台本概要
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タイトル | ヤンデレ妹とメンヘラ妹に囲まれる生活は正直に言って辛い2 |
---|---|
作者名 | 妹のヒモ (@GuDarigesu_dayo) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 4人用台本(男1、女3) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
「ヤンデレ妹とメンヘラ妹に囲まれる生活は正直に言って辛い」の続編。 優には双子の妹がいた。ヤンデレ妹の蓉と、メンヘラ妹の咲。兄である優のことが大好きな二人は徐々に兄への依存を深めていき、ついに自分以外の異性の存在を許せなくなってしまう――。 587 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
優 | 男 | 107 | 妹二人と三人暮らし。フリーター。 |
蓉 | 女 | 61 | ヤンデレ妹。高校生。兄のことが好きすぎて依存している。 |
咲 | 女 | 76 | メンヘラ妹。高校生。兄のことが好きすぎて依存している。 |
梨沙 | 女 | 57 | 優の元彼女。前話で優に別れを告げられたが――。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:01
0:
0:
優:(M)はっ、と目を覚ますと、絶望が二人を、妹達を連れて来たんだ。
優:俺は、もう生きる意味を、楽しみを、見失なってしまったんだ。
優:何のうだつも上がらない毎日を送る事になるんだから……。
0:間 3秒
咲:お兄ちゃんおかえり!
蓉:お兄ちゃんおかえり!
優:あぁ……戻ってきちゃったか……
0:間 5秒
梨沙:(M)私は、絶対に諦めない。必ず優君を救い出す。
梨沙:私は、逃げたんじゃない。戦略的撤退をしただけ。あの二人から優君を守る為に。
梨沙:このままじゃあ、優君が死んでしまう。
梨沙:だから、私が……
0:間 5秒
優:ただいま……。
蓉:帰って来てくれたんだね。
咲:お兄ちゃん! だいすき!
優:あぁ、俺もだよ……。
蓉:でも、まだ傷が塞がらないから、もう少し入院しておいてね。
咲:お兄ちゃん……ごめんなさい。
優:……大丈夫だよ。
優:(M)まだ、続くんだな……。この物語は。
優:この、どうしようもない日々がまた続く。
優:また、また、また。
優:なぁ、もう神よ、俺を殺してくれよ。死なせてくれよ。
優:何でまだ俺を生かすんだよ。
優:死ねない日に、終わりをください……。
蓉:お兄ちゃん大丈夫?
咲:ん? どうしたの? お兄ちゃん?
蓉:あ、そうだ。咲、下の売店に行ってさ、レモンティー買って来てよ。
咲:……うん、わかった。
0:咲は病室を出る。
優:……。
蓉:お兄ちゃん、死にたいと思った?
優:……だったら、何だ?
蓉:死なせないからね。ずっと~ずっと~、一緒だからね。
蓉:先に死ぬなんて、絶対に許さないからね……。
優:お前、何様だよ?
蓉:妹様? なんちゃって。
優:洒落を言う余裕はあるんだな……。
蓉:でもね、お兄ちゃんが刺された瞬間は本当に、絶望だったよ。
蓉:もう、生きる意味を見失なったと思ったからね。
優:俺には、生きる意味が見つからねーよ。
蓉:私達じゃあ、駄目なの?
優:学習したんだな。前までのお前なら「私達」じゃなくて「私」って言ってたよな……。
蓉:刺されたくないもん。
優:俺は、刺されたけどな……。
蓉:刺された? 刺されに行ったんでしょ?
優:え?
0:間 3秒
優:何を言って――ハッ!?
優:蓉、抱き着くな……。まだ、傷口が塞がってねぇのに……。
蓉:私を置いて行かないで。私を捨てないで。私を一人にしないで。私を、嫌いにならないで。
蓉:お兄ちゃん……ぅぅ。ねぇ、何で、死のうなんて思ったの?
蓉:私が私達が邪魔になったの?
蓉:お兄ちゃんを自殺させてしまうくらいのお荷物になったの? ねぇ!
蓉:お兄ちゃん……お兄ちゃん……。
蓉:何でもいい。
蓉:何でもいいから答えてよ。
優:傷口が……開いちまう……。
蓉:ねぇ、兄妹で、結婚ってできないの?
優:……。
0:勢いよく扉が開く。
咲:……何やってるの、蓉ちゃん?
咲:今、何て言ったの? 結婚って言った?
咲:まだ懲りてなかったんだね。また、お仕置きしないといけないね。
咲:バカな蓉ちゃんを良い子にしないといけないね。
咲:私、優しいから、手伝ってあげる。
蓉:……嫌。やだ。やだ。もう、お仕置きは、嫌だ!!
蓉:ごめんなさい……。ごめんなさい。ごめんなさい。咲、許してよ……。
咲:だって、全然反省して無いじゃん? 全然懲りてないじゃん?
咲:お仕置きする以外の選択肢が思い付かないよ……。
優:(M)蓉が狼狽えてる。涙を流しながら。
優:咲の様子もおかしい。さっきのお仕置きってのは、どういう意味なんだ……?
咲:蓉ちゃん帰るよ。
蓉:嫌だよ!! 嫌だ!!!
咲:いいから帰るよ。
蓉:……はい。
優:……蓉、咲……。
咲:お兄ちゃんまた明日ね♪
0:咲、病室に飾ってある花瓶をいじり、何かを置く。
優:何やってんだ咲?
咲:ん? なんでもないよ。
優:そっか……。
咲:お兄ちゃん、またね♪
0:二人は病室を出る。
優:……何だったんだ。
0:02
優:(M)あれから、二時間が経過した。
優:窓を見ると、綺麗な夕陽が顔を出していた。
優:夕陽は病室全体を照らし、俺は、ただ夕陽を眺めていた。
優:綺麗だなっと思いながらもどこか、夕陽の中にある寂しさを見つめ、目を閉じた。
0:ガラガラッと 扉が開く音。
優:うるさいな。蓉? それとも咲か?
梨沙:残念だったね。妹じゃなくて……。このシスコン!
優:梨沙さん!? 何で?
梨沙:私が諦めるとでも思った?しかもあんな、よくわからない理由で……。
優:……梨沙さん、何でわかったんですか? この病院にいるって……。
梨沙:それは、あれよ。別にどうだっていいじゃない。
優:どうだっていい。そうですね……。
優:俺は、梨沙さんに会えた。それだけで満足です……。
梨沙:で?
梨沙:シスコン君は何で入院したのか、お姉ちゃんに理由を教えて。
優:……妹に刺されました。
梨沙:妹に刺された? え? どういうこと?
優:(M)俺は、全てを話した。梨沙さんと別れた後のこと、あの惨劇を。
梨沙:そっかぁ……。大変だったね。
優:(M)梨沙さんは優しく頭を撫でてくれた。
優:この、これ以上に上がらない頭を、梨沙さんは、まるで母親のように撫でてくれた。
優:どれだけの救いになったのだろう。
優:梨沙さんにとっては赤子の手をひねるくらい簡単なこと。些細なこと。当たり前なこと。
優:でも、俺にはそれが何より幸せなことだと、確信したから……。
梨沙:今は、ゆっくりと泣いていいんだよ。
優:うぅ……あああああああ……。
梨沙:よしよし。いい子~いい子~。
優:……温かいです。
梨沙:あ、そうだ! 耳貸して!
優:え……?
0:間 5秒
0:自宅
蓉:お願い……許して。
咲:私、言ったよね。お兄ちゃんをたぶらかす人は許さないって……。
蓉:……人って、私達、家族でしょ?
咲:じゃあ、蓉ちゃんはさ……蓉ちゃんはさ! 蓉ちゃんはさ!!
咲:そんな家族を裏切るんだね……。
蓉:違う……よ。
咲:何が違うの?
咲:……結婚って何? 結婚って何? 何何何何何何何!? 何なのよ!!!!!!!
咲:また、私をのけ者にするんだ……。
咲:また、私を、私を!
咲:絶対に許さない……!!
咲:もし、私をのけ者にしたら、蓉ちゃんだろうがお兄ちゃんだろうが、殺すから……。
蓉:許して。もう、殴らないで!
咲:殴る? なに言ってんの?
咲:そんなさ、暴力みたいな言い方しないでよ…。躾(しつけ)だよ、躾!
蓉:……だったら、許してよ。
咲:まだ足りない。足りないよ、蓉ちゃん。
咲:まだ、まだ、まだ! 蓉ちゃんの反省が足りないよ……。
蓉:反省してるから……。本当に、本当だよ。
咲:(M)駄目だ。蓉ちゃんの一言一句が信じられない。ムカついてしょうがない。
咲:どうしちゃったんだろう。もう、蓉ちゃんの言葉を信じるのは不可能。
咲:じゃあ、殺す? それは暴論だな……。
咲:動けないように足を切っちゃうとか? それはありだな……。
咲:まぁ、私は優しいから。次……次に、変な事をしたら切ろ……。
咲:蓉ちゃん……もう変な事しないでね。
蓉:はい……。
0:間 5秒
0:病室
梨沙:……じゃあ、もう帰るね。
優:帰っちゃうんですか?
梨沙:なに。甘えてんの?
優:はい……。
梨沙:ずいぶんと正直に答えるのね。
優:嘘ついてもしかたがないですし、梨沙さんの前では、正直にいたいです。
梨沙:キュン。生意気!!
優:惚れ直しましたか?
梨沙:(M)惚れ直しましたか? なに言ってんの?
梨沙:もう、ずっと惚れたまんまだよ……。あの日から……。
梨沙:主婦の人達に目を付けられて、イジメを受けている時に、優は、優君は……
梨沙:笑顔で手を差し伸べてくれて……。
0:回想
優:大丈夫っすか? 梨沙さん?
梨沙:え……?
優:泣いてるんすか?
梨沙:泣いてないよ。
優:そうなんすか? 目にホコリが入ったとかですか? それとも砂?
梨沙:どっちも同じ意味でしょ?
優:そういえばそうっすね……アハハッ。
梨沙:なに笑ってんの?
優:梨沙さんってすげー楽しい人っすね!
梨沙:意味がわかんない。
優:優です! よろしくお願いします!
梨沙:……よろしくね。
優:はい!
0:回想終了
梨沙:(M)あの、つまらなかった毎日に、優君は、色を付けてくれた。
梨沙:まるで魔法使いのように……。
梨沙:笑顔で手を差し伸べてくれた優。
梨沙:私は、あの時、あの瞬間に恋をしたんだ。
優:梨沙さん? ……何で、泣いてるんですか?
梨沙:泣いてないよ……。
優:目にホコリが入ったんですか? それとも砂?
梨沙:どっちも同じ意味でしょ? フフッ。
0:間 5秒
0:03
優:(M)それから一ヶ月が経過し、俺は無事退院した。
優:あの妹二人が待つ部屋に戻るのは鬱(うつ)だけど……。
0:自宅
優:蓉、咲、ただいま……。
蓉:お兄ちゃん……おかえり。
優:……なに、包帯?
優:その顔の包帯……何があった?
蓉:大丈夫だよ……。
蓉:お兄ちゃんが帰ってきてくれて、うれしいよ……。
優:蓉……。咲は?
蓉:お風呂じゃない?
優:お風呂入ってるのか?
蓉:うん、だいぶ汚れちゃったからね……。
優:何が汚れたんだ?
蓉:お兄ちゃんは知らなくていい。
優:……。
0:風呂場から咲が出てリビングに入ってくる。
咲:あ! お兄ちゃん! おかえり!
優:咲……。蓉が包帯だらけで……何があったんだ?
咲:……心配?
優:そりゃあ兄妹なんだから、心配するだろ。
咲:心配? 心配してるんだ……。へぇ……。
咲:私のことは心配してくれないのに、蓉ちゃんのことは心配するんだね。やっぱり私のこと嫌い?
咲:嫌いなんだ! そうなんでしょ! ねぇお兄ちゃん? ……お兄ちゃん?
優:……何言ってんだ、咲? お前も兄妹だろ?
咲:今「も」って言った? 何その後付け感。
咲:やっぱり、お兄ちゃんは蓉ちゃんが好きなんだ……。私の事なんて、どうでもいいんだ。
咲:もし、お兄ちゃんが……蓉ちゃんの方を選ぶって言うならさ、その時は二人共殺してあげるから……。
優:(M)やめろ……。やめてくれ。頼むから。
優:もうこれ以上、俺を失望させないでくれ。
優:お前たち二人をもう、兄妹として見れなくなっちまうよ。
優:――疲れた、疲れたよ。
優:また繰り返すのか? あの惨劇を?
咲:ねぇ、黙ってないでさ!!!!!
咲:答えろよ!!!!!
優:……フッ(鼻で笑う)
咲:なに笑ってんの!?
優:フッ……。アッハッハッハ……。
蓉:お兄ちゃん?
咲:殺すよ……お兄ちゃん?
優:咲。お前、俺とセックスできるのか?
咲:は?
優:できるのかって聞いてんだよ?
咲:でき……るよ……。
0:間 5秒
0:優が咲をベッドに押し倒す。
咲:うっ!?
優:咲。
咲:――やるの?
優:できるんだろ?
咲:(しばらく無言)
優:どうした。
咲:……ねぇ、お兄ちゃん。
優:何だよ。
咲:お兄ちゃんってさ、童貞だよね?
優:……?
咲:そんなお兄ちゃんがさ、こんな大胆に~、ベッドに押し倒す~、ってさ。何か違和感があるんだよね~!
咲:ねぇ。
優:……何だよ。
咲:誰の入れ知恵?
優:(M)……嘘だろ。梨沙さんに教えてもらったやり方。妹をドン引きさせる作戦。
0:回想
梨沙:だからね、普段は押されてるんだから、押し返してみれば?
梨沙:そうだな……あんまりこういうことは言いたくないけど、Hしよって言うとか……。
梨沙:そうすれば、絶対に引き下がるよ。そしたらきっと、怖いってなるよ。
優:それで、ドン引きしてくれたら、確かにラッキーです。それで行きます……。
0:回想終了
咲:誰の入れ知恵? まさか? まだあのクソ女と……からんでるんだね?
咲:もうバレバレだよ♪ お兄ちゃん♪
優:梨沙さんとは会ってない!お前らだって、知ってるだろ?
咲:……。
優:(M)咲はスマホを取り出し、俺にとある動画を見せた。
優:そこには、俺と梨沙さんが病室で楽しげにしゃべっている様子が映っていた。
優:――あの時だ。
優:あの時、咲は花びんをいじってた。
優:あれは、花びんを掃除してたんじゃなくて、花びんの後ろにスマホを隠してたんだ……。
咲:最近のスマホってさ、バッテリー全然減らないね♪ すごい♪
蓉:お兄ちゃん、どういう事?
優:ああ……。
蓉:まだ、喋ってるの? ねぇお兄ちゃん!
蓉:もう、縁を切るって言ったよね!? ねぇ!? ねえってば!?
優:(M)蓉を見つめた、包帯が血でにじんでいた。
優:包帯をしていてもわかるほどに蓉の顔は憎しみと嫉妬(しっと)が折り混ざったような、そんな表情を浮かべていた。
優:――ああ、もう勘弁してくれよ……。
蓉:……まだ梨沙と喋ってるんだね。殺さないといけないね♪
蓉:アッハッハッハ! アッハッハ!!!!!
優:あああああああああああああ!!!
蓉:約束だもんね♪ 私は、約束破る人は嫌い。
蓉:その破った代償は「死」。お兄ちゃんは大好きだから、殺さないよ。梨沙を殺すよ。ねぇ、咲? その方がいいよね? 咲はどう思う?
咲:大賛成! 梨沙を殺す!
優:ちょっと……待ってくれよ。梨沙さんには手を出さないでくれ……。
蓉:待たないよ、お兄ちゃん。
咲:だって、私達は、待ったもん……。
優:ごめんなさい! ごめんなさい!
優:ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!!!
蓉:謝らなくていいよ、お兄ちゃん。
優:……え。
咲:謝ったって、無駄でしょ?
0:04
優:……ちょっと、待ってくれよぉぉ!!
咲:蓉ちゃん、お兄ちゃんのスマホをとって。
優:やめろ、触るな!
蓉:いいからよこせ!(優の腹を蹴る)
優:うっ……! あああ、傷口が……。
優:痛い、痛いよおおおおお!!
咲:あ、やっぱり。やり取りしてる。やり取り……!
咲:ムカつくな! 殺したいな!
咲:何でこの女は! 私達兄妹の輪をかき乱すの? 何で! 何で! 何で!
咲:何でだろうね、お兄ちゃん?
優:うぅ……。
咲:……何が、私が助けになる? だよ。笑わせんなよ。お前が入り込む余地なんか無いんだよ!
蓉:お兄ちゃんも、好きとかって送ってるし、やっぱり、だまされてるんだね。
優:(M)また、あの惨劇が繰り返される。
優:どうにかしないと……。また、梨沙さんに迷惑を掛けてしまう。
優:あの時の俺だったら、きっと、妹を選んでいた。
優:でも、それだと駄目なんだ。それだとまたあの惨劇が起きてしまう。
優:なら、やっぱりハッキリしないといけない。それが、クソみたいな物語の終着点になるから……。
咲:そうだ! いい事思いついた!!
優:何だ?
咲:フフッ。お兄ちゃんのスマホを、こうして、こうしてっと……。
優:まさか……やめろ――(傷口が開く)
優:あっ! があああああ!
蓉:うるさいな……お兄ちゃん。
蓉:暴れるからだよ、傷口開いちゃうよ
蓉:で、もしまだそれ以上に暴れるなら――傷口に塩塗るからね。
優:塩でもカラシでもタバスコでも塗ってみろってんだよ! だから返せ! スマホ!
蓉:ふんっ!!(優に蹴りをいれる)
優:ああああああああああ!!
咲:大人しくしててよ、お願いだから。
優:ああああ……うぅ……。
咲:「いまからあそぼ。♪(おんぷ)。」送――
優:やめろおおおおおお!
咲:送信!
咲:――あ、返信きた。早っ。
優:(M)梨沙さん、頼む。断ってくれ。
優:いま遊べないでも、何でもいい。頼むから断ってくれ。
優:神よ、もしいるなら梨沙さんを救ってください。
優:お願いします。お願いします……。
咲:あ、OKだって♪ ――ん? 待ち合わせ場所は私が決めてもいいか? だって。
咲:まぁ、会えれば問題はないし。「いいよ♪」
咲:(M)私は、いいよと送った。殺す算段はもうついている。あとは、会うだけ。
咲:こんな初歩的なことに気づけないなんて、私ったらバカね。
咲:――泣いても、騒いでも、絶対に殺す……。もし、逃げ惑うなら地の底まで追いかけてやる……。
咲:確実に、息の根を止めるまで……。
蓉:(M)お兄ちゃんにとって、私以外の存在なんていらない。私がいればいい。私がいればいい。私がいれば……いい。
蓉:他に何にもいらない。もしもの時は……お兄ちゃんと一緒に死ぬから。
蓉:それが一番の「愛」になるから
優:(M)二人は待ち合わせ場所に行ってしまった……。
優:間に合わない。もう、動けない。
優:クソッ、このままだと、梨沙さんが殺されちまう……。何とかして助けないと……。
優:はぁ……はぁ……。やばい、意識が朦朧としてきやがる。
優:駄目だ、もう一歩も動けない。腹の傷も開いちまったしよ……。
0:05
蓉:喫茶店? 何で?
咲:知らない。まぁ、別に関係ないよ。
咲:どうせ殺すんだから。
蓉:そうだよね。
咲:じゃあ、入ろっか。
0:喫茶店
蓉:(M)喫茶店を奥の方に歩いていると、窓側の席で、窓を眺めている女性がいた。
蓉:――こいつが、梨沙だ。お兄ちゃんをたぶらかした張本人。殺意がドンドンと湧き上がるのを感じる。
梨沙:やっぱり、そうだ……。
咲:何が?
梨沙:優君はさ、「♪(おんぷ)」マークなんか送ったりしない。つまり送ったのは優君ではない誰か。
梨沙:そう考えるとね、あなた達以外に思いつかないのよ。――で? 何の用? 何かあるんでしょ。
梨沙:それを受け入れるか否かは私が決めるけど。
咲:話が早くて助かる。
梨沙:頭はいい方だから。
咲:(深呼吸)私が言いたいのは一つ。
咲:お兄ちゃんに付きまとわないで。それだけ。
梨沙:フフッ……。
梨沙:アッハッハッハ。
蓉:何笑ってんのよ!!
梨沙:ここは喫茶店よ? そんな大声出さないの。
蓉:じゃあ、何で笑ったの!?
梨沙:ふぅ……。蓉さん、でいいのかな?
梨沙:髪洗ってる? 油でギトギトだよ?
咲:話をそらさないで。
梨沙:ただの雑談だよ、そんなダダ漏れの殺意をさ、隠さずにここに来るなんてバカね。
咲:何? ケンカ売ってんの?
梨沙:売ってないよ。楽しーくしゃべってるだけだよ。
梨沙:――で? どうして欲しいの?
蓉:だからさ! (過呼吸気味で)ハァ……。ハァ……。
蓉:お兄ちゃんから離れろって言ってんだよ!!
梨沙:(舌打ち)……チッ。
0:梨沙、グラスに入った水を蓉にぶっかける。
蓉:冷たッ?? ゲホッゲホッ!!
梨沙:だ!か!ら! 喫茶店だって言ったよね!?
咲:傷害罪よ! 店員さーん! この人ウチの妹に傷をつけました! 警察を呼んで!!
梨沙:(ため息)……うるせーな。
咲:え?
梨沙:黙れ!!(咲をテーブルに叩きつける)
咲:痛っ!?
咲:痛い……! 痛いよ……!!
梨沙:さっきまでの威勢はどうしたの? ふん!!(強く押しつける)
咲:痛い痛い痛い!! ごめんなさい、ごめんなさい!!!
蓉:咲に手を出さないで!
梨沙:うるさい!!(蓉の頬を叩く)
蓉:うっ!? ……痛いよぉぉぉぉぉ!
咲:痛い……痛いよ……。
梨沙:私、短気だから。最初からこうするつもりだったしね!
蓉:……ぅぅああああああ……。
咲:許してください、痛いよ……。
梨沙:何が許して下さいだ? 優君の人生を潰(つぶ)そうとしてた張本人が何言ってんの?
咲:もうそんな事しません。頭が……痛いよ……。
梨沙:あ、そっか。フォーク刺さっちゃってるね。ごめんごめん。
咲:(M)何で、誰も助けてくれないの?
咲:何で、誰も、店員ですら出てきてくれない……。
咲:どうして……?
梨沙:ねぇ、いま何で誰も助けてくれない? とかって思ってるでしょ?
梨沙:この喫茶店はね、私の両親の喫茶店なの。で、私は事前に言ってあるの。演劇部の練習にここを使うからって。
梨沙:つまり、どういう事かわかる?
咲:……みんなが、練習だと思ってるってこと……?
梨沙:大、大、大正解!
蓉:……え?
咲:どうしたら、許してくれますか?
梨沙:許さないよ。ここで優君と同じ痛みを味わってもらうから。
梨沙:そうね。このナイフをこの、可愛い頬に突き刺すってのはどうかしら?
梨沙:ん? 怖い? 苦しい?? んん? それとも逃げたいのかな? かな?
咲:嫌……だ……。
梨沙:(M)このコ、失禁してる。怖さのあまりに出ちゃったのね。
梨沙:舐められたモンだわ、こんなガキに呼び出されて、殺せるだなんて思われたんだから。
梨沙:――ねぇ? ナイフで頬、刺されたくないよね?
梨沙:ふふっ。なら、一つ言うことを聞いて。
咲:痛い……痛いよ……
蓉:(M)梨沙は咲の頬を焦らすようにナイフで突き刺さずに、グリグリと円を描くように回した。
咲:痛いいい!!!!!
蓉:(M)それでも、血は出る。
蓉:血と尿がボタボタと机の下に落ちていく……。
0:06
0:並木通り。
優:ハァ……ハァ……
優:助けないと。梨沙さんを、妹達に殺されちまう……。
優:(M)ボロボロになりながら、俺は歩く。
優:腹の傷も開いて、それを家にある包帯で無理矢理に止めて。
優:フラフラになりながらも、歩く。歩く。
優:梨沙さんを助けるまでは、この足を止めたらいけない……。
優:木々が並ぶ中、その木一本、一本を手すりのように使い歩いて行く。
優:もたれかかりながらも、道なりに進んで行く。
優:――と、道のむこうに見覚えのある三人が歩いているのがみえた。こちらに向かっているようだった。
蓉:……はぁはぁ……。
咲:うぅ……痛い……よ。
梨沙:ほら、お兄ちゃんいるよ。
優:咲! 蓉!
優:何だよ、何でそんな傷だらけなんだよ……!
梨沙:……ワガママな子にはお仕置きをするって、昔からの習わしがあるでしょ?
優:梨沙さん……。
梨沙:もうこの娘達は、優君の人生には干渉しないんだって。ただの他人になるんだって。
梨沙:良かったね。悪は滅ぼさないとね。そうでしょ、優君?
梨沙:私、何一つ間違ってないよね?
蓉:お兄ちゃん……もう関わらないよ。
咲:うん……。じゃあね。
梨沙:本当、優君感謝してよ。
梨沙:あれだけ辛そうに嘆いていた元凶を追っ払ったんだから……。
優:蓉……。
優:咲……。
0:優、蓉と咲を抱きしめる。
梨沙:何……やってんの?
梨沙:何でその二人を抱きしめてるの……?
優:スキンシップです。兄妹同士の。
梨沙:は? 何言ってんの?
優:何って、俺、やっぱり妹大好きなお兄ちゃんだって気付きました。
梨沙:は? 何? 私がしてきたことは全部無駄だったって言いたいの……?
優:無駄だった。いや、違うな……。
優:俺が、妹を大、大、大好きだってことがわかったから……愛の確認はできたんじゃないのかなって思うよ。
優:咲、蓉、帰ろっか?
咲:うん……。
蓉:帰る……。お兄ちゃん……。
梨沙:舐めたマネしてくれたじゃん!
梨沙:絶対に許さないから……バカにすんのもたいがいにしとけよ! クソシスコンがァ!!!
0:間 8秒
優:(M)あれから、一年が経過した。
優:やっと、二人も落ち着きを見せてくれた。
優:もうこれからは、どんな逆境がきても、俺達なら、乗り越えられる。
優:そうだよな。
優:――都会の喧騒(けんそう)に包まれた社会の中を俺は今、歩いている。
優:そして、蓉に電話を掛ける。
蓉:お兄ちゃん! 今日何時に帰るの?
優:そうだな、21時までには帰れるよ
蓉:今日はね、お兄ちゃんの大好きなオムライスだよ!
優:それは、楽しみだな……。あ、そうだ。
優:帰り、ケーキ買って行くよ、何がいい?
蓉:チョコ!!
咲:私は、生クリームいっぱいの奴がいい!
優:そんな慌てんなよ、ちゃんと持っt
優:――あれ、何か背中が熱い……
梨沙:はぁ……はぁ……。
梨沙:私、許さないって言ったよね……?
優:(M)梨沙さん?
優:やべ、痛い。
優:血があふれてきた。
優:痛い。
優:痛い。
優:痛い。
優:俺、刺されたのか……?
優:帰らないと……。帰らないと……。
優:咲と蓉が待ってるから……。
優:やっと、前に進める道筋ができたってのに……よ……。
優:俺が死んじまったら意味が無くなる……。
梨沙:私を捨ててあの二人を選んだからだよ!! ざまあみろ!!!
梨沙:アッハッハッハ!
梨沙:アッハッハッハ――どけ、どけよ!!!
優:(M)道ゆく人を払いのけながら、梨沙さんは俺が帰る道とは違う別方向に走って行った。
優:意味のわからない言葉をわめき散らしながら。
蓉:お兄ちゃん? もしもし、大丈夫?
優:あ……ぅぅ。大丈夫だ、今から帰るから……。
咲:ねぇ、お兄ちゃん洗剤無くなったからさ、帰り道買ってきてよ。
優:あぁ……。わかった……。
優:(M)通話切り、俺は、血を垂れ流したまま、真っすぐに妹がいる温かな家へと向かって歩く。フラつきながら。
優:ハァ……ハァ……。
優:帰ろう……。帰るんだ……。
優:蓉、咲。待っててくれ。
優:お兄ちゃん、ちょっとだけ、遅くなるかも……。
0:完
0:01
0:
0:
優:(M)はっ、と目を覚ますと、絶望が二人を、妹達を連れて来たんだ。
優:俺は、もう生きる意味を、楽しみを、見失なってしまったんだ。
優:何のうだつも上がらない毎日を送る事になるんだから……。
0:間 3秒
咲:お兄ちゃんおかえり!
蓉:お兄ちゃんおかえり!
優:あぁ……戻ってきちゃったか……
0:間 5秒
梨沙:(M)私は、絶対に諦めない。必ず優君を救い出す。
梨沙:私は、逃げたんじゃない。戦略的撤退をしただけ。あの二人から優君を守る為に。
梨沙:このままじゃあ、優君が死んでしまう。
梨沙:だから、私が……
0:間 5秒
優:ただいま……。
蓉:帰って来てくれたんだね。
咲:お兄ちゃん! だいすき!
優:あぁ、俺もだよ……。
蓉:でも、まだ傷が塞がらないから、もう少し入院しておいてね。
咲:お兄ちゃん……ごめんなさい。
優:……大丈夫だよ。
優:(M)まだ、続くんだな……。この物語は。
優:この、どうしようもない日々がまた続く。
優:また、また、また。
優:なぁ、もう神よ、俺を殺してくれよ。死なせてくれよ。
優:何でまだ俺を生かすんだよ。
優:死ねない日に、終わりをください……。
蓉:お兄ちゃん大丈夫?
咲:ん? どうしたの? お兄ちゃん?
蓉:あ、そうだ。咲、下の売店に行ってさ、レモンティー買って来てよ。
咲:……うん、わかった。
0:咲は病室を出る。
優:……。
蓉:お兄ちゃん、死にたいと思った?
優:……だったら、何だ?
蓉:死なせないからね。ずっと~ずっと~、一緒だからね。
蓉:先に死ぬなんて、絶対に許さないからね……。
優:お前、何様だよ?
蓉:妹様? なんちゃって。
優:洒落を言う余裕はあるんだな……。
蓉:でもね、お兄ちゃんが刺された瞬間は本当に、絶望だったよ。
蓉:もう、生きる意味を見失なったと思ったからね。
優:俺には、生きる意味が見つからねーよ。
蓉:私達じゃあ、駄目なの?
優:学習したんだな。前までのお前なら「私達」じゃなくて「私」って言ってたよな……。
蓉:刺されたくないもん。
優:俺は、刺されたけどな……。
蓉:刺された? 刺されに行ったんでしょ?
優:え?
0:間 3秒
優:何を言って――ハッ!?
優:蓉、抱き着くな……。まだ、傷口が塞がってねぇのに……。
蓉:私を置いて行かないで。私を捨てないで。私を一人にしないで。私を、嫌いにならないで。
蓉:お兄ちゃん……ぅぅ。ねぇ、何で、死のうなんて思ったの?
蓉:私が私達が邪魔になったの?
蓉:お兄ちゃんを自殺させてしまうくらいのお荷物になったの? ねぇ!
蓉:お兄ちゃん……お兄ちゃん……。
蓉:何でもいい。
蓉:何でもいいから答えてよ。
優:傷口が……開いちまう……。
蓉:ねぇ、兄妹で、結婚ってできないの?
優:……。
0:勢いよく扉が開く。
咲:……何やってるの、蓉ちゃん?
咲:今、何て言ったの? 結婚って言った?
咲:まだ懲りてなかったんだね。また、お仕置きしないといけないね。
咲:バカな蓉ちゃんを良い子にしないといけないね。
咲:私、優しいから、手伝ってあげる。
蓉:……嫌。やだ。やだ。もう、お仕置きは、嫌だ!!
蓉:ごめんなさい……。ごめんなさい。ごめんなさい。咲、許してよ……。
咲:だって、全然反省して無いじゃん? 全然懲りてないじゃん?
咲:お仕置きする以外の選択肢が思い付かないよ……。
優:(M)蓉が狼狽えてる。涙を流しながら。
優:咲の様子もおかしい。さっきのお仕置きってのは、どういう意味なんだ……?
咲:蓉ちゃん帰るよ。
蓉:嫌だよ!! 嫌だ!!!
咲:いいから帰るよ。
蓉:……はい。
優:……蓉、咲……。
咲:お兄ちゃんまた明日ね♪
0:咲、病室に飾ってある花瓶をいじり、何かを置く。
優:何やってんだ咲?
咲:ん? なんでもないよ。
優:そっか……。
咲:お兄ちゃん、またね♪
0:二人は病室を出る。
優:……何だったんだ。
0:02
優:(M)あれから、二時間が経過した。
優:窓を見ると、綺麗な夕陽が顔を出していた。
優:夕陽は病室全体を照らし、俺は、ただ夕陽を眺めていた。
優:綺麗だなっと思いながらもどこか、夕陽の中にある寂しさを見つめ、目を閉じた。
0:ガラガラッと 扉が開く音。
優:うるさいな。蓉? それとも咲か?
梨沙:残念だったね。妹じゃなくて……。このシスコン!
優:梨沙さん!? 何で?
梨沙:私が諦めるとでも思った?しかもあんな、よくわからない理由で……。
優:……梨沙さん、何でわかったんですか? この病院にいるって……。
梨沙:それは、あれよ。別にどうだっていいじゃない。
優:どうだっていい。そうですね……。
優:俺は、梨沙さんに会えた。それだけで満足です……。
梨沙:で?
梨沙:シスコン君は何で入院したのか、お姉ちゃんに理由を教えて。
優:……妹に刺されました。
梨沙:妹に刺された? え? どういうこと?
優:(M)俺は、全てを話した。梨沙さんと別れた後のこと、あの惨劇を。
梨沙:そっかぁ……。大変だったね。
優:(M)梨沙さんは優しく頭を撫でてくれた。
優:この、これ以上に上がらない頭を、梨沙さんは、まるで母親のように撫でてくれた。
優:どれだけの救いになったのだろう。
優:梨沙さんにとっては赤子の手をひねるくらい簡単なこと。些細なこと。当たり前なこと。
優:でも、俺にはそれが何より幸せなことだと、確信したから……。
梨沙:今は、ゆっくりと泣いていいんだよ。
優:うぅ……あああああああ……。
梨沙:よしよし。いい子~いい子~。
優:……温かいです。
梨沙:あ、そうだ! 耳貸して!
優:え……?
0:間 5秒
0:自宅
蓉:お願い……許して。
咲:私、言ったよね。お兄ちゃんをたぶらかす人は許さないって……。
蓉:……人って、私達、家族でしょ?
咲:じゃあ、蓉ちゃんはさ……蓉ちゃんはさ! 蓉ちゃんはさ!!
咲:そんな家族を裏切るんだね……。
蓉:違う……よ。
咲:何が違うの?
咲:……結婚って何? 結婚って何? 何何何何何何何!? 何なのよ!!!!!!!
咲:また、私をのけ者にするんだ……。
咲:また、私を、私を!
咲:絶対に許さない……!!
咲:もし、私をのけ者にしたら、蓉ちゃんだろうがお兄ちゃんだろうが、殺すから……。
蓉:許して。もう、殴らないで!
咲:殴る? なに言ってんの?
咲:そんなさ、暴力みたいな言い方しないでよ…。躾(しつけ)だよ、躾!
蓉:……だったら、許してよ。
咲:まだ足りない。足りないよ、蓉ちゃん。
咲:まだ、まだ、まだ! 蓉ちゃんの反省が足りないよ……。
蓉:反省してるから……。本当に、本当だよ。
咲:(M)駄目だ。蓉ちゃんの一言一句が信じられない。ムカついてしょうがない。
咲:どうしちゃったんだろう。もう、蓉ちゃんの言葉を信じるのは不可能。
咲:じゃあ、殺す? それは暴論だな……。
咲:動けないように足を切っちゃうとか? それはありだな……。
咲:まぁ、私は優しいから。次……次に、変な事をしたら切ろ……。
咲:蓉ちゃん……もう変な事しないでね。
蓉:はい……。
0:間 5秒
0:病室
梨沙:……じゃあ、もう帰るね。
優:帰っちゃうんですか?
梨沙:なに。甘えてんの?
優:はい……。
梨沙:ずいぶんと正直に答えるのね。
優:嘘ついてもしかたがないですし、梨沙さんの前では、正直にいたいです。
梨沙:キュン。生意気!!
優:惚れ直しましたか?
梨沙:(M)惚れ直しましたか? なに言ってんの?
梨沙:もう、ずっと惚れたまんまだよ……。あの日から……。
梨沙:主婦の人達に目を付けられて、イジメを受けている時に、優は、優君は……
梨沙:笑顔で手を差し伸べてくれて……。
0:回想
優:大丈夫っすか? 梨沙さん?
梨沙:え……?
優:泣いてるんすか?
梨沙:泣いてないよ。
優:そうなんすか? 目にホコリが入ったとかですか? それとも砂?
梨沙:どっちも同じ意味でしょ?
優:そういえばそうっすね……アハハッ。
梨沙:なに笑ってんの?
優:梨沙さんってすげー楽しい人っすね!
梨沙:意味がわかんない。
優:優です! よろしくお願いします!
梨沙:……よろしくね。
優:はい!
0:回想終了
梨沙:(M)あの、つまらなかった毎日に、優君は、色を付けてくれた。
梨沙:まるで魔法使いのように……。
梨沙:笑顔で手を差し伸べてくれた優。
梨沙:私は、あの時、あの瞬間に恋をしたんだ。
優:梨沙さん? ……何で、泣いてるんですか?
梨沙:泣いてないよ……。
優:目にホコリが入ったんですか? それとも砂?
梨沙:どっちも同じ意味でしょ? フフッ。
0:間 5秒
0:03
優:(M)それから一ヶ月が経過し、俺は無事退院した。
優:あの妹二人が待つ部屋に戻るのは鬱(うつ)だけど……。
0:自宅
優:蓉、咲、ただいま……。
蓉:お兄ちゃん……おかえり。
優:……なに、包帯?
優:その顔の包帯……何があった?
蓉:大丈夫だよ……。
蓉:お兄ちゃんが帰ってきてくれて、うれしいよ……。
優:蓉……。咲は?
蓉:お風呂じゃない?
優:お風呂入ってるのか?
蓉:うん、だいぶ汚れちゃったからね……。
優:何が汚れたんだ?
蓉:お兄ちゃんは知らなくていい。
優:……。
0:風呂場から咲が出てリビングに入ってくる。
咲:あ! お兄ちゃん! おかえり!
優:咲……。蓉が包帯だらけで……何があったんだ?
咲:……心配?
優:そりゃあ兄妹なんだから、心配するだろ。
咲:心配? 心配してるんだ……。へぇ……。
咲:私のことは心配してくれないのに、蓉ちゃんのことは心配するんだね。やっぱり私のこと嫌い?
咲:嫌いなんだ! そうなんでしょ! ねぇお兄ちゃん? ……お兄ちゃん?
優:……何言ってんだ、咲? お前も兄妹だろ?
咲:今「も」って言った? 何その後付け感。
咲:やっぱり、お兄ちゃんは蓉ちゃんが好きなんだ……。私の事なんて、どうでもいいんだ。
咲:もし、お兄ちゃんが……蓉ちゃんの方を選ぶって言うならさ、その時は二人共殺してあげるから……。
優:(M)やめろ……。やめてくれ。頼むから。
優:もうこれ以上、俺を失望させないでくれ。
優:お前たち二人をもう、兄妹として見れなくなっちまうよ。
優:――疲れた、疲れたよ。
優:また繰り返すのか? あの惨劇を?
咲:ねぇ、黙ってないでさ!!!!!
咲:答えろよ!!!!!
優:……フッ(鼻で笑う)
咲:なに笑ってんの!?
優:フッ……。アッハッハッハ……。
蓉:お兄ちゃん?
咲:殺すよ……お兄ちゃん?
優:咲。お前、俺とセックスできるのか?
咲:は?
優:できるのかって聞いてんだよ?
咲:でき……るよ……。
0:間 5秒
0:優が咲をベッドに押し倒す。
咲:うっ!?
優:咲。
咲:――やるの?
優:できるんだろ?
咲:(しばらく無言)
優:どうした。
咲:……ねぇ、お兄ちゃん。
優:何だよ。
咲:お兄ちゃんってさ、童貞だよね?
優:……?
咲:そんなお兄ちゃんがさ、こんな大胆に~、ベッドに押し倒す~、ってさ。何か違和感があるんだよね~!
咲:ねぇ。
優:……何だよ。
咲:誰の入れ知恵?
優:(M)……嘘だろ。梨沙さんに教えてもらったやり方。妹をドン引きさせる作戦。
0:回想
梨沙:だからね、普段は押されてるんだから、押し返してみれば?
梨沙:そうだな……あんまりこういうことは言いたくないけど、Hしよって言うとか……。
梨沙:そうすれば、絶対に引き下がるよ。そしたらきっと、怖いってなるよ。
優:それで、ドン引きしてくれたら、確かにラッキーです。それで行きます……。
0:回想終了
咲:誰の入れ知恵? まさか? まだあのクソ女と……からんでるんだね?
咲:もうバレバレだよ♪ お兄ちゃん♪
優:梨沙さんとは会ってない!お前らだって、知ってるだろ?
咲:……。
優:(M)咲はスマホを取り出し、俺にとある動画を見せた。
優:そこには、俺と梨沙さんが病室で楽しげにしゃべっている様子が映っていた。
優:――あの時だ。
優:あの時、咲は花びんをいじってた。
優:あれは、花びんを掃除してたんじゃなくて、花びんの後ろにスマホを隠してたんだ……。
咲:最近のスマホってさ、バッテリー全然減らないね♪ すごい♪
蓉:お兄ちゃん、どういう事?
優:ああ……。
蓉:まだ、喋ってるの? ねぇお兄ちゃん!
蓉:もう、縁を切るって言ったよね!? ねぇ!? ねえってば!?
優:(M)蓉を見つめた、包帯が血でにじんでいた。
優:包帯をしていてもわかるほどに蓉の顔は憎しみと嫉妬(しっと)が折り混ざったような、そんな表情を浮かべていた。
優:――ああ、もう勘弁してくれよ……。
蓉:……まだ梨沙と喋ってるんだね。殺さないといけないね♪
蓉:アッハッハッハ! アッハッハ!!!!!
優:あああああああああああああ!!!
蓉:約束だもんね♪ 私は、約束破る人は嫌い。
蓉:その破った代償は「死」。お兄ちゃんは大好きだから、殺さないよ。梨沙を殺すよ。ねぇ、咲? その方がいいよね? 咲はどう思う?
咲:大賛成! 梨沙を殺す!
優:ちょっと……待ってくれよ。梨沙さんには手を出さないでくれ……。
蓉:待たないよ、お兄ちゃん。
咲:だって、私達は、待ったもん……。
優:ごめんなさい! ごめんなさい!
優:ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!!!
蓉:謝らなくていいよ、お兄ちゃん。
優:……え。
咲:謝ったって、無駄でしょ?
0:04
優:……ちょっと、待ってくれよぉぉ!!
咲:蓉ちゃん、お兄ちゃんのスマホをとって。
優:やめろ、触るな!
蓉:いいからよこせ!(優の腹を蹴る)
優:うっ……! あああ、傷口が……。
優:痛い、痛いよおおおおお!!
咲:あ、やっぱり。やり取りしてる。やり取り……!
咲:ムカつくな! 殺したいな!
咲:何でこの女は! 私達兄妹の輪をかき乱すの? 何で! 何で! 何で!
咲:何でだろうね、お兄ちゃん?
優:うぅ……。
咲:……何が、私が助けになる? だよ。笑わせんなよ。お前が入り込む余地なんか無いんだよ!
蓉:お兄ちゃんも、好きとかって送ってるし、やっぱり、だまされてるんだね。
優:(M)また、あの惨劇が繰り返される。
優:どうにかしないと……。また、梨沙さんに迷惑を掛けてしまう。
優:あの時の俺だったら、きっと、妹を選んでいた。
優:でも、それだと駄目なんだ。それだとまたあの惨劇が起きてしまう。
優:なら、やっぱりハッキリしないといけない。それが、クソみたいな物語の終着点になるから……。
咲:そうだ! いい事思いついた!!
優:何だ?
咲:フフッ。お兄ちゃんのスマホを、こうして、こうしてっと……。
優:まさか……やめろ――(傷口が開く)
優:あっ! があああああ!
蓉:うるさいな……お兄ちゃん。
蓉:暴れるからだよ、傷口開いちゃうよ
蓉:で、もしまだそれ以上に暴れるなら――傷口に塩塗るからね。
優:塩でもカラシでもタバスコでも塗ってみろってんだよ! だから返せ! スマホ!
蓉:ふんっ!!(優に蹴りをいれる)
優:ああああああああああ!!
咲:大人しくしててよ、お願いだから。
優:ああああ……うぅ……。
咲:「いまからあそぼ。♪(おんぷ)。」送――
優:やめろおおおおおお!
咲:送信!
咲:――あ、返信きた。早っ。
優:(M)梨沙さん、頼む。断ってくれ。
優:いま遊べないでも、何でもいい。頼むから断ってくれ。
優:神よ、もしいるなら梨沙さんを救ってください。
優:お願いします。お願いします……。
咲:あ、OKだって♪ ――ん? 待ち合わせ場所は私が決めてもいいか? だって。
咲:まぁ、会えれば問題はないし。「いいよ♪」
咲:(M)私は、いいよと送った。殺す算段はもうついている。あとは、会うだけ。
咲:こんな初歩的なことに気づけないなんて、私ったらバカね。
咲:――泣いても、騒いでも、絶対に殺す……。もし、逃げ惑うなら地の底まで追いかけてやる……。
咲:確実に、息の根を止めるまで……。
蓉:(M)お兄ちゃんにとって、私以外の存在なんていらない。私がいればいい。私がいればいい。私がいれば……いい。
蓉:他に何にもいらない。もしもの時は……お兄ちゃんと一緒に死ぬから。
蓉:それが一番の「愛」になるから
優:(M)二人は待ち合わせ場所に行ってしまった……。
優:間に合わない。もう、動けない。
優:クソッ、このままだと、梨沙さんが殺されちまう……。何とかして助けないと……。
優:はぁ……はぁ……。やばい、意識が朦朧としてきやがる。
優:駄目だ、もう一歩も動けない。腹の傷も開いちまったしよ……。
0:05
蓉:喫茶店? 何で?
咲:知らない。まぁ、別に関係ないよ。
咲:どうせ殺すんだから。
蓉:そうだよね。
咲:じゃあ、入ろっか。
0:喫茶店
蓉:(M)喫茶店を奥の方に歩いていると、窓側の席で、窓を眺めている女性がいた。
蓉:――こいつが、梨沙だ。お兄ちゃんをたぶらかした張本人。殺意がドンドンと湧き上がるのを感じる。
梨沙:やっぱり、そうだ……。
咲:何が?
梨沙:優君はさ、「♪(おんぷ)」マークなんか送ったりしない。つまり送ったのは優君ではない誰か。
梨沙:そう考えるとね、あなた達以外に思いつかないのよ。――で? 何の用? 何かあるんでしょ。
梨沙:それを受け入れるか否かは私が決めるけど。
咲:話が早くて助かる。
梨沙:頭はいい方だから。
咲:(深呼吸)私が言いたいのは一つ。
咲:お兄ちゃんに付きまとわないで。それだけ。
梨沙:フフッ……。
梨沙:アッハッハッハ。
蓉:何笑ってんのよ!!
梨沙:ここは喫茶店よ? そんな大声出さないの。
蓉:じゃあ、何で笑ったの!?
梨沙:ふぅ……。蓉さん、でいいのかな?
梨沙:髪洗ってる? 油でギトギトだよ?
咲:話をそらさないで。
梨沙:ただの雑談だよ、そんなダダ漏れの殺意をさ、隠さずにここに来るなんてバカね。
咲:何? ケンカ売ってんの?
梨沙:売ってないよ。楽しーくしゃべってるだけだよ。
梨沙:――で? どうして欲しいの?
蓉:だからさ! (過呼吸気味で)ハァ……。ハァ……。
蓉:お兄ちゃんから離れろって言ってんだよ!!
梨沙:(舌打ち)……チッ。
0:梨沙、グラスに入った水を蓉にぶっかける。
蓉:冷たッ?? ゲホッゲホッ!!
梨沙:だ!か!ら! 喫茶店だって言ったよね!?
咲:傷害罪よ! 店員さーん! この人ウチの妹に傷をつけました! 警察を呼んで!!
梨沙:(ため息)……うるせーな。
咲:え?
梨沙:黙れ!!(咲をテーブルに叩きつける)
咲:痛っ!?
咲:痛い……! 痛いよ……!!
梨沙:さっきまでの威勢はどうしたの? ふん!!(強く押しつける)
咲:痛い痛い痛い!! ごめんなさい、ごめんなさい!!!
蓉:咲に手を出さないで!
梨沙:うるさい!!(蓉の頬を叩く)
蓉:うっ!? ……痛いよぉぉぉぉぉ!
咲:痛い……痛いよ……。
梨沙:私、短気だから。最初からこうするつもりだったしね!
蓉:……ぅぅああああああ……。
咲:許してください、痛いよ……。
梨沙:何が許して下さいだ? 優君の人生を潰(つぶ)そうとしてた張本人が何言ってんの?
咲:もうそんな事しません。頭が……痛いよ……。
梨沙:あ、そっか。フォーク刺さっちゃってるね。ごめんごめん。
咲:(M)何で、誰も助けてくれないの?
咲:何で、誰も、店員ですら出てきてくれない……。
咲:どうして……?
梨沙:ねぇ、いま何で誰も助けてくれない? とかって思ってるでしょ?
梨沙:この喫茶店はね、私の両親の喫茶店なの。で、私は事前に言ってあるの。演劇部の練習にここを使うからって。
梨沙:つまり、どういう事かわかる?
咲:……みんなが、練習だと思ってるってこと……?
梨沙:大、大、大正解!
蓉:……え?
咲:どうしたら、許してくれますか?
梨沙:許さないよ。ここで優君と同じ痛みを味わってもらうから。
梨沙:そうね。このナイフをこの、可愛い頬に突き刺すってのはどうかしら?
梨沙:ん? 怖い? 苦しい?? んん? それとも逃げたいのかな? かな?
咲:嫌……だ……。
梨沙:(M)このコ、失禁してる。怖さのあまりに出ちゃったのね。
梨沙:舐められたモンだわ、こんなガキに呼び出されて、殺せるだなんて思われたんだから。
梨沙:――ねぇ? ナイフで頬、刺されたくないよね?
梨沙:ふふっ。なら、一つ言うことを聞いて。
咲:痛い……痛いよ……
蓉:(M)梨沙は咲の頬を焦らすようにナイフで突き刺さずに、グリグリと円を描くように回した。
咲:痛いいい!!!!!
蓉:(M)それでも、血は出る。
蓉:血と尿がボタボタと机の下に落ちていく……。
0:06
0:並木通り。
優:ハァ……ハァ……
優:助けないと。梨沙さんを、妹達に殺されちまう……。
優:(M)ボロボロになりながら、俺は歩く。
優:腹の傷も開いて、それを家にある包帯で無理矢理に止めて。
優:フラフラになりながらも、歩く。歩く。
優:梨沙さんを助けるまでは、この足を止めたらいけない……。
優:木々が並ぶ中、その木一本、一本を手すりのように使い歩いて行く。
優:もたれかかりながらも、道なりに進んで行く。
優:――と、道のむこうに見覚えのある三人が歩いているのがみえた。こちらに向かっているようだった。
蓉:……はぁはぁ……。
咲:うぅ……痛い……よ。
梨沙:ほら、お兄ちゃんいるよ。
優:咲! 蓉!
優:何だよ、何でそんな傷だらけなんだよ……!
梨沙:……ワガママな子にはお仕置きをするって、昔からの習わしがあるでしょ?
優:梨沙さん……。
梨沙:もうこの娘達は、優君の人生には干渉しないんだって。ただの他人になるんだって。
梨沙:良かったね。悪は滅ぼさないとね。そうでしょ、優君?
梨沙:私、何一つ間違ってないよね?
蓉:お兄ちゃん……もう関わらないよ。
咲:うん……。じゃあね。
梨沙:本当、優君感謝してよ。
梨沙:あれだけ辛そうに嘆いていた元凶を追っ払ったんだから……。
優:蓉……。
優:咲……。
0:優、蓉と咲を抱きしめる。
梨沙:何……やってんの?
梨沙:何でその二人を抱きしめてるの……?
優:スキンシップです。兄妹同士の。
梨沙:は? 何言ってんの?
優:何って、俺、やっぱり妹大好きなお兄ちゃんだって気付きました。
梨沙:は? 何? 私がしてきたことは全部無駄だったって言いたいの……?
優:無駄だった。いや、違うな……。
優:俺が、妹を大、大、大好きだってことがわかったから……愛の確認はできたんじゃないのかなって思うよ。
優:咲、蓉、帰ろっか?
咲:うん……。
蓉:帰る……。お兄ちゃん……。
梨沙:舐めたマネしてくれたじゃん!
梨沙:絶対に許さないから……バカにすんのもたいがいにしとけよ! クソシスコンがァ!!!
0:間 8秒
優:(M)あれから、一年が経過した。
優:やっと、二人も落ち着きを見せてくれた。
優:もうこれからは、どんな逆境がきても、俺達なら、乗り越えられる。
優:そうだよな。
優:――都会の喧騒(けんそう)に包まれた社会の中を俺は今、歩いている。
優:そして、蓉に電話を掛ける。
蓉:お兄ちゃん! 今日何時に帰るの?
優:そうだな、21時までには帰れるよ
蓉:今日はね、お兄ちゃんの大好きなオムライスだよ!
優:それは、楽しみだな……。あ、そうだ。
優:帰り、ケーキ買って行くよ、何がいい?
蓉:チョコ!!
咲:私は、生クリームいっぱいの奴がいい!
優:そんな慌てんなよ、ちゃんと持っt
優:――あれ、何か背中が熱い……
梨沙:はぁ……はぁ……。
梨沙:私、許さないって言ったよね……?
優:(M)梨沙さん?
優:やべ、痛い。
優:血があふれてきた。
優:痛い。
優:痛い。
優:痛い。
優:俺、刺されたのか……?
優:帰らないと……。帰らないと……。
優:咲と蓉が待ってるから……。
優:やっと、前に進める道筋ができたってのに……よ……。
優:俺が死んじまったら意味が無くなる……。
梨沙:私を捨ててあの二人を選んだからだよ!! ざまあみろ!!!
梨沙:アッハッハッハ!
梨沙:アッハッハッハ――どけ、どけよ!!!
優:(M)道ゆく人を払いのけながら、梨沙さんは俺が帰る道とは違う別方向に走って行った。
優:意味のわからない言葉をわめき散らしながら。
蓉:お兄ちゃん? もしもし、大丈夫?
優:あ……ぅぅ。大丈夫だ、今から帰るから……。
咲:ねぇ、お兄ちゃん洗剤無くなったからさ、帰り道買ってきてよ。
優:あぁ……。わかった……。
優:(M)通話切り、俺は、血を垂れ流したまま、真っすぐに妹がいる温かな家へと向かって歩く。フラつきながら。
優:ハァ……ハァ……。
優:帰ろう……。帰るんだ……。
優:蓉、咲。待っててくれ。
優:お兄ちゃん、ちょっとだけ、遅くなるかも……。
0:完