台本概要

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タイトル 目隠し鬼
作者名 白玉あずき  (@srtm_azk01)
ジャンル ホラー
演者人数 2人用台本(不問2)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 少年の演者の性別は不問。
子供は性別変更可。それに伴う一人称や語尾の変更も可。
一人読み大歓迎です。
ギャグにはしないでください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
少年 不問 27 12歳くらいの少年。金髪に青い瞳をしている。素直な性格。
子供 不問 27 10歳くらいの子供。無邪気に少年を遊びに誘った。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
子供:「(遠くから聞こえる感じで唄う)鬼さんこちら、手の鳴る方へ」 少年M:幼子(おさなご)の声が、唄いながら僕を呼ぶ。視界を塞がれて相手を捕まえるこの遊びは、耳だけが頼り 少年M:不思議な遊びだ。何故鬼は目隠しされているのだろう。どうして僕はこの遊びをしているのだろう 少年M:…ああ、そうだ 少年M:新しく出来た友達に、この森の噂を聞いて。それで… 子供:「そっちじゃないよ。こちらにおいで」 少年M:この子に会ったんだ… 少年M:ぱん、ぱん、と、手を打ち鳴らす音が森にこだまする。近づこうとしては草や石に足を取られる。そういえば昨日は雨が降ったから、地面もぐちゃぐちゃだ。 子供:「どうしたの?こっちだよ、こっち」 少年:「待ってよ。動いたら解らなくなっちゃうよ」 少年M:前に進めば横から。横に進めば後ろから。方向が解らなくなる。 子供:「はは。待ってたら捕まっちゃうもん。さあさあ。鬼さんこちら、手の鳴る方へ。足元にはよく気を付けるんだよ?」 少年:「あっ、待って!待ってよ!」 少年M:森の中で出会った、ちょっと古めかしいデザインの服を着た、十歳くらいの子。挨拶をしたら不思議そうな顔で見られて、外国の人?って言われた。 少年M:多分、髪と目の色でそう思ったんだろう。金髪に青い目。実際僕はこの国の人じゃないから、そうだよって答えたら、日本語上手だねって褒められて、それから色々話して…日本の遊びをしてみないかと誘われて、そして今、僕は目隠し鬼とやらをやっている。 子供:「ほらほら鬼さんこっちだよ。おいで、おいで、手の鳴る方へ 」 少年M:楽しげな声。声を追いかける。ぬかるんだ道で重くなる足。見なくても解る、お気に入りの靴はもうぐちゃぐちゃだろう。 少年:「…ねえ、キミはなんで一人で森の中にいたの?」 子供:「なんでかな?…友達がいないからかな…」 少年:「…仲の良い子がいないってこと?他に子供がいないってこと?」 子供:「……どっちも、かな」 少年M:声が前から聞こえる。どんどん、どんどん。ずっと前に進んでいく。 子供:「昔はね、少ないけどいたんだよ。友達。…でもね、みんないなくなっちゃった」 少年:「…どうして?」 子供:「どうしてだろう?…あっ…と。もうこんな所まで来ちゃった…。これ以上進むのは危ないね。そろそろおしまいにしよっか。じゃあ最後に鬼さん、僕を捕まえて。逃げないから」 少年M:声が止まる。鬼の僕が捕まえたらこの遊びは終わり。気配を探って、狙いを定め… 少年:「つかまえた!」 少年M:勢いよく踏み込めば………僕の足元から、地面が、消えた… 0: 子供:「………ぷっ。…はは…、あははははは!!あーあ、落ちた!はははは!!落ちた堕ちた!!」 子供:「あいつらとおんなじだ!あの日、僕を見捨てて逃げていった奴らと!…何が一緒に遊ぼうだ!ずっと僕をバカにしていじめていた癖に!!目隠しした僕を笑って突き飛ばして!雨上がりの土砂崩れに流されていく姿を見て恐れて、見殺しにした癖に!!」 0:(暗く笑う子供) 子供:「……死ねばいいんだよ、ガキなんか。…あいつらも、落ちて死んだ。…だから、…もっと…もっと、もっと!」 少年:(被せるように)「全く…酷いなぁ。危うく落っこちるところだったじゃないか。いつもそうなの?だから友達いないのかな?」 子供:「…っ!?」 少年:「もう目隠し取るね?…はぁ。この森に入ったらダメだって言われたのは、キミが原因なのかな」 子供:「…な、んで…」 少年:「なんで?…あぁ、なんで落ちなかったかってこと?簡単だよ。僕は『鬼』…だからさ」 子供:「……は?」 少年:「まあ、キミ達の言う鬼とは違うけど」 子供:「何…言って…」 少年:「ここは土が崩れやすいんだね。今までも何回か崩れた跡がある。…そして、その合間に埋もれて発見されていないだろう骨は、人間のかな?それも沢山あるみたいだ。その中に、キミのもあるのかな?」 子供:「…お前っ、何なんだ!なんで落ちていない?!なんで生きているんだ?! 少年:「…なんでって言われても…」 子供:「クソッ!…死ねよ!ガキが!!」 少年:「口が悪いなぁ。あーあぁ…もう人間の形をなくしてきてるじゃないか。どれだけの年月、何人の命を奪ってきたの?…キミ、すっかり悪霊だよ」 子供:「うるさい、ウルサイ!ぼく、ハ、ボクは…ッ」 少年:「…いじめられていたって言ってたよね。それで死んだとも。…うん、そうだね。そこまでなら可哀想かなって思うんだろうけど、キミは関係の無い子供達まで殺していったんだろ?違うかい?」 子供:「……グ…ッ!」 少年「…あのね?僕がここに来たのは、日本で出来た友達に、この森のことを聞いたからなんだ。昔、子供達が次々と消えて廃村になった村の話と一緒に。…んー、彼もキミが原因だと解っているはずなんだけど、彼は優しいからさ、キミみたいな子でも無闇には消せないんだよね。…でもね、僕は違う。…はい(子供の手首を掴む)」 子供:「?!」 少年:「ほら、つ・か・ま・え・た」 子供:「…なんで、僕に…触れるんだ…っ」 少年:「……だから、鬼だからだよ」 子供:「はあ?!何言ってんだよ、さっきから!」 少年:「まぁ、日本の鬼とは全然違うけど」 子供:「くそっ!…はなせ…っ」 少年:「日本ではさ、鬼と言えば…地獄の役人だったっけ?」 子供:「っ!?」 少年:「…本来は彼らの仕事なんだろうけど。キミ、自分じゃ行かなさそうだから、手伝ってあげる」 子供:「お、…まえっ、何なんだよ!?放せ!放せよ!!」 少年:「どうして?やっと捕まえたのに。目隠し鬼やろうって誘ったのはキミじゃないか。そして僕が鬼になってキミを捕まえた。……ねぇ、相手の目を隠せば誰にも捕まらないと思った?」 子供:「お前はっ、生きてる人間じゃないか!なんで僕が捕まるんだっ。おかしいじゃないか!!僕は何も悪くない!あいつらのせいだ!全部…全部!!」 少年:「哀れだね。人の子。もう終わりにしてあげる」 子供:「ひっ!!」 子供M:異国の子供に掴まれた手首から、黒い霧のようなものが広がっていく。 子供M:それは僕の全身をどんどん包んで、視界を黒く染め上げる。霧が壁となり、隔離される感覚。遠くなる現世(うつしよ)に、青い瞳が最後に見えた。 少年:「地獄の法に則り(のっとり)裁きを受けよ。人間。我、始祖の一族が見送る」 子供M:刹那、世界は閉じた。ああ、深淵に一人、堕ちてゆく…。 0: 少年:「この国の人は、鬼ごっこが好きだよねぇ。…何でだろう、捕まりたくなんかないくせに。………でも、まぁ。何かの縁、だったのかな」 少年M:気付けば遠くでカラスが鳴いている。思ったより時間を食ってしまったらしい。 少年:「…お腹空いたなぁ。早く帰らないと怒られちゃうよね。今日のご飯は何かなぁ?昨日食べた、ポテトコロッケは美味しかったなぁ!」 少年M:軽い足取りで森を駆け抜けて行く。木が少なくなって視界が開けた時、恭しい口調で誰かの声が聞こえた。 少年M:(お手を煩(わずら)わせて申し訳ない。異国の王よ) 少年:「別にいいよ。まあまあ楽しめたし。…それに、」 少年M:僕は染まりゆく夕焼けに向かって、地を蹴った。 少年:「日本では、僕たちのことも『鬼』と呼ぶのだろう?だから、ちょっと手伝っただけ」 少年M:紅く染まる空を切り、漆黒の羽根を広げた僕は、機嫌良く笑う。 少年:「『吸血鬼』の始祖の一族として、ね」 0: 0:END

子供:「(遠くから聞こえる感じで唄う)鬼さんこちら、手の鳴る方へ」 少年M:幼子(おさなご)の声が、唄いながら僕を呼ぶ。視界を塞がれて相手を捕まえるこの遊びは、耳だけが頼り 少年M:不思議な遊びだ。何故鬼は目隠しされているのだろう。どうして僕はこの遊びをしているのだろう 少年M:…ああ、そうだ 少年M:新しく出来た友達に、この森の噂を聞いて。それで… 子供:「そっちじゃないよ。こちらにおいで」 少年M:この子に会ったんだ… 少年M:ぱん、ぱん、と、手を打ち鳴らす音が森にこだまする。近づこうとしては草や石に足を取られる。そういえば昨日は雨が降ったから、地面もぐちゃぐちゃだ。 子供:「どうしたの?こっちだよ、こっち」 少年:「待ってよ。動いたら解らなくなっちゃうよ」 少年M:前に進めば横から。横に進めば後ろから。方向が解らなくなる。 子供:「はは。待ってたら捕まっちゃうもん。さあさあ。鬼さんこちら、手の鳴る方へ。足元にはよく気を付けるんだよ?」 少年:「あっ、待って!待ってよ!」 少年M:森の中で出会った、ちょっと古めかしいデザインの服を着た、十歳くらいの子。挨拶をしたら不思議そうな顔で見られて、外国の人?って言われた。 少年M:多分、髪と目の色でそう思ったんだろう。金髪に青い目。実際僕はこの国の人じゃないから、そうだよって答えたら、日本語上手だねって褒められて、それから色々話して…日本の遊びをしてみないかと誘われて、そして今、僕は目隠し鬼とやらをやっている。 子供:「ほらほら鬼さんこっちだよ。おいで、おいで、手の鳴る方へ 」 少年M:楽しげな声。声を追いかける。ぬかるんだ道で重くなる足。見なくても解る、お気に入りの靴はもうぐちゃぐちゃだろう。 少年:「…ねえ、キミはなんで一人で森の中にいたの?」 子供:「なんでかな?…友達がいないからかな…」 少年:「…仲の良い子がいないってこと?他に子供がいないってこと?」 子供:「……どっちも、かな」 少年M:声が前から聞こえる。どんどん、どんどん。ずっと前に進んでいく。 子供:「昔はね、少ないけどいたんだよ。友達。…でもね、みんないなくなっちゃった」 少年:「…どうして?」 子供:「どうしてだろう?…あっ…と。もうこんな所まで来ちゃった…。これ以上進むのは危ないね。そろそろおしまいにしよっか。じゃあ最後に鬼さん、僕を捕まえて。逃げないから」 少年M:声が止まる。鬼の僕が捕まえたらこの遊びは終わり。気配を探って、狙いを定め… 少年:「つかまえた!」 少年M:勢いよく踏み込めば………僕の足元から、地面が、消えた… 0: 子供:「………ぷっ。…はは…、あははははは!!あーあ、落ちた!はははは!!落ちた堕ちた!!」 子供:「あいつらとおんなじだ!あの日、僕を見捨てて逃げていった奴らと!…何が一緒に遊ぼうだ!ずっと僕をバカにしていじめていた癖に!!目隠しした僕を笑って突き飛ばして!雨上がりの土砂崩れに流されていく姿を見て恐れて、見殺しにした癖に!!」 0:(暗く笑う子供) 子供:「……死ねばいいんだよ、ガキなんか。…あいつらも、落ちて死んだ。…だから、…もっと…もっと、もっと!」 少年:(被せるように)「全く…酷いなぁ。危うく落っこちるところだったじゃないか。いつもそうなの?だから友達いないのかな?」 子供:「…っ!?」 少年:「もう目隠し取るね?…はぁ。この森に入ったらダメだって言われたのは、キミが原因なのかな」 子供:「…な、んで…」 少年:「なんで?…あぁ、なんで落ちなかったかってこと?簡単だよ。僕は『鬼』…だからさ」 子供:「……は?」 少年:「まあ、キミ達の言う鬼とは違うけど」 子供:「何…言って…」 少年:「ここは土が崩れやすいんだね。今までも何回か崩れた跡がある。…そして、その合間に埋もれて発見されていないだろう骨は、人間のかな?それも沢山あるみたいだ。その中に、キミのもあるのかな?」 子供:「…お前っ、何なんだ!なんで落ちていない?!なんで生きているんだ?! 少年:「…なんでって言われても…」 子供:「クソッ!…死ねよ!ガキが!!」 少年:「口が悪いなぁ。あーあぁ…もう人間の形をなくしてきてるじゃないか。どれだけの年月、何人の命を奪ってきたの?…キミ、すっかり悪霊だよ」 子供:「うるさい、ウルサイ!ぼく、ハ、ボクは…ッ」 少年:「…いじめられていたって言ってたよね。それで死んだとも。…うん、そうだね。そこまでなら可哀想かなって思うんだろうけど、キミは関係の無い子供達まで殺していったんだろ?違うかい?」 子供:「……グ…ッ!」 少年「…あのね?僕がここに来たのは、日本で出来た友達に、この森のことを聞いたからなんだ。昔、子供達が次々と消えて廃村になった村の話と一緒に。…んー、彼もキミが原因だと解っているはずなんだけど、彼は優しいからさ、キミみたいな子でも無闇には消せないんだよね。…でもね、僕は違う。…はい(子供の手首を掴む)」 子供:「?!」 少年:「ほら、つ・か・ま・え・た」 子供:「…なんで、僕に…触れるんだ…っ」 少年:「……だから、鬼だからだよ」 子供:「はあ?!何言ってんだよ、さっきから!」 少年:「まぁ、日本の鬼とは全然違うけど」 子供:「くそっ!…はなせ…っ」 少年:「日本ではさ、鬼と言えば…地獄の役人だったっけ?」 子供:「っ!?」 少年:「…本来は彼らの仕事なんだろうけど。キミ、自分じゃ行かなさそうだから、手伝ってあげる」 子供:「お、…まえっ、何なんだよ!?放せ!放せよ!!」 少年:「どうして?やっと捕まえたのに。目隠し鬼やろうって誘ったのはキミじゃないか。そして僕が鬼になってキミを捕まえた。……ねぇ、相手の目を隠せば誰にも捕まらないと思った?」 子供:「お前はっ、生きてる人間じゃないか!なんで僕が捕まるんだっ。おかしいじゃないか!!僕は何も悪くない!あいつらのせいだ!全部…全部!!」 少年:「哀れだね。人の子。もう終わりにしてあげる」 子供:「ひっ!!」 子供M:異国の子供に掴まれた手首から、黒い霧のようなものが広がっていく。 子供M:それは僕の全身をどんどん包んで、視界を黒く染め上げる。霧が壁となり、隔離される感覚。遠くなる現世(うつしよ)に、青い瞳が最後に見えた。 少年:「地獄の法に則り(のっとり)裁きを受けよ。人間。我、始祖の一族が見送る」 子供M:刹那、世界は閉じた。ああ、深淵に一人、堕ちてゆく…。 0: 少年:「この国の人は、鬼ごっこが好きだよねぇ。…何でだろう、捕まりたくなんかないくせに。………でも、まぁ。何かの縁、だったのかな」 少年M:気付けば遠くでカラスが鳴いている。思ったより時間を食ってしまったらしい。 少年:「…お腹空いたなぁ。早く帰らないと怒られちゃうよね。今日のご飯は何かなぁ?昨日食べた、ポテトコロッケは美味しかったなぁ!」 少年M:軽い足取りで森を駆け抜けて行く。木が少なくなって視界が開けた時、恭しい口調で誰かの声が聞こえた。 少年M:(お手を煩(わずら)わせて申し訳ない。異国の王よ) 少年:「別にいいよ。まあまあ楽しめたし。…それに、」 少年M:僕は染まりゆく夕焼けに向かって、地を蹴った。 少年:「日本では、僕たちのことも『鬼』と呼ぶのだろう?だから、ちょっと手伝っただけ」 少年M:紅く染まる空を切り、漆黒の羽根を広げた僕は、機嫌良く笑う。 少年:「『吸血鬼』の始祖の一族として、ね」 0: 0:END