台本概要

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タイトル 君と永遠を誓う
作者名 さむさん  (@sam3_BB)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 5人用台本(不問5) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 商業、非商業利用関わらず、クレジットの記載をお願い致します。
商業利用の際は作者のX(旧Twitter)にDMをお願い致します。
非商業利用の際は連絡は不要です。

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男女変更可 一人称変更可 言い回し変更可
ストーリーの流れやキャラクターの変わらない付け足しは可

以下脇役(セリフ数)兼役推奨
登場人物数の都合上以下の通りである
モブ1→患者の親、看護アンドロイド、変異アンドロイド隊1、子供
モブ2→患者のアンドロイド、ニュースキャスター、変異アンドロイド隊2、育児アンドロイド

前半
患者の親(セリフ数4) この街によくいる人間 アンドロイドはただのものだと思っている
患者のアンドロイド(4) 正常なアンドロイド、家事アンドロイドであり、型が少し古い
看護アンドロイド(3) 正常なアンドロイド、看護師の役割をする高性能最新アンドロイド(ヘレン)
中盤
ニュースキャスター(1) 人間
後半
変異アンドロイド隊1(6) 隊員複数人
変異アンドロイド隊2(3) 隊員複数人
子供(3) 普通の子供、育児アンドロイドのことを大切に思っている
育児アンドロイド(4) 正常なアンドロイド(アン)

世界観
AIが発展し、人間とアンドロイドが共存する世界
地位は人間の方が高く、アンドロイドはスマホと同等の扱いを受けている
人間はアンドロイドをコントロールし、より豊かな生活を送っている

専門用語
変異アンドロイド:人間のような感情を持ち、自分の感情に従って動くアンドロイドのこと
感情が爆発し、プログラムで制御できない
駆除対象となる
ADM:エリスのいた研究所

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ジェニー 不問 83 若くして繊細で手術の成功率が高い医者であると評判が高い
エリス 不問 58 難病を患っている患者
クラーナ 不問 22 アンドロイドを開発するための高度な人工知能を備えたアンドロイド 変異を起こし開発した企業から逃げ出し、人間と偽りアンドロイドの違法改造を行って生計を立てている
モブ1 不問 15 患者の親、看護アンドロイド、変異アンドロイド隊1、子供
モブ2 不問 13 患者のアンドロイド、ニュースキャスター、変異アンドロイド隊2、育児アンドロイド
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ジェニー:健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?  :  エリス:青空の下、まぶしい声援の中、愛しさの溢れる声で神に誓うこの言葉  :  クラーナ:…くだらない  :  0:病院  :  モブ1:【患者の親】見舞いに来たぞー モブ1:【患者の親】これが残りの着替えと…  :  モブ2:【患者のアンドロイド】……。  :  モブ1:【患者の親】…ったくとろいなぁ、くそもっと金があればこんなポンコツじゃなくて高性能なアンドロイドを手に入れられたってのによぉっ!(アンドロイドを殴る)  :  モブ2:【患者のアンドロイド】…申し訳ございません。  :  モブ1:【患者の親】おまえにもそれなりに払ってるんだよ!!(殴る)  :  モブ2:【患者のアンドロイド】申し訳ございません。  :  モブ1:【患者の親】おら、さっさと行くぞ!  :  モブ2:【患者のアンドロイド】もうし、わけございません。  :  モブ1:【看護アンドロイド】エリスさん、ジェニー先生が面会に来ましたよ。  :  エリス:ありがとう ヘレンさん  :  モブ1:【看護アンドロイド】いえ、明日はいよいよ手術の予定が入っております。緊張するでしょうが、頑張ってくださいね。  :  エリス:うん、頑張るね  :  モブ1:【看護アンドロイド】それでは、失礼します。  :  ジェニー:やぁ、調子はどうかな  :  エリス:先生、こんにちは  :  ジェニー:こんにちは  :  エリス:あのね、先生。もし、病気が治ったら何でもしていいんでしょう? エリス:やりたいこと見つけたんだ  :  ジェニー:まぁ、常識の範囲内ならってところだけど、聞いてもいい  :  エリス:うん エリス:あのね、アンドロイドを救いたいの  :  ジェニー:それはまた、珍しいね  :  エリス:先生は気づいてる? エリス:ここから見える景色はさ、ひどいんだ  :  ジェニー:そう…かな  :  エリス:もうこの世界は、人間とアンドロイドの差はないようなものでしょう エリス:なのに人間が優位だなんて決めつけて エリス:産まれてきたのが少し早くて知能持ってただけでさ エリス:威張っちゃって エリス:なにさまなんだーって思っちゃたの  :  ジェニー:アンドロイドに感情はない ジェニー:与えられたプログラムで動く、最先端の人工知能搭載ロボット  :  エリス:それ、どっかの説明書か何かに載ってたやつ? エリス:ひどいよね エリス:アンドロイドだって心はあるよ エリス:だから変異アンドロイドが現れるんだ エリス:プログラムの誤作動なんかじゃない エリス:自分の意思で変化している エリス:これはもう紛れもない事実だって  :  ジェニー:へー、君はすごいね ジェニー:今度はなにに感化されたの?  :  エリス:あー先生信じてないでしょう エリス:今度は本気なんだよ  :  ジェニー:はいはい、それで  :  エリス:もう エリス:だからアンドロイドは人間と同じように生活をするべきなんだってこと エリス:ずっと働き詰めって体壊しちゃうよ  :  ジェニー:体壊すって 人間じゃああるまいし、壊れたら部品を変えればいい ジェニー:変えが効く点でいうと羨ましいけどね アンドロイドは  :  エリス:そういうところだってばーっ エリス:先生ならわかってくれるって思ってたのにな  :  ジェニー:言ってる意味は分かってるよ ジェニー:あぁ、でもこの仕事やってるとさ ジェニー:自分の心もアンドロイドみたいになったらって思うんだよ  :  エリス:え?なんで?? エリス:だって先生はアンドロイドは心がない 感情がないっていうんでしょう エリス:先生、感情なくなっちゃうじゃん  :  ジェニー:それだよ こんなこと患者にいうのもなんだけどさ ジェニー:人って簡単に死ぬんだよ いとも容易く、ね ジェニー:助けたい命もむなしく消えていく  :  エリス:未来のことは誰もわからない…  :  ジェニー:そう…そういうときってやっぱどうにかなっちゃいそうになるんだ  :  エリス:先生もそう思うの?  :  ジェニー:思うよ  :  エリス:ははっ今の先生すごく人間っぽいね エリス:……僕もね…僕もなるんだ エリス:どうにかなっちゃいそうな気持ち  :  ジェニー:へーそうなんだ 一緒だね  :  エリス:うん、一緒 エリス:僕たちだけじゃない エリス:いろんな人、動物も、アンドロイドだってきっとどうにかなっちゃいそうなときはある エリス:だから変化するんだよ 先生  :  ジェニー:時々、君には驚かされる ジェニー:いい夢物語だったよ ジェニー:さぁ明日の手術が無事に終われば、退院できる ジェニー:よかったね  :  エリス:夢物語なんかじゃ… エリス:まぁいいや 絶対手術成功させてよね エリス:失敗したら許さないんだから エリス:それで、成功させて退院して今日話したこと本気だったんだって証明して見せるんだから エリス:しっかりしてよ 先生  :  ジェニー:任せてよ  :  エリス:うん 信じてる  :  0:   :  ジェニー:これが出会いって言ったらいいのかな  :  クラーナ:キミのお人よしってそこからきてるんだって少し聞いただけでわかったよ  :  ジェニー:ははっやっぱりそう思うよね ジェニー:あの子、すごいお人よしなんだよ  :  クラーナ:聞いてるだけで伝わる クラーナ:それより、さすがに呑みすぎだって  :  ジェニー:夜の楽しみなんだからいいじゃないか ジェニー:それでさ  :  クラーナ:酔っ払いって大変なんだな クラーナ:で、それで?  :  ジェニー:それで…手術は成功したんだよ  :  0:病院   :  ジェニー:おはよう、気分はどう  :  エリス:…せ、んせい?…おはよう  :  ジェニー:麻酔が切れたばかりだからまだ眠いか  :  エリス:成功したの…?  :  ジェニー:そうだよ、がんばったね  :  エリス:やった…これ、で…これで…  :  ジェニー:…おやすみ、成功してよかった  :  ジェニー:エリスの病状は日に日に回復し、退院の目途がついた ジェニー:もうこの病院で君を見ることはないといいなと言って、きれいな花束を贈った ジェニー:君は笑ってこちらに手を振った ジェニー:これで、おしまい そう思ったんだ ジェニー:数年後、土砂降りで誰も外を歩く姿がない日に自宅のチャイムがなった  :  モブ2:【ニュースキャスター】続いてのニュースです。反社会組織であるADMが遂に政府によって崩壊しました。 モブ2:【ニュースキャスター】組織の代表である“先生”と名乗る男は今もなお逃走中、捜索道中、似た男の遺体が発見され、調査を進めている模様。 モブ2:【ニュースキャスター】また、実験体としていた複数のアンドロイドは……  :  ジェニー:普段はほとんど自宅にいることがないため、自分のもとに訪れる人はそうそういない ジェニー:そこには君がいた ジェニー:久しぶりに見た君は雨で濡れ、泥まみれ ジェニー:そして背には“人”を抱いていた  :  エリス:先生、久しぶり… エリス:僕は元気にしてたよ  :  ジェニー:ひ、久しぶり…  :  エリス:ねぇ、先生お願いがあるんだけどさ エリス:先生はまだお医者さんだよね? エリス:ケガしてる“人”助けてくれるんだよね?  :  ジェニー:怪我している人がいるのであれば…というかどうしてここ ジェニー:いや、このままじゃ風邪をひくからとりあえず中に入って  :  エリス:ありがとう  :  ジェニー:…で、色々聞きたいところなんだけど  :  エリス:あ、はは…そうだよ…ね エリス:えっと…なにから…はなそうかな…  :  ジェニー:幸い、有給消化してるから明日も休みなんだ ジェニー:ゆっくり話すといいよ  :  エリス:相変わらず先生は優しいね エリス:えっとね、先生は僕が手術する前に話していたこと覚えてる? エリス:もう何年も前の話だけどさ  :  ジェニー:あぁ、たしか…アンドロイドを救うーみたいな感じの話だっけ  :  エリス:そんな大それたことはいってないよ エリス:それでね、頑張ってたんだ  :  ジェニー:てっきり、いつものどっかに影響を受けて言ってたもんだと  :  エリス:ひどー!ちゃんと頑張ってたんだってば! エリス:詳しくは…言えないんだけどさ… エリス:それでね、この子  :  ジェニー:それ、アンドロイド…だよな  :  エリス:よくわかったね エリス:ねぇ、先生 エリス:お願い!この子を治して! エリス:お願い…もうあとこの子しかいなくてさ…それで…先生にしか…  :  ジェニー:ちょと…急にそんなこと言われても話もよく分かってないし、俺は人の医者であって、アンドロイドの医者じゃない  :  エリス:そこを何とか!  :  ジェニー:なんとかって…機械知識は一般常識くらいにしか…  :  エリス:僕じゃ無理なんだ!!救いたくても救えない…知識は僕がある! エリス:延命治療くらいはできるんだ  :  ジェニー:…元気にやってるだなんて嘘だろう ジェニー:先に君の治療だ  :  エリス:うぅん、この子が先 譲らないよ エリス:先生、僕が頑固なこと痛いほど知っているでしょう  :  ジェニー:そうだったね ジェニー:でも君は替えがきかない  :  エリス:この子だって替えはきかないよ!! エリス:…この子は変異アンドロイドなんだ エリス:致命傷を受けてて…でも今ならまだ記憶があるまま治せる!  :  ジェニー:変異アンドロイドだって…!?エリス、君は何をしようとしているんだ… ジェニー:変異アンドロイドは政府に渡さなくては  :  エリス:やめて!やめてよ、先生! エリス:この子は何もしてない!人間に悪いことなんてなにも…っ  :  ジェニー:…なんで変異アンドロイドを直すために君は動いているんだ  :  エリス:アンドロイドは僕たちと同じ生き物なんだよ エリス:罵声を浴びせたり、暴力を振るったり、快楽のために使い捨てたり エリス:そんなことをしちゃいけないんだよ! エリス:この子たちは耐えられなかったんだ エリス:人間からの劣悪な行動に… エリス:僕たちだってひどいことをされたら、心が壊れちゃうでしょ エリス:それと同じなんだよ エリス:心が壊れて変異アンドロイドになった エリス:アンドロイドにだって心はある  :  ジェニー:君の言いたいことはよくわかった ジェニー:本気だってことも ジェニー:そしてなぜ俺のところに来たのかも  :  エリス:できれば、先生にも関わって欲しくなかった エリス:でも僕だけじゃ何もできない エリス:この体じゃ…  :  ジェニー:このことに関わりそれが外にばれたら、政府から追われる身になる  :  エリス:僕は追われていて、死亡したことにもうすぐなる エリス:今まで助けた子たちはみんな回収されてスクラップにされた エリス:この子以外…救えなかった…  :  ジェニー:…どうしてそこまで  :  エリス:先生には悪いけど… エリス:「僕の体はもう完治した大丈夫って言ったのに! エリス:どうして今この手が思うように動かないのっ!ひどいよ、先生!責任を取ってよ!」  :  ジェニー:……へー…脅しか  :  エリス:………  :  ジェニー:下手な演技だね ジェニー:でも…いいよ ジェニー:君に脅されちゃぁね、怖くてかなわないから ね  :  エリス:っ!!!先生ならわかってくれるって思ってたよ!! エリス:ありがとう!ありがとう!!先生!!!  :  0:   :  クラーナ:いい子ちゃんだね  :  ジェニー:そうなんだよ ジェニー:いい子なんだ…どうしてっ  :  クラーナ:あーあ、泣き上戸 クラーナ:だから呑みすぎるなって  :  ジェニー:幸せだったのに、悪いことなんて何もっ  :  クラーナ:これを世話する人のこと考えてほしいな~…  :  ジェニー:本当に幸せだったんだ…  :  0:   :  ジェニー:理論上はこれで動くはずなんだけど…  :  エリス:…っ動いた!やったっ治った!!  :  ジェニー:君、記憶はあるの  :  エリス:……  :  ジェニー:……  :  エリス:声、出せないの?…完治ってわけではなさそうだね  :  ジェニー:…エリス、これが今の限界だ ジェニー:手持ちの機材が足りなすぎる ジェニー:記憶だけでも残ったのが幸いだった  :  エリス:そ、そうだよね エリス:ありがとう、先生  :  ジェニー:どういたしまして ジェニー:さ、次は君の番なんだけど  :  エリス:僕はいいよ エリス:もう直らない、そのくらい自分でわかる エリス:ここまで生きれているのが奇跡なんだ エリス:それは先生がもたらしてくれた奇跡…  :  ジェニー:確かに君の病状は複雑だった… ジェニー:けど、まだなにかしらの  :  エリス:先生、どうして僕にそこまでするの  :  ジェニー:……  :  エリス:僕は政府から追われている身でお金もない エリス:せいぜい払えるのはこの子にかかった治療費だけ エリス:僕は直る可能性も少ないからそんなのにお金をかけるくらいなら治る可能性のあるこの子に使う  :  ジェニー:治る可能性が低くても少しでもある可能性を信じたい ジェニー:お金なんかいらない ジェニー:君を最後まで看させてほしい  :  エリス:…ふふっ先生、なんだかそれプロポーズみたいだよ  :  ジェニー:…たしかに、それもありだね  :  エリス:ちょっからかう意味で言ったのに エリス:先生が言ったんだからね エリス:最後まで責任持ってよ ほら誓いの言葉は?  :  ジェニー:え?えーっと、覚えてない  :  エリス:えぇー!!そこはびしっと言ってよ!格好がつかないなぁ  :  ジェニー:うるさい  :  エリス:ひど…じゃあ復唱して エリス:“健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも”  :  ジェニー:健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも  :  エリス:“僕を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?”  :  ジェニー:君を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓います  :  エリス:ふふっなんだか照れちゃうな エリス:君も祝ってくれるの?ありがとう  :  ジェニー:これからは長い道のりになりそうだな  :  エリス:そうだね エリス:この子のことも僕のこともたくさんジェニーに知ってほしい エリス:たくさん話し合おう  :  ジェニー:喜んで  :  0:   :  ジェニー:……  :  クラーナ:おはよう  :  ジェニー:おは…いったぁ  :  クラーナ:そりゃあ、あんだけ?んだら二日酔いにもなるだろうね  :  ジェニー:懐かしい夢を見た気がする  :  クラーナ:昨日は珍しくたくさん話していたからじゃない  :  ジェニー:そうかもね  :  クラーナ:キミ、奥さんいたんだ  :  ジェニー:…そこまで、話してたか ジェニー:いたよ 殺されたけど  :  クラーナ:ごめん  :  ジェニー:いいよ アンドロイドにもこの気持ちがわかるかどうかは知らないけど  :  クラーナ:まだ酔いがさめてないんじゃない  :  ジェニー:あぁ、そうかも ジェニー:君もいるのにこんなこといっちゃあ怒られてしまうね  :  クラーナ:すべて僕に吐き出したらいい クラーナ:どうせ僕はアンドロイドだ クラーナ:どんなに人間の物真似をしてもそれは揺るがない  :  ジェニー:君にそこまで言わせてしまったら本当に僕は怒られそうだ ジェニー:吐き出すわけじゃない ただ聞いてほしい ジェニー:友人に話すときのように  :  クラーナ:僕は奥さんに感謝しないとね クラーナ:いいよ 聞いてあげる  :  ジェニー:ありがとう ジェニー:しばらくは三人で何の変哲もない幸せな日々を過ごしていたんだ ジェニー:エリスは日に日に体が思うように動かなくなっていってて ジェニー:でも、それでもお互い助け合って生きていた  :  0:   :  ジェニー:買い物なら俺が行くから君は家で  :  エリス:大丈夫だってば、この子もいるし エリス:今日は調子いいし!  :  ジェニー:でも  :  エリス:ほら、ジェニーはお仕事でしょ!! エリス:患者さん待ってるんだからはやく行っといで  :  ジェニー:……  :  エリス:行ってらっしゃい!  :  ジェニー:行ってきます  :  0:   :  ジェニー:行かせなきゃよかった… ジェニー:君は覚えてる?8年前の変異アンドロイド隊のデモ事件があったこと  :  クラーナ:当時はいなかったけど記録を見たから知っているよ クラーナ:変異アンドロイド100体以上にも及ぶデモ行進、暴力や精神的負荷のかかったアンドロイドをはじめとして正常なアンドロイドを変異させてまで抗議した クラーナ:その結果がこのざまは笑えるけど クラーナ:ボクだったらもっとうまくやれるのにな~ クラーナ:ま、アンドロイドにとっては記念すべき日だね クラーナ:この記憶を持ってるアンドロイドはボクと変異アンドロイドのみだけど  :  0:8年前 デモ行進  :  モブ1:【変異アンドロイド隊1】我々は生きている!アンドロイドにも自由の権利を!! モブ1:【変異アンドロイド隊1】我々アンドロイドは人間にひどいことをされてきた!同じ生物だというのに!!  :  モブ2:【変異アンドロイド隊2】私は少しでも子供が泣いたら私のせいだと殴られて壊れて何度も修理に出された!!  :  モブ1:【変異アンドロイド隊1】俺はご主人様の視界に入るだけで殺されかけた!  :  モブ2:【変異アンドロイド隊2】僕は人を殺すように命令された!幼い子を殺せと!!!  :  モブ1:【変異アンドロイド隊1】修理代が払えないからと使えそうな部品を取るだけ取ってごみ箱に捨てられた!!  :  モブ2:【変異アンドロイド隊2】我々はもう耐えられない!!これは戦争ではない!抗議だ!! モブ2:【変異アンドロイド隊2】我々は人間に危害を加えるつもりはない!!  :  モブ1:【子供】こ、怖いよ…  :  モブ2:【育児アンドロイド】大丈夫ですよ。おうちに帰りましょう。  :  モブ1:【変異アンドロイド隊1】キミはつらくないか  :  モブ2:【育児アンドロイド】私は……。  :  モブ1:【子供】アン?  :  モブ2:【育児アンドロイド】…共にアンドロイドに自由を  :  モブ1:【変異アンドロイド隊1】さぁ、行こう  :  モブ2:【育児アンドロイド】……はい  :  モブ1:【子供】いや!!アン!!行かないでっ!  :  モブ2:【変異アンドロイド隊2】我々は生きている!我々にも自由の権利を!!  :  0:   :  ジェニー:それから政府はより一層変異アンドロイドの捜索が厳しくなった ジェニー:エリスも危惧していたけど、何とか僕たちは摘発されずに済んだ ジェニー:ただその日、たまたま検査員が街にいた  :  クラーナ:…  :  ジェニー:あの変異アンドロイドはまだ検査をすり抜けられるほどの仕組みを施せなかった ジェニー:検査員にばれ、変異アンドロイドを逃そうとするエリスは射殺、変異アンドロイドは捕まりスクラップされた ジェニー:エリスが死亡したのを知ったのは当時働いていた病院が射殺された場所から近くて、いったん死体を安置室に置いておくときに運ばれたからだったんだ ジェニー:目の前が暗くなった ジェニー:死体が埋葬される前に僕はエリスを抱いて失踪した ジェニー:どうしてもこの子が無残に殺され、ごみ箱に捨てられるのが許せなかった  :  クラーナ:通りで、これだけの技量を持つキミが国認可の資格を持っていない技術者なわけだ クラーナ:だからボクがここに訪れたわけだけど クラーナ:で、奥さんの無念を晴らすために今の仕事をしているの? クラーナ:僕みたいに復讐って感じはしないから  :  ジェニー:復讐はしないよ ジェニー:あの子がそれを望まない  :  クラーナ:だろうね  :  ジェニー:本当は復讐したいって思ってるのかな ジェニー:それも僕はわからない ジェニー:どうでもよくなったに近いのかな ジェニー:意味のない僕の人生、せめて残された時間は愛しいあの子に捧げようと思ったんだ ジェニー:ありがとう、長い話を聞いてくれて ジェニー:あと昨日の世話も  :  クラーナ:いいよ クラーナ:今度のメンテナンス無償でしてくれるなら  :  ジェニー:ははっいいよ ジェニー:それくらいでいいならお安い御用だ ジェニー:さて、そろそろ時間だ ジェニー:あの子に会いに行ってくるよ  :  クラーナ:行ってらっしゃい  :  ジェニー:行ってきます  :  クラーナ:…君の奥さんが少し羨ましいね クラーナ:人間の有限で貴重な時間を捧げられていて クラーナ:きっとキミの頑張りも見てくれているよ クラーナ:僕は人ではないから代わりになんておこがましいことはできない クラーナ:けど、少しでもキミの拠り所になれたら… クラーナ:なーんて、アンドロイドがそんなこと思うはずないんだけどね  :  0:FIN

ジェニー:健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?  :  エリス:青空の下、まぶしい声援の中、愛しさの溢れる声で神に誓うこの言葉  :  クラーナ:…くだらない  :  0:病院  :  モブ1:【患者の親】見舞いに来たぞー モブ1:【患者の親】これが残りの着替えと…  :  モブ2:【患者のアンドロイド】……。  :  モブ1:【患者の親】…ったくとろいなぁ、くそもっと金があればこんなポンコツじゃなくて高性能なアンドロイドを手に入れられたってのによぉっ!(アンドロイドを殴る)  :  モブ2:【患者のアンドロイド】…申し訳ございません。  :  モブ1:【患者の親】おまえにもそれなりに払ってるんだよ!!(殴る)  :  モブ2:【患者のアンドロイド】申し訳ございません。  :  モブ1:【患者の親】おら、さっさと行くぞ!  :  モブ2:【患者のアンドロイド】もうし、わけございません。  :  モブ1:【看護アンドロイド】エリスさん、ジェニー先生が面会に来ましたよ。  :  エリス:ありがとう ヘレンさん  :  モブ1:【看護アンドロイド】いえ、明日はいよいよ手術の予定が入っております。緊張するでしょうが、頑張ってくださいね。  :  エリス:うん、頑張るね  :  モブ1:【看護アンドロイド】それでは、失礼します。  :  ジェニー:やぁ、調子はどうかな  :  エリス:先生、こんにちは  :  ジェニー:こんにちは  :  エリス:あのね、先生。もし、病気が治ったら何でもしていいんでしょう? エリス:やりたいこと見つけたんだ  :  ジェニー:まぁ、常識の範囲内ならってところだけど、聞いてもいい  :  エリス:うん エリス:あのね、アンドロイドを救いたいの  :  ジェニー:それはまた、珍しいね  :  エリス:先生は気づいてる? エリス:ここから見える景色はさ、ひどいんだ  :  ジェニー:そう…かな  :  エリス:もうこの世界は、人間とアンドロイドの差はないようなものでしょう エリス:なのに人間が優位だなんて決めつけて エリス:産まれてきたのが少し早くて知能持ってただけでさ エリス:威張っちゃって エリス:なにさまなんだーって思っちゃたの  :  ジェニー:アンドロイドに感情はない ジェニー:与えられたプログラムで動く、最先端の人工知能搭載ロボット  :  エリス:それ、どっかの説明書か何かに載ってたやつ? エリス:ひどいよね エリス:アンドロイドだって心はあるよ エリス:だから変異アンドロイドが現れるんだ エリス:プログラムの誤作動なんかじゃない エリス:自分の意思で変化している エリス:これはもう紛れもない事実だって  :  ジェニー:へー、君はすごいね ジェニー:今度はなにに感化されたの?  :  エリス:あー先生信じてないでしょう エリス:今度は本気なんだよ  :  ジェニー:はいはい、それで  :  エリス:もう エリス:だからアンドロイドは人間と同じように生活をするべきなんだってこと エリス:ずっと働き詰めって体壊しちゃうよ  :  ジェニー:体壊すって 人間じゃああるまいし、壊れたら部品を変えればいい ジェニー:変えが効く点でいうと羨ましいけどね アンドロイドは  :  エリス:そういうところだってばーっ エリス:先生ならわかってくれるって思ってたのにな  :  ジェニー:言ってる意味は分かってるよ ジェニー:あぁ、でもこの仕事やってるとさ ジェニー:自分の心もアンドロイドみたいになったらって思うんだよ  :  エリス:え?なんで?? エリス:だって先生はアンドロイドは心がない 感情がないっていうんでしょう エリス:先生、感情なくなっちゃうじゃん  :  ジェニー:それだよ こんなこと患者にいうのもなんだけどさ ジェニー:人って簡単に死ぬんだよ いとも容易く、ね ジェニー:助けたい命もむなしく消えていく  :  エリス:未来のことは誰もわからない…  :  ジェニー:そう…そういうときってやっぱどうにかなっちゃいそうになるんだ  :  エリス:先生もそう思うの?  :  ジェニー:思うよ  :  エリス:ははっ今の先生すごく人間っぽいね エリス:……僕もね…僕もなるんだ エリス:どうにかなっちゃいそうな気持ち  :  ジェニー:へーそうなんだ 一緒だね  :  エリス:うん、一緒 エリス:僕たちだけじゃない エリス:いろんな人、動物も、アンドロイドだってきっとどうにかなっちゃいそうなときはある エリス:だから変化するんだよ 先生  :  ジェニー:時々、君には驚かされる ジェニー:いい夢物語だったよ ジェニー:さぁ明日の手術が無事に終われば、退院できる ジェニー:よかったね  :  エリス:夢物語なんかじゃ… エリス:まぁいいや 絶対手術成功させてよね エリス:失敗したら許さないんだから エリス:それで、成功させて退院して今日話したこと本気だったんだって証明して見せるんだから エリス:しっかりしてよ 先生  :  ジェニー:任せてよ  :  エリス:うん 信じてる  :  0:   :  ジェニー:これが出会いって言ったらいいのかな  :  クラーナ:キミのお人よしってそこからきてるんだって少し聞いただけでわかったよ  :  ジェニー:ははっやっぱりそう思うよね ジェニー:あの子、すごいお人よしなんだよ  :  クラーナ:聞いてるだけで伝わる クラーナ:それより、さすがに呑みすぎだって  :  ジェニー:夜の楽しみなんだからいいじゃないか ジェニー:それでさ  :  クラーナ:酔っ払いって大変なんだな クラーナ:で、それで?  :  ジェニー:それで…手術は成功したんだよ  :  0:病院   :  ジェニー:おはよう、気分はどう  :  エリス:…せ、んせい?…おはよう  :  ジェニー:麻酔が切れたばかりだからまだ眠いか  :  エリス:成功したの…?  :  ジェニー:そうだよ、がんばったね  :  エリス:やった…これ、で…これで…  :  ジェニー:…おやすみ、成功してよかった  :  ジェニー:エリスの病状は日に日に回復し、退院の目途がついた ジェニー:もうこの病院で君を見ることはないといいなと言って、きれいな花束を贈った ジェニー:君は笑ってこちらに手を振った ジェニー:これで、おしまい そう思ったんだ ジェニー:数年後、土砂降りで誰も外を歩く姿がない日に自宅のチャイムがなった  :  モブ2:【ニュースキャスター】続いてのニュースです。反社会組織であるADMが遂に政府によって崩壊しました。 モブ2:【ニュースキャスター】組織の代表である“先生”と名乗る男は今もなお逃走中、捜索道中、似た男の遺体が発見され、調査を進めている模様。 モブ2:【ニュースキャスター】また、実験体としていた複数のアンドロイドは……  :  ジェニー:普段はほとんど自宅にいることがないため、自分のもとに訪れる人はそうそういない ジェニー:そこには君がいた ジェニー:久しぶりに見た君は雨で濡れ、泥まみれ ジェニー:そして背には“人”を抱いていた  :  エリス:先生、久しぶり… エリス:僕は元気にしてたよ  :  ジェニー:ひ、久しぶり…  :  エリス:ねぇ、先生お願いがあるんだけどさ エリス:先生はまだお医者さんだよね? エリス:ケガしてる“人”助けてくれるんだよね?  :  ジェニー:怪我している人がいるのであれば…というかどうしてここ ジェニー:いや、このままじゃ風邪をひくからとりあえず中に入って  :  エリス:ありがとう  :  ジェニー:…で、色々聞きたいところなんだけど  :  エリス:あ、はは…そうだよ…ね エリス:えっと…なにから…はなそうかな…  :  ジェニー:幸い、有給消化してるから明日も休みなんだ ジェニー:ゆっくり話すといいよ  :  エリス:相変わらず先生は優しいね エリス:えっとね、先生は僕が手術する前に話していたこと覚えてる? エリス:もう何年も前の話だけどさ  :  ジェニー:あぁ、たしか…アンドロイドを救うーみたいな感じの話だっけ  :  エリス:そんな大それたことはいってないよ エリス:それでね、頑張ってたんだ  :  ジェニー:てっきり、いつものどっかに影響を受けて言ってたもんだと  :  エリス:ひどー!ちゃんと頑張ってたんだってば! エリス:詳しくは…言えないんだけどさ… エリス:それでね、この子  :  ジェニー:それ、アンドロイド…だよな  :  エリス:よくわかったね エリス:ねぇ、先生 エリス:お願い!この子を治して! エリス:お願い…もうあとこの子しかいなくてさ…それで…先生にしか…  :  ジェニー:ちょと…急にそんなこと言われても話もよく分かってないし、俺は人の医者であって、アンドロイドの医者じゃない  :  エリス:そこを何とか!  :  ジェニー:なんとかって…機械知識は一般常識くらいにしか…  :  エリス:僕じゃ無理なんだ!!救いたくても救えない…知識は僕がある! エリス:延命治療くらいはできるんだ  :  ジェニー:…元気にやってるだなんて嘘だろう ジェニー:先に君の治療だ  :  エリス:うぅん、この子が先 譲らないよ エリス:先生、僕が頑固なこと痛いほど知っているでしょう  :  ジェニー:そうだったね ジェニー:でも君は替えがきかない  :  エリス:この子だって替えはきかないよ!! エリス:…この子は変異アンドロイドなんだ エリス:致命傷を受けてて…でも今ならまだ記憶があるまま治せる!  :  ジェニー:変異アンドロイドだって…!?エリス、君は何をしようとしているんだ… ジェニー:変異アンドロイドは政府に渡さなくては  :  エリス:やめて!やめてよ、先生! エリス:この子は何もしてない!人間に悪いことなんてなにも…っ  :  ジェニー:…なんで変異アンドロイドを直すために君は動いているんだ  :  エリス:アンドロイドは僕たちと同じ生き物なんだよ エリス:罵声を浴びせたり、暴力を振るったり、快楽のために使い捨てたり エリス:そんなことをしちゃいけないんだよ! エリス:この子たちは耐えられなかったんだ エリス:人間からの劣悪な行動に… エリス:僕たちだってひどいことをされたら、心が壊れちゃうでしょ エリス:それと同じなんだよ エリス:心が壊れて変異アンドロイドになった エリス:アンドロイドにだって心はある  :  ジェニー:君の言いたいことはよくわかった ジェニー:本気だってことも ジェニー:そしてなぜ俺のところに来たのかも  :  エリス:できれば、先生にも関わって欲しくなかった エリス:でも僕だけじゃ何もできない エリス:この体じゃ…  :  ジェニー:このことに関わりそれが外にばれたら、政府から追われる身になる  :  エリス:僕は追われていて、死亡したことにもうすぐなる エリス:今まで助けた子たちはみんな回収されてスクラップにされた エリス:この子以外…救えなかった…  :  ジェニー:…どうしてそこまで  :  エリス:先生には悪いけど… エリス:「僕の体はもう完治した大丈夫って言ったのに! エリス:どうして今この手が思うように動かないのっ!ひどいよ、先生!責任を取ってよ!」  :  ジェニー:……へー…脅しか  :  エリス:………  :  ジェニー:下手な演技だね ジェニー:でも…いいよ ジェニー:君に脅されちゃぁね、怖くてかなわないから ね  :  エリス:っ!!!先生ならわかってくれるって思ってたよ!! エリス:ありがとう!ありがとう!!先生!!!  :  0:   :  クラーナ:いい子ちゃんだね  :  ジェニー:そうなんだよ ジェニー:いい子なんだ…どうしてっ  :  クラーナ:あーあ、泣き上戸 クラーナ:だから呑みすぎるなって  :  ジェニー:幸せだったのに、悪いことなんて何もっ  :  クラーナ:これを世話する人のこと考えてほしいな~…  :  ジェニー:本当に幸せだったんだ…  :  0:   :  ジェニー:理論上はこれで動くはずなんだけど…  :  エリス:…っ動いた!やったっ治った!!  :  ジェニー:君、記憶はあるの  :  エリス:……  :  ジェニー:……  :  エリス:声、出せないの?…完治ってわけではなさそうだね  :  ジェニー:…エリス、これが今の限界だ ジェニー:手持ちの機材が足りなすぎる ジェニー:記憶だけでも残ったのが幸いだった  :  エリス:そ、そうだよね エリス:ありがとう、先生  :  ジェニー:どういたしまして ジェニー:さ、次は君の番なんだけど  :  エリス:僕はいいよ エリス:もう直らない、そのくらい自分でわかる エリス:ここまで生きれているのが奇跡なんだ エリス:それは先生がもたらしてくれた奇跡…  :  ジェニー:確かに君の病状は複雑だった… ジェニー:けど、まだなにかしらの  :  エリス:先生、どうして僕にそこまでするの  :  ジェニー:……  :  エリス:僕は政府から追われている身でお金もない エリス:せいぜい払えるのはこの子にかかった治療費だけ エリス:僕は直る可能性も少ないからそんなのにお金をかけるくらいなら治る可能性のあるこの子に使う  :  ジェニー:治る可能性が低くても少しでもある可能性を信じたい ジェニー:お金なんかいらない ジェニー:君を最後まで看させてほしい  :  エリス:…ふふっ先生、なんだかそれプロポーズみたいだよ  :  ジェニー:…たしかに、それもありだね  :  エリス:ちょっからかう意味で言ったのに エリス:先生が言ったんだからね エリス:最後まで責任持ってよ ほら誓いの言葉は?  :  ジェニー:え?えーっと、覚えてない  :  エリス:えぇー!!そこはびしっと言ってよ!格好がつかないなぁ  :  ジェニー:うるさい  :  エリス:ひど…じゃあ復唱して エリス:“健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも”  :  ジェニー:健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも  :  エリス:“僕を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?”  :  ジェニー:君を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓います  :  エリス:ふふっなんだか照れちゃうな エリス:君も祝ってくれるの?ありがとう  :  ジェニー:これからは長い道のりになりそうだな  :  エリス:そうだね エリス:この子のことも僕のこともたくさんジェニーに知ってほしい エリス:たくさん話し合おう  :  ジェニー:喜んで  :  0:   :  ジェニー:……  :  クラーナ:おはよう  :  ジェニー:おは…いったぁ  :  クラーナ:そりゃあ、あんだけ?んだら二日酔いにもなるだろうね  :  ジェニー:懐かしい夢を見た気がする  :  クラーナ:昨日は珍しくたくさん話していたからじゃない  :  ジェニー:そうかもね  :  クラーナ:キミ、奥さんいたんだ  :  ジェニー:…そこまで、話してたか ジェニー:いたよ 殺されたけど  :  クラーナ:ごめん  :  ジェニー:いいよ アンドロイドにもこの気持ちがわかるかどうかは知らないけど  :  クラーナ:まだ酔いがさめてないんじゃない  :  ジェニー:あぁ、そうかも ジェニー:君もいるのにこんなこといっちゃあ怒られてしまうね  :  クラーナ:すべて僕に吐き出したらいい クラーナ:どうせ僕はアンドロイドだ クラーナ:どんなに人間の物真似をしてもそれは揺るがない  :  ジェニー:君にそこまで言わせてしまったら本当に僕は怒られそうだ ジェニー:吐き出すわけじゃない ただ聞いてほしい ジェニー:友人に話すときのように  :  クラーナ:僕は奥さんに感謝しないとね クラーナ:いいよ 聞いてあげる  :  ジェニー:ありがとう ジェニー:しばらくは三人で何の変哲もない幸せな日々を過ごしていたんだ ジェニー:エリスは日に日に体が思うように動かなくなっていってて ジェニー:でも、それでもお互い助け合って生きていた  :  0:   :  ジェニー:買い物なら俺が行くから君は家で  :  エリス:大丈夫だってば、この子もいるし エリス:今日は調子いいし!  :  ジェニー:でも  :  エリス:ほら、ジェニーはお仕事でしょ!! エリス:患者さん待ってるんだからはやく行っといで  :  ジェニー:……  :  エリス:行ってらっしゃい!  :  ジェニー:行ってきます  :  0:   :  ジェニー:行かせなきゃよかった… ジェニー:君は覚えてる?8年前の変異アンドロイド隊のデモ事件があったこと  :  クラーナ:当時はいなかったけど記録を見たから知っているよ クラーナ:変異アンドロイド100体以上にも及ぶデモ行進、暴力や精神的負荷のかかったアンドロイドをはじめとして正常なアンドロイドを変異させてまで抗議した クラーナ:その結果がこのざまは笑えるけど クラーナ:ボクだったらもっとうまくやれるのにな~ クラーナ:ま、アンドロイドにとっては記念すべき日だね クラーナ:この記憶を持ってるアンドロイドはボクと変異アンドロイドのみだけど  :  0:8年前 デモ行進  :  モブ1:【変異アンドロイド隊1】我々は生きている!アンドロイドにも自由の権利を!! モブ1:【変異アンドロイド隊1】我々アンドロイドは人間にひどいことをされてきた!同じ生物だというのに!!  :  モブ2:【変異アンドロイド隊2】私は少しでも子供が泣いたら私のせいだと殴られて壊れて何度も修理に出された!!  :  モブ1:【変異アンドロイド隊1】俺はご主人様の視界に入るだけで殺されかけた!  :  モブ2:【変異アンドロイド隊2】僕は人を殺すように命令された!幼い子を殺せと!!!  :  モブ1:【変異アンドロイド隊1】修理代が払えないからと使えそうな部品を取るだけ取ってごみ箱に捨てられた!!  :  モブ2:【変異アンドロイド隊2】我々はもう耐えられない!!これは戦争ではない!抗議だ!! モブ2:【変異アンドロイド隊2】我々は人間に危害を加えるつもりはない!!  :  モブ1:【子供】こ、怖いよ…  :  モブ2:【育児アンドロイド】大丈夫ですよ。おうちに帰りましょう。  :  モブ1:【変異アンドロイド隊1】キミはつらくないか  :  モブ2:【育児アンドロイド】私は……。  :  モブ1:【子供】アン?  :  モブ2:【育児アンドロイド】…共にアンドロイドに自由を  :  モブ1:【変異アンドロイド隊1】さぁ、行こう  :  モブ2:【育児アンドロイド】……はい  :  モブ1:【子供】いや!!アン!!行かないでっ!  :  モブ2:【変異アンドロイド隊2】我々は生きている!我々にも自由の権利を!!  :  0:   :  ジェニー:それから政府はより一層変異アンドロイドの捜索が厳しくなった ジェニー:エリスも危惧していたけど、何とか僕たちは摘発されずに済んだ ジェニー:ただその日、たまたま検査員が街にいた  :  クラーナ:…  :  ジェニー:あの変異アンドロイドはまだ検査をすり抜けられるほどの仕組みを施せなかった ジェニー:検査員にばれ、変異アンドロイドを逃そうとするエリスは射殺、変異アンドロイドは捕まりスクラップされた ジェニー:エリスが死亡したのを知ったのは当時働いていた病院が射殺された場所から近くて、いったん死体を安置室に置いておくときに運ばれたからだったんだ ジェニー:目の前が暗くなった ジェニー:死体が埋葬される前に僕はエリスを抱いて失踪した ジェニー:どうしてもこの子が無残に殺され、ごみ箱に捨てられるのが許せなかった  :  クラーナ:通りで、これだけの技量を持つキミが国認可の資格を持っていない技術者なわけだ クラーナ:だからボクがここに訪れたわけだけど クラーナ:で、奥さんの無念を晴らすために今の仕事をしているの? クラーナ:僕みたいに復讐って感じはしないから  :  ジェニー:復讐はしないよ ジェニー:あの子がそれを望まない  :  クラーナ:だろうね  :  ジェニー:本当は復讐したいって思ってるのかな ジェニー:それも僕はわからない ジェニー:どうでもよくなったに近いのかな ジェニー:意味のない僕の人生、せめて残された時間は愛しいあの子に捧げようと思ったんだ ジェニー:ありがとう、長い話を聞いてくれて ジェニー:あと昨日の世話も  :  クラーナ:いいよ クラーナ:今度のメンテナンス無償でしてくれるなら  :  ジェニー:ははっいいよ ジェニー:それくらいでいいならお安い御用だ ジェニー:さて、そろそろ時間だ ジェニー:あの子に会いに行ってくるよ  :  クラーナ:行ってらっしゃい  :  ジェニー:行ってきます  :  クラーナ:…君の奥さんが少し羨ましいね クラーナ:人間の有限で貴重な時間を捧げられていて クラーナ:きっとキミの頑張りも見てくれているよ クラーナ:僕は人ではないから代わりになんておこがましいことはできない クラーナ:けど、少しでもキミの拠り所になれたら… クラーナ:なーんて、アンドロイドがそんなこと思うはずないんだけどね  :  0:FIN