台本概要

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タイトル 偶像崇拝の審判【性別不問】
作者名 パイナップルMAN  (@MAN24307569)
ジャンル ミステリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 男女のサシシナリオですが性別不問としてもお使いいただけると思います。
御手数ですがもし表記の性別ではなく別の性別で演じる場合、違和感が出てしまうところはご自身で表現を都度変えて頂ければ幸いです。
アドリブ改変ご自由にどうぞ
連絡についてですが、してもしなくてもどちらでも
構いません。したいようにして下さい

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
グース 60 新聞会社、ルループライスの記者。新たに新作をいくつか出した彫刻家に何とかアポが取れた。
クラウン 56 世界的有名な石膏像の、彫刻家。胸像を専門としている
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:【偶像崇拝の審判】 ガーニッシュ・クラウン:世界的有名な石膏像の、彫刻家。胸像を専門としている グース:新聞会社、ルループライスの記者。新たに新作をいくつか出した彫刻家に何とかアポが取れた。 : 0:数え切れない程の彫刻が並んでいる。 グース:「うわぁ、これがあの有名な」 クラウン:「そうだよ。それが前回のコンテストで優勝した娼婦の笑みだ」 グース:「!?、クラウンさん、今回は取材を受けて下さりありがとうございます!!」 クラウン:「待たせてすまないね。そう堅苦しいのは抜きにして、ね?」 グース:「いえいえ、とんでもないです。」 クラウン:「実を言うと今回はワクワクしているんだ。」 グース:「と、言いますと?」 クラウン:「ふふ、まぁ立ち話もなんだ、とりあえずあそこの席にかけてくれ」 グース:「お気遣いありがとうございます。では、失礼致します。」 クラウン:「何か飲むかね?」 グース:「あぁ、自分は何でも、」 クラウン:「うーん、若い子は何がいいのかね。炭酸飲料の方が好むかね?」 グース:「クラウンさんと同じものでもよろしいですか?」 クラウン:「ははっ、なら珈琲だな」 0:クラウンが珈琲を持ってくる グース:「では、質問を始めてもよろしいでしょうか?」 クラウン:「あぁ構わんよ」 グース:「それに伴い、録音も致します。何かありましたらその都度お願い致します」 クラウン:「もちろん。むしろ録音をして私の今回の作品について世に広めて欲しい。そのために取材を受けたのだからね」 グース:「ありがとうございます。では、改めまして、ルループライスから参りましたグースと申します。」 クラウン:「彫刻家のガーニッシュ・クラウンだ。よろしく」 グース:「お願い致します。ではまず、そのお名前について、どういう経緯でガーニッシュ・クラウンとされたのでしょうか。」 クラウン:「私達、いや、私はあくまで付け合せ、飾りに過ぎないと、そういう意味を込めて飾りの道化師としたんだ。あくまで大衆が見るべきなのは作品であり作者では無いとね。」 グース:「ほう。私としてはクラウンさんのいちファンとしてクラウンさんの事も知りたいと思ってしまうのですが」 クラウン:「それはなんとも嬉しいことだ。しかし作品と私を切り離して見る事が前提であり、より良い理解に繋がると思っている。」 グース:「それは、何故でしょう?」 クラウン:「作者の人となりを知ると自ずと作品の傾向が分かってしまう。作品が貴族を形取るものばかり作っていた場合、庶民を描いてもきっとこれのどこかに貴族の要素があると勘ぐってしまう。これはとてもいけないことだと思うのだ。」 グース:「なるほど、クラウンさんの胸中が聞けて大変嬉しく思います。確かにそうかもしれません。私も思う節がいくつかあります。、えっと、では次の質問に移らさせていただきます。今回の作品についてなのですが」 0:クラウンが待ちきれんとばかりに身を乗り出す。 クラウン:「やっとか!今回の作品は私史上最高のものが出来たと断言ができる!それがようやく日の目を浴びることが出来るのかと思うと子供のようにはしゃいでしまうよ」 グース:「えぇ、それを聞いて私も早く見てみたいと思ってしまいます。今回の作品のタイトルなどお教え願っても良いでしょうか?」 クラウン:「タイトルか、、私は未だに少し悩んでいてね、これらになんと名付けるのが良いのか、」 グース:「これら、と言いますと今回の作品は一つではないのですか?」 クラウン:「あぁ、今回のはいくつもの胸像が共同体としてある様なのだよ。」 グース:「なるほど、それはなかなか、言ってしまえば今までの歴史から外れるようなものですね」 0:したり顔になるクラウン クラウン:「ほう?それはなぜ?」 グース:「やはり、胸像というものは一つ一つをしっかりと表現しようとして細かく繊細に作られます。故に個数を出すとどうしても人の目が分散してしまうと思うのです。」 クラウン:「ほうほう」 グース:「しかし、クラウンさんがそうまでして表現したかったものとは何か、という好奇心が今の私を支配しているのも事実ですし、きっとこれは世間の方々も同じなのでしょう。」 クラウン:「君はいつ、私のことを知ったのだね?」 グース:「十八の時にたまたま見かけた雑誌に貴方の作品が載っていて、そこから虜になったのですよ。」 クラウン:「題名は覚えているかね?」 グース:「嘆きの天使です」 クラウン:「ほう?あれか、あれを見て私の虜にだと?はっはっはっ!笑わせる!!あれは散々酷評された作品だと言うのに」 グース:「しかし、貴方様のファンの間ではカルト的なまでの支持を得ているのも事実です。」 クラウン:「あれのどこに惹かれた?」 グース:「タイトルは嘆きの天使だと言うのに異様な笑顔に目が離せなくなりました。そしてその笑顔がなんとも冒涜的で卑しく淫らな、それでいて美しかったんです。いや、美しい訳では無いのですが、あの言葉のない感情を見つけられた時悔しかったのです。そして今も尚、あなたの作品を見て私は様々な気持ちになります。しかしそのどれもが適する言葉を見つけることが出来ず、流れ出てしまうのです」 クラウン:「ふっ、良かった。ここに来てくれたのが君のような子で」 グース:「それは、なぜ?」 クラウン:「私の作品はとても深いのだ。なぞるだけでも見る事は出来る。だが理解とは程遠い。ここでひとつ、昔の話でもしていいかな?」 グース:「是非とも、」 クラウン:「むかし、私はお世辞にもいい子とは言えなかった。虫を見つけては踏み潰し、火で炙り、ハサミで切り刻んだ。もちろん、親に止められたり、怒鳴られたりしたさ、でもどうしても止められなかったんだ。なぜだと思う?」 グース:「幼い時の、善悪の無知さでしょうか?」 クラウン:「んー、残念、ハズレだ。悪い事だとは分かっていた。分かっていたから余計にタチが悪い。それでもなぜ止めなかったのか。それはね、知りたかったからだ」 グース:「知りたかったから?」 クラウン:「そう。虫を潰すとき、何かが込み上げて来るんだ。不快感でも、快感でもない何かが。同情や憐れみ、優越感や嘲笑でも何でもない何かが私の体を支配するのだ。それらが逃げ出す前に、こぼれ落ち前に私は辞書を引いた。でも見つからなかった。この気持ちたちはなんなのか検討もつかず諦めかけたその時、天は私にチャンスを与えたのだ。」 グース:「?!、その感覚をそのまま胸像として描いていると、、?」 クラウン:「その通りだ。だから君の気持ちが痛いほど分かる。分かってしまう。だから君も言ってしまえば芸術家だ」 グース:「いいえ、クラウン先生。それは違いますよ。私達はあくまで貴方が見つけた感情に共感しただけです。それを見つけたのは他でもないあなたなのです。1からそれを発展されるよりも、0から1を造り出す方が遥かに難しいのですよ先生。」 クラウン:「ははっ、すまない。口が過ぎたな。さっ、そろそろ新しい作品を見てもらおうかな。」 0:あまりの興奮に生唾を飲み込む グース:「!!、、遂に、その時ですか」 クラウン:「このカーテンをくぐればそこにあるのは芸術の世界だ!さぁ!行きたまえ!」 グース:「、、では、失礼します。」 0:カーテンをくぐるグースとクラウン グース:「、、これは!?」 クラウン:「どうだね、素晴らしいだろう」 グース:「、とても、とても素晴らしいです。彫刻は一体いくつあるのでしょう?」 クラウン:「23体だ」 グース:「に、23、、流石としか言い表せません。ここまで集中力を絶やさずに入れるのはとても大変な事だと思いますが」 クラウン:「私の人生をかけるべき作品だったのだ。そんな一時的な疲れなど取るに足らんさ」 グース:「なるほど流石です。ところでこの部屋は少し寒くないですか?」 クラウン:「そうかね?私は普通だが?」 グース:「そうですか、失礼致しました。では作品のこだわりについておきかせ願えますか?」 クラウン:「あぁ!まずはこの少年だ。この幼い顔を見てどう思う?」 グース:「これは、なんと言いますか、強いて言うのであればとても強い恐怖でしょうか?」 クラウン:「ではそこの紳士は?」 グース:「、、絶望、?」 クラウン:「ならこっちの娼婦は?」 グース:「、、ご機嫌を取る時の笑顔、ですかね。、」 クラウン:「ご名答。さすがだ。」 グース:「ですが今回は全てにおいて言葉で説明が出来るようになってますね。何か表現の仕方や考え方を変えたのですか?」 クラウン:「あぁ、製法を少し変えてね。これは企業秘密だから言えないが、それの試験的なは作品なのだ」 グース:「試験的にしては随分と大掛かりだと思いますが、」 クラウン:「まずは完璧にしないと気が済まなくてね」 グース:「この彫刻、どこかで私見た気がするのですが、」 クラウン:「あぁ、それはね、あの大女優、エリス・クイーンをイメージして作ったんだ。」 グース:「ほう?。どうりで既視感がある訳ですね。私も実際に見たことはありませんが、まるで目の前にいるかのように思います。」 クラウン:「そうかそうか、それは良かった。」 グース:「しかし、エリスさんは先月から行方不明になってしまっているはずです。これが世に出ればどのような反応を受けてしまうのか、」 クラウン:「そればかりは私も出してみないと分からないな」 グース:「きっと、ここまでの完成度ですから皆様もエリスさんがまた出てきたと盛り上がるはずです。」 クラウン:「ははっ、エリスさんについてはとても残念だがな、本当はこの作品を目の前にして感想でも言って欲しかったんだが、」 グース:「残念ですね、、」 クラウン:「さっ、席に戻って話を再開しようか、」 グース:「そうしましょうか。」 0:グースは視線を感じ振り返る グース:「、、ん?」 クラウン:「どうかしたかね?」 グース:「いや、何か、視線を感じた気がして」 クラウン:「ほうほう、そうかそうか」 グース:「きっとクラウンさんの作品の出来が素晴らしいからですね」 クラウン:「そうとは限らんよ」 グース:「、?それはなぜでしょう?」 クラウン:「精神の狭間で造られる物に何が起きても不思議では無い。人間の本質的な欲求を全て忘れる狂気の世界だ。作品が命を持つことだってある、、と思うがね。」 グース:「これは、、流石クラウンさんです。」 クラウン:「ははっ、褒めたって何も出ないぞ。」 グース:「、、ではそろそろ取材を終わりにさせてい(ただきます)」 クラウン:「(被せて)君は私のファンかね?」 グース:「、、??一応、そう自負はしておりますが、」 クラウン:「なら問わせて貰おう。あの作品から何を感じた?」 グース:「、、それは先程言った通り(のことを感じましたよ?)」 クラウン:「嘘だ。君は本当にそう感じているわけではあるまい。君は疑問も持ったままそれに蓋をしようとしている。なぁ、君の本当の言葉を聞かせてくれ。」 0:静かに録音機を止めて話すグース グース:「、、、強いて言うのであれば精巧過ぎて、分かります過ぎました。まるで貴方の作品のようには見えなかった。どこかこう、複製品のように感じてしまいました。」 クラウン:「、、、そうか、」 グース:「それが私にはとても気持ち悪く感じてしまいました。言い表せてしまう奇妙さやあの異常な表情に、、」 0:明らかにトーンダウンしたクラウン クラウン:「、、ありがとう。また来てくれ。君とはとても楽しい話が出来そうだ。」 グース:「はい。ありがとうございました。では、失礼致します。」 0:お辞儀をして出ていくグース 0:間 0:会社で記事を書き、家路を歩くグース グース:私は、気づいた。あの異様さに、あの異質さに。きっと彼はそれを受け入れてくれると踏んで最後の問いを投げかけたのだと思う。あそこできっと私が褒めれば彼は全てを打ち明けたのだと思う。私は彼を心の底から教祖として祭り上げることは出来なかった。カルト的な崇拝の心など最初から持っていなかったようだ。今日の出来事やこの思いは全てしまって置こう。それが良い。それが良いのだ。

0:【偶像崇拝の審判】 ガーニッシュ・クラウン:世界的有名な石膏像の、彫刻家。胸像を専門としている グース:新聞会社、ルループライスの記者。新たに新作をいくつか出した彫刻家に何とかアポが取れた。 : 0:数え切れない程の彫刻が並んでいる。 グース:「うわぁ、これがあの有名な」 クラウン:「そうだよ。それが前回のコンテストで優勝した娼婦の笑みだ」 グース:「!?、クラウンさん、今回は取材を受けて下さりありがとうございます!!」 クラウン:「待たせてすまないね。そう堅苦しいのは抜きにして、ね?」 グース:「いえいえ、とんでもないです。」 クラウン:「実を言うと今回はワクワクしているんだ。」 グース:「と、言いますと?」 クラウン:「ふふ、まぁ立ち話もなんだ、とりあえずあそこの席にかけてくれ」 グース:「お気遣いありがとうございます。では、失礼致します。」 クラウン:「何か飲むかね?」 グース:「あぁ、自分は何でも、」 クラウン:「うーん、若い子は何がいいのかね。炭酸飲料の方が好むかね?」 グース:「クラウンさんと同じものでもよろしいですか?」 クラウン:「ははっ、なら珈琲だな」 0:クラウンが珈琲を持ってくる グース:「では、質問を始めてもよろしいでしょうか?」 クラウン:「あぁ構わんよ」 グース:「それに伴い、録音も致します。何かありましたらその都度お願い致します」 クラウン:「もちろん。むしろ録音をして私の今回の作品について世に広めて欲しい。そのために取材を受けたのだからね」 グース:「ありがとうございます。では、改めまして、ルループライスから参りましたグースと申します。」 クラウン:「彫刻家のガーニッシュ・クラウンだ。よろしく」 グース:「お願い致します。ではまず、そのお名前について、どういう経緯でガーニッシュ・クラウンとされたのでしょうか。」 クラウン:「私達、いや、私はあくまで付け合せ、飾りに過ぎないと、そういう意味を込めて飾りの道化師としたんだ。あくまで大衆が見るべきなのは作品であり作者では無いとね。」 グース:「ほう。私としてはクラウンさんのいちファンとしてクラウンさんの事も知りたいと思ってしまうのですが」 クラウン:「それはなんとも嬉しいことだ。しかし作品と私を切り離して見る事が前提であり、より良い理解に繋がると思っている。」 グース:「それは、何故でしょう?」 クラウン:「作者の人となりを知ると自ずと作品の傾向が分かってしまう。作品が貴族を形取るものばかり作っていた場合、庶民を描いてもきっとこれのどこかに貴族の要素があると勘ぐってしまう。これはとてもいけないことだと思うのだ。」 グース:「なるほど、クラウンさんの胸中が聞けて大変嬉しく思います。確かにそうかもしれません。私も思う節がいくつかあります。、えっと、では次の質問に移らさせていただきます。今回の作品についてなのですが」 0:クラウンが待ちきれんとばかりに身を乗り出す。 クラウン:「やっとか!今回の作品は私史上最高のものが出来たと断言ができる!それがようやく日の目を浴びることが出来るのかと思うと子供のようにはしゃいでしまうよ」 グース:「えぇ、それを聞いて私も早く見てみたいと思ってしまいます。今回の作品のタイトルなどお教え願っても良いでしょうか?」 クラウン:「タイトルか、、私は未だに少し悩んでいてね、これらになんと名付けるのが良いのか、」 グース:「これら、と言いますと今回の作品は一つではないのですか?」 クラウン:「あぁ、今回のはいくつもの胸像が共同体としてある様なのだよ。」 グース:「なるほど、それはなかなか、言ってしまえば今までの歴史から外れるようなものですね」 0:したり顔になるクラウン クラウン:「ほう?それはなぜ?」 グース:「やはり、胸像というものは一つ一つをしっかりと表現しようとして細かく繊細に作られます。故に個数を出すとどうしても人の目が分散してしまうと思うのです。」 クラウン:「ほうほう」 グース:「しかし、クラウンさんがそうまでして表現したかったものとは何か、という好奇心が今の私を支配しているのも事実ですし、きっとこれは世間の方々も同じなのでしょう。」 クラウン:「君はいつ、私のことを知ったのだね?」 グース:「十八の時にたまたま見かけた雑誌に貴方の作品が載っていて、そこから虜になったのですよ。」 クラウン:「題名は覚えているかね?」 グース:「嘆きの天使です」 クラウン:「ほう?あれか、あれを見て私の虜にだと?はっはっはっ!笑わせる!!あれは散々酷評された作品だと言うのに」 グース:「しかし、貴方様のファンの間ではカルト的なまでの支持を得ているのも事実です。」 クラウン:「あれのどこに惹かれた?」 グース:「タイトルは嘆きの天使だと言うのに異様な笑顔に目が離せなくなりました。そしてその笑顔がなんとも冒涜的で卑しく淫らな、それでいて美しかったんです。いや、美しい訳では無いのですが、あの言葉のない感情を見つけられた時悔しかったのです。そして今も尚、あなたの作品を見て私は様々な気持ちになります。しかしそのどれもが適する言葉を見つけることが出来ず、流れ出てしまうのです」 クラウン:「ふっ、良かった。ここに来てくれたのが君のような子で」 グース:「それは、なぜ?」 クラウン:「私の作品はとても深いのだ。なぞるだけでも見る事は出来る。だが理解とは程遠い。ここでひとつ、昔の話でもしていいかな?」 グース:「是非とも、」 クラウン:「むかし、私はお世辞にもいい子とは言えなかった。虫を見つけては踏み潰し、火で炙り、ハサミで切り刻んだ。もちろん、親に止められたり、怒鳴られたりしたさ、でもどうしても止められなかったんだ。なぜだと思う?」 グース:「幼い時の、善悪の無知さでしょうか?」 クラウン:「んー、残念、ハズレだ。悪い事だとは分かっていた。分かっていたから余計にタチが悪い。それでもなぜ止めなかったのか。それはね、知りたかったからだ」 グース:「知りたかったから?」 クラウン:「そう。虫を潰すとき、何かが込み上げて来るんだ。不快感でも、快感でもない何かが。同情や憐れみ、優越感や嘲笑でも何でもない何かが私の体を支配するのだ。それらが逃げ出す前に、こぼれ落ち前に私は辞書を引いた。でも見つからなかった。この気持ちたちはなんなのか検討もつかず諦めかけたその時、天は私にチャンスを与えたのだ。」 グース:「?!、その感覚をそのまま胸像として描いていると、、?」 クラウン:「その通りだ。だから君の気持ちが痛いほど分かる。分かってしまう。だから君も言ってしまえば芸術家だ」 グース:「いいえ、クラウン先生。それは違いますよ。私達はあくまで貴方が見つけた感情に共感しただけです。それを見つけたのは他でもないあなたなのです。1からそれを発展されるよりも、0から1を造り出す方が遥かに難しいのですよ先生。」 クラウン:「ははっ、すまない。口が過ぎたな。さっ、そろそろ新しい作品を見てもらおうかな。」 0:あまりの興奮に生唾を飲み込む グース:「!!、、遂に、その時ですか」 クラウン:「このカーテンをくぐればそこにあるのは芸術の世界だ!さぁ!行きたまえ!」 グース:「、、では、失礼します。」 0:カーテンをくぐるグースとクラウン グース:「、、これは!?」 クラウン:「どうだね、素晴らしいだろう」 グース:「、とても、とても素晴らしいです。彫刻は一体いくつあるのでしょう?」 クラウン:「23体だ」 グース:「に、23、、流石としか言い表せません。ここまで集中力を絶やさずに入れるのはとても大変な事だと思いますが」 クラウン:「私の人生をかけるべき作品だったのだ。そんな一時的な疲れなど取るに足らんさ」 グース:「なるほど流石です。ところでこの部屋は少し寒くないですか?」 クラウン:「そうかね?私は普通だが?」 グース:「そうですか、失礼致しました。では作品のこだわりについておきかせ願えますか?」 クラウン:「あぁ!まずはこの少年だ。この幼い顔を見てどう思う?」 グース:「これは、なんと言いますか、強いて言うのであればとても強い恐怖でしょうか?」 クラウン:「ではそこの紳士は?」 グース:「、、絶望、?」 クラウン:「ならこっちの娼婦は?」 グース:「、、ご機嫌を取る時の笑顔、ですかね。、」 クラウン:「ご名答。さすがだ。」 グース:「ですが今回は全てにおいて言葉で説明が出来るようになってますね。何か表現の仕方や考え方を変えたのですか?」 クラウン:「あぁ、製法を少し変えてね。これは企業秘密だから言えないが、それの試験的なは作品なのだ」 グース:「試験的にしては随分と大掛かりだと思いますが、」 クラウン:「まずは完璧にしないと気が済まなくてね」 グース:「この彫刻、どこかで私見た気がするのですが、」 クラウン:「あぁ、それはね、あの大女優、エリス・クイーンをイメージして作ったんだ。」 グース:「ほう?。どうりで既視感がある訳ですね。私も実際に見たことはありませんが、まるで目の前にいるかのように思います。」 クラウン:「そうかそうか、それは良かった。」 グース:「しかし、エリスさんは先月から行方不明になってしまっているはずです。これが世に出ればどのような反応を受けてしまうのか、」 クラウン:「そればかりは私も出してみないと分からないな」 グース:「きっと、ここまでの完成度ですから皆様もエリスさんがまた出てきたと盛り上がるはずです。」 クラウン:「ははっ、エリスさんについてはとても残念だがな、本当はこの作品を目の前にして感想でも言って欲しかったんだが、」 グース:「残念ですね、、」 クラウン:「さっ、席に戻って話を再開しようか、」 グース:「そうしましょうか。」 0:グースは視線を感じ振り返る グース:「、、ん?」 クラウン:「どうかしたかね?」 グース:「いや、何か、視線を感じた気がして」 クラウン:「ほうほう、そうかそうか」 グース:「きっとクラウンさんの作品の出来が素晴らしいからですね」 クラウン:「そうとは限らんよ」 グース:「、?それはなぜでしょう?」 クラウン:「精神の狭間で造られる物に何が起きても不思議では無い。人間の本質的な欲求を全て忘れる狂気の世界だ。作品が命を持つことだってある、、と思うがね。」 グース:「これは、、流石クラウンさんです。」 クラウン:「ははっ、褒めたって何も出ないぞ。」 グース:「、、ではそろそろ取材を終わりにさせてい(ただきます)」 クラウン:「(被せて)君は私のファンかね?」 グース:「、、??一応、そう自負はしておりますが、」 クラウン:「なら問わせて貰おう。あの作品から何を感じた?」 グース:「、、それは先程言った通り(のことを感じましたよ?)」 クラウン:「嘘だ。君は本当にそう感じているわけではあるまい。君は疑問も持ったままそれに蓋をしようとしている。なぁ、君の本当の言葉を聞かせてくれ。」 0:静かに録音機を止めて話すグース グース:「、、、強いて言うのであれば精巧過ぎて、分かります過ぎました。まるで貴方の作品のようには見えなかった。どこかこう、複製品のように感じてしまいました。」 クラウン:「、、、そうか、」 グース:「それが私にはとても気持ち悪く感じてしまいました。言い表せてしまう奇妙さやあの異常な表情に、、」 0:明らかにトーンダウンしたクラウン クラウン:「、、ありがとう。また来てくれ。君とはとても楽しい話が出来そうだ。」 グース:「はい。ありがとうございました。では、失礼致します。」 0:お辞儀をして出ていくグース 0:間 0:会社で記事を書き、家路を歩くグース グース:私は、気づいた。あの異様さに、あの異質さに。きっと彼はそれを受け入れてくれると踏んで最後の問いを投げかけたのだと思う。あそこできっと私が褒めれば彼は全てを打ち明けたのだと思う。私は彼を心の底から教祖として祭り上げることは出来なかった。カルト的な崇拝の心など最初から持っていなかったようだ。今日の出来事やこの思いは全てしまって置こう。それが良い。それが良いのだ。