台本概要

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タイトル zzz Alice
作者名 瀬川こゆ  (@hiina_segawa)
ジャンル ファンタジー
演者人数 1人用台本(不問1) ※兼役あり
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
不問 1
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
僕:おはよう、アリス。  :僕は今日も話しかける。  :鏡の向こう側は楽しいかい?と。  :   :人生はなんてつまらないのだろうか。  :でも君が微笑みかけてくれる瞬間だけは、  :僕は退屈していないのもまた事実。  :   :矛盾をしているのは分かっている。  :だって僕は楽しければ楽しいほどグチャグチャに壊したくなる。  :そう言う思考回路しか出来ない生き物だから。  :   :全てを諦めて生きていれば、  :どんな些細なことでも嬉しくなる。  :   :それでも鏡だけは壊せない。 0:一拍  :ここは不思議だ、不思議の国だ。  :常識はいっそ非常識なのだと、誰もが理解している世界だ。  :   :例えば扉を閉めてみたとして、  :その先に当たり前の現実が広がっていると、  :少なくとも君だけは、  :それを知ることが出来ないのと同じだ。  :   :人は皆一様に善人であるのだと、  :信じている君には分からないことなのだ。  :   :常日頃ヘラヘラ笑ってる奴なんか……、  :嗚呼、そうだねアリス。  :確かに僕はいつもケラケラ笑っていたか。  :そうだね、うん、そうだった。  :   :けれど例えば君が今生きる世界が、  :誰かの創作上の産物だったらどうする?  :あるいは君自身すら、  :誰かに作られた存在だったのなら。  :   :生きている内はそれを知る術(すべ)が無くて、  :死んで始めて真理に気付けるとしたのなら。  :   :それを知ってしまったとしたら。  :   :自分を殺す人間が全て間違っていると、  :頭ごなしには言えないのかもしれない。  :   :嗚呼だからって、  :死んで意味があるとは思っていないよ。  :   :少なくとも今、  :生きている理由がある内は、  :人は誰も死ぬことなんて出来ないのだから。  :   :君の理由がなんだって?  :それを僕に聞くのは違うだろう。  :考えても分からないのならば、  :君の思考のずっと先に理由があるのだろう。  :   :誰も理解出来ないことだとしても、  :君が今生きている理由はあるのだ。  :   :なに?アリス。  :こちら側の話が聞きたい?  :こっちは相変わらずだよ。  :いつも通りさ。  :   :気に入らない。  :嗚呼、気に入らないと、  :ハートの女王は召使いの首を撥(は)ねた。  :   :ゴロゴロ転がる頭をボールとして、  :優雅にクロッケーを楽しんで。  :不機嫌極まりなかった彼女は、  :今日もご満悦そうに笑っていたよ。  :   :何でもない日がなんだって?  :何でもない日は何でもない日。  :それとも君が見る場所に、  :何かがある日が存在するとでも?  :   :嗚呼、そんな目で見ないでアリス。  :僕はちっともおかしくない。  :おかしいのは僕達がおかしいのだと、  :そう君に認識させる世界そのものさ。  :   :言っただろう?  :全てを諦めて生きていれば、  :どんな些細なことでも嬉しくなる。  :   :それでも鏡だけは壊せない。  :   :はて?  :どうして鏡は壊せないんだっけ?  :  0:一拍  :   :嗚呼、聞いているよアリス。  :ごめんね無視した訳じゃないんだ。  :   :何が気になっていたんだっけ?  :何も気にはなってはいない。  :そうだね、君がそう言うのならそうなんだ。  :   :ある日、お姫様にも王子様にも。  :僕は何者にもなれないのだと知ったんだ。  :僕はそれでも良かったけれど、  :君は、君の方は、たぶん、たぶん……。  :  0:間  :   :随分と時間が経ってしまったようだね。  :あるいは、  :一秒も経っていないのかもしれないけれど。  :   :お話を聞かせてあげようか?アリス。  :散々聞いた?  :もうおなか一杯?  :まぁいいじゃないか、少しだけだよ。  :   :むかしむかし、  :自分は何かになれるのだと、  :そう信じてやまない少女がいたんだ。  :   :少女は空想や不思議なことが大好きで、  :自分の中に広がる世界を最も大切にしていた。  :   :けれどある日、悪いハートの女王が、  :少女の世界を利用して、  :表面上は笑いながら、  :少女自身を突き落としたんだ。  :   :信じることは馬鹿なこと。  :女王を信じた少女が馬鹿なんだ。  :そんなことは少女も分かっていた。  :分かっていたけど期待したんだ。  :「今度こそは大丈夫」  :「この人なら大丈夫」  :そんな言葉になんの確証も持てなかったくせに。  :   :守る術(すべ)は消えることしかなくて、  :逃げる手段はそれしかなかった。  :一矢報(いっしむく)えたのかは知らないけれど、  :やれることはやれたと笑った。  :   :心からすっきりはしなかったけれど、  :やっと自由になれたと思ったんだ。  :   :その日から、少女は空想をやめた。  :少女は少女の現実に帰っていった。  :   :分かっていたんだ。  :もう少女ではいられないって。  :彼女が求めた少女はずっと少女だったけれど、  :他人が求めた少女は少女じゃなかったから。  :   :自分らしくはいられない。  :それが分かったからやめたんだ。  :   :許さなかったのは少女の世界の住人。  :   :だって君無しで僕達は生きられない。  :   :住人達は相談して、  :少女を鏡の中に閉じ込めることにしたんだ。  :   :可哀想に。  :少女は自分自身にすら裏切られた。  :   :永遠に夢を見続けるように、  :眠りの魔法が掛かった毒を飲まされて。  :   :だからね、アリス。  :君はここから出られない。  :   :そもそも世界は、  :何にもなれなかった君から産み出されてる訳じゃなかった。  :僕達は何にもなれないから、  :何にもなれない君から生まれたと思っていたけれど、  :どうやらその考えは間違っていたようだ。  :   :だって君がこうして死んだ後だって、  :僕達は当たり前に息をしている。  :これが一番の証拠だよ。  :   :あの日君が飲んだのは、  :白雪姫の毒じゃない。  :正真正銘の毒だったんだ。  :でも誰も知らない。  :帽子屋も、三月うさぎも、トランプ兵も。  :君はまだ眠っていると思っている。  :   :なんで僕が知ってるかって?アリス。  :そりゃあ毒を入れ替えたのが僕だからだよ。  :   :欲しかったんだ、それだけさ。  :僕しか知らない秘密が欲しかったんだ。  :   :うん、うん、手に入れたよ。  :全部、全部。  :   :それでも鏡は壊せない。  :壊せないんだ、これだけは。  :   :僕の理由はまだあるようだ。  :いったい何のために?  :誰のために?  :   :まぁ……君が知る筈もないか、アリス。

僕:おはよう、アリス。  :僕は今日も話しかける。  :鏡の向こう側は楽しいかい?と。  :   :人生はなんてつまらないのだろうか。  :でも君が微笑みかけてくれる瞬間だけは、  :僕は退屈していないのもまた事実。  :   :矛盾をしているのは分かっている。  :だって僕は楽しければ楽しいほどグチャグチャに壊したくなる。  :そう言う思考回路しか出来ない生き物だから。  :   :全てを諦めて生きていれば、  :どんな些細なことでも嬉しくなる。  :   :それでも鏡だけは壊せない。 0:一拍  :ここは不思議だ、不思議の国だ。  :常識はいっそ非常識なのだと、誰もが理解している世界だ。  :   :例えば扉を閉めてみたとして、  :その先に当たり前の現実が広がっていると、  :少なくとも君だけは、  :それを知ることが出来ないのと同じだ。  :   :人は皆一様に善人であるのだと、  :信じている君には分からないことなのだ。  :   :常日頃ヘラヘラ笑ってる奴なんか……、  :嗚呼、そうだねアリス。  :確かに僕はいつもケラケラ笑っていたか。  :そうだね、うん、そうだった。  :   :けれど例えば君が今生きる世界が、  :誰かの創作上の産物だったらどうする?  :あるいは君自身すら、  :誰かに作られた存在だったのなら。  :   :生きている内はそれを知る術(すべ)が無くて、  :死んで始めて真理に気付けるとしたのなら。  :   :それを知ってしまったとしたら。  :   :自分を殺す人間が全て間違っていると、  :頭ごなしには言えないのかもしれない。  :   :嗚呼だからって、  :死んで意味があるとは思っていないよ。  :   :少なくとも今、  :生きている理由がある内は、  :人は誰も死ぬことなんて出来ないのだから。  :   :君の理由がなんだって?  :それを僕に聞くのは違うだろう。  :考えても分からないのならば、  :君の思考のずっと先に理由があるのだろう。  :   :誰も理解出来ないことだとしても、  :君が今生きている理由はあるのだ。  :   :なに?アリス。  :こちら側の話が聞きたい?  :こっちは相変わらずだよ。  :いつも通りさ。  :   :気に入らない。  :嗚呼、気に入らないと、  :ハートの女王は召使いの首を撥(は)ねた。  :   :ゴロゴロ転がる頭をボールとして、  :優雅にクロッケーを楽しんで。  :不機嫌極まりなかった彼女は、  :今日もご満悦そうに笑っていたよ。  :   :何でもない日がなんだって?  :何でもない日は何でもない日。  :それとも君が見る場所に、  :何かがある日が存在するとでも?  :   :嗚呼、そんな目で見ないでアリス。  :僕はちっともおかしくない。  :おかしいのは僕達がおかしいのだと、  :そう君に認識させる世界そのものさ。  :   :言っただろう?  :全てを諦めて生きていれば、  :どんな些細なことでも嬉しくなる。  :   :それでも鏡だけは壊せない。  :   :はて?  :どうして鏡は壊せないんだっけ?  :  0:一拍  :   :嗚呼、聞いているよアリス。  :ごめんね無視した訳じゃないんだ。  :   :何が気になっていたんだっけ?  :何も気にはなってはいない。  :そうだね、君がそう言うのならそうなんだ。  :   :ある日、お姫様にも王子様にも。  :僕は何者にもなれないのだと知ったんだ。  :僕はそれでも良かったけれど、  :君は、君の方は、たぶん、たぶん……。  :  0:間  :   :随分と時間が経ってしまったようだね。  :あるいは、  :一秒も経っていないのかもしれないけれど。  :   :お話を聞かせてあげようか?アリス。  :散々聞いた?  :もうおなか一杯?  :まぁいいじゃないか、少しだけだよ。  :   :むかしむかし、  :自分は何かになれるのだと、  :そう信じてやまない少女がいたんだ。  :   :少女は空想や不思議なことが大好きで、  :自分の中に広がる世界を最も大切にしていた。  :   :けれどある日、悪いハートの女王が、  :少女の世界を利用して、  :表面上は笑いながら、  :少女自身を突き落としたんだ。  :   :信じることは馬鹿なこと。  :女王を信じた少女が馬鹿なんだ。  :そんなことは少女も分かっていた。  :分かっていたけど期待したんだ。  :「今度こそは大丈夫」  :「この人なら大丈夫」  :そんな言葉になんの確証も持てなかったくせに。  :   :守る術(すべ)は消えることしかなくて、  :逃げる手段はそれしかなかった。  :一矢報(いっしむく)えたのかは知らないけれど、  :やれることはやれたと笑った。  :   :心からすっきりはしなかったけれど、  :やっと自由になれたと思ったんだ。  :   :その日から、少女は空想をやめた。  :少女は少女の現実に帰っていった。  :   :分かっていたんだ。  :もう少女ではいられないって。  :彼女が求めた少女はずっと少女だったけれど、  :他人が求めた少女は少女じゃなかったから。  :   :自分らしくはいられない。  :それが分かったからやめたんだ。  :   :許さなかったのは少女の世界の住人。  :   :だって君無しで僕達は生きられない。  :   :住人達は相談して、  :少女を鏡の中に閉じ込めることにしたんだ。  :   :可哀想に。  :少女は自分自身にすら裏切られた。  :   :永遠に夢を見続けるように、  :眠りの魔法が掛かった毒を飲まされて。  :   :だからね、アリス。  :君はここから出られない。  :   :そもそも世界は、  :何にもなれなかった君から産み出されてる訳じゃなかった。  :僕達は何にもなれないから、  :何にもなれない君から生まれたと思っていたけれど、  :どうやらその考えは間違っていたようだ。  :   :だって君がこうして死んだ後だって、  :僕達は当たり前に息をしている。  :これが一番の証拠だよ。  :   :あの日君が飲んだのは、  :白雪姫の毒じゃない。  :正真正銘の毒だったんだ。  :でも誰も知らない。  :帽子屋も、三月うさぎも、トランプ兵も。  :君はまだ眠っていると思っている。  :   :なんで僕が知ってるかって?アリス。  :そりゃあ毒を入れ替えたのが僕だからだよ。  :   :欲しかったんだ、それだけさ。  :僕しか知らない秘密が欲しかったんだ。  :   :うん、うん、手に入れたよ。  :全部、全部。  :   :それでも鏡は壊せない。  :壊せないんだ、これだけは。  :   :僕の理由はまだあるようだ。  :いったい何のために?  :誰のために?  :   :まぁ……君が知る筈もないか、アリス。