台本概要
578 views
タイトル | 劇画シンデレラ |
---|---|
作者名 | 冷凍みかん-光柑- (@mikanchilled) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 4人用台本(不問4) ※兼役あり |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
悪の王子に故郷を焼かれたシンデレラは、トレメイン一家と共に復讐を誓う。おとぎ話をベースに、熱いバトルが展開される…! ご自由にお楽しみ下さい。 578 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
シンデレラ | 不問 | 23 | 悪の王子に故郷を焼かれ、呆然とする主人公。極東の武術を使う。 ジャックと兼ね役。 |
アナスタシア | 不問 | 43 | 逆上しやすく、喧嘩早いが情に厚い。 |
ドリゼラ | 不問 | 25 | 明るい性格でアナスタシアのブレーキを担うことが多い。 |
トレメイン | 不問 | 35 | 夫を殺した悪の王子に、復讐を誓う。 |
ジャック | 不問 | 19 | 悪の王子の命を受け、シンデレラをさらおうとするネズミ。 シンデレラと兼ね役。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
劇画シンデレラ
筋肉もりもり
アナスタシア
トレメイン
トレメイン:神に選ばれし運命を
トレメイン:今こそ示せシンデレラ
アナスタシア:汗水たらし鍛錬を
アナスタシア:積みし姿は獅子のよう
ドリゼラ:魔法の杖の一振りに
ドリゼラ:輝く姿勇ましく
シンデレラ:異形の従者を携えて
シンデレラ:悪の根城へ踏み入らん
トレメイン:約束の刻 間に合わず
トレメイン:笑う悪魔の罠に遭い
アナスタシア:諦めかけたその時に
アナスタシア:脱げたガラスの靴ひとつ
ドリゼラ:靴は冥途の土産だと
ドリゼラ:とどめを刺したシンデレラ
シンデレラ:朽ちぬ体で悶えつつ
シンデレラ:悪の王子よ何想ふ
0:第一話『灰かぶりの少女』
シンデレラ:街は灰と化した。優しかったお父様もお母様も、もういない…私は一体どうしたら。
アナスタシア:フン、生き残りがいると思ったら、どうやら汚い灰色ネズミのようだな。
ドリゼラ:ちょっと、そんなことを言ったら可哀想じゃない。ねえ、お母様?
シンデレラ:誰だ!?
トレメイン:情けない…両親を殺され、街を焼かれて。お前は悔しくないのか?
シンデレラ:誰だと聞いているんだッ!!
トレメイン:私はトレメイン夫人。いいや違う…今は未亡人だ。
シンデレラ:まさか、あなたの夫も殺されたのか?
アナスタシア:黙れッ!俺の親父があんな小僧にむざむざ殺されると思うかッ!?
ドリゼラ:アナスタシア、落ち着いてちょうだい!
トレメイン:私の夫は王の忠実なる家臣だった。あの悪の王子が謀反を起こした時でさえ、病弱な王に味方した。
トレメイン:王は言った。「話せばわかる。トレメインよ、王子に危害を加えてはならぬ」と。
トレメイン:私の夫は王の命令を守り、何の抵抗もなしに殺されるのを選んだのだ。けれど王子は問答無用に王を殺した。
シンデレラ:そして街に火を放った…
アナスタシア:悪の王子を生かしてはおけぬ。トレメインの名を汚したことを後悔させてやる。
ドリゼラ:あなたも一緒に戦いましょ?両親の名誉のために。
シンデレラ:戦う…。わかった。よろしく頼む。
トレメイン:決まりだな。灰かぶりの少女よ、名を何という?
シンデレラ:シンデレラ。私の名前はシンデレラだ。
ドリゼラ:よろしくね、シンデレラっ。私はドリゼラ
アナスタシア:アナスタシアだ。
トレメイン:シンデレラ、これからは何があっても行動を共にしてもらう。今日から私たちがお前の新しい家族だ。
シンデレラ:新しい、家族…
アナスタシア:甘いな。
0:ドゴオ!シンデレラを殴り飛ばすアナスタシア
シンデレラ:ぐっ!いきなり何をッ!
ドリゼラ:あっはは!見事に吹っ飛ばされて、なんてマヌケなネズミなの!?ww
シンデレラ:どういうつもりだッ!!
トレメイン:口先だけの誓いなど、漢には無意味なものだ。
アナスタシア:漢なら拳。お前は俺が見定める。
シンデレラ:そういうわけか…悪いがこういうのは初めてでね…
シンデレラ:手加減はできない…
アナスタシア:殺す気で来い。
0:ガラガラ…瓦礫の中からゆっくりと立ち上がるシンデレラ
0:ズン…!ズン…!シンデレラは踏みしめるように一歩一歩とあるいていく
アナスタシア:ほう?近づいてくるのか。たった今ぶちのめされたというのに、再び俺の間合いに入ってくるとは。
シンデレラ:私がぶちのめされることはない。アナスタシア、もうお前の拳が私に届くことすらもない
アナスタシア:ほざけ!
アナスタシア:オラ!
0:アナスタシアの左フックがシンデレラの目を打つ。
アナスタシア:オラ!
0:アナスタシアの右フックが顎を打ち、シンデレラはよろめく。
アナスタシア:オラア!
0:アナスタシアの右ストレートを正面に喰らって、シンデレラは地面に倒れた。
アナスタシア:このまま馬乗りになって、死ぬまで地面に殴りつけるのも悪くないぞ!!
ドリゼラ:ダメよ!アナスタシア!殺してはダメ!!
アナスタシア:うるさい!しょせん口だけの雑魚だッ!
アナスタシア:俺はこういう出まかせ野郎が!大嫌いなんだよ!
シンデレラ:今の一連の攻撃で、お前の技は完全に見切った。
0:ピタ…アナスタシアの振り上げた拳が固まる。
アナスタシア:なんだと?
0:シンデレラは鼻血をだらだらと流しながらも冷静だ。
アナスタシア:ハッ、またハッタリか。命乞いをしないだけほめてやる
シンデレラ:いいや違うね…アナスタシア、私の胸から降りてくれ。
シンデレラ:口先ではないことを証明してやる。
トレメイン:アナスタシア降りなさい。
アナスタシア:母さん!?
トレメイン:見せてもらおうじゃないか、瀕死の鼠の最期のあがきを。
アナスタシア:〈一瞥して〉ドリゼラ…
ドリゼラ:もう、わかってるわよ。逃げようとしたら私が追うわ。どこにも逃がしやしない。あの世以外にはね。
アナスタシア:いいだろう。シュバッ!!
0:タンッ…シンデレラの胸から離れ、間合いを取るアナスタシア
アナスタシア:さあ来い。
シンデレラ:…〈フラフラ〉
アナスタシア:やはり立ってやっとの状態か…これで、終わりだッ!!
シンデレラ:フンッ!
ドリゼラ:ばかな!ノーガード!?まるで思い切り殴れと言わんばかりに!?
トレメイン:ふん…
アナスタシア:おかしい…なんだ…これは無間(むげん)ッ!?
アナスタシア:瞬間速度はチーターを上回る、そんな俺の拳が届かないなんてッ!?
アナスタシア:遅いッ!!まだか!拳が止まって見える!どういうことだ!この異常な集中力は!?
アナスタシア:まるで走馬灯のようなスローモーション!!俺は本能で、こいつを強敵認定しているッ!?
シンデレラ:柔を以て剛を制す…お前は極東の武術を知っているか?
アナスタシア:バカな一瞬で俺の横にッ!?
アナスタシア:ハッ、違う!…通り過ぎたのは…俺の方だッた!?
0:ドサア!!アナスタシアは殴った勢いで地面に倒れ込んだ。
トレメイン:投げた!?いや、受け流したのか…!
ドリゼラ:何が起こってるの!?どうして攻撃したはずのアナスタシアが倒れているの!?
アナスタシア:くっ…まるで俺の動きに合わせて、そのまま利用したかのような…
ドリゼラ:闘牛士が牛をかわすように、荒ぶる馬を馭者がなだめるように…
ドリゼラ:いま、ほんの一瞬だけ!絶対的な実力差が見えたわ…!
トレメイン:暴力に一切の禍根を残さぬような静謐な佇まい。社交ダンスのような武術だ。
シンデレラ:懲りるまで踊ってやるぞ、アナスタシア。
アナスタシア:調子に乗るなよ…たった一度の受け流しで。
トレメイン:そこまでだ、アナスタシア
アナスタシア:母さん…!
トレメイン:アナスタシア、お前に足りないのはシンデレラのような柔軟さかもしれない。
トレメイン:相手から学べ。お前はまだまだ成長できる。
ドリゼラ:それじゃあ、いいのね?
トレメイン:ああ。シンデレラ、お前を家族と認めよう。
シンデレラ:いいのかい。あなた達は戦わなくて。
トレメイン:〈にやり〉ふん、いずれな。
0:ボグッ!アナスタシアがシンデレラの腹を殴る
シンデレラ:ふぐッ!!
アナスタシア:調子に乗るなよ。家族になったからと言ってお前は末っ子!道中の雑用はすべてこなしてもらうぞ。
シンデレラ:のぞむところ、だ…
ドリゼラ:おっとと。気絶しちゃったみたい。
トレメイン:やはり無理をしていたか。
アナスタシア:まったく灰色ネズミかと思ったら、とんでもない精神力だ…
トレメイン:ふふふ、かわいがってやろうじゃないか。見ろこの寝顔を。初夜を迎えた朝のお姫様のようだぜ…
0:悪の王子に焼かれた町で、新たな家族に巡り合えたシンデレラ。つかの間の静寂が、嵐の到来を予兆していた。
0:シンデレラの受難は続く。
0:第二話『屋根裏のジャック』
ジャック:チューチュッチュッチュ!シンデレラは渡さないでチュよ~!
ドリゼラ:な、なに!誰なの!?
トレメイン:フン、どうやら騒ぎを聞きつけたらしいな
アナスタシア:囲まれた!
ジャック:シンデレラを渡せトレメイン!お前ら没落貴族と違って、王子さまはシンデレラを大層気に入ってなさるのだッ!
トレメイン:シンデレラ、ただの小娘かと思ったが。どうやら我がトレメイン家と深い因縁があるらしい…
ドリゼラ:お母様思い直して!!シンデレラはもうトレメインの者よ!
トレメイン:わかっているよ、ドリゼラ。ただネズミ、お前にはワケを話してもらうぞ。
ジャック:俺の名はジャック!我が屋根裏保安局は、王子様の命により、トレメイン家の抹殺を仰せつかっているゥ!
ジャック:だがもし、シンデレラを大人しく受け渡すと言うならばァ!死ぬ前に一度だけ王子様に会わせてやると約束しようッ!
アナスタシア:悪の王子!父の仇ッ!
ドリゼラ:落ち着いてアナスタシア!罠に違いないわッ!
ジャック:チューチュッチュッチュ!さあどうするゥ!?もっともお前らに選択肢なんて無いだろうがなあッ!
トレメイン:やれやれ、困ったことだな。
アナスタシア:母さん…!
トレメイン:突然の王子様からの申し出に、うちの可愛い娘たちが慌てふためいてしまったじゃあないか…。
ジャック:チュチュ、トレメイン…
トレメイン:ジャックと言ったな?王子に会わせるというのは嘘ではないな…
ジャック:ああ約束しよう。すべて食べかすとチーズの神に誓おう…
トレメイン:誓う、か…その真意、拳で確かめさせてもらおうッ!!
ジャック:いいぜえ…わざわざ灰の街に出向いた甲斐があったってもんだ…部下ども手を出すんじゃねえぞ。
0:※野次を飛ばすネズミたちのセリフ
0:「へい!おかしら!」
0:「やっちゃえ!おかしら!」
0:「いけえ!!」
ドリゼラ:お母様が戦うというの…?
アナスタシア:ドリゼラは初めてだったな、よく見ておけ。トレメイン家の戦い方を。
トレメイン:はあああ…
0:チィチィチィチ…トレメインは両腕を頭上から真横へ大きく開いていく。
ジャック:チュチュ!?
ドリゼラ:お母様を囲うように腕が増えていく…!?
アナスタシア:ドリゼラ、おまえも見えるか。成長したな。
ドリゼラ:どういうことなの!?
アナスタシア:むかしチベットの山奥に、千の腕操りし武術の達人がいたという…
ドリゼラ:千の腕…?
アナスタシア:俺たちはその末裔。これがトレメイン家の奥義。
アナスタシア:”ファントムリムズ・ブッディズム(輪廻の終着点)”!!
ジャック:チュ…チュチュ!しょせんはファントム!幻影にすぎないッ!!
トレメイン:その通りだ。ジャック。ところで貴様にはどの腕が本物か分かるか…?
ジャック:そ、それは…!
アナスタシア:ドリゼラ。お前にはいくつの腕が見えている?
ドリゼラ:はっきり言って千本は言い過ぎね…せいぜい20といったところかしら。
アナスタシア:そうか。俺には200に見える。
ドリゼラ:!?
アナスタシア:見える腕の数即ち、相手自身の経験人数…
ドリゼラ:それって!?
アナスタシア:死線を乗り越えた者ほど、見える腕の数は多くなる。
アナスタシア:いまネズミ野郎が対峙している相手は言うなれば…
アナスタシア:今まで戦った相手、すべてだ。
ジャック:どれだ?どの腕が本物だ!?やべえ…”あの腕”があるッ!!
ジャック:”あの腕”だけは勘弁だ…!畜生ッ!!”あの腕”のワケがねえ!”あの腕”のハズがねえ!!
トレメイン:さあ、答えは出たか。
ジャック:う、ウオオオオ!!”プログレ・ポンジー・ボンバイエ(暴力的ネズミ講のすゝめ)”!!
トレメイン:”インぺリアス(傲慢なる)…
ジャック:そんな、ばかな…
トレメイン:ジャッジメント(裁き)”
0:ザシュッ!
トレメイン:どれが本物の腕かと聞いたな。答えは…
ジャック:かはっ…
トレメイン:私も知らない。
ジャック:悪魔、め…俺の負けだ。まさかトラウマの技を再現されるなんてな…
ジャック:傷は浅いが、完全に戦意喪失というわけだぜ…
トレメイン:私が再現したのではない。お前が発した微弱な恐怖信号が、私の身体に”こう動け”と命令したまで。
トレメイン:私はお前の要望(ニーズ)に応えただけだ。
ジャック:要望(ニーズ)だと…?俺はまだ、心のどこかで、あの悪夢を乗り越えようとしている…?
トレメイン:生きている限り、敗北は終わりではない。
ジャック:チュ、チュチュ…!まさかぶっ殺そうとした相手から教訓を得るなんてな…
ジャック:約束だ。お前らを王子のもとまで案内しよう…
アナスタシア:いいのか?それは王子を裏切るということだぜ
ジャック:食べかすの代わりに城のチーズをもらっていただけだ。もともと忠義なんてねえさ。
アナスタシア:なるほどな。だったらお前らに背中を預けることはしない。つねに前を歩いてもらおうか。
ジャック:お、一番槍を譲ってくれるのかい?太っ腹だねえ。
アナスタシア:しまった…!
ドリゼラ:あはは!なんだか急に大所帯ね!シンデレラが起きたらびっくりするでしょうねっ
0:■ママの強さ、反則級…!
劇画シンデレラ
筋肉もりもり
アナスタシア
トレメイン
トレメイン:神に選ばれし運命を
トレメイン:今こそ示せシンデレラ
アナスタシア:汗水たらし鍛錬を
アナスタシア:積みし姿は獅子のよう
ドリゼラ:魔法の杖の一振りに
ドリゼラ:輝く姿勇ましく
シンデレラ:異形の従者を携えて
シンデレラ:悪の根城へ踏み入らん
トレメイン:約束の刻 間に合わず
トレメイン:笑う悪魔の罠に遭い
アナスタシア:諦めかけたその時に
アナスタシア:脱げたガラスの靴ひとつ
ドリゼラ:靴は冥途の土産だと
ドリゼラ:とどめを刺したシンデレラ
シンデレラ:朽ちぬ体で悶えつつ
シンデレラ:悪の王子よ何想ふ
0:第一話『灰かぶりの少女』
シンデレラ:街は灰と化した。優しかったお父様もお母様も、もういない…私は一体どうしたら。
アナスタシア:フン、生き残りがいると思ったら、どうやら汚い灰色ネズミのようだな。
ドリゼラ:ちょっと、そんなことを言ったら可哀想じゃない。ねえ、お母様?
シンデレラ:誰だ!?
トレメイン:情けない…両親を殺され、街を焼かれて。お前は悔しくないのか?
シンデレラ:誰だと聞いているんだッ!!
トレメイン:私はトレメイン夫人。いいや違う…今は未亡人だ。
シンデレラ:まさか、あなたの夫も殺されたのか?
アナスタシア:黙れッ!俺の親父があんな小僧にむざむざ殺されると思うかッ!?
ドリゼラ:アナスタシア、落ち着いてちょうだい!
トレメイン:私の夫は王の忠実なる家臣だった。あの悪の王子が謀反を起こした時でさえ、病弱な王に味方した。
トレメイン:王は言った。「話せばわかる。トレメインよ、王子に危害を加えてはならぬ」と。
トレメイン:私の夫は王の命令を守り、何の抵抗もなしに殺されるのを選んだのだ。けれど王子は問答無用に王を殺した。
シンデレラ:そして街に火を放った…
アナスタシア:悪の王子を生かしてはおけぬ。トレメインの名を汚したことを後悔させてやる。
ドリゼラ:あなたも一緒に戦いましょ?両親の名誉のために。
シンデレラ:戦う…。わかった。よろしく頼む。
トレメイン:決まりだな。灰かぶりの少女よ、名を何という?
シンデレラ:シンデレラ。私の名前はシンデレラだ。
ドリゼラ:よろしくね、シンデレラっ。私はドリゼラ
アナスタシア:アナスタシアだ。
トレメイン:シンデレラ、これからは何があっても行動を共にしてもらう。今日から私たちがお前の新しい家族だ。
シンデレラ:新しい、家族…
アナスタシア:甘いな。
0:ドゴオ!シンデレラを殴り飛ばすアナスタシア
シンデレラ:ぐっ!いきなり何をッ!
ドリゼラ:あっはは!見事に吹っ飛ばされて、なんてマヌケなネズミなの!?ww
シンデレラ:どういうつもりだッ!!
トレメイン:口先だけの誓いなど、漢には無意味なものだ。
アナスタシア:漢なら拳。お前は俺が見定める。
シンデレラ:そういうわけか…悪いがこういうのは初めてでね…
シンデレラ:手加減はできない…
アナスタシア:殺す気で来い。
0:ガラガラ…瓦礫の中からゆっくりと立ち上がるシンデレラ
0:ズン…!ズン…!シンデレラは踏みしめるように一歩一歩とあるいていく
アナスタシア:ほう?近づいてくるのか。たった今ぶちのめされたというのに、再び俺の間合いに入ってくるとは。
シンデレラ:私がぶちのめされることはない。アナスタシア、もうお前の拳が私に届くことすらもない
アナスタシア:ほざけ!
アナスタシア:オラ!
0:アナスタシアの左フックがシンデレラの目を打つ。
アナスタシア:オラ!
0:アナスタシアの右フックが顎を打ち、シンデレラはよろめく。
アナスタシア:オラア!
0:アナスタシアの右ストレートを正面に喰らって、シンデレラは地面に倒れた。
アナスタシア:このまま馬乗りになって、死ぬまで地面に殴りつけるのも悪くないぞ!!
ドリゼラ:ダメよ!アナスタシア!殺してはダメ!!
アナスタシア:うるさい!しょせん口だけの雑魚だッ!
アナスタシア:俺はこういう出まかせ野郎が!大嫌いなんだよ!
シンデレラ:今の一連の攻撃で、お前の技は完全に見切った。
0:ピタ…アナスタシアの振り上げた拳が固まる。
アナスタシア:なんだと?
0:シンデレラは鼻血をだらだらと流しながらも冷静だ。
アナスタシア:ハッ、またハッタリか。命乞いをしないだけほめてやる
シンデレラ:いいや違うね…アナスタシア、私の胸から降りてくれ。
シンデレラ:口先ではないことを証明してやる。
トレメイン:アナスタシア降りなさい。
アナスタシア:母さん!?
トレメイン:見せてもらおうじゃないか、瀕死の鼠の最期のあがきを。
アナスタシア:〈一瞥して〉ドリゼラ…
ドリゼラ:もう、わかってるわよ。逃げようとしたら私が追うわ。どこにも逃がしやしない。あの世以外にはね。
アナスタシア:いいだろう。シュバッ!!
0:タンッ…シンデレラの胸から離れ、間合いを取るアナスタシア
アナスタシア:さあ来い。
シンデレラ:…〈フラフラ〉
アナスタシア:やはり立ってやっとの状態か…これで、終わりだッ!!
シンデレラ:フンッ!
ドリゼラ:ばかな!ノーガード!?まるで思い切り殴れと言わんばかりに!?
トレメイン:ふん…
アナスタシア:おかしい…なんだ…これは無間(むげん)ッ!?
アナスタシア:瞬間速度はチーターを上回る、そんな俺の拳が届かないなんてッ!?
アナスタシア:遅いッ!!まだか!拳が止まって見える!どういうことだ!この異常な集中力は!?
アナスタシア:まるで走馬灯のようなスローモーション!!俺は本能で、こいつを強敵認定しているッ!?
シンデレラ:柔を以て剛を制す…お前は極東の武術を知っているか?
アナスタシア:バカな一瞬で俺の横にッ!?
アナスタシア:ハッ、違う!…通り過ぎたのは…俺の方だッた!?
0:ドサア!!アナスタシアは殴った勢いで地面に倒れ込んだ。
トレメイン:投げた!?いや、受け流したのか…!
ドリゼラ:何が起こってるの!?どうして攻撃したはずのアナスタシアが倒れているの!?
アナスタシア:くっ…まるで俺の動きに合わせて、そのまま利用したかのような…
ドリゼラ:闘牛士が牛をかわすように、荒ぶる馬を馭者がなだめるように…
ドリゼラ:いま、ほんの一瞬だけ!絶対的な実力差が見えたわ…!
トレメイン:暴力に一切の禍根を残さぬような静謐な佇まい。社交ダンスのような武術だ。
シンデレラ:懲りるまで踊ってやるぞ、アナスタシア。
アナスタシア:調子に乗るなよ…たった一度の受け流しで。
トレメイン:そこまでだ、アナスタシア
アナスタシア:母さん…!
トレメイン:アナスタシア、お前に足りないのはシンデレラのような柔軟さかもしれない。
トレメイン:相手から学べ。お前はまだまだ成長できる。
ドリゼラ:それじゃあ、いいのね?
トレメイン:ああ。シンデレラ、お前を家族と認めよう。
シンデレラ:いいのかい。あなた達は戦わなくて。
トレメイン:〈にやり〉ふん、いずれな。
0:ボグッ!アナスタシアがシンデレラの腹を殴る
シンデレラ:ふぐッ!!
アナスタシア:調子に乗るなよ。家族になったからと言ってお前は末っ子!道中の雑用はすべてこなしてもらうぞ。
シンデレラ:のぞむところ、だ…
ドリゼラ:おっとと。気絶しちゃったみたい。
トレメイン:やはり無理をしていたか。
アナスタシア:まったく灰色ネズミかと思ったら、とんでもない精神力だ…
トレメイン:ふふふ、かわいがってやろうじゃないか。見ろこの寝顔を。初夜を迎えた朝のお姫様のようだぜ…
0:悪の王子に焼かれた町で、新たな家族に巡り合えたシンデレラ。つかの間の静寂が、嵐の到来を予兆していた。
0:シンデレラの受難は続く。
0:第二話『屋根裏のジャック』
ジャック:チューチュッチュッチュ!シンデレラは渡さないでチュよ~!
ドリゼラ:な、なに!誰なの!?
トレメイン:フン、どうやら騒ぎを聞きつけたらしいな
アナスタシア:囲まれた!
ジャック:シンデレラを渡せトレメイン!お前ら没落貴族と違って、王子さまはシンデレラを大層気に入ってなさるのだッ!
トレメイン:シンデレラ、ただの小娘かと思ったが。どうやら我がトレメイン家と深い因縁があるらしい…
ドリゼラ:お母様思い直して!!シンデレラはもうトレメインの者よ!
トレメイン:わかっているよ、ドリゼラ。ただネズミ、お前にはワケを話してもらうぞ。
ジャック:俺の名はジャック!我が屋根裏保安局は、王子様の命により、トレメイン家の抹殺を仰せつかっているゥ!
ジャック:だがもし、シンデレラを大人しく受け渡すと言うならばァ!死ぬ前に一度だけ王子様に会わせてやると約束しようッ!
アナスタシア:悪の王子!父の仇ッ!
ドリゼラ:落ち着いてアナスタシア!罠に違いないわッ!
ジャック:チューチュッチュッチュ!さあどうするゥ!?もっともお前らに選択肢なんて無いだろうがなあッ!
トレメイン:やれやれ、困ったことだな。
アナスタシア:母さん…!
トレメイン:突然の王子様からの申し出に、うちの可愛い娘たちが慌てふためいてしまったじゃあないか…。
ジャック:チュチュ、トレメイン…
トレメイン:ジャックと言ったな?王子に会わせるというのは嘘ではないな…
ジャック:ああ約束しよう。すべて食べかすとチーズの神に誓おう…
トレメイン:誓う、か…その真意、拳で確かめさせてもらおうッ!!
ジャック:いいぜえ…わざわざ灰の街に出向いた甲斐があったってもんだ…部下ども手を出すんじゃねえぞ。
0:※野次を飛ばすネズミたちのセリフ
0:「へい!おかしら!」
0:「やっちゃえ!おかしら!」
0:「いけえ!!」
ドリゼラ:お母様が戦うというの…?
アナスタシア:ドリゼラは初めてだったな、よく見ておけ。トレメイン家の戦い方を。
トレメイン:はあああ…
0:チィチィチィチ…トレメインは両腕を頭上から真横へ大きく開いていく。
ジャック:チュチュ!?
ドリゼラ:お母様を囲うように腕が増えていく…!?
アナスタシア:ドリゼラ、おまえも見えるか。成長したな。
ドリゼラ:どういうことなの!?
アナスタシア:むかしチベットの山奥に、千の腕操りし武術の達人がいたという…
ドリゼラ:千の腕…?
アナスタシア:俺たちはその末裔。これがトレメイン家の奥義。
アナスタシア:”ファントムリムズ・ブッディズム(輪廻の終着点)”!!
ジャック:チュ…チュチュ!しょせんはファントム!幻影にすぎないッ!!
トレメイン:その通りだ。ジャック。ところで貴様にはどの腕が本物か分かるか…?
ジャック:そ、それは…!
アナスタシア:ドリゼラ。お前にはいくつの腕が見えている?
ドリゼラ:はっきり言って千本は言い過ぎね…せいぜい20といったところかしら。
アナスタシア:そうか。俺には200に見える。
ドリゼラ:!?
アナスタシア:見える腕の数即ち、相手自身の経験人数…
ドリゼラ:それって!?
アナスタシア:死線を乗り越えた者ほど、見える腕の数は多くなる。
アナスタシア:いまネズミ野郎が対峙している相手は言うなれば…
アナスタシア:今まで戦った相手、すべてだ。
ジャック:どれだ?どの腕が本物だ!?やべえ…”あの腕”があるッ!!
ジャック:”あの腕”だけは勘弁だ…!畜生ッ!!”あの腕”のワケがねえ!”あの腕”のハズがねえ!!
トレメイン:さあ、答えは出たか。
ジャック:う、ウオオオオ!!”プログレ・ポンジー・ボンバイエ(暴力的ネズミ講のすゝめ)”!!
トレメイン:”インぺリアス(傲慢なる)…
ジャック:そんな、ばかな…
トレメイン:ジャッジメント(裁き)”
0:ザシュッ!
トレメイン:どれが本物の腕かと聞いたな。答えは…
ジャック:かはっ…
トレメイン:私も知らない。
ジャック:悪魔、め…俺の負けだ。まさかトラウマの技を再現されるなんてな…
ジャック:傷は浅いが、完全に戦意喪失というわけだぜ…
トレメイン:私が再現したのではない。お前が発した微弱な恐怖信号が、私の身体に”こう動け”と命令したまで。
トレメイン:私はお前の要望(ニーズ)に応えただけだ。
ジャック:要望(ニーズ)だと…?俺はまだ、心のどこかで、あの悪夢を乗り越えようとしている…?
トレメイン:生きている限り、敗北は終わりではない。
ジャック:チュ、チュチュ…!まさかぶっ殺そうとした相手から教訓を得るなんてな…
ジャック:約束だ。お前らを王子のもとまで案内しよう…
アナスタシア:いいのか?それは王子を裏切るということだぜ
ジャック:食べかすの代わりに城のチーズをもらっていただけだ。もともと忠義なんてねえさ。
アナスタシア:なるほどな。だったらお前らに背中を預けることはしない。つねに前を歩いてもらおうか。
ジャック:お、一番槍を譲ってくれるのかい?太っ腹だねえ。
アナスタシア:しまった…!
ドリゼラ:あはは!なんだか急に大所帯ね!シンデレラが起きたらびっくりするでしょうねっ
0:■ママの強さ、反則級…!