台本概要
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タイトル | 少女とかいじゅう |
---|---|
作者名 | 天道司 |
ジャンル | 童話 |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
それは、優しさだよ。
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
語り | 不問 | 1 | 物語の語り手 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
語り:特別に好きな人はいない。
語り:特別に嫌いな人もいない。
語り:他人に興味を持てない少女がいた。
語り:
語り:ある日、少女は、キノコひろいに出かけた森の中で、虹色の小さな卵を見つけた。
語り:少女は、卵を家に持ち帰り、あったかい毛布でくるみ、ずっと温めた。
語り:何も産まれないかも知れない。
語り:だけど、何かが産まれるかも知れない。
語り:胸を踊らせ、ずっと温めた。
語り:
語り:何日も何日も、少女が何を思って卵を温めていたのか、それは誰にもわからない。
語り:ただ、言えることは、人に興味を持てない少女は、虹色の小さな卵には、興味を持てたということだ。
語り:
語り:少女の想いに応えるために、少女にどうしても会いたくて、卵の中の小さな命は、声を上げ、手足をばたつかせ、力いっぱい殻を破る努力をした。
語り:そして、卵にヒビが入り、中から一匹の小さな『かいじゅう』が出てくる。
語り:「産まれてきてくれて、ありがとう」
語り:少女は、かいじゅうを愛を込めて抱きしめた。
語り:かいじゅうは、心から感じた。
語り:『産まれてきて、よかった』
語り:
語り:少女は、かいじゅうのおしっことうんちの処理をし、朝昼晩と欠かさず、ご飯を用意した。
語り:そして、毎晩寝る前に、絵本を読み聞かせた。
語り:少女の言葉も、絵本の内容も、かいじゅうには理解できなかったかも知れない。
語り:それでも…。
語り:『大切にされている』
語り:そう感じることができたから、かいじゅうにとって少女と過ごす毎日は、とても楽しくて、とても幸せで、ずっと続けば良いと、いつも願っていた。
語り:
語り:しかし、そんな幸せな日々は、長くは続かなかった。
語り:かいじゅうは、成長し、歩けば簡単に人を踏みつぶせてしまうほど大きくなり、口を開くたびに火を吐くようになり…。
語り:その爪と牙は、見る者すべてを恐れさせるほど鋭くとがっていった。
語り:
語り:だが、かいじゅうは、誰かを傷つけたことは、一度もない。
語り:ただ、かいじゅうは、少女と一緒に過ごせるだけで、良かった。
語り:
語り:それなのに、人々は、かいじゅうの存在そのものに恐怖し、かいじゅうに刃を突き立て、弾丸を放ち、爆弾を落とし、ようしゃなく傷つけた。
語り:
語り:かいじゅうは、血を流し、涙を流した。
語り:「痛い」と叫びたかったし、逃げることもできた。
語り:それでも、「痛い」と叫ぶことも、逃げ出すこともしなかった。
語り:
語り:「痛い」と叫べば、その時に口から漏れ出た火で、誰かを傷つけてしまうかも知れないから…。
語り:誰かを傷つけてしまえば、少女に嫌われてしまうかも知れないから…。
語り:大好きな少女がいなくなってしまうかも知れないから…。
語り:ぐっと…。ぐっと、耐えた。
語り:
語り:どれだけ血を流し、傷ついても、かいじゅうは死ななかった。
語り:少女ともっと一緒にいたかったから…。
語り:今日も少女が作ってくれるご飯を楽しみにしていたから…。
語り:今夜も少女の絵本の読み聞かせを聴きながら、優しい気持ちになって眠りたかったから…。
語り:かいじゅうは、死ねなかった。
語り:かいじゅうは、不死身だった。
語り:少女のことが好きで…。好きで…。たまらなくて…。
語り:愛していたから!
語り:
語り:少女は、かいじゅうが無害であることを人々に訴え、叫んだ!
語り:人々は、少女の言葉を信じなかった。
語り:人々は、かいじゅうの外見の恐ろしさにしか目を向けられず、傷つけることをやめなかった。
語り:
語り:かいじゅうが痛みに耐え、傷つく姿を見て、少女は涙を流した。
語り:かいじゅうを見つめる少女の姿は、とても辛そうで、痛々しくて、そんな姿をこれ以上見ていられなくて、かいじゅうは不死身であることを捨てた。
語り:「 」
語り:かいじゅうは、死ぬ前に、心の中で少女に何かを伝えた。
語り:この世界で、たったひとり、少女にだけは、その言葉が何かがわかった。
0:―了―
語り:特別に好きな人はいない。
語り:特別に嫌いな人もいない。
語り:他人に興味を持てない少女がいた。
語り:
語り:ある日、少女は、キノコひろいに出かけた森の中で、虹色の小さな卵を見つけた。
語り:少女は、卵を家に持ち帰り、あったかい毛布でくるみ、ずっと温めた。
語り:何も産まれないかも知れない。
語り:だけど、何かが産まれるかも知れない。
語り:胸を踊らせ、ずっと温めた。
語り:
語り:何日も何日も、少女が何を思って卵を温めていたのか、それは誰にもわからない。
語り:ただ、言えることは、人に興味を持てない少女は、虹色の小さな卵には、興味を持てたということだ。
語り:
語り:少女の想いに応えるために、少女にどうしても会いたくて、卵の中の小さな命は、声を上げ、手足をばたつかせ、力いっぱい殻を破る努力をした。
語り:そして、卵にヒビが入り、中から一匹の小さな『かいじゅう』が出てくる。
語り:「産まれてきてくれて、ありがとう」
語り:少女は、かいじゅうを愛を込めて抱きしめた。
語り:かいじゅうは、心から感じた。
語り:『産まれてきて、よかった』
語り:
語り:少女は、かいじゅうのおしっことうんちの処理をし、朝昼晩と欠かさず、ご飯を用意した。
語り:そして、毎晩寝る前に、絵本を読み聞かせた。
語り:少女の言葉も、絵本の内容も、かいじゅうには理解できなかったかも知れない。
語り:それでも…。
語り:『大切にされている』
語り:そう感じることができたから、かいじゅうにとって少女と過ごす毎日は、とても楽しくて、とても幸せで、ずっと続けば良いと、いつも願っていた。
語り:
語り:しかし、そんな幸せな日々は、長くは続かなかった。
語り:かいじゅうは、成長し、歩けば簡単に人を踏みつぶせてしまうほど大きくなり、口を開くたびに火を吐くようになり…。
語り:その爪と牙は、見る者すべてを恐れさせるほど鋭くとがっていった。
語り:
語り:だが、かいじゅうは、誰かを傷つけたことは、一度もない。
語り:ただ、かいじゅうは、少女と一緒に過ごせるだけで、良かった。
語り:
語り:それなのに、人々は、かいじゅうの存在そのものに恐怖し、かいじゅうに刃を突き立て、弾丸を放ち、爆弾を落とし、ようしゃなく傷つけた。
語り:
語り:かいじゅうは、血を流し、涙を流した。
語り:「痛い」と叫びたかったし、逃げることもできた。
語り:それでも、「痛い」と叫ぶことも、逃げ出すこともしなかった。
語り:
語り:「痛い」と叫べば、その時に口から漏れ出た火で、誰かを傷つけてしまうかも知れないから…。
語り:誰かを傷つけてしまえば、少女に嫌われてしまうかも知れないから…。
語り:大好きな少女がいなくなってしまうかも知れないから…。
語り:ぐっと…。ぐっと、耐えた。
語り:
語り:どれだけ血を流し、傷ついても、かいじゅうは死ななかった。
語り:少女ともっと一緒にいたかったから…。
語り:今日も少女が作ってくれるご飯を楽しみにしていたから…。
語り:今夜も少女の絵本の読み聞かせを聴きながら、優しい気持ちになって眠りたかったから…。
語り:かいじゅうは、死ねなかった。
語り:かいじゅうは、不死身だった。
語り:少女のことが好きで…。好きで…。たまらなくて…。
語り:愛していたから!
語り:
語り:少女は、かいじゅうが無害であることを人々に訴え、叫んだ!
語り:人々は、少女の言葉を信じなかった。
語り:人々は、かいじゅうの外見の恐ろしさにしか目を向けられず、傷つけることをやめなかった。
語り:
語り:かいじゅうが痛みに耐え、傷つく姿を見て、少女は涙を流した。
語り:かいじゅうを見つめる少女の姿は、とても辛そうで、痛々しくて、そんな姿をこれ以上見ていられなくて、かいじゅうは不死身であることを捨てた。
語り:「 」
語り:かいじゅうは、死ぬ前に、心の中で少女に何かを伝えた。
語り:この世界で、たったひとり、少女にだけは、その言葉が何かがわかった。
0:―了―