台本概要
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タイトル | 斜陽に咲いたスイートピー |
---|---|
作者名 | 雲猫 |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(女2) ※兼役あり |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
見つけてくれて感謝!雲猫の片割れの騒がしい方です!() こちら雲猫合作台本としてカクヨムに書いたものを、加筆修正したものになります。 ─簡単な説明 対極的だけど、どこか似てるような。そんなふたりの思い出です。 ─注意事項etc..... ・使用報告は任意ですが、あると喜びます。聞きたい。 ・キャラクターの性別変更は不可。演者さまの性別は問いません。 ・語尾、言い回しなど軽めの改変、アドリブなどご自由に。 ・BGMやSEの追加も歓迎です。 ・20分、としてますが実際はたぶん未満。 ・キリは “関西弁” で、兼役があります。 ・非商用利用時は連絡不要としてますが、商用利用って例えば何……?状態なので、とりあえずなにかあれば気軽に連絡をください… Xくんに資料置き場のリンクあります。 よければ参考程度にのぞいてみてください! X(旧Twitter)↓ 黒猫 @Kuroneko_0727_3 釣鐘 @TMHria_3wpi 351 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
キリ | 女 | 86 | 陽気に振る舞う女子。 関西弁。 |
カズサ | 女 | 98 | 本音バツバツ言うタイプの女子。 |
モブ | 女 | 6 | イキリ陽キャ。キリ役の方、兼役お願いします。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
カズサ:(初夏の日差しだけが明かりの旧校舎、私ひとりの空き教室。いつもの静寂は、突然破られた。)
キリ:「しつれーい……って、わあ。ざんねんざんねん……まぁえぇか。やっほー、君どちらさん?」
カズサ:「……」
キリ:「……あ、先に名乗るんが礼儀ってやつ?私キリ、はい名乗ったで!君は?」
カズサ:「どうっでもいい……早くどっか行って欲しいんだけど。」
キリ:「えぇ……酷いなぁ?ええやん、仲良うしよや。他に人おらんとことか知らんし。」
カズサ:「……私いるし。何?一軍サマに譲って、私がどっか行けって?」
キリ:「……そないなこと言うてへんねんけどなぁ。君こそ何や?私のこと嫌いか?そもそも話したことあったっけ?」
カズサ:「ないけど、あんたみたいなのはみんな嫌いだから。」
キリ:「うーん、私は結構、君とは仲良うなれそうやと思っとるけどね。」
カズサ:「……私はそう思わないし。」
キリ:「えー、私このままここでサボる気だったんやけど。えぇやん、ね?3限終わるまででええからちょっと付き合ぉてよ。」
カズサ:「はぁ……カズサ。」
キリ:「ん?……あ、名前?」
カズサ:「……3限の間だけだから。その後はどっか行って。」
キリ:「おおきに、考えとく!」
カズサ:「はぁ?……まぁいいや、あんたが残っても、私は3限終われば教室戻るし。」
キリ:「ま、私も戻るんやけどね。……んー、君は何が好きや?」
カズサ:「……そういう話、いる?」
キリ:「えー、何がええ?何の話する?」
カズサ:「知らない、私に聞かないでよ。」
キリ:「うーん。あ、好きなタイプとか?恋バナせぇへん?」
カズサ:「しない、興味ない。」
キリ:「えぇ……ほな好きな色!」
カズサ:「……オレンジ。」
キリ:「え、意外。」
カズサ:「……悪い?」
キリ:「いや?そこは自由やない?」
カズサ:「……あんたは、そう考えてくれるんだ。」(呟く)
キリ:「ん?堪忍な。聞き取れんかったわ。ちゅうか隣座ってええ?私ずっと突っ立ったままやった。」
カズサ:「……勝手にしたら?」
キリ:「……じぶん、反応ひやこいけどなんやかんや結構優しいな?」
カズサ:「ひやこ、い?……あ、冷たいってこと?」
キリ:「せやけど、わからへんかったかんじ?」
カズサ:「ひやこい?っての今まで聞いたことなかったし。」
キリ:「あー……まぁわからへんのんあかったら言うて。」
カズサ:「ん……あんたはどうなの?」
キリ:「ん?私?何が?」
カズサ:「色の話、私だけ答えるのも変でしょ。……てか、あんた以外に誰もいないと思うけど?」
キリ:「まぁさよか。……んー、よぉ好きそう言われるんはオレンジとか赤とか。」
カズサ:「……質問答えるの下手?」
キリ:「え、君がそれ言う?」
カズサ:「……私、返答はしてるんだけど。」
キリ:「ごめんやん。んー、何色やろか。なんかこれ!って色はないんやけど、オレンジも赤も嫌いやないで。」
カズサ:「ふーん……まぁそれも、自由か。」
キリ:「え。あー、うん。そっか。せやんな。」
カズサ:「……何?その反応。」
キリ:「いーや、気にせんとって!んーっと、ほんなら部活は?」
カズサ:「入ってない……あんたは?」
キリ:「私も入ってへんよ。面倒やし、……いろいろ。」
カズサ:「……部活入って青春しよー、とか言ってそうなのに。」
キリ:「いやいや、君ん中の私どんなイメージなん?」
カズサ:「陽キャ。」
キリ:「陽キャ……」
カズサ:「それ以外になんかある?」
キリ:「君、やっぱ結構酷いな?」
カズサ:「……いつでもここから出てっていいけど?」
キリ:「仲良うしよやって言うたんやけどぉ……?」
カズサ:「知らない、私は関わりたくないって言ったし。」
キリ:「……って言いながらちょっと楽しそうやん?よかったよかった。」
カズサ:「は、……あんたの勘違いでしょ。」
キリ:「またまた〜、行って欲しくないんやったらそう言えばええんやで?」
カズサ:「やっぱウザいから今すぐどっか行って。」
キリ:「酷いなぁ。」
カズサ:「……あんたも、酷いって言う割に声笑ってるよ?」
キリ:「なぁ、やっぱ私ら仲良うなれると思わん?」
カズサ:「……さぁね、仲良しごっこに興味はないし。」
キリ:「ごっこやなくて、仲良しは?」
カズサ:「……私、陽キャってそういう嘘が大好きな人間だと思ってるから。」
キリ:「うーん、まず君には、私が陽キャやなくて『キリ』って人間やって、わかってもらった方がええかも。」
カズサ:「どうでもいい。」
キリ:「……わかった!君が私と仲良うする気なるまで、ここ来るから!」
カズサ:「はぁ?なんでそうなるの?」
キリ:「いーや、もう決めた!頑張るから!」
カズサ:「そんなとこ頑張んないでいい!」
キリ:「あ、そろそろ3限終わるな。んじゃ、またね〜。」
カズサ:「私は、あんたみたいなやつと仲良くする気はないの!」
キリ:「そう言いながら一緒に来るんや?」
カズサ:「方向同じなんだから仕方ないでしょ……!?じゃあね!」
キリ:「ありゃ、行ってもうた。」
キリ:(それから、昼休みとか、たまにサボって空き教室に行くんがちょっと楽しみになりよった。)
カズサ:(先にいたり、少し遅れて来たり。でも、いつも来る変な奴。)
0:間。
キリ:「やっとる〜?」
カズサ:「……居酒屋か。」
キリ:「おお……!」
カズサ:「おおじゃない……なんで来たの?なんで私がいるタイミングわかるわけ?」
キリ:「んー?私言うたやん、君が私と仲良うする気になるまで、嫌でも来たる〜って。ほんでな、タイミングは……」
カズサ:「……タイミングは?」
キリ:「ただの勘!」
カズサ:「はぁ……そこまで貯めて勘かよ。毎回とか本当に勘なの?」
キリ:「え、じゃあ運命?」
カズサ:「そういうことじゃない。」
キリ:「……ふふ。」
カズサ:「……何?」
キリ:「なーんも?」
カズサ:「はぁ……」
キリ:「あれ、なんかすんの?」
カズサ:「……」
キリ:「……まぁええや。」
カズサ:「……あんたはなんかしないの?」
キリ:「え、あー……んー。」
カズサ:「日本語喋ってくれる?」
キリ:「いやぁ、うん……」
カズサ:「別に、言いたくないこと言おうとしなくていい。……あんたにどうしても聞きたいことなんてないし?」
キリ:「それはそれで悲しいで……!?」
カズサ:「……めんど。」
キリ:「ひどぉ。いや……さ、人に囲まれて生きてきたもんで。」
カズサ:「え、自慢?」
キリ:「全然自慢できへんよ。おかげでひとりんときなんしたらええんか、わからんくなってもうてね。」
カズサ:「好きなこととか、ないの?」
キリ:「……わからん。」
カズサ:「……じゃあこれ、貸してあげる。暇つぶしにはなるでしょ。」
キリ:「これ君見とる途中やないの?」
カズサ:「何周もしてるし……ほとんど写真で、少し文章あるだけだし。」
キリ:「へぇ……すごいな、めっちゃ好きってことやん。」
カズサ:「……」
キリ:「え、そこで黙るん?」
カズサ:「うっさい……見終わったら、あんたの感想教えてよ。あ、ここで嘘ついたらもう二度とあんたと会話しない。」
キリ:「……私、結構嘘つくん上手いで?」
カズサ:「……それ、しばらく持ってていいよ。待ってるから。じゃ、私もう戻る。」
キリ:「え?ちょっ、またね!」
カズサ:(なんとなく、何を考えてるのか気になっただけだ。)
キリ:(ほの暗いところに、手を伸ばされたような。せやけど、嫌な気はせぇへんかった。)
0:間。
カズサ:「……ねぇ、あんた、ここいていいの?」
キリ:「え、なんで?」
カズサ:「おともだちとなかよしこよしする方が、楽しいものなんでしょ?」
キリ:「……」
カズサ:「私はあんたが来なくなれば、静かに過ごせるし。」
キリ:「君と仲良うなりたいねんよ、私は。」
カズサ:「……やっぱり陽キャの考えはよくわかんない。」
キリ:「私も君のことわからへん!せやけど、たぶん君と私は仲良うなれるで。」
カズサ:「……意味わかんない。けど……まぁ、ここにいること、あんたのおともだちには言わないでよ。」
キリ:「気ぃつけとく!」
カズサ:「はぁ……」
キリ:「やっぱ君、優しいよ。」
カズサ:「……あんたくらいだけどね、そう言うの。」
キリ:「うそぉ?」
カズサ:「ほんと。……あ、チャイム。」
キリ:「おっと。じゃ、またね。」
カズサ:「ん、またね……」
キリ:「!うん、またね!!」
カズサ:「うるさ。」
キリ:(ちょっとだけ冷たくて、せやけど拒まれはしぃひん。それが、ちょうどよかった。)
カズサ:(私を優しいと思えるあんたが、ちょっと眩しい。でも、嫌ではない。やっぱり、変な奴。)
0:間。
キリ:「……」
カズサ:「……手、止まってるけどいいの?」
キリ:「……え?あ、ごめんちょっと考え事しとった。」
カズサ:「ふーん……ねぇ、あんた夏休みって暇?」
キリ:「……夏休み。」
カズサ:「夏休み。」
キリ:「あー、えっと。結構いろいろ予定あんねん!……ごめん。」
カズサ:「そ、まぁ全然いいんだけど。あと……いいや、なんでもない。」
キリ:「……うん。」
0:間。放課後。
キリ:(もし、は考えへん。せやけど、もし、この出会いが運命なら。)
キリ:「……せやけど、そら誰にもわからへんこと。だから、せめて……終わっちゃう前に、これくらいはさして。」
キリ:(スイートピーの柄が入ったシャーペン。ここでは、よくつこた。君は、知ってるはずやろ?カズサ。)
0:少しの間。
キリ:「……もっと、はよ出会えてたらなぁ。」(呟く)
カズサ:「……あれ、あんたも忘れ物?てかなんか言ってた?」
キリ:「あのさ。この本、もうちょっと借りててもええ?」
カズサ:「ん?いいよ、感想言うときに返してくれたらそれで。」
キリ:「……おおきに。」
カズサ:「……今日、なんか変じゃない?大丈夫?」
キリ:「いつか、海行ってみたいなあ。」
カズサ:「海?……一緒に行く?」
キリ:「ね、聞いてや?」
カズサ:「聞いてるよ。ほんっと答えるの下手……」
キリ:「私は、君と話すん、結構好きやよ。」
カズサ:「急に何……?」
キリ:「なんか、楽やからさ。」
カズサ:「……まぁ、私も楽だけど。」
キリ:「そっ、かぁ。よかった……」
カズサ:「いや、ほんとに何?」
キリ:「……カズサ!じゃあね。」
カズサ:「え?ああ、うん……?」
0:間。
カズサ:(次の日、あんたは来なかった。廊下を通ったとき、休みかな、って誰かが言ったのが聞こえた。)
カズサ:(終業式の日も来なくて、一学期が終わって、夏休みが終わっても。)
0:間。始業式から数日後の昼休み。
カズサ:(……今日も来ない、な。いや、別に約束とかしてないけど。)
カズサ:「……あ〜もう、気になるでしょ……!」
0:少しの間。廊下。
カズサ:(うるさ……でもいるなら、目立つしすぐ見つかるはず。いないの?)
モブ:「……あーてかさ、キリ?あいつやっと転校したらしいね〜。」
カズサ:「……は、?」
モブ:「うざかったよね、ほんっといなくなって清々した!なんかアホそうな顔してるくせに点数いいし。変なとこ突っかかって来るからみんなから悪口言われてかわいそーすぎ!」
カズサ:「……ねえ。」
モブ:「ん?……どしたのー?珍しいね。」
カズサ:(嫌い。そのこっちを下に見てるみたいな態度も、薄っぺらい笑顔も、喋り方も……)
カズサ:「あんたの顔の方がアホそうだよ。あーごめんごめん、アホそう、じゃなくて正真正銘のアホか。」
カズサ:(自分よりすごい奴みーんな貶さないと生きらんないとこも、全部嫌い、大っ嫌い。)
モブ:「は?いや何、急に。あ、こういうの聞くと黙ってらんないタイプ?そんないい子で優しいキャラだったんだ?」
カズサ:「いい子?はは、そう見える?」
0:顔をぐっと近づける。
カズサ:「……あいつは、キリは、あんたよりよっっぽど賢くて優しくて、努力もしてんの。ろくに努力してない癖にぴーぴー喚いてるあんたとは違う。」
モブ:「は……」
カズサ:「何も知らないのに決めつけんな、ばーか。」
モブ:「なっ、うるさいサボり魔!陰キャの癖に!」
カズサ:「はいはい、じゃあね。またはないことを願ってる。」
0:モブから手を離して、空き教室に戻る。
カズサ:「あーあ、目立たないようにやってきたのに。あんたに影響されたかなぁ。」
0:3月、放課後。空き教室。
カズサ:「……もうすぐ、卒業か。」
カズサ:「ひとりで時間潰すの、少し下手になったかも。……あんたのせいだよ?」
カズサ:「……ちゃんと言わないでさ、ほんと自分勝手。そういうとこ、嫌いだった。」
カズサ:「……あんたのこと悪く言ってた奴にさ、何を知ってるんだって私怒ったけど。私も、知らないことばっかだって気づいた。」
カズサ:「面倒だしうざいし、なんていうか眩しいし。でも、あんたと過ごすの、嫌いじゃないよ。」
カズサ:「忘れ物してんの、気づいてる?私そんなに優しくないし、もう待ってられないけど。」
カズサ:「運命、なんでしょ。だからさ。」
0:斜陽の差し込む空き教室、人影はひとつ。
カズサ:「……またね、キリ。」
カズサ:(初夏の日差しだけが明かりの旧校舎、私ひとりの空き教室。いつもの静寂は、突然破られた。)
キリ:「しつれーい……って、わあ。ざんねんざんねん……まぁえぇか。やっほー、君どちらさん?」
カズサ:「……」
キリ:「……あ、先に名乗るんが礼儀ってやつ?私キリ、はい名乗ったで!君は?」
カズサ:「どうっでもいい……早くどっか行って欲しいんだけど。」
キリ:「えぇ……酷いなぁ?ええやん、仲良うしよや。他に人おらんとことか知らんし。」
カズサ:「……私いるし。何?一軍サマに譲って、私がどっか行けって?」
キリ:「……そないなこと言うてへんねんけどなぁ。君こそ何や?私のこと嫌いか?そもそも話したことあったっけ?」
カズサ:「ないけど、あんたみたいなのはみんな嫌いだから。」
キリ:「うーん、私は結構、君とは仲良うなれそうやと思っとるけどね。」
カズサ:「……私はそう思わないし。」
キリ:「えー、私このままここでサボる気だったんやけど。えぇやん、ね?3限終わるまででええからちょっと付き合ぉてよ。」
カズサ:「はぁ……カズサ。」
キリ:「ん?……あ、名前?」
カズサ:「……3限の間だけだから。その後はどっか行って。」
キリ:「おおきに、考えとく!」
カズサ:「はぁ?……まぁいいや、あんたが残っても、私は3限終われば教室戻るし。」
キリ:「ま、私も戻るんやけどね。……んー、君は何が好きや?」
カズサ:「……そういう話、いる?」
キリ:「えー、何がええ?何の話する?」
カズサ:「知らない、私に聞かないでよ。」
キリ:「うーん。あ、好きなタイプとか?恋バナせぇへん?」
カズサ:「しない、興味ない。」
キリ:「えぇ……ほな好きな色!」
カズサ:「……オレンジ。」
キリ:「え、意外。」
カズサ:「……悪い?」
キリ:「いや?そこは自由やない?」
カズサ:「……あんたは、そう考えてくれるんだ。」(呟く)
キリ:「ん?堪忍な。聞き取れんかったわ。ちゅうか隣座ってええ?私ずっと突っ立ったままやった。」
カズサ:「……勝手にしたら?」
キリ:「……じぶん、反応ひやこいけどなんやかんや結構優しいな?」
カズサ:「ひやこ、い?……あ、冷たいってこと?」
キリ:「せやけど、わからへんかったかんじ?」
カズサ:「ひやこい?っての今まで聞いたことなかったし。」
キリ:「あー……まぁわからへんのんあかったら言うて。」
カズサ:「ん……あんたはどうなの?」
キリ:「ん?私?何が?」
カズサ:「色の話、私だけ答えるのも変でしょ。……てか、あんた以外に誰もいないと思うけど?」
キリ:「まぁさよか。……んー、よぉ好きそう言われるんはオレンジとか赤とか。」
カズサ:「……質問答えるの下手?」
キリ:「え、君がそれ言う?」
カズサ:「……私、返答はしてるんだけど。」
キリ:「ごめんやん。んー、何色やろか。なんかこれ!って色はないんやけど、オレンジも赤も嫌いやないで。」
カズサ:「ふーん……まぁそれも、自由か。」
キリ:「え。あー、うん。そっか。せやんな。」
カズサ:「……何?その反応。」
キリ:「いーや、気にせんとって!んーっと、ほんなら部活は?」
カズサ:「入ってない……あんたは?」
キリ:「私も入ってへんよ。面倒やし、……いろいろ。」
カズサ:「……部活入って青春しよー、とか言ってそうなのに。」
キリ:「いやいや、君ん中の私どんなイメージなん?」
カズサ:「陽キャ。」
キリ:「陽キャ……」
カズサ:「それ以外になんかある?」
キリ:「君、やっぱ結構酷いな?」
カズサ:「……いつでもここから出てっていいけど?」
キリ:「仲良うしよやって言うたんやけどぉ……?」
カズサ:「知らない、私は関わりたくないって言ったし。」
キリ:「……って言いながらちょっと楽しそうやん?よかったよかった。」
カズサ:「は、……あんたの勘違いでしょ。」
キリ:「またまた〜、行って欲しくないんやったらそう言えばええんやで?」
カズサ:「やっぱウザいから今すぐどっか行って。」
キリ:「酷いなぁ。」
カズサ:「……あんたも、酷いって言う割に声笑ってるよ?」
キリ:「なぁ、やっぱ私ら仲良うなれると思わん?」
カズサ:「……さぁね、仲良しごっこに興味はないし。」
キリ:「ごっこやなくて、仲良しは?」
カズサ:「……私、陽キャってそういう嘘が大好きな人間だと思ってるから。」
キリ:「うーん、まず君には、私が陽キャやなくて『キリ』って人間やって、わかってもらった方がええかも。」
カズサ:「どうでもいい。」
キリ:「……わかった!君が私と仲良うする気なるまで、ここ来るから!」
カズサ:「はぁ?なんでそうなるの?」
キリ:「いーや、もう決めた!頑張るから!」
カズサ:「そんなとこ頑張んないでいい!」
キリ:「あ、そろそろ3限終わるな。んじゃ、またね〜。」
カズサ:「私は、あんたみたいなやつと仲良くする気はないの!」
キリ:「そう言いながら一緒に来るんや?」
カズサ:「方向同じなんだから仕方ないでしょ……!?じゃあね!」
キリ:「ありゃ、行ってもうた。」
キリ:(それから、昼休みとか、たまにサボって空き教室に行くんがちょっと楽しみになりよった。)
カズサ:(先にいたり、少し遅れて来たり。でも、いつも来る変な奴。)
0:間。
キリ:「やっとる〜?」
カズサ:「……居酒屋か。」
キリ:「おお……!」
カズサ:「おおじゃない……なんで来たの?なんで私がいるタイミングわかるわけ?」
キリ:「んー?私言うたやん、君が私と仲良うする気になるまで、嫌でも来たる〜って。ほんでな、タイミングは……」
カズサ:「……タイミングは?」
キリ:「ただの勘!」
カズサ:「はぁ……そこまで貯めて勘かよ。毎回とか本当に勘なの?」
キリ:「え、じゃあ運命?」
カズサ:「そういうことじゃない。」
キリ:「……ふふ。」
カズサ:「……何?」
キリ:「なーんも?」
カズサ:「はぁ……」
キリ:「あれ、なんかすんの?」
カズサ:「……」
キリ:「……まぁええや。」
カズサ:「……あんたはなんかしないの?」
キリ:「え、あー……んー。」
カズサ:「日本語喋ってくれる?」
キリ:「いやぁ、うん……」
カズサ:「別に、言いたくないこと言おうとしなくていい。……あんたにどうしても聞きたいことなんてないし?」
キリ:「それはそれで悲しいで……!?」
カズサ:「……めんど。」
キリ:「ひどぉ。いや……さ、人に囲まれて生きてきたもんで。」
カズサ:「え、自慢?」
キリ:「全然自慢できへんよ。おかげでひとりんときなんしたらええんか、わからんくなってもうてね。」
カズサ:「好きなこととか、ないの?」
キリ:「……わからん。」
カズサ:「……じゃあこれ、貸してあげる。暇つぶしにはなるでしょ。」
キリ:「これ君見とる途中やないの?」
カズサ:「何周もしてるし……ほとんど写真で、少し文章あるだけだし。」
キリ:「へぇ……すごいな、めっちゃ好きってことやん。」
カズサ:「……」
キリ:「え、そこで黙るん?」
カズサ:「うっさい……見終わったら、あんたの感想教えてよ。あ、ここで嘘ついたらもう二度とあんたと会話しない。」
キリ:「……私、結構嘘つくん上手いで?」
カズサ:「……それ、しばらく持ってていいよ。待ってるから。じゃ、私もう戻る。」
キリ:「え?ちょっ、またね!」
カズサ:(なんとなく、何を考えてるのか気になっただけだ。)
キリ:(ほの暗いところに、手を伸ばされたような。せやけど、嫌な気はせぇへんかった。)
0:間。
カズサ:「……ねぇ、あんた、ここいていいの?」
キリ:「え、なんで?」
カズサ:「おともだちとなかよしこよしする方が、楽しいものなんでしょ?」
キリ:「……」
カズサ:「私はあんたが来なくなれば、静かに過ごせるし。」
キリ:「君と仲良うなりたいねんよ、私は。」
カズサ:「……やっぱり陽キャの考えはよくわかんない。」
キリ:「私も君のことわからへん!せやけど、たぶん君と私は仲良うなれるで。」
カズサ:「……意味わかんない。けど……まぁ、ここにいること、あんたのおともだちには言わないでよ。」
キリ:「気ぃつけとく!」
カズサ:「はぁ……」
キリ:「やっぱ君、優しいよ。」
カズサ:「……あんたくらいだけどね、そう言うの。」
キリ:「うそぉ?」
カズサ:「ほんと。……あ、チャイム。」
キリ:「おっと。じゃ、またね。」
カズサ:「ん、またね……」
キリ:「!うん、またね!!」
カズサ:「うるさ。」
キリ:(ちょっとだけ冷たくて、せやけど拒まれはしぃひん。それが、ちょうどよかった。)
カズサ:(私を優しいと思えるあんたが、ちょっと眩しい。でも、嫌ではない。やっぱり、変な奴。)
0:間。
キリ:「……」
カズサ:「……手、止まってるけどいいの?」
キリ:「……え?あ、ごめんちょっと考え事しとった。」
カズサ:「ふーん……ねぇ、あんた夏休みって暇?」
キリ:「……夏休み。」
カズサ:「夏休み。」
キリ:「あー、えっと。結構いろいろ予定あんねん!……ごめん。」
カズサ:「そ、まぁ全然いいんだけど。あと……いいや、なんでもない。」
キリ:「……うん。」
0:間。放課後。
キリ:(もし、は考えへん。せやけど、もし、この出会いが運命なら。)
キリ:「……せやけど、そら誰にもわからへんこと。だから、せめて……終わっちゃう前に、これくらいはさして。」
キリ:(スイートピーの柄が入ったシャーペン。ここでは、よくつこた。君は、知ってるはずやろ?カズサ。)
0:少しの間。
キリ:「……もっと、はよ出会えてたらなぁ。」(呟く)
カズサ:「……あれ、あんたも忘れ物?てかなんか言ってた?」
キリ:「あのさ。この本、もうちょっと借りててもええ?」
カズサ:「ん?いいよ、感想言うときに返してくれたらそれで。」
キリ:「……おおきに。」
カズサ:「……今日、なんか変じゃない?大丈夫?」
キリ:「いつか、海行ってみたいなあ。」
カズサ:「海?……一緒に行く?」
キリ:「ね、聞いてや?」
カズサ:「聞いてるよ。ほんっと答えるの下手……」
キリ:「私は、君と話すん、結構好きやよ。」
カズサ:「急に何……?」
キリ:「なんか、楽やからさ。」
カズサ:「……まぁ、私も楽だけど。」
キリ:「そっ、かぁ。よかった……」
カズサ:「いや、ほんとに何?」
キリ:「……カズサ!じゃあね。」
カズサ:「え?ああ、うん……?」
0:間。
カズサ:(次の日、あんたは来なかった。廊下を通ったとき、休みかな、って誰かが言ったのが聞こえた。)
カズサ:(終業式の日も来なくて、一学期が終わって、夏休みが終わっても。)
0:間。始業式から数日後の昼休み。
カズサ:(……今日も来ない、な。いや、別に約束とかしてないけど。)
カズサ:「……あ〜もう、気になるでしょ……!」
0:少しの間。廊下。
カズサ:(うるさ……でもいるなら、目立つしすぐ見つかるはず。いないの?)
モブ:「……あーてかさ、キリ?あいつやっと転校したらしいね〜。」
カズサ:「……は、?」
モブ:「うざかったよね、ほんっといなくなって清々した!なんかアホそうな顔してるくせに点数いいし。変なとこ突っかかって来るからみんなから悪口言われてかわいそーすぎ!」
カズサ:「……ねえ。」
モブ:「ん?……どしたのー?珍しいね。」
カズサ:(嫌い。そのこっちを下に見てるみたいな態度も、薄っぺらい笑顔も、喋り方も……)
カズサ:「あんたの顔の方がアホそうだよ。あーごめんごめん、アホそう、じゃなくて正真正銘のアホか。」
カズサ:(自分よりすごい奴みーんな貶さないと生きらんないとこも、全部嫌い、大っ嫌い。)
モブ:「は?いや何、急に。あ、こういうの聞くと黙ってらんないタイプ?そんないい子で優しいキャラだったんだ?」
カズサ:「いい子?はは、そう見える?」
0:顔をぐっと近づける。
カズサ:「……あいつは、キリは、あんたよりよっっぽど賢くて優しくて、努力もしてんの。ろくに努力してない癖にぴーぴー喚いてるあんたとは違う。」
モブ:「は……」
カズサ:「何も知らないのに決めつけんな、ばーか。」
モブ:「なっ、うるさいサボり魔!陰キャの癖に!」
カズサ:「はいはい、じゃあね。またはないことを願ってる。」
0:モブから手を離して、空き教室に戻る。
カズサ:「あーあ、目立たないようにやってきたのに。あんたに影響されたかなぁ。」
0:3月、放課後。空き教室。
カズサ:「……もうすぐ、卒業か。」
カズサ:「ひとりで時間潰すの、少し下手になったかも。……あんたのせいだよ?」
カズサ:「……ちゃんと言わないでさ、ほんと自分勝手。そういうとこ、嫌いだった。」
カズサ:「……あんたのこと悪く言ってた奴にさ、何を知ってるんだって私怒ったけど。私も、知らないことばっかだって気づいた。」
カズサ:「面倒だしうざいし、なんていうか眩しいし。でも、あんたと過ごすの、嫌いじゃないよ。」
カズサ:「忘れ物してんの、気づいてる?私そんなに優しくないし、もう待ってられないけど。」
カズサ:「運命、なんでしょ。だからさ。」
0:斜陽の差し込む空き教室、人影はひとつ。
カズサ:「……またね、キリ。」