台本概要

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タイトル そば屋の出前
作者名 cyxalis  (@cyxalis)
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(男1) ※兼役あり
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 朗読台本(男)5分

ふと、おじいちゃんが穏やかに話しかけてきた。
「君は、そば屋の出前という言葉を知っているかい?」

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
おじいちゃん 8 1950年代生まれ。1970年代に働き盛りそして2023年には75歳前後のAmazonを使いこなすおじいちゃん。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:君は「そば屋の出前」という言葉を知ってるかい? 0:ちょいとじいちゃんが話してやろう。 0:そう嫌な顔しないで。 おじいちゃん:さぁさぁ、ちょっと腹ごなしの小咄をば。 おじいちゃん:君は「そば屋の出前」という例えをご存じか。 おじいちゃん:今はあまり使われない言葉にございます、この言葉。 おじいちゃん:私がちょちょいのちょいっと、現代(いま)風に話してご覧にいれましょう。 0:「そば屋の出前」 おじいちゃん:そば屋の出前といえば何が魅力か。 おじいちゃん:やはり。やはり早く食べれることでしょう。 おじいちゃん:私はせっかち者(もん)でして。昼はさ・さ・と済ませてしまいたい。 おじいちゃん:午後の仕事が気になって気になって腰を下ろして優雅に……とは出来んのです。 おじいちゃん:こうみえて私は仕事熱心でしてね。 おじいちゃん:昔はよく、そば屋の出前を頼んだものです。 0:(視線をそらして昔話をする) おじいちゃん:そば屋の出前というのは、他ほかと比べてわりかし柔軟でして。 おじいちゃん:昼に頼んでも快(こころよ)く受けてくださる。 おじいちゃん:しかしながらこのせっかちめ。 おじいちゃん:5分と待っていられんのです。 おじいちゃん:3分後には「まだか。」なんて電話をかけて。 おじいちゃん:仕事の算段をたててはまた電話をかけちまう。 おじいちゃん:りんりんりん、とね。 おじいちゃん:まこと、不肖ながらなおせん癖(くせ)にございます。 おじいちゃん:そば屋も電話のたびに「今でました。」とおっしゃる。 0:(目をつむって想像するように) おじいちゃん:あぁ。あぁ。想像がつきます。 おじいちゃん:りんりんりん、と電話が鳴ってそば屋が「今でました。」という。 おじいちゃん:その後ろでは、ちゃりんちゃりんちゃりん、と自転車が鈴を鳴らして出前に出ていく。 おじいちゃん:りんりんりん、ちゃりんちゃりんちゃりん、りんりんりん、ちゃりんちゃりんちゃりん。 おじいちゃん:しかしながら、その出前が私のそばなのかはわからない。 0:(一拍。相手の返答を聞く) おじいちゃん:分かっております。分かっておりますとも。 おじいちゃん:そば屋に電話をかけても仕方がないなんてことは。 おじいちゃん:ですが電話をかけずにはおられんのです。 おじいちゃん:電話をかけて道の通りに立っては、人の顔をつぶさに眺めます。 おじいちゃん:あれがそば屋か?これがそば屋か? おじいちゃん:  おじいちゃん:そんな私を人々は黙って通り過ぎるのです。 おじいちゃん:それを見ると腹が立ってきましてねぇ。 おじいちゃん:座って待ってはおられんかった。 おじいちゃん:いやはや、忙しない社会に置いてけぼりにされたようで。 0:(昔話から戻って視線が合う) おじいちゃん:君にとって おじいちゃん:忙しない社会に置いてけぼりにされたと感じることって何でしょうね。 0:(一拍。考えて。) おじいちゃん:例えるなら置き配でしょうか。 おじいちゃん:現代(いま)の配達の方々はとても偉(えら)くってですねぇ。 おじいちゃん:りんりんと電話を鳴らせば、車ですーぐにいらっしゃる。 おじいちゃん:ピンポーンと呼び鈴を鳴らして、さ・さ・と配達しては次にいく。 おじいちゃん:ですが、置き配には呼び鈴を鳴らさず、玄関にスッと置いていかれる方々がいらっしゃる。 おじいちゃん:こちらはしっかり椅子にお尻をあずけて座っているものですから、このことに腹も立ちようがありません。 おじいちゃん:ただ、いかんせん侘わびしいのです。 おじいちゃん:寂しく感じます。 0:(一拍。思い出すかのように) おじいちゃん:りんりんりん。ちゃりんちゃりんちゃりん。 おじいちゃん:そう、きっと。そば屋は私のなぐさめだったのです。 0:だからじいちゃんの話聞いてな!!!

0:君は「そば屋の出前」という言葉を知ってるかい? 0:ちょいとじいちゃんが話してやろう。 0:そう嫌な顔しないで。 おじいちゃん:さぁさぁ、ちょっと腹ごなしの小咄をば。 おじいちゃん:君は「そば屋の出前」という例えをご存じか。 おじいちゃん:今はあまり使われない言葉にございます、この言葉。 おじいちゃん:私がちょちょいのちょいっと、現代(いま)風に話してご覧にいれましょう。 0:「そば屋の出前」 おじいちゃん:そば屋の出前といえば何が魅力か。 おじいちゃん:やはり。やはり早く食べれることでしょう。 おじいちゃん:私はせっかち者(もん)でして。昼はさ・さ・と済ませてしまいたい。 おじいちゃん:午後の仕事が気になって気になって腰を下ろして優雅に……とは出来んのです。 おじいちゃん:こうみえて私は仕事熱心でしてね。 おじいちゃん:昔はよく、そば屋の出前を頼んだものです。 0:(視線をそらして昔話をする) おじいちゃん:そば屋の出前というのは、他ほかと比べてわりかし柔軟でして。 おじいちゃん:昼に頼んでも快(こころよ)く受けてくださる。 おじいちゃん:しかしながらこのせっかちめ。 おじいちゃん:5分と待っていられんのです。 おじいちゃん:3分後には「まだか。」なんて電話をかけて。 おじいちゃん:仕事の算段をたててはまた電話をかけちまう。 おじいちゃん:りんりんりん、とね。 おじいちゃん:まこと、不肖ながらなおせん癖(くせ)にございます。 おじいちゃん:そば屋も電話のたびに「今でました。」とおっしゃる。 0:(目をつむって想像するように) おじいちゃん:あぁ。あぁ。想像がつきます。 おじいちゃん:りんりんりん、と電話が鳴ってそば屋が「今でました。」という。 おじいちゃん:その後ろでは、ちゃりんちゃりんちゃりん、と自転車が鈴を鳴らして出前に出ていく。 おじいちゃん:りんりんりん、ちゃりんちゃりんちゃりん、りんりんりん、ちゃりんちゃりんちゃりん。 おじいちゃん:しかしながら、その出前が私のそばなのかはわからない。 0:(一拍。相手の返答を聞く) おじいちゃん:分かっております。分かっておりますとも。 おじいちゃん:そば屋に電話をかけても仕方がないなんてことは。 おじいちゃん:ですが電話をかけずにはおられんのです。 おじいちゃん:電話をかけて道の通りに立っては、人の顔をつぶさに眺めます。 おじいちゃん:あれがそば屋か?これがそば屋か? おじいちゃん:  おじいちゃん:そんな私を人々は黙って通り過ぎるのです。 おじいちゃん:それを見ると腹が立ってきましてねぇ。 おじいちゃん:座って待ってはおられんかった。 おじいちゃん:いやはや、忙しない社会に置いてけぼりにされたようで。 0:(昔話から戻って視線が合う) おじいちゃん:君にとって おじいちゃん:忙しない社会に置いてけぼりにされたと感じることって何でしょうね。 0:(一拍。考えて。) おじいちゃん:例えるなら置き配でしょうか。 おじいちゃん:現代(いま)の配達の方々はとても偉(えら)くってですねぇ。 おじいちゃん:りんりんと電話を鳴らせば、車ですーぐにいらっしゃる。 おじいちゃん:ピンポーンと呼び鈴を鳴らして、さ・さ・と配達しては次にいく。 おじいちゃん:ですが、置き配には呼び鈴を鳴らさず、玄関にスッと置いていかれる方々がいらっしゃる。 おじいちゃん:こちらはしっかり椅子にお尻をあずけて座っているものですから、このことに腹も立ちようがありません。 おじいちゃん:ただ、いかんせん侘わびしいのです。 おじいちゃん:寂しく感じます。 0:(一拍。思い出すかのように) おじいちゃん:りんりんりん。ちゃりんちゃりんちゃりん。 おじいちゃん:そう、きっと。そば屋は私のなぐさめだったのです。 0:だからじいちゃんの話聞いてな!!!