台本概要

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タイトル Scrap witch !? 第4話 闇夜の森の出会い
作者名 狗山犬壱(イヌヤマ ケンイチ)
ジャンル ファンタジー
演者人数 3人用台本(男1、女2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 泥のかたまりに抱きつかれて一張羅を汚されたピリア。この泥の中にいた少女は一体…

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ピリア 54 主人公。普段はオドオドしていてコミュ障だけど、魔女モードの時はカッコいい
カルシゥム 69 ピリアの使い魔。魔女モードの時のピリアを誇らしく思っている。父親かな?
ペティ 69 冒険命の特攻冒険少女。好奇心の塊で未知への探求に命をかけるヤベー奴。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:辺りはすっかりと日が落ち、闇が森の中に満ちていた 0:普通であれば虫の鳴き声が聞こえる程度の音しかないであろう空間に 0:一心不乱に何かをむさぼり食う音が響き渡っていた ペティ:「はぐっはぐっ!モグモグ!」 ピリア:「す、すごい食欲です…まるで手負いの獣みたいです…」 カルシゥム:「ったく!もう少し行儀良く食えねぇのか!」 ペティ:「ズズズ…ぷはぁ!おかわり!」 カルシゥム:「底無しかよ!?」 ピリア:「あ、あんなに取ってきた食材が…!みるみるうちに…ひぇぇ…」 0:数分後、満腹になった様子の少女 ペティ:「ごちそうさまでした!いやー、旨かったぁ!」 ペティ:「骨のお兄さん、料理上手だね!」 ペティ:「お陰で満腹だよ!ありがとね!」 0:満足げな少女にカルシゥムは呆れた様に肩をすくめる カルシゥム:「ったく、道中の食料用に取ってきた食材全部」 カルシゥム:「根こそぎ食いやがって…」 ピリア:「あばば…化け物ですぅ…食欲お化けぇ…!」 0:二人の反応に、照れくさそうに頭をかきながら快活に少女は笑う。 ペティ:「あっはっはっは!」 ペティ:「いやー!ギルドの討伐依頼の最中でさ!」 ペティ:「標的と遭遇して戦ったまでは良かったんだけど」 ペティ:「返り討ちにあっちゃって!」 カルシゥム:「それで命からがら逃げてきた、と」 ペティ:「おまけに荷物も逃げる途中で落としちゃった!」 ペティ:「いやぁ!もう笑うしかないよね!」 ペティ:「あっはっはっは!」 カルシゥム:「笑い事じゃねぇ!」 ピリア:「ぽ、ポジティブモンスター…!こ、怖ぁ…!」 0:食事を終え、一心地ついた少女は二人に向き直り姿勢を正す ペティ:「改めてまして、ウチはペティ!」 ペティ:「自由都市カナード所属の冒険者だよ!」 ペティ:「よろしくね!二人とも!」 ピリア:「え、カナードの冒険者さん…?」 カルシゥム:「マジか」 0:どうやって森から抜け出すか考えていた二人に、降ってわいた行幸 カルシゥム:「俺はカルシゥム。こっちは俺の契約者のピリアだ」 ピリア:「は、はひ!ぴ、ぴぴ、ピリアでしゅ!」 0:急に話を向けられ、緊張し舌を噛むピリア ペティ:「うん!よろしく、ピリア、カルシゥム君!」 ピリア:「は、はひ!よ、よろしくお願いしましゅ!」 ペティ:「…うーん、カルシゥムって呼びにくいからカル君って呼ぶね!」 カルシゥム:「ああ、好きに呼んでくれ」 ペティ:「ありがと!そうする!」 カルシゥム:「さて自己紹介が終わったばかりで悪いんだが」 カルシゥム:「ペティ、お前に一つ頼みがある。」 ペティ:「お、なになに?」 ペティ:「命の恩人達の頼みだ!なんでも言ってよ!」 カルシゥム:「実は自由都市まで行きたいんだが、連れていってもらえるか?」 カルシゥム:「元々、サースディの町から乗り合い馬車で移動してたんだが」 カルシゥム:「道中、魔物に遭遇したりと色々あったせいで」 カルシゥム:「この森に迷い混んじまったんだ」 0:カルシゥムの言葉を受け、きょとんとした顔をするペティ ペティ:「サースディからこの森までって…」 ペティ:「この森、カナードとほぼ反対の位置にあるんだけど…」 カルシゥム:「な、何だと…?」 ペティ:「地図ある?」 ピリア:「あ、あります!こ、これ…」 ペティ:「ありがと!えーっと…」 0:ペティは地図を受け取りカルシゥムに見えるように広げる ペティ:「これがサースディの街。それで、ここがカナード」 ペティ:「それから、今ウチらがいるのがここ。」 ペティ:「ルーフェンリットの森っていうんだけど、分かる?」 0:ペティの言葉にカルシゥムが驚愕したように、顎を落とす カルシゥム:「お、俺はよりにもよって反対側に来ちまったのか…!」 ピリア:「あ、か、カルさん!お、おち、落ちついてぇ…!」 0:自分の不甲斐なさに体をカタカタと震わせるカルシゥム 0:それを見て慌てるピリア 0:二人の交互に見てペティは楽しげに笑う ペティ:「あっはっはっは!もしかしてカル君、方向音痴?」 カルシゥム:「…ああ、不甲斐ないことに、な」 ペティ:「しかも、よりにもよって目的地と反対側に来るなんて…」 ペティ:「ぷっ…!だ、ダメだ!お、面白すぎる…!」 ペティ:「あっはっはっは!」 カルシゥム:「笑い事じゃねぇんだよな…マジで…」 カルシゥム:「あぁ…死にてぇ…あ、もう死んでたな」 ピリア:「!だ、だだ、大丈夫ですよぉ!」 ピリア:「ぺ、ペティさんに、カナードまで連れていってもらえば」 ピリア:「だ、大丈夫なんですから!」 ピリア:「そうですよね!?ペティさん!」 0:ピリアの懇願する視線を受けて、ニッとペティは笑う ペティ:「そーそー!ピリアの言う通り!」 ペティ:「今度はウチが二人を助けるよ!」 カルシゥム:「ホントにすまねぇ…恩に着る」 ペティ:「お互い様、お互い様!」 ペティ:「日が上ったらさっそく…」 0:突然、森の中から魔物の雄叫びが響き渡った ピリア:「ぴぎぃぃ!?な、なな、あばば…!」 カルシゥム:「…この雄叫びは」 ペティ:「あちゃー…来ちゃったか」 0:ペティは困った様に頭の後ろをかく カルシゥム:「ペティ、さっき討伐クエストの最中って言ってたよな?」 ペティ:「そーそー!ちょっと歯応えのある奴でさ!」 カルシゥム:「この時期に討伐クエストが組まれるとなると…」 0:カルシゥムは少し考え、やがて思い至る カルシゥム:「…ブレイズボアか」 ペティ:「正解!」 カルシゥム:「ああマジかよ、くそ!」 0:ペティの返答に激昂するカルシゥム カルシゥム:「お嬢、マジックボックスに荷物を片っ端から突っ込め!」 ピリア:「え、あ、はい!」 カルシゥム:「俺はテントを畳む!ペティ、お前どっちから来た?」 ペティ:「あっちの方角だね。ちょうど雄叫びの聞こえる方」 カルシゥム:「気休め程度だが匂い消しを使ってからここを離れる!」 ペティ:「了解!」 0:荷物をまとめ、三人は声の聞こえた方角と反対側へと走り出す カルシゥム:「お嬢、しっかり掴まってろ!」 ピリア:「はぃぃ!」 0:カルシゥムはピリアを背負う ペティ:「あっはっはっは!ハチャメチャにピンチだね!」 ペティ:「燃えてきたぁぁ!」 カルシゥム:「騒ぐな!バカ!」 ピリア:「ひぃぃ!か、カルさぁん!な、何だか大きな魔力がこっちにぃ!」 0:カルシゥムの背に乗って魔力探査を行っていたピリアは 0:泣きながらカルシゥムへと追跡者の存在を告げる カルシゥム:「くそ!やっぱり、あれぐらいじゃ無理だったか! カルシゥム:「逃げ切れるか…?いや、追い付かれるな…」 カルシゥム:「どうする…!?」 0:深刻な雰囲気を出すカルシゥムにピリアは疑問をぶつける。 ピリア:「あ、あの!カルさん!」 カルシゥム:「どうしたお嬢」 ピリア:「ぶ、ブレイズ…ボアって、そんなに危ない魔物なんです?」 カルシゥム:「危険度は確かに高い。あれはフレンジーボアの変異個体だ」 ピリア:「変異…個体?」 カルシゥム:「今の時期…春から夏の間は」 カルシゥム:「火と風、ふたつの精霊の巡りの季節にあたる」 カルシゥム:「この時期は精霊の魔力が各地に残留するから」 カルシゥム:「属性相性の良い土地には、魔力溜まりが発生しやすい」 ピリア:「魔力溜まり…え、それってもしかして」 0:魔力溜まりの発生から、変異個体出現の 0:メカニズムを察したピリアは顔をひきつらせる カルシゥム:「傾いた属性魔力の質が濃ければ濃いほど」 カルシゥム:「その周辺に住む生き物は属性変異する可能性が高くなる」 カルシゥム:「確かここはルーフェンリットの森だったよな?」 カルシゥム:「ここら辺の土地は火の魔力と相性が良いから」 カルシゥム:「火の属性変異を起こしたフレンジーボアによる被害が」 カルシゥム:「昔から多かったんだ」 ピリア:「(魔力の属性変異が生き物の生態系まで崩すだなんて…)」 ピリア:「へ、変異すると狂暴になるんです?」 カルシゥム:「いや、縄張りが広くなる」 ピリア:「え、縄張り?」 カルシゥム:「フレンジーボアは縄張り意識が強すぎる魔物だ」 カルシゥム:「縄張りに入らなければ問題ないんだが」 カルシゥム:「一度でも他の生き物が足を踏み入れると…」 ピリア:「ど、どうなるんですか…?」 カルシゥム:「相手の息の根を止めるまで追い回し」 ピリア:「ひっ!」 カルシゥム:「相手の死骸をグズグズにしてから」 ピリア:「あ、あばば!」 カルシゥム:「森中を引き回した後に、捨てる」 ピリア:「ひぇぇ…」 カルシゥム:「あいつらは草食よりの雑食だから、肉は好まない」 カルシゥム:「獲物の尊厳を汚してから、森の糧にするために捨てるらしい」 ピリア:「ば、蛮族の所業じゃないですかぁ!?」 ペティ:「フレンジーボアは縄張りがそんなに広くないから」 ペティ:「気を付けていれば滅多(めった)に遭遇しないんだけど」 ペティ:「変異個体のブレイズボアは普通の2倍の広さだから」 ペティ:「毎年、他の生き物に対して襲いかかっては」 ペティ:「被害を出しているんだよね!」 ピリア:「お、恐ろしすぎますよぉ!ブレイズボア!」 カルシゥム:「だから毎年、冒険者ギルドに依頼が…って」 0:カルシゥムが何かを察知する カルシゥム:「お嬢!しっかり掴まれ!ペティ!伏せろ!」 ピリア:「え、えぇ!?」 ペティ:「うっは!ヤバすぎ!間に合えー!」 0:カルシゥムはピリアとともに右側の茂みに 0:ペティは左側の木の根元へとそれぞれ飛んだ 0:その瞬間、全員が先程までいた場所に目掛けて 0:50セントメルテ(50センチメートル)大の火球が炸裂した ピリア:「ぴ、ぴぎゃぁぁぁ!?」 ペティ:「おお!スゴい威力!ビックリした!」 カルシゥム:「ちぃ!この威力の火球(かきゅう)は受けたらヤバい!」 0:カルシゥム達がいた場所からはるか後方に 0:2メルテ(2メートル)は有りそうな巨大な猪が立っていた 0:体の各部位からは炎が噴き出している ピリア:「あ、あれが…ブレイズボア…!」 カルシゥム:「かなりのデカさだ…ペティ、コールドトラップは?」 ペティ:「ゴメン!前にやられたときにみんな使いきった!」 カルシゥム:「そうなるとこのまま逃げてもじり貧か…」 ピリア:「ど、どうしましょう!?」 0:ペティは二人の顔を見て、覚悟を決めたように誇らしげに笑う ペティ:「…よっし!!」 0:ペティは自身の両頬をパンっと勢い良く叩き、気合いを入れて立ち上がり 0:ピリア達の前に立つ ピリア:「ぺ、ペティさん…?」 ペティ:「カル君!これ!」 0:ペティはカルシゥムに金属製の小さな板を投げ渡す カルシゥム:「これ、ギルドカードじゃねぇか!」 カルシゥム:「お前…まさか」 ピリア:「え、え?」 ペティ:「カナードのギルドカードは特別でね」 ペティ:「冒険者が遭難しないように」 ペティ:「ギルドの座標へ、ナビゲートする魔法が付与されてるんだ」 ペティ:「二人はこれを使って、カナードに向かって!」 カルシゥム:「お前…」 ペティ:「ウチはここに残ってブレイズボアは退治する!」 0:ペティのまさかの発言に、驚き顔を青くするピリア ピリア:「そ、そんな!さ、3人で逃げましょうよ!」 ピリア:「ひ、一人であんな化け物を退治なんて無理ですよぉ…!?」 ペティ:「あっはっはっは!できれば一緒に行きたいんだけど」 ペティ:「向こうの方が、それを許してくれそうにないんだよね!」 0:ブレイズボアはゆっくりとピリア達に近づいてくる カルシゥム:「…死ぬ気か?」 ペティ:「まっさかぁ!」 0:ペティは今まで背中に背負っていたバトルアックスを抜き 0:ブレイズボアの方へと向ける ペティ:「ウチは誇り高いカナードの冒険者!」 ペティ:「命懸けで依頼をこなす覚悟はあっても」 ペティ:「無駄死にする気は毛頭ない!」 ピリア:「ペティさん…」 0:カルシゥムはペティの背を見つめながら少しの間考えて カルシゥム:「…分かった」 ピリア:「か、カルさん!?」 0:ピリアは驚き、カルシゥムを見る カルシゥム:「お嬢。俺はあんたの使い魔だ」 カルシゥム:「お嬢の命を最優先させてもらう」 ピリア:「そ、そんな!だ、ダメです!ダメですよぉ!」 0:泣きながらカルシゥムを止めるピリア。 0:そんなピリアに近づき、ペティは満面の笑顔で頭を撫でる ペティ:「ありがとね!ピリア!」 ペティ:「ウチなら大丈夫!」 ペティ:「これはもともと、ウチが引き受けた依頼だから!」 ペティ:「自分の尻拭いは自分でしなきゃね!」 ピリア:「ペティさん…!」 0:ペティはピリアの頭から手を離し、背を向ける ピリア:「(どうしよう…このままじゃペティさんが…)」 0:杖を強く握り締め、その場で俯くピリア ピリア:「(誰かを犠牲になんて…そんなの…)」 0:顔を上げたピリアの顔にはいつものオドオドした様子は見られず 0:その双眸(そうぼう)に覚悟の光を宿していた ピリア:「(絶対に…嫌だ!!)」 カルシゥム:「お嬢…」 0:カルシゥムはピリアの覚醒にいち早く気付く ピリア:「(考えなきゃ…3人が無事にカナードへ行く為に…!)」 0:この時、ピリアのスイッチが魔女へと切り替わった 0:思考は加速し、この場を切り抜ける策を考える ピリア:「(ブレイズボアは火属性の大型の魔物…)」 ピリア:「(この森の地形は起伏があまりなく、水場も多い)」 ピリア:「(手持ちの道具…それから)」 0:回る回る回る。ピリアの思考は高速で加速し回り続ける 0:やがて思考は解へと至り、策を構築する ピリア:「…ペティさん」 ペティ:「ん?どうしたのピリア」 ピリア:「アタシに策があります。力を貸してもらえませんか?」 0:ピリアはペティの目を真っ直ぐに見つめ、静かに告げる 0:ペティはそんなピリアを見て、ニッコリと笑う ペティ:「分かった!何をすればいい?」 ピリア:「ありがとうございます。」 0:ピリアはカルシゥムの方へと向き ピリア:「カルさん」 カルシゥム:「言わずもがなだ!任せろお嬢!」 0:ピリアはカルシゥムの返事を聞き、静かに微笑む ピリア:「これよりブレイズボアを討伐します。」 0:目の前に対峙する強大な敵 0:窮地に覚醒したピリア 0:闇夜の森の中 0:戦いの火蓋が切って落とされる 0:次回に続く!

0:辺りはすっかりと日が落ち、闇が森の中に満ちていた 0:普通であれば虫の鳴き声が聞こえる程度の音しかないであろう空間に 0:一心不乱に何かをむさぼり食う音が響き渡っていた ペティ:「はぐっはぐっ!モグモグ!」 ピリア:「す、すごい食欲です…まるで手負いの獣みたいです…」 カルシゥム:「ったく!もう少し行儀良く食えねぇのか!」 ペティ:「ズズズ…ぷはぁ!おかわり!」 カルシゥム:「底無しかよ!?」 ピリア:「あ、あんなに取ってきた食材が…!みるみるうちに…ひぇぇ…」 0:数分後、満腹になった様子の少女 ペティ:「ごちそうさまでした!いやー、旨かったぁ!」 ペティ:「骨のお兄さん、料理上手だね!」 ペティ:「お陰で満腹だよ!ありがとね!」 0:満足げな少女にカルシゥムは呆れた様に肩をすくめる カルシゥム:「ったく、道中の食料用に取ってきた食材全部」 カルシゥム:「根こそぎ食いやがって…」 ピリア:「あばば…化け物ですぅ…食欲お化けぇ…!」 0:二人の反応に、照れくさそうに頭をかきながら快活に少女は笑う。 ペティ:「あっはっはっは!」 ペティ:「いやー!ギルドの討伐依頼の最中でさ!」 ペティ:「標的と遭遇して戦ったまでは良かったんだけど」 ペティ:「返り討ちにあっちゃって!」 カルシゥム:「それで命からがら逃げてきた、と」 ペティ:「おまけに荷物も逃げる途中で落としちゃった!」 ペティ:「いやぁ!もう笑うしかないよね!」 ペティ:「あっはっはっは!」 カルシゥム:「笑い事じゃねぇ!」 ピリア:「ぽ、ポジティブモンスター…!こ、怖ぁ…!」 0:食事を終え、一心地ついた少女は二人に向き直り姿勢を正す ペティ:「改めてまして、ウチはペティ!」 ペティ:「自由都市カナード所属の冒険者だよ!」 ペティ:「よろしくね!二人とも!」 ピリア:「え、カナードの冒険者さん…?」 カルシゥム:「マジか」 0:どうやって森から抜け出すか考えていた二人に、降ってわいた行幸 カルシゥム:「俺はカルシゥム。こっちは俺の契約者のピリアだ」 ピリア:「は、はひ!ぴ、ぴぴ、ピリアでしゅ!」 0:急に話を向けられ、緊張し舌を噛むピリア ペティ:「うん!よろしく、ピリア、カルシゥム君!」 ピリア:「は、はひ!よ、よろしくお願いしましゅ!」 ペティ:「…うーん、カルシゥムって呼びにくいからカル君って呼ぶね!」 カルシゥム:「ああ、好きに呼んでくれ」 ペティ:「ありがと!そうする!」 カルシゥム:「さて自己紹介が終わったばかりで悪いんだが」 カルシゥム:「ペティ、お前に一つ頼みがある。」 ペティ:「お、なになに?」 ペティ:「命の恩人達の頼みだ!なんでも言ってよ!」 カルシゥム:「実は自由都市まで行きたいんだが、連れていってもらえるか?」 カルシゥム:「元々、サースディの町から乗り合い馬車で移動してたんだが」 カルシゥム:「道中、魔物に遭遇したりと色々あったせいで」 カルシゥム:「この森に迷い混んじまったんだ」 0:カルシゥムの言葉を受け、きょとんとした顔をするペティ ペティ:「サースディからこの森までって…」 ペティ:「この森、カナードとほぼ反対の位置にあるんだけど…」 カルシゥム:「な、何だと…?」 ペティ:「地図ある?」 ピリア:「あ、あります!こ、これ…」 ペティ:「ありがと!えーっと…」 0:ペティは地図を受け取りカルシゥムに見えるように広げる ペティ:「これがサースディの街。それで、ここがカナード」 ペティ:「それから、今ウチらがいるのがここ。」 ペティ:「ルーフェンリットの森っていうんだけど、分かる?」 0:ペティの言葉にカルシゥムが驚愕したように、顎を落とす カルシゥム:「お、俺はよりにもよって反対側に来ちまったのか…!」 ピリア:「あ、か、カルさん!お、おち、落ちついてぇ…!」 0:自分の不甲斐なさに体をカタカタと震わせるカルシゥム 0:それを見て慌てるピリア 0:二人の交互に見てペティは楽しげに笑う ペティ:「あっはっはっは!もしかしてカル君、方向音痴?」 カルシゥム:「…ああ、不甲斐ないことに、な」 ペティ:「しかも、よりにもよって目的地と反対側に来るなんて…」 ペティ:「ぷっ…!だ、ダメだ!お、面白すぎる…!」 ペティ:「あっはっはっは!」 カルシゥム:「笑い事じゃねぇんだよな…マジで…」 カルシゥム:「あぁ…死にてぇ…あ、もう死んでたな」 ピリア:「!だ、だだ、大丈夫ですよぉ!」 ピリア:「ぺ、ペティさんに、カナードまで連れていってもらえば」 ピリア:「だ、大丈夫なんですから!」 ピリア:「そうですよね!?ペティさん!」 0:ピリアの懇願する視線を受けて、ニッとペティは笑う ペティ:「そーそー!ピリアの言う通り!」 ペティ:「今度はウチが二人を助けるよ!」 カルシゥム:「ホントにすまねぇ…恩に着る」 ペティ:「お互い様、お互い様!」 ペティ:「日が上ったらさっそく…」 0:突然、森の中から魔物の雄叫びが響き渡った ピリア:「ぴぎぃぃ!?な、なな、あばば…!」 カルシゥム:「…この雄叫びは」 ペティ:「あちゃー…来ちゃったか」 0:ペティは困った様に頭の後ろをかく カルシゥム:「ペティ、さっき討伐クエストの最中って言ってたよな?」 ペティ:「そーそー!ちょっと歯応えのある奴でさ!」 カルシゥム:「この時期に討伐クエストが組まれるとなると…」 0:カルシゥムは少し考え、やがて思い至る カルシゥム:「…ブレイズボアか」 ペティ:「正解!」 カルシゥム:「ああマジかよ、くそ!」 0:ペティの返答に激昂するカルシゥム カルシゥム:「お嬢、マジックボックスに荷物を片っ端から突っ込め!」 ピリア:「え、あ、はい!」 カルシゥム:「俺はテントを畳む!ペティ、お前どっちから来た?」 ペティ:「あっちの方角だね。ちょうど雄叫びの聞こえる方」 カルシゥム:「気休め程度だが匂い消しを使ってからここを離れる!」 ペティ:「了解!」 0:荷物をまとめ、三人は声の聞こえた方角と反対側へと走り出す カルシゥム:「お嬢、しっかり掴まってろ!」 ピリア:「はぃぃ!」 0:カルシゥムはピリアを背負う ペティ:「あっはっはっは!ハチャメチャにピンチだね!」 ペティ:「燃えてきたぁぁ!」 カルシゥム:「騒ぐな!バカ!」 ピリア:「ひぃぃ!か、カルさぁん!な、何だか大きな魔力がこっちにぃ!」 0:カルシゥムの背に乗って魔力探査を行っていたピリアは 0:泣きながらカルシゥムへと追跡者の存在を告げる カルシゥム:「くそ!やっぱり、あれぐらいじゃ無理だったか! カルシゥム:「逃げ切れるか…?いや、追い付かれるな…」 カルシゥム:「どうする…!?」 0:深刻な雰囲気を出すカルシゥムにピリアは疑問をぶつける。 ピリア:「あ、あの!カルさん!」 カルシゥム:「どうしたお嬢」 ピリア:「ぶ、ブレイズ…ボアって、そんなに危ない魔物なんです?」 カルシゥム:「危険度は確かに高い。あれはフレンジーボアの変異個体だ」 ピリア:「変異…個体?」 カルシゥム:「今の時期…春から夏の間は」 カルシゥム:「火と風、ふたつの精霊の巡りの季節にあたる」 カルシゥム:「この時期は精霊の魔力が各地に残留するから」 カルシゥム:「属性相性の良い土地には、魔力溜まりが発生しやすい」 ピリア:「魔力溜まり…え、それってもしかして」 0:魔力溜まりの発生から、変異個体出現の 0:メカニズムを察したピリアは顔をひきつらせる カルシゥム:「傾いた属性魔力の質が濃ければ濃いほど」 カルシゥム:「その周辺に住む生き物は属性変異する可能性が高くなる」 カルシゥム:「確かここはルーフェンリットの森だったよな?」 カルシゥム:「ここら辺の土地は火の魔力と相性が良いから」 カルシゥム:「火の属性変異を起こしたフレンジーボアによる被害が」 カルシゥム:「昔から多かったんだ」 ピリア:「(魔力の属性変異が生き物の生態系まで崩すだなんて…)」 ピリア:「へ、変異すると狂暴になるんです?」 カルシゥム:「いや、縄張りが広くなる」 ピリア:「え、縄張り?」 カルシゥム:「フレンジーボアは縄張り意識が強すぎる魔物だ」 カルシゥム:「縄張りに入らなければ問題ないんだが」 カルシゥム:「一度でも他の生き物が足を踏み入れると…」 ピリア:「ど、どうなるんですか…?」 カルシゥム:「相手の息の根を止めるまで追い回し」 ピリア:「ひっ!」 カルシゥム:「相手の死骸をグズグズにしてから」 ピリア:「あ、あばば!」 カルシゥム:「森中を引き回した後に、捨てる」 ピリア:「ひぇぇ…」 カルシゥム:「あいつらは草食よりの雑食だから、肉は好まない」 カルシゥム:「獲物の尊厳を汚してから、森の糧にするために捨てるらしい」 ピリア:「ば、蛮族の所業じゃないですかぁ!?」 ペティ:「フレンジーボアは縄張りがそんなに広くないから」 ペティ:「気を付けていれば滅多(めった)に遭遇しないんだけど」 ペティ:「変異個体のブレイズボアは普通の2倍の広さだから」 ペティ:「毎年、他の生き物に対して襲いかかっては」 ペティ:「被害を出しているんだよね!」 ピリア:「お、恐ろしすぎますよぉ!ブレイズボア!」 カルシゥム:「だから毎年、冒険者ギルドに依頼が…って」 0:カルシゥムが何かを察知する カルシゥム:「お嬢!しっかり掴まれ!ペティ!伏せろ!」 ピリア:「え、えぇ!?」 ペティ:「うっは!ヤバすぎ!間に合えー!」 0:カルシゥムはピリアとともに右側の茂みに 0:ペティは左側の木の根元へとそれぞれ飛んだ 0:その瞬間、全員が先程までいた場所に目掛けて 0:50セントメルテ(50センチメートル)大の火球が炸裂した ピリア:「ぴ、ぴぎゃぁぁぁ!?」 ペティ:「おお!スゴい威力!ビックリした!」 カルシゥム:「ちぃ!この威力の火球(かきゅう)は受けたらヤバい!」 0:カルシゥム達がいた場所からはるか後方に 0:2メルテ(2メートル)は有りそうな巨大な猪が立っていた 0:体の各部位からは炎が噴き出している ピリア:「あ、あれが…ブレイズボア…!」 カルシゥム:「かなりのデカさだ…ペティ、コールドトラップは?」 ペティ:「ゴメン!前にやられたときにみんな使いきった!」 カルシゥム:「そうなるとこのまま逃げてもじり貧か…」 ピリア:「ど、どうしましょう!?」 0:ペティは二人の顔を見て、覚悟を決めたように誇らしげに笑う ペティ:「…よっし!!」 0:ペティは自身の両頬をパンっと勢い良く叩き、気合いを入れて立ち上がり 0:ピリア達の前に立つ ピリア:「ぺ、ペティさん…?」 ペティ:「カル君!これ!」 0:ペティはカルシゥムに金属製の小さな板を投げ渡す カルシゥム:「これ、ギルドカードじゃねぇか!」 カルシゥム:「お前…まさか」 ピリア:「え、え?」 ペティ:「カナードのギルドカードは特別でね」 ペティ:「冒険者が遭難しないように」 ペティ:「ギルドの座標へ、ナビゲートする魔法が付与されてるんだ」 ペティ:「二人はこれを使って、カナードに向かって!」 カルシゥム:「お前…」 ペティ:「ウチはここに残ってブレイズボアは退治する!」 0:ペティのまさかの発言に、驚き顔を青くするピリア ピリア:「そ、そんな!さ、3人で逃げましょうよ!」 ピリア:「ひ、一人であんな化け物を退治なんて無理ですよぉ…!?」 ペティ:「あっはっはっは!できれば一緒に行きたいんだけど」 ペティ:「向こうの方が、それを許してくれそうにないんだよね!」 0:ブレイズボアはゆっくりとピリア達に近づいてくる カルシゥム:「…死ぬ気か?」 ペティ:「まっさかぁ!」 0:ペティは今まで背中に背負っていたバトルアックスを抜き 0:ブレイズボアの方へと向ける ペティ:「ウチは誇り高いカナードの冒険者!」 ペティ:「命懸けで依頼をこなす覚悟はあっても」 ペティ:「無駄死にする気は毛頭ない!」 ピリア:「ペティさん…」 0:カルシゥムはペティの背を見つめながら少しの間考えて カルシゥム:「…分かった」 ピリア:「か、カルさん!?」 0:ピリアは驚き、カルシゥムを見る カルシゥム:「お嬢。俺はあんたの使い魔だ」 カルシゥム:「お嬢の命を最優先させてもらう」 ピリア:「そ、そんな!だ、ダメです!ダメですよぉ!」 0:泣きながらカルシゥムを止めるピリア。 0:そんなピリアに近づき、ペティは満面の笑顔で頭を撫でる ペティ:「ありがとね!ピリア!」 ペティ:「ウチなら大丈夫!」 ペティ:「これはもともと、ウチが引き受けた依頼だから!」 ペティ:「自分の尻拭いは自分でしなきゃね!」 ピリア:「ペティさん…!」 0:ペティはピリアの頭から手を離し、背を向ける ピリア:「(どうしよう…このままじゃペティさんが…)」 0:杖を強く握り締め、その場で俯くピリア ピリア:「(誰かを犠牲になんて…そんなの…)」 0:顔を上げたピリアの顔にはいつものオドオドした様子は見られず 0:その双眸(そうぼう)に覚悟の光を宿していた ピリア:「(絶対に…嫌だ!!)」 カルシゥム:「お嬢…」 0:カルシゥムはピリアの覚醒にいち早く気付く ピリア:「(考えなきゃ…3人が無事にカナードへ行く為に…!)」 0:この時、ピリアのスイッチが魔女へと切り替わった 0:思考は加速し、この場を切り抜ける策を考える ピリア:「(ブレイズボアは火属性の大型の魔物…)」 ピリア:「(この森の地形は起伏があまりなく、水場も多い)」 ピリア:「(手持ちの道具…それから)」 0:回る回る回る。ピリアの思考は高速で加速し回り続ける 0:やがて思考は解へと至り、策を構築する ピリア:「…ペティさん」 ペティ:「ん?どうしたのピリア」 ピリア:「アタシに策があります。力を貸してもらえませんか?」 0:ピリアはペティの目を真っ直ぐに見つめ、静かに告げる 0:ペティはそんなピリアを見て、ニッコリと笑う ペティ:「分かった!何をすればいい?」 ピリア:「ありがとうございます。」 0:ピリアはカルシゥムの方へと向き ピリア:「カルさん」 カルシゥム:「言わずもがなだ!任せろお嬢!」 0:ピリアはカルシゥムの返事を聞き、静かに微笑む ピリア:「これよりブレイズボアを討伐します。」 0:目の前に対峙する強大な敵 0:窮地に覚醒したピリア 0:闇夜の森の中 0:戦いの火蓋が切って落とされる 0:次回に続く!