台本概要

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タイトル 劇画シンデレラ
作者名 冷凍みかん-光柑-  (@mikanchilled)
ジャンル コメディ
演者人数 4人用台本(不問4) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 悪の王子に故郷を焼かれたシンデレラは、トレメイン一家と共に復讐を誓う。おとぎ話をベースに、熱いバトルが展開される…!
ご自由にお楽しみ下さい。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
シンデレラ 不問 23 悪の王子に故郷を焼かれ、呆然とする主人公。極東の武術を使う。 ジャックと兼ね役。
アナスタシア 不問 43 逆上しやすく、喧嘩早いが情に厚い。
ドリゼラ 不問 25 明るい性格でアナスタシアのブレーキを担うことが多い。
トレメイン 不問 35 夫を殺した悪の王子に、復讐を誓う。
ジャック 不問 19 悪の王子の命を受け、シンデレラをさらおうとするネズミ。 シンデレラと兼ね役。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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劇画シンデレラ 筋肉もりもり アナスタシア トレメイン トレメイン:神に選ばれし運命を トレメイン:今こそ示せシンデレラ アナスタシア:汗水たらし鍛錬を アナスタシア:積みし姿は獅子のよう ドリゼラ:魔法の杖の一振りに ドリゼラ:輝く姿勇ましく シンデレラ:異形の従者を携えて シンデレラ:悪の根城へ踏み入らん トレメイン:約束の刻 間に合わず トレメイン:笑う悪魔の罠に遭い アナスタシア:諦めかけたその時に アナスタシア:脱げたガラスの靴ひとつ ドリゼラ:靴は冥途の土産だと ドリゼラ:とどめを刺したシンデレラ シンデレラ:朽ちぬ体で悶えつつ シンデレラ:悪の王子よ何想ふ 0:第一話『灰かぶりの少女』 シンデレラ:街は灰と化した。優しかったお父様もお母様も、もういない…私は一体どうしたら。 アナスタシア:フン、生き残りがいると思ったら、どうやら汚い灰色ネズミのようだな。 ドリゼラ:ちょっと、そんなことを言ったら可哀想じゃない。ねえ、お母様? シンデレラ:誰だ!? トレメイン:情けない…両親を殺され、街を焼かれて。お前は悔しくないのか? シンデレラ:誰だと聞いているんだッ!! トレメイン:私はトレメイン夫人。いいや違う…今は未亡人だ。 シンデレラ:まさか、あなたの夫も殺されたのか? アナスタシア:黙れッ!俺の親父があんな小僧にむざむざ殺されると思うかッ!? ドリゼラ:アナスタシア、落ち着いてちょうだい! トレメイン:私の夫は王の忠実なる家臣だった。あの悪の王子が謀反を起こした時でさえ、病弱な王に味方した。 トレメイン:王は言った。「話せばわかる。トレメインよ、王子に危害を加えてはならぬ」と。 トレメイン:私の夫は王の命令を守り、何の抵抗もなしに殺されるのを選んだのだ。けれど王子は問答無用に王を殺した。 シンデレラ:そして街に火を放った… アナスタシア:悪の王子を生かしてはおけぬ。トレメインの名を汚したことを後悔させてやる。 ドリゼラ:あなたも一緒に戦いましょ?両親の名誉のために。 シンデレラ:戦う…。わかった。よろしく頼む。 トレメイン:決まりだな。灰かぶりの少女よ、名を何という? シンデレラ:シンデレラ。私の名前はシンデレラだ。 ドリゼラ:よろしくね、シンデレラっ。私はドリゼラ アナスタシア:アナスタシアだ。 トレメイン:シンデレラ、これからは何があっても行動を共にしてもらう。今日から私たちがお前の新しい家族だ。 シンデレラ:新しい、家族… アナスタシア:甘いな。 0:ドゴオ!シンデレラを殴り飛ばすアナスタシア シンデレラ:ぐっ!いきなり何をッ! ドリゼラ:あっはは!見事に吹っ飛ばされて、なんてマヌケなネズミなの!?ww シンデレラ:どういうつもりだッ!! トレメイン:口先だけの誓いなど、漢には無意味なものだ。 アナスタシア:漢なら拳。お前は俺が見定める。 シンデレラ:そういうわけか…悪いがこういうのは初めてでね… シンデレラ:手加減はできない… アナスタシア:殺す気で来い。 0:ガラガラ…瓦礫の中からゆっくりと立ち上がるシンデレラ 0:ズン…!ズン…!シンデレラは踏みしめるように一歩一歩とあるいていく アナスタシア:ほう?近づいてくるのか。たった今ぶちのめされたというのに、再び俺の間合いに入ってくるとは。 シンデレラ:私がぶちのめされることはない。アナスタシア、もうお前の拳が私に届くことすらもない アナスタシア:ほざけ! アナスタシア:オラ! 0:アナスタシアの左フックがシンデレラの目を打つ。 アナスタシア:オラ! 0:アナスタシアの右フックが顎を打ち、シンデレラはよろめく。 アナスタシア:オラア! 0:アナスタシアの右ストレートを正面に喰らって、シンデレラは地面に倒れた。 アナスタシア:このまま馬乗りになって、死ぬまで地面に殴りつけるのも悪くないぞ!! ドリゼラ:ダメよ!アナスタシア!殺してはダメ!! アナスタシア:うるさい!しょせん口だけの雑魚だッ! アナスタシア:俺はこういう出まかせ野郎が!大嫌いなんだよ! シンデレラ:今の一連の攻撃で、お前の技は完全に見切った。 0:ピタ…アナスタシアの振り上げた拳が固まる。 アナスタシア:なんだと? 0:シンデレラは鼻血をだらだらと流しながらも冷静だ。 アナスタシア:ハッ、またハッタリか。命乞いをしないだけほめてやる シンデレラ:いいや違うね…アナスタシア、私の胸から降りてくれ。 シンデレラ:口先ではないことを証明してやる。 トレメイン:アナスタシア降りなさい。 アナスタシア:母さん!? トレメイン:見せてもらおうじゃないか、瀕死の鼠の最期のあがきを。 アナスタシア:〈一瞥して〉ドリゼラ… ドリゼラ:もう、わかってるわよ。逃げようとしたら私が追うわ。どこにも逃がしやしない。あの世以外にはね。 アナスタシア:いいだろう。シュバッ!! 0:タンッ…シンデレラの胸から離れ、間合いを取るアナスタシア アナスタシア:さあ来い。 シンデレラ:…〈フラフラ〉 アナスタシア:やはり立ってやっとの状態か…これで、終わりだッ!! シンデレラ:フンッ! ドリゼラ:ばかな!ノーガード!?まるで思い切り殴れと言わんばかりに!? トレメイン:ふん… アナスタシア:おかしい…なんだ…これは無間(むげん)ッ!? アナスタシア:瞬間速度はチーターを上回る、そんな俺の拳が届かないなんてッ!? アナスタシア:遅いッ!!まだか!拳が止まって見える!どういうことだ!この異常な集中力は!? アナスタシア:まるで走馬灯のようなスローモーション!!俺は本能で、こいつを強敵認定しているッ!? シンデレラ:柔を以て剛を制す…お前は極東の武術を知っているか? アナスタシア:バカな一瞬で俺の横にッ!? アナスタシア:ハッ、違う!…通り過ぎたのは…俺の方だッた!? 0:ドサア!!アナスタシアは殴った勢いで地面に倒れ込んだ。 トレメイン:投げた!?いや、受け流したのか…! ドリゼラ:何が起こってるの!?どうして攻撃したはずのアナスタシアが倒れているの!? アナスタシア:くっ…まるで俺の動きに合わせて、そのまま利用したかのような… ドリゼラ:闘牛士が牛をかわすように、荒ぶる馬を馭者がなだめるように… ドリゼラ:いま、ほんの一瞬だけ!絶対的な実力差が見えたわ…! トレメイン:暴力に一切の禍根を残さぬような静謐な佇まい。社交ダンスのような武術だ。 シンデレラ:懲りるまで踊ってやるぞ、アナスタシア。 アナスタシア:調子に乗るなよ…たった一度の受け流しで。 トレメイン:そこまでだ、アナスタシア アナスタシア:母さん…! トレメイン:アナスタシア、お前に足りないのはシンデレラのような柔軟さかもしれない。 トレメイン:相手から学べ。お前はまだまだ成長できる。 ドリゼラ:それじゃあ、いいのね? トレメイン:ああ。シンデレラ、お前を家族と認めよう。 シンデレラ:いいのかい。あなた達は戦わなくて。 トレメイン:〈にやり〉ふん、いずれな。 0:ボグッ!アナスタシアがシンデレラの腹を殴る シンデレラ:ふぐッ!! アナスタシア:調子に乗るなよ。家族になったからと言ってお前は末っ子!道中の雑用はすべてこなしてもらうぞ。 シンデレラ:のぞむところ、だ… ドリゼラ:おっとと。気絶しちゃったみたい。 トレメイン:やはり無理をしていたか。 アナスタシア:まったく灰色ネズミかと思ったら、とんでもない精神力だ… トレメイン:ふふふ、かわいがってやろうじゃないか。見ろこの寝顔を。初夜を迎えた朝のお姫様のようだぜ… 0:悪の王子に焼かれた町で、新たな家族に巡り合えたシンデレラ。つかの間の静寂が、嵐の到来を予兆していた。 0:シンデレラの受難は続く。 0:第二話『屋根裏のジャック』 ジャック:チューチュッチュッチュ!シンデレラは渡さないでチュよ~! ドリゼラ:な、なに!誰なの!? トレメイン:フン、どうやら騒ぎを聞きつけたらしいな アナスタシア:囲まれた! ジャック:シンデレラを渡せトレメイン!お前ら没落貴族と違って、王子さまはシンデレラを大層気に入ってなさるのだッ! トレメイン:シンデレラ、ただの小娘かと思ったが。どうやら我がトレメイン家と深い因縁があるらしい… ドリゼラ:お母様思い直して!!シンデレラはもうトレメインの者よ! トレメイン:わかっているよ、ドリゼラ。ただネズミ、お前にはワケを話してもらうぞ。 ジャック:俺の名はジャック!我が屋根裏保安局は、王子様の命により、トレメイン家の抹殺を仰せつかっているゥ! ジャック:だがもし、シンデレラを大人しく受け渡すと言うならばァ!死ぬ前に一度だけ王子様に会わせてやると約束しようッ! アナスタシア:悪の王子!父の仇ッ! ドリゼラ:落ち着いてアナスタシア!罠に違いないわッ! ジャック:チューチュッチュッチュ!さあどうするゥ!?もっともお前らに選択肢なんて無いだろうがなあッ! トレメイン:やれやれ、困ったことだな。 アナスタシア:母さん…! トレメイン:突然の王子様からの申し出に、うちの可愛い娘たちが慌てふためいてしまったじゃあないか…。 ジャック:チュチュ、トレメイン… トレメイン:ジャックと言ったな?王子に会わせるというのは嘘ではないな… ジャック:ああ約束しよう。すべて食べかすとチーズの神に誓おう… トレメイン:誓う、か…その真意、拳で確かめさせてもらおうッ!! ジャック:いいぜえ…わざわざ灰の街に出向いた甲斐があったってもんだ…部下ども手を出すんじゃねえぞ。 0:※野次を飛ばすネズミたちのセリフ 0:「へい!おかしら!」 0:「やっちゃえ!おかしら!」 0:「いけえ!!」 ドリゼラ:お母様が戦うというの…? アナスタシア:ドリゼラは初めてだったな、よく見ておけ。トレメイン家の戦い方を。 トレメイン:はあああ… 0:チィチィチィチ…トレメインは両腕を頭上から真横へ大きく開いていく。 ジャック:チュチュ!? ドリゼラ:お母様を囲うように腕が増えていく…!? アナスタシア:ドリゼラ、おまえも見えるか。成長したな。 ドリゼラ:どういうことなの!? アナスタシア:むかしチベットの山奥に、千の腕操りし武術の達人がいたという… ドリゼラ:千の腕…? アナスタシア:俺たちはその末裔。これがトレメイン家の奥義。 アナスタシア:”ファントムリムズ・ブッディズム(輪廻の終着点)”!! ジャック:チュ…チュチュ!しょせんはファントム!幻影にすぎないッ!! トレメイン:その通りだ。ジャック。ところで貴様にはどの腕が本物か分かるか…? ジャック:そ、それは…! アナスタシア:ドリゼラ。お前にはいくつの腕が見えている? ドリゼラ:はっきり言って千本は言い過ぎね…せいぜい20といったところかしら。 アナスタシア:そうか。俺には200に見える。 ドリゼラ:!? アナスタシア:見える腕の数即ち、相手自身の経験人数… ドリゼラ:それって!? アナスタシア:死線を乗り越えた者ほど、見える腕の数は多くなる。 アナスタシア:いまネズミ野郎が対峙している相手は言うなれば… アナスタシア:今まで戦った相手、すべてだ。 ジャック:どれだ?どの腕が本物だ!?やべえ…”あの腕”があるッ!! ジャック:”あの腕”だけは勘弁だ…!畜生ッ!!”あの腕”のワケがねえ!”あの腕”のハズがねえ!! トレメイン:さあ、答えは出たか。 ジャック:う、ウオオオオ!!”プログレ・ポンジー・ボンバイエ(暴力的ネズミ講のすゝめ)”!! トレメイン:”インぺリアス(傲慢なる)… ジャック:そんな、ばかな… トレメイン:ジャッジメント(裁き)” 0:ザシュッ! トレメイン:どれが本物の腕かと聞いたな。答えは… ジャック:かはっ… トレメイン:私も知らない。 ジャック:悪魔、め…俺の負けだ。まさかトラウマの技を再現されるなんてな… ジャック:傷は浅いが、完全に戦意喪失というわけだぜ… トレメイン:私が再現したのではない。お前が発した微弱な恐怖信号が、私の身体に”こう動け”と命令したまで。 トレメイン:私はお前の要望(ニーズ)に応えただけだ。 ジャック:要望(ニーズ)だと…?俺はまだ、心のどこかで、あの悪夢を乗り越えようとしている…? トレメイン:生きている限り、敗北は終わりではない。 ジャック:チュ、チュチュ…!まさかぶっ殺そうとした相手から教訓を得るなんてな… ジャック:約束だ。お前らを王子のもとまで案内しよう… アナスタシア:いいのか?それは王子を裏切るということだぜ ジャック:食べかすの代わりに城のチーズをもらっていただけだ。もともと忠義なんてねえさ。 アナスタシア:なるほどな。だったらお前らに背中を預けることはしない。つねに前を歩いてもらおうか。 ジャック:お、一番槍を譲ってくれるのかい?太っ腹だねえ。 アナスタシア:しまった…! ドリゼラ:あはは!なんだか急に大所帯ね!シンデレラが起きたらびっくりするでしょうねっ 0:■ママの強さ、反則級…!

劇画シンデレラ 筋肉もりもり アナスタシア トレメイン トレメイン:神に選ばれし運命を トレメイン:今こそ示せシンデレラ アナスタシア:汗水たらし鍛錬を アナスタシア:積みし姿は獅子のよう ドリゼラ:魔法の杖の一振りに ドリゼラ:輝く姿勇ましく シンデレラ:異形の従者を携えて シンデレラ:悪の根城へ踏み入らん トレメイン:約束の刻 間に合わず トレメイン:笑う悪魔の罠に遭い アナスタシア:諦めかけたその時に アナスタシア:脱げたガラスの靴ひとつ ドリゼラ:靴は冥途の土産だと ドリゼラ:とどめを刺したシンデレラ シンデレラ:朽ちぬ体で悶えつつ シンデレラ:悪の王子よ何想ふ 0:第一話『灰かぶりの少女』 シンデレラ:街は灰と化した。優しかったお父様もお母様も、もういない…私は一体どうしたら。 アナスタシア:フン、生き残りがいると思ったら、どうやら汚い灰色ネズミのようだな。 ドリゼラ:ちょっと、そんなことを言ったら可哀想じゃない。ねえ、お母様? シンデレラ:誰だ!? トレメイン:情けない…両親を殺され、街を焼かれて。お前は悔しくないのか? シンデレラ:誰だと聞いているんだッ!! トレメイン:私はトレメイン夫人。いいや違う…今は未亡人だ。 シンデレラ:まさか、あなたの夫も殺されたのか? アナスタシア:黙れッ!俺の親父があんな小僧にむざむざ殺されると思うかッ!? ドリゼラ:アナスタシア、落ち着いてちょうだい! トレメイン:私の夫は王の忠実なる家臣だった。あの悪の王子が謀反を起こした時でさえ、病弱な王に味方した。 トレメイン:王は言った。「話せばわかる。トレメインよ、王子に危害を加えてはならぬ」と。 トレメイン:私の夫は王の命令を守り、何の抵抗もなしに殺されるのを選んだのだ。けれど王子は問答無用に王を殺した。 シンデレラ:そして街に火を放った… アナスタシア:悪の王子を生かしてはおけぬ。トレメインの名を汚したことを後悔させてやる。 ドリゼラ:あなたも一緒に戦いましょ?両親の名誉のために。 シンデレラ:戦う…。わかった。よろしく頼む。 トレメイン:決まりだな。灰かぶりの少女よ、名を何という? シンデレラ:シンデレラ。私の名前はシンデレラだ。 ドリゼラ:よろしくね、シンデレラっ。私はドリゼラ アナスタシア:アナスタシアだ。 トレメイン:シンデレラ、これからは何があっても行動を共にしてもらう。今日から私たちがお前の新しい家族だ。 シンデレラ:新しい、家族… アナスタシア:甘いな。 0:ドゴオ!シンデレラを殴り飛ばすアナスタシア シンデレラ:ぐっ!いきなり何をッ! ドリゼラ:あっはは!見事に吹っ飛ばされて、なんてマヌケなネズミなの!?ww シンデレラ:どういうつもりだッ!! トレメイン:口先だけの誓いなど、漢には無意味なものだ。 アナスタシア:漢なら拳。お前は俺が見定める。 シンデレラ:そういうわけか…悪いがこういうのは初めてでね… シンデレラ:手加減はできない… アナスタシア:殺す気で来い。 0:ガラガラ…瓦礫の中からゆっくりと立ち上がるシンデレラ 0:ズン…!ズン…!シンデレラは踏みしめるように一歩一歩とあるいていく アナスタシア:ほう?近づいてくるのか。たった今ぶちのめされたというのに、再び俺の間合いに入ってくるとは。 シンデレラ:私がぶちのめされることはない。アナスタシア、もうお前の拳が私に届くことすらもない アナスタシア:ほざけ! アナスタシア:オラ! 0:アナスタシアの左フックがシンデレラの目を打つ。 アナスタシア:オラ! 0:アナスタシアの右フックが顎を打ち、シンデレラはよろめく。 アナスタシア:オラア! 0:アナスタシアの右ストレートを正面に喰らって、シンデレラは地面に倒れた。 アナスタシア:このまま馬乗りになって、死ぬまで地面に殴りつけるのも悪くないぞ!! ドリゼラ:ダメよ!アナスタシア!殺してはダメ!! アナスタシア:うるさい!しょせん口だけの雑魚だッ! アナスタシア:俺はこういう出まかせ野郎が!大嫌いなんだよ! シンデレラ:今の一連の攻撃で、お前の技は完全に見切った。 0:ピタ…アナスタシアの振り上げた拳が固まる。 アナスタシア:なんだと? 0:シンデレラは鼻血をだらだらと流しながらも冷静だ。 アナスタシア:ハッ、またハッタリか。命乞いをしないだけほめてやる シンデレラ:いいや違うね…アナスタシア、私の胸から降りてくれ。 シンデレラ:口先ではないことを証明してやる。 トレメイン:アナスタシア降りなさい。 アナスタシア:母さん!? トレメイン:見せてもらおうじゃないか、瀕死の鼠の最期のあがきを。 アナスタシア:〈一瞥して〉ドリゼラ… ドリゼラ:もう、わかってるわよ。逃げようとしたら私が追うわ。どこにも逃がしやしない。あの世以外にはね。 アナスタシア:いいだろう。シュバッ!! 0:タンッ…シンデレラの胸から離れ、間合いを取るアナスタシア アナスタシア:さあ来い。 シンデレラ:…〈フラフラ〉 アナスタシア:やはり立ってやっとの状態か…これで、終わりだッ!! シンデレラ:フンッ! ドリゼラ:ばかな!ノーガード!?まるで思い切り殴れと言わんばかりに!? トレメイン:ふん… アナスタシア:おかしい…なんだ…これは無間(むげん)ッ!? アナスタシア:瞬間速度はチーターを上回る、そんな俺の拳が届かないなんてッ!? アナスタシア:遅いッ!!まだか!拳が止まって見える!どういうことだ!この異常な集中力は!? アナスタシア:まるで走馬灯のようなスローモーション!!俺は本能で、こいつを強敵認定しているッ!? シンデレラ:柔を以て剛を制す…お前は極東の武術を知っているか? アナスタシア:バカな一瞬で俺の横にッ!? アナスタシア:ハッ、違う!…通り過ぎたのは…俺の方だッた!? 0:ドサア!!アナスタシアは殴った勢いで地面に倒れ込んだ。 トレメイン:投げた!?いや、受け流したのか…! ドリゼラ:何が起こってるの!?どうして攻撃したはずのアナスタシアが倒れているの!? アナスタシア:くっ…まるで俺の動きに合わせて、そのまま利用したかのような… ドリゼラ:闘牛士が牛をかわすように、荒ぶる馬を馭者がなだめるように… ドリゼラ:いま、ほんの一瞬だけ!絶対的な実力差が見えたわ…! トレメイン:暴力に一切の禍根を残さぬような静謐な佇まい。社交ダンスのような武術だ。 シンデレラ:懲りるまで踊ってやるぞ、アナスタシア。 アナスタシア:調子に乗るなよ…たった一度の受け流しで。 トレメイン:そこまでだ、アナスタシア アナスタシア:母さん…! トレメイン:アナスタシア、お前に足りないのはシンデレラのような柔軟さかもしれない。 トレメイン:相手から学べ。お前はまだまだ成長できる。 ドリゼラ:それじゃあ、いいのね? トレメイン:ああ。シンデレラ、お前を家族と認めよう。 シンデレラ:いいのかい。あなた達は戦わなくて。 トレメイン:〈にやり〉ふん、いずれな。 0:ボグッ!アナスタシアがシンデレラの腹を殴る シンデレラ:ふぐッ!! アナスタシア:調子に乗るなよ。家族になったからと言ってお前は末っ子!道中の雑用はすべてこなしてもらうぞ。 シンデレラ:のぞむところ、だ… ドリゼラ:おっとと。気絶しちゃったみたい。 トレメイン:やはり無理をしていたか。 アナスタシア:まったく灰色ネズミかと思ったら、とんでもない精神力だ… トレメイン:ふふふ、かわいがってやろうじゃないか。見ろこの寝顔を。初夜を迎えた朝のお姫様のようだぜ… 0:悪の王子に焼かれた町で、新たな家族に巡り合えたシンデレラ。つかの間の静寂が、嵐の到来を予兆していた。 0:シンデレラの受難は続く。 0:第二話『屋根裏のジャック』 ジャック:チューチュッチュッチュ!シンデレラは渡さないでチュよ~! ドリゼラ:な、なに!誰なの!? トレメイン:フン、どうやら騒ぎを聞きつけたらしいな アナスタシア:囲まれた! ジャック:シンデレラを渡せトレメイン!お前ら没落貴族と違って、王子さまはシンデレラを大層気に入ってなさるのだッ! トレメイン:シンデレラ、ただの小娘かと思ったが。どうやら我がトレメイン家と深い因縁があるらしい… ドリゼラ:お母様思い直して!!シンデレラはもうトレメインの者よ! トレメイン:わかっているよ、ドリゼラ。ただネズミ、お前にはワケを話してもらうぞ。 ジャック:俺の名はジャック!我が屋根裏保安局は、王子様の命により、トレメイン家の抹殺を仰せつかっているゥ! ジャック:だがもし、シンデレラを大人しく受け渡すと言うならばァ!死ぬ前に一度だけ王子様に会わせてやると約束しようッ! アナスタシア:悪の王子!父の仇ッ! ドリゼラ:落ち着いてアナスタシア!罠に違いないわッ! ジャック:チューチュッチュッチュ!さあどうするゥ!?もっともお前らに選択肢なんて無いだろうがなあッ! トレメイン:やれやれ、困ったことだな。 アナスタシア:母さん…! トレメイン:突然の王子様からの申し出に、うちの可愛い娘たちが慌てふためいてしまったじゃあないか…。 ジャック:チュチュ、トレメイン… トレメイン:ジャックと言ったな?王子に会わせるというのは嘘ではないな… ジャック:ああ約束しよう。すべて食べかすとチーズの神に誓おう… トレメイン:誓う、か…その真意、拳で確かめさせてもらおうッ!! ジャック:いいぜえ…わざわざ灰の街に出向いた甲斐があったってもんだ…部下ども手を出すんじゃねえぞ。 0:※野次を飛ばすネズミたちのセリフ 0:「へい!おかしら!」 0:「やっちゃえ!おかしら!」 0:「いけえ!!」 ドリゼラ:お母様が戦うというの…? アナスタシア:ドリゼラは初めてだったな、よく見ておけ。トレメイン家の戦い方を。 トレメイン:はあああ… 0:チィチィチィチ…トレメインは両腕を頭上から真横へ大きく開いていく。 ジャック:チュチュ!? ドリゼラ:お母様を囲うように腕が増えていく…!? アナスタシア:ドリゼラ、おまえも見えるか。成長したな。 ドリゼラ:どういうことなの!? アナスタシア:むかしチベットの山奥に、千の腕操りし武術の達人がいたという… ドリゼラ:千の腕…? アナスタシア:俺たちはその末裔。これがトレメイン家の奥義。 アナスタシア:”ファントムリムズ・ブッディズム(輪廻の終着点)”!! ジャック:チュ…チュチュ!しょせんはファントム!幻影にすぎないッ!! トレメイン:その通りだ。ジャック。ところで貴様にはどの腕が本物か分かるか…? ジャック:そ、それは…! アナスタシア:ドリゼラ。お前にはいくつの腕が見えている? ドリゼラ:はっきり言って千本は言い過ぎね…せいぜい20といったところかしら。 アナスタシア:そうか。俺には200に見える。 ドリゼラ:!? アナスタシア:見える腕の数即ち、相手自身の経験人数… ドリゼラ:それって!? アナスタシア:死線を乗り越えた者ほど、見える腕の数は多くなる。 アナスタシア:いまネズミ野郎が対峙している相手は言うなれば… アナスタシア:今まで戦った相手、すべてだ。 ジャック:どれだ?どの腕が本物だ!?やべえ…”あの腕”があるッ!! ジャック:”あの腕”だけは勘弁だ…!畜生ッ!!”あの腕”のワケがねえ!”あの腕”のハズがねえ!! トレメイン:さあ、答えは出たか。 ジャック:う、ウオオオオ!!”プログレ・ポンジー・ボンバイエ(暴力的ネズミ講のすゝめ)”!! トレメイン:”インぺリアス(傲慢なる)… ジャック:そんな、ばかな… トレメイン:ジャッジメント(裁き)” 0:ザシュッ! トレメイン:どれが本物の腕かと聞いたな。答えは… ジャック:かはっ… トレメイン:私も知らない。 ジャック:悪魔、め…俺の負けだ。まさかトラウマの技を再現されるなんてな… ジャック:傷は浅いが、完全に戦意喪失というわけだぜ… トレメイン:私が再現したのではない。お前が発した微弱な恐怖信号が、私の身体に”こう動け”と命令したまで。 トレメイン:私はお前の要望(ニーズ)に応えただけだ。 ジャック:要望(ニーズ)だと…?俺はまだ、心のどこかで、あの悪夢を乗り越えようとしている…? トレメイン:生きている限り、敗北は終わりではない。 ジャック:チュ、チュチュ…!まさかぶっ殺そうとした相手から教訓を得るなんてな… ジャック:約束だ。お前らを王子のもとまで案内しよう… アナスタシア:いいのか?それは王子を裏切るということだぜ ジャック:食べかすの代わりに城のチーズをもらっていただけだ。もともと忠義なんてねえさ。 アナスタシア:なるほどな。だったらお前らに背中を預けることはしない。つねに前を歩いてもらおうか。 ジャック:お、一番槍を譲ってくれるのかい?太っ腹だねえ。 アナスタシア:しまった…! ドリゼラ:あはは!なんだか急に大所帯ね!シンデレラが起きたらびっくりするでしょうねっ 0:■ママの強さ、反則級…!