台本概要

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タイトル Scrap witch !? 第6話 自由都市カナード
作者名 狗山犬壱(イヌヤマ ケンイチ)
ジャンル ファンタジー
演者人数 7人用台本(男4、女3)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 無事に自由都市へと到着したピリア達一行。そこに待ち受けていたものは…

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ピリア 88 主人公?魔女モード以外は基本的に泣き声ばかり。主人公らしくない主人公
カルシゥム 118 ピリアの使い魔。知識・経験ともに豊富な為、あらゆる場面で説明台詞が多い。エピソードの問題でこいつが主人公に見えなくもない
ペティ 52 冒険命の特攻少女。今のところ何だか頼れる相棒みたいに見えるが話がもう少し進むと本性が見えてくる予定
マギサ 41 ピリアの師匠。ピリア限定のドSにして泣き顔・曇り顔・絶望顔スキーなド変態。超絶美人でナイスバディだが内面が残念すぎる人
ノラ 31 異世界なのに関西弁を喋る、胡散臭い男。冒険者ギルドの職員で女好き。苦手なものはヤンデレ
セルシオ 42 冒険者ギルドのサブギルドマスター。常に冷静沈着で変人の巣窟の冒険者ギルドにて数少ない常識人。眼鏡をかけた細身の美丈夫。BLに出てきそうな外見
ノエル 117 フォスター自警団の副団長。緋色の髪をホーステールに縛った女顔。カナード1、女装姿が妄想されている悲しき男の娘。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:自由都市カナード 南町 0:冒険者ギルド前 0: 0:ピリア達一行は街の関門を通り、冒険者ギルドのある 0:南町へと訪れていた ペティ:「あ、ここだよ!カナードの冒険者ギルド!」 ピリア:「あ、あんまり大きな声出さないで下さいぃぃ!」 ピリア:「お、音の振動でぇ…し、刺激がぁぁ…!」 カルシゥム:「お嬢の筋肉痛、まだ治らないんだな…」 0:ピリアを背負った状態で、ペティは片手でギルドの建物を指差す ピリア:「こ、これが冒険者ギルド…!」 0:ピリアは建物の大きさに圧倒され、プルプルと震えている カルシゥム:「…あんまり変わらないもんだな」 ペティ:「ん?カル君、何か言った?」 カルシゥム:「いや、何も。」 カルシゥム:「それより、俺はここから喋れないから」 カルシゥム:「お嬢のフォローを頼む」 ピリア:「えぇ!?か、カルさん!?何で!?」 0:予想外の発言だったのか、ピリアはカルシゥムに涙目で問いかける カルシゥム:「ここは街中だ。ただでさえお嬢は」 カルシゥム:「俺を使い魔にしている関係で カルシゥム:「死霊術士(しりょうじゅつし)に間違われることが多いんだ。」 カルシゥム:「新生活に影を落とすリスクは、極力減らすに限るだろ?」 ピリア:「で、でもぉ…!か、カルさんがいないと…あ、アタシぃぃ……!」 ペティ:「うーん…多分だけど、大丈夫じゃないかな?」 ペティ:「ここのギルド、すごく変わり者が多いんだよ!」 ペティ:「もうね!変人の見本市ってくらい大勢いて、面白いんだよ!」 0: カルシゥムはペティを見て、納得する カルシゥム:「ああ。確かにな」 カルシゥム:「お前が在籍出来るぐらいだもんな」 カルシゥム:「それは見本市にもなるわな、そりゃ」 ペティ:「?」 0:三人が話していると、ギルドのドアが開かれた ノラ:「…ペティ?ペティやないか!」 0: 黒く染色した革装備に身を包んだ、軽薄そうな男が中から出てきた カルシゥム:「(なんだ、こいつ?…気配が)」 ペティ:「ただいま!ノラ!」 ノラ:「お前、無事やったんか!」 ペティ:「いやー!なんとか戻ってきたよ!」 ノラ:「怪我はなさそうやな…ふぃー…肝が冷えたで…」 0: 心底ホッとしたようにノラは胸を撫で下ろした ノラ:「お前がギルドで依頼を受注した後、ブレイズボアの情報が更新されてな」 ノラ:「例年よりもごっつい個体が現れたらしいって情報が新しく入ってきたんや」 ノラ:「こら一旦、依頼は取り下げなアカンっちゅーことになったんやけど」 ノラ:「お前、止める間もなく現場に行ってしもたから」 ノラ:「急いで捜索隊を組んどった所やったで!」 カルシゥム:「(この男めちゃくちゃ喋るな…)」 ペティ:「えぇ!?そんなことになってたの?」 ペティ:「通りで手強かったわけだ!」 ノラ:「お、お前!まさか討伐出来たんか!?」 0:ペティは胸を張り、誇らしげに笑う ペティ:「その通り!ウチ等三人で、見事討伐したよ!」 ノラ:「おお!スゴいやないか!…ん?三人?」 カルシゥム:「(…このバカ)」 ピリア:「あ、ああ、あの!な、なにか…い、急いでいるみたいでしたけど…」 0:ピリアはオドオドしながらも、話を反らしてごまかす ノラ:「ああ!そうやった!こないなことしとる場合やない!」 ノラ:「ペティが戻ってきたんやったら、捜索の中止せな!」 ノラ:「オレはセルシオん所、行ってくるから」 ノラ:「ペティ!…っと後ろの嬢ちゃんも!ギルドの宿舎に行って」 ノラ:「風呂とか飯を済ませとき!」 ペティ:「うん!分かったー!」 ノラ:「ほな後でな!」 0:ノラは慌ただしくどこかへと走っていった ピリア:「な、なんと言うか…物凄くお喋りな人ですね…」 カルシゥム:「…あいつ、何者だ?」 ピリア:「カルさん?」 カルシゥム:「気配がえらく薄いんだよ。」 カルシゥム:「目の前にいても認識しにくいというか」 ペティ:「ああ。ノラは…っとと!いけないいけない!」 ピリア:「?」 ペティ:「ゴメンね!カル君!」 ペティ:「ギルドの決まりで、勝手に職員の情報を外部の人間に」 ペティ:「漏らしちゃいけないことになってるんだ!」 カルシゥム:「ああ、それもそうか。」 カルシゥム:「…済まん。気が回らなかった」 0:カルシゥムは気まずさからペティに謝る ピリア:「(この街に着いてから、カルさんの様子が少し変です…) ペティ:「あっはっは!いいよ別に!」 ペティ:「でも、ノラは胡散臭いけど、悪い奴じゃないから!」 ペティ:「ウチが保証するよ!」 ピリア:「(昔、この街で何かあったのかな?)」 カルシゥム:「…そうか」 ピリア:「(よ、よし!)」 ピリア:「あ、あのぉ…カルさん?」 カルシゥム:「ん?どうしたお嬢」 ピリア:「あ、いえ!そのぉ…」 ピリア:「だ、だいじょう…」 ペティ:「よーし!お風呂とご飯だ!」 ペティ:「ピリア!全力で飛ばすからしっかり掴まってて!」 ピリア:「ぶ…って!ま、待って下さいぃぃ!ま、まだ話がぁ!?」 ペティ:「行っくぞぉぉー!」 ピリア:「ホゲェェェー!?」 0:ペティはピリアをおぶったまま全力でギルドの宿舎まで走り出した 0: ピリアに握られた杖に収まりながら、カルシゥムは思考の海に沈む カルシゥム:「(自由都市カナード…)」 カルシゥム:「(あれから、もう50年か…)」 カルシゥム:「(生きているなら70近い歳になってる、か…)」 0:カルシゥムは寂しげにカタカタと顎を揺らす カルシゥム:「(まさか、死んだ後にこの街に来ることになるなんてな)」 カルシゥム:「(今頃、お前はどうしているんだ)」 カルシゥム:「(…フォスター)」 0:ギルドの裏手に向かって走っていく二人を 0:建物の陰から見ている人影が5つ ノエル:「…あれが報告にあった少女、か」 ノエル:「まさかあんなに小さな子とはね」 0:そのうち一つ影は、やれやれと首を振る ノエル:「しかし、これも街の治安を守る為」 ノエル:「早々に対処させて貰うとしようかな」 0:その影は振り返り、他の影へと向き直る ノエル:「これより任務を開始する」 ノエル:「対象はサースディ近辺の辻馬車に乗車中」 ノエル:「車中にて、スケルトンを召喚したことから」 ノエル:「死霊術士の嫌疑がかけられている」 ノエル:「現段階では事実確認がとれていない為」 ノエル:「今回は任意での同行を求める」 ノエル:「対象の同行者はあの【冒険狂い】。」 ノエル:「対応を間違えれば確実にトラブルになる。」 ノエル:「冒険者ギルドと衝突するのは、極力避けたい」 ノエル:「威圧的な態度をとらず、相手を刺激しないように努めろ。以上だ」 ノエル:「トリス、エルドは冒険者ギルド宿舎近辺に潜め」 ノエル:「もしもの可能性だが、対象が逃亡する恐れもある」 ノエル:「監視の目を絶やすな」 ノエル:「リタとセスはボクとともに来い。」 ノエル:「対象に接触する。行くぞ」 0:5つの影はその場から消えた 0: 0: 冒険者ギルド 宿舎前 ペティ:「さぁ!着いた!ここが宿舎だよ!」 ピリア:「こ、ここが…」 0: ピリアはペティの背中の上から建物を見上げる 0:その建物はギルドの裏手にあり、表側の建物とは違い 0:大きな宿屋に見える。酒場を併設しているのか 0:中から大勢の楽しげな声と活気の良さが伝わってくる ピリア:「あ、あばば!ひ、人の楽しそうな声がぁ…!」 ピリア:「うぐぅ…!と、溶けるぅ…!光のオーラがぁぁ…!」 ピリア:「よ、陽キャは来ないでぇ…!き、消えてしまいますぅぅ…!」 ピリア:「ひぃぎぃぃぃ…!!」 ペティ:「えぇ!?ど、どうしたのさ?ピリア!」 カルシゥム:「久々に見るな、お嬢の陰(いん)の者ムーブ」 カルシゥム:「そっとしといてやってくれ。」 カルシゥム:「久しぶりに大勢の人間の明るい声や雰囲気に触れたから」 カルシゥム:「発作が出ちまっているだけだ」 ペティ:「発作?」 カルシゥム:「コミュ障特有のアレだ」 ペティ:「よく分からないけど…なんかすごいね!」 ペティ:「でも、どうすれば治るの?」 カルシゥム:「暗くてジメジメした部屋に入れば落ち着きを取り戻すさ」 ペティ:「あっはっは!まるでキノコだ!」 カルシゥム:「まぁ似たような生活送っているからな」 カルシゥム:「あながち間違っちゃいない」 カルシゥム:「とはいえ、このままだと通報一歩手前だからな…仕方ない。」 カルシゥム:「ほら、お嬢…」 ノエル:「やぁ!賑やかで楽しそうだね!」 カルシゥム:「っ!!」 ペティ:「え?」 0: 突然現れた気配に、カルシゥムは驚き警戒する 0:緋色の髪をホーステールに纏めた女顔の男が 0:いつの間にかペティの背後に現れていた カルシゥム:「(こいつ、いつの間に…!?)」 カルシゥム:「(いや、こいつだけじゃない!)」 0:カルシゥムは改めて周囲を確認すると 0:他にも潜んでいる何者かの気配を看破する カルシゥム:「(…目の前の奴を入れて3人…)」 カルシゥム:「(いや、少し離れたところに2人!)」 カルシゥム:「(別動隊の可能性も考えると更にいるか?)」 カルシゥム:「(ちっ!こんなに接近されるとか、俺はバカか!)」 0:カルシゥムが一瞬の間に敵の数を把握し、悔やんでいる時 0:ペティは男の服装を見て顔をしかめ、向き直る ペティ:「気配を殺して近づくのが、君たち流の歓迎の仕方なのかな?」 ノエル:「いやいや。仕事柄、気配を殺すのが癖になっているだけさ」 ノエル:「警戒させるつもりはなかったんだ、ゴメンよ」 ペティ:「ふーん…その割には周りに人、伏せすぎじゃない?」 0:ペティは先ほどカルシゥムが看破した方へ目を向ける ノエル:「あ、あはは…流石は、B級冒険者」 ノエル:「君たちを威圧しないように最初はボクが接触を試みたんだけど…」 ノエル:「このままだとあらぬ疑いを生みそうだね」 ノエル:「リタ、セス。こちらへ」 ノエル:「トリス、エルド。その場で姿を見せるんだ」 0: 男の背後に二人の女性、宿舎の陰から二人の男性が 0:それぞれ姿を現した。男女の意匠の違いはあるが 0:全員青色で統一された軍服らしき 0:装束に身身に付け、各々武器を携帯している ペティ:「それで?ピリア達に何の用かな?」 ペティ:「この子達はウチの命の恩人。」 ペティ:「もし、妙なちょっかい掛けようって言うなら…」 0:ペティは強く拳を握る 0:ペティの剣呑な様子に焦り出す男 ノエル:「わー!待った待った!悪かったって!」 ノエル:「確かにその子達に用がある!」 ノエル:「でも、悪いようにはしないってば!」 ペティ:「どうだか。君たちの所の人、評判悪いよ」 ノエル:「うっ…アレンのことかぁ…」 ノエル:「そ、それは事実だけど…うぅ…み、耳が痛いなぁ」 ペティ:「だいたい、ピリア達に何の容疑がかかっているって言うのさ!」 ピリア:「…よ、容疑!?」 ピリア:「ぺ、ペティさん?こ、この人達って…」 ノエル:「おっと!そう言えば名乗ってなかったね」 0:男は左胸に右手を当て、綺麗なお辞儀をピリアへと披露する ノエル:「ボクはノエル。ここ、自由都市カナードを守る自警団」 ノエル:「【フォスター自警団】の副団長さ!」 カルシゥム:「…フォスター、だと!?」 0:フォスターの名を聞いたカルシゥムは感情を爆発させる ピリア:「か、カルさん…?」 ノエル:「おっと!ようやく喋ってくれたね。ガイコツ君?」 カルシゥム:「おい!教えてくれ!そのフォスターって名前の由来を!」 ノエル:「え?」 カルシゥム:「頼む!」 0:カルシゥムのただならぬ様子に、何かしらの事情をノエルは察した ノエル:「…このフォスターって言うのは」 ノエル:「40年前に、この自警団を立ち上げた初代自警団長」 ノエル:「グランツ=フォスター氏の名前からつけられたんだよ」 カルシゥム:「40年前…そうか」 0:カルシゥムは少しの間、口を閉ざす カルシゥム:「アイツは…グランツは今どこに?」 0:ノエルは少し寂しげな顔をする。 ノエル:「グランツ元団長は10年前に亡くなったよ。」 カルシゥム:「っ!」 カルシゥム:「…そう、か」 ノエル:「どうやら君はグランツ元団長の知り合いみたいだね」 カルシゥム:「…親友だ」 ノエル:「…そう」 0:ノエルは少し空を見上げ、次にピリアに目を向ける 0:その後、真剣な表情を浮かべる ノエル:「ペティ君。ボクはフォスター自警団副団長として誓う。」 ノエル:「ピリア君とガイコツ殿には…」 カルシゥム:「…カルシゥムだ」 ノエル:「失礼。カルシゥム殿には手荒な真似はしないし、させない。」 ノエル:「だから、今は自警団の詰め所への同行を許してほしい」 0:ノエルはカルシゥムに目を向ける ノエル:「きっと積もる話もあるだろうから」 0:ペティはピリアとカルシゥムを見る。 ペティ:「だってさ。どうする二人とも?」 ペティ:「二人が嫌なら、ウチが絶対に二人を守るよ!」 ピリア:「カルさん…」 0:ピリアは杖を抱きしめ、カルシゥムを見つめる ピリア:「…聞きたいんですよね?お友達のこと」 カルシゥム:「…ああ。聞きたい」 カルシゥム:「俺が死んでからあいつがどう生きてきたのか」 カルシゥム:「俺は…知りたい。」 ピリア:「分かりました。」 0:ピリアは落ち着いた様子でノエルへと目を向ける ピリア:「同行します。その代わり…」 ノエル:「うん。グランツ元団長について知っている限りの事をお教えするよ。」 カルシゥム:「…すまねぇ、お嬢」 カルシゥム:「俺のワガママに付き合わせちまって」 ピリア:「…カルさんはもっとワガママ言ってくれて良いですよ」 ピリア:「アタシ、なんていっつもカルさんに助けられてばかりなんですから」 ピリア:「頼られているみたいで…その、嬉しいです」 カルシゥム:「お嬢…」 ピリア:「えへへ…」 ノエル:「あー、オッホン!失礼、仲が良いのは大変素晴らしいんだけど…」 ノエル:「少々、周りが騒がしくなってきててね」 0:ピリアは周りを見回すといつの間にか街の住人や冒険者らしき姿が 0:ピリア達に好奇の視線を向けている ピリア:「あ、あぁ!しゅ、しゅみませぇん…!」 ペティ:「あっはっは!ホントに二人は仲良しだね!」 ノエル:「ふふ、微笑ましいね」 ペティ:「これなら大丈夫かな?」 ノエル:「ああ。誓いは違(たが)えないよ」 ノエル:「二人の身柄は責任をもってお預かりする。」 ペティ:「…うん。今の君なら信じても良いかな!」 0:ペティはピリアを背中から下ろし、目線を合わせる。 ペティ:「二人とも、ウチは一度ギルドに戻るよ」 ペティ:「何だか二人に変な容疑がかかっているってみたいだからね!」 ペティ:「ノラに確認してくる」 ピリア:「ぺ、ペティさん、ありがとうございます」 カルシゥム:「悪い。面倒をかけちまった」 ペティ:「あっはっは!面倒をかけたのはお互い様さ!」 0:ペティは満面の笑みで立ち上がる ペティ:「次に会うときは、冒険者ギルドかな?ギルドには登録するんでしょ?」 ピリア:「は、はい。その予定です」 ペティ:「良いね!じゃ、次は一緒にたっくさん冒険しようね!」 ピリア:「あ、えと…ほ、ほどほどで…」 ペティ:「メチャクチャ難易度が高いダンジョンの情報、仕入れてくるから!」 ペティ:「ピリアにも冒険のスリルを教えてあげるから楽しみにしててね!」 ピリア:「あ、あの!ほ、本当にお手柔らか…」 ペティ:「よーし!燃えてきたぁぁ!」 ペティ:「それじゃ!ウチは全力でお風呂とご飯済ませてくる!」 ペティ:「待ったねぇぇー!」 ピリア:「に…あ、あばば…!ど、どどど、どうしよう…!?」 ノエル:「これが【冒険狂い】か。怖ぁ…」 カルシゥム:「お嬢…」 ピリア:「か、カルさぁん…!」 カルシゥム:「強く、生きような」 ピリア:「しょんなぁ…!?」 0: 0:自由都市カナード 東街 0:フォスター自警団 第1詰め所 0: ノエル:「グランツ元団長…グラン爺ちゃんは20年前に」 ノエル:「自警団を脱退して、ボクの親父に後任を託した後 ノエル:「冒険者ギルドのギルドマスターに就任したんだ」 カルシゥム:「あいつが…ギルドマスター」 ノエル:「本来であればギルドに所属していない者は」 ノエル:「ギルドマスターにはなれないのだけれど」 ノエル:「南北継承戦争時の功績と、自警団長としての実績から」 ノエル:「都市長のリスティ様が推薦し、ギルド連盟からの承認を得て」 ノエル:「特例として爺ちゃんはギルドマスターになれたのさ」 カルシゥム:「そう言えば、あんたはあいつの…」 ノエル:「孫だよ。あれ?似てないかな?」 カルシゥム:「どちらかといえば、あいつの嫁さんに似てるな」 0:カルシゥムの返しにノエルは拗ねた顔をする ノエル:「へん!どうせ女顔だよ、ボクは!」 カルシゥム:「コンプレックスなのかよ、その顔」 ノエル:「ああ!大いにコンプレックスだね!」 ノエル:「何故ならこの顔のせいで、変な奴しか寄り付かないんだよ!」 ノエル:「何が女装をさせたいだよ!何が男の娘ハスハスだよ!」 カルシゥム:「マジかよ…」 ノエル:「だからボクは自警団の副団長まで登り詰めたのさ!」 ノエル:「あの手の変態を片っ端から捕まえる為にね!」 カルシゥム:「動機が物騒すぎる。」 カルシゥム:「流石は変人の巣窟、カナード…」 ノエル:「ところで…」 0:ノエルはここまで一言も喋っていないピリアへと目を向ける 0:ピリアはうつ向いたまま、時折プルプルと震え 0:小声でぶつぶつと何かを喋っている ノエル:「彼女、大丈夫?」 カルシゥム:「大丈夫だ。問題ない」 カルシゥム:「これで平常運転だ」 ピリア:「どうしようどうしようどうしようどうしよう…」 ピリア:「お師匠にこの事がバレたら…ひぃぃ!!」 ピリア:「り、リア充の刑はぁ…!リア充の刑だけはぁぁ…!」 ピリア:「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」 ノエル:「…これで?」 カルシゥム:「これで」 ノエル:「怖ぁ…」 0: 0:閑話休題… 0: ノエル:「グラン爺ちゃんがギルドマスターに就任してから」 ノエル:「ギルドは大改革が行われた」 ノエル:「クエスト受注規定の改定や昇級審査制度の見直し」 ノエル:「新人冒険者への研修制度や訓練所の設立とか」 ノエル:「今までは色々な要素があって、手出しできなかった」 ノエル:「部分に大々的に手を入れていったのさ」 カルシゥム:「あの脳筋真面目野郎がなぁ…」 ノエル:「あはは、ボクにしてみれば何でも出来るスゴい爺ちゃんなんだけど」 カルシゥム:「あいつもそれだけ変わっていったわけか」 ノエル:「そうかもね。ところで」 ノエル:「冒険者って言うと、何を思い浮かべる?」 カルシゥム:「荒くれ者、守銭奴、倫理観が薄い」 ノエル:「な、中々すごいイメージを持っているね」 カルシゥム:「俺が生きていた頃はこんなもんだよ」 ノエル:「当時の事はボクもあまり知らないけど」 ノエル:「今の冒険者ギルドの在り方を見ると」 ノエル:「本当に爺ちゃんは頑張ったんだなぁって思うよ」 カルシゥム:「…お嬢のお師匠が言ってた話は」 カルシゥム:「グランツの奴が尽力した成果だった訳か」 ノエル:「ピリア君のお師匠様が?」 カルシゥム:「この街はかなり治安が良いって話」 ノエル:「あはは、そうだね。冒険者ギルドと自警団」 ノエル:「二つの組織がこの街を守っているからね」 ノエル:「今のギルドマスターは冒険者のモラル向上の為に」 ノエル:「新人冒険者に対しての新たな制度を導入しているし」 ノエル:「うちの団長は…なんと言うか、治安維持の鬼だからね」 ノエル:「少しでも街に害を及ぼそうとする存在には容赦がない人だから」 カルシゥム:「お前の親父さんはそんなに厳しい人なのか?」 0:カルシゥムの言葉にノエルはキョトンとする ノエル:「ああ、そっか。話してなかったね。」 ノエル:「今の団長は3代目で、ボクの親父は2代目なんだ」 カルシゥム:「あいつの息子…リギルは引退したのか?」 ノエル:「あはは、9年前に腰をやっちゃってね。」 ノエル:「その時にちょうど、あの人が入隊してきてさ」 カルシゥム:「入隊直後に団長に就任したってのか?」 ノエル:「こっちも特例らしいよ。詳しくは知らないけど」 カルシゥム:「おいおい、大丈夫かよそれで」 ノエル:「身元はしっかりしているからね」 カルシゥム:「知り合いだったのか?」 ノエル:「ううん。こっちが一方的に知っていただけさ」 ノエル:「あの人は元は冒険者ギルドのS級冒険者で」 ノエル:「【青雷】(せいらい)の二つ名を持った凄腕の剣士だったんだ」 ノエル:「当時のボク等世代は皆、彼に憧れたもんさ」 カルシゥム:「マジか。まるで小説の主人公みたいな奴だな」 ノエル:「実際、あの人の武勇伝はスゴいよ?ちょっと信じられないくらい」 ノエル:「これは知り合いの冒険者に聞いた話なんだけど…」 0:ノックの音が部屋に響く ノエル:「あ、そろそろ来たかな?」 カルシゥム:「誰だ?」 ノエル:「ギルドの人」 0:扉を開け、入ってきたのは眼鏡をかけた細身の美丈夫と 0:黒革装備に身を包んだ男、ノラだった セルシオ:「お話し中、失礼します。フォスター副団長」 ノエル:「ああいえ。殆ど談笑していただけですので」 ノラ:「おーい!ピリアちゃんにガイコツ君!」 ノラ:「ノラ兄ちゃんが迎えに来たでー!」 カルシゥム:「…当たり前のように俺の事は看破してんのな」 セルシオ:「ノラ、ここは自警団の詰め所です。」 セルシオ:「大きな声出さないで下さい」 ノラ:「うへー…流石はクソ真面目やなぁ」 セルシオ:「我々は冒険者ギルドを代表してここに来ているのですよ?」 セルシオ:「粗相(そそう)をすれば冒険者ギルドの看板に傷がつきます」 ノラ:「あー、はいはい!わっかりました!」 ノラ:「ホレホレ、ピリアちゃん。あっち行こ」 ピリア:「…はっ!あ、アタシは何でここに?」 ピリア:「って!だ、だだ、誰ですかぁ!?」 ノラ:「おお、元気がいいなぁ!」 ノラ:「さっき会った、ノラ兄ちゃんがお迎え来たでー♪」 ピリア:「…あ、よく喋る人」 ノラ:「お、オレのイメージ、そんな感じなん?」 カルシゥム:「実際、よく喋るからなぁ」 ノラ:「マジか!へこむわ…トホホ…」 カルシゥム:「って!そうじゃなくて」 カルシゥム:「さっきから思っていたけど、俺たちの取り調べは?」 カルシゥム:「死霊術士の容疑がかかってたんじゃないのか?」 0:その言葉にノエルは思い出したかのように手を打つ ノエル:「そう言えば言ってなかったね、ごめんごめん!」 ノエル:「ここに来た時点で、君達への容疑は晴れていたんだよ」 カルシゥム:「どういう事だ?」 セルシオ:「そこから先は私が」 カルシゥム:「あんたは?」 セルシオ:「申し遅れました。私はセルシオ=アルディージャ」 セルシオ:「冒険者ギルド、カナード支部のサブギルドマスターです」 セルシオ:「お二人の嫌疑については、あるお方の証言により晴れました。」 セルシオ:「この件は自警団本部にギルドから魔導通信にて通達済みです」 ピリア:「あるお方…?」 カルシゥム:「…ああ、なるほどね。そう言うことか」 ピリア:「カルさん?」 カルシゥム:「お嬢」 ピリア:「は、はい」 0:カルシゥムは呆れたようにカタカタと顎を鳴らす カルシゥム:「これ、お師匠案件だ」 ピリア:「え…えぇぇぇー!?」 カルシゥム:「ああ、そうなると…そろそろ」 0:突然、ドアが激しく開かれる マギサ:「ヤッホー!ピーちゃん!元気に臭い飯食べてるー?」 ピリア:「ぴっ…!ぴぎゃぁぁぁー!?」 ピリア:「し、ししし、師匠ぉー!?」 マギサ:「ああん…♡生で見るピーちゃんの絶望顔ぉ♡」 マギサ:「そそるわぁ…♡ウフフ…♪」 セルシオ:「マギサ様、ご自重下さい。ここは自警団の敷地内です」 マギサ:「あら?そう言えばそうね。私ってばうっかり♪」 ノラ:「あの状態の姐さんにツッコミ入れるとはなぁ…」 ノラ:「流石はセルシオやな!」 ノエル:「あ、あはは…何だか情報量が多いね、キミ達…」 セルシオ:「失礼。それではお二人の身柄はこちらでお預かりします。」 セルシオ:「この度はお騒がせして申し訳ありませんでした。」 ノエル:「いえいえ。こちらも仕事ですので、お気になさらず」 ノエル:「カルシゥム殿、グランツ元団長の話はまた今度にしましょう」 ノエル:「次は非番の日にでもお誘いしますので」 カルシゥム:「悪いなノエル。ありがとう」 ノエル:「いえいえ。それより…彼女、大丈夫?」 0:ノエルの言葉にカルシゥムはピリアへと目を向ける ピリア:「こ、ここまでの苦労は…全部、師匠の仕業…?」 ピリア:「て言うことは…ここから更にひどいことがががが…!」 0:ピリアは床にうずくまり小声でぶつぶつと何かを喋っている ピリア:「これよりもひどい目って…まさか!服屋の刑!?」 ピリア:「り、リア充の巣窟に…あ、アタシが…?」 マギサ:「ああ!あの時の事ね♪」 マギサ:「お洋服選んであげるって、連れていって」 マギサ:「一人だけ残して、1時間位放置して」 マギサ:「人混みに対する緊張感と、人に対する恐怖心で」 マギサ:「泣き出したピーちゃんの泣き顔を」 マギサ:「肴にお茶してたのよね♪」 マギサ:「はぁ…♡イイ思い出だわぁ…♡」 カルシゥム:「いや、歪(ゆが)みすぎだろ!性癖!」 ノラ:「あないセクシーなのに、歪んだ性癖持ちとか…ええな!」 ノエル:「…本当にこの街は変人の巣窟だなぁ」 ピリア:「ひ、ひぃぃ!ムリムリムリぃぃぃ!! 」 ピリア:「い、いや!は、話しかけないでぇぇ…!」 ピリア:「ふ、服ぐらい、自分で選べるからぁぁ…!」 ピリア:「そ、そんな明るい色も服持ってこないでぇぇ…!」 0: ピリアの妄想は続いている。その様子を見たセルシオは セルシオ:「それでは冒険者ギルドに移動しましょう。」 0:スルーした カルシゥム:「あのお嬢をスルーした!?」 セルシオ:「ギルドにはタイプは異なりますが」 セルシオ:「似たような輩が数えきれないほどいますので」 セルシオ:「いちいち構う気はありません。」 ノラ:「いちいちクールなやっちゃな」 セルシオ:「私まであなた方みたいになったら」 セルシオ:「ギルドマスターが血反吐はいて死にますよ?」 セルシオ:「ストレスで」 ノラ:「あーそらあかん。幼い子供とべっぴんの嫁さんを」 ノラ:「路頭に迷わす訳には…オレにもワンチャン?」 セルシオ:「ゲス極まりない発言ですね。正直ドン引きです」 セルシオ:「減給されたくなければ、それ以上はやめておきなさいノラ」 ノラ:「うっす!」 セルシオ:「いい加減、移動しましょう」 セルシオ:「カルシゥムさん、あなたのご主人様を起こして下さい」 セルシオ:「これ以上、ギルドの恥部をさらすわけにはいきませんので」 カルシゥム:「な、ナチュラルに毒吐くなこいつ…」 0:カルシゥムがピリアをなんとか正気に戻すと 0:一行は冒険者ギルドへと移動した 0: 0: 0: 0:冒険者ギルド 応接室 セルシオ:「…はい。結構です」 セルシオ:「これで審査は完了しました」 ピリア:「あ、ありがとうございます」 ピリア:「き、緊張しましたぁ…」 カルシゥム:「お疲れ、お嬢。」 カルシゥム:「しかし、意外とやることが少ないんだな?」 カルシゥム:「もっと複雑な試験とか面接とかあるかと思ったんだが」 セルシオ:「元々、マギサ様の推薦なので身元はしっかりとしています」 セルシオ:「ピリアさんの様子を見ていましたが」 セルシオ:「悪さを考える余裕はないと判断しました。」 カルシゥム:「なるほど」 セルシオ:「これがギルドカードです。どうぞ」 0:セルシオはピリアにギルドカードを渡す。 ピリア:「これが…アタシのギルドカード」 セルシオ:「カード中央の魔石に触れれば登録完了です。」 0:ピリアは言われた通り、魔石に触れる。 0:魔石は淡く光り、カード全体が光を帯びる。 0:数秒間、光続けた後に元の状態に戻った セルシオ:「問題なく成功ですね。そのカードはそのままお持ちください」 セルシオ:「明日から新人冒険者の研修が始まりますので」 セルシオ:「今日はこのまま宿舎で休んでください」 ピリア:「あ、はい。分かりました」 セルシオ:「1階の酒場でギルドカードを見せれば食事がとれます」 セルシオ:「お風呂は宿舎を出て右側にギルド専用の入浴施設があるので」 セルシオ:「必要に応じて使用してください。」 カルシゥム:「いくらかかるんだ?」 セルシオ:「新人冒険者は研修終了まで、費用はギルド持ちとなります」 セルシオ:「明日は8時から研修のブリーフィングが始まりますので」 セルシオ:「食事と入浴を終えたら早めに休んでください」 ピリア:「あ、ありがとうございました!」 セルシオ:「では、私はこれで」 0:セルシオは応接室を出ていった ピリア:「はぁぁぁ~…」 カルシゥム:「お嬢、大丈夫か?」 ピリア:「な、なんとかぁ…」 カルシゥム:「そうか。それじゃ飯でも食いに…」 0:応接室のドアが勢いよく開かれる マギサ:「ハァイ♪登録は完了したかしら?」 ピリア:「ひぇ…!?し、師匠ぉ…!?」 カルシゥム:「またこのパターンか…」 マギサ:「あら?すれた反応ね?残念♪」 0:マギサは部屋に入り、ピリアの向かいの椅子へと腰掛ける マギサ:「さて」 マギサ:「ピリア=オストー」 ピリア:「っ!」 カルシゥム:「(真面目モードのお師匠さんか)」 ピリア:「は、はい!」 マギサ:「アクシデントは多々あれど、無事に冒険者になれましたね。」 マギサ:「初めての旅で色々な事を経験した様子」 マギサ:「よく頑張りましたね」 ピリア:「あ…はい!ありがとうございます!」 マギサ:「…ですが」 ピリア:「っ!?」 マギサ:「【ウィッチクラフト】を使いましたね?」 マギサ:「それも魔女以外の者にその存在を知られてしまった」 マギサ:「そうですね?」 ピリア:「も、申し訳ありません!」 ピリア:「非常時だったので必要と判断し、使用しました!」 マギサ:「良いですかピリア。私達が使用するウィッチクラフトは」 マギサ:「魔女の神秘と知恵を詰め込んだ秘宝です」 マギサ:「今回は人命に関わる事柄故(ゆえ)、許しますが」 マギサ:「本来は軽易(けいけい)に使用出来ない物と知りなさい」 ピリア:「は、はい!分かりました!」 マギサ:「以降は使用は控えること。良いですね?」 ピリア:「以後、気を付けます!」 マギサ:「よろしい。」 カルシゥム:「(ここだけ見ればめちゃくちゃすごい魔女なんだがなぁ…)」 マギサ:「…それはそれとして」 0:真面目な雰囲気はいつの間にか消え 0:獲物を狙う豹のような雰囲気を、マギサは纏う ピリア:「ぴっ…!?し、師匠…?」 カルシゥム:「ああ、これが本題な訳か」 マギサ:「信賞必罰(しんしょうひつばつ)は大事よね?」 ピリア:「あ、あぁぁ、あのあのあの…!!」 マギサ:「ピリア=オストー!」 ピリア:「ひゃ、ひゃい!!」 0:マギサはピリアに向け指を指す マギサ:「次の課題です!」 ピリア:「ひ、ひぃぃぃ!?」 カルシゥム:「(今度はどんな無茶ぶりだ?)」 0:マギサはニヤリと嗤い マギサ:「1ヶ月以内に、友達を10人作ること!」 ピリア:「と、友達ぃぃぃ!?じゅ、10人!?」 カルシゥム:「(おいおい!死んだわお嬢!)」 マギサ:「無機物・空想上のお友達は」 マギサ:「カウントしないので、そのつもりで!」 ピリア:「しょ、しょんなぁぁぁー!?」 カルシゥム:「…逃げ道、潰されたな」 マギサ:「もしも達成できなかった時は…」 ピリア:「と、時は…?ゴクリ」 0:マギサは輝く笑顔を浮かべる マギサ:「お・た・の・し・み…♡」 ピリア:「ぴぃぎぃぃぃ!?」 0:無事に自由都市カナードへと到着したピリア達一行 0:多くの出会いと多大なる不安を得て 0:ピリアの新生活が始まろうとしていた ピリア:「か、かかか、カルざぁん!」 カルシゥム:「落ち着けお嬢!こればっかりは慎重にだな」 マギサ:「何の刑にしよっかなー?」 マギサ:「女性冒険者のマウンティングマウンテンに強制参加?」 マギサ:「リア充カップル100人に突撃取材?」 マギサ:「それとも…」 ピリア:「い、いやぁぁぁー!?どれもいやぁぁぁー!!」 カルシゥム:「あんたも、ちょっとは自重してくれ!」 0:彼女の明日はどうなる!? ピリア:「誰かぁ!誰かだずげでぇぇぇぇぇー!!」 0: 次回に…続いても良いのかなぁ?

0:自由都市カナード 南町 0:冒険者ギルド前 0: 0:ピリア達一行は街の関門を通り、冒険者ギルドのある 0:南町へと訪れていた ペティ:「あ、ここだよ!カナードの冒険者ギルド!」 ピリア:「あ、あんまり大きな声出さないで下さいぃぃ!」 ピリア:「お、音の振動でぇ…し、刺激がぁぁ…!」 カルシゥム:「お嬢の筋肉痛、まだ治らないんだな…」 0:ピリアを背負った状態で、ペティは片手でギルドの建物を指差す ピリア:「こ、これが冒険者ギルド…!」 0:ピリアは建物の大きさに圧倒され、プルプルと震えている カルシゥム:「…あんまり変わらないもんだな」 ペティ:「ん?カル君、何か言った?」 カルシゥム:「いや、何も。」 カルシゥム:「それより、俺はここから喋れないから」 カルシゥム:「お嬢のフォローを頼む」 ピリア:「えぇ!?か、カルさん!?何で!?」 0:予想外の発言だったのか、ピリアはカルシゥムに涙目で問いかける カルシゥム:「ここは街中だ。ただでさえお嬢は」 カルシゥム:「俺を使い魔にしている関係で カルシゥム:「死霊術士(しりょうじゅつし)に間違われることが多いんだ。」 カルシゥム:「新生活に影を落とすリスクは、極力減らすに限るだろ?」 ピリア:「で、でもぉ…!か、カルさんがいないと…あ、アタシぃぃ……!」 ペティ:「うーん…多分だけど、大丈夫じゃないかな?」 ペティ:「ここのギルド、すごく変わり者が多いんだよ!」 ペティ:「もうね!変人の見本市ってくらい大勢いて、面白いんだよ!」 0: カルシゥムはペティを見て、納得する カルシゥム:「ああ。確かにな」 カルシゥム:「お前が在籍出来るぐらいだもんな」 カルシゥム:「それは見本市にもなるわな、そりゃ」 ペティ:「?」 0:三人が話していると、ギルドのドアが開かれた ノラ:「…ペティ?ペティやないか!」 0: 黒く染色した革装備に身を包んだ、軽薄そうな男が中から出てきた カルシゥム:「(なんだ、こいつ?…気配が)」 ペティ:「ただいま!ノラ!」 ノラ:「お前、無事やったんか!」 ペティ:「いやー!なんとか戻ってきたよ!」 ノラ:「怪我はなさそうやな…ふぃー…肝が冷えたで…」 0: 心底ホッとしたようにノラは胸を撫で下ろした ノラ:「お前がギルドで依頼を受注した後、ブレイズボアの情報が更新されてな」 ノラ:「例年よりもごっつい個体が現れたらしいって情報が新しく入ってきたんや」 ノラ:「こら一旦、依頼は取り下げなアカンっちゅーことになったんやけど」 ノラ:「お前、止める間もなく現場に行ってしもたから」 ノラ:「急いで捜索隊を組んどった所やったで!」 カルシゥム:「(この男めちゃくちゃ喋るな…)」 ペティ:「えぇ!?そんなことになってたの?」 ペティ:「通りで手強かったわけだ!」 ノラ:「お、お前!まさか討伐出来たんか!?」 0:ペティは胸を張り、誇らしげに笑う ペティ:「その通り!ウチ等三人で、見事討伐したよ!」 ノラ:「おお!スゴいやないか!…ん?三人?」 カルシゥム:「(…このバカ)」 ピリア:「あ、ああ、あの!な、なにか…い、急いでいるみたいでしたけど…」 0:ピリアはオドオドしながらも、話を反らしてごまかす ノラ:「ああ!そうやった!こないなことしとる場合やない!」 ノラ:「ペティが戻ってきたんやったら、捜索の中止せな!」 ノラ:「オレはセルシオん所、行ってくるから」 ノラ:「ペティ!…っと後ろの嬢ちゃんも!ギルドの宿舎に行って」 ノラ:「風呂とか飯を済ませとき!」 ペティ:「うん!分かったー!」 ノラ:「ほな後でな!」 0:ノラは慌ただしくどこかへと走っていった ピリア:「な、なんと言うか…物凄くお喋りな人ですね…」 カルシゥム:「…あいつ、何者だ?」 ピリア:「カルさん?」 カルシゥム:「気配がえらく薄いんだよ。」 カルシゥム:「目の前にいても認識しにくいというか」 ペティ:「ああ。ノラは…っとと!いけないいけない!」 ピリア:「?」 ペティ:「ゴメンね!カル君!」 ペティ:「ギルドの決まりで、勝手に職員の情報を外部の人間に」 ペティ:「漏らしちゃいけないことになってるんだ!」 カルシゥム:「ああ、それもそうか。」 カルシゥム:「…済まん。気が回らなかった」 0:カルシゥムは気まずさからペティに謝る ピリア:「(この街に着いてから、カルさんの様子が少し変です…) ペティ:「あっはっは!いいよ別に!」 ペティ:「でも、ノラは胡散臭いけど、悪い奴じゃないから!」 ペティ:「ウチが保証するよ!」 ピリア:「(昔、この街で何かあったのかな?)」 カルシゥム:「…そうか」 ピリア:「(よ、よし!)」 ピリア:「あ、あのぉ…カルさん?」 カルシゥム:「ん?どうしたお嬢」 ピリア:「あ、いえ!そのぉ…」 ピリア:「だ、だいじょう…」 ペティ:「よーし!お風呂とご飯だ!」 ペティ:「ピリア!全力で飛ばすからしっかり掴まってて!」 ピリア:「ぶ…って!ま、待って下さいぃぃ!ま、まだ話がぁ!?」 ペティ:「行っくぞぉぉー!」 ピリア:「ホゲェェェー!?」 0:ペティはピリアをおぶったまま全力でギルドの宿舎まで走り出した 0: ピリアに握られた杖に収まりながら、カルシゥムは思考の海に沈む カルシゥム:「(自由都市カナード…)」 カルシゥム:「(あれから、もう50年か…)」 カルシゥム:「(生きているなら70近い歳になってる、か…)」 0:カルシゥムは寂しげにカタカタと顎を揺らす カルシゥム:「(まさか、死んだ後にこの街に来ることになるなんてな)」 カルシゥム:「(今頃、お前はどうしているんだ)」 カルシゥム:「(…フォスター)」 0:ギルドの裏手に向かって走っていく二人を 0:建物の陰から見ている人影が5つ ノエル:「…あれが報告にあった少女、か」 ノエル:「まさかあんなに小さな子とはね」 0:そのうち一つ影は、やれやれと首を振る ノエル:「しかし、これも街の治安を守る為」 ノエル:「早々に対処させて貰うとしようかな」 0:その影は振り返り、他の影へと向き直る ノエル:「これより任務を開始する」 ノエル:「対象はサースディ近辺の辻馬車に乗車中」 ノエル:「車中にて、スケルトンを召喚したことから」 ノエル:「死霊術士の嫌疑がかけられている」 ノエル:「現段階では事実確認がとれていない為」 ノエル:「今回は任意での同行を求める」 ノエル:「対象の同行者はあの【冒険狂い】。」 ノエル:「対応を間違えれば確実にトラブルになる。」 ノエル:「冒険者ギルドと衝突するのは、極力避けたい」 ノエル:「威圧的な態度をとらず、相手を刺激しないように努めろ。以上だ」 ノエル:「トリス、エルドは冒険者ギルド宿舎近辺に潜め」 ノエル:「もしもの可能性だが、対象が逃亡する恐れもある」 ノエル:「監視の目を絶やすな」 ノエル:「リタとセスはボクとともに来い。」 ノエル:「対象に接触する。行くぞ」 0:5つの影はその場から消えた 0: 0: 冒険者ギルド 宿舎前 ペティ:「さぁ!着いた!ここが宿舎だよ!」 ピリア:「こ、ここが…」 0: ピリアはペティの背中の上から建物を見上げる 0:その建物はギルドの裏手にあり、表側の建物とは違い 0:大きな宿屋に見える。酒場を併設しているのか 0:中から大勢の楽しげな声と活気の良さが伝わってくる ピリア:「あ、あばば!ひ、人の楽しそうな声がぁ…!」 ピリア:「うぐぅ…!と、溶けるぅ…!光のオーラがぁぁ…!」 ピリア:「よ、陽キャは来ないでぇ…!き、消えてしまいますぅぅ…!」 ピリア:「ひぃぎぃぃぃ…!!」 ペティ:「えぇ!?ど、どうしたのさ?ピリア!」 カルシゥム:「久々に見るな、お嬢の陰(いん)の者ムーブ」 カルシゥム:「そっとしといてやってくれ。」 カルシゥム:「久しぶりに大勢の人間の明るい声や雰囲気に触れたから」 カルシゥム:「発作が出ちまっているだけだ」 ペティ:「発作?」 カルシゥム:「コミュ障特有のアレだ」 ペティ:「よく分からないけど…なんかすごいね!」 ペティ:「でも、どうすれば治るの?」 カルシゥム:「暗くてジメジメした部屋に入れば落ち着きを取り戻すさ」 ペティ:「あっはっは!まるでキノコだ!」 カルシゥム:「まぁ似たような生活送っているからな」 カルシゥム:「あながち間違っちゃいない」 カルシゥム:「とはいえ、このままだと通報一歩手前だからな…仕方ない。」 カルシゥム:「ほら、お嬢…」 ノエル:「やぁ!賑やかで楽しそうだね!」 カルシゥム:「っ!!」 ペティ:「え?」 0: 突然現れた気配に、カルシゥムは驚き警戒する 0:緋色の髪をホーステールに纏めた女顔の男が 0:いつの間にかペティの背後に現れていた カルシゥム:「(こいつ、いつの間に…!?)」 カルシゥム:「(いや、こいつだけじゃない!)」 0:カルシゥムは改めて周囲を確認すると 0:他にも潜んでいる何者かの気配を看破する カルシゥム:「(…目の前の奴を入れて3人…)」 カルシゥム:「(いや、少し離れたところに2人!)」 カルシゥム:「(別動隊の可能性も考えると更にいるか?)」 カルシゥム:「(ちっ!こんなに接近されるとか、俺はバカか!)」 0:カルシゥムが一瞬の間に敵の数を把握し、悔やんでいる時 0:ペティは男の服装を見て顔をしかめ、向き直る ペティ:「気配を殺して近づくのが、君たち流の歓迎の仕方なのかな?」 ノエル:「いやいや。仕事柄、気配を殺すのが癖になっているだけさ」 ノエル:「警戒させるつもりはなかったんだ、ゴメンよ」 ペティ:「ふーん…その割には周りに人、伏せすぎじゃない?」 0:ペティは先ほどカルシゥムが看破した方へ目を向ける ノエル:「あ、あはは…流石は、B級冒険者」 ノエル:「君たちを威圧しないように最初はボクが接触を試みたんだけど…」 ノエル:「このままだとあらぬ疑いを生みそうだね」 ノエル:「リタ、セス。こちらへ」 ノエル:「トリス、エルド。その場で姿を見せるんだ」 0: 男の背後に二人の女性、宿舎の陰から二人の男性が 0:それぞれ姿を現した。男女の意匠の違いはあるが 0:全員青色で統一された軍服らしき 0:装束に身身に付け、各々武器を携帯している ペティ:「それで?ピリア達に何の用かな?」 ペティ:「この子達はウチの命の恩人。」 ペティ:「もし、妙なちょっかい掛けようって言うなら…」 0:ペティは強く拳を握る 0:ペティの剣呑な様子に焦り出す男 ノエル:「わー!待った待った!悪かったって!」 ノエル:「確かにその子達に用がある!」 ノエル:「でも、悪いようにはしないってば!」 ペティ:「どうだか。君たちの所の人、評判悪いよ」 ノエル:「うっ…アレンのことかぁ…」 ノエル:「そ、それは事実だけど…うぅ…み、耳が痛いなぁ」 ペティ:「だいたい、ピリア達に何の容疑がかかっているって言うのさ!」 ピリア:「…よ、容疑!?」 ピリア:「ぺ、ペティさん?こ、この人達って…」 ノエル:「おっと!そう言えば名乗ってなかったね」 0:男は左胸に右手を当て、綺麗なお辞儀をピリアへと披露する ノエル:「ボクはノエル。ここ、自由都市カナードを守る自警団」 ノエル:「【フォスター自警団】の副団長さ!」 カルシゥム:「…フォスター、だと!?」 0:フォスターの名を聞いたカルシゥムは感情を爆発させる ピリア:「か、カルさん…?」 ノエル:「おっと!ようやく喋ってくれたね。ガイコツ君?」 カルシゥム:「おい!教えてくれ!そのフォスターって名前の由来を!」 ノエル:「え?」 カルシゥム:「頼む!」 0:カルシゥムのただならぬ様子に、何かしらの事情をノエルは察した ノエル:「…このフォスターって言うのは」 ノエル:「40年前に、この自警団を立ち上げた初代自警団長」 ノエル:「グランツ=フォスター氏の名前からつけられたんだよ」 カルシゥム:「40年前…そうか」 0:カルシゥムは少しの間、口を閉ざす カルシゥム:「アイツは…グランツは今どこに?」 0:ノエルは少し寂しげな顔をする。 ノエル:「グランツ元団長は10年前に亡くなったよ。」 カルシゥム:「っ!」 カルシゥム:「…そう、か」 ノエル:「どうやら君はグランツ元団長の知り合いみたいだね」 カルシゥム:「…親友だ」 ノエル:「…そう」 0:ノエルは少し空を見上げ、次にピリアに目を向ける 0:その後、真剣な表情を浮かべる ノエル:「ペティ君。ボクはフォスター自警団副団長として誓う。」 ノエル:「ピリア君とガイコツ殿には…」 カルシゥム:「…カルシゥムだ」 ノエル:「失礼。カルシゥム殿には手荒な真似はしないし、させない。」 ノエル:「だから、今は自警団の詰め所への同行を許してほしい」 0:ノエルはカルシゥムに目を向ける ノエル:「きっと積もる話もあるだろうから」 0:ペティはピリアとカルシゥムを見る。 ペティ:「だってさ。どうする二人とも?」 ペティ:「二人が嫌なら、ウチが絶対に二人を守るよ!」 ピリア:「カルさん…」 0:ピリアは杖を抱きしめ、カルシゥムを見つめる ピリア:「…聞きたいんですよね?お友達のこと」 カルシゥム:「…ああ。聞きたい」 カルシゥム:「俺が死んでからあいつがどう生きてきたのか」 カルシゥム:「俺は…知りたい。」 ピリア:「分かりました。」 0:ピリアは落ち着いた様子でノエルへと目を向ける ピリア:「同行します。その代わり…」 ノエル:「うん。グランツ元団長について知っている限りの事をお教えするよ。」 カルシゥム:「…すまねぇ、お嬢」 カルシゥム:「俺のワガママに付き合わせちまって」 ピリア:「…カルさんはもっとワガママ言ってくれて良いですよ」 ピリア:「アタシ、なんていっつもカルさんに助けられてばかりなんですから」 ピリア:「頼られているみたいで…その、嬉しいです」 カルシゥム:「お嬢…」 ピリア:「えへへ…」 ノエル:「あー、オッホン!失礼、仲が良いのは大変素晴らしいんだけど…」 ノエル:「少々、周りが騒がしくなってきててね」 0:ピリアは周りを見回すといつの間にか街の住人や冒険者らしき姿が 0:ピリア達に好奇の視線を向けている ピリア:「あ、あぁ!しゅ、しゅみませぇん…!」 ペティ:「あっはっは!ホントに二人は仲良しだね!」 ノエル:「ふふ、微笑ましいね」 ペティ:「これなら大丈夫かな?」 ノエル:「ああ。誓いは違(たが)えないよ」 ノエル:「二人の身柄は責任をもってお預かりする。」 ペティ:「…うん。今の君なら信じても良いかな!」 0:ペティはピリアを背中から下ろし、目線を合わせる。 ペティ:「二人とも、ウチは一度ギルドに戻るよ」 ペティ:「何だか二人に変な容疑がかかっているってみたいだからね!」 ペティ:「ノラに確認してくる」 ピリア:「ぺ、ペティさん、ありがとうございます」 カルシゥム:「悪い。面倒をかけちまった」 ペティ:「あっはっは!面倒をかけたのはお互い様さ!」 0:ペティは満面の笑みで立ち上がる ペティ:「次に会うときは、冒険者ギルドかな?ギルドには登録するんでしょ?」 ピリア:「は、はい。その予定です」 ペティ:「良いね!じゃ、次は一緒にたっくさん冒険しようね!」 ピリア:「あ、えと…ほ、ほどほどで…」 ペティ:「メチャクチャ難易度が高いダンジョンの情報、仕入れてくるから!」 ペティ:「ピリアにも冒険のスリルを教えてあげるから楽しみにしててね!」 ピリア:「あ、あの!ほ、本当にお手柔らか…」 ペティ:「よーし!燃えてきたぁぁ!」 ペティ:「それじゃ!ウチは全力でお風呂とご飯済ませてくる!」 ペティ:「待ったねぇぇー!」 ピリア:「に…あ、あばば…!ど、どどど、どうしよう…!?」 ノエル:「これが【冒険狂い】か。怖ぁ…」 カルシゥム:「お嬢…」 ピリア:「か、カルさぁん…!」 カルシゥム:「強く、生きような」 ピリア:「しょんなぁ…!?」 0: 0:自由都市カナード 東街 0:フォスター自警団 第1詰め所 0: ノエル:「グランツ元団長…グラン爺ちゃんは20年前に」 ノエル:「自警団を脱退して、ボクの親父に後任を託した後 ノエル:「冒険者ギルドのギルドマスターに就任したんだ」 カルシゥム:「あいつが…ギルドマスター」 ノエル:「本来であればギルドに所属していない者は」 ノエル:「ギルドマスターにはなれないのだけれど」 ノエル:「南北継承戦争時の功績と、自警団長としての実績から」 ノエル:「都市長のリスティ様が推薦し、ギルド連盟からの承認を得て」 ノエル:「特例として爺ちゃんはギルドマスターになれたのさ」 カルシゥム:「そう言えば、あんたはあいつの…」 ノエル:「孫だよ。あれ?似てないかな?」 カルシゥム:「どちらかといえば、あいつの嫁さんに似てるな」 0:カルシゥムの返しにノエルは拗ねた顔をする ノエル:「へん!どうせ女顔だよ、ボクは!」 カルシゥム:「コンプレックスなのかよ、その顔」 ノエル:「ああ!大いにコンプレックスだね!」 ノエル:「何故ならこの顔のせいで、変な奴しか寄り付かないんだよ!」 ノエル:「何が女装をさせたいだよ!何が男の娘ハスハスだよ!」 カルシゥム:「マジかよ…」 ノエル:「だからボクは自警団の副団長まで登り詰めたのさ!」 ノエル:「あの手の変態を片っ端から捕まえる為にね!」 カルシゥム:「動機が物騒すぎる。」 カルシゥム:「流石は変人の巣窟、カナード…」 ノエル:「ところで…」 0:ノエルはここまで一言も喋っていないピリアへと目を向ける 0:ピリアはうつ向いたまま、時折プルプルと震え 0:小声でぶつぶつと何かを喋っている ノエル:「彼女、大丈夫?」 カルシゥム:「大丈夫だ。問題ない」 カルシゥム:「これで平常運転だ」 ピリア:「どうしようどうしようどうしようどうしよう…」 ピリア:「お師匠にこの事がバレたら…ひぃぃ!!」 ピリア:「り、リア充の刑はぁ…!リア充の刑だけはぁぁ…!」 ピリア:「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」 ノエル:「…これで?」 カルシゥム:「これで」 ノエル:「怖ぁ…」 0: 0:閑話休題… 0: ノエル:「グラン爺ちゃんがギルドマスターに就任してから」 ノエル:「ギルドは大改革が行われた」 ノエル:「クエスト受注規定の改定や昇級審査制度の見直し」 ノエル:「新人冒険者への研修制度や訓練所の設立とか」 ノエル:「今までは色々な要素があって、手出しできなかった」 ノエル:「部分に大々的に手を入れていったのさ」 カルシゥム:「あの脳筋真面目野郎がなぁ…」 ノエル:「あはは、ボクにしてみれば何でも出来るスゴい爺ちゃんなんだけど」 カルシゥム:「あいつもそれだけ変わっていったわけか」 ノエル:「そうかもね。ところで」 ノエル:「冒険者って言うと、何を思い浮かべる?」 カルシゥム:「荒くれ者、守銭奴、倫理観が薄い」 ノエル:「な、中々すごいイメージを持っているね」 カルシゥム:「俺が生きていた頃はこんなもんだよ」 ノエル:「当時の事はボクもあまり知らないけど」 ノエル:「今の冒険者ギルドの在り方を見ると」 ノエル:「本当に爺ちゃんは頑張ったんだなぁって思うよ」 カルシゥム:「…お嬢のお師匠が言ってた話は」 カルシゥム:「グランツの奴が尽力した成果だった訳か」 ノエル:「ピリア君のお師匠様が?」 カルシゥム:「この街はかなり治安が良いって話」 ノエル:「あはは、そうだね。冒険者ギルドと自警団」 ノエル:「二つの組織がこの街を守っているからね」 ノエル:「今のギルドマスターは冒険者のモラル向上の為に」 ノエル:「新人冒険者に対しての新たな制度を導入しているし」 ノエル:「うちの団長は…なんと言うか、治安維持の鬼だからね」 ノエル:「少しでも街に害を及ぼそうとする存在には容赦がない人だから」 カルシゥム:「お前の親父さんはそんなに厳しい人なのか?」 0:カルシゥムの言葉にノエルはキョトンとする ノエル:「ああ、そっか。話してなかったね。」 ノエル:「今の団長は3代目で、ボクの親父は2代目なんだ」 カルシゥム:「あいつの息子…リギルは引退したのか?」 ノエル:「あはは、9年前に腰をやっちゃってね。」 ノエル:「その時にちょうど、あの人が入隊してきてさ」 カルシゥム:「入隊直後に団長に就任したってのか?」 ノエル:「こっちも特例らしいよ。詳しくは知らないけど」 カルシゥム:「おいおい、大丈夫かよそれで」 ノエル:「身元はしっかりしているからね」 カルシゥム:「知り合いだったのか?」 ノエル:「ううん。こっちが一方的に知っていただけさ」 ノエル:「あの人は元は冒険者ギルドのS級冒険者で」 ノエル:「【青雷】(せいらい)の二つ名を持った凄腕の剣士だったんだ」 ノエル:「当時のボク等世代は皆、彼に憧れたもんさ」 カルシゥム:「マジか。まるで小説の主人公みたいな奴だな」 ノエル:「実際、あの人の武勇伝はスゴいよ?ちょっと信じられないくらい」 ノエル:「これは知り合いの冒険者に聞いた話なんだけど…」 0:ノックの音が部屋に響く ノエル:「あ、そろそろ来たかな?」 カルシゥム:「誰だ?」 ノエル:「ギルドの人」 0:扉を開け、入ってきたのは眼鏡をかけた細身の美丈夫と 0:黒革装備に身を包んだ男、ノラだった セルシオ:「お話し中、失礼します。フォスター副団長」 ノエル:「ああいえ。殆ど談笑していただけですので」 ノラ:「おーい!ピリアちゃんにガイコツ君!」 ノラ:「ノラ兄ちゃんが迎えに来たでー!」 カルシゥム:「…当たり前のように俺の事は看破してんのな」 セルシオ:「ノラ、ここは自警団の詰め所です。」 セルシオ:「大きな声出さないで下さい」 ノラ:「うへー…流石はクソ真面目やなぁ」 セルシオ:「我々は冒険者ギルドを代表してここに来ているのですよ?」 セルシオ:「粗相(そそう)をすれば冒険者ギルドの看板に傷がつきます」 ノラ:「あー、はいはい!わっかりました!」 ノラ:「ホレホレ、ピリアちゃん。あっち行こ」 ピリア:「…はっ!あ、アタシは何でここに?」 ピリア:「って!だ、だだ、誰ですかぁ!?」 ノラ:「おお、元気がいいなぁ!」 ノラ:「さっき会った、ノラ兄ちゃんがお迎え来たでー♪」 ピリア:「…あ、よく喋る人」 ノラ:「お、オレのイメージ、そんな感じなん?」 カルシゥム:「実際、よく喋るからなぁ」 ノラ:「マジか!へこむわ…トホホ…」 カルシゥム:「って!そうじゃなくて」 カルシゥム:「さっきから思っていたけど、俺たちの取り調べは?」 カルシゥム:「死霊術士の容疑がかかってたんじゃないのか?」 0:その言葉にノエルは思い出したかのように手を打つ ノエル:「そう言えば言ってなかったね、ごめんごめん!」 ノエル:「ここに来た時点で、君達への容疑は晴れていたんだよ」 カルシゥム:「どういう事だ?」 セルシオ:「そこから先は私が」 カルシゥム:「あんたは?」 セルシオ:「申し遅れました。私はセルシオ=アルディージャ」 セルシオ:「冒険者ギルド、カナード支部のサブギルドマスターです」 セルシオ:「お二人の嫌疑については、あるお方の証言により晴れました。」 セルシオ:「この件は自警団本部にギルドから魔導通信にて通達済みです」 ピリア:「あるお方…?」 カルシゥム:「…ああ、なるほどね。そう言うことか」 ピリア:「カルさん?」 カルシゥム:「お嬢」 ピリア:「は、はい」 0:カルシゥムは呆れたようにカタカタと顎を鳴らす カルシゥム:「これ、お師匠案件だ」 ピリア:「え…えぇぇぇー!?」 カルシゥム:「ああ、そうなると…そろそろ」 0:突然、ドアが激しく開かれる マギサ:「ヤッホー!ピーちゃん!元気に臭い飯食べてるー?」 ピリア:「ぴっ…!ぴぎゃぁぁぁー!?」 ピリア:「し、ししし、師匠ぉー!?」 マギサ:「ああん…♡生で見るピーちゃんの絶望顔ぉ♡」 マギサ:「そそるわぁ…♡ウフフ…♪」 セルシオ:「マギサ様、ご自重下さい。ここは自警団の敷地内です」 マギサ:「あら?そう言えばそうね。私ってばうっかり♪」 ノラ:「あの状態の姐さんにツッコミ入れるとはなぁ…」 ノラ:「流石はセルシオやな!」 ノエル:「あ、あはは…何だか情報量が多いね、キミ達…」 セルシオ:「失礼。それではお二人の身柄はこちらでお預かりします。」 セルシオ:「この度はお騒がせして申し訳ありませんでした。」 ノエル:「いえいえ。こちらも仕事ですので、お気になさらず」 ノエル:「カルシゥム殿、グランツ元団長の話はまた今度にしましょう」 ノエル:「次は非番の日にでもお誘いしますので」 カルシゥム:「悪いなノエル。ありがとう」 ノエル:「いえいえ。それより…彼女、大丈夫?」 0:ノエルの言葉にカルシゥムはピリアへと目を向ける ピリア:「こ、ここまでの苦労は…全部、師匠の仕業…?」 ピリア:「て言うことは…ここから更にひどいことがががが…!」 0:ピリアは床にうずくまり小声でぶつぶつと何かを喋っている ピリア:「これよりもひどい目って…まさか!服屋の刑!?」 ピリア:「り、リア充の巣窟に…あ、アタシが…?」 マギサ:「ああ!あの時の事ね♪」 マギサ:「お洋服選んであげるって、連れていって」 マギサ:「一人だけ残して、1時間位放置して」 マギサ:「人混みに対する緊張感と、人に対する恐怖心で」 マギサ:「泣き出したピーちゃんの泣き顔を」 マギサ:「肴にお茶してたのよね♪」 マギサ:「はぁ…♡イイ思い出だわぁ…♡」 カルシゥム:「いや、歪(ゆが)みすぎだろ!性癖!」 ノラ:「あないセクシーなのに、歪んだ性癖持ちとか…ええな!」 ノエル:「…本当にこの街は変人の巣窟だなぁ」 ピリア:「ひ、ひぃぃ!ムリムリムリぃぃぃ!! 」 ピリア:「い、いや!は、話しかけないでぇぇ…!」 ピリア:「ふ、服ぐらい、自分で選べるからぁぁ…!」 ピリア:「そ、そんな明るい色も服持ってこないでぇぇ…!」 0: ピリアの妄想は続いている。その様子を見たセルシオは セルシオ:「それでは冒険者ギルドに移動しましょう。」 0:スルーした カルシゥム:「あのお嬢をスルーした!?」 セルシオ:「ギルドにはタイプは異なりますが」 セルシオ:「似たような輩が数えきれないほどいますので」 セルシオ:「いちいち構う気はありません。」 ノラ:「いちいちクールなやっちゃな」 セルシオ:「私まであなた方みたいになったら」 セルシオ:「ギルドマスターが血反吐はいて死にますよ?」 セルシオ:「ストレスで」 ノラ:「あーそらあかん。幼い子供とべっぴんの嫁さんを」 ノラ:「路頭に迷わす訳には…オレにもワンチャン?」 セルシオ:「ゲス極まりない発言ですね。正直ドン引きです」 セルシオ:「減給されたくなければ、それ以上はやめておきなさいノラ」 ノラ:「うっす!」 セルシオ:「いい加減、移動しましょう」 セルシオ:「カルシゥムさん、あなたのご主人様を起こして下さい」 セルシオ:「これ以上、ギルドの恥部をさらすわけにはいきませんので」 カルシゥム:「な、ナチュラルに毒吐くなこいつ…」 0:カルシゥムがピリアをなんとか正気に戻すと 0:一行は冒険者ギルドへと移動した 0: 0: 0: 0:冒険者ギルド 応接室 セルシオ:「…はい。結構です」 セルシオ:「これで審査は完了しました」 ピリア:「あ、ありがとうございます」 ピリア:「き、緊張しましたぁ…」 カルシゥム:「お疲れ、お嬢。」 カルシゥム:「しかし、意外とやることが少ないんだな?」 カルシゥム:「もっと複雑な試験とか面接とかあるかと思ったんだが」 セルシオ:「元々、マギサ様の推薦なので身元はしっかりとしています」 セルシオ:「ピリアさんの様子を見ていましたが」 セルシオ:「悪さを考える余裕はないと判断しました。」 カルシゥム:「なるほど」 セルシオ:「これがギルドカードです。どうぞ」 0:セルシオはピリアにギルドカードを渡す。 ピリア:「これが…アタシのギルドカード」 セルシオ:「カード中央の魔石に触れれば登録完了です。」 0:ピリアは言われた通り、魔石に触れる。 0:魔石は淡く光り、カード全体が光を帯びる。 0:数秒間、光続けた後に元の状態に戻った セルシオ:「問題なく成功ですね。そのカードはそのままお持ちください」 セルシオ:「明日から新人冒険者の研修が始まりますので」 セルシオ:「今日はこのまま宿舎で休んでください」 ピリア:「あ、はい。分かりました」 セルシオ:「1階の酒場でギルドカードを見せれば食事がとれます」 セルシオ:「お風呂は宿舎を出て右側にギルド専用の入浴施設があるので」 セルシオ:「必要に応じて使用してください。」 カルシゥム:「いくらかかるんだ?」 セルシオ:「新人冒険者は研修終了まで、費用はギルド持ちとなります」 セルシオ:「明日は8時から研修のブリーフィングが始まりますので」 セルシオ:「食事と入浴を終えたら早めに休んでください」 ピリア:「あ、ありがとうございました!」 セルシオ:「では、私はこれで」 0:セルシオは応接室を出ていった ピリア:「はぁぁぁ~…」 カルシゥム:「お嬢、大丈夫か?」 ピリア:「な、なんとかぁ…」 カルシゥム:「そうか。それじゃ飯でも食いに…」 0:応接室のドアが勢いよく開かれる マギサ:「ハァイ♪登録は完了したかしら?」 ピリア:「ひぇ…!?し、師匠ぉ…!?」 カルシゥム:「またこのパターンか…」 マギサ:「あら?すれた反応ね?残念♪」 0:マギサは部屋に入り、ピリアの向かいの椅子へと腰掛ける マギサ:「さて」 マギサ:「ピリア=オストー」 ピリア:「っ!」 カルシゥム:「(真面目モードのお師匠さんか)」 ピリア:「は、はい!」 マギサ:「アクシデントは多々あれど、無事に冒険者になれましたね。」 マギサ:「初めての旅で色々な事を経験した様子」 マギサ:「よく頑張りましたね」 ピリア:「あ…はい!ありがとうございます!」 マギサ:「…ですが」 ピリア:「っ!?」 マギサ:「【ウィッチクラフト】を使いましたね?」 マギサ:「それも魔女以外の者にその存在を知られてしまった」 マギサ:「そうですね?」 ピリア:「も、申し訳ありません!」 ピリア:「非常時だったので必要と判断し、使用しました!」 マギサ:「良いですかピリア。私達が使用するウィッチクラフトは」 マギサ:「魔女の神秘と知恵を詰め込んだ秘宝です」 マギサ:「今回は人命に関わる事柄故(ゆえ)、許しますが」 マギサ:「本来は軽易(けいけい)に使用出来ない物と知りなさい」 ピリア:「は、はい!分かりました!」 マギサ:「以降は使用は控えること。良いですね?」 ピリア:「以後、気を付けます!」 マギサ:「よろしい。」 カルシゥム:「(ここだけ見ればめちゃくちゃすごい魔女なんだがなぁ…)」 マギサ:「…それはそれとして」 0:真面目な雰囲気はいつの間にか消え 0:獲物を狙う豹のような雰囲気を、マギサは纏う ピリア:「ぴっ…!?し、師匠…?」 カルシゥム:「ああ、これが本題な訳か」 マギサ:「信賞必罰(しんしょうひつばつ)は大事よね?」 ピリア:「あ、あぁぁ、あのあのあの…!!」 マギサ:「ピリア=オストー!」 ピリア:「ひゃ、ひゃい!!」 0:マギサはピリアに向け指を指す マギサ:「次の課題です!」 ピリア:「ひ、ひぃぃぃ!?」 カルシゥム:「(今度はどんな無茶ぶりだ?)」 0:マギサはニヤリと嗤い マギサ:「1ヶ月以内に、友達を10人作ること!」 ピリア:「と、友達ぃぃぃ!?じゅ、10人!?」 カルシゥム:「(おいおい!死んだわお嬢!)」 マギサ:「無機物・空想上のお友達は」 マギサ:「カウントしないので、そのつもりで!」 ピリア:「しょ、しょんなぁぁぁー!?」 カルシゥム:「…逃げ道、潰されたな」 マギサ:「もしも達成できなかった時は…」 ピリア:「と、時は…?ゴクリ」 0:マギサは輝く笑顔を浮かべる マギサ:「お・た・の・し・み…♡」 ピリア:「ぴぃぎぃぃぃ!?」 0:無事に自由都市カナードへと到着したピリア達一行 0:多くの出会いと多大なる不安を得て 0:ピリアの新生活が始まろうとしていた ピリア:「か、かかか、カルざぁん!」 カルシゥム:「落ち着けお嬢!こればっかりは慎重にだな」 マギサ:「何の刑にしよっかなー?」 マギサ:「女性冒険者のマウンティングマウンテンに強制参加?」 マギサ:「リア充カップル100人に突撃取材?」 マギサ:「それとも…」 ピリア:「い、いやぁぁぁー!?どれもいやぁぁぁー!!」 カルシゥム:「あんたも、ちょっとは自重してくれ!」 0:彼女の明日はどうなる!? ピリア:「誰かぁ!誰かだずげでぇぇぇぇぇー!!」 0: 次回に…続いても良いのかなぁ?