台本概要

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タイトル 話の旅2 ~モラヴィアの真珠~
作者名 七村 圭  (@kestnel)
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 なかなか寝つけないあなたに、屋敷の使用人は昔旅したとある場所の話を聞かせるのだった。
一日の終わりにそっと読み聞かせるような台本です。

■配信での台本使用について
・配信媒体での使用は自由です。収益化の有無を問わず使用可能です。アーカイブの公開も自由です。使用される際は作者名を概要欄や固定コメント等、どこかに表記してください。作者への連絡は不要です(ご連絡いただく分には大歓迎です)。
・セリフや性別の変更可です。語尾の変更等ご自由にどうぞ。
・演者様の性別は問いません。
・アドリブ等も入れて頂いて構いません。楽しくお使いください。

■著作権について
・著作権は全て七村圭に帰属します。配信や私用目的以外のみだりな複製・配布・翻案・改変など著作権侵害にあたる行為はおやめください。また自作発言はいかなる使用目的でもおやめください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
執事/メイド 不問 1 某屋敷に勤める使用人。旅好きで、現職の前は国内外のいろいろなところを訪れていた。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
執事/メイド:失礼いたします。 執事/メイド:  執事/メイド:体調はいかがですか。――そうですか。良かったです。 執事/メイド:  執事/メイド:季節の変わり目を感じる秋の最中(さなか)、急な気温の変化に、あなた様のお体は少しついていけなかったのしれませんね。 執事/メイド: 執事/メイド:ご気分の和らぐまで、ベッドの中でゆっくりお休みください。 執事/メイド: 執事/メイド:――旅の話、ですか。それよりも、今日は早くお休みになられたほうがいいですよ。 執事/メイド: 執事/メイド:私の話を聞くと、よく眠れる? それは、私ごときにはもったいないお言葉です。 執事/メイド: 執事/メイド:旅のことしか知らなかった人間のたわごとでございますので。 執事/メイド: 執事/メイド:――かしこまりました。 執事/メイド: 執事/メイド:あなた様の健康の邪魔をしてはいけませんので、では、短めのご旅行を。 執事/メイド: 執事/メイド:今日は、世界一美しい広場のある小さな町へ、参りましょう。 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:日本から飛行機で十六時間。その町はヨーロッパの内陸にあります。 執事/メイド: 執事/メイド:空港からはバスと鉄道が出ていますが、ややアクセスが不便ですので――ここはひとつ、車を借りて行くことにいたしましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:助手席にお乗りください。私のつたない運転で恐縮ですが、その町までご案内します。 執事/メイド: 執事/メイド:のどかな田園風景を眺めながら、丘陵地帯を二時間ほどでしょうか。町に着きましたよ。さあ、降りてみましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:この町は、二つの人工池に囲まれています。 執事/メイド: 執事/メイド:過去に大きな火災に遭ったという経験から、このような町のつくりをしているのですが――見てください。 執事/メイド: 執事/メイド:穏やかな町並みやつつましい城、背の高い教会。そんな町の風景が、波風の立たない鏡のような池の水面にきれいに写っていますよ。 執事/メイド: 執事/メイド:これだけでも心を奪われるほどの美しさを感じることができますが、お楽しみは町の中にあります。 執事/メイド: 執事/メイド:人工池の間を抜け、町の中に入ってみましょう。 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:聖母マリアの像が立つ石畳の広場。それを取り囲むように並んでいるのは、さまざまな形をしたパステルカラーの家々です。 執事/メイド: 執事/メイド:同じ高さ、同じ様式に統一され整然と並ぶ建物。なのにその正面は趣向を凝らしたデザインがなされ、コーラルピンク、アイスブルー、クリームイエローなどの色が映える個性的な町並みを形作っています。 執事/メイド: 執事/メイド:一列に並ぶかわいらしいカラフルなファサードに、まるでおとぎ話の世界に入り込んでしまったかのような感覚を、あなた様は味わうことでしょう。 執事/メイド: 執事/メイド:人工池を作るきっかけとなった大火災の後、町の再建にあたり時の権力者が建物の基準を統一したのですが、家の正面だけは家主の自由に任せました。 執事/メイド: 執事/メイド:その結果、住民たちは競うように個性の光るファサードを作りはじめ、いまではこうして絵本の中に描かれるような楽しい光景ができあがったのです。 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:美しい広場の奥には、さきほど池の向こうから見えた小さなお城があります。入ってみましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:このお城にはいくつかの「間」があります。ためしに「アフリカの間」をのぞいてみましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:――おや、ビックリされましたか? 執事/メイド: 執事/メイド:ここは城の関係者がアフリカで狩りをして持ち帰った、たくさんの動物の剥製が飾られています。 執事/メイド: 執事/メイド:壁にはりつけにされこちらを向くライオンやワニの剥製は迫力満点で、少々驚かされますよね。 執事/メイド: 執事/メイド:他にも、いまにも動きだしそうな甲冑(かっちゅう)が飾られた「騎士の間」や、かつて祝宴会に使用された豪華な「黄金の間」などもあります。 執事/メイド: 執事/メイド:中世にタイムスリップしたかのような空間。あなた様もきっと感動するはずですよ。 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:少しカフェで休みましょうか。テラスでさきほどの美しい町並みを眺めながら、ティータイムと参りましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:お茶請けにはこの国の伝統菓子である、コルネに似たロール状のパン菓子「トゥルデルニーク」を。 執事/メイド: 執事/メイド:筒状の棒にパン生地を巻いて焼き上げ、シナモンや砂糖をまぶし、内側にチョコレートを塗ったパン菓子で、カリッとした食感が特徴です。 執事/メイド: 執事/メイド:私はこの内側にソフトクリームを入れたものが好きです。さ、あなた様もどうぞ。 執事/メイド: 執事/メイド:――フフ。少し口についてますよ。あわてず、ゆっくりお食べ下さい。 執事/メイド: 執事/メイド:売店にはマリオネットがありますね。木製の小さなあやつり人形。お土産に購入しましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:チェックのベレー帽をかぶった笑顔の少年、おさげですました顔の少女など、様々な姿、色々な表情があって楽しいですね。 執事/メイド: 執事/メイド:どうしてマリオネットがお土産となっているのでしょうか。 執事/メイド: 執事/メイド:この国には元々、人形劇を演じる文化がありました。ですが土地柄、隣国からの支配をずっと受け続けてきた過去があるのです。 執事/メイド: 執事/メイド:そのときには自国の言葉を話すことさえ禁じられたのですが、マリオネットを使った人形劇だけはこの国独特の言い回しでこそ成り立つものであったため、自国の言葉を使うことが許されたのです。 執事/メイド: 執事/メイド:だから再び独立を得てからも、マリオネットはこの国の人々のアイデンティティとなり、子供向けだけではなく、大人も楽しむこの国独自の文化となっていったのです。 執事/メイド: 執事/メイド:さて、あなた様なら、どんなマリオネットをお選びになりますか? 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:最後は、教会に参りましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:この教会には大きく高い塔があります。階段を上り、塔の上から外を眺めると――ほら、これまで見てきた人工池やカラフルな家々の並ぶ町並み、小さな城が一度に見渡せます。 執事/メイド: 執事/メイド:十三世紀ごろに初めて作られたとされるこの町は、火災や戦争など幾多の歴史を乗り越え、このような世界一美しいと称される広場をもつに至ったのです。 執事/メイド: 執事/メイド:中世のたたずまいをとどめるこの町は、このあたりの地方の名と合わせ「モラヴィアの真珠」と呼ばれています。 執事/メイド: 執事/メイド:歴史的でカラフルな建物が並ぶこの町は、欧州の広い丘の中で真珠のような静かな輝きを放っているのかもしれませんね。 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:本日の旅はこれで終わりです。 執事/メイド: 執事/メイド:明日もどうかよい一日を。では、お休みなさいませ。

執事/メイド:失礼いたします。 執事/メイド:  執事/メイド:体調はいかがですか。――そうですか。良かったです。 執事/メイド:  執事/メイド:季節の変わり目を感じる秋の最中(さなか)、急な気温の変化に、あなた様のお体は少しついていけなかったのしれませんね。 執事/メイド: 執事/メイド:ご気分の和らぐまで、ベッドの中でゆっくりお休みください。 執事/メイド: 執事/メイド:――旅の話、ですか。それよりも、今日は早くお休みになられたほうがいいですよ。 執事/メイド: 執事/メイド:私の話を聞くと、よく眠れる? それは、私ごときにはもったいないお言葉です。 執事/メイド: 執事/メイド:旅のことしか知らなかった人間のたわごとでございますので。 執事/メイド: 執事/メイド:――かしこまりました。 執事/メイド: 執事/メイド:あなた様の健康の邪魔をしてはいけませんので、では、短めのご旅行を。 執事/メイド: 執事/メイド:今日は、世界一美しい広場のある小さな町へ、参りましょう。 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:日本から飛行機で十六時間。その町はヨーロッパの内陸にあります。 執事/メイド: 執事/メイド:空港からはバスと鉄道が出ていますが、ややアクセスが不便ですので――ここはひとつ、車を借りて行くことにいたしましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:助手席にお乗りください。私のつたない運転で恐縮ですが、その町までご案内します。 執事/メイド: 執事/メイド:のどかな田園風景を眺めながら、丘陵地帯を二時間ほどでしょうか。町に着きましたよ。さあ、降りてみましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:この町は、二つの人工池に囲まれています。 執事/メイド: 執事/メイド:過去に大きな火災に遭ったという経験から、このような町のつくりをしているのですが――見てください。 執事/メイド: 執事/メイド:穏やかな町並みやつつましい城、背の高い教会。そんな町の風景が、波風の立たない鏡のような池の水面にきれいに写っていますよ。 執事/メイド: 執事/メイド:これだけでも心を奪われるほどの美しさを感じることができますが、お楽しみは町の中にあります。 執事/メイド: 執事/メイド:人工池の間を抜け、町の中に入ってみましょう。 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:聖母マリアの像が立つ石畳の広場。それを取り囲むように並んでいるのは、さまざまな形をしたパステルカラーの家々です。 執事/メイド: 執事/メイド:同じ高さ、同じ様式に統一され整然と並ぶ建物。なのにその正面は趣向を凝らしたデザインがなされ、コーラルピンク、アイスブルー、クリームイエローなどの色が映える個性的な町並みを形作っています。 執事/メイド: 執事/メイド:一列に並ぶかわいらしいカラフルなファサードに、まるでおとぎ話の世界に入り込んでしまったかのような感覚を、あなた様は味わうことでしょう。 執事/メイド: 執事/メイド:人工池を作るきっかけとなった大火災の後、町の再建にあたり時の権力者が建物の基準を統一したのですが、家の正面だけは家主の自由に任せました。 執事/メイド: 執事/メイド:その結果、住民たちは競うように個性の光るファサードを作りはじめ、いまではこうして絵本の中に描かれるような楽しい光景ができあがったのです。 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:美しい広場の奥には、さきほど池の向こうから見えた小さなお城があります。入ってみましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:このお城にはいくつかの「間」があります。ためしに「アフリカの間」をのぞいてみましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:――おや、ビックリされましたか? 執事/メイド: 執事/メイド:ここは城の関係者がアフリカで狩りをして持ち帰った、たくさんの動物の剥製が飾られています。 執事/メイド: 執事/メイド:壁にはりつけにされこちらを向くライオンやワニの剥製は迫力満点で、少々驚かされますよね。 執事/メイド: 執事/メイド:他にも、いまにも動きだしそうな甲冑(かっちゅう)が飾られた「騎士の間」や、かつて祝宴会に使用された豪華な「黄金の間」などもあります。 執事/メイド: 執事/メイド:中世にタイムスリップしたかのような空間。あなた様もきっと感動するはずですよ。 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:少しカフェで休みましょうか。テラスでさきほどの美しい町並みを眺めながら、ティータイムと参りましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:お茶請けにはこの国の伝統菓子である、コルネに似たロール状のパン菓子「トゥルデルニーク」を。 執事/メイド: 執事/メイド:筒状の棒にパン生地を巻いて焼き上げ、シナモンや砂糖をまぶし、内側にチョコレートを塗ったパン菓子で、カリッとした食感が特徴です。 執事/メイド: 執事/メイド:私はこの内側にソフトクリームを入れたものが好きです。さ、あなた様もどうぞ。 執事/メイド: 執事/メイド:――フフ。少し口についてますよ。あわてず、ゆっくりお食べ下さい。 執事/メイド: 執事/メイド:売店にはマリオネットがありますね。木製の小さなあやつり人形。お土産に購入しましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:チェックのベレー帽をかぶった笑顔の少年、おさげですました顔の少女など、様々な姿、色々な表情があって楽しいですね。 執事/メイド: 執事/メイド:どうしてマリオネットがお土産となっているのでしょうか。 執事/メイド: 執事/メイド:この国には元々、人形劇を演じる文化がありました。ですが土地柄、隣国からの支配をずっと受け続けてきた過去があるのです。 執事/メイド: 執事/メイド:そのときには自国の言葉を話すことさえ禁じられたのですが、マリオネットを使った人形劇だけはこの国独特の言い回しでこそ成り立つものであったため、自国の言葉を使うことが許されたのです。 執事/メイド: 執事/メイド:だから再び独立を得てからも、マリオネットはこの国の人々のアイデンティティとなり、子供向けだけではなく、大人も楽しむこの国独自の文化となっていったのです。 執事/メイド: 執事/メイド:さて、あなた様なら、どんなマリオネットをお選びになりますか? 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:最後は、教会に参りましょう。 執事/メイド: 執事/メイド:この教会には大きく高い塔があります。階段を上り、塔の上から外を眺めると――ほら、これまで見てきた人工池やカラフルな家々の並ぶ町並み、小さな城が一度に見渡せます。 執事/メイド: 執事/メイド:十三世紀ごろに初めて作られたとされるこの町は、火災や戦争など幾多の歴史を乗り越え、このような世界一美しいと称される広場をもつに至ったのです。 執事/メイド: 執事/メイド:中世のたたずまいをとどめるこの町は、このあたりの地方の名と合わせ「モラヴィアの真珠」と呼ばれています。 執事/メイド: 執事/メイド:歴史的でカラフルな建物が並ぶこの町は、欧州の広い丘の中で真珠のような静かな輝きを放っているのかもしれませんね。 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド: 執事/メイド:本日の旅はこれで終わりです。 執事/メイド: 執事/メイド:明日もどうかよい一日を。では、お休みなさいませ。