台本概要

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タイトル 『Shrimpy Days(シュリンピィ・デイズ)』《アクト1》
作者名 sazanka  (@sazankasarasara)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 3人用台本(男1、女2)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 情緒脱臼、腰砕け。
話にならない海老反りの日々。

自らの学費を補填する為、ビールBARの厨房でアルバイトをする高校生、「アド」くんと、極彩色の孤独を生きる奇矯な女、「ヤナ」。
恋ともつかない七転八倒の転げ着く先は、藪の中。
―黎和3年9月某日―

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
アド 162 「安土 善太(あづち ぜんた)」。高校2年生。ビアBARの厨房スタッフ。通称:アド。
ラビ 101 「御手洗 愛子(みたらし あいこ)」。年齢非公表。ビアBARの店長。通称:ラビ。
ヤナ 85 「ヤナ・マテジウス・ヴァインガルテン・行坂(ゆきさか)」。ビアBARのホール及びカウンタースタッフ。通称:ヤナ。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:かくして装置(セット)は建て込まれ、 0:幕が開き、少年は女と出会う。 ヤナ:情緒(じょうちょ)脱臼、腰砕け。 アド:話にならない海老反りの日々。 ラビ:『Shrimpy Days(シュリンピィ・デイズ)』。 0:【間】 アド:《アクト1》。 【モノローグ】(アド):回想。半年前。 【モノローグ】(アド):冬と春の間の、夕方。リビング。 ラビ:(気怠げに) ラビ:……君、誰ぇ? アド:……こっちの、セリフだよ。 【モノローグ】(アド):日陰に建つアパートの、錆とコンクリートの階段を昇って、いつもの通りに自宅へ帰ると。 【モノローグ】(アド):リビングのソファに、知らない、エロい女が居た。 【モノローグ】(アド):何て言ったら良いかわからない色の下着の上に、男物の、多分親父のシャツを羽織った……、 【モノローグ】(アド):何歳、ぐらいだろ? 若くも見えるし、それなりの歳にも見える、泣きぼくろが妙に印象的な……、 【モノローグ】(アド):エラい美人の、女。 ラビ:あぁ……、息子くんだぁ、言ってた。 ラビ:……あんまり似てないね? アド:そう、だけど……、 アド:ドチラさん? ラビ:……あはぁ。 【モノローグ】(アド):黒くて長い、豊かな髪をかき上げ、上品にも、下品にも見える笑みで、その女は言った。 ラビ:君のパパの、新しい彼女だよぉ。 ラビ:「ラビ」、って呼んでね。 アド:……、らび? ラビ:ウサギの、ラビ。 アド:何でウサギ、 ラビ:昔、バニーガールやってたのぉ。 ラビ:あと……、 【モノローグ】(アド):全く身構える事の出来ない、隙を突く動作で、俺の耳元に口を寄せる。 【モノローグ】(アド):む、っと、正体のわからない、女の、匂い。 ラビ:(囁き) ラビ:年中発情してるから。 ラビ:驚かしたお詫びにぃ、 ラビ:……させたげよっか? アド:……っ、っっっっ!!!???? 【モノローグ】(アド):思わず叫んだ。海老反りで。 【モノローグ】(アド):ちなみに、冗談だった。 0:【間】 【モノローグ】(アド):親がバカだと、息子は大変なんである。 【モノローグ】(アド):親父が仕事をクビになった上、ヒモ同然で面倒見てもらっていた銀行員の彼女とも別れた事により。 【モノローグ】(アド):高校1年の俺は突然、来年度からの自分の学費に、自分で頭を悩ませるハメになった。 【モノローグ】(アド):……そんな事ある? 普通。 ラビ:へぇ……、大変だぁ。 ラビ:あ、チューハイ取ってぇ。冷蔵庫。 アド:冷蔵庫?? ラビ:起きたら飲もうと思って。冷やしてたの。 アド:(キッチンの冷蔵庫内を探りつつ) アド:えっと……、 アド:あ、コレか。 0:取り出し、手渡す。 アド:……はい。 ラビ:ありがとぉー。はぁいプシュ、っと。 0:プルタブを引き、グビ、と呷る。 ラビ:(ごく、ごく、と喉を鳴らし) ラビ:……ぷはぁ。 ラビ:コレがなきゃ1日始まんないのぉ、私。 アド:……今から? アド:あの、親父とはどこで、 ラビ:私の店ぇ。 【モノローグ】(アド):度数12%の、強アルコール酎ハイがグビグビと喉へ消える。 【モノローグ】(アド):……給油かよ、車の。 アド:店……、 ラビ:私が店長やってるお店でねぇ。 ラビ:イイ年して、スタッフの娘(こ)口説いてるオジサンが居て。親子ぐらいの感じなんだけど、 アド:……、まさか、 ラビ:それが君のパパぁ。 【モノローグ】(アド):死ね、親父。 アド:……死ね、親父。 ラビ:あはははぁ。 ラビ:言っちゃダメだよ、そんな事。 ラビ:ホントに死んじゃったらぁ……、 ラビ:困るでしょ、ガキの君は。 アド:…………、つーか。 アド:生きてたって困ってんだけど。 アド:今、ここ、なうで。 ラビ:学費ぃ? 公立? 幾らよ? アド:……「翠山(みどりやま)」。 アド:高い方じゃ無いけど、結構は結構だよ。 【モノローグ】(アド):国の支援制度とか、自治体の助成金とかで賄ったとしても、だ。 【モノローグ】(アド):授業料だけじゃ済まない。何だかんだの積立て、納付金、教科書費、通学、弁当。 【モノローグ】(アド):実際問題、必要な額はざっと、 ラビ:ええぇ〜……。 ラビ:色々使ってもそんなかかるんだぁ、子供が高校行くと。 ラビ:……サッサと押し付けて良かったぁ、あははぁ。 アド:……、子供、いるん、 ラビ:(遮り)いてもいなくても関係ナイよねぇ? 君には。 アド:……っ、いや、まあ、 ラビ:(グビ、と飲み) ラビ:ふううーーーーん……、 ラビ:そんなの全然言ってなかったねぇ、君のパパ。 ラビ:ま、言われたって私も困るけどぉ。 ラビ:あっはははぁ。 アド:て、いうか。 アド:自分の店のスタッフ口説いてたオッサンと、何で付き合ってんの? アド:てか何の店よ? ラビ:ビール出す店ぇ。世界中の、色んなビール扱ってんの。 ラビ:BARだよBAR、行ったコトあるぅ? アド:……あるワケねェし。高校生だよ俺。不良とかでもナイし、 ラビ:居ないでしょ、不良とか今ぁ。 ラビ:性欲とかも減ってってるんでしょぉ? ラビ:……確かめてもイイ? アド:……っ!? 【モノローグ】(アド):また、隙を突くみたいに、滑るような手付きで、 【モノローグ】(アド):首筋に、指が、 アド:(払い除け) アド:ちょっ! っと! アド:……、今ボタン外そうと、 ラビ:あははぁ。ノリ悪ぅ、現代っ子ぉ。 ラビ:……パパの方が積極的だったよ。 アド:……、親父、 ラビ:ウチのスタッフにフラれてさぁ、凹んで飲んでるから。 ラビ:「イケると思ったのぉ?」って隣座ったの。 アド:…………、 ラビ:「向こうが気にしても、僕は気にしない」って。 ラビ:「若い子よりガンバレるハズだ」ぁ、って。 ラビ:結構マジで言うからさぁ、 アド:…………聞きたくねー。 ラビ:自信あるんだぁって思って。ちょっと興味出たから、店ハネてから連れ出してぇ、 アド:もーいい、もー、 ラビ:結構ヨかったからぁ。 ラビ:今に至る、って感じ。 アド:……、……、 ラビ:ホントに結構、ヨかったよぉ? アド:(嫌気のさした顔で) アド:……何で大人って。 アド:みんなソンナンなんだよ。 ラビ:あははぁ。 ラビ:……大人になるとねぇ。 ラビ:叱ってくれるオトナが、いなくなっちゃうから。 ラビ:歯止めが利かなくなっちゃうの。 0:へばり付くように笑み。 ラビ:ヒドくてタノシいよぉ、君もどう? 0:少年の眉が顰められ。 アド:…………俺は絶対、そーいう人間にはならない。 アド:冗談じゃねェ。 ラビ:(にや、と笑い) ラビ:……、へぇーーーー、 アド:もうウンザリなんだよ。 アド:男作って出てった母親も。 アド:引きずってるクセに彼女作って、結局捨てられてる親父も。 アド:あと働かねェし。 ラビ:……ふぅん、 アド:俺は少なくとも、アイツらよりはマシな大人になりてェよ。 0:女は面白げに、僅か嗜虐的に笑む。 ラビ:……イイ心がけぇ。 ラビ:君たちみたいのが居るからさぁー……、 ラビ:私らは、好き勝手出来るんだよねぇー……。 アド:……、わたしら、って、誰までを、 ラビ:(不意に) ラビ:ところで、 アド:っ、何、すか、 ラビ:天ぷらって揚げた事あるぅ? 【モノローグ】(アド):唐突。何じゃ、ソリャ。 アド:……はぁ? ラビ:イイから。あるぅ? アド:何回、かは……。クックパッドとか見て、 ラビ:美味しかった? アド:……、普通? まあ。 ラビ:じゃ、ごーかくぅ。 【モノローグ】(アド):イヤ、意味わかんねェ。 【モノローグ】(アド):急激にベロ酔いした? アド:何なの、一体、 ラビ:お金稼がなきゃなんでしょー? ラビ:君のパパあんなだし、働き口なんて急には見つからナイよねぇ? アド:……、それ、は、 ラビ:ウチの店ね、輸入ビールだけじゃなくて、フードも出してるの。 ラビ:海老の料理がメインなんだけどぉ、天ぷら揚げれるなら簡単だよ、きっと。 アド:いやいや、 アド:え、お酒出すトコでしょ、 ラビ:急に人ヤメてねぇ、厨房の子探さなきゃだったんだけど、 アド:聞けよ、 ラビ:ちょうど良かった。 ラビ:友達に自慢出来るよぉ、ビール出すBARでバイトしてんだ、ってぇ。 ラビ:ハイ、決まり。 アド:やったコト無いしっ、そもそも未成年、 ラビ:大丈夫大丈夫、慣れるよ、若いから。 ラビ:あと保護者同伴だしぃ。 アド:保護者……? ラビ:(自らを指差し) ラビ:パパの、彼女。 アド:…………、 アド:未来の、母親……? 【モノローグ】(アド):俺がそう言った瞬間。 【モノローグ】(アド):ラビと名乗る女はコンマ1秒、眼を丸くした後、 【モノローグ】(アド):全ての感情が滑り落ちた、能面みたいな、ゼロの面持ち。 【モノローグ】(アド):……あまりに綺麗で、見入ってしまった。 ラビ:(ややあって、吹き出し) ラビ:ぷっ、あっはははは、ははっ。 ラビ:無ぁい無い。 ラビ:……私は結婚は、二度と、しないから。 ラビ:覚えといてね、息子くん。 アド:え、っと、 ラビ:あっはははははははは、あはははははは……、 【モノローグ】(アド):ネジが外れたみたいに笑い、グビグビと、缶を飲み干す。 【モノローグ】(アド):すげ、もう無くなった……。 ラビ:じゃ……、 ラビ:今日から早速、ヨロシクね。 アド:…………、 アド:はっ? え? 0:【間】 【モノローグ】(アド):……っていうのが大体、半年前で。 【モノローグ】(アド):結局、雑な話が強引に進み。 【モノローグ】(アド):無事なんとか高校2年に進級出来た、俺こと安土善太(あづちぜんた)は今でも、この店の、主に厨房で働いている。 【モノローグ】(アド):世界のビールと海老料理の店「Shrimpy(シュリンピィ)」。 【モノローグ】(アド):オーナーは強面(こわもて)、店長は酒乱、&、……色々。 【モノローグ】(アド):名物は揚げ立ての、シュリンプ&チップス。 【モノローグ】(アド):何でもない秋の日。 【モノローグ】(アド):いつも通り海老の仕込みと、厨房の準備を終えた頃に、 【モノローグ】(アド):……ウルサいヤツが来た。 ヤナ:(厨房のドアを開きつつ) ヤナ:おっは葉酸(ようさん)・デキストリン酸・デオキシリボ核酸(かくさ)ぁーーーん、っとぉーっ! ヤナ:……およ? アド:……なんでDNAだよ。 ヤナ:あっれェー、え、今日アドくんだったっけェ? アド:そーだよ。シフト通り。誰だと思ってたんだよ。 ヤナ:ミリリン。「今日もよろシクラメーン」ってLINE送っちゃったァ。 アド:返事は? ヤナ:「うん」って。 ヤナ:ナニにヨロシクしてたんだろ? アド:ウザがられてんだよ。 アド:……ホール間に合うのかよ? もう6時よ、今。 ヤナ:テーブル拭くだけェーっ。サーバーは昨日洗ったしィ。 ヤナ:アドくんはァ? エビちゃんに衣(ころも)着せ倒して茹で倒してたァ? アド:今日も手ェ海老臭いよ。もー慣れたけど。 ヤナ:一瞬で馴染んだよねっ。なァーんか最近はベテラン面してるしィー、ブルーヒップハイスクールボゥイの癖に癖にィーーっ。 【モノローグ】(アド):「ケツの青い高校生」、ね。 【モノローグ】(アド):……何なんだよ。いつもだけど。 アド:してねェーし。ベテラン面。 ヤナ:してるしてるゥ。「バジルフリット上がってんよォーっ」の時の声とかベリンベリンにウザい。アハハハハハハっ。 アド:おい、 ヤナ:(誇張したモノマネ) ヤナ:「冷める前に早くッ」。 ヤナ:「トマト転げやすいから気ィ付けてッ」。 アド:やめろよ。似てねェしっ。 ヤナ:アハハハハハっ。フヒヒィーっ。 アド:……自分でやって自分でウケてんじゃん。 アド:つーか。トシウエの、センパイが適当で見てらんナイから。 アド:しっかりしねェとってなってるダケ、だよ。 ヤナ:ひっどォーー、ミリリン傷付くよォそんなん言ったらっ。 アド:お前だよっ! どー考えてもっ! 0:ぴく、と反応し、 ヤナ:…………あァーん? アド:ミリさんは何でもキッチリして、 アド:……、ヤナ? ヤナ:黙って聞いてりゃァ……、 ヤナ:ドーテーも捨ててねェシャバい小僧っ子がァ…………、 アド:ドっ、ド、ドーっ、い、いやっ、 ヤナ:こォのヤナちゃんサマに向かって「お前」だとォーーーーーっ!!! 0:猛然と飛びかかられ、 アド:うっ、うわっ! 【モノローグ】(アド):神速の動きでバックを取られ、流れるようなモーションでガチ目のチョークスリーパーホールドっ!! 【モノローグ】(アド):万力の如き力でギリギリと締められ、マジで苦しいのとっ、 【モノローグ】(アド):あーーーっと、コレは胸がっ、ヤナ選手のヤバい胸がっ、ダイレクトに背中にっ、アド選手の背中にィっ! アド:(タップしつつ) アド:ちょぉ……っ、ギブ、ギブっ! ヤナ:(締め上げつつ) ヤナ:ふぬォぉ……っ、 ヤナ:爆乳を背中で感じながら昇天したまえチミぃ……っ、 アド:ンな余裕ねェよっ……、 アド:体格がっ……っ、 アド:俺よりデカい女のっ……、スポーツやってたヤツのチョークはマジで……、死、ぬ……っ、 ヤナ:(更に締め上げ) ヤナ:だァれがワガママBodyアマゾネスじゃァーーーーいっつって! アド:ゥぐおおォ言ってねェ……っ、 アド:ヤベ……、お花畑……っ、 【モノローグ】(アド):意識が遠のくっ……。 【モノローグ】(アド):……あーでも何か……、 【モノローグ】(アド):この透き通るような白金(プラチナ)の髪と、 【モノローグ】(アド):何とも言えない甘い匂い、暴力的なまでの柔らかさに包まれて旅立てるなら……、 【モノローグ】(アド):なんだかんだで割と、俺の人生、マシな方だったのかも……、 【モノローグ】(アド):とか、 【モノローグ】(アド):人生観ごとトリップしかけたトコへ。 【モノローグ】(アド):気怠い、湿り気を含んだ声がした。 ラビ:(奥の部屋から出て来つつ) ラビ:うぅるさぁーい……。 ラビ:オープン前からハシャがないでよぉー……。 ヤナ:(パ、っとホールドを解き) ヤナ:あっ! ラビさんおっはよーっ。 ラビ:おはよ。 アド:(開放され) アド:ぶはっ! アド:はぁ……っ、はぁっ……っ、 アド:し、死ぬかと思った……っ、 ラビ:未成年に胸押し付けて。 ラビ:淫行でタイホされるよぉ。 ヤナ:ご褒美無罪だもォーんっ。 アド:マジで入ってたから! オチる寸前だったって! ラビ:アドくん、チューハイ出してぇ。 アド:あ……、……はい。 【モノローグ】(アド):……今日も安定のガソリン補給。 【モノローグ】(アド):もう慣れたけど。このヒトは本当に、酒を燃料にして生きてるような……、 【モノローグ】(アド):ベッタベタの、駄目な大人だ。 アド:(手渡しつつ) アド:うい……。一本目。 ラビ:サンキュぅー。はいプシュっ、と。 0:プルタブを引き上げ、躊躇なくグビリと呷る。 ラビ:ぷはっ……。 ラビ:今日も爽やかな1日の始まりぃ、っと。 ラビ:頑張ってねぇ。 ヤナ:イイ飲みっぷりィ。私も飲みたいよォー。 アド:収拾つかなくなるから絶対ダメ。 ヤナ:出た未成年の知っ高ァ。私酔ってもあんま変わんナイんだよォーっ。 アド:シラフだったら尚更ヤバいじゃん。 ヤナ:厨房スタッフは黙ってエビ臭(しゅう)にまみれてなよォーっ。やァい高校だけど中坊(厨房)ーーーっ。 アド:何だよっ! ラビ:あはははぁ。 ラビ:……仲良いよねぇ、2人。 アド:誰がっ! ヤナ:店長ォーっ、何か最近突っかかってくるんですゥーーーっ。 アド:べっ、別に……っ、 ヤナ:あとコレは最初からだけどヤラしい目で見てくるしィーーーーっ、 アド:みっ、みっ、見てねェしっ!! アド:全然マッタクっ、な、何の興味もねェしっ、バカっ、 ヤナ:ドーテーくさっ。しんどー。 アド:なっ……、おま、そ、ど、童貞とか、 ラビ:捨てさせたげよっかぁ? シャシャーっと。 0:少年、絶句。 アド:……っ、なっ、な、あ……っ、 ヤナ:もーソレがイイってェー。お願いしなよォ。 アド:そっ、そーいう冗談、 ラビ:別にジョーダンじゃ無いけど。 ラビ:(時計を見つつ)オープン準備終わってるんなら奥の部屋でするぅ? 【モノローグ】(アド):……「珈琲飲むー?」、ぐらいのテンションで。 【モノローグ】(アド):何のケも無しに、普通の顔で。 【モノローグ】(アド):偶に、営業中でも、誰だか知らない男とか、カップルとかを連れ込んで、ナンだかをやってる事務室を、指さして、このヒトは、 ラビ:あ、でも手はしっかり洗ってねぇ? エビ臭ぁい手で触られるの嫌ぁ。 ヤナ:アハハハハハっ、エビとイカでシーフードパーティじゃんっ。 ラビ:あははぁ。ホタテも足しとこっか。 ヤナ:あーっ、「ミケラン」のシーフードジェノバピザ食べたくなったァっ。 【モノローグ】(アド):……俺は、コイツらの。 【モノローグ】(アド):こういう所が。 アド:(抑揚を抑えて) アド:……ヤなんだよ。そーいうの。 アド:冗談でも、本気でも。 ラビ:あはぁ、そう? サクっと終わるけど。 ヤナ:ソコで意地張るからドーテーなんだよォ。守ってたってイイ事ナイよ? ソレ。 ラビ:ビョーキとかも無いけどね。一応検査してるから。 アド:そーいう問題じゃ、 ヤナ:あワカったァ、 ヤナ:パパと兄弟になるのがイヤなんだァ。 アド:……っ、 ヤナ:べっつにじゃァーん? 結婚してるとかでもナイんだしィ。 ラビ:パパの兄弟なんてそこら中に居るよぉ? ラビ:みんな薄々しか、知らないだけで。 アド:……、……、 ラビ:気になるなら。 ラビ:ヤナに頼めばぁ? アド:(あからさまに反応し) アド:なっっっ!!!! アド:ちょっ、……っ、 ヤナ:ええーーーっ。 ヤナ:別にヤでもナイけどォー……、 アド:えっ、 ヤナ:私年下はなァーー……、 ラビ:別れたばっかでしょ。 アド:(驚愕) アド:ぅえっ!!?? ヤナ:誰とォ? ラビ:あの、サッカーやってる人。 ヤナ:あー。あの人は別に付き合ってはナイよ、もー会わないって言われただけェ。 ラビ:何で? ヤナ:知らなーい。他の人と会ったりエッチしたりしてるのがイヤになったんじゃない。 ラビ:お決まりのヤツ、か。そのうち戻って来るだろーけどねぇ。 アド:……っ、 ヤナ:今お金あるから別にィだけど。大学出ちゃったら仕事も増やせるしィー、 アド:……、……。 ヤナ:あや、何ムズカシー顔してんの? ウンコだったら行った方がイイよォ。 アド:違うし。 アド:…………、別、に。 ラビ:……、あははぁ。 ラビ:ヤナそろそろ着替えたら? ヤナ:(時計を確認し) ヤナ:あっ、うんそーだねェーっ。 ヤナ:よォっしゃコラぁっ! 今日もヤナちゃんサマ目当てに客が来るぞ客が来るぞォーーーいっと。 アド:……、 ヤナ:アぁドくんよろピクミーーーン。 【モノローグ】(アド):そう言って。 【モノローグ】(アド):何故か、ナウシカの、王蟲のシーンのアノ曲を口ずさみながら。 【モノローグ】(アド):ウルサいヤツはスタッフルームへと消えて行った。 【モノローグ】(アド):残ったのは。 【モノローグ】(アド):精神と情緒をカキ乱された厨房スタッフと、 【モノローグ】(アド):……色々、全部が乱れきった、店長。 ラビ:(グビ、と缶を呷り) ラビ:ぷはぁ。 ラビ:ま……、どーしてもシたくなったらぁ、イツデモどうぞ? ラビ:あ、生理の時は勘弁してねぇ。 アド:……、ナイすから。 アド:別に、今どき……、焦って童貞捨てよーとするとかの方が、逆にダサいっつーか、 ラビ:好きでもナイ相手とぉ? アド:……っ、そ、 ラビ:じゃ、尚更ヤナに頼めばぁ? アド:…………っ、 0:絶句。沈黙。 ラビ:あははははぁ。ワカリやすぅい。純情ぉー。 ラビ:……汚(よご)したいわぁー…………。 【モノローグ】(アド):また、グビ、と呷(あお)り。 【モノローグ】(アド):あの、下品にも、上品にも見える笑みを浮かべて。 アド:……、何すか、ソレ……、 ラビ:君みたいな、今ドキ珍しー潔癖なガキは。 ラビ:汚れてくトコ見てみたくなるのよねぇ。 アド:……、 ラビ:あ、これ病気だから。気にしなくてイイよ。 アド:……もー、慣れましたけど。そーいうのも。 ラビ:あはぁ。 ラビ:……さっさとズブズブのグダグダになればイイのに。 ラビ:慣れたらスグだよぉ? 若いし。 アド:……職場だし。別にそーいう……。 アド:あとズブズブでグダグダなのはラビさんでしょ。 ラビ:店長に向かって生意気ぃ。 ラビ:……でも違うよ? アド:え、 0:僅か、笑みが薄れ。 ラビ:みんな、ドコのどいつもさぁ。 ラビ:屑ばっかりだよ、ここいらの大人なんて。 ラビ:やることやってまぁす、ってカオしてるだけでね。 アド:…………、 アド:わかんねェ。 アド:ガキだし。まだ。 ラビ:うふぅ。逃げ口上になんないんだなぁ、ソレ。 ラビ:……もうナンでも、デキちゃう歳だから。 アド:…………。 アド:働かして貰えてんのだけは、感謝してるんで。 アド:給料……、普通からしたら、イイ方だし。 ラビ:そぉ? まぁ出してんのは近江(おうみ)だけど。 ラビ:……高校辞めずに済んだのって嬉しいの? アド:……嬉しい、ってか……、普通に、行けないよりはそりゃ、 ラビ:(遮り)普通に高校行って、お金あったら大学行って、さぁ。 アド:……っ、 ラビ:昼間の、人に言えるようなシゴトに就いて、さぁ。 アド:……、 【モノローグ】(アド):気配の、湿度が増すような。 【モノローグ】(アド):……ラビさんは、ジメジメした女だ。 ラビ:普通っぽく結婚とかして、順当に子供とか作って、育ててたらさぁ。 ラビ:幸せなのかなぁ。 アド:……、 ラビ:好きなだけお酒飲んで、好きな時に好きなヤツと、ヤになるぐらいセックスしてぇ、 ラビ:グズグズでも、お金さえ稼いどきゃソレでオッケぇー、って。 ラビ:そーいうのと。 ラビ:ドッチが楽しいんだろーね? アド:……、……、 【モノローグ】(アド):知る、かよ。 【モノローグ】(アド):そんなこと、 アド:……高校生のガキに、聞かれても。 アド:(切り替え) アド:仕込み、済んだんで。 アド:手ェ洗って店前、俺掃きます。 ラビ:ん……、 ラビ:そぉね。 アド:アイツどうせ、タラタラ着替えてんだろーし。 アド:定時で看板、 ラビ:(遮り)ヤメといた方がイイかもねぇ? ヤナは。 アド:……っ、そっ、ンっ、いや、 ラビ:好きにしたらイイけど。 ラビ:君は多分、持ってらんなくなっちゃいそう。 アド:も、って……? ラビ:ヤナは欲しがられたら、ドコでも着いてっちゃうから。 ラビ:自分から、誰かと生きてこうっていうアタマが、ハジメから無いんだよね。 ラビ:ソレってどーいう事かワカるぅ? アド:……、い、や、てか、 【モノローグ】(アド):ぬるり、と。 【モノローグ】(アド):自分と俺との距離に滑り込んで、間を詰める。 【モノローグ】(アド):全く反応出来てない俺の耳に唇をくっつけて、 ラビ:ワカンないよねぇ? ラビ:君はまだガキだから。 ラビ:(耳を舐める音) 【モノローグ】(アド):ベロリ、と、熱い舌で舐(ねぶ)る。 アド:(形容しがたい奇声) ラビ:あっはははぁ。 【モノローグ】(アド):思わず叫んで、後ろ向きに吹っ飛んだ俺は、 【モノローグ】(アド):……海老みたい、だったと思う。 0:【間】 【モノローグ】(アド):夜も更け、宴もタケナワ。 【モノローグ】(アド):引っ張らず、23時30分、定時で営業終了。 【モノローグ】(アド):油と、サワークリームソースにまみれた手を、しつこいぐらいに擦る。 【モノローグ】(アド):何かを、必死に、洗い落とすように。 ヤナ:(スタッフルームからの扉を開け) ヤナ:おォつおつカレリーーーン! レェスリングチャンピオォーーーーンっ! アド:…………、おつかれ。 ヤナ:いやはァーっ、金曜の割に早目にお客引いたねェーっ、テッペン越える覚悟バッチシだったのにっ。 アド:飲んでんの。 ヤナ:2杯だけェーっ。「頂きます」してさ、 ヤナ:ニュートン飲んじゃったァ。 アド:青リンゴのヤツか。 ヤナ:そーそーそォ。ケッコーいけるよ、飲んでみる? あ無理かァ、ウチのコックさん未成年だからァー、アハハハハハっ。 アド:……ウザ。営業後は特に。 ヤナ:すっかりエンジン温まってますからなァーっ、ブンブンブゥウウーーーンっと。 アド:……、看板、消した? こないだ点いてたぞ。 ヤナ:消した消したァー、抜かりありませェーーん。 ヤナ:てかアドくんどしたのカナ? なァんかカオ、土気色してるよ? アド:……別に? 普通に、店終わった、から、 ヤナ:ふーん? アド:…………。 0:何とは無しの、沈黙。 ヤナ:えっ! モシカしてずっとウンコ我慢してんのォっ!!?? アド:違うわ!! 行ったよ隙見て! ヤナ:アッハハハハハっ。 ヤナ:アドくん最初の頃さァー、どのタイミングでトイレ行ってイイのかわかりませんってなってさァ、おしっこ我慢しながらエビ揚げてたよねェ。 アド:……アレは、 ヤナ:ぴょんぴょん跳ねながら料理しててさァ、「エビがエビ揚げてるゥ」ってラビさんと笑ってたよ。アハハハっ。 アド:……厨房、1人だし。 アド:オーナーに相談までしたし。 ヤナ:「隙突いて上手いコト行けやボケぇ」って怒鳴られてたよね、アハハっ。 アド:「自分が便所にかける時間ぐらい把握してんだろコラぁ」ってな。 アド:……確かに、ってなった。 ヤナ:アハハハぁ。オーナー優しーっ。 【モノローグ】(アド):白金(プラチナ)の髪をなびかせて、背の高い、何もかもが派手な女は、厨房の冷蔵庫へと大股で歩く。 【モノローグ】(アド):冷やしてた自前のメロンソーダをコクコクと飲み下して、唇を離す。 【モノローグ】(アド):……あの、唇は、 【モノローグ】(アド):さっき、 ヤナ:……ナニ見てんのォ? アド:べっ! 別、にっ。 アド:メロンソーダ、緑だな、めっちゃ、とか、思って……、 ヤナ:(遮り)さっきさァ、 アド:な、何、 ヤナ:見てたでしょ? 裏口、開いてるトコから。 アド:……っ、あ、え、 ヤナ:私は別にイイんだけどォ。 ヤナ:覗き見ってクセになっちゃうらしいから。 アド:……、……、 0:沈黙による静寂。 アド:…………。 アド:あんな、トコで。 アド:客とキス、してんなよ。 アド:また、変な噂、立つだろ。 ヤナ:だぁれも見てないもぉん。 ヤナ:ピーピング趣味のコーコーセー以外はねー? アド:それ、は、たまたま、 ヤナ:今キスしたァいって言われてェ。 ヤナ:私もイヤじゃなかったしィ、 アド:彼氏、でも無いヤツと、 ヤナ:彼氏いま居ないから。 ヤナ:彼氏じゃナイ人と、いくらキスしたってヨクない? アド:……、 ヤナ:え、ナニがダメぇ? アド:駄目、とかじゃ……。 アド:関係、ねェけど、 ヤナ:じゃなくてェ。 ヤナ:アドくんがイヤなの? アド:……っ、 ヤナ:世界は私の独壇場だから。 ヤナ:私のシたいコト、シたいようにスるけど。 ヤナ:止めたいのォ? ヤメさせたい? アド:俺が、どーとかじゃ、無くて、 ヤナ:じゃ、何? アド:……っ、 0:眼差しは、痛いほど、シリアス。 アド:そんなん、してたら、さ……、 ヤナ:うん。 アド:……駄目な、 アド:大人に、 アド:なん、よ。 ヤナ:…………、 0:吹き出し。 ヤナ:っぷ、ブふっ、 ヤナ:アっ、ハハハハハっ、 ヤナ:アハハハハハハハハハっ! アド:……っ、 ヤナ:(一頻り笑い) ヤナ:……くっくくゥ。 ヤナ:シゲキ強かったァ? ヤナ:……汚いって思う? アド:……、別にっ! ソコまでガキじゃ、 ヤナ:良いじゃァん。 ヤナ:……外人(ガイジン)だし。見た目。 アド:……関係ナイ、だろ。 【モノローグ】(アド):ハーフだか、クオーターだか。 【モノローグ】(アド):本人が言うには、4分の1だけ日本人で、残りはだいたい外人、らしい。 【モノローグ】(アド):見た目は確かに、わかり易過ぎるぐらいの、西洋の血。 【モノローグ】(アド):でも、 アド:育ちは殆ど日本、なんだろ。 アド:大好きじゃん、米。 ヤナ:お米好きだったら彼氏としかキスしちゃ駄目なのォ? アハハっ。 【モノローグ】(アド):チゲぇし。 アド:……、 アド:バカ。 ヤナ:……あァーーん? まァたチョーク希望? ヤナ:背中でおっぱい感じたいのォ? アド:(硬く、冷たく) アド:うるせェな。 ヤナ:おっ? アド:……、 0:面持ちは、神妙。奥歯が僅か、軋む。 アド:…………じゃあ、さ。 ヤナ:んー? アド:……彼氏でも、無いヤツと……、 アド:いくらでも、キス、出来ん、なら、 ヤナ:……、 アド:……、俺とも、出来んのかよ? ヤナ:…………、 【モノローグ】(アド):今日は、フライ系、結構出たから。 【モノローグ】(アド):気化した油で、バカになってたんだ。俺の頭。 【モノローグ】(アド):……多分。 ヤナ:……なァーんか。 ヤナ:今日のアドくんムカつくなァー。 アド:……シャレ、だし。 アド:もう、さっさと着替えて、 【モノローグ】(アド):「帰れよ」、って、言いかけた俺の視界を。 【モノローグ】(アド):蜂蜜みたいな、真珠みたいな色の髪が隠して。 【モノローグ】(アド):距離、ゼロ。むしろ、密着してマイナス。 【モノローグ】(アド):熱い体温と、息を、直(じか)に感じながら。 【モノローグ】(アド):俺は、ヤナと、 【モノローグ】(アド):キスをしていた。 ヤナ:(唇を離し) ヤナ:……ぷぁ。 ヤナ:コレでイイのォ? 求めてた感じ? アド:(硬直、放心) アド:あ、……、う、 ヤナ:……アハハぁ、エビみたいに真っ赤ッカじゃんっ。 ヤナ:口程にもナイのォーーっ。 アド:……、……、 ヤナ:……今は魂ヌケてるだろーから。 ヤナ:次会った時にでも……、感想聞かせるヨロシーーっ。 アド:……っ、ちょ、っと、 ヤナ:着替えてそんまま帰るねェーっ。 ヤナ:ラビさん起きたらヨロシク伝えてくんろーーーっ。 【モノローグ】(アド):言って、 【モノローグ】(アド):ネコ科の猛獣みたいにしなやかに、体を操って。 【モノローグ】(アド):引き留められないテンポで、ドアの向こうへと去る。 アド:……っ、……、 【モノローグ】(アド):一瞬とも、無限ともつかない静寂の後、 【モノローグ】(アド):俺だけがポツンと残った厨房に、湿った声がした。 ラビ:……見ぃちゃったぁ。 アド:(反応し) アド:う、おっ!!?? ラビ:(入室しつつ) ラビ:おつかれぇ。 アド:ラ、ラ、ラ、ラビ、さんっ、 アド:い、いつから……っ、 ラビ:「メロンソーダ、めっちゃ、緑だな」、の辺りから。 アド:……っ、 アド:何で……、 ラビ:ヤナも言ってたけどさぁ。 ラビ:覗き見って、癖になっちゃうんだよねぇ。 アド:……、……、 ラビ:気持ちよかった? ラビ:テンション上がったぁ? アド:…………。 アド:わ、かんねェ、……っす……。 ラビ:ふぅん。 0:何とも言えぬ顔のまま、少年は沈黙。 ラビ:…………寸止めな感じなら。 ラビ:今から私とするぅ? アド:…………、 ラビ:寝起きだけど。 アド:い、や……、多、分、 アド:出来る感じじゃナイ、と、思う、っていうか……、 ラビ:へぇー……。 ラビ:ぶっちゃけ童貞くんとシたコト無いから。 ラビ:ワカンないんだなぁ、その辺。 0:少年は未だ、放心。 アド:…………。 ラビ:(軽い思案の末) ラビ:じゃ……、ラーメンとか食べに行くぅ? ラビ:今日ソコソコ上がったんでしょ。 アド:…………。 【モノローグ】(アド):何にも考えらんねェ。 【モノローグ】(アド):けど。取り敢えず……、 【モノローグ】(アド):腹、減った。 アド:…………。 アド:……行きたい、す……。 ラビ:(含みの無い無表情で) ラビ:おっけぇ。 0:暗転。 【モノローグ】(アド):「安土(あづち)」だから、「アド」。 【モノローグ】(アド):これは、俺と、どーしよーもない、不条理なヤツらとの……、 【モノローグ】(アド):話にならない、日常の、話。 0:【終】 0 ヤナ:【次回予告】っっ!! ラビ:さぁて、次回の『Shrimpy Days(シュリンピィ・デイズ)』はぁ、 0:カット・イン。 ヤナ:「おおっ、まさしくハムレット的命題じゃァーんっ。ヤるべきかヤらざるべきか、そォれが問題だっ、つってつってーっ。」 アド:「怒られろ、シェイクスピアにっ。」 0:カット・チェンジ。 ヤナ:「デリのコたちがさぁ、みんなヤりたくてヤってるって思ってんのーーー?」 アド:「……知らね。無いし、行ったこと。」 ヤナ:「デリは行くんじゃなくて呼ぶんだよーーーっ。やァーーいドーテーっ、アヒャヒャヒャヒャっ!」 アド:「いィっ、うっ、うるせーーっ!!」 0:カット・チェンジ。 ヤナ:「皆ねー。私のコト、好きだけど、嫌いで……、やっぱ好きなんだけど、でも基本は、」 アド:「おい、」 ヤナ:「嫌い、なんだと思うよー。」 アド:「……ンな、こと、自分でっ、」 ヤナ:「アドくんはどーなってくカナぁ。」 アド:「……っ、」 ラビ:《アクト2》。 ラビ:次回も海老反りに、乞うご期たぁい。 0:【予告終了】

0:かくして装置(セット)は建て込まれ、 0:幕が開き、少年は女と出会う。 ヤナ:情緒(じょうちょ)脱臼、腰砕け。 アド:話にならない海老反りの日々。 ラビ:『Shrimpy Days(シュリンピィ・デイズ)』。 0:【間】 アド:《アクト1》。 【モノローグ】(アド):回想。半年前。 【モノローグ】(アド):冬と春の間の、夕方。リビング。 ラビ:(気怠げに) ラビ:……君、誰ぇ? アド:……こっちの、セリフだよ。 【モノローグ】(アド):日陰に建つアパートの、錆とコンクリートの階段を昇って、いつもの通りに自宅へ帰ると。 【モノローグ】(アド):リビングのソファに、知らない、エロい女が居た。 【モノローグ】(アド):何て言ったら良いかわからない色の下着の上に、男物の、多分親父のシャツを羽織った……、 【モノローグ】(アド):何歳、ぐらいだろ? 若くも見えるし、それなりの歳にも見える、泣きぼくろが妙に印象的な……、 【モノローグ】(アド):エラい美人の、女。 ラビ:あぁ……、息子くんだぁ、言ってた。 ラビ:……あんまり似てないね? アド:そう、だけど……、 アド:ドチラさん? ラビ:……あはぁ。 【モノローグ】(アド):黒くて長い、豊かな髪をかき上げ、上品にも、下品にも見える笑みで、その女は言った。 ラビ:君のパパの、新しい彼女だよぉ。 ラビ:「ラビ」、って呼んでね。 アド:……、らび? ラビ:ウサギの、ラビ。 アド:何でウサギ、 ラビ:昔、バニーガールやってたのぉ。 ラビ:あと……、 【モノローグ】(アド):全く身構える事の出来ない、隙を突く動作で、俺の耳元に口を寄せる。 【モノローグ】(アド):む、っと、正体のわからない、女の、匂い。 ラビ:(囁き) ラビ:年中発情してるから。 ラビ:驚かしたお詫びにぃ、 ラビ:……させたげよっか? アド:……っ、っっっっ!!!???? 【モノローグ】(アド):思わず叫んだ。海老反りで。 【モノローグ】(アド):ちなみに、冗談だった。 0:【間】 【モノローグ】(アド):親がバカだと、息子は大変なんである。 【モノローグ】(アド):親父が仕事をクビになった上、ヒモ同然で面倒見てもらっていた銀行員の彼女とも別れた事により。 【モノローグ】(アド):高校1年の俺は突然、来年度からの自分の学費に、自分で頭を悩ませるハメになった。 【モノローグ】(アド):……そんな事ある? 普通。 ラビ:へぇ……、大変だぁ。 ラビ:あ、チューハイ取ってぇ。冷蔵庫。 アド:冷蔵庫?? ラビ:起きたら飲もうと思って。冷やしてたの。 アド:(キッチンの冷蔵庫内を探りつつ) アド:えっと……、 アド:あ、コレか。 0:取り出し、手渡す。 アド:……はい。 ラビ:ありがとぉー。はぁいプシュ、っと。 0:プルタブを引き、グビ、と呷る。 ラビ:(ごく、ごく、と喉を鳴らし) ラビ:……ぷはぁ。 ラビ:コレがなきゃ1日始まんないのぉ、私。 アド:……今から? アド:あの、親父とはどこで、 ラビ:私の店ぇ。 【モノローグ】(アド):度数12%の、強アルコール酎ハイがグビグビと喉へ消える。 【モノローグ】(アド):……給油かよ、車の。 アド:店……、 ラビ:私が店長やってるお店でねぇ。 ラビ:イイ年して、スタッフの娘(こ)口説いてるオジサンが居て。親子ぐらいの感じなんだけど、 アド:……、まさか、 ラビ:それが君のパパぁ。 【モノローグ】(アド):死ね、親父。 アド:……死ね、親父。 ラビ:あはははぁ。 ラビ:言っちゃダメだよ、そんな事。 ラビ:ホントに死んじゃったらぁ……、 ラビ:困るでしょ、ガキの君は。 アド:…………、つーか。 アド:生きてたって困ってんだけど。 アド:今、ここ、なうで。 ラビ:学費ぃ? 公立? 幾らよ? アド:……「翠山(みどりやま)」。 アド:高い方じゃ無いけど、結構は結構だよ。 【モノローグ】(アド):国の支援制度とか、自治体の助成金とかで賄ったとしても、だ。 【モノローグ】(アド):授業料だけじゃ済まない。何だかんだの積立て、納付金、教科書費、通学、弁当。 【モノローグ】(アド):実際問題、必要な額はざっと、 ラビ:ええぇ〜……。 ラビ:色々使ってもそんなかかるんだぁ、子供が高校行くと。 ラビ:……サッサと押し付けて良かったぁ、あははぁ。 アド:……、子供、いるん、 ラビ:(遮り)いてもいなくても関係ナイよねぇ? 君には。 アド:……っ、いや、まあ、 ラビ:(グビ、と飲み) ラビ:ふううーーーーん……、 ラビ:そんなの全然言ってなかったねぇ、君のパパ。 ラビ:ま、言われたって私も困るけどぉ。 ラビ:あっはははぁ。 アド:て、いうか。 アド:自分の店のスタッフ口説いてたオッサンと、何で付き合ってんの? アド:てか何の店よ? ラビ:ビール出す店ぇ。世界中の、色んなビール扱ってんの。 ラビ:BARだよBAR、行ったコトあるぅ? アド:……あるワケねェし。高校生だよ俺。不良とかでもナイし、 ラビ:居ないでしょ、不良とか今ぁ。 ラビ:性欲とかも減ってってるんでしょぉ? ラビ:……確かめてもイイ? アド:……っ!? 【モノローグ】(アド):また、隙を突くみたいに、滑るような手付きで、 【モノローグ】(アド):首筋に、指が、 アド:(払い除け) アド:ちょっ! っと! アド:……、今ボタン外そうと、 ラビ:あははぁ。ノリ悪ぅ、現代っ子ぉ。 ラビ:……パパの方が積極的だったよ。 アド:……、親父、 ラビ:ウチのスタッフにフラれてさぁ、凹んで飲んでるから。 ラビ:「イケると思ったのぉ?」って隣座ったの。 アド:…………、 ラビ:「向こうが気にしても、僕は気にしない」って。 ラビ:「若い子よりガンバレるハズだ」ぁ、って。 ラビ:結構マジで言うからさぁ、 アド:…………聞きたくねー。 ラビ:自信あるんだぁって思って。ちょっと興味出たから、店ハネてから連れ出してぇ、 アド:もーいい、もー、 ラビ:結構ヨかったからぁ。 ラビ:今に至る、って感じ。 アド:……、……、 ラビ:ホントに結構、ヨかったよぉ? アド:(嫌気のさした顔で) アド:……何で大人って。 アド:みんなソンナンなんだよ。 ラビ:あははぁ。 ラビ:……大人になるとねぇ。 ラビ:叱ってくれるオトナが、いなくなっちゃうから。 ラビ:歯止めが利かなくなっちゃうの。 0:へばり付くように笑み。 ラビ:ヒドくてタノシいよぉ、君もどう? 0:少年の眉が顰められ。 アド:…………俺は絶対、そーいう人間にはならない。 アド:冗談じゃねェ。 ラビ:(にや、と笑い) ラビ:……、へぇーーーー、 アド:もうウンザリなんだよ。 アド:男作って出てった母親も。 アド:引きずってるクセに彼女作って、結局捨てられてる親父も。 アド:あと働かねェし。 ラビ:……ふぅん、 アド:俺は少なくとも、アイツらよりはマシな大人になりてェよ。 0:女は面白げに、僅か嗜虐的に笑む。 ラビ:……イイ心がけぇ。 ラビ:君たちみたいのが居るからさぁー……、 ラビ:私らは、好き勝手出来るんだよねぇー……。 アド:……、わたしら、って、誰までを、 ラビ:(不意に) ラビ:ところで、 アド:っ、何、すか、 ラビ:天ぷらって揚げた事あるぅ? 【モノローグ】(アド):唐突。何じゃ、ソリャ。 アド:……はぁ? ラビ:イイから。あるぅ? アド:何回、かは……。クックパッドとか見て、 ラビ:美味しかった? アド:……、普通? まあ。 ラビ:じゃ、ごーかくぅ。 【モノローグ】(アド):イヤ、意味わかんねェ。 【モノローグ】(アド):急激にベロ酔いした? アド:何なの、一体、 ラビ:お金稼がなきゃなんでしょー? ラビ:君のパパあんなだし、働き口なんて急には見つからナイよねぇ? アド:……、それ、は、 ラビ:ウチの店ね、輸入ビールだけじゃなくて、フードも出してるの。 ラビ:海老の料理がメインなんだけどぉ、天ぷら揚げれるなら簡単だよ、きっと。 アド:いやいや、 アド:え、お酒出すトコでしょ、 ラビ:急に人ヤメてねぇ、厨房の子探さなきゃだったんだけど、 アド:聞けよ、 ラビ:ちょうど良かった。 ラビ:友達に自慢出来るよぉ、ビール出すBARでバイトしてんだ、ってぇ。 ラビ:ハイ、決まり。 アド:やったコト無いしっ、そもそも未成年、 ラビ:大丈夫大丈夫、慣れるよ、若いから。 ラビ:あと保護者同伴だしぃ。 アド:保護者……? ラビ:(自らを指差し) ラビ:パパの、彼女。 アド:…………、 アド:未来の、母親……? 【モノローグ】(アド):俺がそう言った瞬間。 【モノローグ】(アド):ラビと名乗る女はコンマ1秒、眼を丸くした後、 【モノローグ】(アド):全ての感情が滑り落ちた、能面みたいな、ゼロの面持ち。 【モノローグ】(アド):……あまりに綺麗で、見入ってしまった。 ラビ:(ややあって、吹き出し) ラビ:ぷっ、あっはははは、ははっ。 ラビ:無ぁい無い。 ラビ:……私は結婚は、二度と、しないから。 ラビ:覚えといてね、息子くん。 アド:え、っと、 ラビ:あっはははははははは、あはははははは……、 【モノローグ】(アド):ネジが外れたみたいに笑い、グビグビと、缶を飲み干す。 【モノローグ】(アド):すげ、もう無くなった……。 ラビ:じゃ……、 ラビ:今日から早速、ヨロシクね。 アド:…………、 アド:はっ? え? 0:【間】 【モノローグ】(アド):……っていうのが大体、半年前で。 【モノローグ】(アド):結局、雑な話が強引に進み。 【モノローグ】(アド):無事なんとか高校2年に進級出来た、俺こと安土善太(あづちぜんた)は今でも、この店の、主に厨房で働いている。 【モノローグ】(アド):世界のビールと海老料理の店「Shrimpy(シュリンピィ)」。 【モノローグ】(アド):オーナーは強面(こわもて)、店長は酒乱、&、……色々。 【モノローグ】(アド):名物は揚げ立ての、シュリンプ&チップス。 【モノローグ】(アド):何でもない秋の日。 【モノローグ】(アド):いつも通り海老の仕込みと、厨房の準備を終えた頃に、 【モノローグ】(アド):……ウルサいヤツが来た。 ヤナ:(厨房のドアを開きつつ) ヤナ:おっは葉酸(ようさん)・デキストリン酸・デオキシリボ核酸(かくさ)ぁーーーん、っとぉーっ! ヤナ:……およ? アド:……なんでDNAだよ。 ヤナ:あっれェー、え、今日アドくんだったっけェ? アド:そーだよ。シフト通り。誰だと思ってたんだよ。 ヤナ:ミリリン。「今日もよろシクラメーン」ってLINE送っちゃったァ。 アド:返事は? ヤナ:「うん」って。 ヤナ:ナニにヨロシクしてたんだろ? アド:ウザがられてんだよ。 アド:……ホール間に合うのかよ? もう6時よ、今。 ヤナ:テーブル拭くだけェーっ。サーバーは昨日洗ったしィ。 ヤナ:アドくんはァ? エビちゃんに衣(ころも)着せ倒して茹で倒してたァ? アド:今日も手ェ海老臭いよ。もー慣れたけど。 ヤナ:一瞬で馴染んだよねっ。なァーんか最近はベテラン面してるしィー、ブルーヒップハイスクールボゥイの癖に癖にィーーっ。 【モノローグ】(アド):「ケツの青い高校生」、ね。 【モノローグ】(アド):……何なんだよ。いつもだけど。 アド:してねェーし。ベテラン面。 ヤナ:してるしてるゥ。「バジルフリット上がってんよォーっ」の時の声とかベリンベリンにウザい。アハハハハハハっ。 アド:おい、 ヤナ:(誇張したモノマネ) ヤナ:「冷める前に早くッ」。 ヤナ:「トマト転げやすいから気ィ付けてッ」。 アド:やめろよ。似てねェしっ。 ヤナ:アハハハハハっ。フヒヒィーっ。 アド:……自分でやって自分でウケてんじゃん。 アド:つーか。トシウエの、センパイが適当で見てらんナイから。 アド:しっかりしねェとってなってるダケ、だよ。 ヤナ:ひっどォーー、ミリリン傷付くよォそんなん言ったらっ。 アド:お前だよっ! どー考えてもっ! 0:ぴく、と反応し、 ヤナ:…………あァーん? アド:ミリさんは何でもキッチリして、 アド:……、ヤナ? ヤナ:黙って聞いてりゃァ……、 ヤナ:ドーテーも捨ててねェシャバい小僧っ子がァ…………、 アド:ドっ、ド、ドーっ、い、いやっ、 ヤナ:こォのヤナちゃんサマに向かって「お前」だとォーーーーーっ!!! 0:猛然と飛びかかられ、 アド:うっ、うわっ! 【モノローグ】(アド):神速の動きでバックを取られ、流れるようなモーションでガチ目のチョークスリーパーホールドっ!! 【モノローグ】(アド):万力の如き力でギリギリと締められ、マジで苦しいのとっ、 【モノローグ】(アド):あーーーっと、コレは胸がっ、ヤナ選手のヤバい胸がっ、ダイレクトに背中にっ、アド選手の背中にィっ! アド:(タップしつつ) アド:ちょぉ……っ、ギブ、ギブっ! ヤナ:(締め上げつつ) ヤナ:ふぬォぉ……っ、 ヤナ:爆乳を背中で感じながら昇天したまえチミぃ……っ、 アド:ンな余裕ねェよっ……、 アド:体格がっ……っ、 アド:俺よりデカい女のっ……、スポーツやってたヤツのチョークはマジで……、死、ぬ……っ、 ヤナ:(更に締め上げ) ヤナ:だァれがワガママBodyアマゾネスじゃァーーーーいっつって! アド:ゥぐおおォ言ってねェ……っ、 アド:ヤベ……、お花畑……っ、 【モノローグ】(アド):意識が遠のくっ……。 【モノローグ】(アド):……あーでも何か……、 【モノローグ】(アド):この透き通るような白金(プラチナ)の髪と、 【モノローグ】(アド):何とも言えない甘い匂い、暴力的なまでの柔らかさに包まれて旅立てるなら……、 【モノローグ】(アド):なんだかんだで割と、俺の人生、マシな方だったのかも……、 【モノローグ】(アド):とか、 【モノローグ】(アド):人生観ごとトリップしかけたトコへ。 【モノローグ】(アド):気怠い、湿り気を含んだ声がした。 ラビ:(奥の部屋から出て来つつ) ラビ:うぅるさぁーい……。 ラビ:オープン前からハシャがないでよぉー……。 ヤナ:(パ、っとホールドを解き) ヤナ:あっ! ラビさんおっはよーっ。 ラビ:おはよ。 アド:(開放され) アド:ぶはっ! アド:はぁ……っ、はぁっ……っ、 アド:し、死ぬかと思った……っ、 ラビ:未成年に胸押し付けて。 ラビ:淫行でタイホされるよぉ。 ヤナ:ご褒美無罪だもォーんっ。 アド:マジで入ってたから! オチる寸前だったって! ラビ:アドくん、チューハイ出してぇ。 アド:あ……、……はい。 【モノローグ】(アド):……今日も安定のガソリン補給。 【モノローグ】(アド):もう慣れたけど。このヒトは本当に、酒を燃料にして生きてるような……、 【モノローグ】(アド):ベッタベタの、駄目な大人だ。 アド:(手渡しつつ) アド:うい……。一本目。 ラビ:サンキュぅー。はいプシュっ、と。 0:プルタブを引き上げ、躊躇なくグビリと呷る。 ラビ:ぷはっ……。 ラビ:今日も爽やかな1日の始まりぃ、っと。 ラビ:頑張ってねぇ。 ヤナ:イイ飲みっぷりィ。私も飲みたいよォー。 アド:収拾つかなくなるから絶対ダメ。 ヤナ:出た未成年の知っ高ァ。私酔ってもあんま変わんナイんだよォーっ。 アド:シラフだったら尚更ヤバいじゃん。 ヤナ:厨房スタッフは黙ってエビ臭(しゅう)にまみれてなよォーっ。やァい高校だけど中坊(厨房)ーーーっ。 アド:何だよっ! ラビ:あはははぁ。 ラビ:……仲良いよねぇ、2人。 アド:誰がっ! ヤナ:店長ォーっ、何か最近突っかかってくるんですゥーーーっ。 アド:べっ、別に……っ、 ヤナ:あとコレは最初からだけどヤラしい目で見てくるしィーーーーっ、 アド:みっ、みっ、見てねェしっ!! アド:全然マッタクっ、な、何の興味もねェしっ、バカっ、 ヤナ:ドーテーくさっ。しんどー。 アド:なっ……、おま、そ、ど、童貞とか、 ラビ:捨てさせたげよっかぁ? シャシャーっと。 0:少年、絶句。 アド:……っ、なっ、な、あ……っ、 ヤナ:もーソレがイイってェー。お願いしなよォ。 アド:そっ、そーいう冗談、 ラビ:別にジョーダンじゃ無いけど。 ラビ:(時計を見つつ)オープン準備終わってるんなら奥の部屋でするぅ? 【モノローグ】(アド):……「珈琲飲むー?」、ぐらいのテンションで。 【モノローグ】(アド):何のケも無しに、普通の顔で。 【モノローグ】(アド):偶に、営業中でも、誰だか知らない男とか、カップルとかを連れ込んで、ナンだかをやってる事務室を、指さして、このヒトは、 ラビ:あ、でも手はしっかり洗ってねぇ? エビ臭ぁい手で触られるの嫌ぁ。 ヤナ:アハハハハハっ、エビとイカでシーフードパーティじゃんっ。 ラビ:あははぁ。ホタテも足しとこっか。 ヤナ:あーっ、「ミケラン」のシーフードジェノバピザ食べたくなったァっ。 【モノローグ】(アド):……俺は、コイツらの。 【モノローグ】(アド):こういう所が。 アド:(抑揚を抑えて) アド:……ヤなんだよ。そーいうの。 アド:冗談でも、本気でも。 ラビ:あはぁ、そう? サクっと終わるけど。 ヤナ:ソコで意地張るからドーテーなんだよォ。守ってたってイイ事ナイよ? ソレ。 ラビ:ビョーキとかも無いけどね。一応検査してるから。 アド:そーいう問題じゃ、 ヤナ:あワカったァ、 ヤナ:パパと兄弟になるのがイヤなんだァ。 アド:……っ、 ヤナ:べっつにじゃァーん? 結婚してるとかでもナイんだしィ。 ラビ:パパの兄弟なんてそこら中に居るよぉ? ラビ:みんな薄々しか、知らないだけで。 アド:……、……、 ラビ:気になるなら。 ラビ:ヤナに頼めばぁ? アド:(あからさまに反応し) アド:なっっっ!!!! アド:ちょっ、……っ、 ヤナ:ええーーーっ。 ヤナ:別にヤでもナイけどォー……、 アド:えっ、 ヤナ:私年下はなァーー……、 ラビ:別れたばっかでしょ。 アド:(驚愕) アド:ぅえっ!!?? ヤナ:誰とォ? ラビ:あの、サッカーやってる人。 ヤナ:あー。あの人は別に付き合ってはナイよ、もー会わないって言われただけェ。 ラビ:何で? ヤナ:知らなーい。他の人と会ったりエッチしたりしてるのがイヤになったんじゃない。 ラビ:お決まりのヤツ、か。そのうち戻って来るだろーけどねぇ。 アド:……っ、 ヤナ:今お金あるから別にィだけど。大学出ちゃったら仕事も増やせるしィー、 アド:……、……。 ヤナ:あや、何ムズカシー顔してんの? ウンコだったら行った方がイイよォ。 アド:違うし。 アド:…………、別、に。 ラビ:……、あははぁ。 ラビ:ヤナそろそろ着替えたら? ヤナ:(時計を確認し) ヤナ:あっ、うんそーだねェーっ。 ヤナ:よォっしゃコラぁっ! 今日もヤナちゃんサマ目当てに客が来るぞ客が来るぞォーーーいっと。 アド:……、 ヤナ:アぁドくんよろピクミーーーン。 【モノローグ】(アド):そう言って。 【モノローグ】(アド):何故か、ナウシカの、王蟲のシーンのアノ曲を口ずさみながら。 【モノローグ】(アド):ウルサいヤツはスタッフルームへと消えて行った。 【モノローグ】(アド):残ったのは。 【モノローグ】(アド):精神と情緒をカキ乱された厨房スタッフと、 【モノローグ】(アド):……色々、全部が乱れきった、店長。 ラビ:(グビ、と缶を呷り) ラビ:ぷはぁ。 ラビ:ま……、どーしてもシたくなったらぁ、イツデモどうぞ? ラビ:あ、生理の時は勘弁してねぇ。 アド:……、ナイすから。 アド:別に、今どき……、焦って童貞捨てよーとするとかの方が、逆にダサいっつーか、 ラビ:好きでもナイ相手とぉ? アド:……っ、そ、 ラビ:じゃ、尚更ヤナに頼めばぁ? アド:…………っ、 0:絶句。沈黙。 ラビ:あははははぁ。ワカリやすぅい。純情ぉー。 ラビ:……汚(よご)したいわぁー…………。 【モノローグ】(アド):また、グビ、と呷(あお)り。 【モノローグ】(アド):あの、下品にも、上品にも見える笑みを浮かべて。 アド:……、何すか、ソレ……、 ラビ:君みたいな、今ドキ珍しー潔癖なガキは。 ラビ:汚れてくトコ見てみたくなるのよねぇ。 アド:……、 ラビ:あ、これ病気だから。気にしなくてイイよ。 アド:……もー、慣れましたけど。そーいうのも。 ラビ:あはぁ。 ラビ:……さっさとズブズブのグダグダになればイイのに。 ラビ:慣れたらスグだよぉ? 若いし。 アド:……職場だし。別にそーいう……。 アド:あとズブズブでグダグダなのはラビさんでしょ。 ラビ:店長に向かって生意気ぃ。 ラビ:……でも違うよ? アド:え、 0:僅か、笑みが薄れ。 ラビ:みんな、ドコのどいつもさぁ。 ラビ:屑ばっかりだよ、ここいらの大人なんて。 ラビ:やることやってまぁす、ってカオしてるだけでね。 アド:…………、 アド:わかんねェ。 アド:ガキだし。まだ。 ラビ:うふぅ。逃げ口上になんないんだなぁ、ソレ。 ラビ:……もうナンでも、デキちゃう歳だから。 アド:…………。 アド:働かして貰えてんのだけは、感謝してるんで。 アド:給料……、普通からしたら、イイ方だし。 ラビ:そぉ? まぁ出してんのは近江(おうみ)だけど。 ラビ:……高校辞めずに済んだのって嬉しいの? アド:……嬉しい、ってか……、普通に、行けないよりはそりゃ、 ラビ:(遮り)普通に高校行って、お金あったら大学行って、さぁ。 アド:……っ、 ラビ:昼間の、人に言えるようなシゴトに就いて、さぁ。 アド:……、 【モノローグ】(アド):気配の、湿度が増すような。 【モノローグ】(アド):……ラビさんは、ジメジメした女だ。 ラビ:普通っぽく結婚とかして、順当に子供とか作って、育ててたらさぁ。 ラビ:幸せなのかなぁ。 アド:……、 ラビ:好きなだけお酒飲んで、好きな時に好きなヤツと、ヤになるぐらいセックスしてぇ、 ラビ:グズグズでも、お金さえ稼いどきゃソレでオッケぇー、って。 ラビ:そーいうのと。 ラビ:ドッチが楽しいんだろーね? アド:……、……、 【モノローグ】(アド):知る、かよ。 【モノローグ】(アド):そんなこと、 アド:……高校生のガキに、聞かれても。 アド:(切り替え) アド:仕込み、済んだんで。 アド:手ェ洗って店前、俺掃きます。 ラビ:ん……、 ラビ:そぉね。 アド:アイツどうせ、タラタラ着替えてんだろーし。 アド:定時で看板、 ラビ:(遮り)ヤメといた方がイイかもねぇ? ヤナは。 アド:……っ、そっ、ンっ、いや、 ラビ:好きにしたらイイけど。 ラビ:君は多分、持ってらんなくなっちゃいそう。 アド:も、って……? ラビ:ヤナは欲しがられたら、ドコでも着いてっちゃうから。 ラビ:自分から、誰かと生きてこうっていうアタマが、ハジメから無いんだよね。 ラビ:ソレってどーいう事かワカるぅ? アド:……、い、や、てか、 【モノローグ】(アド):ぬるり、と。 【モノローグ】(アド):自分と俺との距離に滑り込んで、間を詰める。 【モノローグ】(アド):全く反応出来てない俺の耳に唇をくっつけて、 ラビ:ワカンないよねぇ? ラビ:君はまだガキだから。 ラビ:(耳を舐める音) 【モノローグ】(アド):ベロリ、と、熱い舌で舐(ねぶ)る。 アド:(形容しがたい奇声) ラビ:あっはははぁ。 【モノローグ】(アド):思わず叫んで、後ろ向きに吹っ飛んだ俺は、 【モノローグ】(アド):……海老みたい、だったと思う。 0:【間】 【モノローグ】(アド):夜も更け、宴もタケナワ。 【モノローグ】(アド):引っ張らず、23時30分、定時で営業終了。 【モノローグ】(アド):油と、サワークリームソースにまみれた手を、しつこいぐらいに擦る。 【モノローグ】(アド):何かを、必死に、洗い落とすように。 ヤナ:(スタッフルームからの扉を開け) ヤナ:おォつおつカレリーーーン! レェスリングチャンピオォーーーーンっ! アド:…………、おつかれ。 ヤナ:いやはァーっ、金曜の割に早目にお客引いたねェーっ、テッペン越える覚悟バッチシだったのにっ。 アド:飲んでんの。 ヤナ:2杯だけェーっ。「頂きます」してさ、 ヤナ:ニュートン飲んじゃったァ。 アド:青リンゴのヤツか。 ヤナ:そーそーそォ。ケッコーいけるよ、飲んでみる? あ無理かァ、ウチのコックさん未成年だからァー、アハハハハハっ。 アド:……ウザ。営業後は特に。 ヤナ:すっかりエンジン温まってますからなァーっ、ブンブンブゥウウーーーンっと。 アド:……、看板、消した? こないだ点いてたぞ。 ヤナ:消した消したァー、抜かりありませェーーん。 ヤナ:てかアドくんどしたのカナ? なァんかカオ、土気色してるよ? アド:……別に? 普通に、店終わった、から、 ヤナ:ふーん? アド:…………。 0:何とは無しの、沈黙。 ヤナ:えっ! モシカしてずっとウンコ我慢してんのォっ!!?? アド:違うわ!! 行ったよ隙見て! ヤナ:アッハハハハハっ。 ヤナ:アドくん最初の頃さァー、どのタイミングでトイレ行ってイイのかわかりませんってなってさァ、おしっこ我慢しながらエビ揚げてたよねェ。 アド:……アレは、 ヤナ:ぴょんぴょん跳ねながら料理しててさァ、「エビがエビ揚げてるゥ」ってラビさんと笑ってたよ。アハハハっ。 アド:……厨房、1人だし。 アド:オーナーに相談までしたし。 ヤナ:「隙突いて上手いコト行けやボケぇ」って怒鳴られてたよね、アハハっ。 アド:「自分が便所にかける時間ぐらい把握してんだろコラぁ」ってな。 アド:……確かに、ってなった。 ヤナ:アハハハぁ。オーナー優しーっ。 【モノローグ】(アド):白金(プラチナ)の髪をなびかせて、背の高い、何もかもが派手な女は、厨房の冷蔵庫へと大股で歩く。 【モノローグ】(アド):冷やしてた自前のメロンソーダをコクコクと飲み下して、唇を離す。 【モノローグ】(アド):……あの、唇は、 【モノローグ】(アド):さっき、 ヤナ:……ナニ見てんのォ? アド:べっ! 別、にっ。 アド:メロンソーダ、緑だな、めっちゃ、とか、思って……、 ヤナ:(遮り)さっきさァ、 アド:な、何、 ヤナ:見てたでしょ? 裏口、開いてるトコから。 アド:……っ、あ、え、 ヤナ:私は別にイイんだけどォ。 ヤナ:覗き見ってクセになっちゃうらしいから。 アド:……、……、 0:沈黙による静寂。 アド:…………。 アド:あんな、トコで。 アド:客とキス、してんなよ。 アド:また、変な噂、立つだろ。 ヤナ:だぁれも見てないもぉん。 ヤナ:ピーピング趣味のコーコーセー以外はねー? アド:それ、は、たまたま、 ヤナ:今キスしたァいって言われてェ。 ヤナ:私もイヤじゃなかったしィ、 アド:彼氏、でも無いヤツと、 ヤナ:彼氏いま居ないから。 ヤナ:彼氏じゃナイ人と、いくらキスしたってヨクない? アド:……、 ヤナ:え、ナニがダメぇ? アド:駄目、とかじゃ……。 アド:関係、ねェけど、 ヤナ:じゃなくてェ。 ヤナ:アドくんがイヤなの? アド:……っ、 ヤナ:世界は私の独壇場だから。 ヤナ:私のシたいコト、シたいようにスるけど。 ヤナ:止めたいのォ? ヤメさせたい? アド:俺が、どーとかじゃ、無くて、 ヤナ:じゃ、何? アド:……っ、 0:眼差しは、痛いほど、シリアス。 アド:そんなん、してたら、さ……、 ヤナ:うん。 アド:……駄目な、 アド:大人に、 アド:なん、よ。 ヤナ:…………、 0:吹き出し。 ヤナ:っぷ、ブふっ、 ヤナ:アっ、ハハハハハっ、 ヤナ:アハハハハハハハハハっ! アド:……っ、 ヤナ:(一頻り笑い) ヤナ:……くっくくゥ。 ヤナ:シゲキ強かったァ? ヤナ:……汚いって思う? アド:……、別にっ! ソコまでガキじゃ、 ヤナ:良いじゃァん。 ヤナ:……外人(ガイジン)だし。見た目。 アド:……関係ナイ、だろ。 【モノローグ】(アド):ハーフだか、クオーターだか。 【モノローグ】(アド):本人が言うには、4分の1だけ日本人で、残りはだいたい外人、らしい。 【モノローグ】(アド):見た目は確かに、わかり易過ぎるぐらいの、西洋の血。 【モノローグ】(アド):でも、 アド:育ちは殆ど日本、なんだろ。 アド:大好きじゃん、米。 ヤナ:お米好きだったら彼氏としかキスしちゃ駄目なのォ? アハハっ。 【モノローグ】(アド):チゲぇし。 アド:……、 アド:バカ。 ヤナ:……あァーーん? まァたチョーク希望? ヤナ:背中でおっぱい感じたいのォ? アド:(硬く、冷たく) アド:うるせェな。 ヤナ:おっ? アド:……、 0:面持ちは、神妙。奥歯が僅か、軋む。 アド:…………じゃあ、さ。 ヤナ:んー? アド:……彼氏でも、無いヤツと……、 アド:いくらでも、キス、出来ん、なら、 ヤナ:……、 アド:……、俺とも、出来んのかよ? ヤナ:…………、 【モノローグ】(アド):今日は、フライ系、結構出たから。 【モノローグ】(アド):気化した油で、バカになってたんだ。俺の頭。 【モノローグ】(アド):……多分。 ヤナ:……なァーんか。 ヤナ:今日のアドくんムカつくなァー。 アド:……シャレ、だし。 アド:もう、さっさと着替えて、 【モノローグ】(アド):「帰れよ」、って、言いかけた俺の視界を。 【モノローグ】(アド):蜂蜜みたいな、真珠みたいな色の髪が隠して。 【モノローグ】(アド):距離、ゼロ。むしろ、密着してマイナス。 【モノローグ】(アド):熱い体温と、息を、直(じか)に感じながら。 【モノローグ】(アド):俺は、ヤナと、 【モノローグ】(アド):キスをしていた。 ヤナ:(唇を離し) ヤナ:……ぷぁ。 ヤナ:コレでイイのォ? 求めてた感じ? アド:(硬直、放心) アド:あ、……、う、 ヤナ:……アハハぁ、エビみたいに真っ赤ッカじゃんっ。 ヤナ:口程にもナイのォーーっ。 アド:……、……、 ヤナ:……今は魂ヌケてるだろーから。 ヤナ:次会った時にでも……、感想聞かせるヨロシーーっ。 アド:……っ、ちょ、っと、 ヤナ:着替えてそんまま帰るねェーっ。 ヤナ:ラビさん起きたらヨロシク伝えてくんろーーーっ。 【モノローグ】(アド):言って、 【モノローグ】(アド):ネコ科の猛獣みたいにしなやかに、体を操って。 【モノローグ】(アド):引き留められないテンポで、ドアの向こうへと去る。 アド:……っ、……、 【モノローグ】(アド):一瞬とも、無限ともつかない静寂の後、 【モノローグ】(アド):俺だけがポツンと残った厨房に、湿った声がした。 ラビ:……見ぃちゃったぁ。 アド:(反応し) アド:う、おっ!!?? ラビ:(入室しつつ) ラビ:おつかれぇ。 アド:ラ、ラ、ラ、ラビ、さんっ、 アド:い、いつから……っ、 ラビ:「メロンソーダ、めっちゃ、緑だな」、の辺りから。 アド:……っ、 アド:何で……、 ラビ:ヤナも言ってたけどさぁ。 ラビ:覗き見って、癖になっちゃうんだよねぇ。 アド:……、……、 ラビ:気持ちよかった? ラビ:テンション上がったぁ? アド:…………。 アド:わ、かんねェ、……っす……。 ラビ:ふぅん。 0:何とも言えぬ顔のまま、少年は沈黙。 ラビ:…………寸止めな感じなら。 ラビ:今から私とするぅ? アド:…………、 ラビ:寝起きだけど。 アド:い、や……、多、分、 アド:出来る感じじゃナイ、と、思う、っていうか……、 ラビ:へぇー……。 ラビ:ぶっちゃけ童貞くんとシたコト無いから。 ラビ:ワカンないんだなぁ、その辺。 0:少年は未だ、放心。 アド:…………。 ラビ:(軽い思案の末) ラビ:じゃ……、ラーメンとか食べに行くぅ? ラビ:今日ソコソコ上がったんでしょ。 アド:…………。 【モノローグ】(アド):何にも考えらんねェ。 【モノローグ】(アド):けど。取り敢えず……、 【モノローグ】(アド):腹、減った。 アド:…………。 アド:……行きたい、す……。 ラビ:(含みの無い無表情で) ラビ:おっけぇ。 0:暗転。 【モノローグ】(アド):「安土(あづち)」だから、「アド」。 【モノローグ】(アド):これは、俺と、どーしよーもない、不条理なヤツらとの……、 【モノローグ】(アド):話にならない、日常の、話。 0:【終】 0 ヤナ:【次回予告】っっ!! ラビ:さぁて、次回の『Shrimpy Days(シュリンピィ・デイズ)』はぁ、 0:カット・イン。 ヤナ:「おおっ、まさしくハムレット的命題じゃァーんっ。ヤるべきかヤらざるべきか、そォれが問題だっ、つってつってーっ。」 アド:「怒られろ、シェイクスピアにっ。」 0:カット・チェンジ。 ヤナ:「デリのコたちがさぁ、みんなヤりたくてヤってるって思ってんのーーー?」 アド:「……知らね。無いし、行ったこと。」 ヤナ:「デリは行くんじゃなくて呼ぶんだよーーーっ。やァーーいドーテーっ、アヒャヒャヒャヒャっ!」 アド:「いィっ、うっ、うるせーーっ!!」 0:カット・チェンジ。 ヤナ:「皆ねー。私のコト、好きだけど、嫌いで……、やっぱ好きなんだけど、でも基本は、」 アド:「おい、」 ヤナ:「嫌い、なんだと思うよー。」 アド:「……ンな、こと、自分でっ、」 ヤナ:「アドくんはどーなってくカナぁ。」 アド:「……っ、」 ラビ:《アクト2》。 ラビ:次回も海老反りに、乞うご期たぁい。 0:【予告終了】