台本概要
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タイトル | 雪積もり、雪は解け |
---|---|
作者名 | 瓶の人 (@binbintumeru) |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
12月24日、クリスマスイブ 幸せな冬の日に灯りを 雪解けに、灯りを ※注意事項 ●過度なアドリブ、改変をしたい場合(キャラクターの性転換、セリフを丸々変える等)はご連絡下さい。 ●男性が女性キャラを女性として、女性が男性キャラを男性として演じる際や語尾等の軽微な改変はご連絡不要です。 ●配信等でご利用される場合は、可能であれば作者名、作品名、掲載サイトのURLを提示して頂けると幸いです。 ●全力で楽しんで下さると幸いです。 434 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
灯香 | 女 | 95 | 灯香(とうか)20歳以上 とある会社のOL 散々な恋愛事情を経験してきている |
雪治 | 男 | 80 | 雪治(ゆきじ)20歳以上 灯香をナンパしてきた素性不明の男 パッと見は爽やかな雰囲気 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
灯香:【N】12月24日
灯香:世間一般ではクリスマスイブと呼ばれる日で、恋人や家族が幸せな時間を過ごす日とされている…らしい
灯香:私には恋人もいないし、家族とも疎遠で連絡も取っていないしで幸せな時間なんてものとは縁遠い
灯香:すれ違うカップルや家族達の笑顔を見ると、心の中でモヤがかかるようで顔を下に向けたくなる
0:
雪治:「お姉さん、1人?」
0:
灯香:【N】後ろから声をかけてきたのは1人の男
灯香:パッと見は爽やかな雰囲気だけど、一瞬目の奥に感じる得体の知れなさに背筋がゾッとした
0:
雪治:「もし暇だったらさ、一緒に飲まない?近くに良い店あるんだ。」
灯香:「は、はあ…」
0:
灯香:【N】身体目的かなんなのかは知らない、でもどうせ用事なんか無いし1回だけなら…と思ってしまった
0:
灯香:「じゃあ、教えてもらってもいいですか。」
雪治:「…っ!分かった、じゃあ着いてきて。お姉さんみたいな綺麗な女性が1人で居るなんて勿体ないよ、今夜はたくさん飲もう!」
0:
灯香:【N】私は彼に連れられ近くのバーに向かった
0:
0:
0:
0:
0:
雪治:「へー、灯香さんって言うんだ。見た目通りの綺麗な名前だね。俺は雪治って言うんだ。雪に治るで雪治。」
灯香:「今の季節にピッタリだね。」
雪治:「そう、俺の1年のピークは今だけなんだ。雪降る季節に現れて、身も心も治すってね。」
灯香:「まるでヒーローみたい。」
雪治:「ヒーローか……そんな事言ってくれたのは灯香さんが初めてだよ。」
灯香:「そうなの?」
雪治:「他の人は笑って終わりか、変な人って言うだけだからね。」
灯香:「変な人って思うのは否定はしないかな。」
雪治:「え、そんなぁ…」
灯香:「だってそうでしょ?いきなり街中でナンパしてくる人だし。」
雪治:「それに着いてきた灯香さんも相当だと思うけど?」
灯香:「…それもそうだね……」
雪治:「…っぷ…はははは…」
灯香:「な、なに…?なんで笑ってんの。」
雪治:「いやなんか、天然というかなんというか…面白くて可愛い人なんだなって思って。」
灯香:「どういう意味…」
雪治:「今言った通りだよ、灯香さんは可愛いんだよ。」
灯香:「……意味わかんない…」
雪治:「あ、照れてる?」
灯香:「別に……」
雪治:「はは…頑固だね。そういや灯香さんはなんで聖なる夜に1人で歩いてたの?こんなに綺麗な人なら恋人の1人や2人は居るでしょ?」
灯香:「…私に恋人なんて居ない。こんな女なんかに。」
雪治:「こんなって。」
灯香:「何してもヘマするし、後輩に好きな人を取られるし、自分の事が汚いって思えて嫌になっちゃう。」
雪治:「人間皆良い所ばかりじゃないし、悪い面もあるから支え合って行けるんじゃないかな?」
灯香:「口ではそう言えても実際はそう上手くいくもんじゃない。」
雪治:「……ねえ、灯香さん。」
灯香:「…なに?」
雪治:「良かったら今夜、俺を灯香さんだけのヒーローにしてくれないかな?」
灯香:「…なにそれ、急に。変なの。」
雪治:「我ながらキザなセリフだと思うよ。灯香さんの全部、俺が受け止めてあげる。」
灯香:「……私も変な人に着いていく変な人だから人の事言えないけどね。受け止められる物なら受け止めて見て。私のヒーロー。」
0:
灯香:【N】雪の降る季節、12月24日クリスマスイブ
灯香:私は雪に包まれ、雪と共に解けていった
0:
0:
0:2日後
灯香:【N】クリスマスを終え、世間は年越しムードに早変わりをしていた
灯香:電飾やツリーは消え門松や正月の曲で街を染めていた
0:
灯香:「私の気持ちもこんな風に切り替えられたらいいのに。」
0:
灯香:【N】私はまだあの夜の事が忘れられずにいた
灯香:1夜だけ、そう思って受け入れたはずなのに私の頭は、身体はあの男性の事から離れられないでいる
0:
灯香:「忘れなきゃ…」
雪治:「何を忘れるんです?」
灯香:「きゃあ!?」
雪治:「そんなに驚かれると悲しいなぁ。」
灯香:「ご、ごめんなさい…あ、あなたは…」
雪治:「こんにちは灯香さん。あの時はごめんね、先に帰って。」
灯香:「いえ、別に……」
0:
灯香:【N】目の前に現れた男性は、クリスマスイブに1夜を共にした人
灯香:私が未だに忘れられないでいる人
0:
雪治:「こんな昼間にまた会うなんて奇遇だね。お休みかな?」
灯香:「え、あ、はい。」
雪治:「なんで敬語なの?もしかして会えて嬉しくなかった?」
灯香:「そ!そんな事無い!!」
雪治:「……ははは!そんなに勢いよく言って貰えるなんて嬉しいな。」
灯香:「あ…えっと……これは…」
雪治:「俺に会いたかったんだ?」
灯香:「……えと…」
雪治:「どうなの?」
灯香:「………会いたかった…」
雪治:「っ…!」
灯香:「どうしても…あの日の事が忘れられなくて……その…また会えたらいいなって思って…その…」
雪治:「そうなんだ…もう……灯香さんさぁ…」
灯香:「え?」
雪治:「可愛すぎるんだってば…なんでこんなに可愛いかなぁ…もう少し自分の魅力に気づいた方がいいよ。」
灯香:「ええ?えっと…」
雪治:「ごめん灯香さん、ちょっと着いてきて。」
灯香:「えっ!?ちょ、まっ!!」
0:灯香の腕を掴んで進んでいく雪治
灯香:「どこに行くの!?」
雪治:「行けばわかるさ。」
0:
0:ホテルの前に着く2人
灯香:「ここって……あの…」
雪治:「今日を最後にもう会わない、約束しよう。」
灯香:「え?」
雪治:「そもそもが1夜だけの関係なんだ。灯香さんには素敵な人が絶対いる。灯香さんが求めるなら、今だけまたキミのヒーローにさせて欲しい。」
灯香:「そんなの………」
雪治:「どうする?」
灯香:「そんな聞き方…ズルい………最後にまた…私のヒーローになって…」
雪治:「……うん、もちろん…」
0:
灯香:【N】いけないって分かってる。こんな関係はやめた方がいい。
灯香:それでも私は、私の身体は彼を求めている。
灯香:まだ日が降り注ぐ中、私の身体と心は雪に埋もれていった
0:
0:
0:
0:
0:年を越え、1月半ば
灯香:【N】すっかり正月ムードも終え、世間も落ち着いてきた頃
灯香:私の気持ちは落ち着かないでいた
0:
灯香:「雪治さん…会いたい……」
0:
灯香:【N】私は2回目を共にしてからというもの、彼に心が傾いてしまった
灯香:毎日私は彼を思い続け、彼と初めて行ったバーやホテル、思いつく所を探し周った
灯香:しかし一向に見つけることは出来なかった
灯香:あの時が最後なのは分かっている、でもせめてもう1回一目で良いから会いたい
0:
灯香:「雪治さん……」
0:
0:
0:12月
灯香:【N】月日が流れ12月
灯香:私が彼に初めて会った日から1年が経とうとしていた
灯香:クリスマスイブというのもあり、街は電飾に彩られ華やかになっていた
0:
灯香:「雪治さん…」
0:
灯香:【N】廃れていた私の心を満たしてくれた彼の名前を呟いた、すると後ろから声をかけられた
0:
雪治:「呼びました?」
灯香:「っ!?」
0:
灯香:【N】声がした方に振り返ると、そこにはずっと会いたかった彼に姿があった
0:
灯香:「雪治…さん…」
雪治:「久しぶり…灯香さん。」
灯香:「雪治さん!!」
雪治:「おっと、急に抱き着かれるなんて…本当にヒーローになった気分だよ。」
灯香:「どこに行ってたの!なんで居なくなっちゃうの…会いたかった…会いたかったよ……」
雪治:「いったでしょ、俺たちはそもそもが1夜限りの関係なんだって。本当はそう何度も会っちゃいけないんだ。」
灯香:「だったら、1夜限りの関係じゃなくなればいい。」
雪治:「え?」
灯香:「付き合おう、私達。そうすればずっと一緒に居られるんだよね?」
雪治:「…本当に?本当に俺と付き合ってくれるの?一緒に居てくれるの?」
灯香:「うん、ずっと一緒にいる、一緒に居たいの!」
雪治:「そっか…ありがとう灯香さん………」
灯香:「雪治さん…好き、大好き…愛してる…」
雪治:「俺もだよ…灯香さん。ねえ、灯香さん。」
灯香:「なに?」
雪治:「せっかく付き合ったんだ、一緒に行きたい所があるんだけどいいかな?」
灯香:「うん、どこ?」
雪治:「着いたら分かるよ。」
0:
0:
0:
0:
0:
灯香:「………ん……ここ、どこ…」
0:
灯香:【N】目を覚ますと辺りは薄暗くハッキリと見えない
灯香:辛うじてわかるのは、どこかの建物内という事だけ
0:
灯香:「手足が縛られてる…?誰か、雪治さん!助けて!!」
雪治:「そんなに大声を出さなくても聞こえてるよ。」
灯香:「雪治さん!良かった、そこに居るんだね!手足を縛られてるの早く解いて!」
雪治:「知ってるよ、だって手足を縛ったのは俺なんだから。」
灯香:「え…どういう事…?」
雪治:「やっとだよ、やっと灯香…キミを俺の物に出来るんだ。」
灯香:「雪治…さん?」
雪治:「行為をする度に媚薬を使って俺に気持ちが向くようにしてさ、案外効果は早く出るもんだね。」
灯香:「なに、どういう冗談?そういうおふざけは今はいいから早く助けてよ!」
雪治:「おふざけ…?ふざけてるのはお前だろ…灯香…」
灯香:「…え?」
雪治:「早乙女冬乃(さおとめ ふゆの)。この名前を知ってるか?」
灯香:「っ!!」
雪治:「忘れたなんて言わせねえよ。お前が殺したんだからな。」
灯香:「なんで…早乙女さんとどういう関係…」
雪治:「俺と冬乃は恋人同士だった、将来を誓い合うほどに毎日充実してた。お前と会うまではな。」
灯香:「……っ」
雪治:「大学卒業後に就職をして、その会社で冬乃とお前は初めて会った。言ってたよ、素敵な先輩で良かったって。
雪治:でもその数か月後、徐々に冬乃に異変が起きたんだ。食事が喉を通らなくなって、吐く事も多くなって目に生気を感じなくなっていった。
雪治:頑なに何があったか聞いても答えなかった冬乃を何とかして説得して吐かせた。そしたら……お前に嫌がらせを受けていたと言った。」
灯香:「…っ……早乙女さん…彼女は優秀な子だった。容姿も能力も非常に優秀で周りからも期待されてた。それが羨ましかった…」
雪治:「そんな事で冬乃を…」
灯香:「そんな事でも私にとっては大きな事なの!!それに…私が狙っていた中村さんとも仲良さげにしてて……あんな程度の嫌がらせで弱っていく彼女も彼女なんじゃないの!?」
雪治:「そんなガキみたいな理由で冬乃を殺したのかお前はぁあああ!!!」
0:灯香の腹を蹴る雪治
灯香:「がっ…はっ…!!!」
0:何度も灯香を蹴り続ける
雪治:「お前は!!冬乃が!!どんな思いで居たか!!分かるか!!きっといつか分かってくれるってお前を信じて耐えていたんだ!!どんなに苦しくても、死にたくなっても何度も何度も何度も何度もお前を信じて耐えたんだ!!」
灯香:「…あ……が………」
雪治:「はあ…はあ…はあ……でもお前からの嫌がらせは止まることなく、むしろヒートアップしていった…」
灯香:「う…ぐぁ……はあ…はあ…あの子……ずっと笑顔だったから…それが、怖くて…純粋なあの目が………笑顔が怖くて…
灯香:私はこんなに…汚れてるのに……なんでこの子はこんなに…綺麗なんだろうって……」
雪治:「だからお前は……冬乃を…」
灯香:「……ぐちゃぐちゃにしたくて…給湯器のお湯で顔を火傷させた後に…カッターで…切って……屋上から…突き落とした……」
雪治:「…そして仲間内で話を合わせてアリバイを作ってうやむやにさせたと……」
灯香:「……」
雪治:「今のは全部録音してある、お前の悪事もここまでだ灯香。」
灯香:「…しかたないね…」
雪治:「でもこんなんじゃ俺の復讐は終わらねえ。」
0:近くの台から給湯器を取り出す
灯香:「まって、あなた何しようとしてるの。」
雪治:「お前が冬乃にした事をそのまましてやるんだよ。」
灯香:「まって、ねえ!私はこのまま法に裁かれる!それでもう済む事でしょ!!」
雪治:「そんなん言ってる内は反省も何もしねえだろ、それにその程度じゃ俺の怒りは収まらねえって言ってんだ。」
0:横たわる灯香の顔に熱湯をかける
灯香:「ぎゃあああああああ!!!!熱い!!熱いいいいい!!」
雪治:「熱いだろう、冬乃も同じように熱かったはずだ。苦しかったはずだ。それでもお前は止めなかったんだろ?」
灯香:「んんグアアぁあああああ!!!助け…たすげえええええ!!!」
雪治:「せっかくの顔が台無しだな灯香。顔だけは良かったのにな。」
灯香:「ひ…ひぐ…ううっう……」
雪治:「泣いたってなにも変わんねえよ、冬乃を殺した事実も、これから起こることも何もかもな。」
0:カッターをポケットから取り出し、最大まで伸ばす
灯香:「や、やめ…!!」
雪治:「あんま動くと刺さるぞ?」
灯香:「痛っっ!!!!」
雪治:「こうか?こうやって傷をつけたのか?火傷の上からだから余計に痛いよな!?」
灯香:「痛い…痛いよぉ……許してぇ…お願いします…」
雪治:「お前はそう懇願する冬乃を許したのか?止めたのか?都合がよすぎないか?灯香、なあ?」
灯香:「…許してください……お願いします…お願いします…許して下さい……お願いします…お願いします……」
雪治:「…はあ………お前も人の事言えねえじゃねえか。『こんな程度の嫌がらせ』で弱るなんてよ。」
0:震えて丸くなっている灯香を担ぐ雪治、階段を上る
雪治:「冬乃…もうすぐ全部終わるからな。全部俺が終わりにしてやるからな。」
0:
0:
0:屋上
雪治:「さあ、着いたぞ。今夜はクリスマスイブ。見ろよ灯香、電飾が綺麗だぞ。」
灯香:「ごめんなさい……ごめんなさい…許してください…助けて…助けて……お願いします…」
雪治:「……そんじゃ、お前とはここで終わりだ。お互いに地獄で会おうな。そん時は友達にでもなれるといいな。」
0:灯香を落とす雪治
灯香:「ひっ!!」
雪治:「じゃあな。」
灯香:「いいいいいいやぁぁぁああああああああああああ!!!!」
0:何かが弾ける音と少し後に悲鳴が聞こえる
雪治:「さーて、面倒な事になる前に俺もズラかりますか。」
0:壁側に座り、カッターを取り出し、喉に当てる
雪治:「雪が降る季節に現れて、身も心も治す…か。そうお前に言われたけど、結局俺には誰も治せなかった。お前を助ける事が出来なかった
雪治:でも、お前は望んじゃいないだろうけどさ、やっと悪い奴を倒したんだ。これで少しでもお前の心を治せたらいいな。」
0:ポケットから冬乃の写真を取り、カッターで自身の喉を刺す
雪治:「っ!!……やっと、冬乃…お前の所に行ける……遅くなってごめんな……
雪治:ほら、ヒーローって遅れて現れる…もんだから……な……」
0:
0:
0:
雪治:【N】12月24日クリスマスイブ
雪治:それは、恋人、家族が楽しく幸せに過ごす聖なる1夜
0:
0:
灯香:【N】12月24日
灯香:世間一般ではクリスマスイブと呼ばれる日で、恋人や家族が幸せな時間を過ごす日とされている…らしい
灯香:私には恋人もいないし、家族とも疎遠で連絡も取っていないしで幸せな時間なんてものとは縁遠い
灯香:すれ違うカップルや家族達の笑顔を見ると、心の中でモヤがかかるようで顔を下に向けたくなる
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雪治:「お姉さん、1人?」
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灯香:【N】後ろから声をかけてきたのは1人の男
灯香:パッと見は爽やかな雰囲気だけど、一瞬目の奥に感じる得体の知れなさに背筋がゾッとした
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雪治:「もし暇だったらさ、一緒に飲まない?近くに良い店あるんだ。」
灯香:「は、はあ…」
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灯香:【N】身体目的かなんなのかは知らない、でもどうせ用事なんか無いし1回だけなら…と思ってしまった
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灯香:「じゃあ、教えてもらってもいいですか。」
雪治:「…っ!分かった、じゃあ着いてきて。お姉さんみたいな綺麗な女性が1人で居るなんて勿体ないよ、今夜はたくさん飲もう!」
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灯香:【N】私は彼に連れられ近くのバーに向かった
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雪治:「へー、灯香さんって言うんだ。見た目通りの綺麗な名前だね。俺は雪治って言うんだ。雪に治るで雪治。」
灯香:「今の季節にピッタリだね。」
雪治:「そう、俺の1年のピークは今だけなんだ。雪降る季節に現れて、身も心も治すってね。」
灯香:「まるでヒーローみたい。」
雪治:「ヒーローか……そんな事言ってくれたのは灯香さんが初めてだよ。」
灯香:「そうなの?」
雪治:「他の人は笑って終わりか、変な人って言うだけだからね。」
灯香:「変な人って思うのは否定はしないかな。」
雪治:「え、そんなぁ…」
灯香:「だってそうでしょ?いきなり街中でナンパしてくる人だし。」
雪治:「それに着いてきた灯香さんも相当だと思うけど?」
灯香:「…それもそうだね……」
雪治:「…っぷ…はははは…」
灯香:「な、なに…?なんで笑ってんの。」
雪治:「いやなんか、天然というかなんというか…面白くて可愛い人なんだなって思って。」
灯香:「どういう意味…」
雪治:「今言った通りだよ、灯香さんは可愛いんだよ。」
灯香:「……意味わかんない…」
雪治:「あ、照れてる?」
灯香:「別に……」
雪治:「はは…頑固だね。そういや灯香さんはなんで聖なる夜に1人で歩いてたの?こんなに綺麗な人なら恋人の1人や2人は居るでしょ?」
灯香:「…私に恋人なんて居ない。こんな女なんかに。」
雪治:「こんなって。」
灯香:「何してもヘマするし、後輩に好きな人を取られるし、自分の事が汚いって思えて嫌になっちゃう。」
雪治:「人間皆良い所ばかりじゃないし、悪い面もあるから支え合って行けるんじゃないかな?」
灯香:「口ではそう言えても実際はそう上手くいくもんじゃない。」
雪治:「……ねえ、灯香さん。」
灯香:「…なに?」
雪治:「良かったら今夜、俺を灯香さんだけのヒーローにしてくれないかな?」
灯香:「…なにそれ、急に。変なの。」
雪治:「我ながらキザなセリフだと思うよ。灯香さんの全部、俺が受け止めてあげる。」
灯香:「……私も変な人に着いていく変な人だから人の事言えないけどね。受け止められる物なら受け止めて見て。私のヒーロー。」
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灯香:【N】雪の降る季節、12月24日クリスマスイブ
灯香:私は雪に包まれ、雪と共に解けていった
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0:2日後
灯香:【N】クリスマスを終え、世間は年越しムードに早変わりをしていた
灯香:電飾やツリーは消え門松や正月の曲で街を染めていた
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灯香:「私の気持ちもこんな風に切り替えられたらいいのに。」
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灯香:【N】私はまだあの夜の事が忘れられずにいた
灯香:1夜だけ、そう思って受け入れたはずなのに私の頭は、身体はあの男性の事から離れられないでいる
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灯香:「忘れなきゃ…」
雪治:「何を忘れるんです?」
灯香:「きゃあ!?」
雪治:「そんなに驚かれると悲しいなぁ。」
灯香:「ご、ごめんなさい…あ、あなたは…」
雪治:「こんにちは灯香さん。あの時はごめんね、先に帰って。」
灯香:「いえ、別に……」
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灯香:【N】目の前に現れた男性は、クリスマスイブに1夜を共にした人
灯香:私が未だに忘れられないでいる人
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雪治:「こんな昼間にまた会うなんて奇遇だね。お休みかな?」
灯香:「え、あ、はい。」
雪治:「なんで敬語なの?もしかして会えて嬉しくなかった?」
灯香:「そ!そんな事無い!!」
雪治:「……ははは!そんなに勢いよく言って貰えるなんて嬉しいな。」
灯香:「あ…えっと……これは…」
雪治:「俺に会いたかったんだ?」
灯香:「……えと…」
雪治:「どうなの?」
灯香:「………会いたかった…」
雪治:「っ…!」
灯香:「どうしても…あの日の事が忘れられなくて……その…また会えたらいいなって思って…その…」
雪治:「そうなんだ…もう……灯香さんさぁ…」
灯香:「え?」
雪治:「可愛すぎるんだってば…なんでこんなに可愛いかなぁ…もう少し自分の魅力に気づいた方がいいよ。」
灯香:「ええ?えっと…」
雪治:「ごめん灯香さん、ちょっと着いてきて。」
灯香:「えっ!?ちょ、まっ!!」
0:灯香の腕を掴んで進んでいく雪治
灯香:「どこに行くの!?」
雪治:「行けばわかるさ。」
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0:ホテルの前に着く2人
灯香:「ここって……あの…」
雪治:「今日を最後にもう会わない、約束しよう。」
灯香:「え?」
雪治:「そもそもが1夜だけの関係なんだ。灯香さんには素敵な人が絶対いる。灯香さんが求めるなら、今だけまたキミのヒーローにさせて欲しい。」
灯香:「そんなの………」
雪治:「どうする?」
灯香:「そんな聞き方…ズルい………最後にまた…私のヒーローになって…」
雪治:「……うん、もちろん…」
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灯香:【N】いけないって分かってる。こんな関係はやめた方がいい。
灯香:それでも私は、私の身体は彼を求めている。
灯香:まだ日が降り注ぐ中、私の身体と心は雪に埋もれていった
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0:年を越え、1月半ば
灯香:【N】すっかり正月ムードも終え、世間も落ち着いてきた頃
灯香:私の気持ちは落ち着かないでいた
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灯香:「雪治さん…会いたい……」
0:
灯香:【N】私は2回目を共にしてからというもの、彼に心が傾いてしまった
灯香:毎日私は彼を思い続け、彼と初めて行ったバーやホテル、思いつく所を探し周った
灯香:しかし一向に見つけることは出来なかった
灯香:あの時が最後なのは分かっている、でもせめてもう1回一目で良いから会いたい
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灯香:「雪治さん……」
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0:12月
灯香:【N】月日が流れ12月
灯香:私が彼に初めて会った日から1年が経とうとしていた
灯香:クリスマスイブというのもあり、街は電飾に彩られ華やかになっていた
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灯香:「雪治さん…」
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灯香:【N】廃れていた私の心を満たしてくれた彼の名前を呟いた、すると後ろから声をかけられた
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雪治:「呼びました?」
灯香:「っ!?」
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灯香:【N】声がした方に振り返ると、そこにはずっと会いたかった彼に姿があった
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灯香:「雪治…さん…」
雪治:「久しぶり…灯香さん。」
灯香:「雪治さん!!」
雪治:「おっと、急に抱き着かれるなんて…本当にヒーローになった気分だよ。」
灯香:「どこに行ってたの!なんで居なくなっちゃうの…会いたかった…会いたかったよ……」
雪治:「いったでしょ、俺たちはそもそもが1夜限りの関係なんだって。本当はそう何度も会っちゃいけないんだ。」
灯香:「だったら、1夜限りの関係じゃなくなればいい。」
雪治:「え?」
灯香:「付き合おう、私達。そうすればずっと一緒に居られるんだよね?」
雪治:「…本当に?本当に俺と付き合ってくれるの?一緒に居てくれるの?」
灯香:「うん、ずっと一緒にいる、一緒に居たいの!」
雪治:「そっか…ありがとう灯香さん………」
灯香:「雪治さん…好き、大好き…愛してる…」
雪治:「俺もだよ…灯香さん。ねえ、灯香さん。」
灯香:「なに?」
雪治:「せっかく付き合ったんだ、一緒に行きたい所があるんだけどいいかな?」
灯香:「うん、どこ?」
雪治:「着いたら分かるよ。」
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灯香:「………ん……ここ、どこ…」
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灯香:【N】目を覚ますと辺りは薄暗くハッキリと見えない
灯香:辛うじてわかるのは、どこかの建物内という事だけ
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灯香:「手足が縛られてる…?誰か、雪治さん!助けて!!」
雪治:「そんなに大声を出さなくても聞こえてるよ。」
灯香:「雪治さん!良かった、そこに居るんだね!手足を縛られてるの早く解いて!」
雪治:「知ってるよ、だって手足を縛ったのは俺なんだから。」
灯香:「え…どういう事…?」
雪治:「やっとだよ、やっと灯香…キミを俺の物に出来るんだ。」
灯香:「雪治…さん?」
雪治:「行為をする度に媚薬を使って俺に気持ちが向くようにしてさ、案外効果は早く出るもんだね。」
灯香:「なに、どういう冗談?そういうおふざけは今はいいから早く助けてよ!」
雪治:「おふざけ…?ふざけてるのはお前だろ…灯香…」
灯香:「…え?」
雪治:「早乙女冬乃(さおとめ ふゆの)。この名前を知ってるか?」
灯香:「っ!!」
雪治:「忘れたなんて言わせねえよ。お前が殺したんだからな。」
灯香:「なんで…早乙女さんとどういう関係…」
雪治:「俺と冬乃は恋人同士だった、将来を誓い合うほどに毎日充実してた。お前と会うまではな。」
灯香:「……っ」
雪治:「大学卒業後に就職をして、その会社で冬乃とお前は初めて会った。言ってたよ、素敵な先輩で良かったって。
雪治:でもその数か月後、徐々に冬乃に異変が起きたんだ。食事が喉を通らなくなって、吐く事も多くなって目に生気を感じなくなっていった。
雪治:頑なに何があったか聞いても答えなかった冬乃を何とかして説得して吐かせた。そしたら……お前に嫌がらせを受けていたと言った。」
灯香:「…っ……早乙女さん…彼女は優秀な子だった。容姿も能力も非常に優秀で周りからも期待されてた。それが羨ましかった…」
雪治:「そんな事で冬乃を…」
灯香:「そんな事でも私にとっては大きな事なの!!それに…私が狙っていた中村さんとも仲良さげにしてて……あんな程度の嫌がらせで弱っていく彼女も彼女なんじゃないの!?」
雪治:「そんなガキみたいな理由で冬乃を殺したのかお前はぁあああ!!!」
0:灯香の腹を蹴る雪治
灯香:「がっ…はっ…!!!」
0:何度も灯香を蹴り続ける
雪治:「お前は!!冬乃が!!どんな思いで居たか!!分かるか!!きっといつか分かってくれるってお前を信じて耐えていたんだ!!どんなに苦しくても、死にたくなっても何度も何度も何度も何度もお前を信じて耐えたんだ!!」
灯香:「…あ……が………」
雪治:「はあ…はあ…はあ……でもお前からの嫌がらせは止まることなく、むしろヒートアップしていった…」
灯香:「う…ぐぁ……はあ…はあ…あの子……ずっと笑顔だったから…それが、怖くて…純粋なあの目が………笑顔が怖くて…
灯香:私はこんなに…汚れてるのに……なんでこの子はこんなに…綺麗なんだろうって……」
雪治:「だからお前は……冬乃を…」
灯香:「……ぐちゃぐちゃにしたくて…給湯器のお湯で顔を火傷させた後に…カッターで…切って……屋上から…突き落とした……」
雪治:「…そして仲間内で話を合わせてアリバイを作ってうやむやにさせたと……」
灯香:「……」
雪治:「今のは全部録音してある、お前の悪事もここまでだ灯香。」
灯香:「…しかたないね…」
雪治:「でもこんなんじゃ俺の復讐は終わらねえ。」
0:近くの台から給湯器を取り出す
灯香:「まって、あなた何しようとしてるの。」
雪治:「お前が冬乃にした事をそのまましてやるんだよ。」
灯香:「まって、ねえ!私はこのまま法に裁かれる!それでもう済む事でしょ!!」
雪治:「そんなん言ってる内は反省も何もしねえだろ、それにその程度じゃ俺の怒りは収まらねえって言ってんだ。」
0:横たわる灯香の顔に熱湯をかける
灯香:「ぎゃあああああああ!!!!熱い!!熱いいいいい!!」
雪治:「熱いだろう、冬乃も同じように熱かったはずだ。苦しかったはずだ。それでもお前は止めなかったんだろ?」
灯香:「んんグアアぁあああああ!!!助け…たすげえええええ!!!」
雪治:「せっかくの顔が台無しだな灯香。顔だけは良かったのにな。」
灯香:「ひ…ひぐ…ううっう……」
雪治:「泣いたってなにも変わんねえよ、冬乃を殺した事実も、これから起こることも何もかもな。」
0:カッターをポケットから取り出し、最大まで伸ばす
灯香:「や、やめ…!!」
雪治:「あんま動くと刺さるぞ?」
灯香:「痛っっ!!!!」
雪治:「こうか?こうやって傷をつけたのか?火傷の上からだから余計に痛いよな!?」
灯香:「痛い…痛いよぉ……許してぇ…お願いします…」
雪治:「お前はそう懇願する冬乃を許したのか?止めたのか?都合がよすぎないか?灯香、なあ?」
灯香:「…許してください……お願いします…お願いします…許して下さい……お願いします…お願いします……」
雪治:「…はあ………お前も人の事言えねえじゃねえか。『こんな程度の嫌がらせ』で弱るなんてよ。」
0:震えて丸くなっている灯香を担ぐ雪治、階段を上る
雪治:「冬乃…もうすぐ全部終わるからな。全部俺が終わりにしてやるからな。」
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0:屋上
雪治:「さあ、着いたぞ。今夜はクリスマスイブ。見ろよ灯香、電飾が綺麗だぞ。」
灯香:「ごめんなさい……ごめんなさい…許してください…助けて…助けて……お願いします…」
雪治:「……そんじゃ、お前とはここで終わりだ。お互いに地獄で会おうな。そん時は友達にでもなれるといいな。」
0:灯香を落とす雪治
灯香:「ひっ!!」
雪治:「じゃあな。」
灯香:「いいいいいいやぁぁぁああああああああああああ!!!!」
0:何かが弾ける音と少し後に悲鳴が聞こえる
雪治:「さーて、面倒な事になる前に俺もズラかりますか。」
0:壁側に座り、カッターを取り出し、喉に当てる
雪治:「雪が降る季節に現れて、身も心も治す…か。そうお前に言われたけど、結局俺には誰も治せなかった。お前を助ける事が出来なかった
雪治:でも、お前は望んじゃいないだろうけどさ、やっと悪い奴を倒したんだ。これで少しでもお前の心を治せたらいいな。」
0:ポケットから冬乃の写真を取り、カッターで自身の喉を刺す
雪治:「っ!!……やっと、冬乃…お前の所に行ける……遅くなってごめんな……
雪治:ほら、ヒーローって遅れて現れる…もんだから……な……」
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雪治:【N】12月24日クリスマスイブ
雪治:それは、恋人、家族が楽しく幸せに過ごす聖なる1夜
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