいたけどあの推理、全然ボクが実行犯でも辻褄が合うんだよね…♪いやぁ、あの時はその場のノリで騙せたからよかったぁ! チェシャー:…“ジェントル”の次は、オレを殺すのか…? アビス:あぁ、そうとも♪でも、ボクだけを恨んじゃダメだよ?♪これも依頼されてやってることだから♪ チェシャー:っ…。オレは殺し屋だ。恨みはしない。恨まれて当然のことをやってる自覚はあるからな。…冥途の土産に教えてくれ。今回の依頼主は誰なんだ。 アビス:え?そりゃもちろん…。 0: アビス:クイーンさん、だよ? 0: チェシャー:な、に…? ハッター:おや、本当ですか。しかし、いったいなぜ彼女はこの二人を? アビス:それは…、キミがよくよく知ってるだろう、チェシャー? チェシャー:いや、こればかりは本当に知らねえ!オレはてっきり、“ミス・ミリオン”と“ミスター・ジェントル”の関係は良好だとばっかり…! アビス:…チェシャー。流石にそこでしらばっくれるのは殺し屋の流儀に反するんじゃないかなあ?まあ、死体で遊ぶボクが言うことじゃないかもだけど。 チェシャー:違う、本当に、本当にわからないんだ…。オレは、“ジェントル”は、そんなにも重大なことをしてしまったのか…? アビス:…弟さん、だよ。 チェシャー:…おとうと、だと…? 転換。 0:これは五年以上も前の話。 0: 0:喪服に身を包んだクイーンと“マーチ”。 0: マーチ:“女王”さま。調査結果が出たようです。 クイーン:…伝えて。 マーチ:はい。あなたの弟を殺したのは…、“ジェントル・キャタピラー”の専属の護衛兼殺し屋である、“チェシャー”、だそうです。 クイーン:っ!!あの、武器商が…。私の、弟を…っ。…きっと、わたしの財産を狙ったんだわ…。それで、わたしの精神を病ませるために、弟を…。…マーチ。…あのクソ野郎を殺すわ。殺し屋を送って。 マーチ:かしこまりました。 クイーン:なんとしてでも、殺すわ。…でも、怨嗟(えんさ)に囚(とら)われればわたしはきっと、もっと大事なものを失ってしまう。だから…。 クイーン:絶対に裏世界の覇権を握って、天国の弟が感嘆するくらい、強くなってやる…! マーチ:その意気です、“女王さま”。…ああ、なんてかわいくて、かわいそうなんだろう。…ふふふ、あははははははは♡ 転換。 0:そして現在。 0: クイーン:なんで、あなたは死んだはずじゃあ…? ラビット:あぁ、死んだよお♡“チェシャ猫”暗殺を悉(ことごと)く失敗して、ついにあなたは腕があるからと言って、当時護衛をしていたぼくに殺しに行かせた。でも、ぼくもしくじってしまった。 ラビット:隠ぺいするためにチェシャーはぼくの顔を切り刻み、誰にもわからない場所に捨てた。…でも、ぼくの命はその時、首の皮一枚繋がってたんだ。 ラビット:そして力を振り絞ってなんとか治療を受けて…、「ぼく」は生き返った。でも、あなたに褒めてもらった綺麗な顔立ちと無敗の腕は、あの時失った。「マーチ」はあのとき死んだんだよ。 ラビット:だから今のぼくはただのウサギ。根はそのまんまだけれど、三月を冠することはできないし、白うさぎにもなりきれない。…えへへへへ、あはははははははは♡ クイーン:あ、あなたは、何が目的、なの…。 ラビット:それはね、“女王さま”。 0: ラビット:「あなたの苦しむ顔が、泣き顔が、絶望の表情がみたい。」それだけ…♡だって、ぜんぶ、ぜえんぶ愛おしく見えるから…♡ 0: クイーン:な、なにを言ってるの…?わたしの知ってる“マーチ”じゃないっ…。 ラビット:だから言ってるでしょお?ぼくはただのウサギ。気が狂う三月は猫に喰べられちゃったんだよ…♡ クイーン:い、いや…、お願いだから目を覚まして…。 ラビット:あははは、えへへへへへ♡でも、あなたの弟さんのおかげでぼくとあなたはまた出会えた。…やっぱり、あの時「殺しておいてよかったあ」ー♡ クイーン:…え…、いま、なん、て…? ラビット:ああ、いけない、ぼくったら。口が滑っちゃったあ。あー、でもそっちのがいっかあ♡そっちのがもっと絶望してくれるよねえ♡そうだよお。キャタピラやチェシャーなんかじゃない。 0: ラビット:あなたの弟を殺したのは、このぼくさ♡ 0: 0:――――――――― 0: チェシャー:いや、待ってくれ。オレは本当にそんなこと殺ってない!それこそ濡れ衣だ! アビス:…あぁ、そう?まあでも仕方ないよね。キャタピラさんはもう死んじゃってるし。死人に口なし、だよ♪ ハッター:ええ、それにアナタがどれだけ無罪を主張しようと、これは依頼ですから揺るぎません☆それはあなたもよぉーく理解しているでしょう?☆ チェシャー:……わかった。だが、これまで連れ添った仲だ。一つだけ、伝言を頼めるか? アビス:いいよ、それくらいは聞こう♪ チェシャー:…ありがとう。じゃあ、こう伝えてくれ。「“チェシャ猫”は―――。 0: クイーン:いやあぁぁぁーーーっ!!! 0: チェシャー:っ…! ハッター:ひーめーい!?それもクイーンさんの!? アビス:くっ、流石に護衛が先だねっ♪あとで絶対に殺しに来るからー!♪(クイーンのいる部屋へ走る) ハッター:ハハハ!お供しますよ“アリスちゃん”っ!☆(アビスに続く) チェシャー:…ハァー。自分の口から言えってか…?ヒヒ…。 0: 0:――――――――― 0: クイーン:いやあぁぁぁーーーっ!!! ラビット:えへへ、あはははは♡ずっと無実の人を恨んでいた罪悪感はどうかなあ?♡昔の信頼した部下がすべての黒幕だったなんてどう思う?♡そしてそいつが蘇ってこんなにも自分を責め立てる♡ ラビット:今までずっと、ずっと、ずぅぅーっと、あなたは何を恨んでいたんだろうねえ?♡あははははははっ!! クイーン:ぁ、あぁぁ…。ころして、もういやっ…。弟に、あわせて…。 ラビット:あはははははは!!♡そう、そのカオが見たかったんだあ♡もっと、もっと見せて♡殺してなんてあげないよお…?♡もうぼくは“マーチ”じゃないけど…、今だけはあなたを独り占めしてもいいよね♡ ラビット:あぁ…♡ほんとにさいっこぉ…♡もしすべてがうまくいっていたらぼくは、女王さまの前で首を吊ってみせたのになあ…!あはははははは♡ ラビット:とにかくう…。今はもっとその顔をぼくに見せろ!♡泣きじゃくって、恐怖して、絶望して、喚け♡♡ 0: アビス:でも残念、時間切れー♪ 0: 0:その声と共に、ナイフが一本ラビットの背中に刺さる。 0: ラビット:う、ぐ…。…あー、いったあ…。ぶっ殺すぞ…? アビス:うわぁ、なんという「The・本性表しました!」感だあ、おもしろー♪ クイーン:ア、ビスっ…。たすけて…。 アビス:うん、大丈夫だよクイーンさん♪すぐにそいつ引きはがすから…♪ ラビット:…せっかくいい所だったのに…、邪魔なんだよてめぇらあ!! 0: 0:そういい放ちラビットは銃を発砲しようとするが…。 0:決着は一瞬だった。 0: ラビット:…うぐ、ぁぁ…。 0: 0:銃弾を二発腹部に受け倒れ込むラビット。 0: ハッター:うんうん、流石の狂気です、ラビット。アナタは本当に三月のウサギのように気が触れている。それも愛する人に、歪んだ感情を持って。そんな今のあなたはそれはそれは恐ろしく強かったことでしょう。 ハッター:しかし…。あなたは再び、“ニタニタ笑いの猫”に出し抜かれた☆ チェシャー:…お前たちに一発入れておいて、正解だったよ。おかげで楽に殺れる。 ラビット:チ、チェシャ、猫ぉっ…! チェシャー:…いいか、ヘンタイ。よく覚えておけ。“愛”っていうのはな。 チェシャー:自分本位じゃあ必ず、悪意に堕ちるんだ。それが決して抗えない性(さが)だったとしても。 0: 0:チェシャーがラビットの眉間を撃ち抜く。 0: チェシャー:…あばよ、歪んだ愛しか持てなかった、不器用なウサギ。 アビス:ふふ、流石チェシャー。かっこいいなあ。♪…さて。大丈夫かな、クイーンさん? クイーン:…わ、わたしは…。…わたしは、なんてことを…。 ハッター:はは、大丈夫ですよ☆この裏のセカイじゃあ人の生き死になんて頻繁に起こる問題です。それが今回はキャタピラさんや“眠りネズミ”さんの番だった。それだけですとも。 ハッター:だからワタシ、なんか成り行きで仲間が二人亡くなりましたが、全然気にしてません!むしろ…。楽しんでます☆ アビス:それに、キャタピラさんにはもう謝れないけど、今ここには謝れる人がいるじゃん♪ クイーン:…チェシャー。ごめんなさい…。わたしは今までずっとあなたに…。 チェシャー:大丈夫。…仕方のないことだから。この裏のセカイは、理不尽で満ちている。慣れっこだ、これくらい。 クイーン:…アビス。 アビス:はいはーい? クイーン:…チェシャーを殺す依頼は、取りやめよ。 アビス:おっけー、りょーかい♪あはは、仲直りできてよかったね♪ ハッター:とーりーま!めでたしめでたしー、ですね☆ クイーン:えぇ。…アビス、そしてハッターも。巻き込んでしまって本当にごめんなさい。 ハッター:いえいえー☆何度も言いますが、ワタシは楽しかったので!オールオッケーですとも! アビス:同じく♪…あ、そういえばチェシャー。伝言、あるんじゃなかったの?もう自分の口から伝えられるよ? チェシャー:あぁ、そうだった。…“ミス・ミリオン”。 クイーン:なにかしら…? 0: チェシャー:“チェシャ猫”は、どこにでも現れる。いつでもどこでも、あなたをお護りして見せよう。だからきっと大丈夫。なぜならば…、…オレの首は、絶対に斬ることができねえからさ! 転換。 アビス:(N)と、いうことで!凄腕の殺し屋二人と表の世界でも名高い武器商人の死によってこの不思議でダークなミステリーは幕を閉じた! アビス:(N)ちなみにどうやらラビットが持ってきたキャタピラ殺害の依頼はラビットが作り上げた偽装だったらしい!執念が凄まじいねぇ♪ アビス:(N)そして一か月の月日が経過しー? 0:場面転換。とある空港に集まる四人。 クイーン:さて、今回は結構大きな商談だから、しくじるわけにはいかないわ。今日はおふざけ禁止よ。わかった? アビス:はいはーい、真面目に不誠実に頑張りまーす♪ ハッター:あーれーれ!?なんか一瞬で矛盾しましたけどー!? チェシャー:おふざけ禁止って言ってもアビスとハッターはふざけるだろ…。 アビス:だって、楽しくなっちゃうもんねえ♪ ハッター:ねー、“アリスちゃん”☆ クイーン:もう、あんまりにも酷かったら…。首、斬るわよ? ハッター:ひぇえ、なかなかに恐ろしい…。前のチームではありえないパワハラですよぉ☆ チェシャー:…あぁ前のチームで思い出したが。“ミリオン”。アンタ、自室にまだ“マーチ”の写真飾ってんのか? クイーン:えぇ。…あの時、とっても怖い経験はしたけれど、あれはあの子なりの不器用な愛し方だったってチェシャーに言われてハッとして。。だから、あの子を覚えていることが、せめてもの弔いかと思って。 アビス:流石、“ダイヤのクイーン”はお金だけじゃないね! クイーン:ちょっと、それどういうことかしら? アビス:じょーだんだよぉ♪あはは! ハッター:…おっと、来ましたね、ジェット機☆ チェシャー:んじゃまあ、今回もサクッと殺ろうぜ。 クイーン:ちょっと、今回は誰も殺さないでね!? チェシャー:わーってるよ、“ユアマジェスティ”。…ヒヒっ。 ハッター:ほらほら、いちゃついてないで行きますよぉー☆ 0: 0: アビス:(N)悪意を狂気で塗りつぶし、殺し屋たちは今日も嗤(わら)う。 アビス:(N)もしも深淵(しんえん)に出会ったら、みんなきっと、こういうのさ! 0: アビス:(N)「マーダー、マーダー!遊びましょう?」ってね…♪ 0: 0: 0:アビスの無邪気な笑い声が響いている…。 0: 0: 0:-----Welcome to the Murderland.

とても嬉しい気持ち でっち上げる 一応言われてたよ。 チッ ただ無意味にソイツを→ただ無意味にそいつを、眠りネズミを殺したわけじゃねえ。 待ってくれ→こものっぽいからなおす 0:とある高級レストランの個室。男女が会食をしている。 0: キャタピラ:ふふふ、今回も商談成立ですなあ。 クイーン:えぇ。こちらとしても良い契約を結べたから、とても嬉しい気持ちだわ、 キャタピラ:それはなにより。いやぁ、本当いつも“ダイヤのクイーン”さんには助けられていますよ。流石、大富豪でございます。 クイーン:もう、その名前で呼ぶのはやめて頂戴。本当ならわたしも“ハート”のマークを名乗りたかったのだから。 キャタピラ:おっと、これは失礼いたしました。 クイーン:ふふ。まぁ…、夜は長いわ。せっかくなのだし、思い出話に花を咲かせるとしましょう? シーン転換。 0:同時刻、同レストラン内にて。 0:シルクハットの人物と純白の眼に顔が傷だらけの人物がテーブルについている。 0: ハッター:…勢いでここまで来たは良いですが、ここからどうするのでしょう? ラビット:うん、ぼくもすっかり頭になかったや、それ。ここ結構警備が厳重で忍び込むの難しそうだしなあー。 ハッター:…とりあえず、料理いただきますか☆ ラビット:そうだねえ。せっかくのフルコースだもの。味わわなくちゃ損だよなあ。 ハッター:そう考えると別行動の“彼”、ご飯食べられなくて可哀想ですねぇー。 0: アビス:ねぇ、アナタたちなにしてるのー?♪ 0: ラビット:へっ?…あー、ぼくたちかい? アビス:勿論。なんだかあそこの個室を気にしている感じだったからさ♪ ハッター:いや?気のせいじゃあないですか…って、あれ!?アナタ、いつぞやのー!? アビス:んー?…あ、“帽子屋”さん? ハッター:そうですー!いやぁ、覚えていてくれたのですね、“アリスちゃん”☆ アビス:ちょっとー?その名前は恥ずかしいからやめてって言ったでしょー? ラビット:あー、えーっと。知り合いかい、ハッター? ハッター:えぇ、“お茶会”の前に一度だけ一緒に仕事をしたことがありまして。 アビス:初めまして、“傷顔”さん! ラビット:おお、はじめましてー。…あれ、でも待ってよ?今ここにぼくたちの同類がいるってことはー…? アビス:あはは、どうだろうねっ!…あっ、そろそろ時間だから行かなきゃ!またあとで話そうね! 0: 0:そう言って“アリスちゃん”はふらりと立ち去る。 0: ハッター:はぁー、やっぱり“アリスちゃん”はかわいいですねぇ…。 ラビット:ハッター、もしかしたら今の子、ぼくたちの敵かもよ? ハッター:えぇ?まーさーか☆“アリスちゃん”に限ってそんなことありえませんってー! ラビット:でも、あの子がぼくたちと同類なら、意味もなくこんなところにいるわけが―――。 シーン転換。真っ黒背景。 0:突然ブレーカーが落ちて暗闇になる。 0: ラビット:ありゃあ、停電だ。 ハッター:停電ですねぇ。つまり、今が「チャンス」。 ラビット:だねえ、行こう。 ハッター:はっ!もしかして“眠りネズミ”さんがワタシたちのためにブレーカーを落としてくれたのでは!? ラビット:なるほど、そういうことか!ありがとう“眠りネズミ”!きみの犠牲は無駄にしないぞお。 ハッター:死んだことになっていらっしゃるー。 シーン転換。 0:先ほどの個室の戻る。 0: キャタピラ:―――なるほど…。いやはや、わかりますよ。私も何度か、自分の信頼する部下を失ったことがありますから。 クイーン:…えぇ。それに加えて私は、五年前に身内を殺されているから。お金に換えられないモノの価値は、誰よりもよく知っているつもりよ。 キャタピラ:それはそれは…。災難続きだったのですね。しかし、そこからまた這い上がる精神力、尊敬します。 クイーン:……ふざけないで。(小声) キャタピラ:えっ? クイーン:なんでもないわ。あぁところで、話は変わるのだけれど―――。 シーン転換。 0:停電。 0: キャタピラ:おや、停電ですな…。直ぐ復旧すると思われるので、もうしばしお待ちを。 クイーン:今日に限って…。少しツイてないわね。 キャタピラ:はは、そうかもしれませんな―――、っ!? 0: 0:何やらガタガタと音が聞こえる。 0: キャタピラ:誰です!?くっ、警備員!侵入者が、んぐっ!?(何者かに口を塞がれる) クイーン:ちょっと、キャタピラ!? 0: 0:キャタピラが何かに抵抗している物音のようだ。 0: キャタピラ:(口を塞がれた状態で)んー、んーー!!んぐぁ……っ!!(何者かに攻撃を受けているようだ) クイーン:何が起こっているの!?護衛のひとはいないの!?誰か、“ジェントル・キャタピラー”が!!誰かーっ!! シーン転換。 0:やがて照明が復旧し、そこには、人間が『三人』と…。 0: 0:心臓部にナイフが突き刺さったキャタピラの死体。 0: クイーン:キャタピラっ!! ハッター:…あれ、なんでこの人死んでるんですー? ラビット:そんなのぼくが聞きたいけどー! クイーン:っ…!?あなたたちは誰!? ハッター:おーっと、見つかってしまいましたぁ☆どうしますかラビット? ラビット:…あれ、おかしいなあ…。まあいいや、そりゃもちろん、目的は達成したも同然だし逃げるが勝ちだよ、脱兎(だっと)の如く! ハッター:かしこまりました☆ ラビット:じゃあね、“女王さま”!できればまたお会いしたいなあー! 0: 0:そうして二人は逃げおおせようとするが…。 0: チェシャー:全員動くな。 0: 0:扉の前を一人の真面目な顔の男性が塞ぐ。彼の手には拳銃。 0: ハッター:あーらーら!塞がれてしまいましたよラビット? ラビット:……知らなーい!道がないならこじ開けるまでさあ!こいつ殺すよ! ハッター:はいはい、かしこまりました! チェシャー:させるわけないだろっ…! 0: 0:そう言って二人が武器を構える前に男は二人の肩を撃ち抜く。 0: ラビット:うぐっ…。 ハッター:痛ぁっ!何をするのですか! チェシャー:お前たちが“ミスター・ジェントル”を殺した犯人だな? ラビット:違うよ…!えーっと、ぼくたちはさっき停電中この部屋で騒ぎがしたから気になってきたただの一般人だよお…! チェシャー:へぇ?じゃあなぜオレをみて武器を抜こうとした? ハッター:そーれーは!テンパっちゃったんです!だってここにいたら疑われると思ったから!すみませんどうか勘弁してください! クイーン:でも、停電が復旧して部屋にいたのはこの二人だったわ! チェシャー:本当ですか、“ミス・ミリオン”? ハッター:でも本当に違うんですー! チェシャー:諦めろ。そんな誤魔化しは通用しない。目撃者がいる以上な。 ハッター:あ、じゃあ目撃者であるクイーンを殺れば無実になるのでは!? ラビット:それはもう殺しちゃってるよハッター! クイーン:チェシャー、早く捕まえてちょうだい! チェシャー:はっ。ですがその前に“ミス・ミリオン”は安全のため、こちらへ。 クイーン:…は、はい。 0: 0: 0: アビス:あー、目を離した隙になんか楽しそうなことになってるー♪ 0: チェシャー:っ!? 0: 0:ドアの方から幼い声してそちらを向くと、 0:そこにはさっきハッターたちが話していた子供?の姿。 0: チェシャー:なに、お前は…っ!? ハッター:あーれーれ!?“アリスちゃん”じゃないですか!またまた奇遇ですね☆ アビス:やあ、“帽子屋”さん♪あと、何回も言ってるけどボクは“アビス”!そんなにファンシーな名前してないよぉ? ラビット:ええ?アビス…? チェシャー:…お前が、“ミスター・ジェントル”を殺したのか? アビス:あはは!ボクが殺すと思うかい、“チェシャー”? チェシャー:な、なぜオレの名前を…っ!? クイーン:…下手な芝居は止しなさい、“チェシャ猫”。大丈夫よ。どうやらこの二人も、アビスの知り合いのようだし。 アビス:そーそー!真面目な護衛のフリする必要ないよぉ?だってきっと、ここにいる人は全員「狂ってる」んだからさ♪ チェシャー:…わかったよ。確かに、このままだと気味が悪いだろうしなぁ。実際オレすらも調子が狂う。…ヒヒヒッ。 0: 0:そういうとチェシャーはにやりと口角を上げる。 0: チェシャー:あぁ、このニタニタ顔を隠すのがこんなに辛いだなんてな!あー、クッソ楽でいいねぇ…。ヒヒヒッ…! ラビット:うわあ、なんという「The・本性表しました!」感だあ。 ハッター:えーっと、ということはこの三人は知り合い…? アビス:そうだよ♪今回ボクはクイーンに雇われて護衛をしてて、チェシャーはそこで死んでるキャタピラのボディガードだよ♪ ハッター:おやおや、そうだったのですね。…あれ、だとすれば何故チェシャーさんはキャタピラの近くにいなかったのですか? クイーン:ええ、わたしもずっと気になっていたわ。あなた、確か十分ほど前にこの部屋を出てから帰ってこなかったわよね。…なぜあなたはレストランを出たのかしらチェシャー? チェシャー:そりゃあ仕事のためさ、女王殿下。この部屋を気にしながらこの階をうろうろしていた不審者を見つけてよ。案の定殺し屋のようだったから始末してたんだ。 チェシャー:…しかし、どうやらそれはオレの気を引くための囮だったらしい。気をひかれているうちに停電を起こされ、戻ったときには時すでに遅し。…言い逃れをするつもりもねぇさ。この事態はオレの責任だ。 ラビット:この部屋を気にしながらうろうろしていた…? ハッター:不審者で、案の定殺し屋…? クイーン:なるほど。…しかし、起こったことはもう取り返せないわ。せめてキャタピラに報いるために、キャタピラ殺しを突き止めるとしましょう。 アビス:えぇー、今は一回帰って犯人探しが得意なトコに任せた方がよくないー? クイーン:いやよ。キャタピラが殺されたということは、もしかしたらわたしが狙われているかもしれないでしょう?もしもの話でも不安は今解消しておきたいの。わたしの性格、知ってるでしょう? アビス:…ふふーん、なるほどね!りょーかい♪ ハッター:と、なると今から犯人捜しが始まるんですね。あぁー、怖いですねぇ☆「メーデー、メーデー!助けてください!」って感じです! ラビット:なに言ってるんだハッター。きみらしくないぞお。この場合は、「マーダー、マーダー!楽しんでください!」だろう? ハッター:ハハハッ!そうですね!そっちの方がよっぽどマッドで、ワタシたちらしい! チェシャー:楽しそうなところ申し訳ねえが、今のところ一番怪しいのはお前たちだぜ? ラビット:え、ぼくたち疑われてるの? アビス:そりゃ勿論!だってボクとチェシャー、クイーンさんには今のところ動機がないけれど…。“帽子屋”さんたちはまだ何が目的なのかも不明だからね♪キミたちも殺し屋なんだし、動機はあるよね? ハッター:うーむーむ。…もうここらで白状しておきますか? ラビット:そうだねえ…。…そうしようかあ。だってぼくたち、やってないもんねえ。 クイーン:白状、ですって? ハッター:ええ!…ワタシたちがもともとここに来た目的は、キャタピラを始末せよという依頼が入ったからです。つまり、キャタピラを殺しに来ました。 チェシャー:なんだと? クイーン:…でも、“もともと”ってことは、弁解があるってことかしら? ラビット:さすが“女王さま”は聡明(そうめい)でいらっしゃるう!そうなんです! ハッター:先の停電で絶好のチャンスだと思いまして、この部屋に忍び込んでサクッ☆と殺ってしまおうと思ったら、その時にはもうキャタピラが何者かと争ってる声が聞こえて。 ラビット:そして電気が回復して、なにがなんだかわからないぼくたちとキャタピラの死体、そして“女王さま”が残ったということなんです!つまり、真犯人は電気がついたその時もう部屋にいなかった! アビス:ふぅん?こっちの視点で聞いたらだいぶ疑わしい主張だけどー? ハッター:かと言って隠していたら余計疑われるでしょう?だから、せめてもの無罪主張ですよ! クイーン:そう。…開き直ってるだけのようにも聞こえるけれど。 ラビット:どうとるかはあなた次第ですよお。ぼくらは本当のことを言ってるだけですからねー! チェシャー:なるほど。ヒヒっ、オレはなんだか嘘をついてるようには見えねえ気がするがねぇ。 アビス:そうだねえ。というか普通殺し屋って自分がやった殺人を隠さないし…。もう逃げられたか、何かしらの理由で言えないのか…、そんな感じじゃないかな?♪ クイーン:……。 ハッター:となると今のところ完全に手掛かりがありませんねえ。 チェシャー:…いやァ?一つだけあるぜ。 ラビット:え、どこどこお? チェシャー:さっきオレが始末した殺し屋の死体だ。アイツの所属を探っていったらいい。犯人はそいつとグルな可能性大なんだからよォ。 アビス:なるほど、名案だね♪ ハッター:…あー。 クイーン:その死体は今どこにあるのかしら? チェシャー:このフロアのレストランを出てすぐの場所だ。きちんとカメラ映らないように殺ったしばれない場所だからそこは心配しなくていいぜェ。 クイーン:わかったわ。…全員で見に行くわよ。全員潔白であるという証明ができていないのだから。 ラビット:勿論ですよお。ぼくはただの疵(きず)しかない“ウサギ”ですから。白であると訴えず、黒であると自嘲(じちょう)せず、灰であると迷いもしませんとも! アビス:え、なにその香り高い文句!面白い♪ ラビット:でしょお?今考えたにしてはなかなかかっこいいでしょお♡ ハッター:ラビット。 転換。 ラビット:なんだい? ハッター:気づかないフリはやめてください。多分チェシャーさんが始末した暗殺者ってウチの…。 ラビット:だいじょぶ、気づいてるよお。そして、そうするとぼくたちへの疑いがさらに深まってしまう可能性がとても大きいことも。 ハッター:…ならいいのです。まぁ、どう転んだとしても楽しめば問題ないですね☆ ラビット:そうそう。狂っていこうよ、ハッター。それこそ、「気が触れ茶(ちゃ)った三月のウサギのように。」! シーン転換。 0:同フロア、倉庫。 0: 0:チェシャーに連れられたそこには別の死体。 0:無精ひげを生やした男のようだ。 0: チェシャー:ほら、こいつだ。 ハッター:あーらーら…。眉間に一発、どうやら即死ですね…。…本当に死んでいらっしゃる。 アビス:…あれ?この人って。 クイーン:何か心当たりがあるの、アビス? アビス:うん。だって…。さっきあのレストランでこの人が“帽子屋”さんたちと話してるの見たもん♪ ラビット:ぎくり。 チェシャー:へェ?コンビじゃなくてトリオだったってわけか? クイーン:トリオで、ハッターと…、ラビット。…あぁ、なるほど。どおりで聞いたことがあると思ったわ。 ラビット:ど、どういうことでしょうかあ。 クイーン:あら、とぼけるつもり?あなたたちが一番わかっているはずでしょう、“お茶会”さん? ハッター:あーれーま。 ラビット:もしかして、ぼくたちのこと知ってるんですかあ…? クイーン:ええ。最近勢いを増している殺し屋トリオ。構成員は“眠りネズミ”、“帽子屋”、“兎”の三人。どこに属してもいないけれど、仕事内容に忠実であるため各方面からの信頼は厚い…。 ラビット:おお、本当によく知ってくれていますねえ、“女王さま”。…あははは、光栄の極みです! クイーン:これでもわたしは裏のセカイをかき乱す“ダイヤのクイーン”。これくらいの情報はすぐ耳に入ってくるの。最近勢いを増している殺し屋なんて特にね。 チェシャー:つまり、オレが殺(と)ったのは残った一人、“眠りネズミ”か。 ハッター:ご名答☆“眠りネズミ”さんには部屋に入るための工作をお願いしてたんですが、まさか始末されてしまっているとは…。哀悼(あいとう)の意を表します…。 ラビット:同じくー。 アビス:あはは、二人とも顔がちっとも寂しがってないけどねー♪ チェシャー:…だが、これではっきりしたんじゃないか?ヒヒヒヒ…ッ!“ミスター・ジェントル”を殺したのはこいつらってことがよ。 クイーン:ええ、そうね。確定的だと思うわ。 ハッター:あー、やっぱりそうなっちゃいますよねぇ…。 ラビット:でも、ぼくたちは本当にやってないんだよお!…信じてくれないよねえ。 アビス:いや?ボクは信じるよ。なんなら味方になってあげてもいい♪ クイーン:…なんですって? ハッター:本当ですか、“アリスちゃん”!? チェシャー:おぉいおい、ついに思考回路まで狂ったかアビス? アビス:思考が回ってないのはそっちの方だよー!キミたち、きっとこの二人…、いや三人に濡れ衣を着せたくて必死なんじゃない?♪ クイーン:なにを言っているの!? アビス:だってよく考えてみてよ♪なんで今この三人は疑われてるんだっけー? チェシャー:そりゃ、状況証拠から明らかだろうよ。この二人は停電が復旧した後の部屋にいた。さらにこいつらには“眠りネズミ”という工作要因もいた。 チェシャー:さらにこいつらはさっき“ジェントル”を殺す依頼を受けていたと白状もしている。…これでどうこいつら以外に犯人がいるとォ? アビス:チェシャー、色々忘れすぎだよ!「眠りネズミ」さんを殺したのはキミなのに気づかないのかい?♪ クイーン:…あなた、何が言いたいの? アビス:思い出してみて欲しいんだけどさあ。…チェシャーが会食部屋を出たのは停電の約十分前。そしてその間にチェシャーは「眠りネズミ」さんを始末している。…この時系列でどうやって停電を起こすのさ? ハッター:自分で自分の首を絞めるようなことを言ってみますけど、そういう工作を事前に“眠りネズミ”さんが行っていたとしたら説明がつくんじゃないですか? アビス:いや、無理だよー。だって、チェシャー。“眠りネズミ”さんはずっと「このフロアを」うろついていたんだろ?♪ ラビット:さっきそう言ってたねえ。ちなみに、一応ぼくたちもこのフロアから構造を観察するって言われてたよお。 アビス:ありがとう「疵(きず)だけのウサギ」さん♪…そしてボクは知っている。このビルの照明を管理する部屋はこのフロアから三階も下にあるんだよ♪ クイーン:っ…。 ハッター:なるほど、このフロアでずっと不審者ムーブをしていた“眠りネズミ”さんには到底そこをいじることはできませんね☆ ラビット:あっ、それに部屋を十分も前に出ていた“チェシャ猫”なら、頑張れば工作することができる…? アビス:いや、それ以前にボクとチェシャーは今日このビルで会食があることを一週間以上前から知っていた。…余裕で工作できちゃうんだよー♪ チェシャー:なにを、ほざきやがる…?オレが“ジェントル”を殺したとでも!? アビス:いいや、キミだけじゃない…♪ ハッター:と、言いますと? アビス:断言しようー!今回の「武器商人“イモムシ”殺人事件(仮)」の犯人はチェシャー。…そして、クイーンさんだ♪ クイーン:なっ…、あなた、何を言っているの!?なんでわたしがチェシャーと組んでないといけないわけ!? ラビット:…あはは。 アビス:だって、そうとしか考えられないんだもん♪あの「凶器」からして、さ? チェシャー:凶器、だと…?…確かに、“ジェントル”はナイフで殺されていた。いや、待て。ナイフだと? アビス:そう、ナイフ。…きっとラビットさん以外は知ってると思うケド、ボクのいつも使ってる得物(えもの)はナイフなんだぁ♪ アビス:そしてキャタピラさんに突き刺さってるナイフ。なんかボクのに似てるなあって思ってたんだけど…、さっき確認したら、本当にボクのナイフが「一本なくなってたんだよ」♪ ハッター:…まさか、“アリスちゃん”のナイフをクイーンさんが盗んで、それで殺したって言いたいんですか!? アビス:そーゆーこと♪どう?辻褄はあってると思うケド。 チェシャー:なにを言ってるんだ、オレたちには動機がねぇだろ!? アビス:確定的な動機はないけど、予想はいくつかできるさ♪だってキミ、もう五年もキャタピラさんに仕えてるんだろ?もしかしたらなんらかの不満を持っていた、とも考えられるし、 アビス:今やキャタピラさんはクイーンさんと肩を並べるほどに有名な武器商だ。“ダイヤのキング”とまではいかないけれど、かなり多いであろう資金を狙っていた、なんて考えることもできる♪ ラビット:それに、“女王さま”もキャタピラとは長い付き合いでしょお?「何らかの恨み」は持っててもおかしくないよねえ。 クイーン:っ!(少しこわばった表情を見せる) ラビット:あれえ?あははは、図星?図星だったかなあ…?あははははは、やっぱりいい顔するなあ、“女王さま”。そんな顔が見たかったよお。 クイーン:アビス!わたしを裏切る気なの!?あなたは何がしたいの!? アビス:あはは、さて、何がしたいんだろうねえ♪と、いうわけだよ二人とも。“眠りネズミ”さんも身代わりにするためにチェシャーが殺した。…殺しの予定が同日にブッキングだなんて、災難だったねえ♪ ハッター:いえいえ!わたしとしては楽しかったのでオールオッケーです☆楽しかったですよ、“アリスちゃん”の推理ショー! ラビット:確かに、今考えてみれば“女王さま”、キャタピラの死体見て全然ショック受けてなさそうだったもんねえ。 クイーン:そんなの後付けよ!ほざくのもいい加減にして! チェシャー:チッ、こんなことでっち上げて、本当にどういうつもりなんだ、“深淵”(しんえん)! アビス:だから事実だって、でっち上げてないもん、ボク。 チェシャー:クソったれ…。 ハッター:さて、では事件は解決ですが…。一応ワタシたち仲間を殺されてるので、流石に仇を取らないと“眠りネズミ”さんがいたたまれません。…だから“アリスちゃん”、殺しましょう?ねぇ、ねぇ?☆ ラビット:…そうだねえ、それがいいやあ。 クイーン:い、いや…。なんでこんなことにっ…。わたしは、ただっ…。(恐怖で少し涙ぐんでいる) チェシャー:“ミリオン”、安心してくれ、アンタはオレが護る。…命に代えても。 クイーン:……。 アビス:…でもねえ。残念なお知らせなんだけど。これだけまくしたててみたけど、ボクの立ち位置はあくまで「クイーンさんの護衛」。…いくら狂いきってるボクでも、護衛対象を殺すことはできないよ。 クイーン:えっ?…あぁ、なんだ。そういうこと。(少し笑う) ハッター:そーおーか…。じゃあ、「遊べるのは一人だけ」、ですね…☆ アビス:「二人とも」、そゆこと♪ チェシャー:チッ…!! 0: 0:チェシャーは拳銃を取り出し三人に向けて発砲する。 0:今回は全員避ける。 0: ラビット:おあっ! アビス:おーっと、危ないじゃんかチェシャー♪もしクイーンさんに当たったらどうするのさ? ハッター:いや、それでいいのですよ“アリスちゃん”☆そっちのほうがはらはらして…、楽しいでしょう!? アビス:あはは、一理あるかもー?♪ 0: 0:そう言いながらアビスはナイフを、ハッターは銃剣を取り出す。 0: チェシャー:チッ、なんだってこんなことにっ…!?クソッ!!(部屋を飛び出す) ハッター:あはは、待ってくださーい☆(追いかけていく) アビス:さあて…、ね、クイーンさん。大丈夫だったでしょ?怖がらせてごめんね!♪じゃあ…、ちょっと行ってくる♪(さらに続いて部屋を飛び出す) 0: 0: クイーン:…ふふ、本当に頭のいい子…。 ラビット:……。 クイーン:…あら、あなたはいかないのかしら?傷顔(きずがお)の殺し屋さん。 ラビット:…なんで。 クイーン:え? ラビット:なんで、笑うんですか?“女王さま”。 クイーン:…なん、で? ラビット:ぼくは、あなたの…、 0: 0: ラビット:暗い暗い、土砂降りの顔が見たいのに!! 0: 0: クイーン:あなた、なにを…!? ラビット:あはははは。でも、いいや。顔なんてこれから歪めればいいんだもんねえ♡こうしてまた、「ぼくの“女王さま”」と一緒になれたんだもん。えへへ、ふふ、あはははははは。えいっ! 0: 0:ラビットがクイーンを押し倒し、覆いかぶさる。 0: クイーン:い、いや…、なんなのっ…。 ラビット:えへへ、その顔、久しぶりだあ…♡ずっと、ずっとその顔が見たかったんだよお…?♡五年以上我慢したんだもん…♡ クイーン:っ…!?待って、その純白の眼っ…、あなた、まさか…!? ラビット:やっと思い出してくれたあ?えへへへへ。五年以上ぶりだねえ、“女王さま”…♡ずぅーーっと、会いたかったよ…♡ クイーン:なんで、なんのつもりなの、“マーチ”!? 転換。 0:ビルの通路。 0: 0:笑いながら追いかける二人と、なんとか凌ぐチェシャー。 0: アビス:もう、にゃんこは逃げ足が速いなあ…♪ ハッター:あ、“アリスちゃん”ストップー!ワタシ、そういえばさっき肩抜かれてるので結構消耗激しいですっ! アビス:えー、でも仇討つんだろっ?♪がんばれがんばれー♪ ハッター:はあい、“帽子屋”さん、アリスちゃんのために頑張りまあす☆ チェシャー:くっ、流石に二人がかりはきついなぁっ…! アビス:そこだっ!♪ チェシャー:ぐぁっ、ちぃ…! 0: 0:アビスのナイフがチェシャーの左足を貫く。 0:チェシャーは足が動かせないようで、移動が遅くなり、迎撃もほとんどできなくなる。 0: ハッター:ナイスです、流石“アリスちゃん”☆ アビス:いやいやー、“帽子屋”さんの誘導サポートがよかったからやりやすかったよー♪ ハッター:やりました!“アリスちゃん”にお褒め頂きましてワタシ大歓喜です☆ アビス:もう、大げさだよぉ♪ 0: 0:笑いながらチェシャーに詰め寄る二人。 0: チェシャー:くっそ、ここまで、か…。 ハッター:ええ、終わりです☆よくも身代わりに“眠りネズミ”さんを殺してくれましたねえ…?☆ チェシャー:待ってくれ、オレは本当に“ジェントル”のボディガードをしていただけなんだ!ただ無意味にそいつを殺したわけじゃねえ、本当なんだ…! アビス:うん。「知ってる」♪ チェシャー:っ…!そりゃ、お前だよなぁ…。アビス…。 ハッター:えぇ?どういうことです? アビス:じゃあ、答え合わせしよっかぁ♪ 0: アビス:キャタピラさんを殺したのは、このボクさ♪ 0: ハッター:あれぇ!?じゃあさっきの推理なんだったんですー!? アビス:状況に合うようにでっち上げただけだよ♪それに、今更気づいたけどあの推理、全然ボクが実行犯でも辻褄が合うんだよね…♪いやぁ、あの時はその場のノリで騙せたからよかったぁ! チェシャー:…“ジェントル”の次は、オレを殺すのか…? アビス:あぁ、そうとも♪でも、ボクだけを恨んじゃダメだよ?♪これも依頼されてやってることだから♪ チェシャー:っ…。オレは殺し屋だ。恨みはしない。恨まれて当然のことをやってる自覚はあるからな。…冥途の土産に教えてくれ。今回の依頼主は誰なんだ。 アビス:え?そりゃもちろん…。 0: アビス:クイーンさん、だよ? 0: チェシャー:な、に…? ハッター:おや、本当ですか。しかし、いったいなぜ彼女はこの二人を? アビス:それは…、キミがよくよく知ってるだろう、チェシャー? チェシャー:いや、こればかりは本当に知らねえ!オレはてっきり、“ミス・ミリオン”と“ミスター・ジェントル”の関係は良好だとばっかり…! アビス:…チェシャー。流石にそこでしらばっくれるのは殺し屋の流儀に反するんじゃないかなあ?まあ、死体で遊ぶボクが言うことじゃないかもだけど。 チェシャー:違う、本当に、本当にわからないんだ…。オレは、“ジェントル”は、そんなにも重大なことをしてしまったのか…? アビス:…弟さん、だよ。 チェシャー:…おとうと、だと…? 転換。 0:これは五年以上も前の話。 0: 0:喪服に身を包んだクイーンと“マーチ”。 0: マーチ:“女王”さま。調査結果が出たようです。 クイーン:…伝えて。 マーチ:はい。あなたの弟を殺したのは…、“ジェントル・キャタピラー”の専属の護衛兼殺し屋である、“チェシャー”、だそうです。 クイーン:っ!!あの、武器商が…。私の、弟を…っ。…きっと、わたしの財産を狙ったんだわ…。それで、わたしの精神を病ませるために、弟を…。…マーチ。…あのクソ野郎を殺すわ。殺し屋を送って。 マーチ:かしこまりました。 クイーン:なんとしてでも、殺すわ。…でも、怨嗟(えんさ)に囚(とら)われればわたしはきっと、もっと大事なものを失ってしまう。だから…。 クイーン:絶対に裏世界の覇権を握って、天国の弟が感嘆するくらい、強くなってやる…! マーチ:その意気です、“女王さま”。…ああ、なんてかわいくて、かわいそうなんだろう。…ふふふ、あははははははは♡ 転換。 0:そして現在。 0: クイーン:なんで、あなたは死んだはずじゃあ…? ラビット:あぁ、死んだよお♡“チェシャ猫”暗殺を悉(ことごと)く失敗して、ついにあなたは腕があるからと言って、当時護衛をしていたぼくに殺しに行かせた。でも、ぼくもしくじってしまった。 ラビット:隠ぺいするためにチェシャーはぼくの顔を切り刻み、誰にもわからない場所に捨てた。…でも、ぼくの命はその時、首の皮一枚繋がってたんだ。 ラビット:そして力を振り絞ってなんとか治療を受けて…、「ぼく」は生き返った。でも、あなたに褒めてもらった綺麗な顔立ちと無敗の腕は、あの時失った。「マーチ」はあのとき死んだんだよ。 ラビット:だから今のぼくはただのウサギ。根はそのまんまだけれど、三月を冠することはできないし、白うさぎにもなりきれない。…えへへへへ、あはははははははは♡ クイーン:あ、あなたは、何が目的、なの…。 ラビット:それはね、“女王さま”。 0: ラビット:「あなたの苦しむ顔が、泣き顔が、絶望の表情がみたい。」それだけ…♡だって、ぜんぶ、ぜえんぶ愛おしく見えるから…♡ 0: クイーン:な、なにを言ってるの…?わたしの知ってる“マーチ”じゃないっ…。 ラビット:だから言ってるでしょお?ぼくはただのウサギ。気が狂う三月は猫に喰べられちゃったんだよ…♡ クイーン:い、いや…、お願いだから目を覚まして…。 ラビット:あははは、えへへへへへ♡でも、あなたの弟さんのおかげでぼくとあなたはまた出会えた。…やっぱり、あの時「殺しておいてよかったあ」ー♡ クイーン:…え…、いま、なん、て…? ラビット:ああ、いけない、ぼくったら。口が滑っちゃったあ。あー、でもそっちのがいっかあ♡そっちのがもっと絶望してくれるよねえ♡そうだよお。キャタピラやチェシャーなんかじゃない。 0: ラビット:あなたの弟を殺したのは、このぼくさ♡ 0: 0:――――――――― 0: チェシャー:いや、待ってくれ。オレは本当にそんなこと殺ってない!それこそ濡れ衣だ! アビス:…あぁ、そう?まあでも仕方ないよね。キャタピラさんはもう死んじゃってるし。死人に口なし、だよ♪ ハッター:ええ、それにアナタがどれだけ無罪を主張しようと、これは依頼ですから揺るぎません☆それはあなたもよぉーく理解しているでしょう?☆ チェシャー:……わかった。だが、これまで連れ添った仲だ。一つだけ、伝言を頼めるか? アビス:いいよ、それくらいは聞こう♪ チェシャー:…ありがとう。じゃあ、こう伝えてくれ。「“チェシャ猫”は―――。 0: クイーン:いやあぁぁぁーーーっ!!! 0: チェシャー:っ…! ハッター:ひーめーい!?それもクイーンさんの!? アビス:くっ、流石に護衛が先だねっ♪あとで絶対に殺しに来るからー!♪(クイーンのいる部屋へ走る) ハッター:ハハハ!お供しますよ“アリスちゃん”っ!☆(アビスに続く) チェシャー:…ハァー。自分の口から言えってか…?ヒヒ…。 0: 0:――――――――― 0: クイーン:いやあぁぁぁーーーっ!!! ラビット:えへへ、あはははは♡ずっと無実の人を恨んでいた罪悪感はどうかなあ?♡昔の信頼した部下がすべての黒幕だったなんてどう思う?♡そしてそいつが蘇ってこんなにも自分を責め立てる♡ ラビット:今までずっと、ずっと、ずぅぅーっと、あなたは何を恨んでいたんだろうねえ?♡あははははははっ!! クイーン:ぁ、あぁぁ…。ころして、もういやっ…。弟に、あわせて…。 ラビット:あはははははは!!♡そう、そのカオが見たかったんだあ♡もっと、もっと見せて♡殺してなんてあげないよお…?♡もうぼくは“マーチ”じゃないけど…、今だけはあなたを独り占めしてもいいよね♡ ラビット:あぁ…♡ほんとにさいっこぉ…♡もしすべてがうまくいっていたらぼくは、女王さまの前で首を吊ってみせたのになあ…!あはははははは♡ ラビット:とにかくう…。今はもっとその顔をぼくに見せろ!♡泣きじゃくって、恐怖して、絶望して、喚け♡♡ 0: アビス:でも残念、時間切れー♪ 0: 0:その声と共に、ナイフが一本ラビットの背中に刺さる。 0: ラビット:う、ぐ…。…あー、いったあ…。ぶっ殺すぞ…? アビス:うわぁ、なんという「The・本性表しました!」感だあ、おもしろー♪ クイーン:ア、ビスっ…。たすけて…。 アビス:うん、大丈夫だよクイーンさん♪すぐにそいつ引きはがすから…♪ ラビット:…せっかくいい所だったのに…、邪魔なんだよてめぇらあ!! 0: 0:そういい放ちラビットは銃を発砲しようとするが…。 0:決着は一瞬だった。 0: ラビット:…うぐ、ぁぁ…。 0: 0:銃弾を二発腹部に受け倒れ込むラビット。 0: ハッター:うんうん、流石の狂気です、ラビット。アナタは本当に三月のウサギのように気が触れている。それも愛する人に、歪んだ感情を持って。そんな今のあなたはそれはそれは恐ろしく強かったことでしょう。 ハッター:しかし…。あなたは再び、“ニタニタ笑いの猫”に出し抜かれた☆ チェシャー:…お前たちに一発入れておいて、正解だったよ。おかげで楽に殺れる。 ラビット:チ、チェシャ、猫ぉっ…! チェシャー:…いいか、ヘンタイ。よく覚えておけ。“愛”っていうのはな。 チェシャー:自分本位じゃあ必ず、悪意に堕ちるんだ。それが決して抗えない性(さが)だったとしても。 0: 0:チェシャーがラビットの眉間を撃ち抜く。 0: チェシャー:…あばよ、歪んだ愛しか持てなかった、不器用なウサギ。 アビス:ふふ、流石チェシャー。かっこいいなあ。♪…さて。大丈夫かな、クイーンさん? クイーン:…わ、わたしは…。…わたしは、なんてことを…。 ハッター:はは、大丈夫ですよ☆この裏のセカイじゃあ人の生き死になんて頻繁に起こる問題です。それが今回はキャタピラさんや“眠りネズミ”さんの番だった。それだけですとも。 ハッター:だからワタシ、なんか成り行きで仲間が二人亡くなりましたが、全然気にしてません!むしろ…。楽しんでます☆ アビス:それに、キャタピラさんにはもう謝れないけど、今ここには謝れる人がいるじゃん♪ クイーン:…チェシャー。ごめんなさい…。わたしは今までずっとあなたに…。 チェシャー:大丈夫。…仕方のないことだから。この裏のセカイは、理不尽で満ちている。慣れっこだ、これくらい。 クイーン:…アビス。 アビス:はいはーい? クイーン:…チェシャーを殺す依頼は、取りやめよ。 アビス:おっけー、りょーかい♪あはは、仲直りできてよかったね♪ ハッター:とーりーま!めでたしめでたしー、ですね☆ クイーン:えぇ。…アビス、そしてハッターも。巻き込んでしまって本当にごめんなさい。 ハッター:いえいえー☆何度も言いますが、ワタシは楽しかったので!オールオッケーですとも! アビス:同じく♪…あ、そういえばチェシャー。伝言、あるんじゃなかったの?もう自分の口から伝えられるよ? チェシャー:あぁ、そうだった。…“ミス・ミリオン”。 クイーン:なにかしら…? 0: チェシャー:“チェシャ猫”は、どこにでも現れる。いつでもどこでも、あなたをお護りして見せよう。だからきっと大丈夫。なぜならば…、…オレの首は、絶対に斬ることができねえからさ! 転換。 アビス:(N)と、いうことで!凄腕の殺し屋二人と表の世界でも名高い武器商人の死によってこの不思議でダークなミステリーは幕を閉じた! アビス:(N)ちなみにどうやらラビットが持ってきたキャタピラ殺害の依頼はラビットが作り上げた偽装だったらしい!執念が凄まじいねぇ♪ アビス:(N)そして一か月の月日が経過しー? 0:場面転換。とある空港に集まる四人。 クイーン:さて、今回は結構大きな商談だから、しくじるわけにはいかないわ。今日はおふざけ禁止よ。わかった? アビス:はいはーい、真面目に不誠実に頑張りまーす♪ ハッター:あーれーれ!?なんか一瞬で矛盾しましたけどー!? チェシャー:おふざけ禁止って言ってもアビスとハッターはふざけるだろ…。 アビス:だって、楽しくなっちゃうもんねえ♪ ハッター:ねー、“アリスちゃん”☆ クイーン:もう、あんまりにも酷かったら…。首、斬るわよ? ハッター:ひぇえ、なかなかに恐ろしい…。前のチームではありえないパワハラですよぉ☆ チェシャー:…あぁ前のチームで思い出したが。“ミリオン”。アンタ、自室にまだ“マーチ”の写真飾ってんのか? クイーン:えぇ。…あの時、とっても怖い経験はしたけれど、あれはあの子なりの不器用な愛し方だったってチェシャーに言われてハッとして。。だから、あの子を覚えていることが、せめてもの弔いかと思って。 アビス:流石、“ダイヤのクイーン”はお金だけじゃないね! クイーン:ちょっと、それどういうことかしら? アビス:じょーだんだよぉ♪あはは! ハッター:…おっと、来ましたね、ジェット機☆ チェシャー:んじゃまあ、今回もサクッと殺ろうぜ。 クイーン:ちょっと、今回は誰も殺さないでね!? チェシャー:わーってるよ、“ユアマジェスティ”。…ヒヒっ。 ハッター:ほらほら、いちゃついてないで行きますよぉー☆ 0: 0: アビス:(N)悪意を狂気で塗りつぶし、殺し屋たちは今日も嗤(わら)う。 アビス:(N)もしも深淵(しんえん)に出会ったら、みんなきっと、こういうのさ! 0: アビス:(N)「マーダー、マーダー!遊びましょう?」ってね…♪ 0: 0: 0:アビスの無邪気な笑い声が響いている…。 0: 0: 0:-----Welcome to the Murderland.