台本概要

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タイトル コンビニでバイトが間違ってカボチャを2000個発注してしまった話
作者名 熊野むっち  (@mucchi_0908)
ジャンル コメディ
演者人数 3人用台本(男3)
時間 20 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 【声劇配信時の規約】
・配信時に作者名および作品名を記載
※上記一点のみ必ずご対応くだされば、作者への連絡は不要です。
(投げ銭の有無、有償無償に関わらず)

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
店長 62 コンビニ店の店長
番場 38 コンビニ店の店員
早川 53 コンビニ店の店員
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
 :【コンビニでバイトが間違ってカボチャを2000個発注してしまった話】(作・くまのムッチ) : : :登場人物 : 店長: 店長:(配役が決まったらここをタップしてください) : 番場: 番場:(配役が決まったらここをタップしてください) : 早川: 早川:(配役が決まったらここをタップしてください) : : 0:コンビニの店内。 0:店内は平積みされたダンボールが所狭しと並んでいる。 0:そしてそこはかとなく漂う険悪な空気。 : : 店長:ねえ?どうすんの!? : 番場:えっ?はあ…… : 店長:はあ…じゃないよ!これ一体どうすんのって言ってんの!? : : 0:ドンと壁を平手で叩く。 0:ゴロゴロと音を立てて崩れ落ちるカボチャの山。 : : 早川:ああああ… : 店長:君さー!これ見て何も思わない訳!? 店長:ねえ!?これ見てさ、何か一言くらいあるよねー!? : 番場:あー、カボチャッスね。 : 店長:そう!カボチャだね!カボチャ! 店長:君の発注ミスで店内に陳列しきれない程に溢れかえったカボチャ計2000個だねえ! : 番場:はあ……でも、 : 店長:でもじゃねえよ!この野郎! 店長:この状況でなんでまだ「でも」が出るんだ!まずは店長すいませんでしただろーがよー! : 早川:ちょ!店長!手え出しちゃマズいですって! : 店長:やらせてくれ早川くん!もういっそコイツに手え出させてくれ! : 番場:うわ…ヤバ。 : 店長:んだとテメー!! : 早川:ちょちょちょ店長!落ち着いてください! 早川:番場君もさ、ちょっとだけ静かにしてよっかー。 : 番場:ウッス。 : 早川:店長も、ほら、まずは何でこんな事になっちゃったか、番場君から事情を聞き取りしましょうよ。 : 店長:(ふうふうと息を切らせて言葉も出ない店長) : 早川:番場君。 : 番場:ウス。 : 早川:今朝、どうしてこの店に2000個のカボチャが納品されたかって話なんだけど、 : 番場:いや、マジヤバかったッスね。早川さん。 番場:(笑いをこらえながら) 番場:配達業者の人がトラックと店、何回も往復して、カボチャどんどん積み上げてくもんだから、(思い出し笑い)ブフ…ウケる。 : 店長:ウケる、じゃねえよ! : 早川:(たしなめて)店長! : 店長:グッ… : 早川:そもそもなんだけどさ、番場君。 : 番場:ウス。 : 早川:ウチってさ、コンビニだよね。 : 番場:そうッスね。 : 早川:カボチャ売ってるコンビニって、あんま見ないと思うんだけど、 : 番場:はあ… : 早川:なんでカボチャをこんなに発注かけちゃったの?って話もあるんだけど、それ以前にウチの店って普段、カボチャ置いてないよねって言う…… : 番場:あー、それはシフトリーダーの渡邊さんが、 : 店長:え?渡邊くん?なんでそこで渡邊くんの名前が出てくるの? : 番場:渡邊さんが、ハロウィンフェア用にカボチャ発注しとけって。店長指示で。 : 店長:え、俺そんな事、言ってないよ。 : 番場:えー、言ってたもん渡邊さん。 : 早川:ちょっと待ってください店長。ハロウィンフェアって事はもしかして……。 : 店長:(何か思い当たるフシがある)……あ! : 早川:店長、渡邊さんに何か発注の指示、したんじゃないですか? : 店長:…そういや言ったわ。 店長:ハロウィンフェア用に発売される新商品の、カボチャプリン発注しといてって…。 : 番場:ほらー!言ったでしょー! : 店長:いや、待て待て待て待て待てー!! 店長: 店長:俺が渡邊に頼んだのは「カボチャプリン」 店長:んで、ここに山積みされてるのは「カボチャ」だろー!! : 早川:どうしてこうなった…。 : 番場:あれ?俺確かに渡邊さんに「カボチャ」と「プリン」発注かけといてって言われたんだけどなあ……。 : 店長:いやお前!どこの世界にカボチャプリンって言われて、カボチャとプリン別々に頼むやつがいんだよ! 店長:だったら何か!?お前メロンパン買ってこいって言ったら、メロンとパン別々に買ってくんのか!? 店長:いちご大福買ってこいって言ったら、イチゴと大福買ってくんのか!? 店長:(次第に興奮して)しろくまアイス買ってこいって言ったら、シロクマとアイス買ってくんのかー!? : 番場:いや、シロクマなんて売ってねえし。ウケる。 : 店長:だからウケてんじゃねえー!!物の例えだろコラー! 店長:あと、数もおかしいだろ!何がどうなって2000個になるんだ!?例えカボチャプリンだったとしても2000個は多すぎだろ! : 番場:あー、数字は、普通に間違えたッス。 : 店長:テメエぶっ殺すぞコノヤロー!! : 早川:だから落ち着いてくださいって、店長! 早川:カボチャなら、ハロウィンまでだったら、なんとか需要ありませんかね? : 店長:…今日何日だ? : 早川:えっと……今日は10月26日ですね。 : 店長:ハロウィンは今月の31日だから、うわー、あと5日しかないじゃん。 : 早川:いやでも、カボチャならカットしなきゃ1、2カ月は保存できるから、じっくり時間をかけて売ってくってのもアリですよね? : 店長:それだとこの大量のカボチャの代金は、どうやって払うんだよ!? 店長:すぐにこのカボチャを現金に変えなきゃ、店が潰れちまう!! : 番場:えー!マジスか店長! 番場:じゃあ俺のバイト代、どうなるんですか? : 店長:お前が言うな! : 早川:いずれにしろ、タイムリミットは5日間って事ですね……。 : 店長:どうすんだよ~!こんなの無理に決まってんじゃん~。もう絶望しかねえわ~! : 早川:店長、SNSに投稿してみるってのはどうでしょうか? : 店長:SNS? : 早川:ほら?誤発注した商品をズラーッと並べた写真を載せて「誤発注してしまいました。助けてください」ってSNSで呼びかけたりしてるの、見た事ありませんか? : 番場:あ、それ見た事ある!棚いっぱいに同じ商品並べんのな。 : 店長:(訝しげに)それって、効果あるの? : 早川:SNSで一気に拡散されれば、普段ウチの店を利用しない人が買いに来てくれる、なんて事もあるかもしれません! : 店長:それだそれー!早川くん!それやってみよ~!! : 早川:それじゃあ早速このカボチャの山の写真を撮影して、お店のアカウントからアップしましょう!店長、お願いします! : 店長:…え?……アカウント? 店長:ごめん、早川くん。俺ガラケーだからわかんない! : 早川:すぐに作りましょう!じゃあアカウントは私が作りますんで店長は早く写真を! : 店長:ああ!わかった! : : 0:少しの間(時間経過) : : 早川:えっと「間違ってカボチャを2000個発注してしまいました。助けてください。拡散希望」っと。 : 店長:これでホントにみんなが来てくれるの!?すごいねー! : 早川:いや、今作ったばかりのアカウントなんで、さすがにそれはないと思います。フォロワーも全然いないし。 早川:(スマホの画面を見て)……え…あれ? : 店長:どうしたの!? : 早川:なんかいきなり拡散されてます!……すごい!でも一体なんで? : 番場:あー、それ多分、自分ッスね。 : 店長:え!? : 番場:自分がさっきの記事RT(リツイート)したんで。 番場:ほら、この最初にRTしたアカウント、これ、自分なんで。 : 早川:えっ、この「バルコン番場」っていうのが番場君なの!?…フォロワー2.2万人って…すご! : 店長:え!?それってすごいの? : 早川:ええ、フォロワー2万人超えだったら、地方のミニコミ紙ぐらいの拡散力があるんです!もうこれは立派なインフルエンサーですよ! : 番場:(得意気に)何回もバズってますから。拡散力には定評があるッス。 : 店長:実はすごいヤツだったんだな! 店長:ただのヤル気のない、人生舐めたバイトだと思ってたよー! : 早川:でも、番場くん、何呟いたらこんなにすごいフォロワー数になるの? : 番場:あー、そりゃ簡単ッス。ネットでバズったツイート見つけたら、とりあえず画像とか動画を保存しといて、ほとぼりが冷めた頃に全く同じ内容で呟くんですよ~!これで、バズりも自由自在ッス! : 早川:…それ、ただのパクツイじゃん……。 : 店長:俺、あんまりそういうの詳しくないけど、番場がネットもリアルもどうしようもない奴だっていうのは、なんとなく分かったよ……。 : 早川:あー!でもでも!番場くんのRTのおかげで、すごい拡散されてます!さっきから通知が止まりません! : 店長:とりあえず、でかした番場!!これであとはこのツイート見た人が買いに来てくれるかだな。 : 早川:はい。さっきの投稿にたくさんコメント付いてるんで、順番に読んでいきますね。 早川: 早川:(読み上げる)ええと、 早川: 早川:「コンビニスイーツとかだったら興味あるけどさすがにカボチャは持て余すな」 早川: 早川:「いくらハロウィン前だからって、こんなにカボチャいらないwww」 早川: 早川:「カボチャ2000個ってさすがに草。発注した人無能すぎん?」 早川: 早川:駄目だ……すごい勢いで拡散はされてるんだけど、不思議な事に全く肯定的に受け止められてない……。 : 店長:なんだよ~!バズったら在庫が全部ハケるんじゃなかったのかー! : 番場:おっし!じゃあここで「万バズの番場」がリプライつけて流れ変えるッスわ。 番場:(ドヤ顔で)番場、動きます。 番場: 番場:(少し考えて)えーっと、 番場:「俺、ここの店員なんだけど、人助けだと思ってみんな買いに来て! 番場:5日以内に、このカボチャ全然売れなかったら店潰れちゃうんだって!」 番場:投稿っと。 : 早川:あっ、またコメントがたくさんつき始めた。やっぱり番場くんの影響力すごい! : 番場:(得意気) : 早川:読み上げます! 早川: 早川:「うるせー!パクツイ野郎!」 早川: 早川:「パクツイばっかしてる人のバ先ってなんか怪しすぎなんだけど」 早川: 早川:「ほんとだ。じゃあこの写真も拾いもんじゃね?釣り?」 早川: 早川:…どうやら番場君のリプライを皮切りにこの投稿そのものの信憑性が疑われ始めたみたいです!! : 店長:なんだよ逆効果じゃねえかよ〜!!何が「番場、動きます」だ!! 店長:おしまいだ……俺の…店が…… : 番場:え~!来月シフト増やしてくれって言ってたのに~ : 店長:うるせえ!黙ってろ!お前は例え店が潰れなかったとしてもクビだっ! : 早川:ああっ! : 店長:今度はどうした!? : 早川:こ、これは!我々にとって有益な情報かもしれないんで読み上げますね! 早川: 早川:(読み上げる) 早川:「はじめまして。FF外から失礼します。 早川:奥秩父山地の秘境で毎年行われている、奇祭【奥秩父アボボラ祭】をご存知ですか? 早川: 早川:【奥秩父アボボラ祭】では主神【カンボーディア】の生誕の日に、【プレアリアチア・ナーチャッカンプチアの儀】という儀式を執り行うのですが…… : 店長:なんだよ【奥秩父アボボラ祭】って!そんなの聞いた事ないよ! : 早川:最後まで聞いてください! 早川:(読み上げる) 早川:この【プレアリアチア・ナーチャッカンプチアの儀】では、人間の首をカボチャに見立てて、カボチャを供物として捧げるのです。是非こちらの【奥秩父アボボラ祭】に参加されてみてはいかがでしょうか。 早川: 早川:…だそうです。 : 番場:…こっわ! : 店長:いや!怖い怖い! 店長:なんだよ!【主神カンボーディア】って!完全にやべえやつじゃん! : 早川:店長、ここもう一回読んでみてください。 : 店長:えっと…「人間の首をカボチャに見立てて…」いやだから怖いんだって! : 早川:落ち着いてください、店長。ほらここに「カボチャを供物として捧げる」って書いてあるでしょ。 : 店長:あ、ほんとだ。 : 早川:この「奥秩父アボボラ祭」でウチのカボチャを販売させてもらえませんかね? : 店長:ええーー!? : 早川:確かに突飛な発想かもしれませんけど、これが現状を打破するきっかけになるかもしれません! : 店長:そんな事言ったってさあ。 : 番場:どうせこのままだと店は潰れちゃうんだし、ワンチャンこれに賭けてみるってのもアリっすね! : 店長:お前が言うな!! : 早川:店長、ご決断を! : 店長:…わかった!わかったよー!(致し方なく)…行くよ。 店長:行くぞ!「奥秩父アボボラ祭」でカボチャ2000個売りきるぞー!! : 0:間(時間経過) : 店長:(モノローグ)我々が奥秩父山地の秘境で見た「奥秩父アボボラ祭」。 店長:それは「禁忌」「奇祭」という言葉でさえも伝えきれない、奇妙な体験だった。 : 早川:老婆「グヌヌヌヌ…ハアッ!」 : 店長:(モノローグ)村長(むらおさ)がカボチャを火で炙り、割れたヒビの形で占う「アボボラ占い」に勤しむ中、村の子供たちはカボチャをボール代わりにした「アボボラドッヂ」「アボボラキックベース」「アボボラ壁野球」等のアボボラ競技に興じているのだった。 : 番場:子供「へいへい!ピッチャーびびってる!2塁と3塁、透明ランナーな!」 : 店長:(モノローグ)そして「奥秩父アボボラ祭」のクライマックスでは、山頂から転がり落ちる大量のカボチャと共に、村人が馬で駆け降りる「カボボラ越えの坂落とし」によって、五穀豊穣が願われるのであった。 : 番場:カボチャ「ゴロゴロゴロ…」 : 早川:ヒャー!店長!もっとしっかり手綱持ってください! : 店長:ウワー!ギャー!落ちるー!! : : 0:間(時間経過) : : 早川:店長、お疲れさまでした。 : 店長:まったく、ヒドイ目に遭った…。 : 番場:とんでもないとこでしたね、奥秩父…。 : 早川:でもまあ…なんとか売り切りましたね。カボチャ2000個。 : 店長:ああ、まさかほんとに売り切れるとはな。 : 番場:マジでミラクル。 : 早川:ほんとに。 : 番場:これで来週シフト増やしてもらえるッス。 : 店長:だからお前はクビだって……もういいや、お前もあの大量のカボチャ売るために、あんな山奥まで付いて来てくれたんだもんな。 : 番場:まあ、乗り掛かった舟ですから。 : 店長:元はと言えば、お前が座礁させかけた船だろ! : 早川:(笑う) : 店長:はあ、でもまあ、これでなんとかなんとか店も手放さずに済みそうだ…。 : 早川:そうですね。 : : 0:店のインターホンが鳴る。 : : 早川:(時計を見て)店長、朝イチの納品です。 : 店長:はあ~!もうこんな時間かあ~! 店長:ダメだ、俺もう一歩も動けない。代わりに受け取り頼む。 : 番場:じゃあ、自分行ってくるッス。 : 店長:おう。 : 早川:でも、ほんと一時はどうなるかと思ったけど、どうにかなるもんですね。 : 店長:ああ。最初にアイツが、カボチャプリンと間違えて、カボチャとプリン発注したって聞いた時は、そのまま意識がブラックアウトしそうになったもんな。 : 早川:(何かに気付いて)あ、 : 店長:ほんっと今聞いても信じらんないよ。どこの世界にカボチャプリン注文してって頼まれてカボチャとプリンを別々に…… : 番場:店長!一大事ッス! : 店長:ん!?どうした!? : 番場:こないだ間違って発注した、プリン2000個が届きましたー!! : : 0:終わり : :

 :【コンビニでバイトが間違ってカボチャを2000個発注してしまった話】(作・くまのムッチ) : : :登場人物 : 店長: 店長:(配役が決まったらここをタップしてください) : 番場: 番場:(配役が決まったらここをタップしてください) : 早川: 早川:(配役が決まったらここをタップしてください) : : 0:コンビニの店内。 0:店内は平積みされたダンボールが所狭しと並んでいる。 0:そしてそこはかとなく漂う険悪な空気。 : : 店長:ねえ?どうすんの!? : 番場:えっ?はあ…… : 店長:はあ…じゃないよ!これ一体どうすんのって言ってんの!? : : 0:ドンと壁を平手で叩く。 0:ゴロゴロと音を立てて崩れ落ちるカボチャの山。 : : 早川:ああああ… : 店長:君さー!これ見て何も思わない訳!? 店長:ねえ!?これ見てさ、何か一言くらいあるよねー!? : 番場:あー、カボチャッスね。 : 店長:そう!カボチャだね!カボチャ! 店長:君の発注ミスで店内に陳列しきれない程に溢れかえったカボチャ計2000個だねえ! : 番場:はあ……でも、 : 店長:でもじゃねえよ!この野郎! 店長:この状況でなんでまだ「でも」が出るんだ!まずは店長すいませんでしただろーがよー! : 早川:ちょ!店長!手え出しちゃマズいですって! : 店長:やらせてくれ早川くん!もういっそコイツに手え出させてくれ! : 番場:うわ…ヤバ。 : 店長:んだとテメー!! : 早川:ちょちょちょ店長!落ち着いてください! 早川:番場君もさ、ちょっとだけ静かにしてよっかー。 : 番場:ウッス。 : 早川:店長も、ほら、まずは何でこんな事になっちゃったか、番場君から事情を聞き取りしましょうよ。 : 店長:(ふうふうと息を切らせて言葉も出ない店長) : 早川:番場君。 : 番場:ウス。 : 早川:今朝、どうしてこの店に2000個のカボチャが納品されたかって話なんだけど、 : 番場:いや、マジヤバかったッスね。早川さん。 番場:(笑いをこらえながら) 番場:配達業者の人がトラックと店、何回も往復して、カボチャどんどん積み上げてくもんだから、(思い出し笑い)ブフ…ウケる。 : 店長:ウケる、じゃねえよ! : 早川:(たしなめて)店長! : 店長:グッ… : 早川:そもそもなんだけどさ、番場君。 : 番場:ウス。 : 早川:ウチってさ、コンビニだよね。 : 番場:そうッスね。 : 早川:カボチャ売ってるコンビニって、あんま見ないと思うんだけど、 : 番場:はあ… : 早川:なんでカボチャをこんなに発注かけちゃったの?って話もあるんだけど、それ以前にウチの店って普段、カボチャ置いてないよねって言う…… : 番場:あー、それはシフトリーダーの渡邊さんが、 : 店長:え?渡邊くん?なんでそこで渡邊くんの名前が出てくるの? : 番場:渡邊さんが、ハロウィンフェア用にカボチャ発注しとけって。店長指示で。 : 店長:え、俺そんな事、言ってないよ。 : 番場:えー、言ってたもん渡邊さん。 : 早川:ちょっと待ってください店長。ハロウィンフェアって事はもしかして……。 : 店長:(何か思い当たるフシがある)……あ! : 早川:店長、渡邊さんに何か発注の指示、したんじゃないですか? : 店長:…そういや言ったわ。 店長:ハロウィンフェア用に発売される新商品の、カボチャプリン発注しといてって…。 : 番場:ほらー!言ったでしょー! : 店長:いや、待て待て待て待て待てー!! 店長: 店長:俺が渡邊に頼んだのは「カボチャプリン」 店長:んで、ここに山積みされてるのは「カボチャ」だろー!! : 早川:どうしてこうなった…。 : 番場:あれ?俺確かに渡邊さんに「カボチャ」と「プリン」発注かけといてって言われたんだけどなあ……。 : 店長:いやお前!どこの世界にカボチャプリンって言われて、カボチャとプリン別々に頼むやつがいんだよ! 店長:だったら何か!?お前メロンパン買ってこいって言ったら、メロンとパン別々に買ってくんのか!? 店長:いちご大福買ってこいって言ったら、イチゴと大福買ってくんのか!? 店長:(次第に興奮して)しろくまアイス買ってこいって言ったら、シロクマとアイス買ってくんのかー!? : 番場:いや、シロクマなんて売ってねえし。ウケる。 : 店長:だからウケてんじゃねえー!!物の例えだろコラー! 店長:あと、数もおかしいだろ!何がどうなって2000個になるんだ!?例えカボチャプリンだったとしても2000個は多すぎだろ! : 番場:あー、数字は、普通に間違えたッス。 : 店長:テメエぶっ殺すぞコノヤロー!! : 早川:だから落ち着いてくださいって、店長! 早川:カボチャなら、ハロウィンまでだったら、なんとか需要ありませんかね? : 店長:…今日何日だ? : 早川:えっと……今日は10月26日ですね。 : 店長:ハロウィンは今月の31日だから、うわー、あと5日しかないじゃん。 : 早川:いやでも、カボチャならカットしなきゃ1、2カ月は保存できるから、じっくり時間をかけて売ってくってのもアリですよね? : 店長:それだとこの大量のカボチャの代金は、どうやって払うんだよ!? 店長:すぐにこのカボチャを現金に変えなきゃ、店が潰れちまう!! : 番場:えー!マジスか店長! 番場:じゃあ俺のバイト代、どうなるんですか? : 店長:お前が言うな! : 早川:いずれにしろ、タイムリミットは5日間って事ですね……。 : 店長:どうすんだよ~!こんなの無理に決まってんじゃん~。もう絶望しかねえわ~! : 早川:店長、SNSに投稿してみるってのはどうでしょうか? : 店長:SNS? : 早川:ほら?誤発注した商品をズラーッと並べた写真を載せて「誤発注してしまいました。助けてください」ってSNSで呼びかけたりしてるの、見た事ありませんか? : 番場:あ、それ見た事ある!棚いっぱいに同じ商品並べんのな。 : 店長:(訝しげに)それって、効果あるの? : 早川:SNSで一気に拡散されれば、普段ウチの店を利用しない人が買いに来てくれる、なんて事もあるかもしれません! : 店長:それだそれー!早川くん!それやってみよ~!! : 早川:それじゃあ早速このカボチャの山の写真を撮影して、お店のアカウントからアップしましょう!店長、お願いします! : 店長:…え?……アカウント? 店長:ごめん、早川くん。俺ガラケーだからわかんない! : 早川:すぐに作りましょう!じゃあアカウントは私が作りますんで店長は早く写真を! : 店長:ああ!わかった! : : 0:少しの間(時間経過) : : 早川:えっと「間違ってカボチャを2000個発注してしまいました。助けてください。拡散希望」っと。 : 店長:これでホントにみんなが来てくれるの!?すごいねー! : 早川:いや、今作ったばかりのアカウントなんで、さすがにそれはないと思います。フォロワーも全然いないし。 早川:(スマホの画面を見て)……え…あれ? : 店長:どうしたの!? : 早川:なんかいきなり拡散されてます!……すごい!でも一体なんで? : 番場:あー、それ多分、自分ッスね。 : 店長:え!? : 番場:自分がさっきの記事RT(リツイート)したんで。 番場:ほら、この最初にRTしたアカウント、これ、自分なんで。 : 早川:えっ、この「バルコン番場」っていうのが番場君なの!?…フォロワー2.2万人って…すご! : 店長:え!?それってすごいの? : 早川:ええ、フォロワー2万人超えだったら、地方のミニコミ紙ぐらいの拡散力があるんです!もうこれは立派なインフルエンサーですよ! : 番場:(得意気に)何回もバズってますから。拡散力には定評があるッス。 : 店長:実はすごいヤツだったんだな! 店長:ただのヤル気のない、人生舐めたバイトだと思ってたよー! : 早川:でも、番場くん、何呟いたらこんなにすごいフォロワー数になるの? : 番場:あー、そりゃ簡単ッス。ネットでバズったツイート見つけたら、とりあえず画像とか動画を保存しといて、ほとぼりが冷めた頃に全く同じ内容で呟くんですよ~!これで、バズりも自由自在ッス! : 早川:…それ、ただのパクツイじゃん……。 : 店長:俺、あんまりそういうの詳しくないけど、番場がネットもリアルもどうしようもない奴だっていうのは、なんとなく分かったよ……。 : 早川:あー!でもでも!番場くんのRTのおかげで、すごい拡散されてます!さっきから通知が止まりません! : 店長:とりあえず、でかした番場!!これであとはこのツイート見た人が買いに来てくれるかだな。 : 早川:はい。さっきの投稿にたくさんコメント付いてるんで、順番に読んでいきますね。 早川: 早川:(読み上げる)ええと、 早川: 早川:「コンビニスイーツとかだったら興味あるけどさすがにカボチャは持て余すな」 早川: 早川:「いくらハロウィン前だからって、こんなにカボチャいらないwww」 早川: 早川:「カボチャ2000個ってさすがに草。発注した人無能すぎん?」 早川: 早川:駄目だ……すごい勢いで拡散はされてるんだけど、不思議な事に全く肯定的に受け止められてない……。 : 店長:なんだよ~!バズったら在庫が全部ハケるんじゃなかったのかー! : 番場:おっし!じゃあここで「万バズの番場」がリプライつけて流れ変えるッスわ。 番場:(ドヤ顔で)番場、動きます。 番場: 番場:(少し考えて)えーっと、 番場:「俺、ここの店員なんだけど、人助けだと思ってみんな買いに来て! 番場:5日以内に、このカボチャ全然売れなかったら店潰れちゃうんだって!」 番場:投稿っと。 : 早川:あっ、またコメントがたくさんつき始めた。やっぱり番場くんの影響力すごい! : 番場:(得意気) : 早川:読み上げます! 早川: 早川:「うるせー!パクツイ野郎!」 早川: 早川:「パクツイばっかしてる人のバ先ってなんか怪しすぎなんだけど」 早川: 早川:「ほんとだ。じゃあこの写真も拾いもんじゃね?釣り?」 早川: 早川:…どうやら番場君のリプライを皮切りにこの投稿そのものの信憑性が疑われ始めたみたいです!! : 店長:なんだよ逆効果じゃねえかよ〜!!何が「番場、動きます」だ!! 店長:おしまいだ……俺の…店が…… : 番場:え~!来月シフト増やしてくれって言ってたのに~ : 店長:うるせえ!黙ってろ!お前は例え店が潰れなかったとしてもクビだっ! : 早川:ああっ! : 店長:今度はどうした!? : 早川:こ、これは!我々にとって有益な情報かもしれないんで読み上げますね! 早川: 早川:(読み上げる) 早川:「はじめまして。FF外から失礼します。 早川:奥秩父山地の秘境で毎年行われている、奇祭【奥秩父アボボラ祭】をご存知ですか? 早川: 早川:【奥秩父アボボラ祭】では主神【カンボーディア】の生誕の日に、【プレアリアチア・ナーチャッカンプチアの儀】という儀式を執り行うのですが…… : 店長:なんだよ【奥秩父アボボラ祭】って!そんなの聞いた事ないよ! : 早川:最後まで聞いてください! 早川:(読み上げる) 早川:この【プレアリアチア・ナーチャッカンプチアの儀】では、人間の首をカボチャに見立てて、カボチャを供物として捧げるのです。是非こちらの【奥秩父アボボラ祭】に参加されてみてはいかがでしょうか。 早川: 早川:…だそうです。 : 番場:…こっわ! : 店長:いや!怖い怖い! 店長:なんだよ!【主神カンボーディア】って!完全にやべえやつじゃん! : 早川:店長、ここもう一回読んでみてください。 : 店長:えっと…「人間の首をカボチャに見立てて…」いやだから怖いんだって! : 早川:落ち着いてください、店長。ほらここに「カボチャを供物として捧げる」って書いてあるでしょ。 : 店長:あ、ほんとだ。 : 早川:この「奥秩父アボボラ祭」でウチのカボチャを販売させてもらえませんかね? : 店長:ええーー!? : 早川:確かに突飛な発想かもしれませんけど、これが現状を打破するきっかけになるかもしれません! : 店長:そんな事言ったってさあ。 : 番場:どうせこのままだと店は潰れちゃうんだし、ワンチャンこれに賭けてみるってのもアリっすね! : 店長:お前が言うな!! : 早川:店長、ご決断を! : 店長:…わかった!わかったよー!(致し方なく)…行くよ。 店長:行くぞ!「奥秩父アボボラ祭」でカボチャ2000個売りきるぞー!! : 0:間(時間経過) : 店長:(モノローグ)我々が奥秩父山地の秘境で見た「奥秩父アボボラ祭」。 店長:それは「禁忌」「奇祭」という言葉でさえも伝えきれない、奇妙な体験だった。 : 早川:老婆「グヌヌヌヌ…ハアッ!」 : 店長:(モノローグ)村長(むらおさ)がカボチャを火で炙り、割れたヒビの形で占う「アボボラ占い」に勤しむ中、村の子供たちはカボチャをボール代わりにした「アボボラドッヂ」「アボボラキックベース」「アボボラ壁野球」等のアボボラ競技に興じているのだった。 : 番場:子供「へいへい!ピッチャーびびってる!2塁と3塁、透明ランナーな!」 : 店長:(モノローグ)そして「奥秩父アボボラ祭」のクライマックスでは、山頂から転がり落ちる大量のカボチャと共に、村人が馬で駆け降りる「カボボラ越えの坂落とし」によって、五穀豊穣が願われるのであった。 : 番場:カボチャ「ゴロゴロゴロ…」 : 早川:ヒャー!店長!もっとしっかり手綱持ってください! : 店長:ウワー!ギャー!落ちるー!! : : 0:間(時間経過) : : 早川:店長、お疲れさまでした。 : 店長:まったく、ヒドイ目に遭った…。 : 番場:とんでもないとこでしたね、奥秩父…。 : 早川:でもまあ…なんとか売り切りましたね。カボチャ2000個。 : 店長:ああ、まさかほんとに売り切れるとはな。 : 番場:マジでミラクル。 : 早川:ほんとに。 : 番場:これで来週シフト増やしてもらえるッス。 : 店長:だからお前はクビだって……もういいや、お前もあの大量のカボチャ売るために、あんな山奥まで付いて来てくれたんだもんな。 : 番場:まあ、乗り掛かった舟ですから。 : 店長:元はと言えば、お前が座礁させかけた船だろ! : 早川:(笑う) : 店長:はあ、でもまあ、これでなんとかなんとか店も手放さずに済みそうだ…。 : 早川:そうですね。 : : 0:店のインターホンが鳴る。 : : 早川:(時計を見て)店長、朝イチの納品です。 : 店長:はあ~!もうこんな時間かあ~! 店長:ダメだ、俺もう一歩も動けない。代わりに受け取り頼む。 : 番場:じゃあ、自分行ってくるッス。 : 店長:おう。 : 早川:でも、ほんと一時はどうなるかと思ったけど、どうにかなるもんですね。 : 店長:ああ。最初にアイツが、カボチャプリンと間違えて、カボチャとプリン発注したって聞いた時は、そのまま意識がブラックアウトしそうになったもんな。 : 早川:(何かに気付いて)あ、 : 店長:ほんっと今聞いても信じらんないよ。どこの世界にカボチャプリン注文してって頼まれてカボチャとプリンを別々に…… : 番場:店長!一大事ッス! : 店長:ん!?どうした!? : 番場:こないだ間違って発注した、プリン2000個が届きましたー!! : : 0:終わり : :