台本概要

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タイトル それは「じゃ」のつく俺の神様
作者名 瀬川こゆ  (@hiina_segawa)
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明
のじゃロリが出て来る話が書きたかっただけです。

※非商用時は連絡不要ですが、投げ銭機能のある配信媒体等で記録が残る場合はご一報と、概要欄等にクレジット表記をお願いします。

過度なアドリブ、改変、無許可での男女表記のあるキャラの性別変更は御遠慮ください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
佑久 229 「たすく」寂れた山奥の神社で御百度参りをしようとしている男。面白いものを見付けるとこねくり回しがち。
あこ 229 賽銭箱の上にいつの間にか座っていた自称、神様。狐耳と尻尾は気付いたら生えてた付属品。所謂のじゃロリ。 
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
佑久(M):コンコンコーン狐がないた 佑久(M):あまりにも、嗚呼あまりにも 佑久(M):あの空の月が遠いのだと 佑久(M):この両の腕をうんと伸ばしても 佑久(M):指の先すら触れられないのが哀しくて  :   :  0:古びた小さい神社の本坪鈴を鳴らす 0:二礼二拍手一礼 佑久:ふぅ。 佑久:これで、えっと、1・2・3・4。 佑久:……45か。 佑久:しっかし、こんな所に神社があったなんて、婆ちゃん言ってなかったぞ。 あこ:のぉ、これ、そこの。 あこ:おい聞こえておるのかえ? 佑久:さぁて、そろそろ帰るかー。 あこ:そちっっ!! 佑久:うわっっ?! 佑久:……え? あこ:ようやっと気付いたか。 佑久:誰アナタいつからそこに居たの?! あこ:いつからと言われてものぉ。 あこ:わらわもいつから此処におったのか、 あこ:ちぃっとも分かんなくてのぉ。 佑久:お、おん。 あこ:まぁまぁそちよりは随分先に居た事だけは確かじゃな。 佑久:居たぁ? あこ:うむ、おったぞ。 佑久:ずっとそこに? あこ:うむ、此処に。 佑久:え、や、そもそも、 あこ:ふん? 佑久:お社の戸開いてたっけぇ? あこ:閉まっておったな。 佑久:だよねぇ? あこ:でもわらわが開けたのじゃ。 佑久:開けちゃったの? 佑久:なんで? あこ:そちがよくよく来てくれるようになったからじゃ。 佑久:は……? あこ:寂れとるじゃろう?此処は。 あこ:苦節百年。 あこ:いやまぁ、もうちっとあった気がしなくもないがの。 佑久:おう……。 あこ:ま、とりあえず。 あこ:此処に人が来なくなってから随分と長く時間が経ってしまったんじゃが。 佑久:うん。 あこ:久方ぶりに誰か来たと思えば、そいつは毎日毎日欠かさず此処に通い始めてな? あこ:嗚呼これはもしや、御百度でも踏んでいるのじゃなぁと。 あこ:丁度昨日わらわはそれに気が付いてな? 佑久:うん。 あこ:百詣(まい)られたところでわらわには何も出来ぬから、そちのしてる事はただの無駄足じゃよ?と。 あこ:そう伝えてやろうかと思ってのぉ。 佑久:……何言ってるの?アナタ。 あこ:だからの? あこ:御百度詣(まい)ってくれるのは嬉しいんじゃが、すまない事にわらわは人の子に貸せる程の力をもう持っておらんのじゃよ。 佑久:…………とりあえず降りようか? あこ:む? 佑久:賽銭箱の上に乗っちゃいけないって言われた事ないのかな? あこ:無いのぉ。 佑久:じゃあ今俺が言う。 佑久:賽銭箱は椅子じゃないので座ってはいけません。 あこ:何故じゃ? 佑久:そりゃあ賽銭箱もお社も。 佑久:つか、この敷地にあるやつ全部、ここに祀られている神様の物だからだよ。 あこ:じゃあわらわは座っても良かろうな。 佑久:駄目、今すぐ降りなさい。 佑久:降りたらお母さん探すの手伝ってあげるから。 あこ:何故そなたがわらわの母を探すのじゃ? 佑久:あ、もしかして家割と近いの? あこ:近いも何もわらわは此処に住んでおるのじゃが……。 佑久:え、この近くに家なんかあったっけ? あこ:あらんのぉ。 佑久:……住んでる? あこ:うむ。 佑久:えーっとね、ちょっと聞きたいんだけど……。 あこ:うむ。 佑久:その服自前? あこ:服? あこ:うむ、これはわらわのじゃなぁ。 佑久:じゃ、その頭に生えてるのと、アナタの後ろでぴょこぴょこ動いてるしっぽらしきものは、 あこ:これかえ? あこ:これはなぁ、なんぞ気が付いたらのぉ。 あこ:いつの間にか生えておったのよ。 佑久:はぁ……? あこ:そち、もしや色々と見ないフリをしていまいかえ? 佑久:いや、だって……ぇぇ……。 あこ:むぅ。 佑久:別にそれコスプレとかじゃないんだよ、ね? あこ:こすぷれ?こすぷれってなんじゃあ? 佑久:っぽいなぁ〜……。 佑久:横文字に弱いところ、すごい、ぽいんだよなぁ……。 あこ:? 佑久:どうしようかなぁこれ……。 佑久:面倒くさそうなんだよなぁ……。 佑久:つか、多分めんどくせぇんだよなぁ……。 あこ:これ! あこ:もうちっとわらわにも分かるように説明せぬか。 佑久:うぅん……あのねぇ? あこ:うむ。 佑久:アナタ宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)ってご存知? あこ:無視かえ! 佑久:いや、説明するにしてもなんと言うか……。 佑久:ちょっと俺の中の不確定要素を〜、ね? 佑久:確信にまで持っていかない事には、何を説明すればいいのかも分からなくてだな。 あこ:うぅむ、まぁよい。 あこ:分かったか否かで言えばちぃっとも分からんが。 あこ:仕方ないからそちに付き合ってやろうぞ。 佑久:ありがとう……いやなんでお礼言ってんの俺? あこ:それで。 佑久:はい。 あこ:あ〜……なんじゃったか? 佑久:質問? あこ:うむ。 佑久:宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)ってご存知? あこ:嗚呼、そうじゃったそうじゃった! あこ:確かにわらわはそう聞かれよったわ。 佑久:で、ご存知なの? あこ:知っていると言うかなんと言うか。 あこ:まぁ宇迦(うか)殿には、うんと昔にちらっとお会い申した事があるだけじゃからなぁ。 あこ:これが果たしてきちんと知っておると言えるのじゃろうて……。 佑久:待って……会った? あこ:うむ。 佑久:宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)に? あこ:だからそう言うておろうが。 佑久:あー……はいはい分かりましたー。 あこ:ぬぅ? 佑久:うーん。 佑久:信じたくないけど、目の前に居るからなぁ。 佑久:信じるしかないよなぁ、これ。 あこ:まーたわらわを置いてけぼりかえ? 佑久:嗚呼うん、ごめんごめん。 佑久:アナタ、さ。 あこ:うむ。 佑久:神様か、それかもしくは。 佑久:座敷わらしか、他あったっけなぁ……。 佑久:まぁとりあえずその辺の感じの呼び方されてたりしない? あこ:座敷わらしはないのぉ。 佑久:座敷わらし"は"ないって事は、神様はあるのね? あこ:うむ。 あこ:と言ってもわらわがそう呼ばれておったのは、これもまた随分と昔の事だけどのぉ。 佑久:嗚呼そっか。 佑久:寂れちゃったんだもんねぇ。 あこ:まぁ仕方のない事だけどのぉ。 あこ:こんな所にある対してデカくもない社なんぞ、誰もわざわざ参ろうとは思わないじゃろうて。 佑久:意外と割り切ってるタイプの神様なのね?アナタ。 あこ:まぁ誰も来なくなってしもうてから、流石にどんどん小さくなっておるがのぉ。 佑久:小さく?って言うとアナタ、元々はこう、なんて言うんだろう。 佑久:こう、今と違って……大人だった? あこ:わらわは今も昔も大人じゃよ! 佑久:どーこーがー?! 佑久:え、アナタ鏡見た事ある? あこ:鏡は確か社の奥の方にあった気が、しなくもなくもなくもない。 佑久:つまり? あこ:たぶんあるがわらわは見た事が無い! あこ:故に、無い! 佑久:はーい分かりましたー。 あこ:なんじゃその反応は?! 佑久:いやぁ?何も〜?うぅんっとねぇ。 佑久:今のアナタ傍から見た時にね? あこ:うむ。 佑久:ロリなんだよね。 あこ:ろりぃ? 佑久:はい、はい! 佑久:出た出た横文字分かんないの。 あこ:ろりぃってなんじゃ! 佑久:ロリーじゃなくてロリね? 佑久:リの後に伸ばし棒入れちゃうと外国人のあだ名になっちゃうから。 あこ:お、おぉう。 あこ:して、ろりぃ、じゃのうて、ろり? 佑久:そうそれ、せーかい。 あこ:そのろりとはなんなのじゃ? 佑久:えっとねぇ平たく言うと。 あこ:うむ。 佑久:幼女。 あこ:……。 佑久:幼女って分かる? 佑久:女わらわって言い方の方がしっくりくるかな。 あこ:だーれが女わらわじゃっっ?! 佑久:はい、女わらわ採用ーっと。 あこ:ぐぬぬぬぬぅ。 佑久:今のアナタ誰がどう見ても、まぁ不特定多数の奴に見えるかどうかは知らないんだけどさ。 あこ:たぶん無理じゃろうなぁ。 佑久:あ、そう?まぁいーや。 佑久:仮に俺以外の人間にアナタが見えたとして、それが百人居たとした時に。 あこ:多いのぉ……まぁ、よい。 佑久:百人中百人がアナタの事を、ロリだと言うレベルではアナタはロリなんですよ。 あこ:なんか解せぬのぉ。 佑久:もうたぶん俺のこれ、神様への対応としては大幅に間違ってると思うんだけど。 あこ:今からでも正せばよかろうて。 佑久:無理。 佑久:だってロリなんだもんアナタ。 佑久:ロリにペコペコ頭下げたら、その種の人になっちゃうじゃん。 あこ:わらわを敬い奉ればよかろうが。 佑久:そうしたらもうどう足掻いてもロリコンじゃん! あこ:ろり、こん? 佑久:あーもう出た出た。 佑久:横文字分かんない!分かんないねぇ〜? 佑久:でもお兄さんロリコンについては説明したくないから、悪いけど端折るねぇ〜。 あこ:そち微塵も悪いと思うておらんじゃろ。 佑久:うん。 あこ:なんぞ妙な奴が来たのぉ。 佑久:アナタには言われたくない。 あこ:わらわは妙では無いぞ! 佑久:う〜〜ん、まぁ、いーや。 佑久:なんかめんどくさくなってきたし。 あこ:ここまでやっておいてかえ?! 佑久:俺はそう言う人なの! あこ:気分屋。 佑久:それよく言われるから、残念だけど悪口でもなんでもないからね? あこ:ぐぬぬぬぬ。 佑久:まぁ苛めるのはこの辺にしておいてっと。 あこ:そち苛めてる自覚はあったのかえ。 佑久:面白いんだもん。 佑久:そりゃあ面白い人が居たら、ね? 佑久:まぁ弄るじゃんねぇ? あこ:なるほどちぃ〜〜〜っとも分からんわっっ!! 佑久:あはははは。 あこ:ぐぬぅ。 佑久:んで、神様? あこ:……なんじゃ。 佑久:ここで御百度参りしても意味無いのね? あこ:うむ。 佑久:そっかそっかー。 あこ:……なんぞ望みがあったのならば、すまなかったの。 佑久:なんでアナタが謝るの? あこ:そりゃあ、だってのぉ。 あこ:わらわこの社の神様じゃし……。 佑久:うん。 あこ:そちは久方ぶりにわらわを神と思って参ってくれよったし。 あこ:まぁ態度は最悪じゃが……。 あこ:それを抜きにしても、そちに望みがあるのならば、出来うることなら叶えてやりたいものじゃが……。 佑久:うん。 あこ:もしかしたらわらわ消えてしまうかもしれぬのじゃよ。 佑久:なに?そんなに弱ってたのアナタ。 あこ:恐らくそちが想像している百倍は、わらわは弱っておろうよ? あこ:最早消えかけの残りカスと言っても過言は無いじゃろうな! あこ:なはははは! 佑久:それ笑って済ませられる問題じゃなくない? あこ:まぁ仕様がなかろうて。 あこ:わらわ、とうの昔に覚悟は出来ておったからの。 佑久:えぇ……。 あこ:わらわが消えるないし、とりあえず百、参られん事には話にならんぞ。 佑久:いや、御百度はもういーわ。 あこ:何故じゃ? 佑久:大した願いでも無かったし。 あこ:でも既に四十六。 あこ:そちは詣(まい)ったじゃろうて……。 佑久:四十六?え、46? あこ:うむ? 佑久:45じゃなくて? あこ:四十六じゃよ? 佑久:え、俺1回カウントし忘れた? あこ:か……かうんと? 佑久:数え忘れた?って事。 あこ:ほぉほぉ! 佑久:え、いや、待って。 佑久:1.2.3.4……いや、やっぱり45だぞ? あこ:そちが此処に来たのは今日で四十六回目じゃよ? あこ:正確には……うむ、まぁこれはよかろうか。 佑久:何それ気になるじゃん。 あこ:これはわらわの話じゃよ。 佑久:はぁ……? あこ:とりあえずそち出来ればあと残りの五十四。 あこ:参ってくれんかえ? 佑久:でもアナタに望んだらアナタ消えちゃうんでしょ? あこ:もしかしたら、の話じゃよ。 あこ:それに叶えるか否かは、そちが百踏んだら考える故。 あこ:だからそれまであと五十四、 佑久:もしかしなくても来て欲しいの? あこ:うっっ。 佑久:あーさては寂しいんでしょー? あこ:ぐぬ。 佑久:そうだよねぇ百年だっけ? あこ:……うむ。 佑久:人が来なくなって約百年。 佑久:久しぶりに誰か来たら、そりゃあ引き留めようとするだろうし。 佑久:あ、待って気付いたわ。 あこ:む? 佑久:46回目でこうやって話しかけてきて。 あこ:うむ。 佑久:なんかめちゃくちゃ中途半端な数の時に話しかけてくんじゃんって思ってたけど。 佑久:なるほどねぇ……。 あこ:……なんじゃ? 佑久:要は無駄足だなんだは初めから分かってたけど、もう少し来て欲しいから黙ってて。 佑久:だけど寂しくなっちゃったから話しかけてきたんだー? あこ:……ぬぅ。 佑久:へぇー?へぇーそぅ?ふーん。 あこ:悪いかえ?! 佑久:あらまぁ素直だこと〜! 佑久:奥さんこの子割と素直な子だわぁ! あこ:寂しいものは仕様が無かろうて! 佑久:うん、そうねぇ〜? あこ:にやけるでない! 佑久:はいはい、ごめんね。 佑久:寂しがり屋の、えっと……名前あったりするの? あこ:名前? 佑久:うん、神様としての名前でもいいし。 佑久:とりあえずアナタ個としての呼び名。 あこ:嗚呼〜……えっと……確か。 あこ:……あこ……あこじゃ! 佑久:あこ? あこ:うむ、わらわはあこなのじゃ! 佑久:分かった、あこ。 あこ:なんじゃ? 佑久:寂しがり屋のあこちゃんが素直になれたご褒美に、仕方ないからあと54回参る事にしてあげようじゃない! あこ:なんか恩着せがましいの、そち。  :  佑久(M):アナタは知らないだけなのだ 佑久(M):アナタは忘れただけなのだ 佑久(M):この空の続く先が 佑久(M):見えなくなってしまっただけなのだ 佑久(M):零した訳ではないんだよ 佑久(M):今もその両の手の中にあるんだよ 佑久(M):それでも 佑久(M):アナタは知らないだけなのだ 佑久(M):アナタは 0:一拍 佑久(M):忘れただけなのだ  :   :  佑久:あーこ、あこちゃん。 あこ:今日も来てくれよったかえ! 佑久:まぁ約束したしねぇ? 佑久:今日で、えっと。 あこ:八十八じゃ! 佑久:88ね、もうそこまでいったのか。 佑久:あと12回で百。 佑久:こうしてみるとあっという間な気がするなぁ。 あこ:そうかの? あこ:わらわは毎日待ち遠しゅうて、待ち遠しゅうて仕方がないがのぉ。 佑久:まぁ俺と違ってあこはずっとここに居るし、基本お山から出られないもんねぇ あこ:そうじゃのぉ。 佑久:その辺はちゃんと神様っぽいんだよなぁ。 あこ:その辺はってなんじゃ! 佑久:その辺はその辺だよ。 あこ:むぅ。 佑久:んで、あこは今日は何してたの? あこ:今日かえ?今日はのぉ、お池に行っておったわ。 佑久:池?そんなのあった? あこ:うむ、ある。 あこ:じゃけれども、人の子はなかなかに立ち入れぬ場所にあるからのぉ。 あこ:そちが知らないのも無理はない。 佑久:へぇ〜。 あこ:行きたいかえ? 佑久:う〜ん別に? 佑久:池に行って何してたの? あこ:話をな、しておったのじゃよ。 佑久:話? あこ:うむ。 佑久:誰と? あこ:誰?……誰……誰?……うぅむ。 佑久:え、そんな悩まないと答えられないくらいの人なの? 佑久:もしかして神様の類? あこ:いいや?一応まぁ人じゃよ? 佑久:一応って何よ? あこ:人と言うか、人じゃったと言うか……。 あこ:そもそも意思も何も持たぬ、アレは思念に近いモノじゃからなぁ……。 佑久:へぇ〜。 あこ:まぁもうしばらくは用は無かろうて。 佑久:う〜ん、まぁ分かんないけどいーか。 佑久:あ、そうだそうだ、あこ。 あこ:なんじゃ? 佑久:これなんだと思う? あこ:……なんじゃそのばっちい色した板は。 佑久:ばっちい色した板って……。 あこ:ばばと同じ色をしておるじゃろう。 佑久:ばば?あー、あーね! 佑久:ばばね?ばば。 あこ:知らぬのかえ? 佑久:いや、分かるよ? 佑久:ばばかぁ……そっかぁ。 佑久:美味しい物なんだけどなぁ……。 あこ:ぬぅっっ?! 佑久:甘くてちょっぴりほろ苦くて美味しい物だから、たぶんあこが好きだと思って持ってきたんだけど。 あこ:うむ! 佑久:だけどまさかこれを、ばばって例えるとは思わないじゃん。 あこ:じゃって、ばばの色をしておるのじゃもん。 佑久:でもね?あこちゃん。 佑久:一応仮にも神様が見た事ない食べ物の事を、 佑久:「うんこみたい!」って言うのは駄目でしょうが。 あこ:ばばはばばじゃろうて。 佑久:そんなうんこうんこ言うならあげません! あこ:なんでじゃあ! 佑久:当たり前でしょうが。 あこ:ぬぅぅ。 佑久:ごめんなさいは? あこ:……ごめんなさい。 佑久:よし、それではそなたにこれをしんぜよう。 あこ:ふんふん……ほぉ、なんとまぁ不思議な香りがするよのぉ。 佑久:これはね、板チョコって言うんだけど。 あこ:板……ちょこ? 佑久:(笑いを堪える) 佑久:うん、そう、板チョコー、チョコレート。 あこ:ちょ……ちょこれ……なんじゃって? 佑久:あはははははは! あこ:何故笑うのじゃ! 佑久:ごめん無理ーちょっと待ってあははははは! あこ:ぐぬぬぬぅ。 佑久:あははは、はは、ひぃ〜。  :  0:一拍  :  佑久:はぁ〜落ち着いた! あこ:ちこれぃと。 佑久:横文字分かんないねぇ〜。 佑久:相変わらず横文字苦手だねぇ〜あこは。 あこ:分からんのじゃもん! 佑久:いやぁブレないブレない! あこ:ぬぅぅ。 佑久:ごめんごめんて、あこ、あこちゃん。 佑久:それ、ちょっと齧ってごらん。 あこ:うむ?ほぉぉおお! 佑久:美味しい? あこ:甘いぞ!ほぉ、ちこれいと。 あこ:なかなかに良き物じゃ! 佑久:チョコレート、ね?  :  0:一拍  :  あこ:そちはなんでも知っておるの。 佑久:そうでもないと思うけど。 あこ:此度(こたび)のちょこれーともそうであるし。 あこ:嗚呼、あとあれじゃ!あれも実に美味であったぞ。 あこ:し……しぅ……。 佑久:嗚呼シュークリーム! あこ:それじゃ! 佑久:また持ってくるよ。 あこ:うむ、楽しみにしておるぞえ。 佑久:うん。 あこ:のぉ、そちが御百度を踏んでまで叶えたい願いとはなんなのじゃ? 佑久:百まで待つんじゃなかったの? あこ:事前に知っておっても問題なかろうと思ってな。 佑久:うんーそっか。 あこ:まぁそちが答えたくないのならば、答えなくともいいのじゃが。 佑久:いやそんな事はないよ? 佑久:どうせいずれは知られるんだし。 佑久:うんっとねぇ……。 佑久:取り戻したいものがあるんだよね。 あこ:何をじゃ? 佑久:今から変な事言うけどいい? あこ:うむ。 佑久:取り戻したいものがあるんだけど、何を取り戻したいのかが分かんないんだ。 あこ:……どう言う事じゃ? 佑久:言葉の通りだよ。 佑久:取り戻したくて仕方がないのに、手に入れたいものが分かんないの。 あこ:ほぉ……。 佑久:だから御百度踏んで、神様の力なら、もしかしたら分かるんじゃないかな〜とは思ってたんだけど……。 あこ:やってみなきゃ分からんのぉ。 佑久:だよねぇ……。 佑久:え、待って分かるかもしれないの? あこ:まぁやれん事もない。 佑久:え、ホントに?! 佑久:あこちゃん神様みたいじゃん! あこ:みたいじゃのうてわらわは神様じゃよ! 佑久:へぇ〜。 あこ:まぁ、でも、のぉ? 佑久:あんまり乗り気じゃない? あこ:うむ。 佑久:どうして? あこ:恐らくそちがそれを知ってしまったら、哀しくなるよもしれんからじゃ。 佑久:どう言う事? あこ:これ以上は言えぬ。 あこ:知りたければあと十と二つ。 あこ:此処に参って御百度を完成させよ。 佑久:ほぉ〜ん、分かった。  :  0:間  :  あこ:そち。 佑久:あら、待っててくれたの〜? あこ:今日で数えて丁度百じゃし。 佑久:そうだねぇ早かったなぁ。 佑久:それで?叶えてくれるの? あこ:う〜む。 佑久:でも叶えたらあこは消えちゃうんだよね? あこ:じゃから、それはもしもの話よ。 佑久:願い事によっては大丈夫って事? あこ:まぁやってみぬ事には分からんのじゃが。 佑久:じゃあやっぱりいいかなぁ、ここまで十分楽しかったし。 あこ:叶えるか叶えぬかは別として、な。 佑久:うん? あこ:そちがきちんと御百度を踏んでくれよったのなら、その時は伝えようと決めていた事があるのじゃよ。 あこ:もしかすれば、それがそちの答えになるやもしれぬし。 佑久:なに? あこ:ついてまいれ。 佑久:うん?え、社の中?! 佑久:俺入っていいの? あこ:わらわがいいと言うておるのじゃからよかろうて。 佑久:あ、そう言う感じ? 佑久:了解、お邪魔しま〜す。 佑久:……意外と広いんだ。 あこ:こっちじゃ〜。 佑久:嗚呼はいはい……何ここ? あこ:社の中じゃ。 佑久:いやそれは分かってるよ。 佑久:え、あの社。 佑久:中に池が丸々1つ入るぐらいデカかったっけ? あこ:見た目だけの大きさなら無理じゃろうな。 佑久:あこちゃん本当に神様だったんだね。 あこ:じゃからそれは!まぁ、よいか。 あこ:確かにわらわは神らしくはないからの。 佑久:拗ねちゃった? あこ:いいや、そもそもわらわはな? 佑久:うん。 あこ:元々は神様じゃないんじゃよ。 佑久:と言うと? あこ:正確には神に捧げられた供物。 あこ:人柱って知っておるかえ? 佑久:雨乞いとかで神様に捧げる生贄でしょ。 あこ:うむ。 あこ:わらわはな、それじゃったんじゃ。  :  佑久(M):そこは貧しい村でした。 佑久(M):小さい小さい村でした。 佑久(M):貧乏神の加護ですら望むほど、 佑久(M):神の一柱(ひとはしら)も居ない村でした。 佑久(M):その日暮らしていくだけでもやっとの有様でした。 佑久(M):誰も多くは望んでいませんでした。 佑久(M):けれども日照りが続いてしまい、 佑久(M):田畑は干上がり、 佑久(M):米のひと粒も採れなくなってしまい。 0:一拍 佑久(M):どうしようもなかったのです。 佑久(M):こうするしかなかったのです。  :   :  あこ:わらわは人柱としては好都合じゃったのよ。 佑久:だからって、 あこ:そう言う時代じゃ。 佑久:ホイホイ死ぬ理由にはならないじゃん。 あこ:わらわじゃって、そう易々と贄になった訳では無いぞえ。抵抗はしたさ。 佑久:例えば? あこ:食えと言われた物を食わなかったり。 佑久:断食したのね。 あこ:あとは身綺麗にでもなれば、多少は罪悪感でも生まれるかと思うて、しばらく野山の流れでこの身の穢れを流したりもしたの。 佑久:あこちゃんあこちゃん。 あこ:なんじゃ? 佑久:それね、禊(みそぎ)って言うんだけど分かっててやった? あこ:それがのぉ、わらわ全てが終わった後にそれに気が付いたのよ。 佑久:馬鹿だねぇ〜。 佑久:人柱になるのを抵抗する為にやった事、少なくとも2つはぴったりの人柱作る手段だったとか。 佑久:注文の多い料理店みたいな事しちゃったのね?しかも自ら進んで。 あこ:……まぁそう見えなくもなくもなくもない。 佑久:で、人柱になっちゃった、と。 あこ:うむ。 佑久:この池にでも沈められたの? あこ:そうじゃよ。 佑久:じゃあお社はこの池の為に建てたのか。 あこ:それがのぉ。 あこ:わらわどうにも腹の虫が収まらなくてなぁ。 佑久:なんか嫌な予感がする……。 あこ:日照りだなんだと人様様にはどうにも出来ぬ事で、あれよこれよと言う間にわらわの事を人柱にしよったから。 佑久:うん。 あこ:運良く神になれた瞬間に龍神と取引してのぉ、池そのものをわらわの領域に持ってきてやったわ! 佑久:唯一の水源奪っちゃったの。 あこ:うむ! 佑久:タチの悪い神様も居たもんだよ。 あこ:神とは元来タチが悪いものよ。 佑久:触らぬ神に祟りなしって感じ? あこ:まぁ彼奴等が手を出したのは、神になる前のわらわじゃったから、厳密には"神には"触れておらんがのぉ。 佑久:触らぬ"いずれ神"に祟りなしにするわ。 あこ:うむ。 佑久:伝えたかった事ってそれ? あこ:一応は、な。 佑久:別に黙ってても話されても変わらないけどなぁ。 あこ:その後、があるのじゃよ。 佑久:その後? あこ:神になってから初めの五十、わらわは池を隠した。 あこ:当然、村はまた水不足に陥った。 佑久:うん。 あこ:それから知らぬ存ぜぬを繰り返して、更に四十経ったある日。 あこ:馬鹿な村人達は、今度はわらわに人柱を立てたのよ。 佑久:人柱になった子に人柱立てちゃったの? あこ:うむ、一瞬喧嘩でも売られてるのかと思ったぞえ。 佑久:でしょうよ。 あこ:一回目はわらわが忠告してやったから防げたのじゃが、 佑久:うん。 あこ:そうしたらの? あこ:彼奴等はそのわらわの忠告を持って行った奴を、今度は人柱に立てよったのよ。 あこ:当にとうの立った、捧げるにはあまりに似つかわしくない奴をの。 佑久:子供じゃなくて大人だったって事であってる? あこ:うぬ。 佑久:女の子? あこ:いや?男じゃ。 佑久:成人男性? 佑久:逃げられなかったのかな。 あこ:まぁ、色々重なっておったから逃げるのは無理じゃろうて。 佑久:ふぅん。 あこ:殺してやろうかとも思ったがの。 あこ:村を全滅してやっても良かったわ。 あこ:でも、 佑久:やらなかったんだよね。 あこ:うむ、約束したからの。 佑久:約束? あこ:「生まれ変わって何度でも会いに行く」 佑久:日本の神様に仏教みたいな事言ったのその人。 あこ:此方は此方で八百万の神とまで言うんじゃ。 あこ:生まれ変わりに宗教なんぞ関係なかろう。 佑久:それもそっか。 あこ:さぁ、話は仕舞いじゃ。 あこ:願いは確か「取り戻したくて仕方がないものを取り戻したい」じゃったか? 佑久:いや待って待って待って! 佑久:あこは人柱になったから神様になった。 佑久:それは分かったよ。 佑久:で、そんなあこへ更に人柱を立てられた。 佑久:それも分かった。 あこ:うむ。 佑久:あこ、なんでそれ俺に話したの?  :  0:一拍  :  あこ:そちが祈れる願いが全部で三百と十三あるからじゃよ。 佑久:313っっ?! あこ:うむ。 佑久:はぁ? あこ:そちは全部で三万と千と四百、この地を踏んだ。 あこ:計三百と十四、その内、初めの一つのみ願いをわらわが叶えたから、残り三百と十三じゃ。 佑久:いやいやいや!俺来たの百回だけだよ?! あこ:いいや?三万千と四百じゃ。 あこ:確かのぉ、千と三百の時そちは人柱になり一度死によって…………しばらくして帰ってきた。 佑久:え……。 あこ:そちは繰り返しておるのじゃよ。 あこ:いや、違うか。 あこ:何度も何度も生まれ変わっては此処に来て死に、そしてまた生まれ変わって此処に来るのじゃ。 佑久:……まじで? あこ:うむ。 あこ:そちが死ぬ度にわらわはこの池にそちの残り香を閉じ込めて、次のそちが御百度踏む度に、それをそちに返していた。 あこ:そんな事を繰り返している内に、やがてそち以外が来なくなり、わらわは弱ってしもうたがな。 佑久:……。 あこ:恐らく前のそちの残り香を返せば、そちが知りたかった事は分かる筈よ。 あこ:但し、返すのはこれっきりじゃ。 あこ:もうこの先そちが死んでも、わらわはそちを残せぬ。 あこ:……どうしたい? 佑久:…………じゃあいらない。 あこ:もしかしたらそちにとっては、大切な記憶だとしてもかえ? 佑久:いらないよ。 佑久:つか、あこが残り香わざわざ取っておくから、俺何度もここに来ちゃうんじゃないの? あこ:そうかもしれんなぁ。 あこ:まぁ取っておきたかったのよ。 あこ:わらわは神、そちは人。 あこ:人は死んだら仕舞いじゃ。 あこ:わらわの方が遥かに永く存在する。 あこ:その中で、どれだけ手放したくなかったとしても、長くは覚えていられぬ。 佑久:そんなに良い思い出があったんだ。 あこ:誰かにとっては些細かもしれんがの。 佑久:神様に好かれると呪いみたいになるって言うけど、こう言う事なのかな。 あこ:安心せい。 あこ:わらわはそんじょそこらの神とは違う。 あこ:天寿を全うするまで連れて行きはしないよ。 あこ:勿論、何処にだって行ってもよい。 あこ:その呪いだってきっと、 佑久:うん? あこ:今のそちが死ぬ時に共に終わろうぞ。 佑久:どう言う事、 あこ:精々生きよ、人の子。 あこ:昔の昔のそのまた昔。 あこ:ず〜〜っっと昔のそちの分まで! 佑久:よく分かんないけど、分かった。 佑久:そう言っておけば、満足? あこ:うむ!  :  佑久(M):私はなんて無力な生き物なのでしょう 佑久(M):アナタはなんて儚い存在なのでしょう 佑久(M):私は自分の弱さを知っています 佑久(M):受け入れて、取りこぼしは致しません 佑久(M):けれどやはりやはり私はどうしても 佑久(M):あの空の月が欲しいのです 佑久(M):ほんのひと欠片 佑久(M):触れてみたくて仕方がないのです  :  0:一拍  :  佑久(M):コンコンコーン、狐がないた 佑久(M):アナタを愛した私の姿を 佑久(M):宝物のように仕舞いながら  :   : 

佑久(M):コンコンコーン狐がないた 佑久(M):あまりにも、嗚呼あまりにも 佑久(M):あの空の月が遠いのだと 佑久(M):この両の腕をうんと伸ばしても 佑久(M):指の先すら触れられないのが哀しくて  :   :  0:古びた小さい神社の本坪鈴を鳴らす 0:二礼二拍手一礼 佑久:ふぅ。 佑久:これで、えっと、1・2・3・4。 佑久:……45か。 佑久:しっかし、こんな所に神社があったなんて、婆ちゃん言ってなかったぞ。 あこ:のぉ、これ、そこの。 あこ:おい聞こえておるのかえ? 佑久:さぁて、そろそろ帰るかー。 あこ:そちっっ!! 佑久:うわっっ?! 佑久:……え? あこ:ようやっと気付いたか。 佑久:誰アナタいつからそこに居たの?! あこ:いつからと言われてものぉ。 あこ:わらわもいつから此処におったのか、 あこ:ちぃっとも分かんなくてのぉ。 佑久:お、おん。 あこ:まぁまぁそちよりは随分先に居た事だけは確かじゃな。 佑久:居たぁ? あこ:うむ、おったぞ。 佑久:ずっとそこに? あこ:うむ、此処に。 佑久:え、や、そもそも、 あこ:ふん? 佑久:お社の戸開いてたっけぇ? あこ:閉まっておったな。 佑久:だよねぇ? あこ:でもわらわが開けたのじゃ。 佑久:開けちゃったの? 佑久:なんで? あこ:そちがよくよく来てくれるようになったからじゃ。 佑久:は……? あこ:寂れとるじゃろう?此処は。 あこ:苦節百年。 あこ:いやまぁ、もうちっとあった気がしなくもないがの。 佑久:おう……。 あこ:ま、とりあえず。 あこ:此処に人が来なくなってから随分と長く時間が経ってしまったんじゃが。 佑久:うん。 あこ:久方ぶりに誰か来たと思えば、そいつは毎日毎日欠かさず此処に通い始めてな? あこ:嗚呼これはもしや、御百度でも踏んでいるのじゃなぁと。 あこ:丁度昨日わらわはそれに気が付いてな? 佑久:うん。 あこ:百詣(まい)られたところでわらわには何も出来ぬから、そちのしてる事はただの無駄足じゃよ?と。 あこ:そう伝えてやろうかと思ってのぉ。 佑久:……何言ってるの?アナタ。 あこ:だからの? あこ:御百度詣(まい)ってくれるのは嬉しいんじゃが、すまない事にわらわは人の子に貸せる程の力をもう持っておらんのじゃよ。 佑久:…………とりあえず降りようか? あこ:む? 佑久:賽銭箱の上に乗っちゃいけないって言われた事ないのかな? あこ:無いのぉ。 佑久:じゃあ今俺が言う。 佑久:賽銭箱は椅子じゃないので座ってはいけません。 あこ:何故じゃ? 佑久:そりゃあ賽銭箱もお社も。 佑久:つか、この敷地にあるやつ全部、ここに祀られている神様の物だからだよ。 あこ:じゃあわらわは座っても良かろうな。 佑久:駄目、今すぐ降りなさい。 佑久:降りたらお母さん探すの手伝ってあげるから。 あこ:何故そなたがわらわの母を探すのじゃ? 佑久:あ、もしかして家割と近いの? あこ:近いも何もわらわは此処に住んでおるのじゃが……。 佑久:え、この近くに家なんかあったっけ? あこ:あらんのぉ。 佑久:……住んでる? あこ:うむ。 佑久:えーっとね、ちょっと聞きたいんだけど……。 あこ:うむ。 佑久:その服自前? あこ:服? あこ:うむ、これはわらわのじゃなぁ。 佑久:じゃ、その頭に生えてるのと、アナタの後ろでぴょこぴょこ動いてるしっぽらしきものは、 あこ:これかえ? あこ:これはなぁ、なんぞ気が付いたらのぉ。 あこ:いつの間にか生えておったのよ。 佑久:はぁ……? あこ:そち、もしや色々と見ないフリをしていまいかえ? 佑久:いや、だって……ぇぇ……。 あこ:むぅ。 佑久:別にそれコスプレとかじゃないんだよ、ね? あこ:こすぷれ?こすぷれってなんじゃあ? 佑久:っぽいなぁ〜……。 佑久:横文字に弱いところ、すごい、ぽいんだよなぁ……。 あこ:? 佑久:どうしようかなぁこれ……。 佑久:面倒くさそうなんだよなぁ……。 佑久:つか、多分めんどくせぇんだよなぁ……。 あこ:これ! あこ:もうちっとわらわにも分かるように説明せぬか。 佑久:うぅん……あのねぇ? あこ:うむ。 佑久:アナタ宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)ってご存知? あこ:無視かえ! 佑久:いや、説明するにしてもなんと言うか……。 佑久:ちょっと俺の中の不確定要素を〜、ね? 佑久:確信にまで持っていかない事には、何を説明すればいいのかも分からなくてだな。 あこ:うぅむ、まぁよい。 あこ:分かったか否かで言えばちぃっとも分からんが。 あこ:仕方ないからそちに付き合ってやろうぞ。 佑久:ありがとう……いやなんでお礼言ってんの俺? あこ:それで。 佑久:はい。 あこ:あ〜……なんじゃったか? 佑久:質問? あこ:うむ。 佑久:宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)ってご存知? あこ:嗚呼、そうじゃったそうじゃった! あこ:確かにわらわはそう聞かれよったわ。 佑久:で、ご存知なの? あこ:知っていると言うかなんと言うか。 あこ:まぁ宇迦(うか)殿には、うんと昔にちらっとお会い申した事があるだけじゃからなぁ。 あこ:これが果たしてきちんと知っておると言えるのじゃろうて……。 佑久:待って……会った? あこ:うむ。 佑久:宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)に? あこ:だからそう言うておろうが。 佑久:あー……はいはい分かりましたー。 あこ:ぬぅ? 佑久:うーん。 佑久:信じたくないけど、目の前に居るからなぁ。 佑久:信じるしかないよなぁ、これ。 あこ:まーたわらわを置いてけぼりかえ? 佑久:嗚呼うん、ごめんごめん。 佑久:アナタ、さ。 あこ:うむ。 佑久:神様か、それかもしくは。 佑久:座敷わらしか、他あったっけなぁ……。 佑久:まぁとりあえずその辺の感じの呼び方されてたりしない? あこ:座敷わらしはないのぉ。 佑久:座敷わらし"は"ないって事は、神様はあるのね? あこ:うむ。 あこ:と言ってもわらわがそう呼ばれておったのは、これもまた随分と昔の事だけどのぉ。 佑久:嗚呼そっか。 佑久:寂れちゃったんだもんねぇ。 あこ:まぁ仕方のない事だけどのぉ。 あこ:こんな所にある対してデカくもない社なんぞ、誰もわざわざ参ろうとは思わないじゃろうて。 佑久:意外と割り切ってるタイプの神様なのね?アナタ。 あこ:まぁ誰も来なくなってしもうてから、流石にどんどん小さくなっておるがのぉ。 佑久:小さく?って言うとアナタ、元々はこう、なんて言うんだろう。 佑久:こう、今と違って……大人だった? あこ:わらわは今も昔も大人じゃよ! 佑久:どーこーがー?! 佑久:え、アナタ鏡見た事ある? あこ:鏡は確か社の奥の方にあった気が、しなくもなくもなくもない。 佑久:つまり? あこ:たぶんあるがわらわは見た事が無い! あこ:故に、無い! 佑久:はーい分かりましたー。 あこ:なんじゃその反応は?! 佑久:いやぁ?何も〜?うぅんっとねぇ。 佑久:今のアナタ傍から見た時にね? あこ:うむ。 佑久:ロリなんだよね。 あこ:ろりぃ? 佑久:はい、はい! 佑久:出た出た横文字分かんないの。 あこ:ろりぃってなんじゃ! 佑久:ロリーじゃなくてロリね? 佑久:リの後に伸ばし棒入れちゃうと外国人のあだ名になっちゃうから。 あこ:お、おぉう。 あこ:して、ろりぃ、じゃのうて、ろり? 佑久:そうそれ、せーかい。 あこ:そのろりとはなんなのじゃ? 佑久:えっとねぇ平たく言うと。 あこ:うむ。 佑久:幼女。 あこ:……。 佑久:幼女って分かる? 佑久:女わらわって言い方の方がしっくりくるかな。 あこ:だーれが女わらわじゃっっ?! 佑久:はい、女わらわ採用ーっと。 あこ:ぐぬぬぬぬぅ。 佑久:今のアナタ誰がどう見ても、まぁ不特定多数の奴に見えるかどうかは知らないんだけどさ。 あこ:たぶん無理じゃろうなぁ。 佑久:あ、そう?まぁいーや。 佑久:仮に俺以外の人間にアナタが見えたとして、それが百人居たとした時に。 あこ:多いのぉ……まぁ、よい。 佑久:百人中百人がアナタの事を、ロリだと言うレベルではアナタはロリなんですよ。 あこ:なんか解せぬのぉ。 佑久:もうたぶん俺のこれ、神様への対応としては大幅に間違ってると思うんだけど。 あこ:今からでも正せばよかろうて。 佑久:無理。 佑久:だってロリなんだもんアナタ。 佑久:ロリにペコペコ頭下げたら、その種の人になっちゃうじゃん。 あこ:わらわを敬い奉ればよかろうが。 佑久:そうしたらもうどう足掻いてもロリコンじゃん! あこ:ろり、こん? 佑久:あーもう出た出た。 佑久:横文字分かんない!分かんないねぇ〜? 佑久:でもお兄さんロリコンについては説明したくないから、悪いけど端折るねぇ〜。 あこ:そち微塵も悪いと思うておらんじゃろ。 佑久:うん。 あこ:なんぞ妙な奴が来たのぉ。 佑久:アナタには言われたくない。 あこ:わらわは妙では無いぞ! 佑久:う〜〜ん、まぁ、いーや。 佑久:なんかめんどくさくなってきたし。 あこ:ここまでやっておいてかえ?! 佑久:俺はそう言う人なの! あこ:気分屋。 佑久:それよく言われるから、残念だけど悪口でもなんでもないからね? あこ:ぐぬぬぬぬ。 佑久:まぁ苛めるのはこの辺にしておいてっと。 あこ:そち苛めてる自覚はあったのかえ。 佑久:面白いんだもん。 佑久:そりゃあ面白い人が居たら、ね? 佑久:まぁ弄るじゃんねぇ? あこ:なるほどちぃ〜〜〜っとも分からんわっっ!! 佑久:あはははは。 あこ:ぐぬぅ。 佑久:んで、神様? あこ:……なんじゃ。 佑久:ここで御百度参りしても意味無いのね? あこ:うむ。 佑久:そっかそっかー。 あこ:……なんぞ望みがあったのならば、すまなかったの。 佑久:なんでアナタが謝るの? あこ:そりゃあ、だってのぉ。 あこ:わらわこの社の神様じゃし……。 佑久:うん。 あこ:そちは久方ぶりにわらわを神と思って参ってくれよったし。 あこ:まぁ態度は最悪じゃが……。 あこ:それを抜きにしても、そちに望みがあるのならば、出来うることなら叶えてやりたいものじゃが……。 佑久:うん。 あこ:もしかしたらわらわ消えてしまうかもしれぬのじゃよ。 佑久:なに?そんなに弱ってたのアナタ。 あこ:恐らくそちが想像している百倍は、わらわは弱っておろうよ? あこ:最早消えかけの残りカスと言っても過言は無いじゃろうな! あこ:なはははは! 佑久:それ笑って済ませられる問題じゃなくない? あこ:まぁ仕様がなかろうて。 あこ:わらわ、とうの昔に覚悟は出来ておったからの。 佑久:えぇ……。 あこ:わらわが消えるないし、とりあえず百、参られん事には話にならんぞ。 佑久:いや、御百度はもういーわ。 あこ:何故じゃ? 佑久:大した願いでも無かったし。 あこ:でも既に四十六。 あこ:そちは詣(まい)ったじゃろうて……。 佑久:四十六?え、46? あこ:うむ? 佑久:45じゃなくて? あこ:四十六じゃよ? 佑久:え、俺1回カウントし忘れた? あこ:か……かうんと? 佑久:数え忘れた?って事。 あこ:ほぉほぉ! 佑久:え、いや、待って。 佑久:1.2.3.4……いや、やっぱり45だぞ? あこ:そちが此処に来たのは今日で四十六回目じゃよ? あこ:正確には……うむ、まぁこれはよかろうか。 佑久:何それ気になるじゃん。 あこ:これはわらわの話じゃよ。 佑久:はぁ……? あこ:とりあえずそち出来ればあと残りの五十四。 あこ:参ってくれんかえ? 佑久:でもアナタに望んだらアナタ消えちゃうんでしょ? あこ:もしかしたら、の話じゃよ。 あこ:それに叶えるか否かは、そちが百踏んだら考える故。 あこ:だからそれまであと五十四、 佑久:もしかしなくても来て欲しいの? あこ:うっっ。 佑久:あーさては寂しいんでしょー? あこ:ぐぬ。 佑久:そうだよねぇ百年だっけ? あこ:……うむ。 佑久:人が来なくなって約百年。 佑久:久しぶりに誰か来たら、そりゃあ引き留めようとするだろうし。 佑久:あ、待って気付いたわ。 あこ:む? 佑久:46回目でこうやって話しかけてきて。 あこ:うむ。 佑久:なんかめちゃくちゃ中途半端な数の時に話しかけてくんじゃんって思ってたけど。 佑久:なるほどねぇ……。 あこ:……なんじゃ? 佑久:要は無駄足だなんだは初めから分かってたけど、もう少し来て欲しいから黙ってて。 佑久:だけど寂しくなっちゃったから話しかけてきたんだー? あこ:……ぬぅ。 佑久:へぇー?へぇーそぅ?ふーん。 あこ:悪いかえ?! 佑久:あらまぁ素直だこと〜! 佑久:奥さんこの子割と素直な子だわぁ! あこ:寂しいものは仕様が無かろうて! 佑久:うん、そうねぇ〜? あこ:にやけるでない! 佑久:はいはい、ごめんね。 佑久:寂しがり屋の、えっと……名前あったりするの? あこ:名前? 佑久:うん、神様としての名前でもいいし。 佑久:とりあえずアナタ個としての呼び名。 あこ:嗚呼〜……えっと……確か。 あこ:……あこ……あこじゃ! 佑久:あこ? あこ:うむ、わらわはあこなのじゃ! 佑久:分かった、あこ。 あこ:なんじゃ? 佑久:寂しがり屋のあこちゃんが素直になれたご褒美に、仕方ないからあと54回参る事にしてあげようじゃない! あこ:なんか恩着せがましいの、そち。  :  佑久(M):アナタは知らないだけなのだ 佑久(M):アナタは忘れただけなのだ 佑久(M):この空の続く先が 佑久(M):見えなくなってしまっただけなのだ 佑久(M):零した訳ではないんだよ 佑久(M):今もその両の手の中にあるんだよ 佑久(M):それでも 佑久(M):アナタは知らないだけなのだ 佑久(M):アナタは 0:一拍 佑久(M):忘れただけなのだ  :   :  佑久:あーこ、あこちゃん。 あこ:今日も来てくれよったかえ! 佑久:まぁ約束したしねぇ? 佑久:今日で、えっと。 あこ:八十八じゃ! 佑久:88ね、もうそこまでいったのか。 佑久:あと12回で百。 佑久:こうしてみるとあっという間な気がするなぁ。 あこ:そうかの? あこ:わらわは毎日待ち遠しゅうて、待ち遠しゅうて仕方がないがのぉ。 佑久:まぁ俺と違ってあこはずっとここに居るし、基本お山から出られないもんねぇ あこ:そうじゃのぉ。 佑久:その辺はちゃんと神様っぽいんだよなぁ。 あこ:その辺はってなんじゃ! 佑久:その辺はその辺だよ。 あこ:むぅ。 佑久:んで、あこは今日は何してたの? あこ:今日かえ?今日はのぉ、お池に行っておったわ。 佑久:池?そんなのあった? あこ:うむ、ある。 あこ:じゃけれども、人の子はなかなかに立ち入れぬ場所にあるからのぉ。 あこ:そちが知らないのも無理はない。 佑久:へぇ〜。 あこ:行きたいかえ? 佑久:う〜ん別に? 佑久:池に行って何してたの? あこ:話をな、しておったのじゃよ。 佑久:話? あこ:うむ。 佑久:誰と? あこ:誰?……誰……誰?……うぅむ。 佑久:え、そんな悩まないと答えられないくらいの人なの? 佑久:もしかして神様の類? あこ:いいや?一応まぁ人じゃよ? 佑久:一応って何よ? あこ:人と言うか、人じゃったと言うか……。 あこ:そもそも意思も何も持たぬ、アレは思念に近いモノじゃからなぁ……。 佑久:へぇ〜。 あこ:まぁもうしばらくは用は無かろうて。 佑久:う〜ん、まぁ分かんないけどいーか。 佑久:あ、そうだそうだ、あこ。 あこ:なんじゃ? 佑久:これなんだと思う? あこ:……なんじゃそのばっちい色した板は。 佑久:ばっちい色した板って……。 あこ:ばばと同じ色をしておるじゃろう。 佑久:ばば?あー、あーね! 佑久:ばばね?ばば。 あこ:知らぬのかえ? 佑久:いや、分かるよ? 佑久:ばばかぁ……そっかぁ。 佑久:美味しい物なんだけどなぁ……。 あこ:ぬぅっっ?! 佑久:甘くてちょっぴりほろ苦くて美味しい物だから、たぶんあこが好きだと思って持ってきたんだけど。 あこ:うむ! 佑久:だけどまさかこれを、ばばって例えるとは思わないじゃん。 あこ:じゃって、ばばの色をしておるのじゃもん。 佑久:でもね?あこちゃん。 佑久:一応仮にも神様が見た事ない食べ物の事を、 佑久:「うんこみたい!」って言うのは駄目でしょうが。 あこ:ばばはばばじゃろうて。 佑久:そんなうんこうんこ言うならあげません! あこ:なんでじゃあ! 佑久:当たり前でしょうが。 あこ:ぬぅぅ。 佑久:ごめんなさいは? あこ:……ごめんなさい。 佑久:よし、それではそなたにこれをしんぜよう。 あこ:ふんふん……ほぉ、なんとまぁ不思議な香りがするよのぉ。 佑久:これはね、板チョコって言うんだけど。 あこ:板……ちょこ? 佑久:(笑いを堪える) 佑久:うん、そう、板チョコー、チョコレート。 あこ:ちょ……ちょこれ……なんじゃって? 佑久:あはははははは! あこ:何故笑うのじゃ! 佑久:ごめん無理ーちょっと待ってあははははは! あこ:ぐぬぬぬぅ。 佑久:あははは、はは、ひぃ〜。  :  0:一拍  :  佑久:はぁ〜落ち着いた! あこ:ちこれぃと。 佑久:横文字分かんないねぇ〜。 佑久:相変わらず横文字苦手だねぇ〜あこは。 あこ:分からんのじゃもん! 佑久:いやぁブレないブレない! あこ:ぬぅぅ。 佑久:ごめんごめんて、あこ、あこちゃん。 佑久:それ、ちょっと齧ってごらん。 あこ:うむ?ほぉぉおお! 佑久:美味しい? あこ:甘いぞ!ほぉ、ちこれいと。 あこ:なかなかに良き物じゃ! 佑久:チョコレート、ね?  :  0:一拍  :  あこ:そちはなんでも知っておるの。 佑久:そうでもないと思うけど。 あこ:此度(こたび)のちょこれーともそうであるし。 あこ:嗚呼、あとあれじゃ!あれも実に美味であったぞ。 あこ:し……しぅ……。 佑久:嗚呼シュークリーム! あこ:それじゃ! 佑久:また持ってくるよ。 あこ:うむ、楽しみにしておるぞえ。 佑久:うん。 あこ:のぉ、そちが御百度を踏んでまで叶えたい願いとはなんなのじゃ? 佑久:百まで待つんじゃなかったの? あこ:事前に知っておっても問題なかろうと思ってな。 佑久:うんーそっか。 あこ:まぁそちが答えたくないのならば、答えなくともいいのじゃが。 佑久:いやそんな事はないよ? 佑久:どうせいずれは知られるんだし。 佑久:うんっとねぇ……。 佑久:取り戻したいものがあるんだよね。 あこ:何をじゃ? 佑久:今から変な事言うけどいい? あこ:うむ。 佑久:取り戻したいものがあるんだけど、何を取り戻したいのかが分かんないんだ。 あこ:……どう言う事じゃ? 佑久:言葉の通りだよ。 佑久:取り戻したくて仕方がないのに、手に入れたいものが分かんないの。 あこ:ほぉ……。 佑久:だから御百度踏んで、神様の力なら、もしかしたら分かるんじゃないかな〜とは思ってたんだけど……。 あこ:やってみなきゃ分からんのぉ。 佑久:だよねぇ……。 佑久:え、待って分かるかもしれないの? あこ:まぁやれん事もない。 佑久:え、ホントに?! 佑久:あこちゃん神様みたいじゃん! あこ:みたいじゃのうてわらわは神様じゃよ! 佑久:へぇ〜。 あこ:まぁ、でも、のぉ? 佑久:あんまり乗り気じゃない? あこ:うむ。 佑久:どうして? あこ:恐らくそちがそれを知ってしまったら、哀しくなるよもしれんからじゃ。 佑久:どう言う事? あこ:これ以上は言えぬ。 あこ:知りたければあと十と二つ。 あこ:此処に参って御百度を完成させよ。 佑久:ほぉ〜ん、分かった。  :  0:間  :  あこ:そち。 佑久:あら、待っててくれたの〜? あこ:今日で数えて丁度百じゃし。 佑久:そうだねぇ早かったなぁ。 佑久:それで?叶えてくれるの? あこ:う〜む。 佑久:でも叶えたらあこは消えちゃうんだよね? あこ:じゃから、それはもしもの話よ。 佑久:願い事によっては大丈夫って事? あこ:まぁやってみぬ事には分からんのじゃが。 佑久:じゃあやっぱりいいかなぁ、ここまで十分楽しかったし。 あこ:叶えるか叶えぬかは別として、な。 佑久:うん? あこ:そちがきちんと御百度を踏んでくれよったのなら、その時は伝えようと決めていた事があるのじゃよ。 あこ:もしかすれば、それがそちの答えになるやもしれぬし。 佑久:なに? あこ:ついてまいれ。 佑久:うん?え、社の中?! 佑久:俺入っていいの? あこ:わらわがいいと言うておるのじゃからよかろうて。 佑久:あ、そう言う感じ? 佑久:了解、お邪魔しま〜す。 佑久:……意外と広いんだ。 あこ:こっちじゃ〜。 佑久:嗚呼はいはい……何ここ? あこ:社の中じゃ。 佑久:いやそれは分かってるよ。 佑久:え、あの社。 佑久:中に池が丸々1つ入るぐらいデカかったっけ? あこ:見た目だけの大きさなら無理じゃろうな。 佑久:あこちゃん本当に神様だったんだね。 あこ:じゃからそれは!まぁ、よいか。 あこ:確かにわらわは神らしくはないからの。 佑久:拗ねちゃった? あこ:いいや、そもそもわらわはな? 佑久:うん。 あこ:元々は神様じゃないんじゃよ。 佑久:と言うと? あこ:正確には神に捧げられた供物。 あこ:人柱って知っておるかえ? 佑久:雨乞いとかで神様に捧げる生贄でしょ。 あこ:うむ。 あこ:わらわはな、それじゃったんじゃ。  :  佑久(M):そこは貧しい村でした。 佑久(M):小さい小さい村でした。 佑久(M):貧乏神の加護ですら望むほど、 佑久(M):神の一柱(ひとはしら)も居ない村でした。 佑久(M):その日暮らしていくだけでもやっとの有様でした。 佑久(M):誰も多くは望んでいませんでした。 佑久(M):けれども日照りが続いてしまい、 佑久(M):田畑は干上がり、 佑久(M):米のひと粒も採れなくなってしまい。 0:一拍 佑久(M):どうしようもなかったのです。 佑久(M):こうするしかなかったのです。  :   :  あこ:わらわは人柱としては好都合じゃったのよ。 佑久:だからって、 あこ:そう言う時代じゃ。 佑久:ホイホイ死ぬ理由にはならないじゃん。 あこ:わらわじゃって、そう易々と贄になった訳では無いぞえ。抵抗はしたさ。 佑久:例えば? あこ:食えと言われた物を食わなかったり。 佑久:断食したのね。 あこ:あとは身綺麗にでもなれば、多少は罪悪感でも生まれるかと思うて、しばらく野山の流れでこの身の穢れを流したりもしたの。 佑久:あこちゃんあこちゃん。 あこ:なんじゃ? 佑久:それね、禊(みそぎ)って言うんだけど分かっててやった? あこ:それがのぉ、わらわ全てが終わった後にそれに気が付いたのよ。 佑久:馬鹿だねぇ〜。 佑久:人柱になるのを抵抗する為にやった事、少なくとも2つはぴったりの人柱作る手段だったとか。 佑久:注文の多い料理店みたいな事しちゃったのね?しかも自ら進んで。 あこ:……まぁそう見えなくもなくもなくもない。 佑久:で、人柱になっちゃった、と。 あこ:うむ。 佑久:この池にでも沈められたの? あこ:そうじゃよ。 佑久:じゃあお社はこの池の為に建てたのか。 あこ:それがのぉ。 あこ:わらわどうにも腹の虫が収まらなくてなぁ。 佑久:なんか嫌な予感がする……。 あこ:日照りだなんだと人様様にはどうにも出来ぬ事で、あれよこれよと言う間にわらわの事を人柱にしよったから。 佑久:うん。 あこ:運良く神になれた瞬間に龍神と取引してのぉ、池そのものをわらわの領域に持ってきてやったわ! 佑久:唯一の水源奪っちゃったの。 あこ:うむ! 佑久:タチの悪い神様も居たもんだよ。 あこ:神とは元来タチが悪いものよ。 佑久:触らぬ神に祟りなしって感じ? あこ:まぁ彼奴等が手を出したのは、神になる前のわらわじゃったから、厳密には"神には"触れておらんがのぉ。 佑久:触らぬ"いずれ神"に祟りなしにするわ。 あこ:うむ。 佑久:伝えたかった事ってそれ? あこ:一応は、な。 佑久:別に黙ってても話されても変わらないけどなぁ。 あこ:その後、があるのじゃよ。 佑久:その後? あこ:神になってから初めの五十、わらわは池を隠した。 あこ:当然、村はまた水不足に陥った。 佑久:うん。 あこ:それから知らぬ存ぜぬを繰り返して、更に四十経ったある日。 あこ:馬鹿な村人達は、今度はわらわに人柱を立てたのよ。 佑久:人柱になった子に人柱立てちゃったの? あこ:うむ、一瞬喧嘩でも売られてるのかと思ったぞえ。 佑久:でしょうよ。 あこ:一回目はわらわが忠告してやったから防げたのじゃが、 佑久:うん。 あこ:そうしたらの? あこ:彼奴等はそのわらわの忠告を持って行った奴を、今度は人柱に立てよったのよ。 あこ:当にとうの立った、捧げるにはあまりに似つかわしくない奴をの。 佑久:子供じゃなくて大人だったって事であってる? あこ:うぬ。 佑久:女の子? あこ:いや?男じゃ。 佑久:成人男性? 佑久:逃げられなかったのかな。 あこ:まぁ、色々重なっておったから逃げるのは無理じゃろうて。 佑久:ふぅん。 あこ:殺してやろうかとも思ったがの。 あこ:村を全滅してやっても良かったわ。 あこ:でも、 佑久:やらなかったんだよね。 あこ:うむ、約束したからの。 佑久:約束? あこ:「生まれ変わって何度でも会いに行く」 佑久:日本の神様に仏教みたいな事言ったのその人。 あこ:此方は此方で八百万の神とまで言うんじゃ。 あこ:生まれ変わりに宗教なんぞ関係なかろう。 佑久:それもそっか。 あこ:さぁ、話は仕舞いじゃ。 あこ:願いは確か「取り戻したくて仕方がないものを取り戻したい」じゃったか? 佑久:いや待って待って待って! 佑久:あこは人柱になったから神様になった。 佑久:それは分かったよ。 佑久:で、そんなあこへ更に人柱を立てられた。 佑久:それも分かった。 あこ:うむ。 佑久:あこ、なんでそれ俺に話したの?  :  0:一拍  :  あこ:そちが祈れる願いが全部で三百と十三あるからじゃよ。 佑久:313っっ?! あこ:うむ。 佑久:はぁ? あこ:そちは全部で三万と千と四百、この地を踏んだ。 あこ:計三百と十四、その内、初めの一つのみ願いをわらわが叶えたから、残り三百と十三じゃ。 佑久:いやいやいや!俺来たの百回だけだよ?! あこ:いいや?三万千と四百じゃ。 あこ:確かのぉ、千と三百の時そちは人柱になり一度死によって…………しばらくして帰ってきた。 佑久:え……。 あこ:そちは繰り返しておるのじゃよ。 あこ:いや、違うか。 あこ:何度も何度も生まれ変わっては此処に来て死に、そしてまた生まれ変わって此処に来るのじゃ。 佑久:……まじで? あこ:うむ。 あこ:そちが死ぬ度にわらわはこの池にそちの残り香を閉じ込めて、次のそちが御百度踏む度に、それをそちに返していた。 あこ:そんな事を繰り返している内に、やがてそち以外が来なくなり、わらわは弱ってしもうたがな。 佑久:……。 あこ:恐らく前のそちの残り香を返せば、そちが知りたかった事は分かる筈よ。 あこ:但し、返すのはこれっきりじゃ。 あこ:もうこの先そちが死んでも、わらわはそちを残せぬ。 あこ:……どうしたい? 佑久:…………じゃあいらない。 あこ:もしかしたらそちにとっては、大切な記憶だとしてもかえ? 佑久:いらないよ。 佑久:つか、あこが残り香わざわざ取っておくから、俺何度もここに来ちゃうんじゃないの? あこ:そうかもしれんなぁ。 あこ:まぁ取っておきたかったのよ。 あこ:わらわは神、そちは人。 あこ:人は死んだら仕舞いじゃ。 あこ:わらわの方が遥かに永く存在する。 あこ:その中で、どれだけ手放したくなかったとしても、長くは覚えていられぬ。 佑久:そんなに良い思い出があったんだ。 あこ:誰かにとっては些細かもしれんがの。 佑久:神様に好かれると呪いみたいになるって言うけど、こう言う事なのかな。 あこ:安心せい。 あこ:わらわはそんじょそこらの神とは違う。 あこ:天寿を全うするまで連れて行きはしないよ。 あこ:勿論、何処にだって行ってもよい。 あこ:その呪いだってきっと、 佑久:うん? あこ:今のそちが死ぬ時に共に終わろうぞ。 佑久:どう言う事、 あこ:精々生きよ、人の子。 あこ:昔の昔のそのまた昔。 あこ:ず〜〜っっと昔のそちの分まで! 佑久:よく分かんないけど、分かった。 佑久:そう言っておけば、満足? あこ:うむ!  :  佑久(M):私はなんて無力な生き物なのでしょう 佑久(M):アナタはなんて儚い存在なのでしょう 佑久(M):私は自分の弱さを知っています 佑久(M):受け入れて、取りこぼしは致しません 佑久(M):けれどやはりやはり私はどうしても 佑久(M):あの空の月が欲しいのです 佑久(M):ほんのひと欠片 佑久(M):触れてみたくて仕方がないのです  :  0:一拍  :  佑久(M):コンコンコーン、狐がないた 佑久(M):アナタを愛した私の姿を 佑久(M):宝物のように仕舞いながら  :   :