台本概要
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タイトル | Memory Transfer |
---|---|
作者名 | 常波 静 (@nami_voiconne) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
2月14日。心臓の移植手術を受けたマコトは、それ以来、夢でアキという少年と出会うようになる。これは、ココロをもらった物語。
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
マコト | 女 | 74 | 心臓の病気で、臓器提供の手術を受けた。 |
アキ | 男 | 64 | マコトが夢の中で出会った少年。記憶がない。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:
0:『Memory transfer』(りいち様バレンタイン企画用シナリオ)
0:
0:
0:
マコト:2月14日。世間が甘い匂いに包まれた日。私は手術を受けた。
マコト:もともと身体は強い方じゃなかったけど、高校生になってから、息切れや立ちくらみがしょっちゅう起こるようになった。
マコト:聞き覚えのない、長ったらしい病名。心臓の病気だという。もうあまり長くは持たないだろう。無機質な声でそう言われた。
マコト:入院して治療を続けても病状は悪化するばかりで、ベッドから身を起こすので精一杯だった。
マコト:もうそろそろかな、と思った頃、報(しら)せがあった。
マコト:ドナーが見つかった。
マコト:私はあまり乗り気ではなかったけど、母親に説得されて、臓器移植の手術を受けることになったのだ。
マコト:そして、私は貰った。
マコト:甘いチョコなんかじゃなくて。
マコト:誰かのココロを。
0:
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マコト:うーん…ここは……?
マコト:うわ、なにこれ、見渡す限り真っ赤じゃない!…赤い風船の中にいるような感じね。いや、でもなんかほんのり温かいし、小さくドクドク動いてる…気持ち悪いわね。
マコト:えーっと、たしか、私は心臓の移植手術を受けてて…。
マコト:そう、手術が終わって、病院のベッドで寝ていたはず。
マコト:ってことは、これは夢?それにしても、変な夢だなあ…。
アキ:やあ
マコト:うわわっ!
アキ:あー、大丈夫かい?
マコト:いったた…。
アキ:ふっ…いやあ、盛大に転んだねえ。
マコト:…何なのアンタ。
アキ:初対面の人間にアンタって普通言うかなあ。
マコト:初対面の人間を転ばせといて笑うのもどうかと思うんだけど。
アキ:悪かったって。君、根に持つタイプなんだねえ。
マコト:…どうだっていいでしょ、そんなこと。それで、アンタは誰?名前は?
アキ:うーん…実は僕にも分からないんだ。
マコト:はあ?
アキ:記憶がなくてね。自分が何者か、全く思い出せないんだ。いやあ、まいったまいった。
マコト:はあ…まあいいわ。どうせ私の夢なんだし。アンタが何者だろうとどうでもいいわ。
アキ:君の夢?
マコト:ええ。多分、これは私の夢の中。心臓の移植手術の後、寝ていたはずだもの。
アキ:…っ!ううっ……!
マコト:ちょっと、どうしたのよ?大丈夫?
アキ:(少し苦しそうに)…いや、何でもないよ。そうか…。
アキ:夢の中、ねえ。だとしたら、僕は夢という無意識下で君が作り出した架空の存在にすぎないのかもしれないね。
マコト:そうだとしても、名前とかないと不便ね。なんて呼べばいいの?
アキ:そうだね……僕のことは「アキ」とでも呼んでくれ。
マコト:なんでアキなの?
アキ:なんとなく、さ。…それで?
マコト:え?
アキ:君の名前は?僕だけ名乗るなんて、不公平だろう?
マコト:…「マコト」よ。男っぽくてあんまり好きじゃないから、呼ばないでよ。
アキ:そうかい?少なくとも僕は素敵な名前だと思うけどなあ。
マコト:…うるさい。
0:
0:
マコト:それから私は毎晩のように、夢を見るようになった。
マコト:夢はいつも、あの赤い世界でアキと話す、というものだった。
マコト:アキはいけ好かないヤツだったけど、不思議とアキにその日の出来事を話すのは嫌いじゃなかった。
0:
0:
アキ:やあ、今日はどうだった?
マコト:今日も検査ばっかりでうんざりだったわ。最近は白衣のお医者さんを見かけるだけでビクッとするもの。
アキ:そうか…。でも、そろそろ退院だろう?もう少しの辛抱じゃないか。
マコト:まあね。
マコト:そういえば、最近思ったことがあるんだけど。
アキ:何だい?
マコト:アンタって、やっぱりどこかに実在してるんじゃないの?
アキ:へえ…どうしてそう思うの?
マコト:だってアンタは、はっきりとしたたしかな人格を持っているんだもの。それも明らかに私は全く違う人格を。いくら入院生活が続いていて話し相手が欲しいと思っていたとしても、私には毎日そんな存在を想像するほどロマンチストじゃないわ。
マコト:それに、アンタと話しているときのこの気持ちは………
アキ:…気持ちは?
マコト:な、何でもない!
マコト:とにかく、何となく、そんな気がするってだけ。
マコト:ありえない話かもしれないけど、もしかしたら毎晩私たちは同じ夢を見てて、アンタは夢から覚めたらそのことを忘れちゃってる、とかさ。ほら、夢を覚えてる人と覚えてない人っているでしょ?
アキ:かなり非現実的だねえ。けどまあ、可能性が全くないとは言い切れない。
マコト:でしょ?
マコト:…もしそうだとしたら、一度くらいアンタに会って、もう私の夢に出てくんなって文句言うのもいいかな、なんて思っているのよ。
アキ:そーかい……じゃあ、賭けでもするかい?
アキ:もしそうだとして、君が僕を見つけられたら、君の言うことを一つだけ何でも聞いてあげよう。
マコト:いいわよ。私しつこい女だから、覚悟しておきなさいよ。
アキ:…余計なこと言わなきゃ良かったかもしれないな。
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マコト:それから私は退院して、また学校に通うようになった。
マコト:長い間入院していたから、留年して二年遅れての高校生活。
マコト:学校に行くようになってからは毎晩ってことはなくなったけど、それでも二、三日に一度はアキが夢に出てきた。
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アキ:それで、学校はどうだった?
マコト:うーん、まあまあね。
アキ:まあまあって、最近そればっかりじゃないか。
マコト:学校に行って勉強してるだけだもの。そんな毎日毎日何かあるわけじゃないわ。
アキ:それはそうだけど…君、大丈夫かい?
マコト:大丈夫って、何が?
アキ:すごく無理しているように見えるから。ひどい目をしてるよ。
マコト:…最近特に思うんだけど、アンタって時々、心の中を見透かしてるみたいなこと言うのね。
アキ:僕でいいなら、話くらいは聞くよ?
マコト:…学校に通うようになって、考えるようになったの。
マコト:私と、周りの生徒たちは、違うんだなって。
アキ:そりゃあ、年齢は少し君の方が上だけど…
マコト:そういうことじゃないの…!
マコト:私は病人。他の生徒たちは健常者。
マコト:今まで目を背けてきたけど、その違いってすごく大きいのよ。
マコト:正常と異常、優等生と劣等生。どうしてもそうやって分けられているように感じるの。それが、私のコンプレックスになってて…
アキ:……
マコト:どうして他の誰かじゃなくて私なの?
アキ:…理由なんてない。それは君の個性だ。少し心臓が弱い、それだけだ。
アキ:それに、大事なのは、今君はちゃんと呼吸をして、鼓動をして、生きているってことだ。
マコト:別に生きていたくなんてなかった!
マコト:病気って分かってから、私は死ぬ覚悟でいたの。
アキ:それは覚悟じゃない、諦めただけだ。
マコト:それなのに、急に生きろってなっても、拍子抜けしちゃうっていうか、生きるってどうしたらいいのってなるの。
アキ:君の年齢で生きる目的を持てる人間なんてそういない。
マコト:なんで、そんな私が生きていて、この心臓をくれた人は死んじゃったの?
マコト:私なんかより、その人の方がきっと生きたいって思ってたはずなのに…
0:アキ、マコトを抱きしめる。
マコト:…っ!アキ…。
アキ:名前で呼んでくれたの、初めてだね。いやあ、照れるもんだね。
マコト:何よ、もう…。
アキ:病人だって、生きることに理由を見い出せなくたって、君は君だ。
アキ:それに、心臓を提供してくれた人は臓器提供の意思表示をしていたんだろう?
アキ:なら、きっとその人は君が生きてくれていることを喜んでいると思うよ。
マコト:…うっ…!ううっ……!
アキ:僕に君の気持ちが分かるなんて思っていない。でもね、それでもさ、今の君を見ているのはどうしても辛い。だから、無理にとは言わないけれど、少しでも笑っていてくれないかい。
マコト:何それ。口説いてるの?
アキ:さあ、どうだろうね。
マコト:バッカみたい。…でも、ありがと。
0:
0:
マコト:それから、夢でアキに会う回数はもっと減っていった。
マコト:アキと会っても、何となく、ぎこちなくなって。
マコト:それでもどうしてもアキに会いたくて。そして、気持ちを伝えたくて。
マコト:私は、現実でアキを探した。
マコト:探すあてなんてないと思っていた。
マコト:けど、私は、見つけてしまった。
マコト:不安定な心を抑えるために、薬を飲んだ。
マコト:薬の量はだんだん増えていった。
マコト:飲むと、だんだんと落ち着いてきたから。
マコト:落ち着いたら、だんだんとぼんやりしてきて。
マコト:だんだんと、眠くなってきて。
マコト:だんだんと、心臓の鼓動はゆっくりになっていって。
マコト:だんだんと、これでいいって思うようになって…
0:
0:
アキ:やめておいた方がいい。
0:
0:
マコト:…っ!
アキ:やあ、久しぶりだね。元気かい?
マコト:……何のつもり?
アキ:それはこっちのセリフだね。
アキ:僕は君が現実で何をしていたのか、分からない。
アキ:けどね、君が自ら生きることを諦めようとしていること。このまま目覚めたくないと思っていることは分かる。
アキ:君の意識が薄れると、僕の存在も薄れていくんだろうけど、その感覚があったんだ。的外れなことは言っていないと思うよ。
マコト:…ただ薬を過剰摂取しただけよ。
アキ:そんなことをすればどうなるか、まさか知らないわけじゃないだろう?
マコト:アンタにはこんな気持ち分からないでしょうね。誰からも必要とされないってことがどんなに辛いのか…。
マコト:私だって、必死に生きようとしているの。でも、そんなことしても無駄だったわ。
マコト:クラスメートと仲良くなろうとしても、私が年上だし病気だから、変に気を遣われる。私がいないときの方が、皆話しやすそうにしてる。楽しそうにしてる。
マコト:担任の先生は私の勉強が遅れてるし、クラスでも浮いてるから、問題児扱いしてくる。「なんで皆と同じようにできないんだ」「もっと頑張れ」「やる気あるのか」って言ってくる。
マコト:お父さんとお母さんは私のことを大切にしてくれているけど、手術や薬でかなりお金を使ったから夜遅くまで働くようになったし、いつ身体に異常が起こってもおかしくないから、常に心配してる。
マコト:周りの人たちにとって、私は厄介者でしかない。
マコト:私を必要としてくれている人なんていないっ!
アキ:少なくとも僕は、君が不要だなんて思っていないよ。
アキ:てっきり君も分かってくれていると思ったんだけどね。
マコト:もちろん、それは分かっていたわ。アンタのためなら、私は生きててもいいかなって思えた。アンタだけが、生きていく支えだったのよ。
アキ:だったらなんでっ…
マコト:……気付いてしまったのよ。
アキ:気付いてしまったって、なんのことだかさっぱり…
マコト:とぼけないで。
マコト:アンタ言ったわよね。もし現実で見つけられたら、何でも言うこと聞くって。
アキ:ああ、よく覚えてるね。そんなくだらないこと。
マコト:探してみて、本当にくだらないと思ったわ。
マコト:何かヒントがあるんじゃないかって考えて、アンタと初めて会ったあの日に何か意味があるんじゃないかって思った。
マコト:それで少し前の新聞を調べたら、すぐにアンタの顔と名前が出てきたわ。
マコト:大病院の医師が息子への暴行の罪で逮捕。息子は全身打撲により死亡…。
アキ:……。
マコト:アンタ、もう死んでるんじゃない!
マコト:死んだ人間に、直接会うこともできない人間に必要とされたって、どうしようもないじゃない!そんなの嬉しくもなんともないわ!
アキ:……
アキ:(沈黙を破るように拍手をしながら)いやあ、恐れ入ったよ。まさか本当に見つけられるなんて思ってもみなかった。
マコト:言ったでしょ?私、しつこい女なのよ。
アキ:そうだったね。
アキ:ただ、君は一つ、大きな事実を見逃している。
アキ:……記憶転移って、知っているかい?
マコト:記憶、転移?
アキ:臓器移植を受けた者に、臓器を提供したドナーの習慣、性格、経験が移ることだよ。
アキ:科学的根拠は乏しくて、解明されていないことの多い現象なんだけどね。
アキ:いやあ、僕もそんなものは信じていなかったんだ。…君と会うまではね。
マコト:…どういうこと?
アキ:今まさに、記憶転移が起きている、ということさ。かなり特殊な形ではあるけどね。
アキ:君と僕が夢の中で出会った日、君は何をしていた?
マコト:何って、病院で心臓移植の手術を……
マコト:…っ!まさか…
アキ:その、まさかだよ。
アキ:あの日君に心臓を提供したのは、おそらく僕だ。
マコト:そんな…そんなことって…
アキ:いやあ、僕自身もびっくりしたよ。
アキ:父親に殴り殺されたと思ったら、気がつけば君の夢の中にいたんだからね。
マコト:…何で、そんなに飄々としていられるのよ。
マコト:アンタ、もう死んでるのよ?しかも、実の父親に殺されたんでしょ?
アキ:そんなに平気だったわけじゃないさ。
アキ:……君がいたから、飄々としていられたんだよ。
マコト:え、私…?
アキ:そうさ。
アキ:君がいつもこうして話しかけてくれたから、僕を必要としてくれたから、なんとか正気を保つことができた。
アキ:君が苦しんでいたから、苦しんでいるのは自分だけじゃないって思えた。
アキ:それに…君が僕の心臓で生きてくれていると知って、僕が生きたことには意味があったんだって納得することができた。
マコト:そんな大げさな…
アキ:君がさっき言った通り、僕の父親は医者でね。小さい頃から、大きくなったら父のような立派な医者になるんだって意気込んでた。周囲の人間からも、とても期待されていたよ。
アキ:だけど、僕はその期待に応えられるほどの学力は身につかなくてね。もちろん努力はしたよ?でも、親の言いなりになって勉強するってことに嫌気がさした。それで、医者になるという夢を諦めようとした。
アキ:そうしたら、父は怒り狂ったよ。「親の顔に泥を塗る気か!」ってね。最初は罵倒されるだけだったけど、次第に殴られるようになった。
アキ:僕が死ぬ間際、最後に父からなんて言われたと思う?
アキ:「お前のような役立たずは死んでドナーにでもなった方がまだマシだ」だよ。
マコト:ひどい…。
アキ:君はさっき、誰からも必要とされない気持ちが僕には分からないって言ったね。
アキ:分かるに決まってるじゃないか。僕だって、必要ないって言われたんだから。心から愛されたことがないんだから。
アキ:…だからこそ、言えることがある。
アキ:誰かに必要としてもらえないから死ぬなんて、そんな甘ったれた考えは捨てるんだ。誰かに必要としてもらうために君は生きているわけじゃない。君は、君のために生きるべきだ。誰も君を必要としなくても、君自身は自分を必要とするべきだ。
アキ:…そうすれば大丈夫。きっと君のことを愛してくれて、君のことを必要としてくれる相手が必ず現れるだろう。僕のような、死んだ人間じゃなくてね。
マコト:…アンタって卑怯ね。気付いていて、そういうことを言うんだから。
アキ:気付いているからこそだよ。君にはこれからもっと素敵な人生が待っている。だから、僕はその邪魔をしたくないんだ。死んでまで、人の足を引っ張りたくはないからね。
アキ:…そうだ、見つけてくれたんだ。約束通り、何か一つ、何でも言うことを聞こう。死んだ僕にできることであれば、だけどね。
マコト:そうね…じゃあ、ずっと私のそばにいてくる?
アキ:当たり前じゃないか。僕と君は一心同体なんだから。ココで(胸を指差す)、ずっと見守っているよ。
マコト:ふふっ、そうね……。
アキ:うん、表情が随分と良くなった。
アキ:…もう、大丈夫だね?
マコト:ええ、大丈夫よ。
アキ:そう…。ならそろそろ、お目覚めの時間だ。
アキ:これ以上眠っているのは、さすがにまずい。
マコト:そうね………じゃあ、またね。
アキ:ああ、またね。……マコト。
0:
0:
マコト:…はっ!……ここは、病院?
0:
マコト:目が覚めると私は病院のベッドにいた。
マコト:横では母親が椅子に座ったままうたた寝している。
マコト:冬の冷たい風が少し吹いて、知らないうちに涙を流していたことに気がついた。
マコト:心はいろんなものが混ざり合って、調和して、落ち着いていたけど、どこか少し寂しかった。
マコト:そして何となく、もうアキに会うことはない気がした。
0:
0:
マコト:それから数日経った。
マコト:今日は2月14日。ちょうどあの日から一年が経った。
マコト:私は慣れない手付きで、丸めたチョコトリュフにココアの粉をまぶした。
マコト:あまりきれいな丸い形ではないけど、初めて作ったにしては上出来だろう。
0:
マコト:よし、できた。いやあ、まいったまいった。思ってた以上に手こずったな…。
マコト:…アンタはああ言ったけど、一方的に貰ってばっかってのは、私の気が済まないの。
マコト:だから、アンタから貰った分、足りないかもしれないけど、ちゃんと返させてよ。
マコト:私を必要としてくれる人が現れるまでは、ちゃんと責任持ってよね?
0:
マコト:口に入れたトリュフは表面はほろ苦くて、中は甘くて。甘いのは好みではないけど、悪くはない味だった。
0:
0:
0:
マコト:バレンタインデー
アキ:それは、大切な人に愛を伝える日。
マコト:あなたは、誰にその想いを伝えますか?
アキ:この気持ちを言葉で表現することはできないけれど。
マコト:そこに言葉はいらない。
アキ:ココロで僕たちは通じ合っているから。
マコト:そうして今日も、
アキ:僕たちは
マコト:私たちは
二人:生きていく。
0:
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0:終
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0:『Memory transfer』(りいち様バレンタイン企画用シナリオ)
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マコト:2月14日。世間が甘い匂いに包まれた日。私は手術を受けた。
マコト:もともと身体は強い方じゃなかったけど、高校生になってから、息切れや立ちくらみがしょっちゅう起こるようになった。
マコト:聞き覚えのない、長ったらしい病名。心臓の病気だという。もうあまり長くは持たないだろう。無機質な声でそう言われた。
マコト:入院して治療を続けても病状は悪化するばかりで、ベッドから身を起こすので精一杯だった。
マコト:もうそろそろかな、と思った頃、報(しら)せがあった。
マコト:ドナーが見つかった。
マコト:私はあまり乗り気ではなかったけど、母親に説得されて、臓器移植の手術を受けることになったのだ。
マコト:そして、私は貰った。
マコト:甘いチョコなんかじゃなくて。
マコト:誰かのココロを。
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マコト:うーん…ここは……?
マコト:うわ、なにこれ、見渡す限り真っ赤じゃない!…赤い風船の中にいるような感じね。いや、でもなんかほんのり温かいし、小さくドクドク動いてる…気持ち悪いわね。
マコト:えーっと、たしか、私は心臓の移植手術を受けてて…。
マコト:そう、手術が終わって、病院のベッドで寝ていたはず。
マコト:ってことは、これは夢?それにしても、変な夢だなあ…。
アキ:やあ
マコト:うわわっ!
アキ:あー、大丈夫かい?
マコト:いったた…。
アキ:ふっ…いやあ、盛大に転んだねえ。
マコト:…何なのアンタ。
アキ:初対面の人間にアンタって普通言うかなあ。
マコト:初対面の人間を転ばせといて笑うのもどうかと思うんだけど。
アキ:悪かったって。君、根に持つタイプなんだねえ。
マコト:…どうだっていいでしょ、そんなこと。それで、アンタは誰?名前は?
アキ:うーん…実は僕にも分からないんだ。
マコト:はあ?
アキ:記憶がなくてね。自分が何者か、全く思い出せないんだ。いやあ、まいったまいった。
マコト:はあ…まあいいわ。どうせ私の夢なんだし。アンタが何者だろうとどうでもいいわ。
アキ:君の夢?
マコト:ええ。多分、これは私の夢の中。心臓の移植手術の後、寝ていたはずだもの。
アキ:…っ!ううっ……!
マコト:ちょっと、どうしたのよ?大丈夫?
アキ:(少し苦しそうに)…いや、何でもないよ。そうか…。
アキ:夢の中、ねえ。だとしたら、僕は夢という無意識下で君が作り出した架空の存在にすぎないのかもしれないね。
マコト:そうだとしても、名前とかないと不便ね。なんて呼べばいいの?
アキ:そうだね……僕のことは「アキ」とでも呼んでくれ。
マコト:なんでアキなの?
アキ:なんとなく、さ。…それで?
マコト:え?
アキ:君の名前は?僕だけ名乗るなんて、不公平だろう?
マコト:…「マコト」よ。男っぽくてあんまり好きじゃないから、呼ばないでよ。
アキ:そうかい?少なくとも僕は素敵な名前だと思うけどなあ。
マコト:…うるさい。
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マコト:それから私は毎晩のように、夢を見るようになった。
マコト:夢はいつも、あの赤い世界でアキと話す、というものだった。
マコト:アキはいけ好かないヤツだったけど、不思議とアキにその日の出来事を話すのは嫌いじゃなかった。
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アキ:やあ、今日はどうだった?
マコト:今日も検査ばっかりでうんざりだったわ。最近は白衣のお医者さんを見かけるだけでビクッとするもの。
アキ:そうか…。でも、そろそろ退院だろう?もう少しの辛抱じゃないか。
マコト:まあね。
マコト:そういえば、最近思ったことがあるんだけど。
アキ:何だい?
マコト:アンタって、やっぱりどこかに実在してるんじゃないの?
アキ:へえ…どうしてそう思うの?
マコト:だってアンタは、はっきりとしたたしかな人格を持っているんだもの。それも明らかに私は全く違う人格を。いくら入院生活が続いていて話し相手が欲しいと思っていたとしても、私には毎日そんな存在を想像するほどロマンチストじゃないわ。
マコト:それに、アンタと話しているときのこの気持ちは………
アキ:…気持ちは?
マコト:な、何でもない!
マコト:とにかく、何となく、そんな気がするってだけ。
マコト:ありえない話かもしれないけど、もしかしたら毎晩私たちは同じ夢を見てて、アンタは夢から覚めたらそのことを忘れちゃってる、とかさ。ほら、夢を覚えてる人と覚えてない人っているでしょ?
アキ:かなり非現実的だねえ。けどまあ、可能性が全くないとは言い切れない。
マコト:でしょ?
マコト:…もしそうだとしたら、一度くらいアンタに会って、もう私の夢に出てくんなって文句言うのもいいかな、なんて思っているのよ。
アキ:そーかい……じゃあ、賭けでもするかい?
アキ:もしそうだとして、君が僕を見つけられたら、君の言うことを一つだけ何でも聞いてあげよう。
マコト:いいわよ。私しつこい女だから、覚悟しておきなさいよ。
アキ:…余計なこと言わなきゃ良かったかもしれないな。
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マコト:それから私は退院して、また学校に通うようになった。
マコト:長い間入院していたから、留年して二年遅れての高校生活。
マコト:学校に行くようになってからは毎晩ってことはなくなったけど、それでも二、三日に一度はアキが夢に出てきた。
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アキ:それで、学校はどうだった?
マコト:うーん、まあまあね。
アキ:まあまあって、最近そればっかりじゃないか。
マコト:学校に行って勉強してるだけだもの。そんな毎日毎日何かあるわけじゃないわ。
アキ:それはそうだけど…君、大丈夫かい?
マコト:大丈夫って、何が?
アキ:すごく無理しているように見えるから。ひどい目をしてるよ。
マコト:…最近特に思うんだけど、アンタって時々、心の中を見透かしてるみたいなこと言うのね。
アキ:僕でいいなら、話くらいは聞くよ?
マコト:…学校に通うようになって、考えるようになったの。
マコト:私と、周りの生徒たちは、違うんだなって。
アキ:そりゃあ、年齢は少し君の方が上だけど…
マコト:そういうことじゃないの…!
マコト:私は病人。他の生徒たちは健常者。
マコト:今まで目を背けてきたけど、その違いってすごく大きいのよ。
マコト:正常と異常、優等生と劣等生。どうしてもそうやって分けられているように感じるの。それが、私のコンプレックスになってて…
アキ:……
マコト:どうして他の誰かじゃなくて私なの?
アキ:…理由なんてない。それは君の個性だ。少し心臓が弱い、それだけだ。
アキ:それに、大事なのは、今君はちゃんと呼吸をして、鼓動をして、生きているってことだ。
マコト:別に生きていたくなんてなかった!
マコト:病気って分かってから、私は死ぬ覚悟でいたの。
アキ:それは覚悟じゃない、諦めただけだ。
マコト:それなのに、急に生きろってなっても、拍子抜けしちゃうっていうか、生きるってどうしたらいいのってなるの。
アキ:君の年齢で生きる目的を持てる人間なんてそういない。
マコト:なんで、そんな私が生きていて、この心臓をくれた人は死んじゃったの?
マコト:私なんかより、その人の方がきっと生きたいって思ってたはずなのに…
0:アキ、マコトを抱きしめる。
マコト:…っ!アキ…。
アキ:名前で呼んでくれたの、初めてだね。いやあ、照れるもんだね。
マコト:何よ、もう…。
アキ:病人だって、生きることに理由を見い出せなくたって、君は君だ。
アキ:それに、心臓を提供してくれた人は臓器提供の意思表示をしていたんだろう?
アキ:なら、きっとその人は君が生きてくれていることを喜んでいると思うよ。
マコト:…うっ…!ううっ……!
アキ:僕に君の気持ちが分かるなんて思っていない。でもね、それでもさ、今の君を見ているのはどうしても辛い。だから、無理にとは言わないけれど、少しでも笑っていてくれないかい。
マコト:何それ。口説いてるの?
アキ:さあ、どうだろうね。
マコト:バッカみたい。…でも、ありがと。
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マコト:それから、夢でアキに会う回数はもっと減っていった。
マコト:アキと会っても、何となく、ぎこちなくなって。
マコト:それでもどうしてもアキに会いたくて。そして、気持ちを伝えたくて。
マコト:私は、現実でアキを探した。
マコト:探すあてなんてないと思っていた。
マコト:けど、私は、見つけてしまった。
マコト:不安定な心を抑えるために、薬を飲んだ。
マコト:薬の量はだんだん増えていった。
マコト:飲むと、だんだんと落ち着いてきたから。
マコト:落ち着いたら、だんだんとぼんやりしてきて。
マコト:だんだんと、眠くなってきて。
マコト:だんだんと、心臓の鼓動はゆっくりになっていって。
マコト:だんだんと、これでいいって思うようになって…
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アキ:やめておいた方がいい。
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マコト:…っ!
アキ:やあ、久しぶりだね。元気かい?
マコト:……何のつもり?
アキ:それはこっちのセリフだね。
アキ:僕は君が現実で何をしていたのか、分からない。
アキ:けどね、君が自ら生きることを諦めようとしていること。このまま目覚めたくないと思っていることは分かる。
アキ:君の意識が薄れると、僕の存在も薄れていくんだろうけど、その感覚があったんだ。的外れなことは言っていないと思うよ。
マコト:…ただ薬を過剰摂取しただけよ。
アキ:そんなことをすればどうなるか、まさか知らないわけじゃないだろう?
マコト:アンタにはこんな気持ち分からないでしょうね。誰からも必要とされないってことがどんなに辛いのか…。
マコト:私だって、必死に生きようとしているの。でも、そんなことしても無駄だったわ。
マコト:クラスメートと仲良くなろうとしても、私が年上だし病気だから、変に気を遣われる。私がいないときの方が、皆話しやすそうにしてる。楽しそうにしてる。
マコト:担任の先生は私の勉強が遅れてるし、クラスでも浮いてるから、問題児扱いしてくる。「なんで皆と同じようにできないんだ」「もっと頑張れ」「やる気あるのか」って言ってくる。
マコト:お父さんとお母さんは私のことを大切にしてくれているけど、手術や薬でかなりお金を使ったから夜遅くまで働くようになったし、いつ身体に異常が起こってもおかしくないから、常に心配してる。
マコト:周りの人たちにとって、私は厄介者でしかない。
マコト:私を必要としてくれている人なんていないっ!
アキ:少なくとも僕は、君が不要だなんて思っていないよ。
アキ:てっきり君も分かってくれていると思ったんだけどね。
マコト:もちろん、それは分かっていたわ。アンタのためなら、私は生きててもいいかなって思えた。アンタだけが、生きていく支えだったのよ。
アキ:だったらなんでっ…
マコト:……気付いてしまったのよ。
アキ:気付いてしまったって、なんのことだかさっぱり…
マコト:とぼけないで。
マコト:アンタ言ったわよね。もし現実で見つけられたら、何でも言うこと聞くって。
アキ:ああ、よく覚えてるね。そんなくだらないこと。
マコト:探してみて、本当にくだらないと思ったわ。
マコト:何かヒントがあるんじゃないかって考えて、アンタと初めて会ったあの日に何か意味があるんじゃないかって思った。
マコト:それで少し前の新聞を調べたら、すぐにアンタの顔と名前が出てきたわ。
マコト:大病院の医師が息子への暴行の罪で逮捕。息子は全身打撲により死亡…。
アキ:……。
マコト:アンタ、もう死んでるんじゃない!
マコト:死んだ人間に、直接会うこともできない人間に必要とされたって、どうしようもないじゃない!そんなの嬉しくもなんともないわ!
アキ:……
アキ:(沈黙を破るように拍手をしながら)いやあ、恐れ入ったよ。まさか本当に見つけられるなんて思ってもみなかった。
マコト:言ったでしょ?私、しつこい女なのよ。
アキ:そうだったね。
アキ:ただ、君は一つ、大きな事実を見逃している。
アキ:……記憶転移って、知っているかい?
マコト:記憶、転移?
アキ:臓器移植を受けた者に、臓器を提供したドナーの習慣、性格、経験が移ることだよ。
アキ:科学的根拠は乏しくて、解明されていないことの多い現象なんだけどね。
アキ:いやあ、僕もそんなものは信じていなかったんだ。…君と会うまではね。
マコト:…どういうこと?
アキ:今まさに、記憶転移が起きている、ということさ。かなり特殊な形ではあるけどね。
アキ:君と僕が夢の中で出会った日、君は何をしていた?
マコト:何って、病院で心臓移植の手術を……
マコト:…っ!まさか…
アキ:その、まさかだよ。
アキ:あの日君に心臓を提供したのは、おそらく僕だ。
マコト:そんな…そんなことって…
アキ:いやあ、僕自身もびっくりしたよ。
アキ:父親に殴り殺されたと思ったら、気がつけば君の夢の中にいたんだからね。
マコト:…何で、そんなに飄々としていられるのよ。
マコト:アンタ、もう死んでるのよ?しかも、実の父親に殺されたんでしょ?
アキ:そんなに平気だったわけじゃないさ。
アキ:……君がいたから、飄々としていられたんだよ。
マコト:え、私…?
アキ:そうさ。
アキ:君がいつもこうして話しかけてくれたから、僕を必要としてくれたから、なんとか正気を保つことができた。
アキ:君が苦しんでいたから、苦しんでいるのは自分だけじゃないって思えた。
アキ:それに…君が僕の心臓で生きてくれていると知って、僕が生きたことには意味があったんだって納得することができた。
マコト:そんな大げさな…
アキ:君がさっき言った通り、僕の父親は医者でね。小さい頃から、大きくなったら父のような立派な医者になるんだって意気込んでた。周囲の人間からも、とても期待されていたよ。
アキ:だけど、僕はその期待に応えられるほどの学力は身につかなくてね。もちろん努力はしたよ?でも、親の言いなりになって勉強するってことに嫌気がさした。それで、医者になるという夢を諦めようとした。
アキ:そうしたら、父は怒り狂ったよ。「親の顔に泥を塗る気か!」ってね。最初は罵倒されるだけだったけど、次第に殴られるようになった。
アキ:僕が死ぬ間際、最後に父からなんて言われたと思う?
アキ:「お前のような役立たずは死んでドナーにでもなった方がまだマシだ」だよ。
マコト:ひどい…。
アキ:君はさっき、誰からも必要とされない気持ちが僕には分からないって言ったね。
アキ:分かるに決まってるじゃないか。僕だって、必要ないって言われたんだから。心から愛されたことがないんだから。
アキ:…だからこそ、言えることがある。
アキ:誰かに必要としてもらえないから死ぬなんて、そんな甘ったれた考えは捨てるんだ。誰かに必要としてもらうために君は生きているわけじゃない。君は、君のために生きるべきだ。誰も君を必要としなくても、君自身は自分を必要とするべきだ。
アキ:…そうすれば大丈夫。きっと君のことを愛してくれて、君のことを必要としてくれる相手が必ず現れるだろう。僕のような、死んだ人間じゃなくてね。
マコト:…アンタって卑怯ね。気付いていて、そういうことを言うんだから。
アキ:気付いているからこそだよ。君にはこれからもっと素敵な人生が待っている。だから、僕はその邪魔をしたくないんだ。死んでまで、人の足を引っ張りたくはないからね。
アキ:…そうだ、見つけてくれたんだ。約束通り、何か一つ、何でも言うことを聞こう。死んだ僕にできることであれば、だけどね。
マコト:そうね…じゃあ、ずっと私のそばにいてくる?
アキ:当たり前じゃないか。僕と君は一心同体なんだから。ココで(胸を指差す)、ずっと見守っているよ。
マコト:ふふっ、そうね……。
アキ:うん、表情が随分と良くなった。
アキ:…もう、大丈夫だね?
マコト:ええ、大丈夫よ。
アキ:そう…。ならそろそろ、お目覚めの時間だ。
アキ:これ以上眠っているのは、さすがにまずい。
マコト:そうね………じゃあ、またね。
アキ:ああ、またね。……マコト。
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マコト:…はっ!……ここは、病院?
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マコト:目が覚めると私は病院のベッドにいた。
マコト:横では母親が椅子に座ったままうたた寝している。
マコト:冬の冷たい風が少し吹いて、知らないうちに涙を流していたことに気がついた。
マコト:心はいろんなものが混ざり合って、調和して、落ち着いていたけど、どこか少し寂しかった。
マコト:そして何となく、もうアキに会うことはない気がした。
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マコト:それから数日経った。
マコト:今日は2月14日。ちょうどあの日から一年が経った。
マコト:私は慣れない手付きで、丸めたチョコトリュフにココアの粉をまぶした。
マコト:あまりきれいな丸い形ではないけど、初めて作ったにしては上出来だろう。
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マコト:よし、できた。いやあ、まいったまいった。思ってた以上に手こずったな…。
マコト:…アンタはああ言ったけど、一方的に貰ってばっかってのは、私の気が済まないの。
マコト:だから、アンタから貰った分、足りないかもしれないけど、ちゃんと返させてよ。
マコト:私を必要としてくれる人が現れるまでは、ちゃんと責任持ってよね?
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マコト:口に入れたトリュフは表面はほろ苦くて、中は甘くて。甘いのは好みではないけど、悪くはない味だった。
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マコト:バレンタインデー
アキ:それは、大切な人に愛を伝える日。
マコト:あなたは、誰にその想いを伝えますか?
アキ:この気持ちを言葉で表現することはできないけれど。
マコト:そこに言葉はいらない。
アキ:ココロで僕たちは通じ合っているから。
マコト:そうして今日も、
アキ:僕たちは
マコト:私たちは
二人:生きていく。
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0:終
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