声劇台本置き場

0：祖母の家の電話が鳴る 祖母：はい、もしもし？ 詐欺師：もしもし？ばあちゃん？オレ。オレオレ。 祖母：（耳が遠い）…あい？なんだって？ 詐欺師：だから、ばあちゃん、オレだよ！オレ！ 祖母：あい？もしもし？ 詐欺師：――ったく、この婆さん大丈夫か…？ 詐欺師：だーかーらー！オレだってば！オレ！ 祖母：あぁ！あんた、誰かと思ったら、孫の 祖母：寿限無　寿限無　五劫のすりきれ　海砂利水魚の　水行末　雲来末　風来末　食う寝るところに　住むところ　やぶらこうじの　ぶらこうじ　パイポ　パイポ　パイポの　シューリンガン　シューリンガンのグーリンダイ　グーリンダイの　ポンポコピーのポンポコナの　長久命の長助かい？ 詐欺師：は…はあっ？ 祖母：だから、 祖母：寿限無　寿限無　五劫のすりきれ　海砂利水魚の　水行末　雲来末　風来末　食う寝るところに　住むところ　やぶらこうじの　ぶらこうじ　パイポ　パイポ　パイポの　シューリンガン　シューリンガンのグーリンダイ　グーリンダイの　ポンポコピーのポンポコナの　長久命の長助 祖母：かと、こっちは聞いているんだ。おまえ、昔から勉強の方はさっぱりだったけど、とうとう自分の名前も忘れちまったのかい？ 祖母：それとも、今流行りの、オレオレ詐欺…じゃないだろうねぇ？ 詐欺師：お…おう。そんなわけ…あるわけないだろ…！もちろんオレは、 詐欺師：寿限無　寿限無　五劫のすりきれ　海砂利水魚の　水行末　雲来末　風来末　食う寝るところに　住むところ　やぶらこうじの　ぶらこうじ　パイポ　パイポ　パイポの　シューリンガン　シューリンガンのグーリンダイ　グーリンダイの　ポンポコピーのポンポコナの　長久命の長助だ。 詐欺師：ちょっと、電波が悪くて、聞き取れなくてさ。ごめんな、ばあちゃん。 祖母：…あい？なんだって？ 詐欺師：だーかーらー！オレは、 詐欺師：寿限無　寿限無　五劫のすりきれ　海砂利水魚の　水行末　雲来末　風来末　食う寝るところに　住むところ　やぶらこうじの　ぶらこうじ　パイポ　パイポ　パイポの　シューリンガン　シューリンガンのグーリンダイ　グーリンダイの　ポンポコピーのポンポコナの　長久命の長助 詐欺師：だって言ってんの！ 祖母：あーあーあー。やっぱりそうかい。そうだと思ったよ。 詐欺師：おー。やっと話が通じてくれて助かったわ。それでな、ばあちゃん、ちょっとお願いがあるんだけどさ… 祖母：（遮って）そうそう、ばあちゃんも、お願いがあるんだわ。この前、吐息厨配信者を目指すんだって言ってたでしょう？あれから、ばぁちゃんねぇ、一度でいいから、吐息厨配信者風自己紹介が聞きたいと思ってたんだわ。 詐欺師：はぁ？なんだよ、吐息厨配信者って！そんなの、わざわざ電話で話すことじゃないだろ。 祖母：かあぁぁぁっ！甘い！甘すぎる！そんなことで一流の吐息厨配信者になれると思ってるのかい！ 詐欺師：いや、オレ、目指してねーから、そんなの！ 祖母：…おや、怪しいね。この電話、もしかして、オレオレ詐欺…じゃないのかい？ 詐欺師：ま、まさか！あー…吐息厨配信者ね…はいはい…一回しかやらないからな？ 詐欺師：（以下、吐息厨の演技で） 詐欺師：今夜は、寿限無　寿限無　五劫のすりきれ　海砂利水魚の　水行末　雲来末　風来末　食う寝るところに　住むところ　やぶらこうじの　ぶらこうじ　パイポ　パイポ　パイポの　シューリンガン　シューリンガンのグーリンダイ　グーリンダイの　ポンポコピーのポンポコナの　長久命の長助の 詐欺師：枠に来てくれてサンキュー。オレの声にハマってく？ 詐欺師：（素に戻って）…あぁぁぁ！ムリっ！なにこの状況！ 祖母：はぁー。立派だねぇ。ばあちゃん、もう昇天しちゃうよ。 詐欺師：いや、勝手に死んでんじゃねーよ！そうじゃなくて、オレ、ばあちゃんにお願いがあるんだって！ 祖母：（遮って）でもねぇ、やっぱり、吐息厨よりも、いつものオネエの方が良いんじゃないかねぇ？ 詐欺師：は？オネエ？ 祖母：得意だったろう。オネエ枠配信。あれ、じいさんも褒めていたっけねぇ。懐かしいねぇ。ちょっと、久しぶりに聞かせておくれよ、オネエ枠風自己紹介。 詐欺師：やらねーよ！ 祖母：…やっぱり、オレオレ詐欺なのかい？この純真無垢な、ばあちゃんを騙そうってのかい？ 詐欺師：はぁ？…そ、そんなわけないだろ！ 祖母：ばあちゃん孝行は、ばあちゃんが生きてるうちにするもんだ！じいさんも、きっと、そう願ってるはずだ！ 詐欺師：…ちっ！ 詐欺師：（以下、オネエの演技で）仕方ないわねっ！あ～ら、いらっしゃい。 詐欺師：ここは、寿限無　寿限無　五劫のすりきれ　海砂利水魚の　水行末　雲来末　風来末　食う寝るところに　住むところ　やぶらこうじの　ぶらこうじ　パイポ　パイポ　パイポの　シューリンガン　シューリンガンのグーリンダイ　グーリンダイの　ポンポコピーのポンポコナの　長久命の長助の店よ。 詐欺師：お金と時間が許す限り、ゆっくりしていくといいわ。 詐欺師：（素に戻って）…あぁぁぁ！なんで、よりにもよって、オネエなんだよ！ 祖母：あぁぁ…やっぱり、定番が落ち着くねぇ。（涙ぐむ）じいさんにも、聞かせてやりたかったねぇ…。 詐欺師：はぁ…じいちゃんも、これで満足して、成仏してくれるといいな！で、本題なんだけど…。 祖母：（遮って）やっぱり、じいさんにも聞かせてやろうねぇ。 祖母：（外の畑にいるじいさんに呼びかけて）　じいさん！じいさん！！孫がオネエ枠やってくれるって！ 詐欺師：おい！爺さん、死んでるんじゃねーのかよ！ 祖母：…じいさん、畑の水やりで忙しいってさ。ゴメンねぇ。 詐欺師：いや、むしろ、オネエアンコールじゃなくて、ホッとしてる。 詐欺師：でさ、そろそろ、オレの話を聞いてほしいんだけど。 祖母：（遮って）あんなに小さかったのに、こんなに立派になって。あぁ、やっぱり長生きはするもんだ。でもねぇ、できることなら、あの小さかった頃のかわいい声をもう一度聞きたいねぇ。 詐欺師：か、かわいい声…？ 祖母：そうそう、確かショタボって言うんだろう？ばあちゃんの一生のお願いだ。あのかわいい声で、自己紹介を聞かせておくれ。 詐欺師：なんで、いまさら、そんなの…オレ、もういい年だしさ、ほら、過去は振り返ってる暇はないっていうか…。 祖母：なんだい？老い先短いばあちゃんの、一生をかけたお願いが聞けないって言うのかい？…まさか、オレオレ詐欺じゃないだろうね？ 詐欺師：あぁ、もう！またこのパターンかよ！あぁ、ここまできたら、ショタボでもなんでも、やってやるよ！ 祖母：じゃあ、早速お願いしようかねぇ。「ぼく、お年はいくつかな？おなまえを大きな声で言えるかな？」 詐欺師：（以下、ショタボの演技で）はい！５さいです！なまえは、 詐欺師：寿限無　寿限無　五劫のすりきれ　海砂利水魚の　水行末　雲来末　風来末　食う寝るところに　住むところ　やぶらこうじの　ぶらこうじ　パイポ　パイポ　パイポの　シューリンガン　シューリンガンのグーリンダイ　グーリンダイの　ポンポコピーのポンポコナの　長久命の長助です！ 詐欺師：（素に戻って）…あぁぁぁぁあ！なんで、この年になってショタボなんて出さなきゃいけないんだよ！ 祖母：あぁ、ありがたや、ありがたや。いい冥土の土産になったわ。これでもう、ばあちゃんは、思い残すことなく、異世界転生ができるってもんだ。 詐欺師：いや、待て待て。転生するな！なんでナチュラルに天国行き狙ってるんだよ。オレの話は、まだ始まってもいないんだっつーの！ 祖母：あぁ、そうだったね。話って何だい？ 詐欺師：…あぁ、実は夫のいる女性を妊娠させちゃって…その旦那から「示談にしてやるから百万もってこい」って言われてるんだ。 祖母：まさか、そんな…！ 詐欺師：（泣き真似をしながら）オレ、百万なんて用意できないし…もう、ばあちゃんしか頼れる人がいないんだよ。 祖母：わかった。可愛い孫の頼みだ。ばあちゃんに、任せとくれ。 詐欺師：ありがとう！ばあちゃん！で、振込先なんだけど… 祖母：（遮って）その旦那を、始末すればいいんだね？ 詐欺師：…え？ 祖母：あぁ、おまえは何も心配しなくていいからね。ばあちゃんが、全部片づけてやるからねぇ。 詐欺師：違うよ、オレは金を…！ 祖母：かっかっか！孫から金なんか、とるもんか！まぁ、そうだね、おまえがどうしてもって言うなら、語尾に「にゃん」を付けて、自己紹介してもらおうか。それを、今回のお代がわりに頂こうかねぇ。 詐欺師：い、いや、あの…。 祖母：「にゃん」！ 詐欺師：振込…。 祖母：「にゃん」！ 詐欺師：だから…あの…。 祖母：「にゃん」！ 詐欺師：ご、ごめんだにゃん…（電話を切る）