台本概要

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タイトル ite-マーメイドハーツ-
作者名 桜蛇あねり(おうじゃあねり)  (@aneri_writer)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男2、女3)
時間 60 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 iteシリーズ第3作目。
海底にある人魚の国、ステノア。
この国は、深海に沈んでいる”鱗石(うろこいし)”を中心に発展していった国。
鱗石を守りながら、その恩恵を受け生活している、人魚たちの物語。

※世界観を壊さない程度のアドリブ等はOKです。

『ite』シリーズ
0. ラスト・ブラック
1.ite-ロジカルハーツ-  桜蛇あねり、天駆ケイとのコラボ台本
2.ite-ドラゴンハーツ-
3.ite-マーメイドハーツ-
4. ite-デーモンハーツ-

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
トーナ 122 鱗石の声を聴ける存在。
ドルーナ 72 マリンポリスに属している。フィーナとは双子の姉妹。姉。
フィーナ 78 この国の唄姫と呼ばれている。ドルーナとは双子の姉妹。妹。
ルカ 95 フィーナ専属のボディーガード。フィーナの婚約者。
ラリマー 165 アイトとよばれる存在。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:『ite-マーメイド・ハーツ-』 : 0:鱗石の祠 ラリマー:.......んん....ここ、は...? トーナ:.........っ!本当に、来てくれた.......! ラリマー:き、きみは? トーナ:初めまして、アイト様。私はこの国、ステノア国に住む人魚、トーナです。これからよろしくね、アイト様! ラリマー:ま、待って待って。僕の名前はアイト、じゃない、ラリマーだ。 トーナ:あら、そーなんだ。てっきり、アイトってのが名前だと思ってたんだけど...... ラリマー:アイトって言うのは、世界を脅威から守る存在の名称だよ。僕の名前はラリマー。 トーナ:なるほど......じゃあラリマー様!改めてよろしくね。 : トーナ:ここは人魚の国、ステノア。深海に沈んでいる”鱗石(うろこいし)”を中心に発展していった国です。鱗石、と言うのはこの世界を創造し、この世界が安定するようにバランスをとっていると言われている、この世界の源です。私たち人魚は、この国で、この鱗石を守りながら、その恩恵を受け生活しています。そして...... ラリマー:ストップストップ。 トーナ:どうしたの? ラリマー:えっと、この世界の解説ありがとう。人魚の国ってのがよくわかった。 トーナ:それはよかった。じゃあ続きなんだけど...... ラリマー:うん、一旦待って。あのさ、僕が”アイト”である存在、そしてその役目については僕自身しか知らないはずなんだけど.......なんで君は、”アイト”という存在を知ってるんだ? トーナ:ふふ。”アイト”それは、世界に脅威がおとずれようとしたとき、その驚異から世界を護る存在。世界っていうのは、この鱗石を中心にたくさん存在していて、アイトはその色んな世界を周りながら、それぞれの世界を脅威から救ってきた。そして.........その世界から驚異が消えた時、アイトはその世界の記憶を失い、新たな世界へと生まれ変わる。 ラリマー:...............よく、知ってるね。それは世界の住人には知らないはずなんだけど? トーナ:普通の住人は、ね。 ラリマー:トーナ。君はいったい? トーナ:私は、鱗石の声を聞くことが出来る、特別な存在。このことは、ここにあるこの鱗石から直接聞いた情報よ。 ラリマー:鱗石の......声を......?にわかには信じがたいけど.........その情報は本物だ。 トーナ:.........ラリマー。あなたが来たってことは、そう遠くない未来、この世界は滅亡するかもしれない脅威に襲われるってことよね。 ラリマー:あぁ。.......いつ、どんな脅威がくるのかはわからない。だけど、鱗石はこの世界に危機を感じた。 トーナ:わかったわ。ラリマー、私がこの世界の住人としてお願いする。..........迫り来る脅威から、この世界を守ってください。 : 0:中心街 : ラリマー:なかなかに賑やかな国なんだね。 トーナ:かなり栄えてるでしょ?海の国の中では、ステノア国が1番栄えているって言われてるの。 ラリマー:............みんな、いい笑顔だ。 トーナ:でしょ?みんなが幸せに暮らせる国、それがここステノア国。きっとラリマーも気に入るよ。....っと、着いた着いた!おーい!ドルーナ!フィーナ! フィーナ:トーナちゃん! ドルーナ:やぁ、トーナ。......おや?そちらは?君の新しい恋人候補かい? トーナ:ち、ちがうよ!ドルーナ、変なこと言わないでっ! ラリマー:恋人候補? トーナ:違うってば!!もー!ドルーナってば!! ドルーナ:ごめんごめん。トーナ、君が連れてきたってことは.........彼がアイト、か? トーナ:うん。だから、そういう時期が近づいてるんだと思う。 ドルーナ:そうか。ならばさらに警戒しなければならないな。 ラリマー:みんな知ってるの? トーナ:1部の人達には話してるの。その方がいろいろと対処できるかなって。 ラリマー:なるほどな。 ドルーナ:すまない、挨拶がおくれたな。私はドルーナ。よろしく。 ラリマー:僕はラリマー。よろしくね。 ドルーナ:ほら、フィーナも。 フィーナ:あ.........う.......。 ドルーナ:すまない、恥ずかしがり屋でな。この子はフィーナ。私の双子の妹だ。 ラリマー:フィーナ、よろしく。 フィーナ:よ、よろしく、お願いします。 トーナ:双子なのに、全然似てないわよね。 フィーナ:うぅ......私もこの性格直したい、とは思ってるんだけど...... ラリマー:はは、大丈夫だよ、フィーナ。ゆっくり仲良くなってくれると嬉しいよ。 フィーナ:は、はい......っ! : ルカ:よーう、ステノアの美人三人娘! : フィーナ:ルカ! ルカ:すまねぇ、フィーナ。思ってた以上に店が混んでてな。遅くなった。......っとぉ、見慣れねぇ顔がいるなぁ。 トーナ:うん、彼は”アイト”のラリマー。さっき鱗石の祠で出会ったの。 ルカ:ほーお。ついにアイト様のお出ましってわけか。俺はルカ。よろしくな、ラリマー。一緒にこの国を護ろうぜ。 ラリマー:あぁ。この世界を必ず守るよ。よろしくね、ルカ。 トーナ:ラリマー、ルカはね、フィーナの... ドルーナ:(かぶせて)そろそろパトロールの時間だ。まだ話していたかったが、私は任務に戻る。またな。 フィーナ:あっ......お姉ちゃん......! ルカ:............。 ラリマー:任務? トーナ:ドルーナはね、マリンポリスってお仕事をしてるの。この国の秩序と住人の平穏を守ってくれてるのよ。 フィーナ:.........マリンポリスが忙しいのは分かってるけど.........お姉ちゃん、最近私のこと避けるようになった気がするの......。 トーナ:ドルーナが?フィーナを?それはないでしょ。あなたたち、ずっと仲良い姉妹じゃない。 フィーナ:そうなんだけど、ね。相談とかしても、突き放されるっていうか......前はいろいろ聞いてくれてたのに......。 ルカ:フィーナ。たぶんだが、ドルーナはフィーナを避けているんじゃなくて、俺の事を避けているんだと思う。 フィーナ:え?ルカのことを? ルカ:アイツが避けるのは、俺とフィーナが一緒にいる時だ。俺がマリンポリスをやめて、君のボディガードになった時から、避けられてるなって感じてる。 フィーナ:そう......なの......? ルカ:理由は..........まぁ.........んー......。 トーナ:いいよ、ルカ。私も何となくわかってる。あのね、ラリマー。ルカはフィーナ専属のボディガードなの。そして、フィーナの婚約者でもある。 ラリマー:へぇ、婚約者! トーナ:もともとルカもドルーナと同じマリンポリスだったんだけどね。 ルカ:マリンポリス時代は、親友くらいに仲良かったはずなんだけどな。 トーナ:そんで、フィーナと婚約すると同時にボディガードへ。 ラリマー:なんでマリンポリスからボディガードになったんだ?それもフィーナ専属? トーナ:それはね、フィーナの役割に関係しているの。 ラリマー:役割? フィーナ:あの、今夜、”唄の日”なので、ラリマーさんも聞いてください。 ラリマー:唄の日.........? : 0:(フィーナ、大きな広場の中心で歌を歌っている) : ラリマー:すごい、こんなにも大勢が集まって......フィーナの唄を聞いている...... トーナ:1ヶ月に1回、こうしてフィーナはこの国全体に唄を捧げるの。それを全国民がこうやって聞く。それが”唄の日” ラリマー:あぁ......彼女の唄、すごく.........綺麗で心地いいな......。 ルカ:だろだろ!俺のフィーナは最高の唄使い、この国の唄姫だからな! ラリマー:唄、使い? トーナ:そう、唄使い。鱗石の力を唄にのせて使うの。陸の国では”魔法”って呼ばれてるわ。ラリマーも使えるはずよ。 ラリマー:なるほど。まだこの世界に身体がなじんでいないからな......唄の使い方、教えてくれ。 ルカ:それは俺に任せろ。ラリマー、俺がお前に、この国での戦い方と護り方を教えてやる。 ラリマー:あぁ、頼むよ。 トーナ:この国の唄はね。ほとんどが生活のためだったり、こういった癒しのために使われることがほとんどなの。ちょっとした水流を起こして移動手段に使ったり、眠りの唄で子どもを寝かしつけたり。そして、フィーナの唄は、最上級の癒しの唄。疲れを癒し、心を穏やかにさせる。だから、この国は争いがほとんど起きないし、みんな活き活きしてるのよ。 ルカ:フィーナはこの国の宝だ。あの子が唄うまで、この国は住民どうしの争いが絶えない、荒んだ国だった。あの子の歌が、この国をここまで発展させたと言っても過言じゃねぇ。 ラリマー:わかるよ。この唄にはすごい力があるんだなって、伝わってくる。 ルカ:まぁ、だからこそ、他国からフィーナを狙う連中も多い。専属のボディガードも必要になるってわけさ。 ラリマー:ボディガードはルカだけなのか? ルカ:専属のってなると、俺だけだな。四六時中一緒について守るのは俺だけだ。ま、他のやつなんかに守らせねぇけどな! ラリマー:お、おう、そ、そうか。 トーナ:ほーんと、フィーナにゾッコンよね。 ルカ:そりゃそうだろ、あんなに可愛らしくて唄も上手くて優しくて健気で謙虚で...... トーナ:(無視して)他にもね、こういう唄の日とか、大きなイベントや舞台のときには、マリンポリスが何人か護衛にあたってるの。 ラリマー:なるほどな。ふむ、だいたい、この世界のことは分かってきた。 トーナ:ラリマー、あなたもマリンポリスとして、この世界の力をつけるといいわ。あなたの役目に1番適している役職だと思うから。 ラリマー:そうだな、そのマリンポリスってやらで、力をつけるとしよう。 ルカ:待て待て!ラリマーは俺と一緒にボディガードやったほうがいいって! トーナ:なんでよ、さっきと言ってること違うじゃない。他のやつなんかに守らせないって。 ルカ:そーだけど!ラリマーは特別だ!他のやつに守らせたくないって気持ちももちろんあるんだが......やっぱり俺だけじゃ限界もあったりするんだよ。それに、俺はその”アイト”って存在について詳しくは知らねぇけど、強いんだろ?だったら、俺と共にフィーナと世界を守っていけたら、とも思うんだ。 トーナ:ふぅん、なるほどね。ま、それもありなんじゃない?ルカはこの国1番の戦士だから、ルカの元で修行した方が早く強くなれると思うし。 ラリマー:僕は世界を守るための力をいち早く付けなきゃいけない。ルカ、僕にこの国での戦い方を教えてくれ。 ルカ:おう、その意気だ!ビシビシ鍛えてやるからな!ついてこいよ! : フィーナ:みんなっ! : トーナ:フィーナ!お疲れ様!今日も素敵な唄だったよ! ラリマー:お疲れ様、とても綺麗な唄声だったよ。 フィーナ:えへへ、ありがとう! ルカ:さすがは俺の唄姫だ。よしよし、よく頑張ったな。 フィーナ:うんっ!............お姉ちゃんは、一緒じゃないんだね。 ルカ:.............。 トーナ:ちゃんと聞いてるわよ、ドルーナも。さ、疲れたでしょ?帰りましょう? フィーナ:う、うん......。 ルカ:あー、そーだ、ラリマー。寝るところは俺たちの家使ってくれ。あんまり広い部屋じゃないが......... トーナ:ダメっ!ラリマーは私の家に来るの! ルカ:え?でも、ボディガードなんだから、一緒に住んだ方が...... トーナ:私とルカたちは、家が近いんだからいいじゃない!それに、婚約している2人の邪魔しちゃ悪いじゃない?ねぇ、ラリマー? ラリマー:え......?あ、いや、僕は別にどこでも......... トーナ:はい、そーゆーことだから。ラリマーは私の家で寝泊まりします! フィーナ:トーナちゃんって、結構強引なとこあるよね.........。 トーナ:じゃ、ルカ、明日からラリマーのことよろしくね!さ!ラリマー、帰りましょ! ラリマー:え?、あ、う、うん。じゃあね、ルカ、フィーナ!明日からよろしく! ルカ:おう.......すげぇ勢いで去っていったな....。 フィーナ:うふふ。 ルカ:フィーナ?どうした? フィーナ:トーナちゃん、嬉しそう。 ルカ:そうだな。ま、ラリマーの生活はアイツに任せるか。 フィーナ:うん!ルカ、私達も帰ろ! ルカ:おう。 : 0:トーナの家 : トーナ:ちょっと狭いかもしれないけど、我慢してね。 ラリマー:おじゃましまー......うわっ!すごい量のぬいぐるみだな......。 トーナ:えへ、ちょっと恥ずかしいや。 ラリマー:こんなによく集めたなぁ。 トーナ:私、かなり寂しがり屋でさ。こうでもしないと、ひとりで眠れなくて。.........ごめんね、強引に私の家に連れてきちゃって。ルカたちのおうちの方がよかった? ラリマー:いや、僕はどっちでもよかったから。むしろ、住む場所をありがとう。 トーナ:.........この世界の脅威が去るまでの短い間だけど、よろしくね、ラリマー。.........あのね、ラリマー。その脅威のことなんだけどね。 ラリマー:あぁ、なにか知ってるの? トーナ:鱗石からの情報だと......絶望の力っていうのが増しているみたいでね。 ラリマー:絶望の、力。 トーナ:その絶望は、負の感情を持つ者の心につけ込んで肉体を奪うらしいの。 ラリマー:肉体を奪う.........それは厄介だな......。 トーナ:えぇ。つまりそれは、この国の住人が脅威になる、ということ。.........場合によっては友達や仲間を.........排除しなければならない。 ラリマー:............。そうならないよう、僕にできる限りのことはする。 トーナ:このことだけはね、ラリマー。あなたにしか言ってないの。もし、他の人が絶望は負の感情を持つ者を脅威にかえる、なんて知ったら、きっとみんな疑いあってしまうから。だから、このことだけは、秘密にしておいて。 ラリマー:そうだね。それがいい。 トーナ:うん。.........ねぇラリマー。 ラリマー:なに? トーナ:アイトには感情ってあるの? ラリマー:え?そりゃああるさ。感情がないと、世界を守れない、と思う。 トーナ:ううん、そうじゃなくて。その......恋愛感情、とか......。 ラリマー:恋愛感情......?あー、それはどうだろう。どうしてそんなこと聞くの? トーナ:アイトはいずれ、この世界から去ってしまうでしょう?それなら、もし、誰かに、この世界で恋をしてしまったら、どうするのかなって。 ラリマー:.......そうだなぁ。たぶん、恋愛感情ってのは、ないんじゃないかなぁ。恋愛感情ってのは、誰かに対してドキドキしたり、ずっと一緒にいたい、とか想う感情だろ?............たぶん、ない、と思う。 トーナ:.........そっかぁ。 ラリマー:.........トーナ? トーナ:うらやましいな、って思うの。フィーナとルカのこと。フィーナもルカも、好きな人ができてから、すごく変わった。臆病で塞ぎ込みがちだったフィーナは明るくなって大勢の前で唄をうたえるようになった。ルカは無気力でやる気のないやつだったのに、フィーナと出会って、努力家になって今や国1番の戦士。.........恋ってすごいんだなって。 ラリマー:あの二人、そんなに変わったのか。 トーナ:うん。すごいよ。それにね、2人ともすごく楽しそう。私も恋、してみたいなって。 ラリマー:恋、ねぇ。 トーナ:ねぇ、ラリマー。私はこの国の住民として、世界を守ってってお願いしたけど.........私個人のお願い......聞いてくれる? ラリマー:...............。 トーナ:あなたがいる期間だけでいい。あなたに、恋、してもいいかな......? ラリマー:............それはダメだよ、トーナ。君が辛くなるだけだ。 トーナ:いいの。辛いのもひとつの恋の形だと思うから。 ラリマー:.........僕はいずれこの世界からいなくなるし、記憶だって失う。やめといた方がいい。 トーナ:...............えへへ、変なこと言っちゃってごめんね!そうだよね!じゃ、そろそろ寝よっか!ラリマーは明日から大変だし、しっかり修行、頑張ってね!おやすみなさい! ラリマー:トーナ............。...............おやすみ、トーナ。 : 0:パトロールを終えたドルーナ : ドルーナ:さて、今日はそろそろあがるか。 フィーナ:お姉ちゃん! ドルーナ:あぁ、フィーナか。どうした? フィーナ:あ、あのね!今夜、お姉ちゃんの好きなマリンハーブのパスタ作ってみたの!だから、家によってご飯食べていかない? ドルーナ:...............ありがとう、フィーナ。だけど、私はもう今夜分のご飯は用意していてな。すまないが、このまま真っ直ぐ家に帰るよ。 フィーナ:.........お姉ちゃん、どうして私たちのこと避けるの......? ドルーナ:.......避けているつもりはない。 フィーナ:避けてるよ!......ルカがいるときは絶対。ねぇ、お姉ちゃん.........ルカのこと、嫌いになっちゃったの?それとも......私のこと? ドルーナ:そうじゃないの!.........フィーナ、あなたはもう頼るべきは私じゃないでしょ。いつまでも私に甘えてこないで。 フィーナ:おねえ.......ちゃん......? ドルーナ:......ごめん。帰る。フィーナ、今日の唄も素敵だった。またな。 フィーナ:おねえちゃん......っ。 : 0:マリンポリス訓練場 : ラリマー:戦いの唄「襲撃」 ルカ:っとぉ!護りの唄「大樹」 ラリマー:そう来ると思った、ここだ、戦いの唄「大地の怒り」 ルカ:なにっ!?ここで下から攻撃....っ!?ぐあっ!! ラリマー:僕の勝ちだ、ルカ! ルカ:くっそ!負けたぁ.....! フィーナ:ルカ、ラリマーさん!お疲れ様!マリンハニーのクッキー持ってきたよ! ルカ:おぉ!フィーナ、サンキュ!ちょうど休憩しようと思ってたんだよ! ラリマー:フィーナ、ありがとう。いただくよ。 フィーナ:どうぞどうぞ!.........それにしても、ラリマーさん、すごく強くなったね! ルカ:ホントだよ......まさか1ヶ月で抜かされるとは思ってもなかったぜ......。 ラリマー:ルカの教え方が上手いからだよ。おかげですぐ身についたさ。 ルカ:へへっ。さすがだよな、ここまで飲み込みが早いとは。ま、おかげで俺もいいライバルができて強くなれてる気がするよ。 フィーナ:ルカ、最近ラリマーさんのことばっかり話しててね。ここをこうすれば強くなれるなー、とか、アイツのここをこう攻めれば勝てるなー、とか、ずっと話してるの。 ルカ:ばっ!フィーナ!言うなって! ラリマー:へーえ?だいぶ気に入ってくれてるみたいで嬉しいな? ルカ:うるせ!にやにやすんな! ラリマー:にしても、ここの国の生活はいいもんだな。1ヶ月暮らしてきたけど、戦闘訓練が無駄になるんじゃないかってくらい平和だし、住人も穏やかで皆いい人ばかりだ。 ルカ:そりゃそーだろ。フィーナの癒しの唄があるからな、この国は。 フィーナ:大げさだってば。 ラリマー:大げさなことないよ。1ヶ月前に聞いた時、この国の平和はこの唄で護られてるんだなって感じた。君は最高の唄姫だよ、フィーナ。 フィーナ:ちょっと!や、やめてよ2人して!恥ずかしいからっ! ルカ:おいラリマー。あんま褒めんな。照れてるフィーナを見られるのは俺だけだ。褒めんな、見んな、あっち向け。 ラリマー:お前は本当にフィーナのことになると感情の起伏が激しくなるよな。.........フィーナ、次の唄の日は明日、だったっけ? フィーナ:うん!明日はね、1年でも特別な唄の日なの! ラリマー:特別な唄の日? ルカ:聖なる唄の日って言われてる。鱗石がこの世界を創ったとされる日だ。 フィーナ:聖なる唄の日はね、家族や恋人、友達と集まっておいしいごちそうを囲んだり、おうちをキラキラした石や貝殻で飾ったりして、お祝いするんだよ! ラリマー:あー、だから最近町がキラキラしてるのか。そーいや、トーナもいろいろ張り切ってたな。 フィーナ:そうだ、トーナちゃんとはどうなの?進展とかあった? ラリマー:えっ!?し、進展!? ルカ:そーだよなー、同じ家に1ヶ月も住んでんだぞ?もう付き合ってんの? ラリマー:付き合ってないって!僕はそういうのはないから! フィーナ:ドキドキしたりとか、しないの......? ラリマー:僕はアイトだ。そういう感情は持たない。 フィーナ:そっかぁ。 ルカ:つまんねぇなぁ。 ラリマー:つまんなくて結構!ほら、ルカ!もう休憩はいいだろ!もう1回、やるぞ! ルカ:はいはい。っしゃあ、次は勝ちますか!! フィーナ:2人とも、頑張ってね!私、家で唄の練習してるから! ルカ:おう。何かあったらすぐ呼べよ。 フィーナ:はーい! ラリマー:本当にフィーナはいい子だよね。 ルカ:あったりまえだろ!フィーナは見た目も良いし中身も良い。健気だし謙虚だし笑顔も可愛くてそれでいて、 ラリマー:そうだな、本当に素敵な子だと思うぞ。 ルカ:さえぎんなよ、まだまだフィーナの良いとこ1割も話せてないぜ? ラリマー:毎日聞いてるんだから、それ全部合わせて全部だ。それでいいだろ。....あれ?ルカ、そんなブレスレットしてたっけ? ルカ:おう、これか?最近また付け始めたんだよ。お前がこの世界に来たから、襲い来る驚異に負けないようにってな。 ラリマー:へぇ..。黒い石...だな。 ルカ:ブラックストーンって呼ばれる魔よけの石らしい。一時期国民の間で流行ったんだよ。この石をみにつけると悪しきものから護ってくれる、ってな。 ラリマー:ふぅん...。 ルカ:っし!じゃあラリマー!次は勝つっ!! ラリマー:おっけー、望むところだ、来い!ルカ! ルカ:戦いの唄「襲撃」! ラリマー:俊足の唄.... フィーナ:きゃぁぁぁぁぁ!!! ルカ:!?フィーナ!裏庭の方だ!ラリマー! ラリマー:あぁ! : フィーナ:あ...あ.....(腰を抜かしている) ルカ:フィーナ!....っ!!あ、あれは、クロラブカ!? ラリマー:なんだ、あの生物.... ルカ:あれは人魚を襲う生物兵器..クロラブカだ。防壁はあるはずなのになぜ.... 0:クロラブカが咆哮をあげる ルカ:今は考えてる暇はねぇ!ラリマー!フィーナの護衛を頼む!俺がやつを撃つ! ラリマー:わかった! ルカ:闘いの唄「咆哮」! ラリマー:フィーナ、大丈夫かい? フィーナ:う...う.....。 ラリマー:フィーナ、大丈夫だ、落ち着いて。 フィーナ:クロ....ラブカ.....あ、あ.....。 ラリマー:っ!フィーナ、大丈夫、ルカが追い払ってくれるから。 ルカ:闘いの唄「激流」!! クロラブカ苦しそうに悶えている。 ルカ:いける、トドメだ!闘いの... 0:クロラブカが鋭い咆哮をあげた ルカ:ぐあっ!なんだ、この声は...っ! ラリマー:ルカ!上だ! ルカ:っ!!っぶねぇ! クロラブカがもう一体、ルカの上から突進してきた。 ラリマー:もう一体居たのか....いや、違う...まだ後ろに....もう一体!!! ルカ:仲間が控えてやがったのか..合計..3体.... ラリマー:ルカ!僕も攻撃にまわる!護りの唄「防壁」 フィーナの回りを水のバリアがはられた。 ラリマー:フィーナ、君のことは必ず僕らが護るから。うおおお!闘いの唄「襲撃」! ルカ:ラリマー、奥の一体を頼む!俺はこっちの2体を.....っ!?一体、どこへ....? ラリマー:ルカ!後ろだ!! ルカ:くっ!(ルカとラブカがぶつかり合う)油断..した! ラリマー:闘いの唄「大地の怒り」! 0:地中からの攻撃がラブカ一体にあたるが、もう一体はそれを抜いてフィーナへと襲いかかる。 ルカ:っ!!1体抜けた!フィーナっ!!危ないっ!!! 0:クロラブカの攻撃があたり、防壁が壊される。 ラリマー:っ!防壁が...っ!フィーナ!!逃げて!! 0:もう一度、クロラブカが襲いかかろうとした時 ドルーナ:危ないっ! 0:ドルーナが駆けつけ、フィーナを守る。 ルカ:ドルーナ! ドルーナ:....!クロラブカがこんなに...!?フィーナ、怖かっただろう、私も戦おう! フィーナ:あ、あ.....おねえちゃ....! ドルーナ:はぁぁぁぁぁ!闘いの唄「激流」! ルカ:ドルーナ、助かった!頼む、1体撃ってくれ! ドルーナ:わかった! ラリマー:よし、たたみかけるぞ!!闘いの唄「英雄の剣」! ルカ:任せろ!闘いの唄「蒼龍」 ドルーナ:闘いの唄.....「深海の炎」!! 0:クロラブカ3体、攻撃を受け逃げていく。 ラリマー:....よかった、撃退、できた。 ルカ:こんなに群れで来ることねぇのに...なんで..... ドルーナ:.........フィーナ、無事... 0:1体が急に方向転換して、フィーナに突進してきた。 ルカ:なっ!!1体戻ってきやがった…!やべぇ! ラリマー:間に合わ.... ドルーナ:フィーナっっっっ!!!! 0:フィーナに1番近いドルーナが防ごうとするが.... ドルーナ:っ!?動かな…(ドルーナの動きがとまる) フィーナ:や...や....いやぁぁぁぁぁっ!! トーナ:護りの唄「防壁」 0:クロラブカの攻撃はトーナの防壁に防がれた。 トーナ:遅くなってごめんっ!フィーナ!大丈夫っ!? フィーナ:トーナ、ちゃん.... ルカ:助かった!闘いの唄「襲撃」! ルカの攻撃に、クロラブカは逃げていった。 ルカ:フィーナっ!無事か! フィーナ:はぁ、はぁ、はぁ....。 トーナ:ごめんなさい、ドルーナと一緒だったんだけど...私泳ぐの遅いから、すぐに駆けつけられなくて...!! フィーナ:うっ..うぅっ...。 ドルーナ:.....っ! ルカ:怖い思いさせてごめんな、フィーナ。 フィーナ:.......うっひっく...。 ラリマー:トーナ、助かった。ドルーナも... ルカ:ドルーナっ!!てめぇ、どうして攻撃の手を止めたっ!! ドルーナ:っ!ち、違う.... ラリマー:ルカ? ルカ:俺は見てたぞ...!お前が1番近かったのに、フィーナが襲われるのを分かってたのに!手を止めたよな!! トーナ:ル、ルカ、落ち着いて! ルカ:なんで手を止めた。トーナが護ってくれなきゃ、大変なことになってたんだぞ...! ドルーナ:それ、は.....。 ルカ:どんな事情があれ、誰であろうと護るのがマリンポリスの仕事じゃねぇのかよっ!!ドルーナ、お前、最近フィーナや俺を避けてるよな?憎んでんだろ?幸せになった俺とフィーナを!!憎んでるからこんなことができるんだろ!!! ラリマー:おい、ルカ! フィーナ:ル、ルカ....やめ... ドルーナ:......ルカ、お前の目に私はそう写っているということか。 ルカ:そーだよ!醜い嫉妬なんかしてんじゃねぇよ!! ドルーナ:.....そう、か。.....っ!(何か言いたいのを堪えて去っていく) フィーナ:お姉ちゃんっ! ルカ:ずっと感じてたんだ...。アイツが俺たちを避けるのは、嫉妬してるからって。....だからって、自分の妹を見殺しにするか!?なんなんだよ、アイツ....っ! トーナ:ルカ、やめて!ドルーナがそんな事するはずないでしょ! ルカ:だってアイツは!守れる攻撃だったのに、動きを止めたんだぞ!?そのままフィーナを襲わせた!マリンポリスとしても、姉としても、おかしいだろ!!! ラリマー:おい、落ち着けって...... : フィーナ:ルカ、どいて。 : ルカ:フィー、ナ....? フィーナ:私を守ってくれてありがとう。いろいろ疲れちゃったから、今日はもう休むね。 ルカ:フィーナ、怖かったよな、ごめんな、怖い思いさせて...あとで部屋になにか甘いもの持ってくから..... フィーナ:ううん、大丈夫。明日まで、誰も部屋に入ってこないで。 ルカ:えっ....フィー...... フィーナ:おやすみなさい。 トーナ:.......あんだけ怖い思いして、ドルーナのことも思うところがあるんだと思うわ。明日は大切な唄の日だし、そっとしておきましょう....。 ルカ:........あ、あぁ....。 : 0:トーナの家 : トーナ:ドルーナとフィーナの両親はね、クロラブカに殺されたの。 ラリマー:え?そー、なの? トーナ:かなり酷い殺され方だったみたい。あの二人は両親に守られて生きのびたけど、その時のトラウマはそうとうのものよ。 ラリマー:それ、ルカは知ってんのか? トーナ:わかんない。でも今日の態度を見るに......知らなかったのかも、ね。 ラリマー:.......だから、ドルーナの動きが止まった、のか? トーナ:それもわかんない。トラウマで動けなかったのか、それともルカの言ってることが本当なのか....。 ラリマー:ドルーナ...。 トーナ:さ、ラリマー。今日はもう寝ましょう。明日は特別な唄の日。 ラリマー:そうだな。またクロラブカってやつが襲いに来る可能性も...... トーナ:たぶん、明日が、この世界の脅威の日になる気がする。 ラリマー:........え? トーナ:鱗石がなんだか、怯えてるような、驚異に備えてるような、そんな感じがしたの。 ラリマー:鱗石が? トーナ:........ラリマー。今夜だけ、くっついて寝ても、いいかな? ラリマー:え? トーナ:ごめん、不安なの。すごく。ただ近くにいて欲しいだけなの。嫌な予感がして、怖くて、不安で......っ! ラリマー:......わかった。 トーナ:ありがとう。........えへへ、なんか不思議だよね。私たち人魚は、陸にいる人間と違って体温は感じないはずなのに.....すごく.....暖かい。 ラリマー:トーナ、大丈夫。必ず僕がこの世界を守るから。安心して。 トーナ:ありがと....ラリマー........好き、だよ.......(眠りに落ちていく) ラリマー:ありがとう、トーナ。 : 0:次の日 : ルカ:ラリマー、いいか。今日は1年で1番大きな唄の日だ。こういう日にトラブルやアクシデントは付き物だ。昨日クロラブカの襲撃もあったし、何があるかわからねぇ。いいか、今日が終わるまで一瞬たりとも気を抜くなよ。 ラリマー:........ルカ、お前寝てないだろ。 ルカ:......寝れるかよ。結局さぁ!フィーナはあれから今朝まで部屋から出てこなかったし、一言も話してくれないし、元気なさそうだし、どーしたらいいんだぁぁぁぁ! ラリマー:........唄の日が終わったら、ちゃんと話し合え。 ルカ:......そう、だな。 トーナ:ラリマー!ルカ!もうすぐ始まるから、位置について! ルカ:よし、何があってもフィーナのことは絶対守る!!行くぞ、ラリマー! ラリマー:おう! トーナ:あ、ごめん、ラリマーだけちょっといいかな?鱗石のことで。 ラリマー:あぁ、わかった。悪い、ルカ、すぐに行くから先に行っててくれ。 ルカ:わかった、遅れんなよ! トーナ:ごめんね、ラリマー、こっち! : 0:舞台裏の小さな物置部屋 : ラリマー:トーナ?こんなとこに何の用だ? トーナ:ごめんね、ラリマー。鱗石のことでって嘘ついちゃって。ちょっとだけ、2人になりたかったの。 ラリマー:本番に遅れないように頼むよ。 トーナ:うん、大丈夫。あのね、もし今日、大きな脅威が起こってそれをおさめたら......ラリマーはもう、いなくなっちゃうんだよね?だから......今日が最後になるかもしれないから...... ラリマー:トー.... 0:(トーナ、ラリマーに抱きつく) トーナ:こたえなくていいから。伝えるだけ、伝えさせて......やっぱり私、あなたのことが好き。好きになってしまった....。 ラリマー:トーナ...., トーナ:だから.......... : トーナ:ごめんね。眠りの唄「深き眠り」 : ラリマー:っ!トーナ...くっ....!(その場に倒れる) トーナ:そこで、眠っていて。全てが終わるまで。 : 0:ステージ : フィーナ:みなさん、お待たせしました。これより、聖なる唄を........ここステノアに住む皆様へ、そして、この世界を創造した鱗石へ、捧げます。それでは、聞いてください。 : フィーナ:癒しの唄「天使の唄声」 : 0:フィーナ歌い始める。 : ルカ:おい、ラリマーのやつ、まだか....! トーナ:ルカ! ルカ:トーナ!?ラリマーはどうした!? トーナ:ごめんね、詳しくは言えないけど....脅威の源だと思われるところへ行ってもらってる。 ルカ:は?なんだって?もしかしてクロラブカがまた!? トーナ:ううん、違うけど、でも大丈夫だから。ルカはフィーナのことをしっかり護って。 ルカ:お、おう。トーナが言うなら....。 トーナ:......ちょっと私、皆に伝えなきゃ行けないことあるから、言ってくるね。 ルカ:あーおい、トーナ。 : 0:トーナ、フィーナが唄うステージへ上がりフィーナへと近づく。 : フィーナ:....?トーナちゃん? トーナ:フィーナ。ごめんね、あなたの素敵な唄を中断させてしまって。でも、言わなきゃいけないことがあって。 フィーナ:どうしたの?言わなきゃいけないこと? トーナ:フィーナ。今日、私は。..........この国を壊す。 フィーナ:........っ!? : トーナ:絶望の唄『最期の黒色(こくじき)』 : フィーナ:あぁっ!?う…ぁ…っ! ルカ:トーナぁぁぁぁっ!!!(ルカが飛び出してくる) トーナ:縛りの唄「硬直」 ルカ:がっ!?(ルカの動きが止まる) フィーナ:なに、これ......黒い泡が...っ!トーナちゃ........う、うごけな...... トーナ:絶望を、もっと!絶対をっ!キャハハハハっ!! ルカ:くそ、こんな縛りごとき、すぐに解いてっ!.........っ!?なんだ、黒い泡の威力が増して......っ!ブレスレットが....っ! トーナ:いまや国民の半分以上が身につけているブラックストーン。その石はね、絶望を増幅させる力があるのよ。 フィーナ:トーナちゃん、どうして...... トーナ:あんたがそれを言う?全ての元凶はあんたよ、フィーナ。 フィーナ:えっ......? トーナ:もともとこの国の唄姫になるのは私だったはずなの......!私が先に、目指してたのに.......っ! フィーナ:..........っ! トーナ:私はこの国を変えようと、癒そうと、必死に癒しの唄を練習して、上手くなるために努力して.......だけど、あんたが私の真似をして何気なく唄った癒しの唄を、世間はもとめた...そこから、世間はあんたのことを唄姫と崇めて、たたえて、愛して......っ!!!この国は変わっていった!あんたを中心にっ!!!必死に努力した私なんか見向きもせず!!............みんな、みんな、私のことなんか見てくれなかった。誰もが口を開けばフィーナ、フィーナ、と。私が恋した人たちも......みんな、フィーナを愛した......。私だって!この国を癒すためにあんなに頑張ってきたのにっ!みんなに、愛されたかったのに........。 フィーナ:トーナ、ちゃん........。 トーナ:だけどっ!黒蛇様だけは私を見てくれた!必要としてくれた!.......だから私は、黒蛇様のために、絶望をささげるの。 0:(トーナ、フィーナの首を絞める) フィーナ:あぁっ......!トー....ナ、ちゃ........。 ルカ:やめろ、トーナ、やめろっ!! トーナ:私を見てくれない世界なんていらない!!こんな世界!全部壊してやる!キャハハハハ!!私と!あの人だけの!2人だけの世界にしてやる!!アハハハハっ!!! : ラリマー:闘いの歌「襲撃」! : トーナ:っ!?ラ、ラリマー!? 0:(トーナ、手を離す) フィーナ:げほっ、げほっ。 ラリマー:トーナ、君だったんだね。この世界の脅威........絶望は。 トーナ:どうしてラリマーが!?私が解かないと目を覚まさないはず....! ドルーナ:そもそも、ラリマーは君の眠りの唄にかかっていないんだよ、トーナ。 トーナ:ドルーナ......どういうことよ。 ドルーナ:ラリマーには、あらかじめ私の守りの加護の唄を聞かせていた。この唄を解くまで、彼にあらゆる唄は通用しない。 トーナ:............いつ?いつあなた達は手を組んだの。 ラリマー:昨日の夜だ。君が眠ったあと、僕は鱗石の元へ行った。 : 0:回想、鱗石の祠 : ラリマー:........あれ、君もここにいたのか、ドルーナ。 ドルーナ:っ!........あ、ラリマーか....。 ラリマー:そんなに驚くなよ......。 ドルーナ:すまない。少し、気が動転していてな。 ラリマー:今日のクロラブカの件? ドルーナ:あぁ。それもそうだし、ルカから言われたことも、な。 ラリマー:ふぅん。まぁ、アイツもかなり動転してたからな、フィーナもああだし..。 ドルーナ:........私を責めないのか。 ラリマー:責めないよ。ドルーナは必死でフィーナを守った。だが、何かしらの原因で動きが止まって、フィーナを危険な目に合わせてしまった、ってとこだろ? ドルーナ:.....わかって、くれるのか。 ラリマー:ドルーナがフィーナたちを見る目はいつも優しかった。必死に強くなろうと頑張ってるフィーナたちを見守っている、そんな眼差しだ。 ドルーナ:そんなことまで分かるんだな。 ラリマー:なぜだかね。そういう目を、どこかで見たことがある気がするんだ。....なぁ、ドルーナ。君にひとつ聞きたいことがあるんだ。 ドルーナ:なんだ? ラリマー:実際のところ、ドルーナはあの2人をどう思っているんだ? ドルーナ:……引かないで、聞いてくれるか? ラリマー:あぁ。 ドルーナ:私はね、どちらもすごく大切で、大好きなんだ。特にフィーナはね。かわいい私の一番の存在だ。幼少期に私たちは両親を亡くし、それからずっと二人で力を合わせて生きてきた。姉である私がしっかりしなければ、と、私はフィーナが不安にならない様に強くあろうとした。フィーナはずっと私を頼ってくれて、いつも一緒にいてくれて、常に私の後ろで笑っていてくれた。それが心地よくて。このままずっとフィーナを守っていきたい、と思っていたんだ。 ラリマー:今は、ちがうのか? ドルーナ:今、フィーナを守るべきなのは私じゃない。ルカだ。 ラリマー:……。 ドルーナ:ルカは、あいつはちょっと調子いいところはあるが、一途で努力家で誠実ないいやつだ。彼なら、フィーナのことを任せられる。……最初はそう思ってな。二人を引き合わせて、私の思い通り、二人はひかれあってくれたのだが…。 ラリマー:どうしたんだ? ドルーナ:どうやら、私は思っていた以上にフィーナに依存していたみたいでな。フィーナが私の元を離れ、ルカに頼るようになってしまったのが…寂しくて。フィーナが頼りにし、安心した笑顔を向ける対象が、私ではなくなってしまったことが……耐えられなかった。 ラリマー:なるほど、ルカに嫉妬してしまった、と。 ドルーナ:嫉妬、なのかもしれないな。だが、フィーナとルカが二人で頼り合いながら生きていく、それがフィーナの幸せなんだ。だから、フィーナも私を頼らない様に、私もフィーナから離れられるように、そう、しようと距離を置いて……。 ラリマー:どうして? ドルーナ:え? ラリマー:どうしてフィーナはドルーナを頼っちゃいけないんだ? ドルーナ:それはだって、頼る相手はルカであって…。 ラリマー:だから、なんで頼る対象が一人じゃなきゃいけないんだ? ドルーナ:…! ラリマー:フィーナがルカと結婚したとしても、君たちが姉妹なのには変わりないだろ?どうして、姉に頼っちゃいけないなんてこと言うんだよ。ドルーナも、フィーナと離れなきゃって思うんだよ。 ドルーナ:そ、れは…。 ラリマー:難しく考えすぎなんじゃないか?僕からしたら、フィーナはただ、昔からのように姉である君を頼りにしているだけだと思うんだけどね。 ドルーナ:……… ラリマー:ルカだって、君のことを邪魔になんか思っていないし、たまには3人でご飯食べたいなってこないだ言ってたし。姉妹がこれまで通り、仲良くすごして、何が悪いんだ? ドルーナ:……そう、か。……私は…ずっとあの子の姉でいていいのか…。 ラリマー:いていいとか、そんなんじゃなくて、ずっと変わらない関係だろ?もっと大事にしろって、そこを。 ドルーナ:そう、だな。…そうだよな。 ラリマー:明日、唄の日が終わったら、3人でちゃんと話せよ。しっかり、腹を割って。 ドルーナ:ありがとう、ラリマー。そうするよ。 ラリマー:よし、じゃあ僕はそろそろ戻って、明日に備えようかな。トーナが、明日何か起こるかもしれないって言ってたし。 ドルーナ:ラリマー。 ラリマー:ん?なに? ドルーナ:トーナには気をつけろ。 ラリマー:……どうして? ドルーナ:クロラブカに襲われたとき、私の動きを止めたのはおそらくトーナだ。彼女はたまに…何を考えているのかわからないときがある……ただの思い過ごしかもしれないが。 ラリマー:……わかった、注意しておく。 ドルーナ:ライマー、これを。……守りの加護の唄「神の祝福」。…催眠や縛りといった唄を無効化する防衛の唄だ。これなら、強力な唄からも護られるだろう。 ラリマー:ありがとう、ドルーナ。 ドルーナ:私がその加護を解くまで、君を守り続ける。…ただ、強力であるがゆえに、その加護を誰かに付与している間、私は唄を使うことができない。 ラリマー:え!?ダメだ、それは危険だよ…! ドルーナ:だからラリマー。私が君を守るから、君は私を守ってくれ。 ラリマー:……!……わかった、全力で守る。 ドルーナ:明日は、頼んだぞ。 : 0:回想終了。 : トーナ:あはは、なによ、それ…。あなたも私を見てくれないのね、ラリマー…。 ラリマー:この世界を守るのが僕の役目だ。この世界を壊すというのなら、容赦はしない。 トーナ:やっぱり、私には黒蛇様しかいない…!もっと!もっと絶望の力を……! 0:黒い泡が大きくなっていく フィーナ:あああぁぁぁっ!! ルカ:ぐあああああっ!! ドルーナ:やめろ!これ以上好き勝手させないっ!ラリマー! ラリマー:闘いの唄、「大地の怒り」! トーナ:きゃああぁぁぁっ!! 0:絶望の力が弱まる トーナ:な…ぜ…?どうしてこの絶望の中であんたは動くことができるのドルーナ…。みんな、絶望に飲まれて動けなくなっているのに…! ドルーナ:そんなの決まっているだろう!私の大事なフィーナを!ルカを!守るためだっ! フィーナ:…おねえ、ちゃん…。 ルカ:ドルー…ナ…。 ドルーナ:私が守る!お前の絶望ごときに屈するわけにはいかない! トーナ:ちっ。じゃああんたが屈するような大きな絶望を呼び起こすしかないわ!絶望の唄「最期の黒色(こくじき)」! ラリマー:ドルーナ、僕は大丈夫だ。解いて。 ドルーナ:わかった、加護の唄、解除!……闘いの唄「激流」! トーナ:あああぁぁぁっ! ドルーナ:今だ、フィーナ、唄えるか? フィーナ:うん、大丈夫っ! ドルーナ:行くぞ。……癒しと守りの唄… フィーナ:浄化の唄「慈愛」 トーナ:いやああああぁぁぁぁぁぁぁ!!! ラリマー:黒い泡が…消えていく…。 ルカ:くっ…はぁ、はぁ…。 フィーナ:トーナちゃんっ!しっかり、しっかりして! トーナ:……失敗、しちゃったかぁ。 ドルーナ:トーナ、お前は…絶望の力に操られて、こんなことをしたのか。 トーナ:操られて、うーん、そうねぇ…。操られた、というよりかは、従ってた、ってとこかな。 ラリマー:従っていた…? トーナ:私は自分の意志で、絶望の力を受け入れたの。あの日、あのすべてを恨んでいた夜。眠っている私に、黒蛇様という存在が語り掛けてきたの。この世界が憎いか、この世界を壊さないか、って。 ラリマー:黒蛇様…。 トーナ:私を必要としてくれたの。だから、私はその存在を受け入れた。そして、黒蛇様はアイトのことを教えてくれて、そのアイトが来たら絶望をささげろ、と・ ドルーナ:それで、この国中が注目するこの日に決行したわけか。 トーナ:そういうこと。……うっ!(トーナの体が少しずつ朽ちていく) フィーナ:トーナちゃんっ!体が…っ! トーナ:あーあ、肉体がもたなかったみたいね…。まあいいわ、私はこのまま消えるから。 フィーナ:そんなの嫌だよっ!まだ間に合う、癒しの唄「友愛… トーナ:やめてっ! フィーナ:っ! トーナ:私はあなたを殺そうとした。この国を壊そうとしたんだよ?なに治そうとしてるの? フィーナ:私は、トーナちゃんが消えるの、やだよ…。ごめんね、トーナちゃん、ごめん…。 トーナ:謝んないで。謝ったところで、私の気持ちは変わらないから。あんたが私のことを許したとしても、私はたぶん、あんたのこと許せないと思うから。あんたが幸せである限り、ずっとずっと、許せないと思うの。ここで生かしたところで、また私は同じことを繰り返すわ。わかるの…。この嫉妬の炎は一生消えない。だから私は、この世界にはいられない。……それはこの世界のためであり…私のためでもあるから。 フィーナ:う…うぅ…。 トーナ:私をこのまま、絶望の中で死なせて。それがきっと、黒蛇様にできる最後の恩返し。……またね、ラリマー。あなたと一緒に過ごした時間だけが…幸せだったわ…。……さようなら。 フィーナ:トーナちゃん、トーナちゃんっ!!! 0:トーナは泡に包まれ、消えていった。 : 0:翌日 ドルーナ:ラリマー。 ラリマー:よう、ドルーナ。 ドルーナ:そろそろ、行くのか? ラリマー:そうだな。もう時期、転生が始まる。 ドルーナ:そうか......すまない、私しか見送れないみたいだ。 ラリマー:仕方ねぇさ。フィーナは今、トーナを弔いの唄で送り出してる。ルカもその護衛。......トーナもこれで、救われるといいな。 ドルーナ:大丈夫だ。フィーナの弔いの唄は、きっと届いているさ。 ラリマー:........さて、時間だ。 0:ラリマーの体が泡に包まれ始める ドルーナ:ラリマー、ありがとう。これからは3人で力を合わせて、この国を守っていくよ。 ラリマー:もう変な意地はるなよ。 ドルーナ:去り際のセリフがそれか。せっかく女の子が見送ってやってるんだ、もっと気の利いたセリフでも言ってみたらどうだ。 ラリマー:あいにく、そういう感情は持ち合わせてないんでね。どういう言葉で喜ばせようか、なんて思いつかないんだ。 ドルーナ:はははっ、ラリマーらしいな!........さよなら、ラリマー。 ラリマー:あぁ。さようなら、大切な....親友よ。 0:ラリマーの身体は泡に飲み込まれ消えていく ドルーナ:(ボソッと)せっかく恋をする気持ちを......知ることができたのにな....。 : ラリマー:あぁ.....この世界ともお別れだ。.......ドルーナ。そんな悲しそうな顔をしないでくれ。君は.......君には笑顔が1番似合うよ。フィーナのことを語っている時、とても素敵な笑顔だった......。だから僕は、その笑顔を守りたいって思えたんだ......。......これがその....感情なのだろうか....。......わからない、な。あぁ、この感情も、この記憶も....全て消えてしまうのか。........嫌だなぁ。でも、世界はどんどん危険になっていっている......早く次の世界も救わなければ。さぁ、鱗石。次はどの世界を救えばいい?そうか。じゃあ、その国へ。また、生まれ変わろうか。 : 0:(終)

0:『ite-マーメイド・ハーツ-』 : 0:鱗石の祠 ラリマー:.......んん....ここ、は...? トーナ:.........っ!本当に、来てくれた.......! ラリマー:き、きみは? トーナ:初めまして、アイト様。私はこの国、ステノア国に住む人魚、トーナです。これからよろしくね、アイト様! ラリマー:ま、待って待って。僕の名前はアイト、じゃない、ラリマーだ。 トーナ:あら、そーなんだ。てっきり、アイトってのが名前だと思ってたんだけど...... ラリマー:アイトって言うのは、世界を脅威から守る存在の名称だよ。僕の名前はラリマー。 トーナ:なるほど......じゃあラリマー様!改めてよろしくね。 : トーナ:ここは人魚の国、ステノア。深海に沈んでいる”鱗石(うろこいし)”を中心に発展していった国です。鱗石、と言うのはこの世界を創造し、この世界が安定するようにバランスをとっていると言われている、この世界の源です。私たち人魚は、この国で、この鱗石を守りながら、その恩恵を受け生活しています。そして...... ラリマー:ストップストップ。 トーナ:どうしたの? ラリマー:えっと、この世界の解説ありがとう。人魚の国ってのがよくわかった。 トーナ:それはよかった。じゃあ続きなんだけど...... ラリマー:うん、一旦待って。あのさ、僕が”アイト”である存在、そしてその役目については僕自身しか知らないはずなんだけど.......なんで君は、”アイト”という存在を知ってるんだ? トーナ:ふふ。”アイト”それは、世界に脅威がおとずれようとしたとき、その驚異から世界を護る存在。世界っていうのは、この鱗石を中心にたくさん存在していて、アイトはその色んな世界を周りながら、それぞれの世界を脅威から救ってきた。そして.........その世界から驚異が消えた時、アイトはその世界の記憶を失い、新たな世界へと生まれ変わる。 ラリマー:...............よく、知ってるね。それは世界の住人には知らないはずなんだけど? トーナ:普通の住人は、ね。 ラリマー:トーナ。君はいったい? トーナ:私は、鱗石の声を聞くことが出来る、特別な存在。このことは、ここにあるこの鱗石から直接聞いた情報よ。 ラリマー:鱗石の......声を......?にわかには信じがたいけど.........その情報は本物だ。 トーナ:.........ラリマー。あなたが来たってことは、そう遠くない未来、この世界は滅亡するかもしれない脅威に襲われるってことよね。 ラリマー:あぁ。.......いつ、どんな脅威がくるのかはわからない。だけど、鱗石はこの世界に危機を感じた。 トーナ:わかったわ。ラリマー、私がこの世界の住人としてお願いする。..........迫り来る脅威から、この世界を守ってください。 : 0:中心街 : ラリマー:なかなかに賑やかな国なんだね。 トーナ:かなり栄えてるでしょ?海の国の中では、ステノア国が1番栄えているって言われてるの。 ラリマー:............みんな、いい笑顔だ。 トーナ:でしょ?みんなが幸せに暮らせる国、それがここステノア国。きっとラリマーも気に入るよ。....っと、着いた着いた!おーい!ドルーナ!フィーナ! フィーナ:トーナちゃん! ドルーナ:やぁ、トーナ。......おや?そちらは?君の新しい恋人候補かい? トーナ:ち、ちがうよ!ドルーナ、変なこと言わないでっ! ラリマー:恋人候補? トーナ:違うってば!!もー!ドルーナってば!! ドルーナ:ごめんごめん。トーナ、君が連れてきたってことは.........彼がアイト、か? トーナ:うん。だから、そういう時期が近づいてるんだと思う。 ドルーナ:そうか。ならばさらに警戒しなければならないな。 ラリマー:みんな知ってるの? トーナ:1部の人達には話してるの。その方がいろいろと対処できるかなって。 ラリマー:なるほどな。 ドルーナ:すまない、挨拶がおくれたな。私はドルーナ。よろしく。 ラリマー:僕はラリマー。よろしくね。 ドルーナ:ほら、フィーナも。 フィーナ:あ.........う.......。 ドルーナ:すまない、恥ずかしがり屋でな。この子はフィーナ。私の双子の妹だ。 ラリマー:フィーナ、よろしく。 フィーナ:よ、よろしく、お願いします。 トーナ:双子なのに、全然似てないわよね。 フィーナ:うぅ......私もこの性格直したい、とは思ってるんだけど...... ラリマー:はは、大丈夫だよ、フィーナ。ゆっくり仲良くなってくれると嬉しいよ。 フィーナ:は、はい......っ! : ルカ:よーう、ステノアの美人三人娘! : フィーナ:ルカ! ルカ:すまねぇ、フィーナ。思ってた以上に店が混んでてな。遅くなった。......っとぉ、見慣れねぇ顔がいるなぁ。 トーナ:うん、彼は”アイト”のラリマー。さっき鱗石の祠で出会ったの。 ルカ:ほーお。ついにアイト様のお出ましってわけか。俺はルカ。よろしくな、ラリマー。一緒にこの国を護ろうぜ。 ラリマー:あぁ。この世界を必ず守るよ。よろしくね、ルカ。 トーナ:ラリマー、ルカはね、フィーナの... ドルーナ:(かぶせて)そろそろパトロールの時間だ。まだ話していたかったが、私は任務に戻る。またな。 フィーナ:あっ......お姉ちゃん......! ルカ:............。 ラリマー:任務? トーナ:ドルーナはね、マリンポリスってお仕事をしてるの。この国の秩序と住人の平穏を守ってくれてるのよ。 フィーナ:.........マリンポリスが忙しいのは分かってるけど.........お姉ちゃん、最近私のこと避けるようになった気がするの......。 トーナ:ドルーナが?フィーナを?それはないでしょ。あなたたち、ずっと仲良い姉妹じゃない。 フィーナ:そうなんだけど、ね。相談とかしても、突き放されるっていうか......前はいろいろ聞いてくれてたのに......。 ルカ:フィーナ。たぶんだが、ドルーナはフィーナを避けているんじゃなくて、俺の事を避けているんだと思う。 フィーナ:え?ルカのことを? ルカ:アイツが避けるのは、俺とフィーナが一緒にいる時だ。俺がマリンポリスをやめて、君のボディガードになった時から、避けられてるなって感じてる。 フィーナ:そう......なの......? ルカ:理由は..........まぁ.........んー......。 トーナ:いいよ、ルカ。私も何となくわかってる。あのね、ラリマー。ルカはフィーナ専属のボディガードなの。そして、フィーナの婚約者でもある。 ラリマー:へぇ、婚約者! トーナ:もともとルカもドルーナと同じマリンポリスだったんだけどね。 ルカ:マリンポリス時代は、親友くらいに仲良かったはずなんだけどな。 トーナ:そんで、フィーナと婚約すると同時にボディガードへ。 ラリマー:なんでマリンポリスからボディガードになったんだ?それもフィーナ専属? トーナ:それはね、フィーナの役割に関係しているの。 ラリマー:役割? フィーナ:あの、今夜、”唄の日”なので、ラリマーさんも聞いてください。 ラリマー:唄の日.........? : 0:(フィーナ、大きな広場の中心で歌を歌っている) : ラリマー:すごい、こんなにも大勢が集まって......フィーナの唄を聞いている...... トーナ:1ヶ月に1回、こうしてフィーナはこの国全体に唄を捧げるの。それを全国民がこうやって聞く。それが”唄の日” ラリマー:あぁ......彼女の唄、すごく.........綺麗で心地いいな......。 ルカ:だろだろ!俺のフィーナは最高の唄使い、この国の唄姫だからな! ラリマー:唄、使い? トーナ:そう、唄使い。鱗石の力を唄にのせて使うの。陸の国では”魔法”って呼ばれてるわ。ラリマーも使えるはずよ。 ラリマー:なるほど。まだこの世界に身体がなじんでいないからな......唄の使い方、教えてくれ。 ルカ:それは俺に任せろ。ラリマー、俺がお前に、この国での戦い方と護り方を教えてやる。 ラリマー:あぁ、頼むよ。 トーナ:この国の唄はね。ほとんどが生活のためだったり、こういった癒しのために使われることがほとんどなの。ちょっとした水流を起こして移動手段に使ったり、眠りの唄で子どもを寝かしつけたり。そして、フィーナの唄は、最上級の癒しの唄。疲れを癒し、心を穏やかにさせる。だから、この国は争いがほとんど起きないし、みんな活き活きしてるのよ。 ルカ:フィーナはこの国の宝だ。あの子が唄うまで、この国は住民どうしの争いが絶えない、荒んだ国だった。あの子の歌が、この国をここまで発展させたと言っても過言じゃねぇ。 ラリマー:わかるよ。この唄にはすごい力があるんだなって、伝わってくる。 ルカ:まぁ、だからこそ、他国からフィーナを狙う連中も多い。専属のボディガードも必要になるってわけさ。 ラリマー:ボディガードはルカだけなのか? ルカ:専属のってなると、俺だけだな。四六時中一緒について守るのは俺だけだ。ま、他のやつなんかに守らせねぇけどな! ラリマー:お、おう、そ、そうか。 トーナ:ほーんと、フィーナにゾッコンよね。 ルカ:そりゃそうだろ、あんなに可愛らしくて唄も上手くて優しくて健気で謙虚で...... トーナ:(無視して)他にもね、こういう唄の日とか、大きなイベントや舞台のときには、マリンポリスが何人か護衛にあたってるの。 ラリマー:なるほどな。ふむ、だいたい、この世界のことは分かってきた。 トーナ:ラリマー、あなたもマリンポリスとして、この世界の力をつけるといいわ。あなたの役目に1番適している役職だと思うから。 ラリマー:そうだな、そのマリンポリスってやらで、力をつけるとしよう。 ルカ:待て待て!ラリマーは俺と一緒にボディガードやったほうがいいって! トーナ:なんでよ、さっきと言ってること違うじゃない。他のやつなんかに守らせないって。 ルカ:そーだけど!ラリマーは特別だ!他のやつに守らせたくないって気持ちももちろんあるんだが......やっぱり俺だけじゃ限界もあったりするんだよ。それに、俺はその”アイト”って存在について詳しくは知らねぇけど、強いんだろ?だったら、俺と共にフィーナと世界を守っていけたら、とも思うんだ。 トーナ:ふぅん、なるほどね。ま、それもありなんじゃない?ルカはこの国1番の戦士だから、ルカの元で修行した方が早く強くなれると思うし。 ラリマー:僕は世界を守るための力をいち早く付けなきゃいけない。ルカ、僕にこの国での戦い方を教えてくれ。 ルカ:おう、その意気だ!ビシビシ鍛えてやるからな!ついてこいよ! : フィーナ:みんなっ! : トーナ:フィーナ!お疲れ様!今日も素敵な唄だったよ! ラリマー:お疲れ様、とても綺麗な唄声だったよ。 フィーナ:えへへ、ありがとう! ルカ:さすがは俺の唄姫だ。よしよし、よく頑張ったな。 フィーナ:うんっ!............お姉ちゃんは、一緒じゃないんだね。 ルカ:.............。 トーナ:ちゃんと聞いてるわよ、ドルーナも。さ、疲れたでしょ?帰りましょう? フィーナ:う、うん......。 ルカ:あー、そーだ、ラリマー。寝るところは俺たちの家使ってくれ。あんまり広い部屋じゃないが......... トーナ:ダメっ!ラリマーは私の家に来るの! ルカ:え?でも、ボディガードなんだから、一緒に住んだ方が...... トーナ:私とルカたちは、家が近いんだからいいじゃない!それに、婚約している2人の邪魔しちゃ悪いじゃない?ねぇ、ラリマー? ラリマー:え......?あ、いや、僕は別にどこでも......... トーナ:はい、そーゆーことだから。ラリマーは私の家で寝泊まりします! フィーナ:トーナちゃんって、結構強引なとこあるよね.........。 トーナ:じゃ、ルカ、明日からラリマーのことよろしくね!さ!ラリマー、帰りましょ! ラリマー:え?、あ、う、うん。じゃあね、ルカ、フィーナ!明日からよろしく! ルカ:おう.......すげぇ勢いで去っていったな....。 フィーナ:うふふ。 ルカ:フィーナ?どうした? フィーナ:トーナちゃん、嬉しそう。 ルカ:そうだな。ま、ラリマーの生活はアイツに任せるか。 フィーナ:うん!ルカ、私達も帰ろ! ルカ:おう。 : 0:トーナの家 : トーナ:ちょっと狭いかもしれないけど、我慢してね。 ラリマー:おじゃましまー......うわっ!すごい量のぬいぐるみだな......。 トーナ:えへ、ちょっと恥ずかしいや。 ラリマー:こんなによく集めたなぁ。 トーナ:私、かなり寂しがり屋でさ。こうでもしないと、ひとりで眠れなくて。.........ごめんね、強引に私の家に連れてきちゃって。ルカたちのおうちの方がよかった? ラリマー:いや、僕はどっちでもよかったから。むしろ、住む場所をありがとう。 トーナ:.........この世界の脅威が去るまでの短い間だけど、よろしくね、ラリマー。.........あのね、ラリマー。その脅威のことなんだけどね。 ラリマー:あぁ、なにか知ってるの? トーナ:鱗石からの情報だと......絶望の力っていうのが増しているみたいでね。 ラリマー:絶望の、力。 トーナ:その絶望は、負の感情を持つ者の心につけ込んで肉体を奪うらしいの。 ラリマー:肉体を奪う.........それは厄介だな......。 トーナ:えぇ。つまりそれは、この国の住人が脅威になる、ということ。.........場合によっては友達や仲間を.........排除しなければならない。 ラリマー:............。そうならないよう、僕にできる限りのことはする。 トーナ:このことだけはね、ラリマー。あなたにしか言ってないの。もし、他の人が絶望は負の感情を持つ者を脅威にかえる、なんて知ったら、きっとみんな疑いあってしまうから。だから、このことだけは、秘密にしておいて。 ラリマー:そうだね。それがいい。 トーナ:うん。.........ねぇラリマー。 ラリマー:なに? トーナ:アイトには感情ってあるの? ラリマー:え?そりゃああるさ。感情がないと、世界を守れない、と思う。 トーナ:ううん、そうじゃなくて。その......恋愛感情、とか......。 ラリマー:恋愛感情......?あー、それはどうだろう。どうしてそんなこと聞くの? トーナ:アイトはいずれ、この世界から去ってしまうでしょう?それなら、もし、誰かに、この世界で恋をしてしまったら、どうするのかなって。 ラリマー:.......そうだなぁ。たぶん、恋愛感情ってのは、ないんじゃないかなぁ。恋愛感情ってのは、誰かに対してドキドキしたり、ずっと一緒にいたい、とか想う感情だろ?............たぶん、ない、と思う。 トーナ:.........そっかぁ。 ラリマー:.........トーナ? トーナ:うらやましいな、って思うの。フィーナとルカのこと。フィーナもルカも、好きな人ができてから、すごく変わった。臆病で塞ぎ込みがちだったフィーナは明るくなって大勢の前で唄をうたえるようになった。ルカは無気力でやる気のないやつだったのに、フィーナと出会って、努力家になって今や国1番の戦士。.........恋ってすごいんだなって。 ラリマー:あの二人、そんなに変わったのか。 トーナ:うん。すごいよ。それにね、2人ともすごく楽しそう。私も恋、してみたいなって。 ラリマー:恋、ねぇ。 トーナ:ねぇ、ラリマー。私はこの国の住民として、世界を守ってってお願いしたけど.........私個人のお願い......聞いてくれる? ラリマー:...............。 トーナ:あなたがいる期間だけでいい。あなたに、恋、してもいいかな......? ラリマー:............それはダメだよ、トーナ。君が辛くなるだけだ。 トーナ:いいの。辛いのもひとつの恋の形だと思うから。 ラリマー:.........僕はいずれこの世界からいなくなるし、記憶だって失う。やめといた方がいい。 トーナ:...............えへへ、変なこと言っちゃってごめんね!そうだよね!じゃ、そろそろ寝よっか!ラリマーは明日から大変だし、しっかり修行、頑張ってね!おやすみなさい! ラリマー:トーナ............。...............おやすみ、トーナ。 : 0:パトロールを終えたドルーナ : ドルーナ:さて、今日はそろそろあがるか。 フィーナ:お姉ちゃん! ドルーナ:あぁ、フィーナか。どうした? フィーナ:あ、あのね!今夜、お姉ちゃんの好きなマリンハーブのパスタ作ってみたの!だから、家によってご飯食べていかない? ドルーナ:...............ありがとう、フィーナ。だけど、私はもう今夜分のご飯は用意していてな。すまないが、このまま真っ直ぐ家に帰るよ。 フィーナ:.........お姉ちゃん、どうして私たちのこと避けるの......? ドルーナ:.......避けているつもりはない。 フィーナ:避けてるよ!......ルカがいるときは絶対。ねぇ、お姉ちゃん.........ルカのこと、嫌いになっちゃったの?それとも......私のこと? ドルーナ:そうじゃないの!.........フィーナ、あなたはもう頼るべきは私じゃないでしょ。いつまでも私に甘えてこないで。 フィーナ:おねえ.......ちゃん......? ドルーナ:......ごめん。帰る。フィーナ、今日の唄も素敵だった。またな。 フィーナ:おねえちゃん......っ。 : 0:マリンポリス訓練場 : ラリマー:戦いの唄「襲撃」 ルカ:っとぉ!護りの唄「大樹」 ラリマー:そう来ると思った、ここだ、戦いの唄「大地の怒り」 ルカ:なにっ!?ここで下から攻撃....っ!?ぐあっ!! ラリマー:僕の勝ちだ、ルカ! ルカ:くっそ!負けたぁ.....! フィーナ:ルカ、ラリマーさん!お疲れ様!マリンハニーのクッキー持ってきたよ! ルカ:おぉ!フィーナ、サンキュ!ちょうど休憩しようと思ってたんだよ! ラリマー:フィーナ、ありがとう。いただくよ。 フィーナ:どうぞどうぞ!.........それにしても、ラリマーさん、すごく強くなったね! ルカ:ホントだよ......まさか1ヶ月で抜かされるとは思ってもなかったぜ......。 ラリマー:ルカの教え方が上手いからだよ。おかげですぐ身についたさ。 ルカ:へへっ。さすがだよな、ここまで飲み込みが早いとは。ま、おかげで俺もいいライバルができて強くなれてる気がするよ。 フィーナ:ルカ、最近ラリマーさんのことばっかり話しててね。ここをこうすれば強くなれるなー、とか、アイツのここをこう攻めれば勝てるなー、とか、ずっと話してるの。 ルカ:ばっ!フィーナ!言うなって! ラリマー:へーえ?だいぶ気に入ってくれてるみたいで嬉しいな? ルカ:うるせ!にやにやすんな! ラリマー:にしても、ここの国の生活はいいもんだな。1ヶ月暮らしてきたけど、戦闘訓練が無駄になるんじゃないかってくらい平和だし、住人も穏やかで皆いい人ばかりだ。 ルカ:そりゃそーだろ。フィーナの癒しの唄があるからな、この国は。 フィーナ:大げさだってば。 ラリマー:大げさなことないよ。1ヶ月前に聞いた時、この国の平和はこの唄で護られてるんだなって感じた。君は最高の唄姫だよ、フィーナ。 フィーナ:ちょっと!や、やめてよ2人して!恥ずかしいからっ! ルカ:おいラリマー。あんま褒めんな。照れてるフィーナを見られるのは俺だけだ。褒めんな、見んな、あっち向け。 ラリマー:お前は本当にフィーナのことになると感情の起伏が激しくなるよな。.........フィーナ、次の唄の日は明日、だったっけ? フィーナ:うん!明日はね、1年でも特別な唄の日なの! ラリマー:特別な唄の日? ルカ:聖なる唄の日って言われてる。鱗石がこの世界を創ったとされる日だ。 フィーナ:聖なる唄の日はね、家族や恋人、友達と集まっておいしいごちそうを囲んだり、おうちをキラキラした石や貝殻で飾ったりして、お祝いするんだよ! ラリマー:あー、だから最近町がキラキラしてるのか。そーいや、トーナもいろいろ張り切ってたな。 フィーナ:そうだ、トーナちゃんとはどうなの?進展とかあった? ラリマー:えっ!?し、進展!? ルカ:そーだよなー、同じ家に1ヶ月も住んでんだぞ?もう付き合ってんの? ラリマー:付き合ってないって!僕はそういうのはないから! フィーナ:ドキドキしたりとか、しないの......? ラリマー:僕はアイトだ。そういう感情は持たない。 フィーナ:そっかぁ。 ルカ:つまんねぇなぁ。 ラリマー:つまんなくて結構!ほら、ルカ!もう休憩はいいだろ!もう1回、やるぞ! ルカ:はいはい。っしゃあ、次は勝ちますか!! フィーナ:2人とも、頑張ってね!私、家で唄の練習してるから! ルカ:おう。何かあったらすぐ呼べよ。 フィーナ:はーい! ラリマー:本当にフィーナはいい子だよね。 ルカ:あったりまえだろ!フィーナは見た目も良いし中身も良い。健気だし謙虚だし笑顔も可愛くてそれでいて、 ラリマー:そうだな、本当に素敵な子だと思うぞ。 ルカ:さえぎんなよ、まだまだフィーナの良いとこ1割も話せてないぜ? ラリマー:毎日聞いてるんだから、それ全部合わせて全部だ。それでいいだろ。....あれ?ルカ、そんなブレスレットしてたっけ? ルカ:おう、これか?最近また付け始めたんだよ。お前がこの世界に来たから、襲い来る驚異に負けないようにってな。 ラリマー:へぇ..。黒い石...だな。 ルカ:ブラックストーンって呼ばれる魔よけの石らしい。一時期国民の間で流行ったんだよ。この石をみにつけると悪しきものから護ってくれる、ってな。 ラリマー:ふぅん...。 ルカ:っし!じゃあラリマー!次は勝つっ!! ラリマー:おっけー、望むところだ、来い!ルカ! ルカ:戦いの唄「襲撃」! ラリマー:俊足の唄.... フィーナ:きゃぁぁぁぁぁ!!! ルカ:!?フィーナ!裏庭の方だ!ラリマー! ラリマー:あぁ! : フィーナ:あ...あ.....(腰を抜かしている) ルカ:フィーナ!....っ!!あ、あれは、クロラブカ!? ラリマー:なんだ、あの生物.... ルカ:あれは人魚を襲う生物兵器..クロラブカだ。防壁はあるはずなのになぜ.... 0:クロラブカが咆哮をあげる ルカ:今は考えてる暇はねぇ!ラリマー!フィーナの護衛を頼む!俺がやつを撃つ! ラリマー:わかった! ルカ:闘いの唄「咆哮」! ラリマー:フィーナ、大丈夫かい? フィーナ:う...う.....。 ラリマー:フィーナ、大丈夫だ、落ち着いて。 フィーナ:クロ....ラブカ.....あ、あ.....。 ラリマー:っ!フィーナ、大丈夫、ルカが追い払ってくれるから。 ルカ:闘いの唄「激流」!! クロラブカ苦しそうに悶えている。 ルカ:いける、トドメだ!闘いの... 0:クロラブカが鋭い咆哮をあげた ルカ:ぐあっ!なんだ、この声は...っ! ラリマー:ルカ!上だ! ルカ:っ!!っぶねぇ! クロラブカがもう一体、ルカの上から突進してきた。 ラリマー:もう一体居たのか....いや、違う...まだ後ろに....もう一体!!! ルカ:仲間が控えてやがったのか..合計..3体.... ラリマー:ルカ!僕も攻撃にまわる!護りの唄「防壁」 フィーナの回りを水のバリアがはられた。 ラリマー:フィーナ、君のことは必ず僕らが護るから。うおおお!闘いの唄「襲撃」! ルカ:ラリマー、奥の一体を頼む!俺はこっちの2体を.....っ!?一体、どこへ....? ラリマー:ルカ!後ろだ!! ルカ:くっ!(ルカとラブカがぶつかり合う)油断..した! ラリマー:闘いの唄「大地の怒り」! 0:地中からの攻撃がラブカ一体にあたるが、もう一体はそれを抜いてフィーナへと襲いかかる。 ルカ:っ!!1体抜けた!フィーナっ!!危ないっ!!! 0:クロラブカの攻撃があたり、防壁が壊される。 ラリマー:っ!防壁が...っ!フィーナ!!逃げて!! 0:もう一度、クロラブカが襲いかかろうとした時 ドルーナ:危ないっ! 0:ドルーナが駆けつけ、フィーナを守る。 ルカ:ドルーナ! ドルーナ:....!クロラブカがこんなに...!?フィーナ、怖かっただろう、私も戦おう! フィーナ:あ、あ.....おねえちゃ....! ドルーナ:はぁぁぁぁぁ!闘いの唄「激流」! ルカ:ドルーナ、助かった!頼む、1体撃ってくれ! ドルーナ:わかった! ラリマー:よし、たたみかけるぞ!!闘いの唄「英雄の剣」! ルカ:任せろ!闘いの唄「蒼龍」 ドルーナ:闘いの唄.....「深海の炎」!! 0:クロラブカ3体、攻撃を受け逃げていく。 ラリマー:....よかった、撃退、できた。 ルカ:こんなに群れで来ることねぇのに...なんで..... ドルーナ:.........フィーナ、無事... 0:1体が急に方向転換して、フィーナに突進してきた。 ルカ:なっ!!1体戻ってきやがった…!やべぇ! ラリマー:間に合わ.... ドルーナ:フィーナっっっっ!!!! 0:フィーナに1番近いドルーナが防ごうとするが.... ドルーナ:っ!?動かな…(ドルーナの動きがとまる) フィーナ:や...や....いやぁぁぁぁぁっ!! トーナ:護りの唄「防壁」 0:クロラブカの攻撃はトーナの防壁に防がれた。 トーナ:遅くなってごめんっ!フィーナ!大丈夫っ!? フィーナ:トーナ、ちゃん.... ルカ:助かった!闘いの唄「襲撃」! ルカの攻撃に、クロラブカは逃げていった。 ルカ:フィーナっ!無事か! フィーナ:はぁ、はぁ、はぁ....。 トーナ:ごめんなさい、ドルーナと一緒だったんだけど...私泳ぐの遅いから、すぐに駆けつけられなくて...!! フィーナ:うっ..うぅっ...。 ドルーナ:.....っ! ルカ:怖い思いさせてごめんな、フィーナ。 フィーナ:.......うっひっく...。 ラリマー:トーナ、助かった。ドルーナも... ルカ:ドルーナっ!!てめぇ、どうして攻撃の手を止めたっ!! ドルーナ:っ!ち、違う.... ラリマー:ルカ? ルカ:俺は見てたぞ...!お前が1番近かったのに、フィーナが襲われるのを分かってたのに!手を止めたよな!! トーナ:ル、ルカ、落ち着いて! ルカ:なんで手を止めた。トーナが護ってくれなきゃ、大変なことになってたんだぞ...! ドルーナ:それ、は.....。 ルカ:どんな事情があれ、誰であろうと護るのがマリンポリスの仕事じゃねぇのかよっ!!ドルーナ、お前、最近フィーナや俺を避けてるよな?憎んでんだろ?幸せになった俺とフィーナを!!憎んでるからこんなことができるんだろ!!! ラリマー:おい、ルカ! フィーナ:ル、ルカ....やめ... ドルーナ:......ルカ、お前の目に私はそう写っているということか。 ルカ:そーだよ!醜い嫉妬なんかしてんじゃねぇよ!! ドルーナ:.....そう、か。.....っ!(何か言いたいのを堪えて去っていく) フィーナ:お姉ちゃんっ! ルカ:ずっと感じてたんだ...。アイツが俺たちを避けるのは、嫉妬してるからって。....だからって、自分の妹を見殺しにするか!?なんなんだよ、アイツ....っ! トーナ:ルカ、やめて!ドルーナがそんな事するはずないでしょ! ルカ:だってアイツは!守れる攻撃だったのに、動きを止めたんだぞ!?そのままフィーナを襲わせた!マリンポリスとしても、姉としても、おかしいだろ!!! ラリマー:おい、落ち着けって...... : フィーナ:ルカ、どいて。 : ルカ:フィー、ナ....? フィーナ:私を守ってくれてありがとう。いろいろ疲れちゃったから、今日はもう休むね。 ルカ:フィーナ、怖かったよな、ごめんな、怖い思いさせて...あとで部屋になにか甘いもの持ってくから..... フィーナ:ううん、大丈夫。明日まで、誰も部屋に入ってこないで。 ルカ:えっ....フィー...... フィーナ:おやすみなさい。 トーナ:.......あんだけ怖い思いして、ドルーナのことも思うところがあるんだと思うわ。明日は大切な唄の日だし、そっとしておきましょう....。 ルカ:........あ、あぁ....。 : 0:トーナの家 : トーナ:ドルーナとフィーナの両親はね、クロラブカに殺されたの。 ラリマー:え?そー、なの? トーナ:かなり酷い殺され方だったみたい。あの二人は両親に守られて生きのびたけど、その時のトラウマはそうとうのものよ。 ラリマー:それ、ルカは知ってんのか? トーナ:わかんない。でも今日の態度を見るに......知らなかったのかも、ね。 ラリマー:.......だから、ドルーナの動きが止まった、のか? トーナ:それもわかんない。トラウマで動けなかったのか、それともルカの言ってることが本当なのか....。 ラリマー:ドルーナ...。 トーナ:さ、ラリマー。今日はもう寝ましょう。明日は特別な唄の日。 ラリマー:そうだな。またクロラブカってやつが襲いに来る可能性も...... トーナ:たぶん、明日が、この世界の脅威の日になる気がする。 ラリマー:........え? トーナ:鱗石がなんだか、怯えてるような、驚異に備えてるような、そんな感じがしたの。 ラリマー:鱗石が? トーナ:........ラリマー。今夜だけ、くっついて寝ても、いいかな? ラリマー:え? トーナ:ごめん、不安なの。すごく。ただ近くにいて欲しいだけなの。嫌な予感がして、怖くて、不安で......っ! ラリマー:......わかった。 トーナ:ありがとう。........えへへ、なんか不思議だよね。私たち人魚は、陸にいる人間と違って体温は感じないはずなのに.....すごく.....暖かい。 ラリマー:トーナ、大丈夫。必ず僕がこの世界を守るから。安心して。 トーナ:ありがと....ラリマー........好き、だよ.......(眠りに落ちていく) ラリマー:ありがとう、トーナ。 : 0:次の日 : ルカ:ラリマー、いいか。今日は1年で1番大きな唄の日だ。こういう日にトラブルやアクシデントは付き物だ。昨日クロラブカの襲撃もあったし、何があるかわからねぇ。いいか、今日が終わるまで一瞬たりとも気を抜くなよ。 ラリマー:........ルカ、お前寝てないだろ。 ルカ:......寝れるかよ。結局さぁ!フィーナはあれから今朝まで部屋から出てこなかったし、一言も話してくれないし、元気なさそうだし、どーしたらいいんだぁぁぁぁ! ラリマー:........唄の日が終わったら、ちゃんと話し合え。 ルカ:......そう、だな。 トーナ:ラリマー!ルカ!もうすぐ始まるから、位置について! ルカ:よし、何があってもフィーナのことは絶対守る!!行くぞ、ラリマー! ラリマー:おう! トーナ:あ、ごめん、ラリマーだけちょっといいかな?鱗石のことで。 ラリマー:あぁ、わかった。悪い、ルカ、すぐに行くから先に行っててくれ。 ルカ:わかった、遅れんなよ! トーナ:ごめんね、ラリマー、こっち! : 0:舞台裏の小さな物置部屋 : ラリマー:トーナ?こんなとこに何の用だ? トーナ:ごめんね、ラリマー。鱗石のことでって嘘ついちゃって。ちょっとだけ、2人になりたかったの。 ラリマー:本番に遅れないように頼むよ。 トーナ:うん、大丈夫。あのね、もし今日、大きな脅威が起こってそれをおさめたら......ラリマーはもう、いなくなっちゃうんだよね?だから......今日が最後になるかもしれないから...... ラリマー:トー.... 0:(トーナ、ラリマーに抱きつく) トーナ:こたえなくていいから。伝えるだけ、伝えさせて......やっぱり私、あなたのことが好き。好きになってしまった....。 ラリマー:トーナ...., トーナ:だから.......... : トーナ:ごめんね。眠りの唄「深き眠り」 : ラリマー:っ!トーナ...くっ....!(その場に倒れる) トーナ:そこで、眠っていて。全てが終わるまで。 : 0:ステージ : フィーナ:みなさん、お待たせしました。これより、聖なる唄を........ここステノアに住む皆様へ、そして、この世界を創造した鱗石へ、捧げます。それでは、聞いてください。 : フィーナ:癒しの唄「天使の唄声」 : 0:フィーナ歌い始める。 : ルカ:おい、ラリマーのやつ、まだか....! トーナ:ルカ! ルカ:トーナ!?ラリマーはどうした!? トーナ:ごめんね、詳しくは言えないけど....脅威の源だと思われるところへ行ってもらってる。 ルカ:は?なんだって?もしかしてクロラブカがまた!? トーナ:ううん、違うけど、でも大丈夫だから。ルカはフィーナのことをしっかり護って。 ルカ:お、おう。トーナが言うなら....。 トーナ:......ちょっと私、皆に伝えなきゃ行けないことあるから、言ってくるね。 ルカ:あーおい、トーナ。 : 0:トーナ、フィーナが唄うステージへ上がりフィーナへと近づく。 : フィーナ:....?トーナちゃん? トーナ:フィーナ。ごめんね、あなたの素敵な唄を中断させてしまって。でも、言わなきゃいけないことがあって。 フィーナ:どうしたの?言わなきゃいけないこと? トーナ:フィーナ。今日、私は。..........この国を壊す。 フィーナ:........っ!? : トーナ:絶望の唄『最期の黒色(こくじき)』 : フィーナ:あぁっ!?う…ぁ…っ! ルカ:トーナぁぁぁぁっ!!!(ルカが飛び出してくる) トーナ:縛りの唄「硬直」 ルカ:がっ!?(ルカの動きが止まる) フィーナ:なに、これ......黒い泡が...っ!トーナちゃ........う、うごけな...... トーナ:絶望を、もっと!絶対をっ!キャハハハハっ!! ルカ:くそ、こんな縛りごとき、すぐに解いてっ!.........っ!?なんだ、黒い泡の威力が増して......っ!ブレスレットが....っ! トーナ:いまや国民の半分以上が身につけているブラックストーン。その石はね、絶望を増幅させる力があるのよ。 フィーナ:トーナちゃん、どうして...... トーナ:あんたがそれを言う?全ての元凶はあんたよ、フィーナ。 フィーナ:えっ......? トーナ:もともとこの国の唄姫になるのは私だったはずなの......!私が先に、目指してたのに.......っ! フィーナ:..........っ! トーナ:私はこの国を変えようと、癒そうと、必死に癒しの唄を練習して、上手くなるために努力して.......だけど、あんたが私の真似をして何気なく唄った癒しの唄を、世間はもとめた...そこから、世間はあんたのことを唄姫と崇めて、たたえて、愛して......っ!!!この国は変わっていった!あんたを中心にっ!!!必死に努力した私なんか見向きもせず!!............みんな、みんな、私のことなんか見てくれなかった。誰もが口を開けばフィーナ、フィーナ、と。私が恋した人たちも......みんな、フィーナを愛した......。私だって!この国を癒すためにあんなに頑張ってきたのにっ!みんなに、愛されたかったのに........。 フィーナ:トーナ、ちゃん........。 トーナ:だけどっ!黒蛇様だけは私を見てくれた!必要としてくれた!.......だから私は、黒蛇様のために、絶望をささげるの。 0:(トーナ、フィーナの首を絞める) フィーナ:あぁっ......!トー....ナ、ちゃ........。 ルカ:やめろ、トーナ、やめろっ!! トーナ:私を見てくれない世界なんていらない!!こんな世界!全部壊してやる!キャハハハハ!!私と!あの人だけの!2人だけの世界にしてやる!!アハハハハっ!!! : ラリマー:闘いの歌「襲撃」! : トーナ:っ!?ラ、ラリマー!? 0:(トーナ、手を離す) フィーナ:げほっ、げほっ。 ラリマー:トーナ、君だったんだね。この世界の脅威........絶望は。 トーナ:どうしてラリマーが!?私が解かないと目を覚まさないはず....! ドルーナ:そもそも、ラリマーは君の眠りの唄にかかっていないんだよ、トーナ。 トーナ:ドルーナ......どういうことよ。 ドルーナ:ラリマーには、あらかじめ私の守りの加護の唄を聞かせていた。この唄を解くまで、彼にあらゆる唄は通用しない。 トーナ:............いつ?いつあなた達は手を組んだの。 ラリマー:昨日の夜だ。君が眠ったあと、僕は鱗石の元へ行った。 : 0:回想、鱗石の祠 : ラリマー:........あれ、君もここにいたのか、ドルーナ。 ドルーナ:っ!........あ、ラリマーか....。 ラリマー:そんなに驚くなよ......。 ドルーナ:すまない。少し、気が動転していてな。 ラリマー:今日のクロラブカの件? ドルーナ:あぁ。それもそうだし、ルカから言われたことも、な。 ラリマー:ふぅん。まぁ、アイツもかなり動転してたからな、フィーナもああだし..。 ドルーナ:........私を責めないのか。 ラリマー:責めないよ。ドルーナは必死でフィーナを守った。だが、何かしらの原因で動きが止まって、フィーナを危険な目に合わせてしまった、ってとこだろ? ドルーナ:.....わかって、くれるのか。 ラリマー:ドルーナがフィーナたちを見る目はいつも優しかった。必死に強くなろうと頑張ってるフィーナたちを見守っている、そんな眼差しだ。 ドルーナ:そんなことまで分かるんだな。 ラリマー:なぜだかね。そういう目を、どこかで見たことがある気がするんだ。....なぁ、ドルーナ。君にひとつ聞きたいことがあるんだ。 ドルーナ:なんだ? ラリマー:実際のところ、ドルーナはあの2人をどう思っているんだ? ドルーナ:……引かないで、聞いてくれるか? ラリマー:あぁ。 ドルーナ:私はね、どちらもすごく大切で、大好きなんだ。特にフィーナはね。かわいい私の一番の存在だ。幼少期に私たちは両親を亡くし、それからずっと二人で力を合わせて生きてきた。姉である私がしっかりしなければ、と、私はフィーナが不安にならない様に強くあろうとした。フィーナはずっと私を頼ってくれて、いつも一緒にいてくれて、常に私の後ろで笑っていてくれた。それが心地よくて。このままずっとフィーナを守っていきたい、と思っていたんだ。 ラリマー:今は、ちがうのか? ドルーナ:今、フィーナを守るべきなのは私じゃない。ルカだ。 ラリマー:……。 ドルーナ:ルカは、あいつはちょっと調子いいところはあるが、一途で努力家で誠実ないいやつだ。彼なら、フィーナのことを任せられる。……最初はそう思ってな。二人を引き合わせて、私の思い通り、二人はひかれあってくれたのだが…。 ラリマー:どうしたんだ? ドルーナ:どうやら、私は思っていた以上にフィーナに依存していたみたいでな。フィーナが私の元を離れ、ルカに頼るようになってしまったのが…寂しくて。フィーナが頼りにし、安心した笑顔を向ける対象が、私ではなくなってしまったことが……耐えられなかった。 ラリマー:なるほど、ルカに嫉妬してしまった、と。 ドルーナ:嫉妬、なのかもしれないな。だが、フィーナとルカが二人で頼り合いながら生きていく、それがフィーナの幸せなんだ。だから、フィーナも私を頼らない様に、私もフィーナから離れられるように、そう、しようと距離を置いて……。 ラリマー:どうして? ドルーナ:え? ラリマー:どうしてフィーナはドルーナを頼っちゃいけないんだ? ドルーナ:それはだって、頼る相手はルカであって…。 ラリマー:だから、なんで頼る対象が一人じゃなきゃいけないんだ? ドルーナ:…! ラリマー:フィーナがルカと結婚したとしても、君たちが姉妹なのには変わりないだろ?どうして、姉に頼っちゃいけないなんてこと言うんだよ。ドルーナも、フィーナと離れなきゃって思うんだよ。 ドルーナ:そ、れは…。 ラリマー:難しく考えすぎなんじゃないか?僕からしたら、フィーナはただ、昔からのように姉である君を頼りにしているだけだと思うんだけどね。 ドルーナ:……… ラリマー:ルカだって、君のことを邪魔になんか思っていないし、たまには3人でご飯食べたいなってこないだ言ってたし。姉妹がこれまで通り、仲良くすごして、何が悪いんだ? ドルーナ:……そう、か。……私は…ずっとあの子の姉でいていいのか…。 ラリマー:いていいとか、そんなんじゃなくて、ずっと変わらない関係だろ?もっと大事にしろって、そこを。 ドルーナ:そう、だな。…そうだよな。 ラリマー:明日、唄の日が終わったら、3人でちゃんと話せよ。しっかり、腹を割って。 ドルーナ:ありがとう、ラリマー。そうするよ。 ラリマー:よし、じゃあ僕はそろそろ戻って、明日に備えようかな。トーナが、明日何か起こるかもしれないって言ってたし。 ドルーナ:ラリマー。 ラリマー:ん?なに? ドルーナ:トーナには気をつけろ。 ラリマー:……どうして? ドルーナ:クロラブカに襲われたとき、私の動きを止めたのはおそらくトーナだ。彼女はたまに…何を考えているのかわからないときがある……ただの思い過ごしかもしれないが。 ラリマー:……わかった、注意しておく。 ドルーナ:ライマー、これを。……守りの加護の唄「神の祝福」。…催眠や縛りといった唄を無効化する防衛の唄だ。これなら、強力な唄からも護られるだろう。 ラリマー:ありがとう、ドルーナ。 ドルーナ:私がその加護を解くまで、君を守り続ける。…ただ、強力であるがゆえに、その加護を誰かに付与している間、私は唄を使うことができない。 ラリマー:え!?ダメだ、それは危険だよ…! ドルーナ:だからラリマー。私が君を守るから、君は私を守ってくれ。 ラリマー:……!……わかった、全力で守る。 ドルーナ:明日は、頼んだぞ。 : 0:回想終了。 : トーナ:あはは、なによ、それ…。あなたも私を見てくれないのね、ラリマー…。 ラリマー:この世界を守るのが僕の役目だ。この世界を壊すというのなら、容赦はしない。 トーナ:やっぱり、私には黒蛇様しかいない…!もっと!もっと絶望の力を……! 0:黒い泡が大きくなっていく フィーナ:あああぁぁぁっ!! ルカ:ぐあああああっ!! ドルーナ:やめろ!これ以上好き勝手させないっ!ラリマー! ラリマー:闘いの唄、「大地の怒り」! トーナ:きゃああぁぁぁっ!! 0:絶望の力が弱まる トーナ:な…ぜ…?どうしてこの絶望の中であんたは動くことができるのドルーナ…。みんな、絶望に飲まれて動けなくなっているのに…! ドルーナ:そんなの決まっているだろう!私の大事なフィーナを!ルカを!守るためだっ! フィーナ:…おねえ、ちゃん…。 ルカ:ドルー…ナ…。 ドルーナ:私が守る!お前の絶望ごときに屈するわけにはいかない! トーナ:ちっ。じゃああんたが屈するような大きな絶望を呼び起こすしかないわ!絶望の唄「最期の黒色(こくじき)」! ラリマー:ドルーナ、僕は大丈夫だ。解いて。 ドルーナ:わかった、加護の唄、解除!……闘いの唄「激流」! トーナ:あああぁぁぁっ! ドルーナ:今だ、フィーナ、唄えるか? フィーナ:うん、大丈夫っ! ドルーナ:行くぞ。……癒しと守りの唄… フィーナ:浄化の唄「慈愛」 トーナ:いやああああぁぁぁぁぁぁぁ!!! ラリマー:黒い泡が…消えていく…。 ルカ:くっ…はぁ、はぁ…。 フィーナ:トーナちゃんっ!しっかり、しっかりして! トーナ:……失敗、しちゃったかぁ。 ドルーナ:トーナ、お前は…絶望の力に操られて、こんなことをしたのか。 トーナ:操られて、うーん、そうねぇ…。操られた、というよりかは、従ってた、ってとこかな。 ラリマー:従っていた…? トーナ:私は自分の意志で、絶望の力を受け入れたの。あの日、あのすべてを恨んでいた夜。眠っている私に、黒蛇様という存在が語り掛けてきたの。この世界が憎いか、この世界を壊さないか、って。 ラリマー:黒蛇様…。 トーナ:私を必要としてくれたの。だから、私はその存在を受け入れた。そして、黒蛇様はアイトのことを教えてくれて、そのアイトが来たら絶望をささげろ、と・ ドルーナ:それで、この国中が注目するこの日に決行したわけか。 トーナ:そういうこと。……うっ!(トーナの体が少しずつ朽ちていく) フィーナ:トーナちゃんっ!体が…っ! トーナ:あーあ、肉体がもたなかったみたいね…。まあいいわ、私はこのまま消えるから。 フィーナ:そんなの嫌だよっ!まだ間に合う、癒しの唄「友愛… トーナ:やめてっ! フィーナ:っ! トーナ:私はあなたを殺そうとした。この国を壊そうとしたんだよ?なに治そうとしてるの? フィーナ:私は、トーナちゃんが消えるの、やだよ…。ごめんね、トーナちゃん、ごめん…。 トーナ:謝んないで。謝ったところで、私の気持ちは変わらないから。あんたが私のことを許したとしても、私はたぶん、あんたのこと許せないと思うから。あんたが幸せである限り、ずっとずっと、許せないと思うの。ここで生かしたところで、また私は同じことを繰り返すわ。わかるの…。この嫉妬の炎は一生消えない。だから私は、この世界にはいられない。……それはこの世界のためであり…私のためでもあるから。 フィーナ:う…うぅ…。 トーナ:私をこのまま、絶望の中で死なせて。それがきっと、黒蛇様にできる最後の恩返し。……またね、ラリマー。あなたと一緒に過ごした時間だけが…幸せだったわ…。……さようなら。 フィーナ:トーナちゃん、トーナちゃんっ!!! 0:トーナは泡に包まれ、消えていった。 : 0:翌日 ドルーナ:ラリマー。 ラリマー:よう、ドルーナ。 ドルーナ:そろそろ、行くのか? ラリマー:そうだな。もう時期、転生が始まる。 ドルーナ:そうか......すまない、私しか見送れないみたいだ。 ラリマー:仕方ねぇさ。フィーナは今、トーナを弔いの唄で送り出してる。ルカもその護衛。......トーナもこれで、救われるといいな。 ドルーナ:大丈夫だ。フィーナの弔いの唄は、きっと届いているさ。 ラリマー:........さて、時間だ。 0:ラリマーの体が泡に包まれ始める ドルーナ:ラリマー、ありがとう。これからは3人で力を合わせて、この国を守っていくよ。 ラリマー:もう変な意地はるなよ。 ドルーナ:去り際のセリフがそれか。せっかく女の子が見送ってやってるんだ、もっと気の利いたセリフでも言ってみたらどうだ。 ラリマー:あいにく、そういう感情は持ち合わせてないんでね。どういう言葉で喜ばせようか、なんて思いつかないんだ。 ドルーナ:はははっ、ラリマーらしいな!........さよなら、ラリマー。 ラリマー:あぁ。さようなら、大切な....親友よ。 0:ラリマーの身体は泡に飲み込まれ消えていく ドルーナ:(ボソッと)せっかく恋をする気持ちを......知ることができたのにな....。 : ラリマー:あぁ.....この世界ともお別れだ。.......ドルーナ。そんな悲しそうな顔をしないでくれ。君は.......君には笑顔が1番似合うよ。フィーナのことを語っている時、とても素敵な笑顔だった......。だから僕は、その笑顔を守りたいって思えたんだ......。......これがその....感情なのだろうか....。......わからない、な。あぁ、この感情も、この記憶も....全て消えてしまうのか。........嫌だなぁ。でも、世界はどんどん危険になっていっている......早く次の世界も救わなければ。さぁ、鱗石。次はどの世界を救えばいい?そうか。じゃあ、その国へ。また、生まれ変わろうか。 : 0:(終)