台本概要
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タイトル | Honey&Bear 第三話 「潜入」 |
---|---|
作者名 | ケットシー (@caitsith_udmoon) |
ジャンル | ミステリー |
演者人数 | 5人用台本(男2、女2、不問1) ※兼役あり |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
カウチ家の金庫を襲撃したハニーとベアは思わぬものを見つけてしまう。加えてベアの見つけたダニエの情報はハニーにとって、自らの過去に関係するものあった。ハニーによって語られる過去。過去と決別すべく、二人は謎に満ちたカウチ家へと潜入するが・・・。 一方、マーシャルもまたカウチ家の謎へ巻き込まれようとしていた。 実在する場所とアイテムをもとが、史実のミステリーへと導く第三弾。 ※ベニト石は「ベニトいし」で統一してください。 ※note版とは一部表現が異なります。使用時は各メンバー使用台本を統一してください。 84 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ハニー | 女 | 62 | 怪盗ハニーベアのプランの立案、盗みを担当。セクシーでキュートな見た目に反して体術などを得意としており、ベアとは『盗みはクレイジーなほど面白い』を信条に怪盗劇を続ける。 いつでも陽気で、スリルを楽しむ大胆な女性。美しいもの、かわいいものが好きな一面がある。 |
ベア | 男 | 46 | 怪盗ハニーベアのハッキング、電気、機械系統、ドライバーをこなすオタクハッカー。とある政府のハッカーとして軟禁されていたところをハニーに『盗み』出される。本人は今の暮らしを気に入っており、ハニーは相棒としか見てないものの、盗み出された時にハニーを、『自分の守護天使』と思っている。 |
マーシャル | 男 | 51 | ロス市警警部/強盗殺人課 『ハニーベア』事件の担当。古風な警察官だが、勘が鋭い。過去にリアーヌ・カウチという女性と交際しており、その正体に気付きながらも今も忘れないでいる。 |
アレックス | 不問 | 20 | ロス市警警部補/強盗殺人課『ハニーベア』事件担当。ほぼ、マーシャルの秘書。主に、情報整理、収集を得意としており、社内ではエリート。だが、マーシャルに憧れ、強盗殺人課への配属を希望した。 |
執事 | 不問 | 32 | (アレックスとの兼役。性別・♂♀どちらでも。女性の場合は女警部補、女執事として演じてください。) カウチ家に仕える執事。温和だが、自分の役割を優先することを常としている。しかし、リアーヌに同情し、ブラックリリーの後始末やサポートも行うことになり、両立できない思いに悩んでいる。 |
リアーヌ・ブラックリリー | 女 | 26 | ベニト石発見者の娘でありながら、残酷な怪盗ブラックリリー。しかし、本当は自分の運命を呪い、つまらない女と自重する苦しむ女性。ブラックリリーとして、マーシャルに近付くも……恋に落ちてしまう。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
【あらすじ】:
:実在するロサンゼルスを舞台に、派手な盗みを繰り返す「怪盗Honey&Bear」。
:それを追うロス市警強盗殺人課のマーシャルとアレックスの元に、
:ある日、彼らからの予告状が届く。
:『2月28日 午前0時 ロサンゼルス自然史博物館、
:ベニト石を頂きに参る。Honey&Bear』
:その予告状から、彼らが思いもしなかった事件が始まるのであった・・・。
:
【シナリオ約束事項】:
:性別変更→×
:アレンジ→○(話が壊れない程度、他のキャストに迷惑がかからないなら)
:人数変更→○(兼任など)
:改変→×
:初心者→○
:※シナリオに書かれていない、指を鳴らす、吐息、笑いなどシナリオ外の役を深める、
:セリフ外の演技は大歓迎です。ただし、こちらでもお話が壊れない程度でお願いします。
:※年齢、雰囲気キーワードはあくまで目安です。参考程度に捉えてください。
:
登場人物:
ハニー:
ハニー:性別・♀
ハニー:怪盗ハニーベアのプランの立案、盗みを担当。
ハニー:セクシーでキュートな見た目に反して体術などを得意としており、
ハニー:ベアとは『盗みはクレイジーなほど面白い』を信条に怪盗劇を続ける。
ハニー:いつでも陽気で、スリルを楽しむ大胆な女性。美しいもの、
ハニー:かわいいものが好きな一面がある。
ハニー:年齢・19〜28(13くらいのロリや、30:のセクシーなお姉様でもよし)
ハニー:雰囲気キーワードセクシー、キュート、小悪魔、アクティブ
ハニー:口癖・セクシー
:
ベア:
ベア:性別・♂
ベア:怪盗ハニーベアのハッキング、電気、機械系統、ドライバーをこなすオタクハッカー。
ベア:とある政府のハッカーとして軟禁されていたところをハニーに『盗み』出される。
ベア:本人は今の暮らしを気に入っており、ハニーは相棒としか見てないものの、
ベア:盗み出された時にハニーを、『自分の守護天使』と思っている。
ベア:年齢・19〜32(ハニーの立ち回りによっては、お兄さん、ショタもあり)
ベア:雰囲気キーワード・オタク、情に厚い、厨二っぽいワル
ベア:好きなもの・ネット、発明、エナジードリンク、ゲーム、アニメ
:
マーシャル:
マーシャル:性別・♂
マーシャル:ロス市警警部/強盗殺人課 『ハニーベア』事件の担当。
マーシャル:古風な警察官だが、勘が鋭い。
マーシャル:過去にリアーヌ・カウチという女性と交際しており、
マーシャル:その正体に気付きながらも今も忘れないでいる。
マーシャル:年齢・35〜50:
マーシャル:雰囲気キーワード・渋い、古風、熱血漢
マーシャル:好きなもの・タバコ、酒、コーヒー、つば広の中折れ帽子
:
アレックス:
執事:執事アレックスとの兼役。
執事:性別・♂♀どちらでも
執事:女性の場合は女警部補、女執事として演じてください。
アレックス:ロス市警警部補/強盗殺人課『ハニーベア』事件担当。ほぼ、マーシャルの秘書。
アレックス:主に、情報整理、収集を得意としており、社内ではエリート。
アレックス:だが、マーシャルに憧れ、強盗殺人課への配属を希望した。
アレックス:年齢・20:〜50:
アレックス:雰囲気・秘書、冷静、真面目、マーシャルを尊敬している
アレックス:好きなもの・スーツ、仕事道具、コーヒー。
執事:カウチ家に仕える執事。温和だが、自分の役割を優先することを常としている。
執事:しかし、リアーヌに同情し、ブラックリリーの後始末やサポートも行うことになり、
執事:両立できない思いに悩んでいる。
執事:年齢・25〜70:
執事:雰囲気キーワード・従順、丁寧、誠実、ミステリアス
:
リアーヌ・ブラックリリー:
リアーヌ・ブラックリリー:ベニト石発見者の娘でありながら、残酷な怪盗ブラックリリー。
リアーヌ・ブラックリリー:しかし、本当は自分の運命を呪い、つまらない女と自重する苦しむ女性。
リアーヌ・ブラックリリー:ブラックリリーとして、マーシャルに近付くも……恋に落ちてしまう。
リアーヌ・ブラックリリー:年齢・35〜40:
リアーヌ・ブラックリリー:雰囲気キーワード・優雅、大人な女性、コンプレックスをもつ、影がある
リアーヌ・ブラックリリー:雰囲気キーワード(ブラックリリー時)・妖艶、狂気、攻撃的
:
0:以下、本編が始まります。
:
0:ベア、タイトルコールしてください
:
ベア:Honey&Bear
ベア:第三話 『潜入』
:
0:ベアのナレーションと、前回のセリフで海外ドラマっぽく演じてください。
ベア:前回までの、ハニー&ベア……。
ベア:俺とハニーはロサンゼルス自然史博物館にある、ベニト石を狙っていた。
マーシャル:『2/28 午前0:時 ロサンゼルス自然史博物館、ベニト石を頂きに参る。ハニーベア』か……。
ベア:だが、盗みは失敗。ハニーは銃弾を喰らった挙句、
ベア:死んだはずの怪盗ブラックリリーそっくりの女と会ったとか言い出しやがった!
リアーヌ・ブラックリリー:(ため息)……それはそれは。嫌われたものねぇ?
ベア:その女と、ベニト石(べにといし)について調べ始めた俺たちは、
ベア:ベニト石が実は、あの聖杯伝説に関係があること、
ベア:そして、その真相は発見者のカウチ家にあることを知る。
ハニー:じゃあ……その聖杯が、この近くにあるかもしれないって言ったら?
ベア:真実を求めて、ウェストハリウッド銀行のカウチ家の金庫に
べア:忍び込んだ俺たちを待っていたのは、意外なものだった!
ベア:マーシャルの旦那も様子がおかしい。
ベア:ハニーや俺も、これ以上ないってほどトラブル続きだ!
:
0:ベア、気を引き締めるように
:
ベア:だが、こんな時こそ相棒のベア様がしっかりサポートしてやんねえとなぁ!
0:ベア、少しとぼけた感じで
ベア:……ま、俺の居場所はモニターの前、……だけどな。
:
:【ハニーベア 隠れ家】
:
ベア:よしっ、俺のベイビーちゃんたちは全員揃ってるな?……やれやれだぜ。
ベア:あの後、リアーヌ・カウチが銀行に入って行った時は……青ざめたぜ!
ハニー:リアーヌ・カウチが?何の用だったの?
ベア:さあな。わかんねえ……。すぐ帰っちまった。
ベア:そっちは異常、なかったのか?
ハニー:いいえ、金庫内では『特別』なことはなかったわ?
ベア:投資の相談かねぇ?……まったく、優雅なこったぜ。
ベア:(ため息)……と言いてえところだが……、
ベア:金庫の中身はその紙っぺら一枚だった、……ってわけか。
ハニー:……ええ。
ハニー:『青き石を救い出せし、英雄の屋敷にて待つ』……。
ハニー:(舌打ち)あの女だわ。
ベア:例のブラックリリーに似てたって言う、女FBIか。
ハニー:あいつ、いったい何者なの?
ハニー:ねえ、ベア、……何かわかった?
ベア:ああ、まず、FBIのダニエ・クロフォードだが……、
ベア:あの夜から行方不明だそうだ。
ハニー:……行方不明?
ハニー:そもそも、あの女、本当にFBIなの?
ベア:ああ、ダニエ・クロフォード……、警察からのヘッドハンティングだ。
ベア:勤続履歴もホワイト。表彰歴もある。……エリートってヤツだな。
ベア:だが、2年前に一週間の空白がある。
ハニー:……それって?
0:ベア、意外そうに驚いて
ベア:知らねえのか?有名だったぞ?
ベア:ブラックリリーの捜査中、失踪したんだ。
ハニー:!?
ベア:テレビだけじゃねえ!ネットじゃ、大盛り上がりだった!
ベア:ブラックリリーを名乗る奴が現れたり、ダニエを名乗る書き込みがあふれたもんだ。
ベア:最後の目撃情報から、特定しようとするネット集団も現れたが……
ベア:……結局、つかめたのはガセばっかだったな。
ハニー:……ああ、その頃は……ちょっと、ね……。
ハニー:……ねえ、ベア?
ハニー:あなたは、そのお祭りに参加したの?
ベア:したかったけどな。俺もその頃は、役人どもの檻の中。
ベア:んな自由はなかったよ。
ベア:……できてたら、今頃は億万長者だったのかねえ?
ハニー:あの女は、……そんな簡単に捕まったり、……死ぬようなタマじゃない……。
ベア:あの女?
ベア:おい……ハニー?お前、こないだから変だぞ?
ハニー:(ため息)……なんでもない……。
ベア:なあ……、確かにお前とはまだ組んで、一年ちょっとだ。
ベア:だが、あのクソつまらねえ……、真っ白な部屋から盗み出してくれた時にはよ……
ベア:『この女は蜂なんかじゃねえ。俺のアークエンジェルだ』って
ベア:俺は、そう思ったんだ……。
ハニー:ベア……、いきなり何言い出すの?
ハニー:私が……エンジェルなんて……、ガラじゃないわ。
ベア:茶化すなよ。
ベア:……確かにそう思ったんだ……。
ベア:なあ……何かあるなら、いってくれよ。
ベア:なんか、まずいことが起こってんなら……、
ベア:俺が……、
0:ベア、若干照れるようにどもって……
ベア:……お、お前のアークエンジェルになってやる。
ベア:それが相棒ってもんだろ?
ハニー:(軽く笑って)……あの檻の中でしょぼくれてたクマちゃんが、
ハニー:言うようになったじゃない……?
ベア:ガラじゃねえのはわかってるさ……。
ハニー:いいえ、わかった……。
ハニー:でも……、まだ私も過去の記憶は……思いだしたばかりだから、まだ整理がついてないの……。
ハニー:それでもいい?
ベア:お前、記憶喪失だったのか!?聞いてねえぞ!?
ハニー:(軽く笑って)別に不便もなかったし?
ハニー:……思い出せないなら、思い出さなくていいことって割り切ってたのよ。
0:ハニー、憂鬱そうに
ハニー:……実際、……その通りだった。
ベア:大丈夫なのか?顔色が悪いぞ……?
ハニー:……いいえ、必要だから話しておくわ。
ハニー:聞いて。
ベア:(ため息)……わかった。お前がそれでいいなら、話してくれ。
0:ハニ、ー絞り出すように、過去を話し始める
ハニー:……あたしは5年前まで、
ハニー:単なる……ケチなピックポケット(スリ)だった。
ハニー:メトロに潜っては……身なりのいい連中から平たい財布や、
ハニー:見る価値もないジュエリーを盗んで……、金にする毎日。
ハニー:時には……、依頼されて盗むこともあったけど……、
ハニー:ベガスで豪遊なんて夢のまた夢。
ハニー:でも、頼れる人間もいない私には、それしかなかった。
ベア……:辛くは……なかったのか?
ハニー:辛いなんて……思ったことない。
ハニー:生まれた時から……、ずっとそうだったから。
ハニー:その日の夕飯にありつくのも、精一杯。
ハニー:だけど、それが私にとっての平和だったのよ。
ハニー:そんな毎日が……、永遠に続くと思ってた。
ハニー:でも……、あの女をターゲットにしたのが、運の尽き。
ベア:さっきから……あの女ってよ……
ベア:(気がついたように)……ブラックリリーか?
ハニー:(自嘲気味に笑って)フッ……、そう。
ハニー:えらく身なりのいい女でね。
ハニー:……いいカモだと思ったわ。
ハニー:あの女の財布や、ジュエリーを服に入れて……、
ハニー:駅に出た瞬間……、捕まった。
ベア:逃げられなかったのか?
ハニー:無理だったわ。
ハニー:たくさんの大男に……、押さえつけられてね。
ハニー:今でも覚えてる。あの女は……、そんな私を見下ろして……、
ハニー:『お嬢ちゃん、人生を変えてあげる。』そう言ったのよ……。
ハニー:それからは地獄。
ベア:……。
ハニー:監禁されて、……顔以外は改造されて、
ハニー:……怪盗としてのテクも……文字通り、叩き込まれた。
ハニー:それでも私は、……本当の名前だけは……絶対に言わなかった。
ハニー:『ハニー』、そう名乗り続けたの……。
ハニー:そしたら、『じゃあ、あなたはハニーBね。もう1人の私。』
ハニー:……そんなふうに、アイツは言ったの。
ベア:……どう言うことだ?
ハニー:あの女……、身も心も私を『ブラックリリー』にしようとしていたのよ。
ハニー:少しずつ侵食されていきながら……、恐怖する私を見たくて……、
ハニー:顔だけは最後まで……、私のまま、ね。
ベア:なんてこった……。ひどすぎる……。
ハニー:……仕上げの第一段階で……、記憶をいじられた時に……誰かがきた。
ハニー:まだ意識がハッキリしてない私に、『逃げて』っていって、外に出してくれたわ。
ハニー:気がついたら、ニューヨークの路地裏で、気を失ってた。
ベア:まさか、そいつがダニエ……か?
ハニー:……わからない。
ハニー:今でもあの時の記憶はあいまい。
ハニー:それどころか……昔のことを思い出したのも……、最近のことよ。
ハニー:私がハニーと、今も名乗るのは……、本当の名前が思い出せないから……。
ハニー:ブラックリリーはね……、私から本当の名前も奪って行ったのよ。
ベア:ハニー……。
ハニー:でも……あの夜、私に銃弾をぶち込んだ女は……絶対にダニエじゃない。
ハニー:私のことをハニービーと呼ぶ女は……、あの女だけ……。
0:ハニー、手を叩いて
ハニー:昔話はこれでおしまい。
ハニー:……今度は、私が質問する番ね。
ハニー:……ねえ、ベア?
ハニー:ブラックリリーと、ダニエの事件についても……調べてくれたのよね?
ベア:ああ……、だが、どうにもクサい。
ベア:……ブラックリリーの遺体の損傷は、かなり激しかったそうだ。
ベア:かろうじて残っていた遺髪のDNAが……、
ベア:過去の証拠品と合致して、ブラックリリーとわかったんだとよ。
ベア:DNA鑑定の精度は、10:0:%に限りなく近い。
ベア:すり替わりの可能性を考えて……、ダニエ本人のDNAも調べたらしい。
ベア:……結果は本人と判明。
ベア:それで、FBI本部は事件終結を宣言したようだ。
ハニー:そう……。
ハニー:……確かに、それはクサいわね。
ハニー:(考えるように)……。
ベア:……なあ……、ハニー。
ベア:もし、俺らの勘が当たってるなら……俺はこの仕事、降りたほうがいいと思うぜ?
ベア:俺はブラックリリーのことは知らん。
ベア:だが、お前のそんなゾンビみてえな顔見続けるなら……、
ベア:ゲームの中でゾンビ撃ってるほうがマシだ。
ベア:そろそろマーシャルの旦那にゃ……オサラバして、
ベア:フロリダあたりで仕事すんのも悪かねえ。
ベア:……そうだろ?クイーンビー?
ハニー:……。
ハニー:そうね、それも悪くない。
ハニー:でも、もし……あの女が生きていて、
ハニー:このメッセージもあの女が残したものなら……、アイツは必ず追ってくる。
ハニー:……それに言ったでしょ?
ハニー:舐められて終わりっていうのは、気に入らない。
ベア:……なら、どうする?
ハニー:……乗り込むわ。カウチ家にね。
:
:【ウェストハリウッド銀行正面 パトカー内】
:
アレックス:所轄と消防への引き継ぎは、無事済んだとのことです。
アレックス:水道管の破裂については消防が調査をしている最中ですが、
アレックス:所轄によると、銀行に被害がない以上……、
アレックス:事故として処理される可能性が高いとのことです。
アレックス:……一旦、署まで戻りますか?
マーシャル:……。
アレックス:警部?
マーシャル:おい、アレックス。
マーシャル:お前は前回のベニト石の件と、今回の件、どう見る?
アレックス:私が……、ですか?
マーシャル:そうだ。前回といい、奇妙なことが多い。お前の意見を聞きたい。
アレックス:……そうですね。今回の件はともかく……、
アレックス:前回のベニト石事件は、マスコミに説明した通り、
アレックス:……ハニーベアの犯行で間違い無いかと……。
アレックス:あらかじめ……、ダニエ捜査官を拉致し、
アレックス:彼女になりすまし、我々とともに侵入した……。
マーシャル:ふむ……。
アレックス:見回りのスキに……電気柵と、センサーの電源を抜き、
アレックス:撃たれたように見せ掛けて、我々が現場に注目しているうちに……逃亡。
アレックス:実際、警備を増やすことを拒み、……入りやすくしたのは彼女です。
アレックス:それに、あの夜以来、……・ダニエ・クロフォードは行方が知れません。
アレックス:FBI本部では、騒ぎになっているそうです。
アレックス:恐らく、ベニト石とともに……、ダニエ捜査官は……今も奴らの手に……。
マーシャル:ああ、確かに筋は通ってるな。筋は……。
マーシャル:だが、前回と言い、ハニーベアらしくないとは思えないか?
マーシャル:奴らのやり口は大胆かつ、奇想天外だ。
アレックス:前回も発電所を落とすという……、大掛かりなものだった、かと。
マーシャル:現場の話だ。
マーシャル:……奴らは毎回、自分たちの犯行をアピールするかのように、……跡を残していた。
アレックス:ああ、確かに……床に穴を開けたり、……全く別のコピーを置いたり。
マーシャル:発電所は、恐らくハニーベアの犯行だろう。
マーシャル:……だが、あのベニト石を盗んだのは……
アレックス:……違う犯人……?
アレックス:そんなこと、いったい誰が?
マーシャル:わからん……。だが、今回のことも、妙だ。
マーシャル:あの銀行員は、……嘘をついていた。
アレックス:……え?
アレックス:ウェストハリウッド銀行の、ですか?
マーシャル:ああ、これは勘だが、
マーシャル:俺の質問に答える時、自白しないホシと……同じ目をしていやがった。
アレックス:そういえば……、奥の階段に、工事中のテープがありましたね……。
マーシャル:ああ……、アレは、金庫へ続く階段だろう。
マーシャル:おそらく、……・何かがあった。
0:マーシャル、考えるように
マーシャル:だが……、口止めされた?
アレックス:……令状をとりますか?
マーシャル:……いや、本人達が被害がなかったと言っているんだ……。
0:タバコを探しながら
マーシャル:何も出なければ……、それこそ……
マーシャル:……ん?このカードは?
0:リアーヌ、カードに書かれたメッセージを読む
リアーヌ・ブラックリリー:(リアーヌの声で)明朝、自宅にご招待します。
リアーヌ・ブラックリリー:あの頃のように2人で……。
0:マーシャル、驚いて
マーシャル:……これは!?
アレックス:どうかしましたか?警部?
マーシャル:おい!ちょっと待ってろ!
0:車を出て、女を探す。しかし、見当たらない。
マーシャル:おい、さっきの女がどっちに行ったかわかるか!?
アレックス:……さっきの女……、とは?
マーシャル:俺にぶつかってきた女だ!
アレックス:申し訳ありません!気がつきませんでした!
0:車の屋根を叩いて
マーシャル:くそっ!
マーシャル:おい!今回の、ハニーベアのターゲットの住所は調べてあるか!?
アレックス:リアーヌ・カウチ……ですか?確か、捜査資料に……。
アレックス:ああ、サンベニト郡(ぐん)の……、コアリンガのようです!
マーシャル:貸せ!
マーシャル:アレックス、お前は署に戻っていろ!
アレックス:ど、どうされたんですか!?警部!?
マーシャル:俺はカウチ家に向かう!……リアーヌ・カウチに会う用事ができた!
アレックス:もう夜ですよ!?
アレックス:それに……、カウチ家まではだいぶかかります!
アレックス:それなら一緒に!
マーシャル:……いや、これは個人的な用事だ。……すまん!
0:マーシャル車を走らせる。
アレックス:警部!?マーシャル警部!?ああっ!くそっ!
:
:【深夜 サンベニト郡 カウチ家】
:
ハニー:ふうん……?ここが、カウチ家……。
ハニー:……随分と、リッチじゃない?
ハニー:ベア、通信は?
ベア:……良好だ。
ベア:……本当に行くのか?
ハニー:心配しないで。クマちゃん?
ハニー:アークエンジェルに、なってくれるんでしょ?
ベア:……わかった。二階の東側の窓から入れそうだ。
ベア:だが用心しろよ?ちゃんと装備は揃ってるか?
ハニー:……クマちゃんったら、本当に心配性ね?
ベア:バカ言え。
ベア:……悪魔の住む家に、忍び込むんだぞ?
ベア:リオンをサポートする、メガネちゃんなら……
ハニー:ハイハイ。わかったから……、
ハニー:行くわよ。
:
:【カウチ家 二階】
:
ハニー:アラームの一つもないとは……。
ハニー:なめられたもんだわ……。
0:家を進みながら
ハニー:……?
ハニー:……おかしい……。
ハニー:カウチ家は……、ベニト石の発見以来……、
ハニー:大金を得て、ビジネスにも成功しているはず……。
ハニー:使用人の1人も、見当たらないなんて。
ハニー:それに……
0:絨毯の具合を確かめ
ハニー:絨毯(じゅうたん)の磨耗(まもう)の具合から言っても、人の出入りが少なすぎる……。
0:突然、ベアから通信が入る
ベア:聞こえるか?
ハニー:……!
ハニー:驚かせないで……。
ベア:すまん……。だが、……少し、妙だ。
ベア:……ドローンで見て回ったが、部屋はどこも空のようだ。
ハニー:人がいないってこと?……空家なの?
ベア:いや、データによると……
ベア:リアーヌ・カウチと、執事が……、
ベア:2人でくらしているようだ……。
ベア:……赤外線に、切り替えてみる。
ベア:……ん!?
ベア:……お前の正面、廊下を進んだ先に……誰かいるようだ。
ベア:何かわかるか?
ハニー:近づいてみる……。
0:ハニー、少し開いた部屋を覗き見る
0:こちらに背を向けて、1人用のソファに座る女性が見える。
ハニー:……。
ベア……女か……?
0:忍足で部屋に入り、女に近づくハニー。
ハニー:入ってみる……。
ベア:お、おい。待て!
0:急に扉が閉まり、鍵が締まる。
ハニー:!
0:ハニー、扉を開けようとする
ハニー:と、閉じ込められた!?
ベア:おい!?大丈夫か!?
リアーヌ・ブラックリリー:……フフッ……。
リアーヌ・ブラックリリー:……こっちにいらっしゃい。
ハニー:……あんた、何者!?
リアーヌ・ブラックリリー:あら……、ずいぶんとつれないのね……?
0:ソファが回り、ブラックリリーが姿を現す。
0:しかし、その顔は無残に焼け爛れている。
ハニー:な……!その顔は……!?
リアーヌ・ブラックリリー:ハロー、ハニービー?ママを……忘れてしまったのかしら?
0:突然、ハニーの体がいうことを聞かなくなり、倒れる。
0:あらがって立ち上がろうとしながら
ハニー:あ……、な……!!?
ベア:おい!ハニー、どうした!?ハニー!
リアーヌ・ブラックリリー:フンッ、こんな焼けただれた顔でも……役に立つものね?
ハニー:な……なんで……。
リアーヌ・ブラックリリー:ウフフ……、マインドコントロールをする時に……、
リアーヌ・ブラックリリー:いくつかの暗示を、しかけておいたの。
リアーヌ・ブラックリリー:……気に入ってもらえたかしら?
ハニー:……あ、あんた……あんただけは……
リアーヌ・ブラックリリー:ああ……再会の喜びをしたいところだけど……、時間がないの。
リアーヌ・ブラックリリー:おやすみなさい。ハニービー?
0:ハニー、眼の前が暗くなる。耳元でベアが叫ぶ声のみが響く
ベア:おい!くそ!!大丈夫か!?ハニー!ハニー!
:
:【深夜 カウチ邸】
:
0:ノック
マーシャル:ああ、すまない。私は……
執事:ロス市警 強盗殺人課のマーシャル・アノー様ですね。お待ちしておりました。
マーシャル:!?……あなたは!?
執事:時間がありません。館の中へどうぞ。
マーシャル:……ああ……。
:
:【カウチ邸 1階】
:
執事:マーシャル様、お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ……。
マーシャル:……あなたは?
執事:なにぶん、時間がございません。わたくしめについては道中にて。
0:廊下の奥へ進み、燭台を引くと、地下への階段が現れる。
マーシャル:……隠し階段?
執事:お足元に……、お気をつけを……。
0:隠し階段とびらを閉める
執事:わたくしめは、……カウチ家に代々仕(つか)えてきた執事でございます。
執事:マーシャル様、お願いがあります。
執事:どうか……リアーヌ様を、止めていただきたいのです。
マーシャル:リアーヌ!?リアーヌは一体……。
0:問いかけようとした時、階段が終わり、トロッコのプラットフォームが現れる。
執事:こちらに……、お乗りください。
マーシャル:これは……トロッコ?……一体……?
執事:……このトロッコの先に、リアーヌさまはおられます。
執事:どうか……、今は……。
マーシャル:……。わかった。
執事:少し揺れます……。お気をつけください。
0:トロッコが動き出し、執事が話し出す。
執事:マーシャル様、あなた様は三年前……、リアーヌ様と出会われた。
執事:しかし、それは……、仕組まれたものなのです……。
マーシャル:……。
マーシャル:……それはブラックリリーにですか?
執事:やはり……、お気づきでしたか。
マーシャル:……ああ……。
マーシャル:リアーヌと、出会ったのは
マーシャル:ブラックリリー事件を担当し、
マーシャル:……もう少しで真相にたどり着くところでした。
マーシャル:リアーヌはブラックリリーの部下ではないか?
マーシャル:そう、疑いました……。
マーシャル:しかし……、
執事:どれほど捜査をしても……、明らかになることはなかった。
マーシャル:……なぜ、それを……?
執事:マーシャル様、本当はお気づきなのでは?
執事:リアーヌ様は、ブラックリリーの部下などではありません。
執事:リアーヌ様こそが……、大怪盗ブラックリリーなのです。
マーシャル:……。
マーシャル:嫌な予感はしていました……。
マーシャル:ですが、いまだに信じられん。
マーシャル:あんな穏やかな彼女が……なぜ?
執事:リアーヌ様は、自らの生い立ちを嘆くあまり……、
執事:いつしか、残虐で恐ろしい行為を……
執事:繰り返すようになりました。
執事:ですが、あなた様と出会い……、
執事:リアーヌ様はお変わりになられた。
マーシャル:……変わった?
執事:はい。初めて、人を愛することを……
執事:知ったのです。
執事:そしてまた、初めて、自らの犯した罪を……
執事:恐ろしいと……、お感じになられた。
執事:……それゆえに、リアーヌ様はお決めになられたのです。
執事:ブラックリリーを殺そう、と……。
マーシャル:それは……どういう意味ですか……?
執事:リアーヌ様は……、自身の身代わりを作ろうと
執事:お考えになられたのです……。
執事:その者を、ブラックリリーに仕立て上げ……、
執事:リアーヌ様ご自身は……、あなたの元へ……
執事:お戻りになるおつもりだったのです……。
マーシャル:……そんな……。
執事:ですが……、それは失敗に終わりました……。
マーシャル:ダニエ・クロフォード……ですか?
執事:はい……。
執事:ダニエ様は、身代わりになるはずだった娘を逃がし、
執事:リアーヌ様のもとへ、たどり着きました。
マーシャル:……。しかし、失敗した?
執事:はい。リアーヌ様はおいかりになり、
執事:ダニエ様を身代わりにされました……。
マーシャル:……。
執事:ですが……、ダニエ様は命を失う直前に……正気を取り戻し、
執事:リアーヌ様もろとも、炎で自らを焼いたのです。
マーシャル:……なんてことだ……。
マーシャル:では……、その後のダニエは……。
執事:はい、リアーヌ様でございます。
執事:二重生活のなかで、リアーヌ様は焼けただれた姿を治し、
執事:あなたのもとへ、お帰りになる……おつもりでした。
マーシャル:だが……、そんな話は一言も……。
マーシャル:一言でも言ってくれたなら、俺は彼女のそばに……。
執事:焼けただれたリアーヌ様のお顔は、まさに……
執事:残虐なブラックリリー、そのもの。
執事:リアーヌ様は、顔を見られることを……何よりも恐れました。
執事:特に、あなたには。
マーシャル:……そんな……。
執事:そして、その外見はまるで呪いのように……
執事:癒えることは……、決してありませんでした。
執事:それゆえに、だんだんと……リアーヌ様は、お心を病まれていきました。
マーシャル:……リアーヌ……。
執事:それでも、……時に姿を変えて、あなたさまのもとへ通われていた。
執事:この二年間、あなたさまは……リアーヌさまをお忘れにならなかった。
執事:それこそが、リアーヌさまにとっての……、救いだったのです。
マーシャル:……そう……だったのか……。
執事:繰り返される……狂気と救いの中で……、
執事:リアーヌさまは……、再びブラックリリーとなりました。
執事:そして……、決して許されぬ……
執事:カウチ家の秘密に手を出されようとしているのです……。
マーシャル:カウチ家の……秘密……?
:
:【カウチ家 地下】
:
リアーヌ・ブラックリリー:ハニービー、目覚めなさい。
0:ハニー、目を覚ますが体が動かない
リアーヌ・ブラックリリー:ウフフ……、特製の麻酔薬はいかが?
0:麻酔が解けるまで、麻酔にかけられた演技をしてください
ハニー:……。
リアーヌ・ブラックリリー:目だけは見えているのに、体は動かないでしょう?あなたのために作ったのよ?
リアーヌ・ブラックリリー:結局、違う女に使うことになったけれど……。
リアーヌ・ブラックリリー:本当に忌々しい……。あの女さえいなければ……。
リアーヌ・ブラックリリー:まあいいわ!あなたは、わたくしの元に帰ってきてくれたんだもの!
リアーヌ・ブラックリリーあなたには、重要な役目があるの。
リアーヌ・ブラックリリー:でも、その前に、ご褒美をあげるわ……。
リアーヌ・ブラックリリー:……わたくしのコレクションを見せてあげる。
リアーヌ・ブラックリリー:ああ、体が動かないでしょう?だから、車椅子で運んであげるわ。
リアーヌ・ブラックリリー:決して、ずり落ちないように、……こうやって……、縛ってね!
ハニー:……!
リアーヌ・ブラックリリー:……さあ……、これでいい。
リアーヌ・ブラックリリー:きっと、感動して、涙を流すわよ……?
リアーヌ・ブラックリリー:だって、わたくしのコレクションは、誰もみたことがないのだもの!
リアーヌ・ブラックリリー:嘘ではなくてよ?
リアーヌ・ブラックリリー:目にしたものはもう、この世にはいないから。
リアーヌ・ブラックリリー:……あいつらは、わたくしをみて、恐怖したの。
リアーヌ・ブラックリリー:……失礼な話ではなくて?
ハニー:…………。
リアーヌ・ブラックリリー:だから、わたくしの痛みがわかるように……、
リアーヌ・ブラックリリー:1人づつ、生きたまま解体してあげたの。
リアーヌ・ブラックリリー:そして、恐怖した顔のまま、
リアーヌ・ブラックリリー:焼き殺してあげたわ。
ハニー:……!
0:ハニーうめいて体を動かそうとする
ハニー:……!
リアーヌ・ブラックリリー:あらあら、怖がらないで。
リアーヌ・ブラックリリー:あなたは、特別だもの!そんなことはしないわ。
ハニー:……!
リアーヌ・ブラックリリー:ウフフ、相変わらずかわいい子……。
リアーヌ・ブラックリリー:さあ、ごらんなさい?……美しいでしょう?
リアーヌ・ブラックリリー:ここが、わたくしの美術館。
リアーヌ・ブラックリリー:ルーブル!オルセー!メトロポリタン!
リアーヌ・ブラックリリー:世界の名だたる美術館など、見世物小屋に見えるほど!
リアーヌ・ブラックリリー:あんな、石ころよりも……価値のある、素晴らしい品々!
リアーヌ・ブラックリリー:ああ……?でも……、それだけじゃなくてよ?
ハニー……。
リアーヌ・ブラックリリー:わたくしの最高のコレクションは、
リアーヌ・ブラックリリー:こんなつまらないものだけではないの……。フフフ……。
リアーヌ・ブラックリリー:ねえ?ハニービー?
リアーヌ・ブラックリリー:この世で美しいものは……やはり、人間だと思わない?
リアーヌ・ブラックリリー:わたくしは……、ずっと自分が自分であることを許せなかった。
リアーヌ・ブラックリリー:ああ、忌まわしいカウチ家!
リアーヌ・ブラックリリー:……縛られ続けなければならない、この運命(さだめ)!
リアーヌ・ブラックリリー:……わたくしは……、ずっと他人が羨ましかった。
リアーヌ・ブラックリリー:だから、コレクションすることにしたの。
:
:【カウチ家 地下】
:
0:トロッコが止まる
執事:どうぞ、こちらへ。
執事:もうしばしすれば……、夜が明けます……。
マーシャル:私は……、どうすればいいのですか?
執事:マーシャル様、先ほどの話を聞かれても……リアーヌ様を愛していただけますか?
マーシャル:はい。
マーシャル:……私は……、刑事です。
マーシャル:しかし、……それ以前に……
マーシャル:1人の男として……彼女を、愛しています。
マーシャル:……確かに、彼女は恐ろしいことをした。
マーシャル:そして、私は……それを、罰する身です。
マーシャル:しかし……、彼女が破滅に向かっているならば……、
マーシャル:私はそれを止め、共に罰を受けるつもりです。
執事:ならば、その言葉を、リアーヌ様に伝えていただきたいのです……。
執事:本来ならば……わたくしが、止めなければいけない立場でした……。
執事:しかし……、もはや……リアーヌ様はわたくしの言葉には、
執事:耳をお貸しくださいません……。
執事:……あなた様にお願いするしかないのです。
マーシャル:彼女は……リアーヌは……、何をしようとしているのですか?
執事:……それは……このカウチ家の禁忌(きんき)……
マーシャル:……禁忌(きんき)?
執事:まずは……、このカウチ家に伝わる伝承から……、
執事:お話しいたしましょう……。
:
:【カウチ家 地下廊下】
:
リアーヌ・ブラックリリー:……ここからは特別な場所よ。わたくしがコレクションした人々が飾られているわ。
0:ハニーだんだんと、麻酔から解けてください。
ハニー:……ぐ……・
リアーヌ・ブラックリリー:アレは……、わたくしがカレッジにいた時に出会った少女よ……。
リアーヌ・ブラックリリー:彼女はいつも輝いていたわ……。
リアーヌ・ブラックリリー:……どうしても彼女になってみたかった。
リアーヌ・ブラックリリー:だから、頂いたの。
リアーヌ・ブラックリリー:初めて……、彼女になった時は、
リアーヌ・ブラックリリー:まるで、悪戯(いたずら)をしているみたいに、ドキドキしたわ!
リアーヌ・ブラックリリー:あちらはね、わたくしの会社にいらした貴族のご子息。
リアーヌ・ブラックリリー:あんなにも美しいのに……、悪い遊びをしていてね、
リアーヌ・ブラックリリー:もったいないから、もらってあげたの。
リアーヌ・ブラックリリー:ああ、あちらに並んでいる瓶(びん)は気にしないでいいわ……。
リアーヌ・ブラックリリー:外見は醜悪(しゅうあく)でも……、
リアーヌ・ブラックリリー:どこか一部でも美しければ標本にすることにしているの。
ハニー:う……ぐぅ……。
リアーヌ・ブラックリリー:わたくし、差別はしないの。そう、差別はいけない。
リアーヌ・ブラックリリー:わたくしは……、ずっと差別されてきたわ。
リアーヌ・ブラックリリー:あいつらが、影で笑っていることなんて……わかってた。
リアーヌ・ブラックリリー:あいつらが本当に欲しかったのは、わたくしの肩書だけ。
リアーヌ・ブラックリリー:でもね!……あの人だけは違った!
リアーヌ・ブラックリリー:わたくしのことを……今も思っていてくれるの!
リアーヌ・ブラックリリー:だから……、決めたのよ。
リアーヌ・ブラックリリー:絶対に美しくなって、
リアーヌ・ブラックリリー:全てから逃れて……、あの人のもとへ帰るって!
ハニー:……の……。
リアーヌ・ブラックリリー:あら?
リアーヌ・ブラックリリー:もう、麻酔が切れ始めているのかしら?急がないとね。
ハニー:……もの……。
リアーヌ・ブラックリリー:なあに?……聞こえないわ?
リアーヌ・ブラックリリー:もっと、はっきり言ってくれないと。
ハニー:……化け物……!
0:ブラックリリー、その言葉に無表情になり、一時、沈黙してぽつりと
リアーヌ・ブラックリリー:……。
リアーヌ・ブラックリリー:……あいつらと同じことを言うのね。もう1人の、わたくしなのに。
0:ブラックリリー、元の楽しそうな声に戻り
リアーヌ・ブラックリリー:ウフフッ!安心して!あなたは綺麗よ!
リアーヌ・ブラックリリー:……だから、用がすんだら飾ってあげる……。
0:ハニーを押す車椅子が止まる。
ハニー:……!
リアーヌ・ブラックリリー:さあ、ここよ!この扉の先こそが、あなたが見たかったもの……。
リアーヌ・ブラックリリー:……そして、わたくしたちの明るい未来への扉!
リアーヌ・ブラックリリー:さあ、準備はできて?
リアーヌ・ブラックリリー:ともに2年前の、全ての間違いに終止符を打ちましょう!
0:リアーヌ、不穏に高笑いを上げる
:
:【続く】
【あらすじ】:
:実在するロサンゼルスを舞台に、派手な盗みを繰り返す「怪盗Honey&Bear」。
:それを追うロス市警強盗殺人課のマーシャルとアレックスの元に、
:ある日、彼らからの予告状が届く。
:『2月28日 午前0時 ロサンゼルス自然史博物館、
:ベニト石を頂きに参る。Honey&Bear』
:その予告状から、彼らが思いもしなかった事件が始まるのであった・・・。
:
【シナリオ約束事項】:
:性別変更→×
:アレンジ→○(話が壊れない程度、他のキャストに迷惑がかからないなら)
:人数変更→○(兼任など)
:改変→×
:初心者→○
:※シナリオに書かれていない、指を鳴らす、吐息、笑いなどシナリオ外の役を深める、
:セリフ外の演技は大歓迎です。ただし、こちらでもお話が壊れない程度でお願いします。
:※年齢、雰囲気キーワードはあくまで目安です。参考程度に捉えてください。
:
登場人物:
ハニー:
ハニー:性別・♀
ハニー:怪盗ハニーベアのプランの立案、盗みを担当。
ハニー:セクシーでキュートな見た目に反して体術などを得意としており、
ハニー:ベアとは『盗みはクレイジーなほど面白い』を信条に怪盗劇を続ける。
ハニー:いつでも陽気で、スリルを楽しむ大胆な女性。美しいもの、
ハニー:かわいいものが好きな一面がある。
ハニー:年齢・19〜28(13くらいのロリや、30:のセクシーなお姉様でもよし)
ハニー:雰囲気キーワードセクシー、キュート、小悪魔、アクティブ
ハニー:口癖・セクシー
:
ベア:
ベア:性別・♂
ベア:怪盗ハニーベアのハッキング、電気、機械系統、ドライバーをこなすオタクハッカー。
ベア:とある政府のハッカーとして軟禁されていたところをハニーに『盗み』出される。
ベア:本人は今の暮らしを気に入っており、ハニーは相棒としか見てないものの、
ベア:盗み出された時にハニーを、『自分の守護天使』と思っている。
ベア:年齢・19〜32(ハニーの立ち回りによっては、お兄さん、ショタもあり)
ベア:雰囲気キーワード・オタク、情に厚い、厨二っぽいワル
ベア:好きなもの・ネット、発明、エナジードリンク、ゲーム、アニメ
:
マーシャル:
マーシャル:性別・♂
マーシャル:ロス市警警部/強盗殺人課 『ハニーベア』事件の担当。
マーシャル:古風な警察官だが、勘が鋭い。
マーシャル:過去にリアーヌ・カウチという女性と交際しており、
マーシャル:その正体に気付きながらも今も忘れないでいる。
マーシャル:年齢・35〜50:
マーシャル:雰囲気キーワード・渋い、古風、熱血漢
マーシャル:好きなもの・タバコ、酒、コーヒー、つば広の中折れ帽子
:
アレックス:
執事:執事アレックスとの兼役。
執事:性別・♂♀どちらでも
執事:女性の場合は女警部補、女執事として演じてください。
アレックス:ロス市警警部補/強盗殺人課『ハニーベア』事件担当。ほぼ、マーシャルの秘書。
アレックス:主に、情報整理、収集を得意としており、社内ではエリート。
アレックス:だが、マーシャルに憧れ、強盗殺人課への配属を希望した。
アレックス:年齢・20:〜50:
アレックス:雰囲気・秘書、冷静、真面目、マーシャルを尊敬している
アレックス:好きなもの・スーツ、仕事道具、コーヒー。
執事:カウチ家に仕える執事。温和だが、自分の役割を優先することを常としている。
執事:しかし、リアーヌに同情し、ブラックリリーの後始末やサポートも行うことになり、
執事:両立できない思いに悩んでいる。
執事:年齢・25〜70:
執事:雰囲気キーワード・従順、丁寧、誠実、ミステリアス
:
リアーヌ・ブラックリリー:
リアーヌ・ブラックリリー:ベニト石発見者の娘でありながら、残酷な怪盗ブラックリリー。
リアーヌ・ブラックリリー:しかし、本当は自分の運命を呪い、つまらない女と自重する苦しむ女性。
リアーヌ・ブラックリリー:ブラックリリーとして、マーシャルに近付くも……恋に落ちてしまう。
リアーヌ・ブラックリリー:年齢・35〜40:
リアーヌ・ブラックリリー:雰囲気キーワード・優雅、大人な女性、コンプレックスをもつ、影がある
リアーヌ・ブラックリリー:雰囲気キーワード(ブラックリリー時)・妖艶、狂気、攻撃的
:
0:以下、本編が始まります。
:
0:ベア、タイトルコールしてください
:
ベア:Honey&Bear
ベア:第三話 『潜入』
:
0:ベアのナレーションと、前回のセリフで海外ドラマっぽく演じてください。
ベア:前回までの、ハニー&ベア……。
ベア:俺とハニーはロサンゼルス自然史博物館にある、ベニト石を狙っていた。
マーシャル:『2/28 午前0:時 ロサンゼルス自然史博物館、ベニト石を頂きに参る。ハニーベア』か……。
ベア:だが、盗みは失敗。ハニーは銃弾を喰らった挙句、
ベア:死んだはずの怪盗ブラックリリーそっくりの女と会ったとか言い出しやがった!
リアーヌ・ブラックリリー:(ため息)……それはそれは。嫌われたものねぇ?
ベア:その女と、ベニト石(べにといし)について調べ始めた俺たちは、
ベア:ベニト石が実は、あの聖杯伝説に関係があること、
ベア:そして、その真相は発見者のカウチ家にあることを知る。
ハニー:じゃあ……その聖杯が、この近くにあるかもしれないって言ったら?
ベア:真実を求めて、ウェストハリウッド銀行のカウチ家の金庫に
べア:忍び込んだ俺たちを待っていたのは、意外なものだった!
ベア:マーシャルの旦那も様子がおかしい。
ベア:ハニーや俺も、これ以上ないってほどトラブル続きだ!
:
0:ベア、気を引き締めるように
:
ベア:だが、こんな時こそ相棒のベア様がしっかりサポートしてやんねえとなぁ!
0:ベア、少しとぼけた感じで
ベア:……ま、俺の居場所はモニターの前、……だけどな。
:
:【ハニーベア 隠れ家】
:
ベア:よしっ、俺のベイビーちゃんたちは全員揃ってるな?……やれやれだぜ。
ベア:あの後、リアーヌ・カウチが銀行に入って行った時は……青ざめたぜ!
ハニー:リアーヌ・カウチが?何の用だったの?
ベア:さあな。わかんねえ……。すぐ帰っちまった。
ベア:そっちは異常、なかったのか?
ハニー:いいえ、金庫内では『特別』なことはなかったわ?
ベア:投資の相談かねぇ?……まったく、優雅なこったぜ。
ベア:(ため息)……と言いてえところだが……、
ベア:金庫の中身はその紙っぺら一枚だった、……ってわけか。
ハニー:……ええ。
ハニー:『青き石を救い出せし、英雄の屋敷にて待つ』……。
ハニー:(舌打ち)あの女だわ。
ベア:例のブラックリリーに似てたって言う、女FBIか。
ハニー:あいつ、いったい何者なの?
ハニー:ねえ、ベア、……何かわかった?
ベア:ああ、まず、FBIのダニエ・クロフォードだが……、
ベア:あの夜から行方不明だそうだ。
ハニー:……行方不明?
ハニー:そもそも、あの女、本当にFBIなの?
ベア:ああ、ダニエ・クロフォード……、警察からのヘッドハンティングだ。
ベア:勤続履歴もホワイト。表彰歴もある。……エリートってヤツだな。
ベア:だが、2年前に一週間の空白がある。
ハニー:……それって?
0:ベア、意外そうに驚いて
ベア:知らねえのか?有名だったぞ?
ベア:ブラックリリーの捜査中、失踪したんだ。
ハニー:!?
ベア:テレビだけじゃねえ!ネットじゃ、大盛り上がりだった!
ベア:ブラックリリーを名乗る奴が現れたり、ダニエを名乗る書き込みがあふれたもんだ。
ベア:最後の目撃情報から、特定しようとするネット集団も現れたが……
ベア:……結局、つかめたのはガセばっかだったな。
ハニー:……ああ、その頃は……ちょっと、ね……。
ハニー:……ねえ、ベア?
ハニー:あなたは、そのお祭りに参加したの?
ベア:したかったけどな。俺もその頃は、役人どもの檻の中。
ベア:んな自由はなかったよ。
ベア:……できてたら、今頃は億万長者だったのかねえ?
ハニー:あの女は、……そんな簡単に捕まったり、……死ぬようなタマじゃない……。
ベア:あの女?
ベア:おい……ハニー?お前、こないだから変だぞ?
ハニー:(ため息)……なんでもない……。
ベア:なあ……、確かにお前とはまだ組んで、一年ちょっとだ。
ベア:だが、あのクソつまらねえ……、真っ白な部屋から盗み出してくれた時にはよ……
ベア:『この女は蜂なんかじゃねえ。俺のアークエンジェルだ』って
ベア:俺は、そう思ったんだ……。
ハニー:ベア……、いきなり何言い出すの?
ハニー:私が……エンジェルなんて……、ガラじゃないわ。
ベア:茶化すなよ。
ベア:……確かにそう思ったんだ……。
ベア:なあ……何かあるなら、いってくれよ。
ベア:なんか、まずいことが起こってんなら……、
ベア:俺が……、
0:ベア、若干照れるようにどもって……
ベア:……お、お前のアークエンジェルになってやる。
ベア:それが相棒ってもんだろ?
ハニー:(軽く笑って)……あの檻の中でしょぼくれてたクマちゃんが、
ハニー:言うようになったじゃない……?
ベア:ガラじゃねえのはわかってるさ……。
ハニー:いいえ、わかった……。
ハニー:でも……、まだ私も過去の記憶は……思いだしたばかりだから、まだ整理がついてないの……。
ハニー:それでもいい?
ベア:お前、記憶喪失だったのか!?聞いてねえぞ!?
ハニー:(軽く笑って)別に不便もなかったし?
ハニー:……思い出せないなら、思い出さなくていいことって割り切ってたのよ。
0:ハニー、憂鬱そうに
ハニー:……実際、……その通りだった。
ベア:大丈夫なのか?顔色が悪いぞ……?
ハニー:……いいえ、必要だから話しておくわ。
ハニー:聞いて。
ベア:(ため息)……わかった。お前がそれでいいなら、話してくれ。
0:ハニ、ー絞り出すように、過去を話し始める
ハニー:……あたしは5年前まで、
ハニー:単なる……ケチなピックポケット(スリ)だった。
ハニー:メトロに潜っては……身なりのいい連中から平たい財布や、
ハニー:見る価値もないジュエリーを盗んで……、金にする毎日。
ハニー:時には……、依頼されて盗むこともあったけど……、
ハニー:ベガスで豪遊なんて夢のまた夢。
ハニー:でも、頼れる人間もいない私には、それしかなかった。
ベア……:辛くは……なかったのか?
ハニー:辛いなんて……思ったことない。
ハニー:生まれた時から……、ずっとそうだったから。
ハニー:その日の夕飯にありつくのも、精一杯。
ハニー:だけど、それが私にとっての平和だったのよ。
ハニー:そんな毎日が……、永遠に続くと思ってた。
ハニー:でも……、あの女をターゲットにしたのが、運の尽き。
ベア:さっきから……あの女ってよ……
ベア:(気がついたように)……ブラックリリーか?
ハニー:(自嘲気味に笑って)フッ……、そう。
ハニー:えらく身なりのいい女でね。
ハニー:……いいカモだと思ったわ。
ハニー:あの女の財布や、ジュエリーを服に入れて……、
ハニー:駅に出た瞬間……、捕まった。
ベア:逃げられなかったのか?
ハニー:無理だったわ。
ハニー:たくさんの大男に……、押さえつけられてね。
ハニー:今でも覚えてる。あの女は……、そんな私を見下ろして……、
ハニー:『お嬢ちゃん、人生を変えてあげる。』そう言ったのよ……。
ハニー:それからは地獄。
ベア:……。
ハニー:監禁されて、……顔以外は改造されて、
ハニー:……怪盗としてのテクも……文字通り、叩き込まれた。
ハニー:それでも私は、……本当の名前だけは……絶対に言わなかった。
ハニー:『ハニー』、そう名乗り続けたの……。
ハニー:そしたら、『じゃあ、あなたはハニーBね。もう1人の私。』
ハニー:……そんなふうに、アイツは言ったの。
ベア:……どう言うことだ?
ハニー:あの女……、身も心も私を『ブラックリリー』にしようとしていたのよ。
ハニー:少しずつ侵食されていきながら……、恐怖する私を見たくて……、
ハニー:顔だけは最後まで……、私のまま、ね。
ベア:なんてこった……。ひどすぎる……。
ハニー:……仕上げの第一段階で……、記憶をいじられた時に……誰かがきた。
ハニー:まだ意識がハッキリしてない私に、『逃げて』っていって、外に出してくれたわ。
ハニー:気がついたら、ニューヨークの路地裏で、気を失ってた。
ベア:まさか、そいつがダニエ……か?
ハニー:……わからない。
ハニー:今でもあの時の記憶はあいまい。
ハニー:それどころか……昔のことを思い出したのも……、最近のことよ。
ハニー:私がハニーと、今も名乗るのは……、本当の名前が思い出せないから……。
ハニー:ブラックリリーはね……、私から本当の名前も奪って行ったのよ。
ベア:ハニー……。
ハニー:でも……あの夜、私に銃弾をぶち込んだ女は……絶対にダニエじゃない。
ハニー:私のことをハニービーと呼ぶ女は……、あの女だけ……。
0:ハニー、手を叩いて
ハニー:昔話はこれでおしまい。
ハニー:……今度は、私が質問する番ね。
ハニー:……ねえ、ベア?
ハニー:ブラックリリーと、ダニエの事件についても……調べてくれたのよね?
ベア:ああ……、だが、どうにもクサい。
ベア:……ブラックリリーの遺体の損傷は、かなり激しかったそうだ。
ベア:かろうじて残っていた遺髪のDNAが……、
ベア:過去の証拠品と合致して、ブラックリリーとわかったんだとよ。
ベア:DNA鑑定の精度は、10:0:%に限りなく近い。
ベア:すり替わりの可能性を考えて……、ダニエ本人のDNAも調べたらしい。
ベア:……結果は本人と判明。
ベア:それで、FBI本部は事件終結を宣言したようだ。
ハニー:そう……。
ハニー:……確かに、それはクサいわね。
ハニー:(考えるように)……。
ベア:……なあ……、ハニー。
ベア:もし、俺らの勘が当たってるなら……俺はこの仕事、降りたほうがいいと思うぜ?
ベア:俺はブラックリリーのことは知らん。
ベア:だが、お前のそんなゾンビみてえな顔見続けるなら……、
ベア:ゲームの中でゾンビ撃ってるほうがマシだ。
ベア:そろそろマーシャルの旦那にゃ……オサラバして、
ベア:フロリダあたりで仕事すんのも悪かねえ。
ベア:……そうだろ?クイーンビー?
ハニー:……。
ハニー:そうね、それも悪くない。
ハニー:でも、もし……あの女が生きていて、
ハニー:このメッセージもあの女が残したものなら……、アイツは必ず追ってくる。
ハニー:……それに言ったでしょ?
ハニー:舐められて終わりっていうのは、気に入らない。
ベア:……なら、どうする?
ハニー:……乗り込むわ。カウチ家にね。
:
:【ウェストハリウッド銀行正面 パトカー内】
:
アレックス:所轄と消防への引き継ぎは、無事済んだとのことです。
アレックス:水道管の破裂については消防が調査をしている最中ですが、
アレックス:所轄によると、銀行に被害がない以上……、
アレックス:事故として処理される可能性が高いとのことです。
アレックス:……一旦、署まで戻りますか?
マーシャル:……。
アレックス:警部?
マーシャル:おい、アレックス。
マーシャル:お前は前回のベニト石の件と、今回の件、どう見る?
アレックス:私が……、ですか?
マーシャル:そうだ。前回といい、奇妙なことが多い。お前の意見を聞きたい。
アレックス:……そうですね。今回の件はともかく……、
アレックス:前回のベニト石事件は、マスコミに説明した通り、
アレックス:……ハニーベアの犯行で間違い無いかと……。
アレックス:あらかじめ……、ダニエ捜査官を拉致し、
アレックス:彼女になりすまし、我々とともに侵入した……。
マーシャル:ふむ……。
アレックス:見回りのスキに……電気柵と、センサーの電源を抜き、
アレックス:撃たれたように見せ掛けて、我々が現場に注目しているうちに……逃亡。
アレックス:実際、警備を増やすことを拒み、……入りやすくしたのは彼女です。
アレックス:それに、あの夜以来、……・ダニエ・クロフォードは行方が知れません。
アレックス:FBI本部では、騒ぎになっているそうです。
アレックス:恐らく、ベニト石とともに……、ダニエ捜査官は……今も奴らの手に……。
マーシャル:ああ、確かに筋は通ってるな。筋は……。
マーシャル:だが、前回と言い、ハニーベアらしくないとは思えないか?
マーシャル:奴らのやり口は大胆かつ、奇想天外だ。
アレックス:前回も発電所を落とすという……、大掛かりなものだった、かと。
マーシャル:現場の話だ。
マーシャル:……奴らは毎回、自分たちの犯行をアピールするかのように、……跡を残していた。
アレックス:ああ、確かに……床に穴を開けたり、……全く別のコピーを置いたり。
マーシャル:発電所は、恐らくハニーベアの犯行だろう。
マーシャル:……だが、あのベニト石を盗んだのは……
アレックス:……違う犯人……?
アレックス:そんなこと、いったい誰が?
マーシャル:わからん……。だが、今回のことも、妙だ。
マーシャル:あの銀行員は、……嘘をついていた。
アレックス:……え?
アレックス:ウェストハリウッド銀行の、ですか?
マーシャル:ああ、これは勘だが、
マーシャル:俺の質問に答える時、自白しないホシと……同じ目をしていやがった。
アレックス:そういえば……、奥の階段に、工事中のテープがありましたね……。
マーシャル:ああ……、アレは、金庫へ続く階段だろう。
マーシャル:おそらく、……・何かがあった。
0:マーシャル、考えるように
マーシャル:だが……、口止めされた?
アレックス:……令状をとりますか?
マーシャル:……いや、本人達が被害がなかったと言っているんだ……。
0:タバコを探しながら
マーシャル:何も出なければ……、それこそ……
マーシャル:……ん?このカードは?
0:リアーヌ、カードに書かれたメッセージを読む
リアーヌ・ブラックリリー:(リアーヌの声で)明朝、自宅にご招待します。
リアーヌ・ブラックリリー:あの頃のように2人で……。
0:マーシャル、驚いて
マーシャル:……これは!?
アレックス:どうかしましたか?警部?
マーシャル:おい!ちょっと待ってろ!
0:車を出て、女を探す。しかし、見当たらない。
マーシャル:おい、さっきの女がどっちに行ったかわかるか!?
アレックス:……さっきの女……、とは?
マーシャル:俺にぶつかってきた女だ!
アレックス:申し訳ありません!気がつきませんでした!
0:車の屋根を叩いて
マーシャル:くそっ!
マーシャル:おい!今回の、ハニーベアのターゲットの住所は調べてあるか!?
アレックス:リアーヌ・カウチ……ですか?確か、捜査資料に……。
アレックス:ああ、サンベニト郡(ぐん)の……、コアリンガのようです!
マーシャル:貸せ!
マーシャル:アレックス、お前は署に戻っていろ!
アレックス:ど、どうされたんですか!?警部!?
マーシャル:俺はカウチ家に向かう!……リアーヌ・カウチに会う用事ができた!
アレックス:もう夜ですよ!?
アレックス:それに……、カウチ家まではだいぶかかります!
アレックス:それなら一緒に!
マーシャル:……いや、これは個人的な用事だ。……すまん!
0:マーシャル車を走らせる。
アレックス:警部!?マーシャル警部!?ああっ!くそっ!
:
:【深夜 サンベニト郡 カウチ家】
:
ハニー:ふうん……?ここが、カウチ家……。
ハニー:……随分と、リッチじゃない?
ハニー:ベア、通信は?
ベア:……良好だ。
ベア:……本当に行くのか?
ハニー:心配しないで。クマちゃん?
ハニー:アークエンジェルに、なってくれるんでしょ?
ベア:……わかった。二階の東側の窓から入れそうだ。
ベア:だが用心しろよ?ちゃんと装備は揃ってるか?
ハニー:……クマちゃんったら、本当に心配性ね?
ベア:バカ言え。
ベア:……悪魔の住む家に、忍び込むんだぞ?
ベア:リオンをサポートする、メガネちゃんなら……
ハニー:ハイハイ。わかったから……、
ハニー:行くわよ。
:
:【カウチ家 二階】
:
ハニー:アラームの一つもないとは……。
ハニー:なめられたもんだわ……。
0:家を進みながら
ハニー:……?
ハニー:……おかしい……。
ハニー:カウチ家は……、ベニト石の発見以来……、
ハニー:大金を得て、ビジネスにも成功しているはず……。
ハニー:使用人の1人も、見当たらないなんて。
ハニー:それに……
0:絨毯の具合を確かめ
ハニー:絨毯(じゅうたん)の磨耗(まもう)の具合から言っても、人の出入りが少なすぎる……。
0:突然、ベアから通信が入る
ベア:聞こえるか?
ハニー:……!
ハニー:驚かせないで……。
ベア:すまん……。だが、……少し、妙だ。
ベア:……ドローンで見て回ったが、部屋はどこも空のようだ。
ハニー:人がいないってこと?……空家なの?
ベア:いや、データによると……
ベア:リアーヌ・カウチと、執事が……、
ベア:2人でくらしているようだ……。
ベア:……赤外線に、切り替えてみる。
ベア:……ん!?
ベア:……お前の正面、廊下を進んだ先に……誰かいるようだ。
ベア:何かわかるか?
ハニー:近づいてみる……。
0:ハニー、少し開いた部屋を覗き見る
0:こちらに背を向けて、1人用のソファに座る女性が見える。
ハニー:……。
ベア……女か……?
0:忍足で部屋に入り、女に近づくハニー。
ハニー:入ってみる……。
ベア:お、おい。待て!
0:急に扉が閉まり、鍵が締まる。
ハニー:!
0:ハニー、扉を開けようとする
ハニー:と、閉じ込められた!?
ベア:おい!?大丈夫か!?
リアーヌ・ブラックリリー:……フフッ……。
リアーヌ・ブラックリリー:……こっちにいらっしゃい。
ハニー:……あんた、何者!?
リアーヌ・ブラックリリー:あら……、ずいぶんとつれないのね……?
0:ソファが回り、ブラックリリーが姿を現す。
0:しかし、その顔は無残に焼け爛れている。
ハニー:な……!その顔は……!?
リアーヌ・ブラックリリー:ハロー、ハニービー?ママを……忘れてしまったのかしら?
0:突然、ハニーの体がいうことを聞かなくなり、倒れる。
0:あらがって立ち上がろうとしながら
ハニー:あ……、な……!!?
ベア:おい!ハニー、どうした!?ハニー!
リアーヌ・ブラックリリー:フンッ、こんな焼けただれた顔でも……役に立つものね?
ハニー:な……なんで……。
リアーヌ・ブラックリリー:ウフフ……、マインドコントロールをする時に……、
リアーヌ・ブラックリリー:いくつかの暗示を、しかけておいたの。
リアーヌ・ブラックリリー:……気に入ってもらえたかしら?
ハニー:……あ、あんた……あんただけは……
リアーヌ・ブラックリリー:ああ……再会の喜びをしたいところだけど……、時間がないの。
リアーヌ・ブラックリリー:おやすみなさい。ハニービー?
0:ハニー、眼の前が暗くなる。耳元でベアが叫ぶ声のみが響く
ベア:おい!くそ!!大丈夫か!?ハニー!ハニー!
:
:【深夜 カウチ邸】
:
0:ノック
マーシャル:ああ、すまない。私は……
執事:ロス市警 強盗殺人課のマーシャル・アノー様ですね。お待ちしておりました。
マーシャル:!?……あなたは!?
執事:時間がありません。館の中へどうぞ。
マーシャル:……ああ……。
:
:【カウチ邸 1階】
:
執事:マーシャル様、お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ……。
マーシャル:……あなたは?
執事:なにぶん、時間がございません。わたくしめについては道中にて。
0:廊下の奥へ進み、燭台を引くと、地下への階段が現れる。
マーシャル:……隠し階段?
執事:お足元に……、お気をつけを……。
0:隠し階段とびらを閉める
執事:わたくしめは、……カウチ家に代々仕(つか)えてきた執事でございます。
執事:マーシャル様、お願いがあります。
執事:どうか……リアーヌ様を、止めていただきたいのです。
マーシャル:リアーヌ!?リアーヌは一体……。
0:問いかけようとした時、階段が終わり、トロッコのプラットフォームが現れる。
執事:こちらに……、お乗りください。
マーシャル:これは……トロッコ?……一体……?
執事:……このトロッコの先に、リアーヌさまはおられます。
執事:どうか……、今は……。
マーシャル:……。わかった。
執事:少し揺れます……。お気をつけください。
0:トロッコが動き出し、執事が話し出す。
執事:マーシャル様、あなた様は三年前……、リアーヌ様と出会われた。
執事:しかし、それは……、仕組まれたものなのです……。
マーシャル:……。
マーシャル:……それはブラックリリーにですか?
執事:やはり……、お気づきでしたか。
マーシャル:……ああ……。
マーシャル:リアーヌと、出会ったのは
マーシャル:ブラックリリー事件を担当し、
マーシャル:……もう少しで真相にたどり着くところでした。
マーシャル:リアーヌはブラックリリーの部下ではないか?
マーシャル:そう、疑いました……。
マーシャル:しかし……、
執事:どれほど捜査をしても……、明らかになることはなかった。
マーシャル:……なぜ、それを……?
執事:マーシャル様、本当はお気づきなのでは?
執事:リアーヌ様は、ブラックリリーの部下などではありません。
執事:リアーヌ様こそが……、大怪盗ブラックリリーなのです。
マーシャル:……。
マーシャル:嫌な予感はしていました……。
マーシャル:ですが、いまだに信じられん。
マーシャル:あんな穏やかな彼女が……なぜ?
執事:リアーヌ様は、自らの生い立ちを嘆くあまり……、
執事:いつしか、残虐で恐ろしい行為を……
執事:繰り返すようになりました。
執事:ですが、あなた様と出会い……、
執事:リアーヌ様はお変わりになられた。
マーシャル:……変わった?
執事:はい。初めて、人を愛することを……
執事:知ったのです。
執事:そしてまた、初めて、自らの犯した罪を……
執事:恐ろしいと……、お感じになられた。
執事:……それゆえに、リアーヌ様はお決めになられたのです。
執事:ブラックリリーを殺そう、と……。
マーシャル:それは……どういう意味ですか……?
執事:リアーヌ様は……、自身の身代わりを作ろうと
執事:お考えになられたのです……。
執事:その者を、ブラックリリーに仕立て上げ……、
執事:リアーヌ様ご自身は……、あなたの元へ……
執事:お戻りになるおつもりだったのです……。
マーシャル:……そんな……。
執事:ですが……、それは失敗に終わりました……。
マーシャル:ダニエ・クロフォード……ですか?
執事:はい……。
執事:ダニエ様は、身代わりになるはずだった娘を逃がし、
執事:リアーヌ様のもとへ、たどり着きました。
マーシャル:……。しかし、失敗した?
執事:はい。リアーヌ様はおいかりになり、
執事:ダニエ様を身代わりにされました……。
マーシャル:……。
執事:ですが……、ダニエ様は命を失う直前に……正気を取り戻し、
執事:リアーヌ様もろとも、炎で自らを焼いたのです。
マーシャル:……なんてことだ……。
マーシャル:では……、その後のダニエは……。
執事:はい、リアーヌ様でございます。
執事:二重生活のなかで、リアーヌ様は焼けただれた姿を治し、
執事:あなたのもとへ、お帰りになる……おつもりでした。
マーシャル:だが……、そんな話は一言も……。
マーシャル:一言でも言ってくれたなら、俺は彼女のそばに……。
執事:焼けただれたリアーヌ様のお顔は、まさに……
執事:残虐なブラックリリー、そのもの。
執事:リアーヌ様は、顔を見られることを……何よりも恐れました。
執事:特に、あなたには。
マーシャル:……そんな……。
執事:そして、その外見はまるで呪いのように……
執事:癒えることは……、決してありませんでした。
執事:それゆえに、だんだんと……リアーヌ様は、お心を病まれていきました。
マーシャル:……リアーヌ……。
執事:それでも、……時に姿を変えて、あなたさまのもとへ通われていた。
執事:この二年間、あなたさまは……リアーヌさまをお忘れにならなかった。
執事:それこそが、リアーヌさまにとっての……、救いだったのです。
マーシャル:……そう……だったのか……。
執事:繰り返される……狂気と救いの中で……、
執事:リアーヌさまは……、再びブラックリリーとなりました。
執事:そして……、決して許されぬ……
執事:カウチ家の秘密に手を出されようとしているのです……。
マーシャル:カウチ家の……秘密……?
:
:【カウチ家 地下】
:
リアーヌ・ブラックリリー:ハニービー、目覚めなさい。
0:ハニー、目を覚ますが体が動かない
リアーヌ・ブラックリリー:ウフフ……、特製の麻酔薬はいかが?
0:麻酔が解けるまで、麻酔にかけられた演技をしてください
ハニー:……。
リアーヌ・ブラックリリー:目だけは見えているのに、体は動かないでしょう?あなたのために作ったのよ?
リアーヌ・ブラックリリー:結局、違う女に使うことになったけれど……。
リアーヌ・ブラックリリー:本当に忌々しい……。あの女さえいなければ……。
リアーヌ・ブラックリリー:まあいいわ!あなたは、わたくしの元に帰ってきてくれたんだもの!
リアーヌ・ブラックリリーあなたには、重要な役目があるの。
リアーヌ・ブラックリリー:でも、その前に、ご褒美をあげるわ……。
リアーヌ・ブラックリリー:……わたくしのコレクションを見せてあげる。
リアーヌ・ブラックリリー:ああ、体が動かないでしょう?だから、車椅子で運んであげるわ。
リアーヌ・ブラックリリー:決して、ずり落ちないように、……こうやって……、縛ってね!
ハニー:……!
リアーヌ・ブラックリリー:……さあ……、これでいい。
リアーヌ・ブラックリリー:きっと、感動して、涙を流すわよ……?
リアーヌ・ブラックリリー:だって、わたくしのコレクションは、誰もみたことがないのだもの!
リアーヌ・ブラックリリー:嘘ではなくてよ?
リアーヌ・ブラックリリー:目にしたものはもう、この世にはいないから。
リアーヌ・ブラックリリー:……あいつらは、わたくしをみて、恐怖したの。
リアーヌ・ブラックリリー:……失礼な話ではなくて?
ハニー:…………。
リアーヌ・ブラックリリー:だから、わたくしの痛みがわかるように……、
リアーヌ・ブラックリリー:1人づつ、生きたまま解体してあげたの。
リアーヌ・ブラックリリー:そして、恐怖した顔のまま、
リアーヌ・ブラックリリー:焼き殺してあげたわ。
ハニー:……!
0:ハニーうめいて体を動かそうとする
ハニー:……!
リアーヌ・ブラックリリー:あらあら、怖がらないで。
リアーヌ・ブラックリリー:あなたは、特別だもの!そんなことはしないわ。
ハニー:……!
リアーヌ・ブラックリリー:ウフフ、相変わらずかわいい子……。
リアーヌ・ブラックリリー:さあ、ごらんなさい?……美しいでしょう?
リアーヌ・ブラックリリー:ここが、わたくしの美術館。
リアーヌ・ブラックリリー:ルーブル!オルセー!メトロポリタン!
リアーヌ・ブラックリリー:世界の名だたる美術館など、見世物小屋に見えるほど!
リアーヌ・ブラックリリー:あんな、石ころよりも……価値のある、素晴らしい品々!
リアーヌ・ブラックリリー:ああ……?でも……、それだけじゃなくてよ?
ハニー……。
リアーヌ・ブラックリリー:わたくしの最高のコレクションは、
リアーヌ・ブラックリリー:こんなつまらないものだけではないの……。フフフ……。
リアーヌ・ブラックリリー:ねえ?ハニービー?
リアーヌ・ブラックリリー:この世で美しいものは……やはり、人間だと思わない?
リアーヌ・ブラックリリー:わたくしは……、ずっと自分が自分であることを許せなかった。
リアーヌ・ブラックリリー:ああ、忌まわしいカウチ家!
リアーヌ・ブラックリリー:……縛られ続けなければならない、この運命(さだめ)!
リアーヌ・ブラックリリー:……わたくしは……、ずっと他人が羨ましかった。
リアーヌ・ブラックリリー:だから、コレクションすることにしたの。
:
:【カウチ家 地下】
:
0:トロッコが止まる
執事:どうぞ、こちらへ。
執事:もうしばしすれば……、夜が明けます……。
マーシャル:私は……、どうすればいいのですか?
執事:マーシャル様、先ほどの話を聞かれても……リアーヌ様を愛していただけますか?
マーシャル:はい。
マーシャル:……私は……、刑事です。
マーシャル:しかし、……それ以前に……
マーシャル:1人の男として……彼女を、愛しています。
マーシャル:……確かに、彼女は恐ろしいことをした。
マーシャル:そして、私は……それを、罰する身です。
マーシャル:しかし……、彼女が破滅に向かっているならば……、
マーシャル:私はそれを止め、共に罰を受けるつもりです。
執事:ならば、その言葉を、リアーヌ様に伝えていただきたいのです……。
執事:本来ならば……わたくしが、止めなければいけない立場でした……。
執事:しかし……、もはや……リアーヌ様はわたくしの言葉には、
執事:耳をお貸しくださいません……。
執事:……あなた様にお願いするしかないのです。
マーシャル:彼女は……リアーヌは……、何をしようとしているのですか?
執事:……それは……このカウチ家の禁忌(きんき)……
マーシャル:……禁忌(きんき)?
執事:まずは……、このカウチ家に伝わる伝承から……、
執事:お話しいたしましょう……。
:
:【カウチ家 地下廊下】
:
リアーヌ・ブラックリリー:……ここからは特別な場所よ。わたくしがコレクションした人々が飾られているわ。
0:ハニーだんだんと、麻酔から解けてください。
ハニー:……ぐ……・
リアーヌ・ブラックリリー:アレは……、わたくしがカレッジにいた時に出会った少女よ……。
リアーヌ・ブラックリリー:彼女はいつも輝いていたわ……。
リアーヌ・ブラックリリー:……どうしても彼女になってみたかった。
リアーヌ・ブラックリリー:だから、頂いたの。
リアーヌ・ブラックリリー:初めて……、彼女になった時は、
リアーヌ・ブラックリリー:まるで、悪戯(いたずら)をしているみたいに、ドキドキしたわ!
リアーヌ・ブラックリリー:あちらはね、わたくしの会社にいらした貴族のご子息。
リアーヌ・ブラックリリー:あんなにも美しいのに……、悪い遊びをしていてね、
リアーヌ・ブラックリリー:もったいないから、もらってあげたの。
リアーヌ・ブラックリリー:ああ、あちらに並んでいる瓶(びん)は気にしないでいいわ……。
リアーヌ・ブラックリリー:外見は醜悪(しゅうあく)でも……、
リアーヌ・ブラックリリー:どこか一部でも美しければ標本にすることにしているの。
ハニー:う……ぐぅ……。
リアーヌ・ブラックリリー:わたくし、差別はしないの。そう、差別はいけない。
リアーヌ・ブラックリリー:わたくしは……、ずっと差別されてきたわ。
リアーヌ・ブラックリリー:あいつらが、影で笑っていることなんて……わかってた。
リアーヌ・ブラックリリー:あいつらが本当に欲しかったのは、わたくしの肩書だけ。
リアーヌ・ブラックリリー:でもね!……あの人だけは違った!
リアーヌ・ブラックリリー:わたくしのことを……今も思っていてくれるの!
リアーヌ・ブラックリリー:だから……、決めたのよ。
リアーヌ・ブラックリリー:絶対に美しくなって、
リアーヌ・ブラックリリー:全てから逃れて……、あの人のもとへ帰るって!
ハニー:……の……。
リアーヌ・ブラックリリー:あら?
リアーヌ・ブラックリリー:もう、麻酔が切れ始めているのかしら?急がないとね。
ハニー:……もの……。
リアーヌ・ブラックリリー:なあに?……聞こえないわ?
リアーヌ・ブラックリリー:もっと、はっきり言ってくれないと。
ハニー:……化け物……!
0:ブラックリリー、その言葉に無表情になり、一時、沈黙してぽつりと
リアーヌ・ブラックリリー:……。
リアーヌ・ブラックリリー:……あいつらと同じことを言うのね。もう1人の、わたくしなのに。
0:ブラックリリー、元の楽しそうな声に戻り
リアーヌ・ブラックリリー:ウフフッ!安心して!あなたは綺麗よ!
リアーヌ・ブラックリリー:……だから、用がすんだら飾ってあげる……。
0:ハニーを押す車椅子が止まる。
ハニー:……!
リアーヌ・ブラックリリー:さあ、ここよ!この扉の先こそが、あなたが見たかったもの……。
リアーヌ・ブラックリリー:……そして、わたくしたちの明るい未来への扉!
リアーヌ・ブラックリリー:さあ、準備はできて?
リアーヌ・ブラックリリー:ともに2年前の、全ての間違いに終止符を打ちましょう!
0:リアーヌ、不穏に高笑いを上げる
:
:【続く】