台本概要
286 views
タイトル | zzz Alice |
---|---|
作者名 | 瀬川こゆ (@hiina_segawa) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 1人用台本(不問1) ※兼役あり |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
286 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
僕 | 不問 | 1 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
僕:おはよう、アリス。
:僕は今日も話しかける。
:鏡の向こう側は楽しいかい?と。
:
:人生はなんてつまらないのだろうか。
:でも君が微笑みかけてくれる瞬間だけは、
:僕は退屈していないのもまた事実。
:
:矛盾をしているのは分かっている。
:だって僕は楽しければ楽しいほどグチャグチャに壊したくなる。
:そう言う思考回路しか出来ない生き物だから。
:
:全てを諦めて生きていれば、
:どんな些細なことでも嬉しくなる。
:
:それでも鏡だけは壊せない。
0:一拍
:ここは不思議だ、不思議の国だ。
:常識はいっそ非常識なのだと、誰もが理解している世界だ。
:
:例えば扉を閉めてみたとして、
:その先に当たり前の現実が広がっていると、
:少なくとも君だけは、
:それを知ることが出来ないのと同じだ。
:
:人は皆一様に善人であるのだと、
:信じている君には分からないことなのだ。
:
:常日頃ヘラヘラ笑ってる奴なんか……、
:嗚呼、そうだねアリス。
:確かに僕はいつもケラケラ笑っていたか。
:そうだね、うん、そうだった。
:
:けれど例えば君が今生きる世界が、
:誰かの創作上の産物だったらどうする?
:あるいは君自身すら、
:誰かに作られた存在だったのなら。
:
:生きている内はそれを知る術(すべ)が無くて、
:死んで始めて真理に気付けるとしたのなら。
:
:それを知ってしまったとしたら。
:
:自分を殺す人間が全て間違っていると、
:頭ごなしには言えないのかもしれない。
:
:嗚呼だからって、
:死んで意味があるとは思っていないよ。
:
:少なくとも今、
:生きている理由がある内は、
:人は誰も死ぬことなんて出来ないのだから。
:
:君の理由がなんだって?
:それを僕に聞くのは違うだろう。
:考えても分からないのならば、
:君の思考のずっと先に理由があるのだろう。
:
:誰も理解出来ないことだとしても、
:君が今生きている理由はあるのだ。
:
:なに?アリス。
:こちら側の話が聞きたい?
:こっちは相変わらずだよ。
:いつも通りさ。
:
:気に入らない。
:嗚呼、気に入らないと、
:ハートの女王は召使いの首を撥(は)ねた。
:
:ゴロゴロ転がる頭をボールとして、
:優雅にクロッケーを楽しんで。
:不機嫌極まりなかった彼女は、
:今日もご満悦そうに笑っていたよ。
:
:何でもない日がなんだって?
:何でもない日は何でもない日。
:それとも君が見る場所に、
:何かがある日が存在するとでも?
:
:嗚呼、そんな目で見ないでアリス。
:僕はちっともおかしくない。
:おかしいのは僕達がおかしいのだと、
:そう君に認識させる世界そのものさ。
:
:言っただろう?
:全てを諦めて生きていれば、
:どんな些細なことでも嬉しくなる。
:
:それでも鏡だけは壊せない。
:
:はて?
:どうして鏡は壊せないんだっけ?
:
0:一拍
:
:嗚呼、聞いているよアリス。
:ごめんね無視した訳じゃないんだ。
:
:何が気になっていたんだっけ?
:何も気にはなってはいない。
:そうだね、君がそう言うのならそうなんだ。
:
:ある日、お姫様にも王子様にも。
:僕は何者にもなれないのだと知ったんだ。
:僕はそれでも良かったけれど、
:君は、君の方は、たぶん、たぶん……。
:
0:間
:
:随分と時間が経ってしまったようだね。
:あるいは、
:一秒も経っていないのかもしれないけれど。
:
:お話を聞かせてあげようか?アリス。
:散々聞いた?
:もうおなか一杯?
:まぁいいじゃないか、少しだけだよ。
:
:むかしむかし、
:自分は何かになれるのだと、
:そう信じてやまない少女がいたんだ。
:
:少女は空想や不思議なことが大好きで、
:自分の中に広がる世界を最も大切にしていた。
:
:けれどある日、悪いハートの女王が、
:少女の世界を利用して、
:表面上は笑いながら、
:少女自身を突き落としたんだ。
:
:信じることは馬鹿なこと。
:女王を信じた少女が馬鹿なんだ。
:そんなことは少女も分かっていた。
:分かっていたけど期待したんだ。
:「今度こそは大丈夫」
:「この人なら大丈夫」
:そんな言葉になんの確証も持てなかったくせに。
:
:守る術(すべ)は消えることしかなくて、
:逃げる手段はそれしかなかった。
:一矢報(いっしむく)えたのかは知らないけれど、
:やれることはやれたと笑った。
:
:心からすっきりはしなかったけれど、
:やっと自由になれたと思ったんだ。
:
:その日から、少女は空想をやめた。
:少女は少女の現実に帰っていった。
:
:分かっていたんだ。
:もう少女ではいられないって。
:彼女が求めた少女はずっと少女だったけれど、
:他人が求めた少女は少女じゃなかったから。
:
:自分らしくはいられない。
:それが分かったからやめたんだ。
:
:許さなかったのは少女の世界の住人。
:
:だって君無しで僕達は生きられない。
:
:住人達は相談して、
:少女を鏡の中に閉じ込めることにしたんだ。
:
:可哀想に。
:少女は自分自身にすら裏切られた。
:
:永遠に夢を見続けるように、
:眠りの魔法が掛かった毒を飲まされて。
:
:だからね、アリス。
:君はここから出られない。
:
:そもそも世界は、
:何にもなれなかった君から産み出されてる訳じゃなかった。
:僕達は何にもなれないから、
:何にもなれない君から生まれたと思っていたけれど、
:どうやらその考えは間違っていたようだ。
:
:だって君がこうして死んだ後だって、
:僕達は当たり前に息をしている。
:これが一番の証拠だよ。
:
:あの日君が飲んだのは、
:白雪姫の毒じゃない。
:正真正銘の毒だったんだ。
:でも誰も知らない。
:帽子屋も、三月うさぎも、トランプ兵も。
:君はまだ眠っていると思っている。
:
:なんで僕が知ってるかって?アリス。
:そりゃあ毒を入れ替えたのが僕だからだよ。
:
:欲しかったんだ、それだけさ。
:僕しか知らない秘密が欲しかったんだ。
:
:うん、うん、手に入れたよ。
:全部、全部。
:
:それでも鏡は壊せない。
:壊せないんだ、これだけは。
:
:僕の理由はまだあるようだ。
:いったい何のために?
:誰のために?
:
:まぁ……君が知る筈もないか、アリス。
僕:おはよう、アリス。
:僕は今日も話しかける。
:鏡の向こう側は楽しいかい?と。
:
:人生はなんてつまらないのだろうか。
:でも君が微笑みかけてくれる瞬間だけは、
:僕は退屈していないのもまた事実。
:
:矛盾をしているのは分かっている。
:だって僕は楽しければ楽しいほどグチャグチャに壊したくなる。
:そう言う思考回路しか出来ない生き物だから。
:
:全てを諦めて生きていれば、
:どんな些細なことでも嬉しくなる。
:
:それでも鏡だけは壊せない。
0:一拍
:ここは不思議だ、不思議の国だ。
:常識はいっそ非常識なのだと、誰もが理解している世界だ。
:
:例えば扉を閉めてみたとして、
:その先に当たり前の現実が広がっていると、
:少なくとも君だけは、
:それを知ることが出来ないのと同じだ。
:
:人は皆一様に善人であるのだと、
:信じている君には分からないことなのだ。
:
:常日頃ヘラヘラ笑ってる奴なんか……、
:嗚呼、そうだねアリス。
:確かに僕はいつもケラケラ笑っていたか。
:そうだね、うん、そうだった。
:
:けれど例えば君が今生きる世界が、
:誰かの創作上の産物だったらどうする?
:あるいは君自身すら、
:誰かに作られた存在だったのなら。
:
:生きている内はそれを知る術(すべ)が無くて、
:死んで始めて真理に気付けるとしたのなら。
:
:それを知ってしまったとしたら。
:
:自分を殺す人間が全て間違っていると、
:頭ごなしには言えないのかもしれない。
:
:嗚呼だからって、
:死んで意味があるとは思っていないよ。
:
:少なくとも今、
:生きている理由がある内は、
:人は誰も死ぬことなんて出来ないのだから。
:
:君の理由がなんだって?
:それを僕に聞くのは違うだろう。
:考えても分からないのならば、
:君の思考のずっと先に理由があるのだろう。
:
:誰も理解出来ないことだとしても、
:君が今生きている理由はあるのだ。
:
:なに?アリス。
:こちら側の話が聞きたい?
:こっちは相変わらずだよ。
:いつも通りさ。
:
:気に入らない。
:嗚呼、気に入らないと、
:ハートの女王は召使いの首を撥(は)ねた。
:
:ゴロゴロ転がる頭をボールとして、
:優雅にクロッケーを楽しんで。
:不機嫌極まりなかった彼女は、
:今日もご満悦そうに笑っていたよ。
:
:何でもない日がなんだって?
:何でもない日は何でもない日。
:それとも君が見る場所に、
:何かがある日が存在するとでも?
:
:嗚呼、そんな目で見ないでアリス。
:僕はちっともおかしくない。
:おかしいのは僕達がおかしいのだと、
:そう君に認識させる世界そのものさ。
:
:言っただろう?
:全てを諦めて生きていれば、
:どんな些細なことでも嬉しくなる。
:
:それでも鏡だけは壊せない。
:
:はて?
:どうして鏡は壊せないんだっけ?
:
0:一拍
:
:嗚呼、聞いているよアリス。
:ごめんね無視した訳じゃないんだ。
:
:何が気になっていたんだっけ?
:何も気にはなってはいない。
:そうだね、君がそう言うのならそうなんだ。
:
:ある日、お姫様にも王子様にも。
:僕は何者にもなれないのだと知ったんだ。
:僕はそれでも良かったけれど、
:君は、君の方は、たぶん、たぶん……。
:
0:間
:
:随分と時間が経ってしまったようだね。
:あるいは、
:一秒も経っていないのかもしれないけれど。
:
:お話を聞かせてあげようか?アリス。
:散々聞いた?
:もうおなか一杯?
:まぁいいじゃないか、少しだけだよ。
:
:むかしむかし、
:自分は何かになれるのだと、
:そう信じてやまない少女がいたんだ。
:
:少女は空想や不思議なことが大好きで、
:自分の中に広がる世界を最も大切にしていた。
:
:けれどある日、悪いハートの女王が、
:少女の世界を利用して、
:表面上は笑いながら、
:少女自身を突き落としたんだ。
:
:信じることは馬鹿なこと。
:女王を信じた少女が馬鹿なんだ。
:そんなことは少女も分かっていた。
:分かっていたけど期待したんだ。
:「今度こそは大丈夫」
:「この人なら大丈夫」
:そんな言葉になんの確証も持てなかったくせに。
:
:守る術(すべ)は消えることしかなくて、
:逃げる手段はそれしかなかった。
:一矢報(いっしむく)えたのかは知らないけれど、
:やれることはやれたと笑った。
:
:心からすっきりはしなかったけれど、
:やっと自由になれたと思ったんだ。
:
:その日から、少女は空想をやめた。
:少女は少女の現実に帰っていった。
:
:分かっていたんだ。
:もう少女ではいられないって。
:彼女が求めた少女はずっと少女だったけれど、
:他人が求めた少女は少女じゃなかったから。
:
:自分らしくはいられない。
:それが分かったからやめたんだ。
:
:許さなかったのは少女の世界の住人。
:
:だって君無しで僕達は生きられない。
:
:住人達は相談して、
:少女を鏡の中に閉じ込めることにしたんだ。
:
:可哀想に。
:少女は自分自身にすら裏切られた。
:
:永遠に夢を見続けるように、
:眠りの魔法が掛かった毒を飲まされて。
:
:だからね、アリス。
:君はここから出られない。
:
:そもそも世界は、
:何にもなれなかった君から産み出されてる訳じゃなかった。
:僕達は何にもなれないから、
:何にもなれない君から生まれたと思っていたけれど、
:どうやらその考えは間違っていたようだ。
:
:だって君がこうして死んだ後だって、
:僕達は当たり前に息をしている。
:これが一番の証拠だよ。
:
:あの日君が飲んだのは、
:白雪姫の毒じゃない。
:正真正銘の毒だったんだ。
:でも誰も知らない。
:帽子屋も、三月うさぎも、トランプ兵も。
:君はまだ眠っていると思っている。
:
:なんで僕が知ってるかって?アリス。
:そりゃあ毒を入れ替えたのが僕だからだよ。
:
:欲しかったんだ、それだけさ。
:僕しか知らない秘密が欲しかったんだ。
:
:うん、うん、手に入れたよ。
:全部、全部。
:
:それでも鏡は壊せない。
:壊せないんだ、これだけは。
:
:僕の理由はまだあるようだ。
:いったい何のために?
:誰のために?
:
:まぁ……君が知る筈もないか、アリス。