台本概要

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タイトル 【学園純愛】君と二人でクリスマスフィルムに
作者名 ゆる男  (@yuruyurumanno11)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 4人用台本(男2、女2)
時間 60 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 どんな景色ではなくて、誰と景色を見るか
それが1番大事だと気付く4人の男女。
小雪は5年前に見たあの景色を今でも見れずに居た。
そんな中、珀斗は小雪が見れない景色を共に手を繋いで見に行くことを心に決めた。
そして二人の形はフィルムの中に…


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

クリスマス台本を書きました!
甘々キュンキュン要素もありつつ、シリアスな感じも楽しんで貰えたらと思います!
設定としては全員17歳です。

キャラの性別を変えなければ異性のキャラを演じても大丈夫です!
過度なアドリブなどは控えてくださいませ!

野良劇や約束劇で使用する時に
X(ツイッター)で呟いて頂けると今後のモチベーションに繋がります!!

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
小雪 239 (こゆき) とあることがきっかけでなかなか笑えず、1人きりで学校生活を送っている根暗な女の子。 そんな中、珀斗と出会い、過去のトラウマを乗り越えていく
珀斗 239 (はくと) 小雪と出会ったのは昔の事だったが、変わり果てた彼女の姿をずっと見てきた真面目な男の子。 その思いはいずれ届くはず
ひらり 192 気持ちをストレートに伝えるキュートな女の子 でも、責められると途端にキョドりだす
163 なかなか素直になれない、ちょっと口の悪い男の子。 たまに見せるデレが特徴的
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
小雪:気になる人がいる 珀斗:レンズ越しに映る君は本当に美しい ひらり:気になるやつがいる 透:あいつは目立ちすぎだ 小雪:見えないものもある 珀斗:それでも、この景色を君に見せたい ひらり:視界は黒ではなく、真っ白である 透:キラキラした、純白の白さなら 小雪:真冬の景色に収めたい 珀斗:君と二人でクリスマスフィルムに 0:【間】 小雪:(M)気になる人がいる 珀斗:んーー。ふふっ。あはは 小雪:(M)学校の屋上で笑いながら空に向かってカメラを構えてる人がいる 珀斗:ほーーっと!……あっ… 小雪:……な、なに? 珀斗:……ごめん。いつから居た? 小雪:5分くらい前から 珀斗:い、いや!居すぎじゃない?声掛けてよ 小雪:何か楽しそうに笑ってたから。いいかなーって 珀斗:じゃあ忘れて。……てか、ホームルームあったんじゃないの?どうして白川さんがここに? 小雪:………私の名前、知ってるの? 珀斗:えぇ?当たり前でしょ、同じクラスなんだから 小雪:……そっか。……えっと 珀斗:……冬野珀斗だよ。 小雪:ああ。ごめん。私、人の名前覚えるの苦手で。……あなたこそなんで屋上に? 珀斗:僕から聞いてるんだから答えてよ 小雪:………文化祭の準備のあの雰囲気がちょっと苦手で 珀斗:あー。僕もそれはわかるよ。みんな楽しそうなのもわかるんだけどね 小雪:だから一人で屋上に居たの? 珀斗:まあね。屋上から見る景色はなんか絵になるなーと思って。なんか落ち着くんだよね 小雪:ふーん 珀斗:ほら、カメラのレンズ、覗いて見て。景色がすごく綺麗だから、思わず笑っちゃうよ 小雪:私はいい 珀斗:……ああ。そう? 小雪:邪魔してごめんね。じゃ 珀斗:うん。じゃあね 0:【間】 小雪:(M)私の存在なんて無意味だと思っていた。クラスでも一人だし、友達なんて居ない。勉強を真面目にする訳でもなく、ただ一人、時間が経つのを待つばかりだった 小雪:(M)だからこそ、名前を覚えられていた事を意外に思う。こんな私でも、気にかけてくれる人がいるんだーって 小雪:(M)それと同時に…なぜか懐かしさも感じる。……それは関係ないと思うけど、どこか馴染みやすさはある気がする 小雪:………ただ、それだけの事 0:【間】 ひらり:(M)気になるやつがいる 透:……お前…今なんて言った? ひらり:ん?透の事が好きって言ったの 透:ば、ばかか!またそんな事言ってんのかよ! ひらり:急とかじゃないでしょ?何回デートしてると思ってるの?告白も今日で3回目だしいい加減折れてよ 透:折れるとかそういう問題じゃないだろ ひらり:で?答えはどうなの? 透:…… ひらり:………まあ、透はバスケ部で忙しいもんねー。なら今すぐにじゃなくてもいいよ。待っててあげる 透:い、いや。俺は……つ、付き合ってもいい…ぞ? ひらり:……ふーん。なんか嫌な感じ 透:……はあ!?なんでだよ!ふざけんな! ひらり:透の本当の気持ちを聞かせて欲しいの。付き合ってもいいじゃなくて、どうしたいの? 透:………あーー!わかったよ!!付き合いたい!俺もひらりが好きだ! ひらり:……ひひっ!よく言えたねー! 透:ああ。もう吹っ切れた ひらり:透がちょっと勇気出すだけでね?私の胸がドキッと膨らんで、その後に、じわーっと幸せな気分になれるんだよ?ありがとー! 透:お、おう 0:【間】 ひらり:(M)透の気持ちには気付いてた。だって、初デートの時に手だって繋いだんだよ?あたしを受け入れてくれてるってことじゃん ひらり:(M)それでも、あたしの告白を2回も断るなんて、ほんとバスケしてる時は男らしくてかっこいいのに、こういう時だけ優柔不断でだらしないんだから。……でも、もういいや。だって、ずっと思い続けてきた念願が叶うんだから ひらり:今年のクリスマス、楽しみだなー 0:【間】 小雪:なんで文化祭の広告係なんて選んだの? 珀斗:僕もそんなつもりじゃなかったんだけどね。画像の編集とか一応出来るしそれで選ばれたのかも 小雪:違うよ。私を候補にあげたのはあなたでしょ? 珀斗:ああ。うん。そうだね。何となく白川さんとなら色々出来そうな気がしたんだ 小雪:でも…文化祭の雰囲気は好きじゃないよ 珀斗:まあでも、せっかくの文化祭なんだし楽しめた方がいいかなって 小雪:あなたの話してるんじゃなくて、私の話してるの 珀斗:あ、ああ。ごめん 小雪:いや、別にいいよ。広告係って何するの? 珀斗:ああ。文化祭のポスターを作って掲示板に貼り付けたり、校門に看板を作ったりするんだよ。当日は宣伝とかもやるかな? 小雪:ふーん。 珀斗:一緒にやってくれる? 小雪:………うん。 珀斗:(M)黙り込んだ彼女の様子を伺いながら、二人で学校の通路を歩く。その短い歩幅でよそよそしく流れる時間が何とももどかしかった 珀斗:(M)長い前髪に隠れた彼女の瞳には…何が映っているんだろう? 珀斗:(M)こうやって彼女を見ているのは、もう何度目だろう? 0:場面転換 ひらり:透ー。今日は文化祭の集まりあるんだってー。 透:ああ。先行っといてくれ ひらり:どこ行くの? 透:トイレ ひらり:あそ。じゃあ先行ってるね 透:おう 0:場面転換 ひらり:ねえねえ、文化祭の広告係の集まりってこの教室であってる? 小雪:………あ、うん ひらり:あれ?学年同じだったっけ? 小雪:………うん ひらり:じゃあ隣すーわろ 小雪:っ! ひらり:もう一人は?どこにいんの? 小雪:前の席にいるよ 珀斗:あ、どうもー。 ひらり:んー?冬野じゃん。珍しいね、どうしたの? 珀斗:どうしたのって何だよ。僕だってこういう集まりに参加するさ ひらり:去年なんかは何もしてなかったじゃん 珀斗:去年の話は別にいいでしょ 小雪:……… 珀斗:あ、ご、ごめん白川さん。橘さんとは去年同じクラスだったんだよ ひらり:よろしくね! 小雪:う、うん。よろしく 小雪:よ、陽キャの匂いがする…… 珀斗:この子は白川さんだよ。白川小雪さん 小雪:あ、し、白川です ひらり:白川小雪ちゃんねー。私の相方ももうちょいで来るんだけどなー 珀斗:相方? ひらり:そう!あ・い・か・た 珀斗:なんか意味深じゃない? ひらり:意味深にしてないよ。もうオープンだからさ 小雪:………? 0:その瞬間に教室のドアが空く 透:うぃーっす ひらり:おー!きたきた! 透:ん?誰だ?お前ら 小雪:ま、また怖そうな人が来た… 珀斗:バスケ部の加地君が相方? ひらり:そうだよ。ほら、挨拶しなさい 透:ん?………ふぁっく!!(中指立てる) 小雪:え、ええー!? ひらり:やめんか!!(グーで頬を殴る) 透:ぶへっ!な、なんでだよ!こいつら知らねーし! ひらり:だからってよく知らない人に中指立てないの!謝りなさい! 透:明日謝ってやる ひらり:今謝るの!(げんこつする) 透:いで! 珀斗:ま、まあ、別にいいよそれくらいは。ほら僕の隣座っていいよ。加地君でしょ? 透:ああ。そうだ 小雪:………… 小雪:(M)どうしよう。高校生になって1回も友達と話したことなかったのに……今、この雰囲気がめちゃくちゃ怖い 珀斗:先生来たよ。静かにしよう 0:しばらく文化祭の広告係の説明を聞く ひらり:はあーー終わったー。んで?どういう意味? 透:話聞いてなかったのかよ! ひらり:よくわかんないからあとは透に任せるわー。透は部活でしょ? 透:ああ。めんどくせーけど行ってくるわ ひらり:いってらっしゃーい 0:透は教室を出る 透:(M)はぁ。すっかりあいつのペースだなー。うるせー割には適当だし、知らねーやつに話しかけて勝手に俺を紹介しようとするし。 透:(M)めんどくせー事ばっかだけど…やるしかねーんだよなー。……好きになっちまったもんはしょうがねーか 0:【場面転換】 0:教室にて 珀斗:じゃあ橘さん、わからない事あったら僕に聞いてよ ひらり:大丈夫!何がわかんないかもわかんないから! 珀斗:大丈夫じゃないねそれ… ひらり:まあどうにかなるよー!じゃあ私バイトあるからじゃあね 小雪:……… ひらり:小雪 小雪:………え? ひらり:ひひっ。じゃあね! 小雪:………うん。じゃあね 0:ひらりはその場を去る 珀斗:白川さんは?何かやることある? 小雪:え、何も無いけど 珀斗:じゃあ帰ろっか 小雪:う、うん 0:小雪と珀斗は同じ道を歩く 小雪:(M)……まだ…息は白くない。……まだ…雪は降らない。……まだ…寒くはない 小雪:(M)繰り返す嫌悪感は、毎年この時期にやってくる。だから文化祭も好きじゃない。……それが終わったら学校のみんなは必ずこう言うから 小雪:(M)今年も…クリスマスがやってくる 珀斗:白川さん? 小雪:……… 珀斗:白川さん。どうしたの? 小雪:………あ、ごめん。 珀斗:何か文化祭で不安なことある? 小雪:いや、特に何もないよ 珀斗:久しぶりに集まりあると色んな人いるから緊張するよね 小雪:そうだね 珀斗:白川さんは人と話すの苦手なの? 小雪:………… 珀斗:……え?どうしたの? 小雪:私、教室ではいつも一人だったから、誰とも話したことないの 珀斗:僕とは話してくれたじゃん 小雪:あなたはたまたま屋上に居たからでしょ。なんか笑ってたし 珀斗:あれはー…あはは。恥ずかしいな。でもこれを機に色んな人と話したらいいよ 小雪:……私は、人と関わるのが苦手だから 珀斗:なら、慣れるしかないじゃん 小雪:慣れないよ。……この感覚は……慣れない 珀斗:……どうして? 小雪:………人の顔を見るのが…怖いから 珀斗:……人の顔? 小雪:どういう表情をしてるんだろう?とか、どんなことを思ってるんだろう?とか、人の顔を見ると自分を見る目がわかるというか…怖いの 珀斗:そうなんだ……じゃあ今の白川さんを撮ってみる? 小雪:え? 0:珀斗はカメラを小雪に構える 小雪:ちょっと、何? 珀斗:今の白川さんの表情を見てもらおうかと思ってさ 小雪:………やめて 珀斗:見てもらいたいんだよ 小雪:嫌だって言ってるでしょ! 珀斗:……ご、ごめん 小雪:……私、写真撮られるの好きじゃないから… 珀斗:……そう、だったんだ 小雪:……… 珀斗:でも、白川さんがこれからどんな表情で写真に写ってくれるのか僕は楽しみにしてるよ 小雪:………どうだろ 珀斗:でもさ、屋上で僕の間抜けな笑った表情も…君は見てくれたじゃん。人の表情を見るのが怖い君が 小雪:………それは…別に……気になったから 珀斗:僕の表情が見れるなら、他の人の顔も見れるようになるよ 小雪:………てか、あなたどうして帰り道付いてくるの? 珀斗:付いてくるって人聞き悪いなー。僕もこの辺に住んでるんだからさ 小雪:………え? 珀斗:僕たち、同じ中学だったでしょ? 小雪:………知らないよ 珀斗:じゃあ君が見てなかっただけだ 小雪:……… 珀斗:じゃあ、僕はこっちだから。またねー! 小雪:………うん 0:場面転換 ひらり:はーい!お疲れ様でーす! 0:ひらりがバイト先の出口を開ける ひらり:………ん? 透:よう ひらり:え?どうしたの? 透:いや、部活も終わったしたまたま通りがかっただけだよ ひらり:ひひっ。待っててくれたの? 透:わ、悪いかよ! ひらり:全然。時間も遅いし帰ろ? 透:お、おう。これ、やるよ ひらり:えー!いいの?ちょうど喉乾いてたんだー!ありがとー。 透:どういたしまして 0:【間】 ひらり:部活はどうなの? 透:ああ。別に大したことねーよ ひらり:大会近いんでしょ?頑張ってんねー次期エースさん! 透:だから、俺は頑張る気もねーよ ひらり:そうなんだ 透:ああ。そうだ ひらり:じゃあなんで私の帰りを待ってたの? 透:…そ、それは!べ、別に…… ひらり:ふーん。今日は手繋いであーげない 透:お、おい。待てって!止まってくれ! ひらり:何か言うことは? 透:……夜は寒いな ひらり:もう一声 透:……… ひらり:なーにー? 透:………っ! ひらり:……ひゃっ! 0:透はひらりを抱きしめる ひらり:ちょ、ちょっと!なな、何してんの?ジュース溢れる! 透:……ごめん。ちょっとこうしてたい ひらり:わ、わかったよ!よしよーし。……ふぅ。どうしたの? 透:いや、別に。なんもねーよ ひらり:えぇー?何も無いのに抱きつきたくなるくらい私の事が好きって? 透:ばっ!んなこと言ってねーだろ! ひらり:じゃあ何ー? 透:いや、バスケのことなんだけどさ……なんか思うようにいかなくて ひらり:あの透が?冗談でしょ? 透:何か……下手くそになったなーって不安に思うんだ ひらり:………そうなんだね 透:……ああ ひらり:それでちょっと辛くなってー!彼女の温もりで癒されようとしたわけね!?可愛いとこあんじゃん透ってばー! 透:悪ぃかよ ひらり:ひひっ。嬉しいよ。でもさ、何やっても上手くいかない時ってあるよね。 透:………ひらりにもあるの? ひらり:あるけど何も考えてないからね 透:お前は気楽でいいな ひらり:気楽でいいでしょ?落ち込んでてもしょうがないし 透:それがお前らしいか ひらり:でも、ちゃんと落ち込める透も偉いよ 透:………え? ひらり:だってさ、このままじゃだめだーとか。もっと上手くなりたい!って、常に自分と向き合ってるってことでしょ? 透:まあ、そうだな ひらり:かっこいいと思うよ。透らしくて 透:………っ! ひらり:うわあ! 0:透はひらりをそのまま持ち上げる ひらり:ちょ、また急に何!?下ろして! 透:いや、このままひらりを持って帰ろうかなって ひらり:ばっかじゃないの!?もう!早く下ろせー! 透:今日くらいいいだろー! ひらり:やーだぁーー!! 0:【間】 0:ある日のこと 珀斗:ほら、見てよ。僕の自慢のチラシが出来たよ! ひらり:ほえーー。やるじゃん 透:やるなー服部。じゃあ俺らのクラスはこれを丸パクリするか 珀斗:僕の名前は冬野だよ!著作権侵害はやめて 透:著作権なんて減るもんじゃねーだろ? 珀斗:それは暴論だよ! ひらり:小雪は?これどう思う? 小雪:……うん 透:うん。ってお前感想それだけか!? ひらり:あんたが作ったわけじゃないんだから威張んな! 珀斗:あはは…。どうかな?白川さん 小雪:………素敵だと…思う 珀斗:……ほ、ほんとに!? 小雪:うん。これはあなたが撮ったの? 珀斗:そうだよ。学校の風景を写真に撮って周りにフレームを付け足してさ。コントラストもやや高めにしてこの学校の明るさを表現してるんだ 小雪:すごいよ。本当にこういうこと出来たんだね 珀斗:……あはは。まあね ひらり:………へぇ?(ニヤつく) 珀斗:な、なに? ひらり:いいやー?なんでもないよー? 小雪:……? 珀斗:てか、本当に真似はしないでね? ひらり:しないよ。てかそんなレベルの高いこと出来ないし 透:めんどくせぇしな 珀斗:ほんと、君たちは似た者同士だね ひらり:そりゃそうだよ。付き合ってるんだもん 小雪:つ、つきあっ…… 透:お、おい。いちいち公言しなくていいだろ ひらり:えぇー?いいじゃん本当のことなんだし 珀斗:そうやって加地君を振り回してるのが目に見えてわかるよ ひらり:いいやー?こう見えて透は二人きりの時に甘えて…んーー!!んーー!(口を抑えられる) 透:それ以上なんも言うなー?わかったか!? ひらり:んー!んんーんーっ!(口を抑えられながら「わかった」) ひらり:ぷはー!……あ!透!あれ思い出したあれ! 透:ん?なんだ? ひらり:あれだよあれ!ほら行こ! 透:どわあ!引っ張るなって! ひらり:じゃあねー!青春しろよー若者たちー! 珀斗:いや、君何歳なの 0:ひらりと透は教室を出る 透:おおい!なんだよ! ひらり:ふぅ。……私さ。透とは付き合ってるけど、恋のキューピット的なのに憧れてるんだよね 透:はあ?どういう事だよ ひらり:透もあの二人を応援してってことだよ 透:ん?…………え?そういうこと!? ひらり:そういうこと 0:【間】 珀斗:文化祭が終わったらクリスマスかぁ。懐かしいなぁ 小雪:懐かしいって毎年あるでしょ? 珀斗:違うよ。懐かしく思える思い出があるの 小雪:そうなんだ 珀斗:東北にある……場所でさ… 小雪:………え? 珀斗:いや、やっぱり何でもない 小雪:……… 珀斗:じゃあ、文化祭楽しもうね! 小雪:う、うん 0:【間】 0:そして文化祭当日 透:よう ひらり:おはよー 透:なんか今日寒くね? ひらり:わかる。透にくっつけば問題ないけど 透:おまっ!またベタベタすんなよ ひらり:いいじゃん。今日は文化祭だし学校中のカップルがウキウキしてるんだからさ 透:……全く ひらり:……ん?あれ?透、走ったの? 透:……え!?なんで!? ひらり:何となく 透:あ、汗臭いか!? ひらり:そういうわけじゃないよ? 透:ああ。ならいいけど 0:【間】 珀斗:やあ。白川さん 小雪:……どうしたの?その格好 珀斗:あはは。広告係は宣伝もするから着ないといけないんだって。それにしても執事の格好は恥ずかしいけどね 小雪:……私も着るの? 珀斗:もちろん ひらり:ねえー!ねえー!見て見てー!透めっちゃイケメンじゃない!? 透:や、やめろ!大声出すな! 珀斗:おー!似合うね。橘さんもメイド服似合ってる ひらり:でしょー?美男美女の執事とメイドで宣伝してくるわ 小雪:ね、ねえ。私もこれ着るの!? ひらり:当たり前でしょ?ほら、早く着て! 小雪:嫌だ〜! 0:しばらくすると ひらり:おーい!小雪も着替えたよー! 珀斗:……… 透:着せられてる感すげーな 珀斗:い、いや!すごく似合うよ!か……かわいい 小雪:か、かわ…!? ひらり:よかったねー小雪。冬野から絶賛されて 小雪:…あ、ありがとう 珀斗:じ、じゃあ、宣伝しに行こっか! 小雪:うん ひらり:じゃあねー! 透:……ふぁっく! 0:場面転換 珀斗:こ、こういう格好するの初めて? 小雪:う、うん。初めてだよ 珀斗:そうなんだ。ちょっと格好が変わるだけで雰囲気が違うよね 小雪:そうだね 珀斗:あー。写真撮りたいなー 小雪:しゃ、写真? 珀斗:うん。記念に1枚だけ 小雪:……… 珀斗:……だめ? 小雪:……ちょっと…嫌かも 珀斗:……そっか、ごめん 小雪:いや、私の方こそごめん。撮りたくないわけじゃないんだけど……ちょっとね 珀斗:……何かあったの? 小雪:………… 珀斗:……まあ、あんまり聞かないでおくよ 小雪:……うん 0:【間】 0:場面転換 透:全く、揃いも揃ってなんで写真なんか撮りたがるんだよ ひらり:まあ今日はお祭りだからねー。こんな格好してたら目立つし写真も撮りたくなるでしょ 透:次写真撮るやつは追い出すか ひらり:いいじゃん、そのまま撮ってあげれば。バスケで鍛えた体を見せつけてもいいんだよ? 透:するか!んなこと! ひらり:てか、どうなの?部活は 透:ああ。まあぼちぼちだなー。大会前だとコーチが厳しくてめんどくせぇけど ひらり:頑張ってんじゃん 透:まあ、大会はめんどくせぇし、早く終わりたい気持ちが勝ってきたしな ひらり:ふーん。 透:あれ?あいつは 珀斗:……… 透:おい、秋山、何してんだ? 珀斗:冬野だよ。ちょっと休憩してるだけ ひらり:小雪は? 珀斗:白川さんは今着替えに行ってる ひらり:えー!?メイド服脱いじゃうの!? 珀斗:彼女には荷が重いみたいだよ 透:どんだけ恥ずかしがり屋なんだよ 珀斗:あ、そうだ。君たちも写真撮らない? 透:たった今写真撮ろうって言うやつは追い出すって話してたんだ。お前も追い出されたいか? 珀斗:何その物騒な話 ひらり:あれー?小雪とは写真撮ってないの? 珀斗:………撮ってないよ ひらり:……あれ?思ってた反応と違う 珀斗:あんまり写真は好きじゃないみたいなんだ。だから断られたよ ひらり:そんな失恋したみたいな顔しちゃって 珀斗:ち、違うよ!そんなんじゃない! 透:お前と、し、しー?白なんとかは昔から絡んでたのか? 珀斗:白川さんね。……うん。同じ中学だったけど…彼女を知ったのは小学生の時なんだ ひらり:へぇー!そうだったの? 珀斗:彼女はどうやら覚えてなさそうなんだけどね。小学生の頃の彼女が印象的だったからてっきり写真は好きだと思ってたんだ 透:明らかに陰キャだろ?あいつ 珀斗:まあ、大人しいタイプだとは思うよ。……けど、やっぱり何かがあったから暗い感じの子になっちゃったんじゃないかなーって僕は思う ひらり:………冬野、小雪が気になるの? 珀斗:え? ひらり:小学生の頃の小雪に一目惚れしたとか? 珀斗:……さあ。どうなんだろうね?今はそんなこと考える余裕ないや ひらり:あらまー。すっかり沈んじゃって 透:まあ何があったか知らねーけど、あの地味女のどこがいいのか俺には…うぐっ!!(脇腹を殴られる) ひらり:ふ、冬野ー!クヨクヨしちゃダメだー!ファイトー! 珀斗:……ん?……ありがとう ひらり:この問題は2人の問題だから私達は口出ししないね。じゃあねー! 珀斗:うん。じゃあね 0:ひらりと透はその場を去る 0:【間】 珀斗:………はあ。 珀斗:(M)彼女は僕とは話してくれる。僕の顔を見てくれる。僕だったら……なんて…そう思っていたからこそ、写真を断られた時、本当に悲しかった。あの屋上での出来事は…偶然だったのかな? 珀斗:……確かにクヨクヨしててもしょうがないか。………白川さんと屋上で出会ったのも…たまたまだな……。はあ。 珀斗:(M)僕は不安と悲しみが入り交じった鉛のようなため息を吐いて、何となく屋上に向かう 珀斗:………あれ? 小雪:……あ 珀斗:着替え終わったんだね。こんな所でどうしたの? 小雪:いや、わからない。あなたこそどうしたの? 珀斗:いや、何となく 小雪:………あの 珀斗:ん? 小雪:さっき……写真断ってごめん 珀斗:ああ、全然いいんだよ 小雪:断った時の…あなたの顔が悲しそうだったから 珀斗:……相変わらず僕の顔は見てくれるんだね 小雪:うん…どうしてだろ? 珀斗:……5年前のクリスマスのこと、覚えてる? 小雪:………5年前 珀斗:東北にあるホワイトガーデンのこと 小雪:………どうして…それをあなたが知ってるの? 珀斗:あの時のことは僕も覚えてるからだよ 小雪:………やめて 珀斗:眩しかった白い景色が辺りいっぱいにあった 小雪:………やめてよ 珀斗:君は…お父さんと_____ 小雪:やめてって言ってるでしょ!! 珀斗:………っ 小雪:……どうして思い出させようとするの!?私にとってあんなに辛い思い出なのに!どうして!? 珀斗:……それは 小雪:あなたは何も知らないのに……私の気持ちなんてわからないくせに…… 珀斗:……そ、そうだけど、またあの頃を思い出して辛いことも乗り越えられたらそれでいいと思って 小雪:みんながみんな辛い思い出を乗り越えられると思わないで!……この辛さは誰にもわからない……わかって欲しくなんかない…! 珀斗:…でも、あの頃の君は… 小雪:いい加減にしてよ!私は!……っ! 珀斗:………(鼻をすする) 小雪:あなた…どうして泣いてるの? 珀斗:……わかんないよ 小雪:……… 珀斗:答えたくなかったらそれでいい。……白川さんはどうしてあの頃のことを思い出したくないの? 小雪:……… 0:(長い沈黙) 小雪:………あなたこそ、どうして5年前のクリスマスの事を知ってるの? 珀斗:僕は…5年前のあの時…君と、君のお父さんの写真を撮ったからだよ 小雪:……え? 珀斗:あの時…僕も家族とホワイトガーデンに居たんだ。本当に偶然だけど、君に写真を撮って欲しいって頼まれたんだ 小雪:……… 0:【間】 珀斗:(M)彼女と初めて出会ったのは5年前のクリスマス。家族と旅行に行った先に彼女は居た。今の彼女と違うところは、写真を沢山撮って欲しいと言っていたこと 珀斗:(M)その頃の彼女はお父さんの手を繋いで頬を赤らめながら、辺りいっぱいに広がる白い景色を見て、全身で喜びを溢れさせていた 珀斗:(M)たまたま通りかかった僕に向かって彼女はまるで小さく踊っているような歓喜な動きを見せつけ、僕に写真を撮って欲しいと言った。 珀斗:(M)僕はたった一言こう思った。可愛いなって。小学生の頃の感想なんてこれくらいしか出てこないけど、素直にそう思ったんだ 珀斗:(M)でも、中学生になった時、彼女が同じ中学だったってことを初めて知った…。こんな偶然あるんだってめちゃくちゃ喜んだ。 珀斗:(M)けど、彼女は今と同じく前髪が長くて、誰とも話さず一人で過ごしていた。まるで、ホワイトガーデンで出会った人とは違う、別人の誰かを見ているような 0:【間】 珀斗:だから…あの日から僕は写真を撮るのが好きだった。君みたいに…笑顔になってくれる人が沢山出来ればいいなって 小雪:………そうだったんだ。あの時の…… 珀斗:だから僕は…君の事が知りたいんだ。写真を好きになるきっかけだった君の事を 小雪:……わかった 0:【間】 小雪:(M)ちょうど5年前のクリスマス。私はお父さんと人生最後の写真を撮った 小雪:(M)随分前の記憶なのに、その記憶だけが鮮明に覚えてる。寒かったけど…お父さんの手を握りしめて必死に歩いて辿り着いたあの景色…… 小雪:(M)辺りが真っ白のあの景色は忘れもしない。綺麗で、キラキラしてて、ふわふわで。まるで凍えた寒さを雪の綿で包んでいるかのように心が暖かくなった 小雪:(M)………けど、それがお父さんとの最後のクリスマス 小雪:(M)幼い頃に見てしまったお父さんの最期の姿……。その手で握りしめていたのはクリスマスに撮った私との写真。……そして私の顔だけペンで黒く塗り潰されていて、しわくちゃになっていた。 0:【間】 小雪:……だから…きっとお父さんは…私の笑っている顔が嫌いだったんだ…… 珀斗:そんな事ないよ 小雪:じゃないとあんな事しないでしょ… 珀斗:君の事…嫌いなわけないよ 小雪:私は…お父さんが辛そうにしてることに気づいてたのに……何もしてあげられなかったから… 珀斗:……… 小雪:辛いってわかってるのに…そんな気も知らないで私は…笑っていたから…… 珀斗:白川さん…… 小雪:私が居なかったら……お父さんはもっと…もっと幸せになれたかも知れない……! 珀斗:白川さん! 小雪:……… 珀斗:君のお父さんは…絶対そうは思ってない! 小雪:どうしてそんなことが言い切れるの? 珀斗:………写真は3枚撮ったはずだよね? 小雪:……うん 珀斗:そのうちの1枚は……僕が持ってるんだ 小雪:……そうなの? 珀斗:そう。だからその写真を君に渡したい 小雪:………そんな…見たくないよ 珀斗:見て欲しいんだ! 小雪:………怖いよ 珀斗:怖くても大丈夫だよ!…そのために僕が居る! 小雪:……… 珀斗:だから、クリスマスの日に一緒に行こう。ホワイトガーデンに 小雪:………… 0:【間】 0:文化祭が終わりある日のこと 0:この日はバスケ部の大会の日 透:……ふぅ ひらり:透ー! 透:おう。来てたのか ひらり:うん!これお弁当。ちゃんと食べてね 透:ありがとう ひらり:あれあれー?もしかして緊張してんの? 透:してるわけねーだろ ひらり:ひひっ。その調子だよ!せっかくの大会なんだから悔いのないようにがんばろー! 透:わかったわかった 0:【間】 ひらり:(M)あんな澄ました顔してるけど、本当は気合入ってるの知ってるからねー。めんどくせーが口癖だけど、全部嘘。私には伝わってるよ ひらり:だから、頑張れ。透。私はずっとあんたのそういう所を見てきたから 0:試合が進む 透:(M)……くそ。あと15点は遠い……あと3分か……無理かもな… 透:(M)頑張って来たなんて言えるほど頑張れてたかはわかんねーけど、努力が報われなきゃ頑張ったって言えねーもんな。 透:(M)やっぱ俺はここまでだ。 ひらり:がんばれー!透ー! 透:………ひらり? ひらり:負けんなー!透ー! 透:……… ひらり:かっこいいとこ見せてー! 透:……ああ。負けてらんねーよ! 0:試合が進むと ひらり:……すごい…点差が… 透:……あと…5点… 透:(M)それでもあと1分…逃げ切られたらおしまいだ。 透:……っ!! 0:透は相手からボールを奪いそのままゴールに走る 透:うおおおーー!! 0:執念でボールをゴールに入れた ひらり:透ーー!! 透:よっしゃあー!! ひらり:あと3点!がんばれー! 透:(M)時間を考えると4点を入れるのは難しい……なら、スリーポイントで同点まで追いつけば…… ひらり:いけるよ!透! 0:残り時間が少ない中、透はボールを貰う 透:入れぇーー! 0:ひらりと透の願いは届かず、ボールはリングに弾かれてしまった 透:………っ ひらり:……透 0:【間】 透:(M)ああ。やっぱ俺、下手なんだな。ひらりが見てくれてるのに、かっこ悪いところ見せちまった 透:(M)俺がどんなに頑張ったって……無理なもんは無理だしな。こんなめんどくせぇ事…終わりにしよう 透:ああ。めんどくせぇ 0:【間】 透:……… ひらり:お疲れ様。透 透:……おう。 ひらり:………残念だったね 透:ああ。そうだな ひらり:本当に惜しかったよね! 透:まあ、もう終わったんだからどうでもいい ひらり:……… 透:こんなめんどくせぇこと続けたところで何も意味ねぇしな。少しは頑張ったけど結局ダセェんだよ ひらり:……透 透:わかりきってたけどな。どうせ勝てねえって。だから最初からこんなめんどくせぇことしなきゃよか……っ!? 0:ひらりは透を抱きしめる ひらり:いいから、素直に泣きなよ 透:……… ひらり:文化祭の集まりの前にひっそり練習してたのも知ってる。文化祭当日だって練習してたのもわかってる。透はずっと頑張ってきたじゃん 透:………くっ… ひらり:それに透はダサくない。別に、透が勝つところとかバスケが上手いとか、そんなことどうでもいいもん 透:……… ひらり:文句言いながら頑張ってる透が好きだからね。結果じゃなくてそれまでの過程が全部かっこいいの。ダサくなんかない 透:………ありがとう ひらり:ひひっ 透:……ひらり ひらり:ん? 透:こ、今度……デート行こ(小さい声) ひらり:……え?今なんて? 透:聞こえてただろ!? ひらり:本当に聞こえなかった!なんて言ったの!? 透:デート行くぞって言ったんだよ! ひらり:ええー!透から誘ってくるの珍しいじゃん! 透:いつもお前にペース握られるからムカつくんだよ!今度は俺がリードしてやるんだ! ひらり:……ひひっ。楽しみにしてるね 0:【間】 0:ある日のこと 小雪:(M)彼と、ホワイトガーデンに行く約束をしてしまった 小雪:(M)もちろん、約束したからには行く予定だけど……やっぱり…怖い気持ちもある。あの場所が…私の最後のクリスマスだったから 0:【間】 ひらり:おーい、小雪ー。 小雪:……あ、こんにちは ひらり:寒くなってきたねぇ。もうすぐ冬休みだよ? 小雪:そ、そうだね ひらり:あ、そうだ。クリスマスとかどうするの? 小雪:………っ ひらり:え?何か予定あるの? 小雪:……ある ひらり:えー!デート!? 小雪:違うよ。デートとかじゃないけど ひらり:冬野と? 小雪:……うん ひらり:そうなんだ 小雪:私、彼と昔に会ったことがあるみたいで、彼と出会った場所に行くんだ ひらり:素敵なことじゃん 小雪:でも…あんまり見たくない景色だから ひらり:そうなの? 小雪:その景色を見ると……トラウマを思い出しちゃうから ひらり:……なら、尚更よく見えた方がいいんじゃない? 小雪:……どうして? ひらり:結局見えているものを見ないフリをするのって、どんどん視野が狭くなるだけなんじゃないの? 小雪:……それは ひらり:誰かが、小雪の事を見てくれてるのにも気付かないかも知れない 小雪:……… ひらり:ま、その辺はご本人たちにお任せするよー。てか、小雪クリスマスデートなんだからオシャレしてくれば?きっと冬野も顔真っ赤にして固まっちゃうよ? 小雪:え?そ、そうなの? ひらり:うん。だから冬休みになったら買い物に行こうよ 小雪:………うん 0:【間】 小雪:(M)買い物かぁ。誰かと買い物なんてしばらくしてないし…緊張する 小雪:(M)でも、彼女の言ってたことも一理あるかもしれない。見えているものも見ないフリ…視野が狭くなる……誰かが見てくれる……誰かの事を見ていたい……そう思えるのなら…そうしたいよ 小雪:……前髪…切ろうかな……? 0:【間】 0:場面転換 0:ある日のこと。小雪は美容室を出る 小雪:………っ 0:鏡で自分の顔を見る 小雪:……っ!っ!っ!(前髪を引っ張る) 小雪:目が…見えちゃう…… 0:場面転換。駅にて ひらり:お、来たかなー?……え?どしたん?小雪 小雪:お、おはよー ひらり:サングラスはダサいよ!取りな 小雪:これは今の私には欠かせないアイテムなの…! ひらり:なーにわけわかんないこと言ってんの!取って! 小雪:……あっ ひらり:……わあ。前髪切ったんだ 小雪:……うん ひらり:可愛いじゃん! 小雪:……ほんと? ひらり:うん!めっちゃ可愛い!初めて小雪の顔見たかも!めーーっちゃ可愛い! 小雪:……ありがとう ひらり:これはプロデュースのしがいがあるわ!行くよー! 小雪:う、うん! 0:【間】 0:珀斗は走り込みをしていた 珀斗:はあ…はあ… 透:ん?お前は 珀斗:え?加地君? 透:宮下じゃねーか 珀斗:冬野だよ!今体力持ってかれてるからツッコミさせないで…! 透:なんで走り込みなんてしてんだ? 珀斗:……いや、クリスマスに出掛けるから 透:別に体力いらねーだろ 珀斗:ひ弱な男だって思われたくないじゃん 透:手遅れだろ 珀斗:はっきり言わないでよ……はあ。……はあ。もうダメだ 透:こんくらいで諦めんなよ。 珀斗:体力ないなー 透:かっこ悪いとこ、見せられねーんだろ? 珀斗:…わ、悪い? 透:いーや?気持ちはわかる 珀斗:君もちゃんと人の心はあったんだね 透:そりゃあるだろ! 珀斗:橘さんと付き合ってるんだもんね。彼女にもかっこ悪いところ見せられないって思うもんなの? 透:どうだろうな。あいつはどう思ってんのかわかんねーけど、俺はあいつにはダサいところしか見せてねー気がする 珀斗:……そうなの? 透:おまけに何回か泣いてるところ見られてんだよな。それでもあいつは俺のこと慰めてくれるんだ、透はダサくないって 珀斗:ふーん 透:だから、自分がダサいと思ってるところも全部好きになってくれる女ってすげぇいいなって……。俺何言ってんだ? 珀斗:キザだねぇ。 透:殺すぞ? 珀斗:……うん。でも君の気持ちもわかるよ。僕も彼女に迷惑を掛けてばかりだったし、自分の気持ちしか考えられなかったから 透:お前が自分でそう思えるならいいんじゃねえか?その相手がどう受け止めてくれるかが一番大事だしな 珀斗:うん。そうだね 0:場面転換 0:クリスマス当日 ひらり:さむーい! 透:マフラーしてねーの?今日は寒いってわかってたろ? ひらり:でも、こんなに寒いと思わなくてぇー! 透:俺のマフラー貸してやる ひらり:え、いいの? 透:ああ、いいよ ひらり:ありがとう 透:イルミネーション、綺麗だったな ひらり:え?透って綺麗だって思うことあるの? 透:あるだろ!俺をなんだと思ってんだよ! ひらり:心のないゴリラかなんかだと… 透:殺すぞ? ひらり:ひひっ。冗談だよ。でも、本当に綺麗だったね 透:でも、言われてみれば綺麗だなんて思うことなんて今まで無かった気もするな ひらり:じゃあ、私に似たってことなんじゃない? 透:……そういうことか? ひらり:そういう事だよ。もう何回目のデートかわかんないけど、段々似てくるんだよ 透:良いことなのか? ひらり:どっち?嬉しいの?嫌なの? 透:そんなのお前が決めろ! ひらり:めんどくせぇー!ひひっ 透:お前も俺の口癖真似してんじゃねーかよ ひらり:ほんとだ。口の悪さまでは似たくないな 透:うるせーな ひらり:でも、透の言うめんどくせぇって嫌だからめんどくせぇって意味じゃないの自分でわかってる? 透:どういう事だ? ひらり:好きで好きで離れられないくらい、だーい好きだから、めんどくせぇって事なんだよ 透:……お前も大概めんどくせぇな。……っ。 ひらり:っ!な、なに? 0:透はひらりを抱き寄せる 透:寒いんだろ?もっとくっつけよ ひらり:さ、寒いけど!暖かいけど!……近いよ 透:いつも俺にくっついてんだろーが ひらり:透からそういうのされるのは違うのー! 透:どういう意味だよ! ひらり:それくらいわかりなさいよ! 透:わかるわけねーだろ! ひらり:わかるようにしなさいよー! 透:ああ!もうめんどくせぇ! ひらり:あんたの方がめんどくせぇー! 0:【間】 0:場面転換。小雪は駅に向かう 小雪:お、おはよう 珀斗:ああ、来た……なんでサングラス? 小雪:いや、私には欠かせないアイテムだから 珀斗:よくわかんないけど外したら? 小雪:それは遠慮する 珀斗:なにそれ? 0:二人は新幹線に乗る 珀斗:新幹線なんて修学旅行以来だね 小雪:……そうだね 珀斗:白川さんは修学旅行の思い出ある? 小雪:……あんまり覚えてない…かも 珀斗:……そっか 0:そして、新幹線に乗り継ぎ 珀斗:じゃあ行こっか。ホワイトガーデンに 小雪:……うん 珀斗:……やっぱりそのサングラス取らない? 小雪:ど、どうして? 珀斗:え、えーと。言葉を選ぶなら…白川さんっぽくない 小雪:……そ、そんなはっきり言わなくても… 珀斗:ご、ごめん!そういうわけじゃ…… 小雪:……じゃあ、外す 珀斗:う、うん 0:小雪はサングラスを外す 珀斗:………っ 小雪:………あんまり見ないでよ 珀斗:ご、ごめん!つ、つい……あ!前髪あるの可愛いよ!凄く…似合ってる 小雪:………ありがとう 珀斗:服もオシャレだね 小雪:……うん。新しく買ったの 珀斗:今日のために買ってくれたの?嬉しいな 小雪:……は、早く行こ。私も今日は……ううん、何でもない 珀斗:……うん。行こうか 0:【間】 小雪:(M)もう既に辺りは白くなっている。歩く度に視界が小刻みに揺れているようだった。明るく見える外の様子は、ずっと暗闇の中に居た私には眩しすぎるくらいギラギラしていた 珀斗:(M)彼女の足は1歩ずつ、慎重に雪を踏み、歩いている。この道も、君と一緒に来たわけではないけど、懐かしく思える。だから、今この瞬間。君の思い出が僕で上書きされたらいいな。……なんて 小雪:……… 珀斗:白川さん。大丈夫? 小雪:うん。大丈夫 珀斗:怖くない? 小雪:……怖い 珀斗:じゃあ…僕の手を握ってて 小雪:……うん 0:小雪と珀斗は手を繋ぐ 珀斗:着いたよ…ホワイトガーデンに 小雪:……… 珀斗:白川さん? 小雪:………(震えている) 珀斗:目を開けられない? 小雪:………開けられない 珀斗:……こっちに来て 小雪:……っ 0:珀斗はダウンのチャックを下ろし、広げ、小雪の視界を覆い隠す 珀斗:ほら、目、開けてみて 小雪:………何してるの? 珀斗:あはは。今は白川さんと僕だけの世界だよ 小雪:……… 珀斗:この場所で……僕と出会った 小雪:……そう、だね 珀斗:そして…この場所で…お父さんと写真を撮った 小雪:……うん 珀斗:この写真。見てくれる? 小雪:……これは? 珀斗:君と…君のお父さんの写真だよ 小雪:……いやだ…見たくない 珀斗:大丈夫。僕の言葉を聞いて欲しい 小雪:……なに? 珀斗:この写真を撮った時…君のお父さんが…なんて言ったかわかる? 小雪:……何? 珀斗:……本当に、小雪の笑顔は可愛いって言ってた 小雪:………え? 珀斗:僕のカメラで写真を撮った時、写真を確認するために見てもらったんだ。その時に、小さな声でそう言っていた 小雪:………そんな…。ならなんで…お父さんは 珀斗:………それは僕にはわからない。…けど…写真を見ると…君のお父さんは絶対に、君の笑顔が好きなんだってわかる。だから…見て欲しいんだ 小雪:……… 0:小雪は恐る恐る写真を見る 小雪:………っ 珀斗:……ね?どう見えた? 小雪:………笑ってる 珀斗:そう。君は僕の顔を見てくれたからかな?お父さんの顔もちゃんと見れるようになったね 小雪:……うん。……ちゃんと…私の顔を見て…笑ってくれてる 珀斗:君のお父さんは君の笑顔が好きなんだ。これは嘘じゃないって僕は思う。 小雪:………そうだね 珀斗:じゃあ…5年前に見た景色を…一緒に見よう 小雪:……うん 珀斗:……行くよ 0:珀斗は小雪から離れる 小雪:………っ 珀斗:……… 小雪:………うっ…ううぅ……(泣く) 珀斗:……白川さん… 小雪:……凄く…綺麗な景色…… 珀斗:……うん。そうだね 小雪:………でも 珀斗:……… 小雪:……やっぱり……怖い… 珀斗:………白川さん 小雪:……もう…見れないよ…あの頃みたいに…笑顔にはなれない 珀斗:………見なくても…いいよ。ごめんね、白川さん 小雪:………うっ…ううぅ…… 珀斗:白川さん! 0:珀斗は小雪を抱きしめる 珀斗:……君を不安にさせて…本当にごめん 小雪:……不安になんかなってない…。私が弱いだけだから… 珀斗:ううん。そんな事ないよ。5年前からずっと、君は何も見なかったから。それでいきなりこの景色を見るのは…怖いに決まってる…。それは僕にもわかってたけど……僕が居れば大丈夫だって思ってた…。けど……やっぱり独りよがりだった 小雪:……ううん。私のためを思ってやってくれたって…わかってる。今年はこの景色を見れるように私も覚悟を決めたから 0:小雪は珀斗から少し離れる 小雪:今は…私はあなたの事、よく見える。……私は…あなたとなら……見れなかった景色も…きっと見ることが出来るよ 珀斗:………なら、また来年……この場所に行こう 小雪:………うん。…また行きたい 珀斗:また何かを見るのが怖くなった時は…その時は……僕の事を見てて欲しい。僕は…僕だけは…君の事を見てるから 小雪:……うん。ありがとう……。来年は…二人で写真を撮って、収めようね 小雪:あなたと二人で…クリスマスフィルムに 0:【間】 0:月日が経って5年後 珀斗:……よし、準備はいい? 0:珀斗はダウンのチャックを下ろし広げる 小雪:うん。ありがとう。5年も経ってるんだし、もうそんな事しなくても大丈夫だよ。 珀斗:ええ?これは恒例行事にしたいんだよ 小雪:でも、毎年これがあるから心の準備は出来る気もするよ 珀斗:ちょっとドキドキするもんね。じゃあ行くよ。せーの! 0:珀斗は小雪から離れる 小雪:わあ!綺麗! 珀斗:な、なんか去年よりも豪華になってない!? 小雪:5年事に変わるのかもね 珀斗:そんなことあるのかな?まあ、いいや 珀斗:小雪、ちょっとこっち来て 小雪:うん 珀斗:じゃあ撮るよ。はい、チーズ 小雪:撮れた? 珀斗:うん。見てみる? 小雪:……んー。もう1回 珀斗:ええ!?なんでよ、可愛いじゃん 小雪:なんか違う気がするの 珀斗:相変わらず写真のこだわり強いなー。じゃあ行くよー?はい、チーズ ひらり:いえーい! 珀斗:え? 小雪:……あなた ひらり:ひひっ。びっくりした? 小雪:びっくりするよー。なんで居るの? ひらり:ここのイルミネーション有名でしょ?今年はここに行こうって透と決めてたの 透:よう。夏野 珀斗:冬野だよ。もうわざとでしょ? 透:ああ、存在感薄くて忘れてたわ 珀斗:君、僕のインスタフォローしてきたよね? 透:あ、ああ。なんとなくな ひらり:てか、透、最近冬野のこと珀斗って呼んでるしね 透:お、おい!それ言うな! 小雪:……ぷっ!あっははは! ひらり:ん?小雪が笑ってる 珀斗:いつも笑ってるよ。小雪は 透:昔は何があっても無表情だったのになー 珀斗:よく笑うようになったよ 小雪:うん。そうだよ。珀斗のおかげでね 透:そりゃあ何よりで ひらり:ラブラブだねぇー 珀斗:よかったら君たちも写真撮る? ひらり:さんせーい! 透:早く撮れよー? 小雪:珀斗もこっちおいで 珀斗:うん。じゃあ撮るよー。はい、チーズ 0:4人は満面の笑みで写真を撮る 0:【間】 小雪:(M)真っ白に染まった景色は綺麗で、キラキラしてて、ふわふわで。それでも…私にはそれが怖かった。まるで視界の中心が渦を巻くように歪んで見えていたから 小雪:(M)それでも…怖いと思っていた景色でも、あなたと一緒なら景色は一転して変わった。 小雪:(M)それは綺麗だけでは言い表せれない特別な感情を抱くようになったからかも知れない。ずっとあなたを見てきて、ずっと私を見てくれたから。 小雪:(M)もう答えは決まってる。愛した人と見る景色は、どんな恐怖もどんなトラウマも溶かして、また新しい雪が降るように上書きされる。同じ景色でも違って見える 小雪:(M)そう。愛した人と一緒に居ると、笑顔になれるんだって、珀斗と一緒に居てわかった。だから、この幸せな瞬間を一つの写真に収めて、形を作りたいと思う 珀斗:小雪 小雪:ん?なに? 珀斗:愛してる 小雪:……私もだよ。珀斗 0:君と二人でクリスマスフィルムに

小雪:気になる人がいる 珀斗:レンズ越しに映る君は本当に美しい ひらり:気になるやつがいる 透:あいつは目立ちすぎだ 小雪:見えないものもある 珀斗:それでも、この景色を君に見せたい ひらり:視界は黒ではなく、真っ白である 透:キラキラした、純白の白さなら 小雪:真冬の景色に収めたい 珀斗:君と二人でクリスマスフィルムに 0:【間】 小雪:(M)気になる人がいる 珀斗:んーー。ふふっ。あはは 小雪:(M)学校の屋上で笑いながら空に向かってカメラを構えてる人がいる 珀斗:ほーーっと!……あっ… 小雪:……な、なに? 珀斗:……ごめん。いつから居た? 小雪:5分くらい前から 珀斗:い、いや!居すぎじゃない?声掛けてよ 小雪:何か楽しそうに笑ってたから。いいかなーって 珀斗:じゃあ忘れて。……てか、ホームルームあったんじゃないの?どうして白川さんがここに? 小雪:………私の名前、知ってるの? 珀斗:えぇ?当たり前でしょ、同じクラスなんだから 小雪:……そっか。……えっと 珀斗:……冬野珀斗だよ。 小雪:ああ。ごめん。私、人の名前覚えるの苦手で。……あなたこそなんで屋上に? 珀斗:僕から聞いてるんだから答えてよ 小雪:………文化祭の準備のあの雰囲気がちょっと苦手で 珀斗:あー。僕もそれはわかるよ。みんな楽しそうなのもわかるんだけどね 小雪:だから一人で屋上に居たの? 珀斗:まあね。屋上から見る景色はなんか絵になるなーと思って。なんか落ち着くんだよね 小雪:ふーん 珀斗:ほら、カメラのレンズ、覗いて見て。景色がすごく綺麗だから、思わず笑っちゃうよ 小雪:私はいい 珀斗:……ああ。そう? 小雪:邪魔してごめんね。じゃ 珀斗:うん。じゃあね 0:【間】 小雪:(M)私の存在なんて無意味だと思っていた。クラスでも一人だし、友達なんて居ない。勉強を真面目にする訳でもなく、ただ一人、時間が経つのを待つばかりだった 小雪:(M)だからこそ、名前を覚えられていた事を意外に思う。こんな私でも、気にかけてくれる人がいるんだーって 小雪:(M)それと同時に…なぜか懐かしさも感じる。……それは関係ないと思うけど、どこか馴染みやすさはある気がする 小雪:………ただ、それだけの事 0:【間】 ひらり:(M)気になるやつがいる 透:……お前…今なんて言った? ひらり:ん?透の事が好きって言ったの 透:ば、ばかか!またそんな事言ってんのかよ! ひらり:急とかじゃないでしょ?何回デートしてると思ってるの?告白も今日で3回目だしいい加減折れてよ 透:折れるとかそういう問題じゃないだろ ひらり:で?答えはどうなの? 透:…… ひらり:………まあ、透はバスケ部で忙しいもんねー。なら今すぐにじゃなくてもいいよ。待っててあげる 透:い、いや。俺は……つ、付き合ってもいい…ぞ? ひらり:……ふーん。なんか嫌な感じ 透:……はあ!?なんでだよ!ふざけんな! ひらり:透の本当の気持ちを聞かせて欲しいの。付き合ってもいいじゃなくて、どうしたいの? 透:………あーー!わかったよ!!付き合いたい!俺もひらりが好きだ! ひらり:……ひひっ!よく言えたねー! 透:ああ。もう吹っ切れた ひらり:透がちょっと勇気出すだけでね?私の胸がドキッと膨らんで、その後に、じわーっと幸せな気分になれるんだよ?ありがとー! 透:お、おう 0:【間】 ひらり:(M)透の気持ちには気付いてた。だって、初デートの時に手だって繋いだんだよ?あたしを受け入れてくれてるってことじゃん ひらり:(M)それでも、あたしの告白を2回も断るなんて、ほんとバスケしてる時は男らしくてかっこいいのに、こういう時だけ優柔不断でだらしないんだから。……でも、もういいや。だって、ずっと思い続けてきた念願が叶うんだから ひらり:今年のクリスマス、楽しみだなー 0:【間】 小雪:なんで文化祭の広告係なんて選んだの? 珀斗:僕もそんなつもりじゃなかったんだけどね。画像の編集とか一応出来るしそれで選ばれたのかも 小雪:違うよ。私を候補にあげたのはあなたでしょ? 珀斗:ああ。うん。そうだね。何となく白川さんとなら色々出来そうな気がしたんだ 小雪:でも…文化祭の雰囲気は好きじゃないよ 珀斗:まあでも、せっかくの文化祭なんだし楽しめた方がいいかなって 小雪:あなたの話してるんじゃなくて、私の話してるの 珀斗:あ、ああ。ごめん 小雪:いや、別にいいよ。広告係って何するの? 珀斗:ああ。文化祭のポスターを作って掲示板に貼り付けたり、校門に看板を作ったりするんだよ。当日は宣伝とかもやるかな? 小雪:ふーん。 珀斗:一緒にやってくれる? 小雪:………うん。 珀斗:(M)黙り込んだ彼女の様子を伺いながら、二人で学校の通路を歩く。その短い歩幅でよそよそしく流れる時間が何とももどかしかった 珀斗:(M)長い前髪に隠れた彼女の瞳には…何が映っているんだろう? 珀斗:(M)こうやって彼女を見ているのは、もう何度目だろう? 0:場面転換 ひらり:透ー。今日は文化祭の集まりあるんだってー。 透:ああ。先行っといてくれ ひらり:どこ行くの? 透:トイレ ひらり:あそ。じゃあ先行ってるね 透:おう 0:場面転換 ひらり:ねえねえ、文化祭の広告係の集まりってこの教室であってる? 小雪:………あ、うん ひらり:あれ?学年同じだったっけ? 小雪:………うん ひらり:じゃあ隣すーわろ 小雪:っ! ひらり:もう一人は?どこにいんの? 小雪:前の席にいるよ 珀斗:あ、どうもー。 ひらり:んー?冬野じゃん。珍しいね、どうしたの? 珀斗:どうしたのって何だよ。僕だってこういう集まりに参加するさ ひらり:去年なんかは何もしてなかったじゃん 珀斗:去年の話は別にいいでしょ 小雪:……… 珀斗:あ、ご、ごめん白川さん。橘さんとは去年同じクラスだったんだよ ひらり:よろしくね! 小雪:う、うん。よろしく 小雪:よ、陽キャの匂いがする…… 珀斗:この子は白川さんだよ。白川小雪さん 小雪:あ、し、白川です ひらり:白川小雪ちゃんねー。私の相方ももうちょいで来るんだけどなー 珀斗:相方? ひらり:そう!あ・い・か・た 珀斗:なんか意味深じゃない? ひらり:意味深にしてないよ。もうオープンだからさ 小雪:………? 0:その瞬間に教室のドアが空く 透:うぃーっす ひらり:おー!きたきた! 透:ん?誰だ?お前ら 小雪:ま、また怖そうな人が来た… 珀斗:バスケ部の加地君が相方? ひらり:そうだよ。ほら、挨拶しなさい 透:ん?………ふぁっく!!(中指立てる) 小雪:え、ええー!? ひらり:やめんか!!(グーで頬を殴る) 透:ぶへっ!な、なんでだよ!こいつら知らねーし! ひらり:だからってよく知らない人に中指立てないの!謝りなさい! 透:明日謝ってやる ひらり:今謝るの!(げんこつする) 透:いで! 珀斗:ま、まあ、別にいいよそれくらいは。ほら僕の隣座っていいよ。加地君でしょ? 透:ああ。そうだ 小雪:………… 小雪:(M)どうしよう。高校生になって1回も友達と話したことなかったのに……今、この雰囲気がめちゃくちゃ怖い 珀斗:先生来たよ。静かにしよう 0:しばらく文化祭の広告係の説明を聞く ひらり:はあーー終わったー。んで?どういう意味? 透:話聞いてなかったのかよ! ひらり:よくわかんないからあとは透に任せるわー。透は部活でしょ? 透:ああ。めんどくせーけど行ってくるわ ひらり:いってらっしゃーい 0:透は教室を出る 透:(M)はぁ。すっかりあいつのペースだなー。うるせー割には適当だし、知らねーやつに話しかけて勝手に俺を紹介しようとするし。 透:(M)めんどくせー事ばっかだけど…やるしかねーんだよなー。……好きになっちまったもんはしょうがねーか 0:【場面転換】 0:教室にて 珀斗:じゃあ橘さん、わからない事あったら僕に聞いてよ ひらり:大丈夫!何がわかんないかもわかんないから! 珀斗:大丈夫じゃないねそれ… ひらり:まあどうにかなるよー!じゃあ私バイトあるからじゃあね 小雪:……… ひらり:小雪 小雪:………え? ひらり:ひひっ。じゃあね! 小雪:………うん。じゃあね 0:ひらりはその場を去る 珀斗:白川さんは?何かやることある? 小雪:え、何も無いけど 珀斗:じゃあ帰ろっか 小雪:う、うん 0:小雪と珀斗は同じ道を歩く 小雪:(M)……まだ…息は白くない。……まだ…雪は降らない。……まだ…寒くはない 小雪:(M)繰り返す嫌悪感は、毎年この時期にやってくる。だから文化祭も好きじゃない。……それが終わったら学校のみんなは必ずこう言うから 小雪:(M)今年も…クリスマスがやってくる 珀斗:白川さん? 小雪:……… 珀斗:白川さん。どうしたの? 小雪:………あ、ごめん。 珀斗:何か文化祭で不安なことある? 小雪:いや、特に何もないよ 珀斗:久しぶりに集まりあると色んな人いるから緊張するよね 小雪:そうだね 珀斗:白川さんは人と話すの苦手なの? 小雪:………… 珀斗:……え?どうしたの? 小雪:私、教室ではいつも一人だったから、誰とも話したことないの 珀斗:僕とは話してくれたじゃん 小雪:あなたはたまたま屋上に居たからでしょ。なんか笑ってたし 珀斗:あれはー…あはは。恥ずかしいな。でもこれを機に色んな人と話したらいいよ 小雪:……私は、人と関わるのが苦手だから 珀斗:なら、慣れるしかないじゃん 小雪:慣れないよ。……この感覚は……慣れない 珀斗:……どうして? 小雪:………人の顔を見るのが…怖いから 珀斗:……人の顔? 小雪:どういう表情をしてるんだろう?とか、どんなことを思ってるんだろう?とか、人の顔を見ると自分を見る目がわかるというか…怖いの 珀斗:そうなんだ……じゃあ今の白川さんを撮ってみる? 小雪:え? 0:珀斗はカメラを小雪に構える 小雪:ちょっと、何? 珀斗:今の白川さんの表情を見てもらおうかと思ってさ 小雪:………やめて 珀斗:見てもらいたいんだよ 小雪:嫌だって言ってるでしょ! 珀斗:……ご、ごめん 小雪:……私、写真撮られるの好きじゃないから… 珀斗:……そう、だったんだ 小雪:……… 珀斗:でも、白川さんがこれからどんな表情で写真に写ってくれるのか僕は楽しみにしてるよ 小雪:………どうだろ 珀斗:でもさ、屋上で僕の間抜けな笑った表情も…君は見てくれたじゃん。人の表情を見るのが怖い君が 小雪:………それは…別に……気になったから 珀斗:僕の表情が見れるなら、他の人の顔も見れるようになるよ 小雪:………てか、あなたどうして帰り道付いてくるの? 珀斗:付いてくるって人聞き悪いなー。僕もこの辺に住んでるんだからさ 小雪:………え? 珀斗:僕たち、同じ中学だったでしょ? 小雪:………知らないよ 珀斗:じゃあ君が見てなかっただけだ 小雪:……… 珀斗:じゃあ、僕はこっちだから。またねー! 小雪:………うん 0:場面転換 ひらり:はーい!お疲れ様でーす! 0:ひらりがバイト先の出口を開ける ひらり:………ん? 透:よう ひらり:え?どうしたの? 透:いや、部活も終わったしたまたま通りがかっただけだよ ひらり:ひひっ。待っててくれたの? 透:わ、悪いかよ! ひらり:全然。時間も遅いし帰ろ? 透:お、おう。これ、やるよ ひらり:えー!いいの?ちょうど喉乾いてたんだー!ありがとー。 透:どういたしまして 0:【間】 ひらり:部活はどうなの? 透:ああ。別に大したことねーよ ひらり:大会近いんでしょ?頑張ってんねー次期エースさん! 透:だから、俺は頑張る気もねーよ ひらり:そうなんだ 透:ああ。そうだ ひらり:じゃあなんで私の帰りを待ってたの? 透:…そ、それは!べ、別に…… ひらり:ふーん。今日は手繋いであーげない 透:お、おい。待てって!止まってくれ! ひらり:何か言うことは? 透:……夜は寒いな ひらり:もう一声 透:……… ひらり:なーにー? 透:………っ! ひらり:……ひゃっ! 0:透はひらりを抱きしめる ひらり:ちょ、ちょっと!なな、何してんの?ジュース溢れる! 透:……ごめん。ちょっとこうしてたい ひらり:わ、わかったよ!よしよーし。……ふぅ。どうしたの? 透:いや、別に。なんもねーよ ひらり:えぇー?何も無いのに抱きつきたくなるくらい私の事が好きって? 透:ばっ!んなこと言ってねーだろ! ひらり:じゃあ何ー? 透:いや、バスケのことなんだけどさ……なんか思うようにいかなくて ひらり:あの透が?冗談でしょ? 透:何か……下手くそになったなーって不安に思うんだ ひらり:………そうなんだね 透:……ああ ひらり:それでちょっと辛くなってー!彼女の温もりで癒されようとしたわけね!?可愛いとこあんじゃん透ってばー! 透:悪ぃかよ ひらり:ひひっ。嬉しいよ。でもさ、何やっても上手くいかない時ってあるよね。 透:………ひらりにもあるの? ひらり:あるけど何も考えてないからね 透:お前は気楽でいいな ひらり:気楽でいいでしょ?落ち込んでてもしょうがないし 透:それがお前らしいか ひらり:でも、ちゃんと落ち込める透も偉いよ 透:………え? ひらり:だってさ、このままじゃだめだーとか。もっと上手くなりたい!って、常に自分と向き合ってるってことでしょ? 透:まあ、そうだな ひらり:かっこいいと思うよ。透らしくて 透:………っ! ひらり:うわあ! 0:透はひらりをそのまま持ち上げる ひらり:ちょ、また急に何!?下ろして! 透:いや、このままひらりを持って帰ろうかなって ひらり:ばっかじゃないの!?もう!早く下ろせー! 透:今日くらいいいだろー! ひらり:やーだぁーー!! 0:【間】 0:ある日のこと 珀斗:ほら、見てよ。僕の自慢のチラシが出来たよ! ひらり:ほえーー。やるじゃん 透:やるなー服部。じゃあ俺らのクラスはこれを丸パクリするか 珀斗:僕の名前は冬野だよ!著作権侵害はやめて 透:著作権なんて減るもんじゃねーだろ? 珀斗:それは暴論だよ! ひらり:小雪は?これどう思う? 小雪:……うん 透:うん。ってお前感想それだけか!? ひらり:あんたが作ったわけじゃないんだから威張んな! 珀斗:あはは…。どうかな?白川さん 小雪:………素敵だと…思う 珀斗:……ほ、ほんとに!? 小雪:うん。これはあなたが撮ったの? 珀斗:そうだよ。学校の風景を写真に撮って周りにフレームを付け足してさ。コントラストもやや高めにしてこの学校の明るさを表現してるんだ 小雪:すごいよ。本当にこういうこと出来たんだね 珀斗:……あはは。まあね ひらり:………へぇ?(ニヤつく) 珀斗:な、なに? ひらり:いいやー?なんでもないよー? 小雪:……? 珀斗:てか、本当に真似はしないでね? ひらり:しないよ。てかそんなレベルの高いこと出来ないし 透:めんどくせぇしな 珀斗:ほんと、君たちは似た者同士だね ひらり:そりゃそうだよ。付き合ってるんだもん 小雪:つ、つきあっ…… 透:お、おい。いちいち公言しなくていいだろ ひらり:えぇー?いいじゃん本当のことなんだし 珀斗:そうやって加地君を振り回してるのが目に見えてわかるよ ひらり:いいやー?こう見えて透は二人きりの時に甘えて…んーー!!んーー!(口を抑えられる) 透:それ以上なんも言うなー?わかったか!? ひらり:んー!んんーんーっ!(口を抑えられながら「わかった」) ひらり:ぷはー!……あ!透!あれ思い出したあれ! 透:ん?なんだ? ひらり:あれだよあれ!ほら行こ! 透:どわあ!引っ張るなって! ひらり:じゃあねー!青春しろよー若者たちー! 珀斗:いや、君何歳なの 0:ひらりと透は教室を出る 透:おおい!なんだよ! ひらり:ふぅ。……私さ。透とは付き合ってるけど、恋のキューピット的なのに憧れてるんだよね 透:はあ?どういう事だよ ひらり:透もあの二人を応援してってことだよ 透:ん?…………え?そういうこと!? ひらり:そういうこと 0:【間】 珀斗:文化祭が終わったらクリスマスかぁ。懐かしいなぁ 小雪:懐かしいって毎年あるでしょ? 珀斗:違うよ。懐かしく思える思い出があるの 小雪:そうなんだ 珀斗:東北にある……場所でさ… 小雪:………え? 珀斗:いや、やっぱり何でもない 小雪:……… 珀斗:じゃあ、文化祭楽しもうね! 小雪:う、うん 0:【間】 0:そして文化祭当日 透:よう ひらり:おはよー 透:なんか今日寒くね? ひらり:わかる。透にくっつけば問題ないけど 透:おまっ!またベタベタすんなよ ひらり:いいじゃん。今日は文化祭だし学校中のカップルがウキウキしてるんだからさ 透:……全く ひらり:……ん?あれ?透、走ったの? 透:……え!?なんで!? ひらり:何となく 透:あ、汗臭いか!? ひらり:そういうわけじゃないよ? 透:ああ。ならいいけど 0:【間】 珀斗:やあ。白川さん 小雪:……どうしたの?その格好 珀斗:あはは。広告係は宣伝もするから着ないといけないんだって。それにしても執事の格好は恥ずかしいけどね 小雪:……私も着るの? 珀斗:もちろん ひらり:ねえー!ねえー!見て見てー!透めっちゃイケメンじゃない!? 透:や、やめろ!大声出すな! 珀斗:おー!似合うね。橘さんもメイド服似合ってる ひらり:でしょー?美男美女の執事とメイドで宣伝してくるわ 小雪:ね、ねえ。私もこれ着るの!? ひらり:当たり前でしょ?ほら、早く着て! 小雪:嫌だ〜! 0:しばらくすると ひらり:おーい!小雪も着替えたよー! 珀斗:……… 透:着せられてる感すげーな 珀斗:い、いや!すごく似合うよ!か……かわいい 小雪:か、かわ…!? ひらり:よかったねー小雪。冬野から絶賛されて 小雪:…あ、ありがとう 珀斗:じ、じゃあ、宣伝しに行こっか! 小雪:うん ひらり:じゃあねー! 透:……ふぁっく! 0:場面転換 珀斗:こ、こういう格好するの初めて? 小雪:う、うん。初めてだよ 珀斗:そうなんだ。ちょっと格好が変わるだけで雰囲気が違うよね 小雪:そうだね 珀斗:あー。写真撮りたいなー 小雪:しゃ、写真? 珀斗:うん。記念に1枚だけ 小雪:……… 珀斗:……だめ? 小雪:……ちょっと…嫌かも 珀斗:……そっか、ごめん 小雪:いや、私の方こそごめん。撮りたくないわけじゃないんだけど……ちょっとね 珀斗:……何かあったの? 小雪:………… 珀斗:……まあ、あんまり聞かないでおくよ 小雪:……うん 0:【間】 0:場面転換 透:全く、揃いも揃ってなんで写真なんか撮りたがるんだよ ひらり:まあ今日はお祭りだからねー。こんな格好してたら目立つし写真も撮りたくなるでしょ 透:次写真撮るやつは追い出すか ひらり:いいじゃん、そのまま撮ってあげれば。バスケで鍛えた体を見せつけてもいいんだよ? 透:するか!んなこと! ひらり:てか、どうなの?部活は 透:ああ。まあぼちぼちだなー。大会前だとコーチが厳しくてめんどくせぇけど ひらり:頑張ってんじゃん 透:まあ、大会はめんどくせぇし、早く終わりたい気持ちが勝ってきたしな ひらり:ふーん。 透:あれ?あいつは 珀斗:……… 透:おい、秋山、何してんだ? 珀斗:冬野だよ。ちょっと休憩してるだけ ひらり:小雪は? 珀斗:白川さんは今着替えに行ってる ひらり:えー!?メイド服脱いじゃうの!? 珀斗:彼女には荷が重いみたいだよ 透:どんだけ恥ずかしがり屋なんだよ 珀斗:あ、そうだ。君たちも写真撮らない? 透:たった今写真撮ろうって言うやつは追い出すって話してたんだ。お前も追い出されたいか? 珀斗:何その物騒な話 ひらり:あれー?小雪とは写真撮ってないの? 珀斗:………撮ってないよ ひらり:……あれ?思ってた反応と違う 珀斗:あんまり写真は好きじゃないみたいなんだ。だから断られたよ ひらり:そんな失恋したみたいな顔しちゃって 珀斗:ち、違うよ!そんなんじゃない! 透:お前と、し、しー?白なんとかは昔から絡んでたのか? 珀斗:白川さんね。……うん。同じ中学だったけど…彼女を知ったのは小学生の時なんだ ひらり:へぇー!そうだったの? 珀斗:彼女はどうやら覚えてなさそうなんだけどね。小学生の頃の彼女が印象的だったからてっきり写真は好きだと思ってたんだ 透:明らかに陰キャだろ?あいつ 珀斗:まあ、大人しいタイプだとは思うよ。……けど、やっぱり何かがあったから暗い感じの子になっちゃったんじゃないかなーって僕は思う ひらり:………冬野、小雪が気になるの? 珀斗:え? ひらり:小学生の頃の小雪に一目惚れしたとか? 珀斗:……さあ。どうなんだろうね?今はそんなこと考える余裕ないや ひらり:あらまー。すっかり沈んじゃって 透:まあ何があったか知らねーけど、あの地味女のどこがいいのか俺には…うぐっ!!(脇腹を殴られる) ひらり:ふ、冬野ー!クヨクヨしちゃダメだー!ファイトー! 珀斗:……ん?……ありがとう ひらり:この問題は2人の問題だから私達は口出ししないね。じゃあねー! 珀斗:うん。じゃあね 0:ひらりと透はその場を去る 0:【間】 珀斗:………はあ。 珀斗:(M)彼女は僕とは話してくれる。僕の顔を見てくれる。僕だったら……なんて…そう思っていたからこそ、写真を断られた時、本当に悲しかった。あの屋上での出来事は…偶然だったのかな? 珀斗:……確かにクヨクヨしててもしょうがないか。………白川さんと屋上で出会ったのも…たまたまだな……。はあ。 珀斗:(M)僕は不安と悲しみが入り交じった鉛のようなため息を吐いて、何となく屋上に向かう 珀斗:………あれ? 小雪:……あ 珀斗:着替え終わったんだね。こんな所でどうしたの? 小雪:いや、わからない。あなたこそどうしたの? 珀斗:いや、何となく 小雪:………あの 珀斗:ん? 小雪:さっき……写真断ってごめん 珀斗:ああ、全然いいんだよ 小雪:断った時の…あなたの顔が悲しそうだったから 珀斗:……相変わらず僕の顔は見てくれるんだね 小雪:うん…どうしてだろ? 珀斗:……5年前のクリスマスのこと、覚えてる? 小雪:………5年前 珀斗:東北にあるホワイトガーデンのこと 小雪:………どうして…それをあなたが知ってるの? 珀斗:あの時のことは僕も覚えてるからだよ 小雪:………やめて 珀斗:眩しかった白い景色が辺りいっぱいにあった 小雪:………やめてよ 珀斗:君は…お父さんと_____ 小雪:やめてって言ってるでしょ!! 珀斗:………っ 小雪:……どうして思い出させようとするの!?私にとってあんなに辛い思い出なのに!どうして!? 珀斗:……それは 小雪:あなたは何も知らないのに……私の気持ちなんてわからないくせに…… 珀斗:……そ、そうだけど、またあの頃を思い出して辛いことも乗り越えられたらそれでいいと思って 小雪:みんながみんな辛い思い出を乗り越えられると思わないで!……この辛さは誰にもわからない……わかって欲しくなんかない…! 珀斗:…でも、あの頃の君は… 小雪:いい加減にしてよ!私は!……っ! 珀斗:………(鼻をすする) 小雪:あなた…どうして泣いてるの? 珀斗:……わかんないよ 小雪:……… 珀斗:答えたくなかったらそれでいい。……白川さんはどうしてあの頃のことを思い出したくないの? 小雪:……… 0:(長い沈黙) 小雪:………あなたこそ、どうして5年前のクリスマスの事を知ってるの? 珀斗:僕は…5年前のあの時…君と、君のお父さんの写真を撮ったからだよ 小雪:……え? 珀斗:あの時…僕も家族とホワイトガーデンに居たんだ。本当に偶然だけど、君に写真を撮って欲しいって頼まれたんだ 小雪:……… 0:【間】 珀斗:(M)彼女と初めて出会ったのは5年前のクリスマス。家族と旅行に行った先に彼女は居た。今の彼女と違うところは、写真を沢山撮って欲しいと言っていたこと 珀斗:(M)その頃の彼女はお父さんの手を繋いで頬を赤らめながら、辺りいっぱいに広がる白い景色を見て、全身で喜びを溢れさせていた 珀斗:(M)たまたま通りかかった僕に向かって彼女はまるで小さく踊っているような歓喜な動きを見せつけ、僕に写真を撮って欲しいと言った。 珀斗:(M)僕はたった一言こう思った。可愛いなって。小学生の頃の感想なんてこれくらいしか出てこないけど、素直にそう思ったんだ 珀斗:(M)でも、中学生になった時、彼女が同じ中学だったってことを初めて知った…。こんな偶然あるんだってめちゃくちゃ喜んだ。 珀斗:(M)けど、彼女は今と同じく前髪が長くて、誰とも話さず一人で過ごしていた。まるで、ホワイトガーデンで出会った人とは違う、別人の誰かを見ているような 0:【間】 珀斗:だから…あの日から僕は写真を撮るのが好きだった。君みたいに…笑顔になってくれる人が沢山出来ればいいなって 小雪:………そうだったんだ。あの時の…… 珀斗:だから僕は…君の事が知りたいんだ。写真を好きになるきっかけだった君の事を 小雪:……わかった 0:【間】 小雪:(M)ちょうど5年前のクリスマス。私はお父さんと人生最後の写真を撮った 小雪:(M)随分前の記憶なのに、その記憶だけが鮮明に覚えてる。寒かったけど…お父さんの手を握りしめて必死に歩いて辿り着いたあの景色…… 小雪:(M)辺りが真っ白のあの景色は忘れもしない。綺麗で、キラキラしてて、ふわふわで。まるで凍えた寒さを雪の綿で包んでいるかのように心が暖かくなった 小雪:(M)………けど、それがお父さんとの最後のクリスマス 小雪:(M)幼い頃に見てしまったお父さんの最期の姿……。その手で握りしめていたのはクリスマスに撮った私との写真。……そして私の顔だけペンで黒く塗り潰されていて、しわくちゃになっていた。 0:【間】 小雪:……だから…きっとお父さんは…私の笑っている顔が嫌いだったんだ…… 珀斗:そんな事ないよ 小雪:じゃないとあんな事しないでしょ… 珀斗:君の事…嫌いなわけないよ 小雪:私は…お父さんが辛そうにしてることに気づいてたのに……何もしてあげられなかったから… 珀斗:……… 小雪:辛いってわかってるのに…そんな気も知らないで私は…笑っていたから…… 珀斗:白川さん…… 小雪:私が居なかったら……お父さんはもっと…もっと幸せになれたかも知れない……! 珀斗:白川さん! 小雪:……… 珀斗:君のお父さんは…絶対そうは思ってない! 小雪:どうしてそんなことが言い切れるの? 珀斗:………写真は3枚撮ったはずだよね? 小雪:……うん 珀斗:そのうちの1枚は……僕が持ってるんだ 小雪:……そうなの? 珀斗:そう。だからその写真を君に渡したい 小雪:………そんな…見たくないよ 珀斗:見て欲しいんだ! 小雪:………怖いよ 珀斗:怖くても大丈夫だよ!…そのために僕が居る! 小雪:……… 珀斗:だから、クリスマスの日に一緒に行こう。ホワイトガーデンに 小雪:………… 0:【間】 0:文化祭が終わりある日のこと 0:この日はバスケ部の大会の日 透:……ふぅ ひらり:透ー! 透:おう。来てたのか ひらり:うん!これお弁当。ちゃんと食べてね 透:ありがとう ひらり:あれあれー?もしかして緊張してんの? 透:してるわけねーだろ ひらり:ひひっ。その調子だよ!せっかくの大会なんだから悔いのないようにがんばろー! 透:わかったわかった 0:【間】 ひらり:(M)あんな澄ました顔してるけど、本当は気合入ってるの知ってるからねー。めんどくせーが口癖だけど、全部嘘。私には伝わってるよ ひらり:だから、頑張れ。透。私はずっとあんたのそういう所を見てきたから 0:試合が進む 透:(M)……くそ。あと15点は遠い……あと3分か……無理かもな… 透:(M)頑張って来たなんて言えるほど頑張れてたかはわかんねーけど、努力が報われなきゃ頑張ったって言えねーもんな。 透:(M)やっぱ俺はここまでだ。 ひらり:がんばれー!透ー! 透:………ひらり? ひらり:負けんなー!透ー! 透:……… ひらり:かっこいいとこ見せてー! 透:……ああ。負けてらんねーよ! 0:試合が進むと ひらり:……すごい…点差が… 透:……あと…5点… 透:(M)それでもあと1分…逃げ切られたらおしまいだ。 透:……っ!! 0:透は相手からボールを奪いそのままゴールに走る 透:うおおおーー!! 0:執念でボールをゴールに入れた ひらり:透ーー!! 透:よっしゃあー!! ひらり:あと3点!がんばれー! 透:(M)時間を考えると4点を入れるのは難しい……なら、スリーポイントで同点まで追いつけば…… ひらり:いけるよ!透! 0:残り時間が少ない中、透はボールを貰う 透:入れぇーー! 0:ひらりと透の願いは届かず、ボールはリングに弾かれてしまった 透:………っ ひらり:……透 0:【間】 透:(M)ああ。やっぱ俺、下手なんだな。ひらりが見てくれてるのに、かっこ悪いところ見せちまった 透:(M)俺がどんなに頑張ったって……無理なもんは無理だしな。こんなめんどくせぇ事…終わりにしよう 透:ああ。めんどくせぇ 0:【間】 透:……… ひらり:お疲れ様。透 透:……おう。 ひらり:………残念だったね 透:ああ。そうだな ひらり:本当に惜しかったよね! 透:まあ、もう終わったんだからどうでもいい ひらり:……… 透:こんなめんどくせぇこと続けたところで何も意味ねぇしな。少しは頑張ったけど結局ダセェんだよ ひらり:……透 透:わかりきってたけどな。どうせ勝てねえって。だから最初からこんなめんどくせぇことしなきゃよか……っ!? 0:ひらりは透を抱きしめる ひらり:いいから、素直に泣きなよ 透:……… ひらり:文化祭の集まりの前にひっそり練習してたのも知ってる。文化祭当日だって練習してたのもわかってる。透はずっと頑張ってきたじゃん 透:………くっ… ひらり:それに透はダサくない。別に、透が勝つところとかバスケが上手いとか、そんなことどうでもいいもん 透:……… ひらり:文句言いながら頑張ってる透が好きだからね。結果じゃなくてそれまでの過程が全部かっこいいの。ダサくなんかない 透:………ありがとう ひらり:ひひっ 透:……ひらり ひらり:ん? 透:こ、今度……デート行こ(小さい声) ひらり:……え?今なんて? 透:聞こえてただろ!? ひらり:本当に聞こえなかった!なんて言ったの!? 透:デート行くぞって言ったんだよ! ひらり:ええー!透から誘ってくるの珍しいじゃん! 透:いつもお前にペース握られるからムカつくんだよ!今度は俺がリードしてやるんだ! ひらり:……ひひっ。楽しみにしてるね 0:【間】 0:ある日のこと 小雪:(M)彼と、ホワイトガーデンに行く約束をしてしまった 小雪:(M)もちろん、約束したからには行く予定だけど……やっぱり…怖い気持ちもある。あの場所が…私の最後のクリスマスだったから 0:【間】 ひらり:おーい、小雪ー。 小雪:……あ、こんにちは ひらり:寒くなってきたねぇ。もうすぐ冬休みだよ? 小雪:そ、そうだね ひらり:あ、そうだ。クリスマスとかどうするの? 小雪:………っ ひらり:え?何か予定あるの? 小雪:……ある ひらり:えー!デート!? 小雪:違うよ。デートとかじゃないけど ひらり:冬野と? 小雪:……うん ひらり:そうなんだ 小雪:私、彼と昔に会ったことがあるみたいで、彼と出会った場所に行くんだ ひらり:素敵なことじゃん 小雪:でも…あんまり見たくない景色だから ひらり:そうなの? 小雪:その景色を見ると……トラウマを思い出しちゃうから ひらり:……なら、尚更よく見えた方がいいんじゃない? 小雪:……どうして? ひらり:結局見えているものを見ないフリをするのって、どんどん視野が狭くなるだけなんじゃないの? 小雪:……それは ひらり:誰かが、小雪の事を見てくれてるのにも気付かないかも知れない 小雪:……… ひらり:ま、その辺はご本人たちにお任せするよー。てか、小雪クリスマスデートなんだからオシャレしてくれば?きっと冬野も顔真っ赤にして固まっちゃうよ? 小雪:え?そ、そうなの? ひらり:うん。だから冬休みになったら買い物に行こうよ 小雪:………うん 0:【間】 小雪:(M)買い物かぁ。誰かと買い物なんてしばらくしてないし…緊張する 小雪:(M)でも、彼女の言ってたことも一理あるかもしれない。見えているものも見ないフリ…視野が狭くなる……誰かが見てくれる……誰かの事を見ていたい……そう思えるのなら…そうしたいよ 小雪:……前髪…切ろうかな……? 0:【間】 0:場面転換 0:ある日のこと。小雪は美容室を出る 小雪:………っ 0:鏡で自分の顔を見る 小雪:……っ!っ!っ!(前髪を引っ張る) 小雪:目が…見えちゃう…… 0:場面転換。駅にて ひらり:お、来たかなー?……え?どしたん?小雪 小雪:お、おはよー ひらり:サングラスはダサいよ!取りな 小雪:これは今の私には欠かせないアイテムなの…! ひらり:なーにわけわかんないこと言ってんの!取って! 小雪:……あっ ひらり:……わあ。前髪切ったんだ 小雪:……うん ひらり:可愛いじゃん! 小雪:……ほんと? ひらり:うん!めっちゃ可愛い!初めて小雪の顔見たかも!めーーっちゃ可愛い! 小雪:……ありがとう ひらり:これはプロデュースのしがいがあるわ!行くよー! 小雪:う、うん! 0:【間】 0:珀斗は走り込みをしていた 珀斗:はあ…はあ… 透:ん?お前は 珀斗:え?加地君? 透:宮下じゃねーか 珀斗:冬野だよ!今体力持ってかれてるからツッコミさせないで…! 透:なんで走り込みなんてしてんだ? 珀斗:……いや、クリスマスに出掛けるから 透:別に体力いらねーだろ 珀斗:ひ弱な男だって思われたくないじゃん 透:手遅れだろ 珀斗:はっきり言わないでよ……はあ。……はあ。もうダメだ 透:こんくらいで諦めんなよ。 珀斗:体力ないなー 透:かっこ悪いとこ、見せられねーんだろ? 珀斗:…わ、悪い? 透:いーや?気持ちはわかる 珀斗:君もちゃんと人の心はあったんだね 透:そりゃあるだろ! 珀斗:橘さんと付き合ってるんだもんね。彼女にもかっこ悪いところ見せられないって思うもんなの? 透:どうだろうな。あいつはどう思ってんのかわかんねーけど、俺はあいつにはダサいところしか見せてねー気がする 珀斗:……そうなの? 透:おまけに何回か泣いてるところ見られてんだよな。それでもあいつは俺のこと慰めてくれるんだ、透はダサくないって 珀斗:ふーん 透:だから、自分がダサいと思ってるところも全部好きになってくれる女ってすげぇいいなって……。俺何言ってんだ? 珀斗:キザだねぇ。 透:殺すぞ? 珀斗:……うん。でも君の気持ちもわかるよ。僕も彼女に迷惑を掛けてばかりだったし、自分の気持ちしか考えられなかったから 透:お前が自分でそう思えるならいいんじゃねえか?その相手がどう受け止めてくれるかが一番大事だしな 珀斗:うん。そうだね 0:場面転換 0:クリスマス当日 ひらり:さむーい! 透:マフラーしてねーの?今日は寒いってわかってたろ? ひらり:でも、こんなに寒いと思わなくてぇー! 透:俺のマフラー貸してやる ひらり:え、いいの? 透:ああ、いいよ ひらり:ありがとう 透:イルミネーション、綺麗だったな ひらり:え?透って綺麗だって思うことあるの? 透:あるだろ!俺をなんだと思ってんだよ! ひらり:心のないゴリラかなんかだと… 透:殺すぞ? ひらり:ひひっ。冗談だよ。でも、本当に綺麗だったね 透:でも、言われてみれば綺麗だなんて思うことなんて今まで無かった気もするな ひらり:じゃあ、私に似たってことなんじゃない? 透:……そういうことか? ひらり:そういう事だよ。もう何回目のデートかわかんないけど、段々似てくるんだよ 透:良いことなのか? ひらり:どっち?嬉しいの?嫌なの? 透:そんなのお前が決めろ! ひらり:めんどくせぇー!ひひっ 透:お前も俺の口癖真似してんじゃねーかよ ひらり:ほんとだ。口の悪さまでは似たくないな 透:うるせーな ひらり:でも、透の言うめんどくせぇって嫌だからめんどくせぇって意味じゃないの自分でわかってる? 透:どういう事だ? ひらり:好きで好きで離れられないくらい、だーい好きだから、めんどくせぇって事なんだよ 透:……お前も大概めんどくせぇな。……っ。 ひらり:っ!な、なに? 0:透はひらりを抱き寄せる 透:寒いんだろ?もっとくっつけよ ひらり:さ、寒いけど!暖かいけど!……近いよ 透:いつも俺にくっついてんだろーが ひらり:透からそういうのされるのは違うのー! 透:どういう意味だよ! ひらり:それくらいわかりなさいよ! 透:わかるわけねーだろ! ひらり:わかるようにしなさいよー! 透:ああ!もうめんどくせぇ! ひらり:あんたの方がめんどくせぇー! 0:【間】 0:場面転換。小雪は駅に向かう 小雪:お、おはよう 珀斗:ああ、来た……なんでサングラス? 小雪:いや、私には欠かせないアイテムだから 珀斗:よくわかんないけど外したら? 小雪:それは遠慮する 珀斗:なにそれ? 0:二人は新幹線に乗る 珀斗:新幹線なんて修学旅行以来だね 小雪:……そうだね 珀斗:白川さんは修学旅行の思い出ある? 小雪:……あんまり覚えてない…かも 珀斗:……そっか 0:そして、新幹線に乗り継ぎ 珀斗:じゃあ行こっか。ホワイトガーデンに 小雪:……うん 珀斗:……やっぱりそのサングラス取らない? 小雪:ど、どうして? 珀斗:え、えーと。言葉を選ぶなら…白川さんっぽくない 小雪:……そ、そんなはっきり言わなくても… 珀斗:ご、ごめん!そういうわけじゃ…… 小雪:……じゃあ、外す 珀斗:う、うん 0:小雪はサングラスを外す 珀斗:………っ 小雪:………あんまり見ないでよ 珀斗:ご、ごめん!つ、つい……あ!前髪あるの可愛いよ!凄く…似合ってる 小雪:………ありがとう 珀斗:服もオシャレだね 小雪:……うん。新しく買ったの 珀斗:今日のために買ってくれたの?嬉しいな 小雪:……は、早く行こ。私も今日は……ううん、何でもない 珀斗:……うん。行こうか 0:【間】 小雪:(M)もう既に辺りは白くなっている。歩く度に視界が小刻みに揺れているようだった。明るく見える外の様子は、ずっと暗闇の中に居た私には眩しすぎるくらいギラギラしていた 珀斗:(M)彼女の足は1歩ずつ、慎重に雪を踏み、歩いている。この道も、君と一緒に来たわけではないけど、懐かしく思える。だから、今この瞬間。君の思い出が僕で上書きされたらいいな。……なんて 小雪:……… 珀斗:白川さん。大丈夫? 小雪:うん。大丈夫 珀斗:怖くない? 小雪:……怖い 珀斗:じゃあ…僕の手を握ってて 小雪:……うん 0:小雪と珀斗は手を繋ぐ 珀斗:着いたよ…ホワイトガーデンに 小雪:……… 珀斗:白川さん? 小雪:………(震えている) 珀斗:目を開けられない? 小雪:………開けられない 珀斗:……こっちに来て 小雪:……っ 0:珀斗はダウンのチャックを下ろし、広げ、小雪の視界を覆い隠す 珀斗:ほら、目、開けてみて 小雪:………何してるの? 珀斗:あはは。今は白川さんと僕だけの世界だよ 小雪:……… 珀斗:この場所で……僕と出会った 小雪:……そう、だね 珀斗:そして…この場所で…お父さんと写真を撮った 小雪:……うん 珀斗:この写真。見てくれる? 小雪:……これは? 珀斗:君と…君のお父さんの写真だよ 小雪:……いやだ…見たくない 珀斗:大丈夫。僕の言葉を聞いて欲しい 小雪:……なに? 珀斗:この写真を撮った時…君のお父さんが…なんて言ったかわかる? 小雪:……何? 珀斗:……本当に、小雪の笑顔は可愛いって言ってた 小雪:………え? 珀斗:僕のカメラで写真を撮った時、写真を確認するために見てもらったんだ。その時に、小さな声でそう言っていた 小雪:………そんな…。ならなんで…お父さんは 珀斗:………それは僕にはわからない。…けど…写真を見ると…君のお父さんは絶対に、君の笑顔が好きなんだってわかる。だから…見て欲しいんだ 小雪:……… 0:小雪は恐る恐る写真を見る 小雪:………っ 珀斗:……ね?どう見えた? 小雪:………笑ってる 珀斗:そう。君は僕の顔を見てくれたからかな?お父さんの顔もちゃんと見れるようになったね 小雪:……うん。……ちゃんと…私の顔を見て…笑ってくれてる 珀斗:君のお父さんは君の笑顔が好きなんだ。これは嘘じゃないって僕は思う。 小雪:………そうだね 珀斗:じゃあ…5年前に見た景色を…一緒に見よう 小雪:……うん 珀斗:……行くよ 0:珀斗は小雪から離れる 小雪:………っ 珀斗:……… 小雪:………うっ…ううぅ……(泣く) 珀斗:……白川さん… 小雪:……凄く…綺麗な景色…… 珀斗:……うん。そうだね 小雪:………でも 珀斗:……… 小雪:……やっぱり……怖い… 珀斗:………白川さん 小雪:……もう…見れないよ…あの頃みたいに…笑顔にはなれない 珀斗:………見なくても…いいよ。ごめんね、白川さん 小雪:………うっ…ううぅ…… 珀斗:白川さん! 0:珀斗は小雪を抱きしめる 珀斗:……君を不安にさせて…本当にごめん 小雪:……不安になんかなってない…。私が弱いだけだから… 珀斗:ううん。そんな事ないよ。5年前からずっと、君は何も見なかったから。それでいきなりこの景色を見るのは…怖いに決まってる…。それは僕にもわかってたけど……僕が居れば大丈夫だって思ってた…。けど……やっぱり独りよがりだった 小雪:……ううん。私のためを思ってやってくれたって…わかってる。今年はこの景色を見れるように私も覚悟を決めたから 0:小雪は珀斗から少し離れる 小雪:今は…私はあなたの事、よく見える。……私は…あなたとなら……見れなかった景色も…きっと見ることが出来るよ 珀斗:………なら、また来年……この場所に行こう 小雪:………うん。…また行きたい 珀斗:また何かを見るのが怖くなった時は…その時は……僕の事を見てて欲しい。僕は…僕だけは…君の事を見てるから 小雪:……うん。ありがとう……。来年は…二人で写真を撮って、収めようね 小雪:あなたと二人で…クリスマスフィルムに 0:【間】 0:月日が経って5年後 珀斗:……よし、準備はいい? 0:珀斗はダウンのチャックを下ろし広げる 小雪:うん。ありがとう。5年も経ってるんだし、もうそんな事しなくても大丈夫だよ。 珀斗:ええ?これは恒例行事にしたいんだよ 小雪:でも、毎年これがあるから心の準備は出来る気もするよ 珀斗:ちょっとドキドキするもんね。じゃあ行くよ。せーの! 0:珀斗は小雪から離れる 小雪:わあ!綺麗! 珀斗:な、なんか去年よりも豪華になってない!? 小雪:5年事に変わるのかもね 珀斗:そんなことあるのかな?まあ、いいや 珀斗:小雪、ちょっとこっち来て 小雪:うん 珀斗:じゃあ撮るよ。はい、チーズ 小雪:撮れた? 珀斗:うん。見てみる? 小雪:……んー。もう1回 珀斗:ええ!?なんでよ、可愛いじゃん 小雪:なんか違う気がするの 珀斗:相変わらず写真のこだわり強いなー。じゃあ行くよー?はい、チーズ ひらり:いえーい! 珀斗:え? 小雪:……あなた ひらり:ひひっ。びっくりした? 小雪:びっくりするよー。なんで居るの? ひらり:ここのイルミネーション有名でしょ?今年はここに行こうって透と決めてたの 透:よう。夏野 珀斗:冬野だよ。もうわざとでしょ? 透:ああ、存在感薄くて忘れてたわ 珀斗:君、僕のインスタフォローしてきたよね? 透:あ、ああ。なんとなくな ひらり:てか、透、最近冬野のこと珀斗って呼んでるしね 透:お、おい!それ言うな! 小雪:……ぷっ!あっははは! ひらり:ん?小雪が笑ってる 珀斗:いつも笑ってるよ。小雪は 透:昔は何があっても無表情だったのになー 珀斗:よく笑うようになったよ 小雪:うん。そうだよ。珀斗のおかげでね 透:そりゃあ何よりで ひらり:ラブラブだねぇー 珀斗:よかったら君たちも写真撮る? ひらり:さんせーい! 透:早く撮れよー? 小雪:珀斗もこっちおいで 珀斗:うん。じゃあ撮るよー。はい、チーズ 0:4人は満面の笑みで写真を撮る 0:【間】 小雪:(M)真っ白に染まった景色は綺麗で、キラキラしてて、ふわふわで。それでも…私にはそれが怖かった。まるで視界の中心が渦を巻くように歪んで見えていたから 小雪:(M)それでも…怖いと思っていた景色でも、あなたと一緒なら景色は一転して変わった。 小雪:(M)それは綺麗だけでは言い表せれない特別な感情を抱くようになったからかも知れない。ずっとあなたを見てきて、ずっと私を見てくれたから。 小雪:(M)もう答えは決まってる。愛した人と見る景色は、どんな恐怖もどんなトラウマも溶かして、また新しい雪が降るように上書きされる。同じ景色でも違って見える 小雪:(M)そう。愛した人と一緒に居ると、笑顔になれるんだって、珀斗と一緒に居てわかった。だから、この幸せな瞬間を一つの写真に収めて、形を作りたいと思う 珀斗:小雪 小雪:ん?なに? 珀斗:愛してる 小雪:……私もだよ。珀斗 0:君と二人でクリスマスフィルムに