台本概要
148 views
タイトル | 病みカワ UNHAPPY-LIFE-PHILOSOPHICUS |
---|---|
作者名 | 名越春 (@nttdnll) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(女2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
どうせ病むなら、可愛く!楽しく! 生きることに軽傷ではいられない、病んでいる者どうし仲の良い二人の少女は、お互いに慰めあって望外の生を謳歌する。 「天使の悪戯」「独我論少女の孤独」と同一シリーズの作品です。 148 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
靖乃 | 女 | 152 | 靖乃(やすの)。色白の肌にセミロングのストレートの黒髪。キリっとした美人で頭も切れる。 漠然とした寂しさを埋めるため、異性交遊やリストカットがやめられない。なぜ生きているのか。なぜ自殺してはいけないのか。なぜ寂しいのか。彼女の明晰な頭脳でも答えを出せずにいる。 |
理瀬 | 女 | 150 | 理瀬(りせ)。ライトブラウンのショートボブにフェミニンなメイクが良く似合うオシャレな少女。 哲学者ヴィトゲンシュタインの大ファン。周りからは変わり者扱いされている。同性愛者であり、そのことで生きづらさを感じていたが、靖乃と出会ってからの日々は悪くないと思っている。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:――『神秘とは世界がいかにあるかではなく、世界があるというそのことである。』
0:――ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン
靖乃:「ねぇ、私たちってさ、なんで生きてるんだろ?」
理瀬:「え、何?急にどしたん?靖乃」
靖乃:「んー、特に深い意味はないんだけどさー。なんとなくねー」
理瀬:「あっは。なんとなくにしては随分重いなぁ」
靖乃:「なんかそんなこと考えちゃうことってない?」
理瀬:「うーん、まぁ。あるにはあるよね。」
靖乃:「でしょ?それそれ。今それなの!」
理瀬:「絆創膏が増えたのも同じ理由?ほら、その左手の。」
靖乃:「うん、そんなとこ。見て見て!これ、カラフルで可愛いでしょ!」
理瀬:「ね!可愛いなーって思って見てた!」
靖乃:「えへへ~、でっしょー?ありがと!」
理瀬:「あ、でも!腕に傷増やす前に相談してくれなかったのは可愛くないぞ。」
靖乃:「あっはは、それはごめん。」
靖乃:
靖乃:「話戻るんだけどさ。」
理瀬:「なんで生きてるんだろうってやつ?」
靖乃:「そーそー。」
理瀬:「うーん……、生まれてきたから。」
靖乃:「じゃあなんで生まれて来たんだろう?」
理瀬:「まぁ、そりゃそうなるわな。」
靖乃:「ついでになんで死んじゃいけないんだろ?」
理瀬:「いや、ついでが随分重たいな。」
靖乃:「たとえばさ、私が死んでも悲しむ人が1人もいないとしてさ、
靖乃:
靖乃:それなら人に迷惑が掛からない方法で自殺するのって、世界にほとんど何の影響も与えないでしょ?」
靖乃:
靖乃:「なのにどうしてダメなんだろ?」
理瀬:「自殺は基本的な罪だから、とか?」
靖乃:「あー、ヴィトゲンシュタインの言葉ね。」
理瀬:「そーそー。」
靖乃:「なんかなー、あんまりピンと来ないんだよねぇ。私、クリスチャンじゃないしなぁ。」
理瀬:「それなー。その辺の価値観はピンと来ないこと多いよね。」
靖乃:「そーそー。それに私そもそもあれアウトだよ。」
理瀬:「ん、何が?」
靖乃:「ほら、汝、姦淫するなかれ。」
理瀬:「あー……。好きだよね、靖乃。」
靖乃:「う、なんかその言い方は引っ掛かるなぁ。事実だけどさぁ。」
理瀬:「今何人付き合ってるの?」
靖乃:「うーん、たしか4……いや5。あー、待って4かも。」
理瀬:「ビッチ……」
靖乃:「その言い方は酷くない!?」
理瀬:「事実じゃん!それ全員彼氏なの?」
靖乃:「彼氏というか、うーん。彼氏ではない?なんて言うのかな……えっと。」
理瀬:「セフレ?」
靖乃:「身も蓋もないなぁ……。まぁーでもそんな感じかな」
理瀬:「うっわぁ、やっぱビッチじゃんか」
靖乃:「もー、理瀬ひどーい!」
理瀬:「ごめんごめん。でもさ、そんなに良いものなの?」
靖乃:「ん?セックス?」
理瀬:「うん。やっぱオナニーとは全然違うもん?」
靖乃:「え、そりゃ違うよ!」
理瀬:「ふーん、そっかぁ。どんな感じなの?実際さ。」
靖乃:「あれ?理瀬、興味津々じゃん?」
理瀬:「え?い、いや、別にそんなんじゃないけど……。ちょっと気になっただけというか……」
靖乃:「ふーん?あれ?理瀬ってさ、処女だっけ?」
理瀬:「う、うるさい!それで、どーなの?」
靖乃:「うーん?気持ち良いよ?1人でするのとは全然違う。
靖乃:
靖乃:なんかね、ぼーってしてふわふわしてすごい敏感になって。」
理瀬:「ふーん、そうなんだ……」
靖乃:「あれ?してみたくなっちゃった?」
理瀬:「うるさい。」
靖乃:「でもさー、実際、そういう気分になったときどうしてるの?オナニー?」
理瀬:「まぁ、うん。そうだよ?」
靖乃:「自分の指だけで満足できるの?」
理瀬:「場合によるかな……オモチャ使ったりとかもあるけど……」
靖乃:「あー、なるほどねー。確かに理瀬ってオナニー激しそう」
理瀬:「ビッチに言われたくないんですけど!?」
靖乃:「ビッチ、ビッチって酷いなぁ。理瀬だって興味あるクセに。」
理瀬:「それは……まぁ。」
靖乃:「今度男の子紹介してあげよっか?」
理瀬:「いやいいよ、遠慮しとく。」
靖乃:「結構楽しいよ?」
理瀬:「セックス?何?経験豊富マウントですかー?」
靖乃:「セックスもだけど、男の子を手のひらで転がしてる感覚とか。クセになるよ?」
理瀬:「うっわぁ……ホンモノだ。」
靖乃:「でもさ、時々凹んじゃうことあるんだよね。私、汚れてるなぁって。」
理瀬:「でもやめられないんでしょ?」
靖乃:「うん……。依存してるなぁって思うんだけどね。凹んでるとまた男の子に慰めて欲しくなっちゃって。」
理瀬:「それでまたセックスしちゃう?」
靖乃:「そうそう。やっぱ我慢した方が良いのかな?」
理瀬:「んー?できるの?」
靖乃:「どうだろ?」
理瀬:「ちょっと試してみよっか?」
靖乃:「え?なになに?どういうこと?」
理瀬:「それではこれから私の質問に正直に答えて下さい。」
靖乃:「え?なに?何が始まるの?」
理瀬:「靖乃はどうしてエッチを我慢したいんですか?」
靖乃:「うーん、依存気味だからかな。あんまり良くないよね依存って。」
理瀬:「それは依存したくないってことでいい?」
靖乃:「うん、そうだね。」
理瀬:「依存したくないのはどうして?」
靖乃:「時々凹んじゃうからかな。」
理瀬:「うんうん。凹みたくないんだね?」
靖乃:「うん。落ち込んじゃうし嫌だよ。」
理瀬:「落ちこみたくないんだね?」
靖乃:「そりゃそうだよ。楽しく生きたいじゃん。」
理瀬:「ということはセックスを我慢したいのは楽しく生きたいから、ってことになるよね?」
靖乃:「あー、うん。そうだね。ていうかその論法……ヒュームでしょ?」
理瀬:「あはは、やっぱバレた?」
靖乃:「理性は情念の奴隷に過ぎない、でしょ?」
理瀬:「そう、それ。何々すべきだ。何々した方が良い。
理瀬:
理瀬:そんな理性的な言明は全て結局のところ何々したいからという欲求に支えられているものでしかない。」
靖乃:「てことは、えっと……どうなるの?」
理瀬:「靖乃のセックスしたくないって欲求は根っこのところで楽しく生きたいって欲求に還元されることになるね。」
靖乃:「うーん、でもやっぱセックスしたいかも。そっちの方が楽しいし」
理瀬:「あっは、じゃあ最初から答え出てるじゃん!」
靖乃:「なんか納得行かない!それだと私ビッチみたいじゃん!」
理瀬:「みたいじゃなくてビッチでしょ?」
靖乃:「んー……もう……」
靖乃:
靖乃:「でもさぁ時々落ち込んじゃうのは事実だよ?」
理瀬:「まぁそりゃ生きてればね。そんなこともあるよね。
理瀬:
理瀬:でもさ事実は事実でしかないんだよ。価値を語ることはできない。」
靖乃:「またヴィトゲンシュタイン?」
理瀬:「うん。」
靖乃:「幸福に生きよ!か。」
理瀬:「1916年7月8日の記述だね。
理瀬:
理瀬:世界の内では全てがあるようにあり、起こるように起こる。
理瀬:
理瀬:世界の事実がどうであろうとも幸福な世界は幸福であり、不幸な世界は不幸である。」
靖乃:「どれほど不幸に思われる人生だって幸福に生きよ!まぁ確かにどーせ病むなら楽しく病みたいよね。」
理瀬:「そうそう。そういうこと。
理瀬:
理瀬:悲しいから泣くんじゃない。泣くから悲しいんだ。」
靖乃:「ジェームズ・ランゲ説だね。感情の中枢起源説であるキャノン・バード説に対して、感情の末梢起源説を提唱したってやつだっけ。
靖乃:
靖乃:でもどうして急に?」
理瀬:「しんどいから落ち込むんじゃない、落ち込むからしんどいんだ。」
靖乃:「あーそういうことか。」
理瀬:「突き抜けたビッチになっちゃえばお悩み解決ってわけ!」
靖乃:「その推論ホントに妥当なわけ?すっごい怪しいけど」
靖乃:
靖乃:「あーでもなんか、悩むのバカらしくやってきたかも。ていうかエッチしたくなってきた」
理瀬:「それでいいんだよ、靖乃ちゃん!汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん、ってね。
理瀬:
理瀬:どうせ倫理なんて語り得ないんだし、それに倫理と美とは1つである。」
靖乃:「好きだよね、ヴィトゲンシュタイン。」
理瀬:「倫理と可愛いも1つである。」
靖乃:「可愛く生きよ!」
理瀬:「尊敬されるのではなく愛されたいのだ。」
靖乃:「尊敬されるのではなく可愛いと思われたいのだ。」
理瀬:「ぷっ……」
靖乃:「ふふっ。あはは。あははは!」
理瀬:「あはは、はぁ。はぁ。あーおっかしい」
理瀬:
理瀬:「あ、そうだ。さっき靖乃が言ってたことなんだけどさ。」
靖乃:「ん?何だっけ?」
理瀬:「なんで生きてるんだろ、なんで死んじゃだめなんだろう?ってやつ。」
靖乃:「あー、そういえばそういう話だったね。」
理瀬:「多分、理由なんてないんじゃないかな。てか、理由とかあっちゃダメな気がする。」
靖乃:「どういうこと?」
理瀬:「理由があるということは説明できるということ。因果連関の系列項に含まれてしまう。」
靖乃:「うん。うーん?」
理瀬:「つまり、理由が説明できればそれは語り得ることということになるよね。
理瀬:
理瀬:例えば、なぜ生きているかが説明できたとしてさ、
理瀬:
理瀬:その生きている理由を満たせなくなったとき、その生は無意味なものになってしまうの?それはちがくない?」
靖乃:「何かを満たせないと無意味な生か……。うん、その考え方はイヤかな。」
理瀬:「でしょ?
理瀬:
理瀬:だから理由を説明できちゃダメな気がするの。
理瀬:
理瀬:あるいは、当為でも説明できちゃダメだと思う。こう生きるべき、これこれだから自殺はダメ。
理瀬:
理瀬:これも同じで条件を満たせない生は価値として劣るなんて結論に成りかねない。」
靖乃:「うーん、じゃあ結局どういうことになるの?」
理瀬:「説明はどこかで打ち止めにされねばならない。」
靖乃:「まーたヴィトゲンシュタインだ。
靖乃:
靖乃:晩期の言葉だよね。はじめに行為ありき、で有名な。」
理瀬:「そうそう。言葉による説明には限界がある。説明には終端がある。
理瀬:
理瀬:そもそも主体は世界に属さない。それは世界の限界である。」
靖乃:「世界に属さないから、世界の事実によって左右されないってこと?」
理瀬:「そうそう。そして言葉は世界の在り方を記述するものだから、その外は記述できない。
理瀬:
理瀬:なぜ生きるか、なぜ死んではダメかについては。」
靖乃:「結局、とくに理由なんてないってことかぁ。」
理瀬:「まぁざっくり言うとそうなんじゃないかなー。
理瀬:
理瀬:それか、あらゆる仮説はいかなる観察によっても支持される。」
靖乃:「デュエム・クワインテーゼねぇ。」
理瀬:「説明しようと思えばいくらでも説明はつけられる。」
靖乃:「だから、いかなる説明も無力かぁ。
靖乃:
靖乃:なんかこうなってくるとさぁ。」
理瀬:「んー、何?」
靖乃:「私たちって結局なんで病んでるんだろうね?」
理瀬:「さぁ。理由が必要?」
靖乃:「どうだろ?」
理瀬:「靖乃がセックス大好きなのと同じなんじゃない?」
靖乃:「もー、人が真面目に聞いてるのに!」
理瀬:「ごめんって。でも、案外そんなもんなんじゃないかなって思うよ。
理瀬:
理瀬:理由がなきゃ病んじゃいけないわけ?」
靖乃:「うーん、まぁ別にいいのかなぁ……」
理瀬:「人生がどんな様相だろうと、どんな結末になろうと、
理瀬:
理瀬:最後に素晴らしい人生だったって言えれば、それでいいんだよ、きっと。」
靖乃:「そう聞くと、なーんか頭使ってうんうん悩んでるのバカらしくなってきちゃうなー。」
理瀬:「それでいいんじゃない?私らはさ、これまで通り楽しく病んで幸福に生きて行こうじゃない。」
靖乃:「そうだねー。あーあ、なんか時間無駄にした気分。」
理瀬:「もう、真面目に付き合ってあげたのに失礼だなぁ。」
靖乃:「ごめんごめん!
靖乃:
靖乃:さーて、そろそろ帰ろっかなぁ。今日は誰としよ。」
理瀬:「……うわぁ。」
靖乃:「何?そのジト目」
理瀬:「別にー?」
理瀬:
理瀬:「……あのさ。」
靖乃:「ん?何?」
理瀬:「そんなに良いものなの?」
靖乃:「あはは、なになに?やっぱ興味出てきちゃった?
靖乃:
靖乃:それなら、理瀬も一緒に来る?」
理瀬:「いや、そうじゃなくて……その……」
靖乃:「んー?」
理瀬:「靖乃とだったら、してみたいなって……」
靖乃:「……。ぷっ。あははは!何それ!?超ウケる!」
理瀬:「なっ……うぅ。笑わないでよ……。
理瀬:
理瀬:初めては靖乃がいいなって……思って……うっ、それで……その。」
靖乃:「はいはい、分かりましたよー。ふふっ、理瀬、可愛い!」
理瀬:「もう……死ぬほど恥ずかしいんだから。からかわないで!」
靖乃:「でも覚悟してよ?経験豊富な靖乃さんがしっかりリードして、とろっとろにしてあげるから。」
理瀬:「うぅ……靖乃の淫乱……」
靖乃:「そんなこと言ってるけど、私としたいんだもんねー?
靖乃:
靖乃:初めては私がいいんだもんねー?あーもー、かーわい!」
理瀬:「もーいいから……!行こ?」
靖乃:「うん。優しくしてあげるからね」
0:――『無限な線は三角形であること。この三角形は円であり、球であること。』
0:――ニコラウス・クザーヌス
理瀬:「ねぇ、靖乃……、優しくしてくれるって言ったよねぇ?」
靖乃:「うん。だから優しくじーっくり可愛がってあげてるじゃない?」
理瀬:「うぅ。そんなこと言って、さっきから焦らしてばっかり……」
靖乃:「んー?そう?そのわりにさっきから体ビクビクさせちゃってさー、気持ち良さそうにしてるじゃん」
理瀬:「んぅ、それは……」
靖乃:「顔真っ赤にして、目とろけさせて、私にしがみついて。可愛いよ、理瀬」
理瀬:「だってぇ……」
靖乃:「だって、何かなー?理瀬?」
理瀬:「だって……。」
理瀬:
理瀬:「靖乃のベッドで靖乃がいつも寝てる布団と枕で、服だって靖乃のパジャマで。」
理瀬:
理瀬:「しかも靖乃に抱きしめられて、いっぱい撫でたり触られたりされて。靖乃に包まれてるみたいで……」
靖乃:「ふふっ、何それ。それでそんなに興奮してるの?私のこと好き過ぎでしょ。」
理瀬:「うぅ……好きだもん」
靖乃:「ホント可愛い。そんな可愛い反応するから焦らされちゃうんだよ?」
理瀬:「いじわる……」
靖乃:「意地悪な私は嫌い?」
理瀬:「ううん……好き」
靖乃:「あーもう、ほんっと理瀬は……。そんな素直な反応されたらこっちまで照れちゃうじゃん」
理瀬:「えへへ」
靖乃:「嬉しそうにしちゃってさ」
理瀬:「そりゃ嬉しいよ?大好きな人にこんなふうに可愛いがってもらえて。嬉しい……」
靖乃:「あーあ、従順になっちゃって。そろそろ薬も効いてきたのかな。」
理瀬:「さっき一緒に飲んだやつ?」
靖乃:「うん。私も体熱くなって頭もぽわぽわしてきたし。理瀬の反応見てると効いてきたなって」
理瀬:「うん。私も体熱い。頭もボーってする」
靖乃:「ねぇ理瀬。理瀬の顔よく見せて?」
理瀬:「えー、や……恥ずかしい、よ。」
靖乃:「言うことちゃんと聞けたら、焦らすのやめたげるよ?」
理瀬:「ん。ぅん……」
靖乃:「ふふっ、良くできました」
理瀬:「ひゃぁっ!?」
靖乃:「良い反応。ふふふっ。」
理瀬:「はぁ……はぁ。ううっ。」
靖乃:「理瀬ってさ、ホント顔、綺麗だね」
理瀬:「え、そ、そうかな?」
靖乃:「うん。まつ毛も長くて、瞳もすごく綺麗。肌も……」
理瀬:「あっ……んん。」
靖乃:「すべすべで、きめ細かくて。羨ましい。」
理瀬:「あ、ありがと。靖乃もすごく美人だよね。髪の毛サラサラで色白で大人っぽくて。」
靖乃:「そう?」
理瀬:「そうだよ!あ、ねぇ。髪触って良い?」
靖乃:「ふふっ、良いよ?てゆうか今さらだなぁ。髪だけじゃなくて、私のこと理瀬の好きにしていいんだよ?」
理瀬:「えっ……!?うっ、うん……」
靖乃:「ほんと、ウブで可愛い。あっ、髪。ふふっ、私、髪触ってもらうの好きなんだ。理瀬、手つき優しいね」
理瀬:「あっ、すごい。サラサラ。手触りすっごい良い。ずっと触ってたくなるかも」
靖乃:「もう。よしよし」
理瀬:「あ……、頭撫でてもらうの気持ち良い。好き。」
靖乃:「はいはい。たくさん撫でてあげるね。」
理瀬:「ありがと。」
靖乃:「頭だけじゃなくて、たとえば……。こことか。」
理瀬:「ぅにゃんっ!?」
靖乃:「ぷっ。何今の声。かーわいい!」
理瀬:「急に弱いとこ触るから、変な声出ちゃった……!」
靖乃:「理瀬、気付いてないの?さっきから息荒くなって、ずっと小さくだけど可愛い声漏れてるよ?」
理瀬:「えっ!ウソ!?」
靖乃:「やっぱり気付いてなかったのかぁ。」
理瀬:「え、や……ウソ、そんな。恥ずかしい……。」
靖乃:「恥ずかしがってるところも可愛いよ」
理瀬:「ぅ。だって靖乃が。なんでそんな弱いとこ分かるの?」
靖乃:「そりゃまぁ経験が違うからなー。それに、女の子相手にすることもあるし。」
理瀬:「えっ……。そ、そうなの?」
靖乃:「あれ?理瀬に話したことなかったっけ?」
理瀬:「初耳なんだけど。むぅ……。」
靖乃:「あらら、そうだったかぁ。ん?なぁに?その目」
理瀬:「べっつにー」
靖乃:「ヤキモチ妬いてくれてるの?」
理瀬:「ふんっ」
靖乃:「ごめんごめん。よしよし。」
理瀬:「私は靖乃が初めてなのに……」
靖乃:「もう。拗ねないでよ」
理瀬:「女の子の中では、私が一番じゃないとヤダ……」
靖乃:「うっ。そんな、目潤ませて、上目遣いでそんな可愛いこと言われたら……」
理瀬:「ね?私のこと靖乃の好きにしていいから。どんなことでもするからぁ。」
理瀬:
理瀬:「靖乃の一番になりたい……。靖乃のこと大好きなの」
靖乃:「ちゅっ」
理瀬:「んっ。ちゅ。ふぇ?」
靖乃:「そんな可愛いこと言われたら我慢できるわけないでしょ?」
理瀬:「靖乃ぉ……」
靖乃:「よしよし。良い子だね、理瀬。好きだよ。愛おしい。」
理瀬:「うっ、ん。嬉しい」
靖乃:「理瀬、気持ち良さそうにしちゃって」
理瀬:「ねぇ靖乃?私も靖乃に触れたい」
靖乃:「うん。いいよ。言ったでしょ?好きにしていいよって」
理瀬:「ん。」
靖乃:「ひゃっ!ちょ、ちょっと……いきなり、そんなとこ……」
理瀬:「ん。好きにしていいって言ったから。女の子どうしだから分かるよ。靖乃の気持ち良いところ。」
靖乃:「あっ、もう。んんっ。」
理瀬:「ここ?ここが感じるの?」
靖乃:「手つき……やらしい。」
理瀬:「だてに一人でしてないから……。いつも靖乃のこと想いながら一人で慰めてるんだもん。」
靖乃:「あっ、まって!そこ、それ以上、ヤバい。」
理瀬:「気持ち良くなって?はぁ、はぁ、靖乃のこと私の手で。こんなの夢みたい」
靖乃:「んっ、あっ……。はぁ。わ、私だって負けないっ。」
理瀬:「え?あ。ん。ちゅ。」
靖乃:「唇、柔らかいね。舌も熱くてぬるって。すっごくエロい。」
理瀬:「ううぅ。キスずるい。上手すぎる。何も考えられなくなっちゃう。」
靖乃:「でも、好き、でしょ?」
理瀬:「……。うん。」
理瀬:
理瀬:「ねぇ靖乃。お願いがあるの」
靖乃:「うん。なぁに?」
理瀬:「私の体に靖乃の印つけて欲しいの。靖乃のものだって証」
靖乃:「えー、何それ?どうすればいいの?キスマークとか?」
理瀬:「あのね……噛み跡つけて欲しいの」
靖乃:「えっ?」
理瀬:「靖乃に噛まれたいの。痛いくらいに。噛みついて、跡つけて欲しい」
靖乃:「え、えー!?そんなこと……」
理瀬:「ダメ……?痛くしてもいいから、靖乃にだったら……」
靖乃:「うぅ、その上目遣い、ズルいなぁ。」
靖乃:
靖乃:「んー、でも流石に私もそんなこと初めてだし……。上手くできるかな?本当に大丈夫?」
理瀬:「いいの。お願い。もう我慢できないの……」
靖乃:「う。えっと……それじゃあ、行くよ?」
理瀬:「うん、来て?」
靖乃:「ん、ぁむ。んん。」
理瀬:「ん。あっ、あ。もっと……。もっと強く……して?」
靖乃:「う、うん。あーむっ、んっ」
理瀬:「あっ!うっ、んっ。いっ……た、つぅ……」
靖乃:「ごめん!痛かったよね?大丈夫?」
理瀬:「うん。はぁ……はっ。大丈夫。大丈夫だから。もっと強く。もっとたくさんちょうだい」
靖乃:「理瀬……。うん、分かった。ぁむ、んっ。ちゅぅっ。ぷはっ」
理瀬:「あぁ……嬉しい。うれしいうれしい。はぁ……はぁ。うれしい……」
靖乃:「理瀬……、噛まれて感じてるの?体跳ねて、すっかりとろけて、すごいよ?」
理瀬:「大好きな靖乃の証。私の体に。嬉しい……」
靖乃:「もう。理瀬ってやっぱ、ちょっと変態っぽいとこあるよねぇ」
理瀬:「そんなこと、ないもん。靖乃が相手だからだもん」
靖乃:「はいはい。ありがとね。私も理瀬のこと大好きだよ。」
理瀬:「うん……ありがと。好き」
靖乃:「あらら、すっかりとろけちゃって、気持ち良さそうにしちゃってさー」
靖乃:「じゃ、そろそろ、ひとつになろっか?」
理瀬:「あ、うん……はい、お願いします……。優しくして?」
靖乃:「うん。優しくするね」
理瀬:「ねぇ、靖乃。大好きだよ」
靖乃:「うん、私も。大好きだよ。理瀬」
0:――『生の問題の解決を、ひとは問題の消滅によって気づく』
0:――ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン
0:――『神秘とは世界がいかにあるかではなく、世界があるというそのことである。』
0:――ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン
靖乃:「ねぇ、私たちってさ、なんで生きてるんだろ?」
理瀬:「え、何?急にどしたん?靖乃」
靖乃:「んー、特に深い意味はないんだけどさー。なんとなくねー」
理瀬:「あっは。なんとなくにしては随分重いなぁ」
靖乃:「なんかそんなこと考えちゃうことってない?」
理瀬:「うーん、まぁ。あるにはあるよね。」
靖乃:「でしょ?それそれ。今それなの!」
理瀬:「絆創膏が増えたのも同じ理由?ほら、その左手の。」
靖乃:「うん、そんなとこ。見て見て!これ、カラフルで可愛いでしょ!」
理瀬:「ね!可愛いなーって思って見てた!」
靖乃:「えへへ~、でっしょー?ありがと!」
理瀬:「あ、でも!腕に傷増やす前に相談してくれなかったのは可愛くないぞ。」
靖乃:「あっはは、それはごめん。」
靖乃:
靖乃:「話戻るんだけどさ。」
理瀬:「なんで生きてるんだろうってやつ?」
靖乃:「そーそー。」
理瀬:「うーん……、生まれてきたから。」
靖乃:「じゃあなんで生まれて来たんだろう?」
理瀬:「まぁ、そりゃそうなるわな。」
靖乃:「ついでになんで死んじゃいけないんだろ?」
理瀬:「いや、ついでが随分重たいな。」
靖乃:「たとえばさ、私が死んでも悲しむ人が1人もいないとしてさ、
靖乃:
靖乃:それなら人に迷惑が掛からない方法で自殺するのって、世界にほとんど何の影響も与えないでしょ?」
靖乃:
靖乃:「なのにどうしてダメなんだろ?」
理瀬:「自殺は基本的な罪だから、とか?」
靖乃:「あー、ヴィトゲンシュタインの言葉ね。」
理瀬:「そーそー。」
靖乃:「なんかなー、あんまりピンと来ないんだよねぇ。私、クリスチャンじゃないしなぁ。」
理瀬:「それなー。その辺の価値観はピンと来ないこと多いよね。」
靖乃:「そーそー。それに私そもそもあれアウトだよ。」
理瀬:「ん、何が?」
靖乃:「ほら、汝、姦淫するなかれ。」
理瀬:「あー……。好きだよね、靖乃。」
靖乃:「う、なんかその言い方は引っ掛かるなぁ。事実だけどさぁ。」
理瀬:「今何人付き合ってるの?」
靖乃:「うーん、たしか4……いや5。あー、待って4かも。」
理瀬:「ビッチ……」
靖乃:「その言い方は酷くない!?」
理瀬:「事実じゃん!それ全員彼氏なの?」
靖乃:「彼氏というか、うーん。彼氏ではない?なんて言うのかな……えっと。」
理瀬:「セフレ?」
靖乃:「身も蓋もないなぁ……。まぁーでもそんな感じかな」
理瀬:「うっわぁ、やっぱビッチじゃんか」
靖乃:「もー、理瀬ひどーい!」
理瀬:「ごめんごめん。でもさ、そんなに良いものなの?」
靖乃:「ん?セックス?」
理瀬:「うん。やっぱオナニーとは全然違うもん?」
靖乃:「え、そりゃ違うよ!」
理瀬:「ふーん、そっかぁ。どんな感じなの?実際さ。」
靖乃:「あれ?理瀬、興味津々じゃん?」
理瀬:「え?い、いや、別にそんなんじゃないけど……。ちょっと気になっただけというか……」
靖乃:「ふーん?あれ?理瀬ってさ、処女だっけ?」
理瀬:「う、うるさい!それで、どーなの?」
靖乃:「うーん?気持ち良いよ?1人でするのとは全然違う。
靖乃:
靖乃:なんかね、ぼーってしてふわふわしてすごい敏感になって。」
理瀬:「ふーん、そうなんだ……」
靖乃:「あれ?してみたくなっちゃった?」
理瀬:「うるさい。」
靖乃:「でもさー、実際、そういう気分になったときどうしてるの?オナニー?」
理瀬:「まぁ、うん。そうだよ?」
靖乃:「自分の指だけで満足できるの?」
理瀬:「場合によるかな……オモチャ使ったりとかもあるけど……」
靖乃:「あー、なるほどねー。確かに理瀬ってオナニー激しそう」
理瀬:「ビッチに言われたくないんですけど!?」
靖乃:「ビッチ、ビッチって酷いなぁ。理瀬だって興味あるクセに。」
理瀬:「それは……まぁ。」
靖乃:「今度男の子紹介してあげよっか?」
理瀬:「いやいいよ、遠慮しとく。」
靖乃:「結構楽しいよ?」
理瀬:「セックス?何?経験豊富マウントですかー?」
靖乃:「セックスもだけど、男の子を手のひらで転がしてる感覚とか。クセになるよ?」
理瀬:「うっわぁ……ホンモノだ。」
靖乃:「でもさ、時々凹んじゃうことあるんだよね。私、汚れてるなぁって。」
理瀬:「でもやめられないんでしょ?」
靖乃:「うん……。依存してるなぁって思うんだけどね。凹んでるとまた男の子に慰めて欲しくなっちゃって。」
理瀬:「それでまたセックスしちゃう?」
靖乃:「そうそう。やっぱ我慢した方が良いのかな?」
理瀬:「んー?できるの?」
靖乃:「どうだろ?」
理瀬:「ちょっと試してみよっか?」
靖乃:「え?なになに?どういうこと?」
理瀬:「それではこれから私の質問に正直に答えて下さい。」
靖乃:「え?なに?何が始まるの?」
理瀬:「靖乃はどうしてエッチを我慢したいんですか?」
靖乃:「うーん、依存気味だからかな。あんまり良くないよね依存って。」
理瀬:「それは依存したくないってことでいい?」
靖乃:「うん、そうだね。」
理瀬:「依存したくないのはどうして?」
靖乃:「時々凹んじゃうからかな。」
理瀬:「うんうん。凹みたくないんだね?」
靖乃:「うん。落ち込んじゃうし嫌だよ。」
理瀬:「落ちこみたくないんだね?」
靖乃:「そりゃそうだよ。楽しく生きたいじゃん。」
理瀬:「ということはセックスを我慢したいのは楽しく生きたいから、ってことになるよね?」
靖乃:「あー、うん。そうだね。ていうかその論法……ヒュームでしょ?」
理瀬:「あはは、やっぱバレた?」
靖乃:「理性は情念の奴隷に過ぎない、でしょ?」
理瀬:「そう、それ。何々すべきだ。何々した方が良い。
理瀬:
理瀬:そんな理性的な言明は全て結局のところ何々したいからという欲求に支えられているものでしかない。」
靖乃:「てことは、えっと……どうなるの?」
理瀬:「靖乃のセックスしたくないって欲求は根っこのところで楽しく生きたいって欲求に還元されることになるね。」
靖乃:「うーん、でもやっぱセックスしたいかも。そっちの方が楽しいし」
理瀬:「あっは、じゃあ最初から答え出てるじゃん!」
靖乃:「なんか納得行かない!それだと私ビッチみたいじゃん!」
理瀬:「みたいじゃなくてビッチでしょ?」
靖乃:「んー……もう……」
靖乃:
靖乃:「でもさぁ時々落ち込んじゃうのは事実だよ?」
理瀬:「まぁそりゃ生きてればね。そんなこともあるよね。
理瀬:
理瀬:でもさ事実は事実でしかないんだよ。価値を語ることはできない。」
靖乃:「またヴィトゲンシュタイン?」
理瀬:「うん。」
靖乃:「幸福に生きよ!か。」
理瀬:「1916年7月8日の記述だね。
理瀬:
理瀬:世界の内では全てがあるようにあり、起こるように起こる。
理瀬:
理瀬:世界の事実がどうであろうとも幸福な世界は幸福であり、不幸な世界は不幸である。」
靖乃:「どれほど不幸に思われる人生だって幸福に生きよ!まぁ確かにどーせ病むなら楽しく病みたいよね。」
理瀬:「そうそう。そういうこと。
理瀬:
理瀬:悲しいから泣くんじゃない。泣くから悲しいんだ。」
靖乃:「ジェームズ・ランゲ説だね。感情の中枢起源説であるキャノン・バード説に対して、感情の末梢起源説を提唱したってやつだっけ。
靖乃:
靖乃:でもどうして急に?」
理瀬:「しんどいから落ち込むんじゃない、落ち込むからしんどいんだ。」
靖乃:「あーそういうことか。」
理瀬:「突き抜けたビッチになっちゃえばお悩み解決ってわけ!」
靖乃:「その推論ホントに妥当なわけ?すっごい怪しいけど」
靖乃:
靖乃:「あーでもなんか、悩むのバカらしくやってきたかも。ていうかエッチしたくなってきた」
理瀬:「それでいいんだよ、靖乃ちゃん!汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん、ってね。
理瀬:
理瀬:どうせ倫理なんて語り得ないんだし、それに倫理と美とは1つである。」
靖乃:「好きだよね、ヴィトゲンシュタイン。」
理瀬:「倫理と可愛いも1つである。」
靖乃:「可愛く生きよ!」
理瀬:「尊敬されるのではなく愛されたいのだ。」
靖乃:「尊敬されるのではなく可愛いと思われたいのだ。」
理瀬:「ぷっ……」
靖乃:「ふふっ。あはは。あははは!」
理瀬:「あはは、はぁ。はぁ。あーおっかしい」
理瀬:
理瀬:「あ、そうだ。さっき靖乃が言ってたことなんだけどさ。」
靖乃:「ん?何だっけ?」
理瀬:「なんで生きてるんだろ、なんで死んじゃだめなんだろう?ってやつ。」
靖乃:「あー、そういえばそういう話だったね。」
理瀬:「多分、理由なんてないんじゃないかな。てか、理由とかあっちゃダメな気がする。」
靖乃:「どういうこと?」
理瀬:「理由があるということは説明できるということ。因果連関の系列項に含まれてしまう。」
靖乃:「うん。うーん?」
理瀬:「つまり、理由が説明できればそれは語り得ることということになるよね。
理瀬:
理瀬:例えば、なぜ生きているかが説明できたとしてさ、
理瀬:
理瀬:その生きている理由を満たせなくなったとき、その生は無意味なものになってしまうの?それはちがくない?」
靖乃:「何かを満たせないと無意味な生か……。うん、その考え方はイヤかな。」
理瀬:「でしょ?
理瀬:
理瀬:だから理由を説明できちゃダメな気がするの。
理瀬:
理瀬:あるいは、当為でも説明できちゃダメだと思う。こう生きるべき、これこれだから自殺はダメ。
理瀬:
理瀬:これも同じで条件を満たせない生は価値として劣るなんて結論に成りかねない。」
靖乃:「うーん、じゃあ結局どういうことになるの?」
理瀬:「説明はどこかで打ち止めにされねばならない。」
靖乃:「まーたヴィトゲンシュタインだ。
靖乃:
靖乃:晩期の言葉だよね。はじめに行為ありき、で有名な。」
理瀬:「そうそう。言葉による説明には限界がある。説明には終端がある。
理瀬:
理瀬:そもそも主体は世界に属さない。それは世界の限界である。」
靖乃:「世界に属さないから、世界の事実によって左右されないってこと?」
理瀬:「そうそう。そして言葉は世界の在り方を記述するものだから、その外は記述できない。
理瀬:
理瀬:なぜ生きるか、なぜ死んではダメかについては。」
靖乃:「結局、とくに理由なんてないってことかぁ。」
理瀬:「まぁざっくり言うとそうなんじゃないかなー。
理瀬:
理瀬:それか、あらゆる仮説はいかなる観察によっても支持される。」
靖乃:「デュエム・クワインテーゼねぇ。」
理瀬:「説明しようと思えばいくらでも説明はつけられる。」
靖乃:「だから、いかなる説明も無力かぁ。
靖乃:
靖乃:なんかこうなってくるとさぁ。」
理瀬:「んー、何?」
靖乃:「私たちって結局なんで病んでるんだろうね?」
理瀬:「さぁ。理由が必要?」
靖乃:「どうだろ?」
理瀬:「靖乃がセックス大好きなのと同じなんじゃない?」
靖乃:「もー、人が真面目に聞いてるのに!」
理瀬:「ごめんって。でも、案外そんなもんなんじゃないかなって思うよ。
理瀬:
理瀬:理由がなきゃ病んじゃいけないわけ?」
靖乃:「うーん、まぁ別にいいのかなぁ……」
理瀬:「人生がどんな様相だろうと、どんな結末になろうと、
理瀬:
理瀬:最後に素晴らしい人生だったって言えれば、それでいいんだよ、きっと。」
靖乃:「そう聞くと、なーんか頭使ってうんうん悩んでるのバカらしくなってきちゃうなー。」
理瀬:「それでいいんじゃない?私らはさ、これまで通り楽しく病んで幸福に生きて行こうじゃない。」
靖乃:「そうだねー。あーあ、なんか時間無駄にした気分。」
理瀬:「もう、真面目に付き合ってあげたのに失礼だなぁ。」
靖乃:「ごめんごめん!
靖乃:
靖乃:さーて、そろそろ帰ろっかなぁ。今日は誰としよ。」
理瀬:「……うわぁ。」
靖乃:「何?そのジト目」
理瀬:「別にー?」
理瀬:
理瀬:「……あのさ。」
靖乃:「ん?何?」
理瀬:「そんなに良いものなの?」
靖乃:「あはは、なになに?やっぱ興味出てきちゃった?
靖乃:
靖乃:それなら、理瀬も一緒に来る?」
理瀬:「いや、そうじゃなくて……その……」
靖乃:「んー?」
理瀬:「靖乃とだったら、してみたいなって……」
靖乃:「……。ぷっ。あははは!何それ!?超ウケる!」
理瀬:「なっ……うぅ。笑わないでよ……。
理瀬:
理瀬:初めては靖乃がいいなって……思って……うっ、それで……その。」
靖乃:「はいはい、分かりましたよー。ふふっ、理瀬、可愛い!」
理瀬:「もう……死ぬほど恥ずかしいんだから。からかわないで!」
靖乃:「でも覚悟してよ?経験豊富な靖乃さんがしっかりリードして、とろっとろにしてあげるから。」
理瀬:「うぅ……靖乃の淫乱……」
靖乃:「そんなこと言ってるけど、私としたいんだもんねー?
靖乃:
靖乃:初めては私がいいんだもんねー?あーもー、かーわい!」
理瀬:「もーいいから……!行こ?」
靖乃:「うん。優しくしてあげるからね」
0:――『無限な線は三角形であること。この三角形は円であり、球であること。』
0:――ニコラウス・クザーヌス
理瀬:「ねぇ、靖乃……、優しくしてくれるって言ったよねぇ?」
靖乃:「うん。だから優しくじーっくり可愛がってあげてるじゃない?」
理瀬:「うぅ。そんなこと言って、さっきから焦らしてばっかり……」
靖乃:「んー?そう?そのわりにさっきから体ビクビクさせちゃってさー、気持ち良さそうにしてるじゃん」
理瀬:「んぅ、それは……」
靖乃:「顔真っ赤にして、目とろけさせて、私にしがみついて。可愛いよ、理瀬」
理瀬:「だってぇ……」
靖乃:「だって、何かなー?理瀬?」
理瀬:「だって……。」
理瀬:
理瀬:「靖乃のベッドで靖乃がいつも寝てる布団と枕で、服だって靖乃のパジャマで。」
理瀬:
理瀬:「しかも靖乃に抱きしめられて、いっぱい撫でたり触られたりされて。靖乃に包まれてるみたいで……」
靖乃:「ふふっ、何それ。それでそんなに興奮してるの?私のこと好き過ぎでしょ。」
理瀬:「うぅ……好きだもん」
靖乃:「ホント可愛い。そんな可愛い反応するから焦らされちゃうんだよ?」
理瀬:「いじわる……」
靖乃:「意地悪な私は嫌い?」
理瀬:「ううん……好き」
靖乃:「あーもう、ほんっと理瀬は……。そんな素直な反応されたらこっちまで照れちゃうじゃん」
理瀬:「えへへ」
靖乃:「嬉しそうにしちゃってさ」
理瀬:「そりゃ嬉しいよ?大好きな人にこんなふうに可愛いがってもらえて。嬉しい……」
靖乃:「あーあ、従順になっちゃって。そろそろ薬も効いてきたのかな。」
理瀬:「さっき一緒に飲んだやつ?」
靖乃:「うん。私も体熱くなって頭もぽわぽわしてきたし。理瀬の反応見てると効いてきたなって」
理瀬:「うん。私も体熱い。頭もボーってする」
靖乃:「ねぇ理瀬。理瀬の顔よく見せて?」
理瀬:「えー、や……恥ずかしい、よ。」
靖乃:「言うことちゃんと聞けたら、焦らすのやめたげるよ?」
理瀬:「ん。ぅん……」
靖乃:「ふふっ、良くできました」
理瀬:「ひゃぁっ!?」
靖乃:「良い反応。ふふふっ。」
理瀬:「はぁ……はぁ。ううっ。」
靖乃:「理瀬ってさ、ホント顔、綺麗だね」
理瀬:「え、そ、そうかな?」
靖乃:「うん。まつ毛も長くて、瞳もすごく綺麗。肌も……」
理瀬:「あっ……んん。」
靖乃:「すべすべで、きめ細かくて。羨ましい。」
理瀬:「あ、ありがと。靖乃もすごく美人だよね。髪の毛サラサラで色白で大人っぽくて。」
靖乃:「そう?」
理瀬:「そうだよ!あ、ねぇ。髪触って良い?」
靖乃:「ふふっ、良いよ?てゆうか今さらだなぁ。髪だけじゃなくて、私のこと理瀬の好きにしていいんだよ?」
理瀬:「えっ……!?うっ、うん……」
靖乃:「ほんと、ウブで可愛い。あっ、髪。ふふっ、私、髪触ってもらうの好きなんだ。理瀬、手つき優しいね」
理瀬:「あっ、すごい。サラサラ。手触りすっごい良い。ずっと触ってたくなるかも」
靖乃:「もう。よしよし」
理瀬:「あ……、頭撫でてもらうの気持ち良い。好き。」
靖乃:「はいはい。たくさん撫でてあげるね。」
理瀬:「ありがと。」
靖乃:「頭だけじゃなくて、たとえば……。こことか。」
理瀬:「ぅにゃんっ!?」
靖乃:「ぷっ。何今の声。かーわいい!」
理瀬:「急に弱いとこ触るから、変な声出ちゃった……!」
靖乃:「理瀬、気付いてないの?さっきから息荒くなって、ずっと小さくだけど可愛い声漏れてるよ?」
理瀬:「えっ!ウソ!?」
靖乃:「やっぱり気付いてなかったのかぁ。」
理瀬:「え、や……ウソ、そんな。恥ずかしい……。」
靖乃:「恥ずかしがってるところも可愛いよ」
理瀬:「ぅ。だって靖乃が。なんでそんな弱いとこ分かるの?」
靖乃:「そりゃまぁ経験が違うからなー。それに、女の子相手にすることもあるし。」
理瀬:「えっ……。そ、そうなの?」
靖乃:「あれ?理瀬に話したことなかったっけ?」
理瀬:「初耳なんだけど。むぅ……。」
靖乃:「あらら、そうだったかぁ。ん?なぁに?その目」
理瀬:「べっつにー」
靖乃:「ヤキモチ妬いてくれてるの?」
理瀬:「ふんっ」
靖乃:「ごめんごめん。よしよし。」
理瀬:「私は靖乃が初めてなのに……」
靖乃:「もう。拗ねないでよ」
理瀬:「女の子の中では、私が一番じゃないとヤダ……」
靖乃:「うっ。そんな、目潤ませて、上目遣いでそんな可愛いこと言われたら……」
理瀬:「ね?私のこと靖乃の好きにしていいから。どんなことでもするからぁ。」
理瀬:
理瀬:「靖乃の一番になりたい……。靖乃のこと大好きなの」
靖乃:「ちゅっ」
理瀬:「んっ。ちゅ。ふぇ?」
靖乃:「そんな可愛いこと言われたら我慢できるわけないでしょ?」
理瀬:「靖乃ぉ……」
靖乃:「よしよし。良い子だね、理瀬。好きだよ。愛おしい。」
理瀬:「うっ、ん。嬉しい」
靖乃:「理瀬、気持ち良さそうにしちゃって」
理瀬:「ねぇ靖乃?私も靖乃に触れたい」
靖乃:「うん。いいよ。言ったでしょ?好きにしていいよって」
理瀬:「ん。」
靖乃:「ひゃっ!ちょ、ちょっと……いきなり、そんなとこ……」
理瀬:「ん。好きにしていいって言ったから。女の子どうしだから分かるよ。靖乃の気持ち良いところ。」
靖乃:「あっ、もう。んんっ。」
理瀬:「ここ?ここが感じるの?」
靖乃:「手つき……やらしい。」
理瀬:「だてに一人でしてないから……。いつも靖乃のこと想いながら一人で慰めてるんだもん。」
靖乃:「あっ、まって!そこ、それ以上、ヤバい。」
理瀬:「気持ち良くなって?はぁ、はぁ、靖乃のこと私の手で。こんなの夢みたい」
靖乃:「んっ、あっ……。はぁ。わ、私だって負けないっ。」
理瀬:「え?あ。ん。ちゅ。」
靖乃:「唇、柔らかいね。舌も熱くてぬるって。すっごくエロい。」
理瀬:「ううぅ。キスずるい。上手すぎる。何も考えられなくなっちゃう。」
靖乃:「でも、好き、でしょ?」
理瀬:「……。うん。」
理瀬:
理瀬:「ねぇ靖乃。お願いがあるの」
靖乃:「うん。なぁに?」
理瀬:「私の体に靖乃の印つけて欲しいの。靖乃のものだって証」
靖乃:「えー、何それ?どうすればいいの?キスマークとか?」
理瀬:「あのね……噛み跡つけて欲しいの」
靖乃:「えっ?」
理瀬:「靖乃に噛まれたいの。痛いくらいに。噛みついて、跡つけて欲しい」
靖乃:「え、えー!?そんなこと……」
理瀬:「ダメ……?痛くしてもいいから、靖乃にだったら……」
靖乃:「うぅ、その上目遣い、ズルいなぁ。」
靖乃:
靖乃:「んー、でも流石に私もそんなこと初めてだし……。上手くできるかな?本当に大丈夫?」
理瀬:「いいの。お願い。もう我慢できないの……」
靖乃:「う。えっと……それじゃあ、行くよ?」
理瀬:「うん、来て?」
靖乃:「ん、ぁむ。んん。」
理瀬:「ん。あっ、あ。もっと……。もっと強く……して?」
靖乃:「う、うん。あーむっ、んっ」
理瀬:「あっ!うっ、んっ。いっ……た、つぅ……」
靖乃:「ごめん!痛かったよね?大丈夫?」
理瀬:「うん。はぁ……はっ。大丈夫。大丈夫だから。もっと強く。もっとたくさんちょうだい」
靖乃:「理瀬……。うん、分かった。ぁむ、んっ。ちゅぅっ。ぷはっ」
理瀬:「あぁ……嬉しい。うれしいうれしい。はぁ……はぁ。うれしい……」
靖乃:「理瀬……、噛まれて感じてるの?体跳ねて、すっかりとろけて、すごいよ?」
理瀬:「大好きな靖乃の証。私の体に。嬉しい……」
靖乃:「もう。理瀬ってやっぱ、ちょっと変態っぽいとこあるよねぇ」
理瀬:「そんなこと、ないもん。靖乃が相手だからだもん」
靖乃:「はいはい。ありがとね。私も理瀬のこと大好きだよ。」
理瀬:「うん……ありがと。好き」
靖乃:「あらら、すっかりとろけちゃって、気持ち良さそうにしちゃってさー」
靖乃:「じゃ、そろそろ、ひとつになろっか?」
理瀬:「あ、うん……はい、お願いします……。優しくして?」
靖乃:「うん。優しくするね」
理瀬:「ねぇ、靖乃。大好きだよ」
靖乃:「うん、私も。大好きだよ。理瀬」
0:――『生の問題の解決を、ひとは問題の消滅によって気づく』
0:――ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン