台本概要

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タイトル 【コギャル探偵AI ep.探偵の誕生日】
作者名 ハルヒコ  (@kyotaro0625)
ジャンル ミステリー
演者人数 4人用台本(女3、不問1) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 【あらすじ】
頭脳明晰な今時の女子高生『家持アイ』。
天才がゆえに孤独。
そんな彼女の唯一の友人でありクラスメイトの『新村チノ』。
ある日、そんな彼女たちが歓談しているところに、校内一の変人『キュート』がこんな話を持ち込む。
「先日起きた、転落事件。犠牲者の金木さんの魂を成仏させてあげようじゃないか……」
なにか含みを持ったキュートの言い方に猜疑心を覚えたアイは、転落事件の調査へと乗り出す。

約30分のシナリオです。

【台本利用規約】
基本的に盗作や自作発言など著作権を侵害されるような事がなければ、どの媒体で使っていただいても構いません。
アイテム等が投げられる場でもOKです。
男女逆転、アドリブ等も周りの迷惑にならない範疇では可とします。
セリフの一部抜粋、サンプルボイスに使用等も可能です。
ボイドラや舞台などで使われる際は、ご一報くださると嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
家持アイ 101 いえもちあい。テンションが常に低い。頭脳明晰な今時の女子高生。
新村チノ 76 にいむらちの。テンションが常に高い。ちょっとおバカな今時の女子高生。
キュート 不問 49 正体不明の変わり者。
石坂あかり 7 金木(かねき)をいじめていた主犯。 佐野みずほ、校長と兼任。
佐野みずほ 38 金木や石坂の担任教師。
校長 1
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
 :(家持アイと新村チノのクラス、その教室) 新村チノ:モッチー!突然ですが問題です!ジャジャン! 家持アイ:……いきなり、何? 新村チノ:前に行ってるのに戻るモノってなーんだ! 家持アイ:……。 新村チノ:《時計の真似をして》チッチッチッチッ……。 家持アイ:はぁ……。 新村チノ:さあ!こたえは!? 家持アイ:時間。もしくは本のページ。 家持アイ:もしくは…… 新村チノ:ちょちょちょ、ちょっと待って!? 新村チノ:そんな出てくるの!? 新村チノ:待ったぁ~!次!次の問題! 家持アイ:……はぁ、何? 新村チノ:はいデデン! 家持アイ:効果音統一してくんない……? 新村チノ:夜空と海底にある、共通マークってなーんだ! 家持アイ:《即答》星型。 新村チノ:はっやー! 家持アイ:……さっきからなんなの? 家持アイ:その、穴だらけの問題。 新村チノ:えっとIQが上がる名クイズ100……? 新村チノ:IQって頭良くなるってことっしょ? 新村チノ:ヤバめーって思ってポチッた! 家持アイ:くだらな……。 新村チノ:はいはい、じゃーこれは!? 新村チノ:問題、火星・愛知・マカオ・聖地、正解はどこ? 家持アイ:は? 新村チノ:あ、やっとわかんない問題来た? 新村チノ:やっぱモッチーも人間かー! 家持アイ:真ん中。 新村チノ:え? 家持アイ:だから、真ん中。もしくは中央……? 新村チノ:え、え? 家持アイ:アンタにわかりやすいように言うなら2文字目、かな。 新村チノ:ど、どゆこと? 家持アイ:アンタ小学生じゃないんだからさ。 家持アイ:ひらがな、縦読み。 家持アイ:わかった? 新村チノ:うん……? 新村チノ:かせい、あいち、まかお、せいち……2文字目……あー! 家持アイ:ホント、くだんな……。 キュート:やぁ、君たちまた面白いことしてるねぇ。 新村チノ:あ、変人キュート。 キュート:ああ、今日も最高にかわいいキュートちゃんだよお。 新村チノ:自分で言うの草~。 キュート:ところで家持ちゃん。 家持アイ:なに? キュート:今日もいつも通り退屈そうだねぇ。 家持アイ:アンタはいつも通り楽しそうでいーね。 キュート:んーにゃ?そんなことはないよぉ。 キュート:ボクは悲しい事件に胸を痛めているんだ。 新村チノ:悲しい事件? 新村チノ:もしかして、昨日の全校集会の話? 0:  :(回想) 校長:先週の金曜日、2年3組の金木さんが屋上から転落死されました。 校長:警察の方々が調査に入っています、生徒の皆さんは……  :(回想終了) 0: 新村チノ:金木って……あのいじめられてた子だよね~、確かにかわいそ~。 キュート:そうだよね~、そこで! キュート:彼女の魂がせめて安心して成仏できるよう、ボクは手助けをしてやりたいってワケさ~。 家持アイ:で? キュート:にゃ? 家持アイ:それでなんでアタシのとこくんの? 家持アイ:霊媒師にでも依頼すれば? キュート:……ふふっ。 キュート:んにゃ、そんなことじゃあダメだね、きっと彼女は納得できない。 家持アイ:……アンタ、なんで……。 家持アイ:いや、知ってること、教えて。 新村チノ:あれ!モッチーなんかやる気じゃん! 新村チノ:いつもワテカンセズ?なのにさー! キュート:それを言うなら我関せず、だね、新村ちゃん。 キュート:意味としてそう間違っていないのはご愛嬌かな……。 キュート:話が逸れたね。 キュート:そいじゃあ、いざ謎解きの戸を叩こうか! 0:  :(2年3組の教室) 石坂あかり:は!?なんであんたらまで私のとこ来るんだよ! 家持アイ:あんたらまで? 石坂あかり:警察だよ!いきなり任意同行?させられてさ!質問攻め! 石坂あかり:私がアイツいじめてたからって、どいつもこいつも私があいつを殺したって決めつけてさ! 石坂あかり:知らねーよ、私は! 石坂あかり:だいたい金木が私のこと…… キュート:まあまあ落ち着いてよ、イシザカさん。 キュート:ボクらは誰もキミが犯人だなんて言っていないよ? 石坂あかり:は!?じゃ、なんだよ!? 新村チノ:なんか、話聞いて回るんだって~。 新村チノ:だからマジ!話だけ! 家持アイ:……チノ。 新村チノ:とりま頼む~! 家持アイ:チノ。もういい。 新村チノ:かしこみかしこみ~! 新村チノ:て、え? 石坂あかり:は? 家持アイ:石坂じゃない。 キュート:お~?その心は? 家持アイ:いじめの主犯が呼んだところで行くとは思えない。 家持アイ:ましてや屋上なんて人目のない場所に。 新村チノ:え~!なんか脅されてたとかじゃない!? 家持アイ:それに……アンタ知らないの? 新村チノ:? 家持アイ:屋上は溜まり場になってた、ヤンキーグループの。 石坂あかり:そうだよ! 石坂あかり:あんな……クソ男がいる場所に近寄るかよ! 家持アイ:確か……マワされたんだよね?あのグループに。 石坂あかり:!……なんで知って 家持アイ:有名。アンタ、悪目立ちし過ぎ。 石坂あかり:……ッ!《立ち上がり出ていく》 新村チノ:あっ!ちょっとおーい! 新村チノ:行っちった……。 キュート:あーあ。 キュート:次いじめられるのはボクたちかもねぇ。 新村チノ:ええ、ヤバくない!? 家持アイ:こんなことになれば、居場所なくすのは石坂の方。 家持アイ:どうでもい、行こ。 キュート:まあさっきの説の正しさは、屋上のドアノブでも調べれば鑑識さんが証明してくれるだろうねえ……。 家持アイ:……アンタさ。 新村チノ:てかさー!ウチわかっちゃったんだけど! キュート:なにが? 新村チノ:金木さんが死んだ理由! 新村チノ:モッチーめんご!いっちぬけー! 家持アイ:一応聞くけど……なに? 新村チノ:自殺に決まってんじゃん! 新村チノ:いじめられてたんでしょー、それでさー! キュート:あー……。 家持アイ:キュート、なんも言わないで。 家持アイ:こういうとこ嫌ってないから。 新村チノ:ん?は?どゆこと? キュート:はは……。 キュート:新村ちゃん!すごい発想だ!まったく思いつかなかった! 新村チノ:だしょだしょ~♪ 新村チノ:ウチ大優勝! 家持アイ:……はぁ。 キュート:んー、じゃあ次は角度を変えてみよう。 キュート:死んでしまった、彼女についての話を聞きに行こうか。 0:  :(資料室) 新村チノ:へ~金木さんとこの担任ってサノセンだったんだ~! 佐野みずほ:そう、実はね。 佐野みずほ:キュートさんからお話はうかがってるよ。 佐野みずほ:ここでしか話せないことなんだってね。 家持アイ:……ふうん、何もかも織り込み済みって感じ。 キュート:ううん?何がかなぁ? キュート:さあさ、先生は金木さんに関しての情報を少なからず持っているはずだよ。 佐野みずほ:うん、実は彼女の相談にね、乗らせてもらったことがあるんだ。 家持アイ:相談って、いじめのことに関してですか? 佐野みずほ:そう、彼女達から話は聞いた? 家持アイ:石坂さんには少し。 佐野みずほ:酷いよね……自らのこと省みずに……。 家持アイ:金木さんが自殺した原因、アレは本当にいじめだけだと思いますか? 佐野みずほ:と言うと……他に何かあるの? 家持アイ:……わからないならいいです。 家持アイ:質問は以上です。 家持アイ:お時間取らせてすみませんでした。 家持アイ:《その場を去る》 佐野みずほ:えっ? 新村チノ:え!ちょ、モッチーそれだけ!? キュート:ありゃ。 新村チノ:もう!ちょ待ってよ~! 0:  :(教室) 家持アイ:どういうつもり……キュート。 キュート:んん~、何が? 家持アイ:……犯人、サノセンじゃん。 新村チノ:は!?えっ、マジ!? 新村チノ:なんでわかんの!? 家持アイ:簡単すぎるトラップだよ。 家持アイ:アタシはわざと金木さんが自殺した前提で話を振った、そしたら普通何か疑問を抱くはずでしょ。 家持アイ:特に石坂は他殺の疑いで警察に連れてかれてる、それなのに、ね。 新村チノ:あー!そゆこと! キュート:……ふふ、ふふふ! キュート:いやぁ、さっすが校内随一の天才といったところだねぇ。 家持アイ:あんなわかりやすい誘導しといて白々しいんだけど。 家持アイ:事件の全貌がわかりきっていながら、わざわざアタシに推理させるとか……アンタの目的は一体何? キュート:えー?んにゃあ? キュート:ボクはね、何もわかってなんかいないよ。 キュート:天才女子高生探偵さんの活躍を間近で見物したいと思ってる、ただの推理オタクさ。 家持アイ:誰が探偵……。 家持アイ:……はぁ、アンタの言うこと、全然信用ならない。 家持アイ:それで?これで犯人はわかったんだし、もういいでしょ。 キュート:じゃあ、どうするんだい? キュート:サノ先生を警察に差し出すかね? 新村チノ:そうじゃん! 新村チノ:モッチー、早くサノセンがやったって警察に言わなきゃ! 家持アイ:は?なんでアタシがそんなこと…… 新村チノ:そうじゃないと金木さんの魂が浮かばれないじゃんか! キュート:そうそう、そもそもボクたちはそれが第一の目的だったじゃないかぁ。 家持アイ:……はぁ。 家持アイ:さっきの証言だけじゃ証拠不十分だから……チノ録音よろしく。 0:  :(再び資料室) 新村チノ:サノセン! 佐野みずほ:新村さん……それにキュートさんと家持さん、さっきはどうしたの? 新村チノ:犯人は、アナタだ!《ビシッと指をさす》 佐野みずほ:え? 家持アイ:チノ、黙って。 新村チノ:はぁ~い……。 佐野みずほ:えっと……どういうこと? 佐野みずほ:犯人って、一体なんのこと? 家持アイ:すみません忘れてください。 佐野みずほ:はあ……。 佐野みずほ:ええと、それで今度は? 家持アイ:先程の繰り返しになりますが、今回の金木さんの自殺の件なのですが、いじめが原因だと思われますか? 佐野みずほ:……相談を受けていた身からすると、それが原因じゃないとは言いきれないと思う。 佐野みずほ:少なくともご家庭の環境に問題があったとは…… 家持アイ:もう結構です。 家持アイ:チノ、録音できた? 新村チノ:バッチシ! 佐野みずほ:え、録音って何なの? 新村チノ:証拠だよ証拠ー! 新村チノ:サノセンが金木さん殺した犯人だっていう! 佐野みずほ:だからなんのことって! 佐野みずほ:私が犯人!?なんでそうなるの!? 新村チノ:だって金木さんが自殺だって知ってるのおかしいじゃん!動かぬしょーこじゃんか! 佐野みずほ:そんなの職員みんな知ってるよ! 新村チノ:えっ!? 家持アイ:! キュート:あり~?だってさ、家持ちゃん? 家持アイ:……。 家持アイ:それってどういうことですか? 佐野みずほ:《ハッとし》! 佐野みずほ:だって……その…… キュート:サノ先生《ニッコリと笑いかける》 新村チノ:? 佐野みずほ:えっと、でも……。 キュート:サノ、せーんせ《さらに笑いかける》 佐野みずほ:……はぁ、わかった……。 佐野みずほ:職員集会で、警察からこんな便箋のコピーが配られたの。 新村チノ:何これ? 新村チノ:『石坂さんをゆるせません、もうげんかいです……』 新村チノ:え!?これって……! 佐野みずほ:おそらく……遺書だろうね。 新村チノ:字ガタガタじゃん……こんなに追い詰められてたんだ……。 家持アイ:……。 キュート:あーらら、振り出しに戻る、だねぇ。 キュート:いやぁ残念残念。 家持アイ:……なにか。 新村チノ:へ? 家持アイ:なにか、なにか違和感がある……。 家持アイ:戻る、考えまとめたい。 家持アイ:先生、この便箋の他に屋上でなにか見つかったものはありますか? 佐野みずほ:うーん……。 佐野みずほ:あ、便箋と一緒に封筒と靴も見つかっているけど、それ以外のものは何も出てこなかったらしいし、やっぱり自殺なんじゃないかな……? 家持アイ:わかりました、先程はすみませんでした。 家持アイ:失礼します。 0:  :(教室) 新村チノ:ねぇモッチー聞いてるー? 新村チノ:もう明日にしなーい?そろそろ下校だよ~! 家持アイ:静かにして。 家持アイ:《ブツブツと》遺書……自殺……屋上……。 キュート:うーん、埒が明かないねぇ。 新村チノ:ウチ疲れたー! 新村チノ:って、うわ!生徒指導のクサカベじゃん! 新村チノ:わ、アイツらドヤされてる~! 新村チノ:ウチらも捕まる前に帰ろ! 家持アイ:うるさ《言いかけて》あれ待って……アイツら、どっかで……。 キュート:ああ!屋上にたむろしてる例のヤンキーくん達だねぇ。 キュート:んーにゃ、そうかぁ! キュート:彼らも腐っても学生だからねえ、内申点に響いたりしたら進級に関わる、先生方にはさすがに逆らえないという感じだあねぇ。 家持アイ:屋上……溜まり場……そんなところで自殺……? 家持アイ:それはおかしい……。 家持アイ:アイツらを退けることができて、なおかつ呼び出しに応じるほど信頼にたる人物……。 家持アイ:……それなら教師全てが当てはまる……。 家持アイ:《ハッとして》職員全員が知っている? キュート:……ああ、その瞬間が欲しいんだ。 キュート:《小さな声で》家持アイ。 家持アイ:……捉えた、これが謎解きのドアノブだ。 0:  :(翌日、資料室) キュート:いやあ先生、毎度お呼び立てしてしまってすみません。 佐野みずほ:いいけど……あのまた何かあったの? 佐野みずほ:もう私が犯人だなんて言い出さないよね? キュート:もちろん、言いませんとも。 家持アイ:……ところで質問なんですが、金木さんの相談を受けていたのは佐野先生だけですか? 佐野みずほ:え?……いいえ。 佐野みずほ:保健室の池内先生や、副担任の吉岡先生なんかも…… 家持アイ:その中で一番話を聞いていたのは? 佐野みずほ:私、だけど……。 新村チノ:《こっそりと》え、やっぱサノセンが悪い系……? キュート:まださ、まだ先がある。 家持アイ:ではいじめの容疑者、石坂あかり側の話を聞いていたのは? 佐野みずほ:もちろん私がいじめのことは報告していたから、生徒指導の日下部(くさかべ)先生が石坂さんを指導していたけど……。 家持アイ:……なるほど。 家持アイ:ところで、先生は石坂あかりと金木さんが元は仲が良かったことは知っていますよね? 佐野みずほ:ええ……。 家持アイ:ところがある時をきっかけに突如、石坂あかりは金木さんをいじめるようになった。 家持アイ:きっかけはわかりますか? 佐野みずほ:いいえ、何か知ってるの? 家持アイ:石坂あかりが不良グループに輪姦されてからですよ。 佐野みずほ:その噂は聞いていたけど……。 佐野みずほ:それで、それが金木さんになにか関係があるの? 家持アイ:金木さんの元カレは不良グループのリーダーで、石坂あかり輪姦の首謀者です。 家持アイ:ご存知かと思いますが、彼だけは退学処分を言い渡されていますね。 家持アイ:ちなみにそこで不良グループと金木さんの間にも溝ができています。 佐野みずほ:それって……彼氏がやったことで恨みを買ったってこと!? 佐野みずほ:そんなのあんまりにも…… 家持アイ:早まらないでください。 家持アイ:石坂あかりの事件はその彼氏ではなく、金木さんの指示だった、とすれば? 新村チノ:ちょっちちょっち~!話ズレてない? 新村チノ:いじめがどっちが先かとかは今はどうでもいいんじゃないの!? 新村チノ:ウチまず犯人が知りたいんだけど! 家持アイ:はぁ、チノ……。 家持アイ:まあ確かに話の整理がてら、質問に戻りましょうか。 家持アイ:佐野先生、職員会議で『警察から』便箋のコピーを配られたと言っていましたね? 家持アイ:それはどういう意味ですか? 佐野みずほ:えっ。コピー用紙が配られて、警察から自殺の証拠が出たって……。 家持アイ:そのコピー用紙は一体誰が配ったんですか? 家持アイ:警察の人が直接? 家持アイ:自殺の証拠が出たと発言したのは? 佐野みずほ:!……生徒指導の、日下部(くさかべ)先生だった……。 佐野みずほ:確かに警察の人から直接じゃない! 家持アイ:まあつまり、この時点で職員全員に事件は自殺だと思わせた。 家持アイ:犯人が職員だとわかっても的を絞らせないために。 家持アイ:あるいは、誰も他殺だと疑わないように。 家持アイ:いずれは全生徒にまでそういう情報を刷り込もうとした、その一歩だったかもしれない。 佐野みずほ:……ッ! 新村チノ:えっ、それで!? 家持アイ:他殺であることを憶測することなんて簡単。 家持アイ:まず、コピーの便箋の字明らかにガタガタでとても机の上などで書いたとは思えない。 家持アイ:そして気づいた、あれは屋上のコンクリートの上で書いた字だと。 佐野みずほ:じゃあ、その場で思い詰めて突発的に書いた、とか……? 家持アイ:それならわざわざ律儀に封筒に入れると思う?そもそも便箋なんかに書くかも怪しい。 家持アイ:これは、用意された便箋にその場で書かされたことを案に示してる。 佐野みずほ:屋上のコンクリートでってとこまではわかった、だけど……誰かに書かされたっていうのは、憶測の域を出ないと思うんだけど……。 家持アイ:憶測を確証に変えるのがあと1つの不可解な点。 佐野みずほ:? 家持アイ:アタシは昨日最後にこう聞きましたよね? 家持アイ:他に残されたものはなかったか、と。 家持アイ:そして答えはこう、靴と封筒以外は何も無かった。 新村チノ:あ!言ってたね確かに! 佐野みずほ:ええ……。 家持アイ:普通に考えておかしくない? 家持アイ:屋上で書き物をしたのに、なんでペンがないわけ? 佐野みずほ:! 新村チノ:あ! キュート:ふ、ふ。 家持アイ:犯人が持ち帰った、もしくは隠した。 家持アイ:証拠隠滅のために。 家持アイ:つまり、金木さんを自殺に見立てて殺害した犯人はいる、そしてそれは生徒指導の日下部(くさかべ)だ。 佐野みずほ:ちょっと待って、確かにコピー用紙を配ったのは日下部(くさかべ)先生だけど、彼が金木さんを殺す動機がまだわからない! 新村チノ:確かにー! 家持アイ:日下部(くさかべ)が石坂あかりに特別な感情を抱いていたら? 佐野みずほ:え!? キュート:くく、くくく! 家持アイ:……先程の話に戻ります。 家持アイ:先程石坂あかりの話を1番聞き、指導する機会が多いのは日下部(くさかべ)だと言った。 家持アイ:そして、金木さんは石坂あかりをマワした主犯だと言っても違いない。 家持アイ:何となくつじつまが合ってきませんか? 佐野みずほ:……ッ《口を抑える》 新村チノ:ヤッバー!クサカベ激やばじゃん! 家持アイ:ま、動機の話はそれこそホントに想像だけだから。 家持アイ:でもこれだけ不審な状況証拠が出れば警察もきっと動く。 家持アイ:あとはアッチが日下部(くさかべ)を煮るなり焼くなりすればいずれ真相はわかるよ。 0:  :(数日後、教室) キュート:号外号外だよお! 新村チノ:金木さん殺害事件のほーこく、来た!? キュート:大正解~新村ちゃんに1億万点♪ 新村チノ:やったーーーー! 家持アイ:桁キモいの気づけって……。 新村チノ:それで!?結局は!? 新村チノ:クサカベってどーなったの!? キュート:まあまあ落ち着いて~。 キュート:クサカベはあれから警察に連行されて自供、動機はまさに家持ちゃんの読み通り! キュート:さすが!名探偵! 新村チノ:やっぱか~! 新村チノ:すごすぎるモッチー!お手柄じゃん! 家持アイ:あっそ……。 新村チノ:や~これで金木さんの魂も無事成仏か~! 新村チノ:うんうん、いいことしたあとは気持ちがいいね! キュート:はは、まあ新村ちゃんの名推理ー……も途中で光ってたしねえ! キュート:いやー2人揃って名コンビだったねえ! キュート:まさに令和のシャーロック・ホームズが如し!なーんて! 家持アイ:ウザ……。 新村チノ:あーでも1つだけまだ気になっててさー。 新村チノ:金木さんが彼氏に指示したってなんでわかったんー? 家持アイ:……『だいたい金木が私のこと……』 家持アイ:『あんなクソ男がいる場所』……。 新村チノ:え、なに? 家持アイ:……石坂あかりが最初の時に言ってた言葉。 家持アイ:普通マワされたらクソ男“達”とか言わない?特定の人物だけを指すのは違和感。 家持アイ:そんでそっから調べてみたら金木さんの元カレがいて……って感じ。 家持アイ:その先は単なる推測だったけどね。 新村チノ:えっえっ何それ、いつのセリフ!? 新村チノ:意味わかんないんだけど! 新村チノ:頭パンクしそう! キュート:はっは、いやー、まー世の中忘れた方がいいこともあるってことで! キュート:それではめでたしめでたし。 0:  :(人気のない美術室)  :(キュートが机に座っている)  :(そこに家持アイが入ってくる) 家持アイ:アンタさ、ホントなんなの? キュート:んん~?なにって、なにがぁ? 家持アイ:とぼけるな、アンタは最初から金木さんの事件が他殺だったことも……それから警察がちゃんと他殺と断定していたことも知っていた。 家持アイ:それどころか犯人もその手口さえも知っているような言動もあった。 キュート:……それで? 家持アイ:お前は誰だ。 キュート:今日も最高に可愛いキュートちゃん♪ 家持アイ:《睨みつける》 キュート:……ひひ、コワイコワイ。 キュート:蛇に睨まれた蛙だね、これは。 キュート:んにゃあ、そうだなあ……実はボク1つ嘘をついてたんだぁ。 家持アイ:嘘? キュート:ボクはただの推理オタクって言ったよねえ。 キュート:まあそれも間違っちゃあいないんだが……ホントはファンなんだ、ドがつくほどのね。 家持アイ:? キュート:キミだよ、家持アイさん。 キュート:ボクは君の最高のファンでありたいのさ。  :(少し遠くからチノの声がして) 新村チノ:《少し遠くから》モッチー?どこいんのー? 新村チノ:帰りモック寄って帰ろーよー? キュート:あーらぁ、お時間かな……。 キュート:じゃね、家持ちゃん。 キュート:大丈夫、また会うさ。 キュート:この世に謎がある限りずっとね。 キュート:よっと。《窓枠に足をかける》 家持アイ:!?なにして…… キュート:またね。《窓から飛び降りる》 家持アイ:! 新村チノ:《教室に入ってきて》あ!モッチーやっと見つけたー! 新村チノ:……ん?どしたん? 家持アイ:キュートが……窓から、飛び降りた。 新村チノ:え!?ウソ!? 新村チノ:《窓に近寄り下を覗く》どこどこ? 新村チノ:え、どこ? 家持アイ:?《ソロリと窓に近寄り下を覗く》 家持アイ:……いない。 新村チノ:ヤッバー! 家持アイ:は? 新村チノ:モッチーからこーゆうこと初めてされたわ~! 新村チノ:パンチ効いてんね~! 新村チノ:てかなんでキュート!?あいつマジ飛びそうじゃね? 新村チノ:リアル感ぱなかったわ~!いやービビった~!《ケラケラ笑う》 家持アイ:……《緊迫感が解け》はぁ。 新村チノ:モッチー、はよモックの花見バーガー食べ行こ! 新村チノ:驚いたら腹減ったわ~!ウチ、肉倍ましにしよ~! 家持アイ:……ふ。 家持アイ:アンタのそういうとこ別に嫌いじゃないよ。 新村チノ:え!マ!? 新村チノ:モッチー今笑った!? 家持アイ:は? 新村チノ:ね、もっかい!もっかい笑ってみて! 新村チノ:低血圧ギャルの貴重なテンアゲシーン! 家持アイ:意味わかんないから……。 新村チノ:ま、いっか!ウチといたらどうせまた笑うっしょ! 新村チノ:ウチおもしれー女?だから! 家持アイ:はいはい……。 家持アイ:《しばし足を止めつぶやく》シャーロック・ホームズか……悪くは、ないかもね。  :   :   :  :Fin.

 :(家持アイと新村チノのクラス、その教室) 新村チノ:モッチー!突然ですが問題です!ジャジャン! 家持アイ:……いきなり、何? 新村チノ:前に行ってるのに戻るモノってなーんだ! 家持アイ:……。 新村チノ:《時計の真似をして》チッチッチッチッ……。 家持アイ:はぁ……。 新村チノ:さあ!こたえは!? 家持アイ:時間。もしくは本のページ。 家持アイ:もしくは…… 新村チノ:ちょちょちょ、ちょっと待って!? 新村チノ:そんな出てくるの!? 新村チノ:待ったぁ~!次!次の問題! 家持アイ:……はぁ、何? 新村チノ:はいデデン! 家持アイ:効果音統一してくんない……? 新村チノ:夜空と海底にある、共通マークってなーんだ! 家持アイ:《即答》星型。 新村チノ:はっやー! 家持アイ:……さっきからなんなの? 家持アイ:その、穴だらけの問題。 新村チノ:えっとIQが上がる名クイズ100……? 新村チノ:IQって頭良くなるってことっしょ? 新村チノ:ヤバめーって思ってポチッた! 家持アイ:くだらな……。 新村チノ:はいはい、じゃーこれは!? 新村チノ:問題、火星・愛知・マカオ・聖地、正解はどこ? 家持アイ:は? 新村チノ:あ、やっとわかんない問題来た? 新村チノ:やっぱモッチーも人間かー! 家持アイ:真ん中。 新村チノ:え? 家持アイ:だから、真ん中。もしくは中央……? 新村チノ:え、え? 家持アイ:アンタにわかりやすいように言うなら2文字目、かな。 新村チノ:ど、どゆこと? 家持アイ:アンタ小学生じゃないんだからさ。 家持アイ:ひらがな、縦読み。 家持アイ:わかった? 新村チノ:うん……? 新村チノ:かせい、あいち、まかお、せいち……2文字目……あー! 家持アイ:ホント、くだんな……。 キュート:やぁ、君たちまた面白いことしてるねぇ。 新村チノ:あ、変人キュート。 キュート:ああ、今日も最高にかわいいキュートちゃんだよお。 新村チノ:自分で言うの草~。 キュート:ところで家持ちゃん。 家持アイ:なに? キュート:今日もいつも通り退屈そうだねぇ。 家持アイ:アンタはいつも通り楽しそうでいーね。 キュート:んーにゃ?そんなことはないよぉ。 キュート:ボクは悲しい事件に胸を痛めているんだ。 新村チノ:悲しい事件? 新村チノ:もしかして、昨日の全校集会の話? 0:  :(回想) 校長:先週の金曜日、2年3組の金木さんが屋上から転落死されました。 校長:警察の方々が調査に入っています、生徒の皆さんは……  :(回想終了) 0: 新村チノ:金木って……あのいじめられてた子だよね~、確かにかわいそ~。 キュート:そうだよね~、そこで! キュート:彼女の魂がせめて安心して成仏できるよう、ボクは手助けをしてやりたいってワケさ~。 家持アイ:で? キュート:にゃ? 家持アイ:それでなんでアタシのとこくんの? 家持アイ:霊媒師にでも依頼すれば? キュート:……ふふっ。 キュート:んにゃ、そんなことじゃあダメだね、きっと彼女は納得できない。 家持アイ:……アンタ、なんで……。 家持アイ:いや、知ってること、教えて。 新村チノ:あれ!モッチーなんかやる気じゃん! 新村チノ:いつもワテカンセズ?なのにさー! キュート:それを言うなら我関せず、だね、新村ちゃん。 キュート:意味としてそう間違っていないのはご愛嬌かな……。 キュート:話が逸れたね。 キュート:そいじゃあ、いざ謎解きの戸を叩こうか! 0:  :(2年3組の教室) 石坂あかり:は!?なんであんたらまで私のとこ来るんだよ! 家持アイ:あんたらまで? 石坂あかり:警察だよ!いきなり任意同行?させられてさ!質問攻め! 石坂あかり:私がアイツいじめてたからって、どいつもこいつも私があいつを殺したって決めつけてさ! 石坂あかり:知らねーよ、私は! 石坂あかり:だいたい金木が私のこと…… キュート:まあまあ落ち着いてよ、イシザカさん。 キュート:ボクらは誰もキミが犯人だなんて言っていないよ? 石坂あかり:は!?じゃ、なんだよ!? 新村チノ:なんか、話聞いて回るんだって~。 新村チノ:だからマジ!話だけ! 家持アイ:……チノ。 新村チノ:とりま頼む~! 家持アイ:チノ。もういい。 新村チノ:かしこみかしこみ~! 新村チノ:て、え? 石坂あかり:は? 家持アイ:石坂じゃない。 キュート:お~?その心は? 家持アイ:いじめの主犯が呼んだところで行くとは思えない。 家持アイ:ましてや屋上なんて人目のない場所に。 新村チノ:え~!なんか脅されてたとかじゃない!? 家持アイ:それに……アンタ知らないの? 新村チノ:? 家持アイ:屋上は溜まり場になってた、ヤンキーグループの。 石坂あかり:そうだよ! 石坂あかり:あんな……クソ男がいる場所に近寄るかよ! 家持アイ:確か……マワされたんだよね?あのグループに。 石坂あかり:!……なんで知って 家持アイ:有名。アンタ、悪目立ちし過ぎ。 石坂あかり:……ッ!《立ち上がり出ていく》 新村チノ:あっ!ちょっとおーい! 新村チノ:行っちった……。 キュート:あーあ。 キュート:次いじめられるのはボクたちかもねぇ。 新村チノ:ええ、ヤバくない!? 家持アイ:こんなことになれば、居場所なくすのは石坂の方。 家持アイ:どうでもい、行こ。 キュート:まあさっきの説の正しさは、屋上のドアノブでも調べれば鑑識さんが証明してくれるだろうねえ……。 家持アイ:……アンタさ。 新村チノ:てかさー!ウチわかっちゃったんだけど! キュート:なにが? 新村チノ:金木さんが死んだ理由! 新村チノ:モッチーめんご!いっちぬけー! 家持アイ:一応聞くけど……なに? 新村チノ:自殺に決まってんじゃん! 新村チノ:いじめられてたんでしょー、それでさー! キュート:あー……。 家持アイ:キュート、なんも言わないで。 家持アイ:こういうとこ嫌ってないから。 新村チノ:ん?は?どゆこと? キュート:はは……。 キュート:新村ちゃん!すごい発想だ!まったく思いつかなかった! 新村チノ:だしょだしょ~♪ 新村チノ:ウチ大優勝! 家持アイ:……はぁ。 キュート:んー、じゃあ次は角度を変えてみよう。 キュート:死んでしまった、彼女についての話を聞きに行こうか。 0:  :(資料室) 新村チノ:へ~金木さんとこの担任ってサノセンだったんだ~! 佐野みずほ:そう、実はね。 佐野みずほ:キュートさんからお話はうかがってるよ。 佐野みずほ:ここでしか話せないことなんだってね。 家持アイ:……ふうん、何もかも織り込み済みって感じ。 キュート:ううん?何がかなぁ? キュート:さあさ、先生は金木さんに関しての情報を少なからず持っているはずだよ。 佐野みずほ:うん、実は彼女の相談にね、乗らせてもらったことがあるんだ。 家持アイ:相談って、いじめのことに関してですか? 佐野みずほ:そう、彼女達から話は聞いた? 家持アイ:石坂さんには少し。 佐野みずほ:酷いよね……自らのこと省みずに……。 家持アイ:金木さんが自殺した原因、アレは本当にいじめだけだと思いますか? 佐野みずほ:と言うと……他に何かあるの? 家持アイ:……わからないならいいです。 家持アイ:質問は以上です。 家持アイ:お時間取らせてすみませんでした。 家持アイ:《その場を去る》 佐野みずほ:えっ? 新村チノ:え!ちょ、モッチーそれだけ!? キュート:ありゃ。 新村チノ:もう!ちょ待ってよ~! 0:  :(教室) 家持アイ:どういうつもり……キュート。 キュート:んん~、何が? 家持アイ:……犯人、サノセンじゃん。 新村チノ:は!?えっ、マジ!? 新村チノ:なんでわかんの!? 家持アイ:簡単すぎるトラップだよ。 家持アイ:アタシはわざと金木さんが自殺した前提で話を振った、そしたら普通何か疑問を抱くはずでしょ。 家持アイ:特に石坂は他殺の疑いで警察に連れてかれてる、それなのに、ね。 新村チノ:あー!そゆこと! キュート:……ふふ、ふふふ! キュート:いやぁ、さっすが校内随一の天才といったところだねぇ。 家持アイ:あんなわかりやすい誘導しといて白々しいんだけど。 家持アイ:事件の全貌がわかりきっていながら、わざわざアタシに推理させるとか……アンタの目的は一体何? キュート:えー?んにゃあ? キュート:ボクはね、何もわかってなんかいないよ。 キュート:天才女子高生探偵さんの活躍を間近で見物したいと思ってる、ただの推理オタクさ。 家持アイ:誰が探偵……。 家持アイ:……はぁ、アンタの言うこと、全然信用ならない。 家持アイ:それで?これで犯人はわかったんだし、もういいでしょ。 キュート:じゃあ、どうするんだい? キュート:サノ先生を警察に差し出すかね? 新村チノ:そうじゃん! 新村チノ:モッチー、早くサノセンがやったって警察に言わなきゃ! 家持アイ:は?なんでアタシがそんなこと…… 新村チノ:そうじゃないと金木さんの魂が浮かばれないじゃんか! キュート:そうそう、そもそもボクたちはそれが第一の目的だったじゃないかぁ。 家持アイ:……はぁ。 家持アイ:さっきの証言だけじゃ証拠不十分だから……チノ録音よろしく。 0:  :(再び資料室) 新村チノ:サノセン! 佐野みずほ:新村さん……それにキュートさんと家持さん、さっきはどうしたの? 新村チノ:犯人は、アナタだ!《ビシッと指をさす》 佐野みずほ:え? 家持アイ:チノ、黙って。 新村チノ:はぁ~い……。 佐野みずほ:えっと……どういうこと? 佐野みずほ:犯人って、一体なんのこと? 家持アイ:すみません忘れてください。 佐野みずほ:はあ……。 佐野みずほ:ええと、それで今度は? 家持アイ:先程の繰り返しになりますが、今回の金木さんの自殺の件なのですが、いじめが原因だと思われますか? 佐野みずほ:……相談を受けていた身からすると、それが原因じゃないとは言いきれないと思う。 佐野みずほ:少なくともご家庭の環境に問題があったとは…… 家持アイ:もう結構です。 家持アイ:チノ、録音できた? 新村チノ:バッチシ! 佐野みずほ:え、録音って何なの? 新村チノ:証拠だよ証拠ー! 新村チノ:サノセンが金木さん殺した犯人だっていう! 佐野みずほ:だからなんのことって! 佐野みずほ:私が犯人!?なんでそうなるの!? 新村チノ:だって金木さんが自殺だって知ってるのおかしいじゃん!動かぬしょーこじゃんか! 佐野みずほ:そんなの職員みんな知ってるよ! 新村チノ:えっ!? 家持アイ:! キュート:あり~?だってさ、家持ちゃん? 家持アイ:……。 家持アイ:それってどういうことですか? 佐野みずほ:《ハッとし》! 佐野みずほ:だって……その…… キュート:サノ先生《ニッコリと笑いかける》 新村チノ:? 佐野みずほ:えっと、でも……。 キュート:サノ、せーんせ《さらに笑いかける》 佐野みずほ:……はぁ、わかった……。 佐野みずほ:職員集会で、警察からこんな便箋のコピーが配られたの。 新村チノ:何これ? 新村チノ:『石坂さんをゆるせません、もうげんかいです……』 新村チノ:え!?これって……! 佐野みずほ:おそらく……遺書だろうね。 新村チノ:字ガタガタじゃん……こんなに追い詰められてたんだ……。 家持アイ:……。 キュート:あーらら、振り出しに戻る、だねぇ。 キュート:いやぁ残念残念。 家持アイ:……なにか。 新村チノ:へ? 家持アイ:なにか、なにか違和感がある……。 家持アイ:戻る、考えまとめたい。 家持アイ:先生、この便箋の他に屋上でなにか見つかったものはありますか? 佐野みずほ:うーん……。 佐野みずほ:あ、便箋と一緒に封筒と靴も見つかっているけど、それ以外のものは何も出てこなかったらしいし、やっぱり自殺なんじゃないかな……? 家持アイ:わかりました、先程はすみませんでした。 家持アイ:失礼します。 0:  :(教室) 新村チノ:ねぇモッチー聞いてるー? 新村チノ:もう明日にしなーい?そろそろ下校だよ~! 家持アイ:静かにして。 家持アイ:《ブツブツと》遺書……自殺……屋上……。 キュート:うーん、埒が明かないねぇ。 新村チノ:ウチ疲れたー! 新村チノ:って、うわ!生徒指導のクサカベじゃん! 新村チノ:わ、アイツらドヤされてる~! 新村チノ:ウチらも捕まる前に帰ろ! 家持アイ:うるさ《言いかけて》あれ待って……アイツら、どっかで……。 キュート:ああ!屋上にたむろしてる例のヤンキーくん達だねぇ。 キュート:んーにゃ、そうかぁ! キュート:彼らも腐っても学生だからねえ、内申点に響いたりしたら進級に関わる、先生方にはさすがに逆らえないという感じだあねぇ。 家持アイ:屋上……溜まり場……そんなところで自殺……? 家持アイ:それはおかしい……。 家持アイ:アイツらを退けることができて、なおかつ呼び出しに応じるほど信頼にたる人物……。 家持アイ:……それなら教師全てが当てはまる……。 家持アイ:《ハッとして》職員全員が知っている? キュート:……ああ、その瞬間が欲しいんだ。 キュート:《小さな声で》家持アイ。 家持アイ:……捉えた、これが謎解きのドアノブだ。 0:  :(翌日、資料室) キュート:いやあ先生、毎度お呼び立てしてしまってすみません。 佐野みずほ:いいけど……あのまた何かあったの? 佐野みずほ:もう私が犯人だなんて言い出さないよね? キュート:もちろん、言いませんとも。 家持アイ:……ところで質問なんですが、金木さんの相談を受けていたのは佐野先生だけですか? 佐野みずほ:え?……いいえ。 佐野みずほ:保健室の池内先生や、副担任の吉岡先生なんかも…… 家持アイ:その中で一番話を聞いていたのは? 佐野みずほ:私、だけど……。 新村チノ:《こっそりと》え、やっぱサノセンが悪い系……? キュート:まださ、まだ先がある。 家持アイ:ではいじめの容疑者、石坂あかり側の話を聞いていたのは? 佐野みずほ:もちろん私がいじめのことは報告していたから、生徒指導の日下部(くさかべ)先生が石坂さんを指導していたけど……。 家持アイ:……なるほど。 家持アイ:ところで、先生は石坂あかりと金木さんが元は仲が良かったことは知っていますよね? 佐野みずほ:ええ……。 家持アイ:ところがある時をきっかけに突如、石坂あかりは金木さんをいじめるようになった。 家持アイ:きっかけはわかりますか? 佐野みずほ:いいえ、何か知ってるの? 家持アイ:石坂あかりが不良グループに輪姦されてからですよ。 佐野みずほ:その噂は聞いていたけど……。 佐野みずほ:それで、それが金木さんになにか関係があるの? 家持アイ:金木さんの元カレは不良グループのリーダーで、石坂あかり輪姦の首謀者です。 家持アイ:ご存知かと思いますが、彼だけは退学処分を言い渡されていますね。 家持アイ:ちなみにそこで不良グループと金木さんの間にも溝ができています。 佐野みずほ:それって……彼氏がやったことで恨みを買ったってこと!? 佐野みずほ:そんなのあんまりにも…… 家持アイ:早まらないでください。 家持アイ:石坂あかりの事件はその彼氏ではなく、金木さんの指示だった、とすれば? 新村チノ:ちょっちちょっち~!話ズレてない? 新村チノ:いじめがどっちが先かとかは今はどうでもいいんじゃないの!? 新村チノ:ウチまず犯人が知りたいんだけど! 家持アイ:はぁ、チノ……。 家持アイ:まあ確かに話の整理がてら、質問に戻りましょうか。 家持アイ:佐野先生、職員会議で『警察から』便箋のコピーを配られたと言っていましたね? 家持アイ:それはどういう意味ですか? 佐野みずほ:えっ。コピー用紙が配られて、警察から自殺の証拠が出たって……。 家持アイ:そのコピー用紙は一体誰が配ったんですか? 家持アイ:警察の人が直接? 家持アイ:自殺の証拠が出たと発言したのは? 佐野みずほ:!……生徒指導の、日下部(くさかべ)先生だった……。 佐野みずほ:確かに警察の人から直接じゃない! 家持アイ:まあつまり、この時点で職員全員に事件は自殺だと思わせた。 家持アイ:犯人が職員だとわかっても的を絞らせないために。 家持アイ:あるいは、誰も他殺だと疑わないように。 家持アイ:いずれは全生徒にまでそういう情報を刷り込もうとした、その一歩だったかもしれない。 佐野みずほ:……ッ! 新村チノ:えっ、それで!? 家持アイ:他殺であることを憶測することなんて簡単。 家持アイ:まず、コピーの便箋の字明らかにガタガタでとても机の上などで書いたとは思えない。 家持アイ:そして気づいた、あれは屋上のコンクリートの上で書いた字だと。 佐野みずほ:じゃあ、その場で思い詰めて突発的に書いた、とか……? 家持アイ:それならわざわざ律儀に封筒に入れると思う?そもそも便箋なんかに書くかも怪しい。 家持アイ:これは、用意された便箋にその場で書かされたことを案に示してる。 佐野みずほ:屋上のコンクリートでってとこまではわかった、だけど……誰かに書かされたっていうのは、憶測の域を出ないと思うんだけど……。 家持アイ:憶測を確証に変えるのがあと1つの不可解な点。 佐野みずほ:? 家持アイ:アタシは昨日最後にこう聞きましたよね? 家持アイ:他に残されたものはなかったか、と。 家持アイ:そして答えはこう、靴と封筒以外は何も無かった。 新村チノ:あ!言ってたね確かに! 佐野みずほ:ええ……。 家持アイ:普通に考えておかしくない? 家持アイ:屋上で書き物をしたのに、なんでペンがないわけ? 佐野みずほ:! 新村チノ:あ! キュート:ふ、ふ。 家持アイ:犯人が持ち帰った、もしくは隠した。 家持アイ:証拠隠滅のために。 家持アイ:つまり、金木さんを自殺に見立てて殺害した犯人はいる、そしてそれは生徒指導の日下部(くさかべ)だ。 佐野みずほ:ちょっと待って、確かにコピー用紙を配ったのは日下部(くさかべ)先生だけど、彼が金木さんを殺す動機がまだわからない! 新村チノ:確かにー! 家持アイ:日下部(くさかべ)が石坂あかりに特別な感情を抱いていたら? 佐野みずほ:え!? キュート:くく、くくく! 家持アイ:……先程の話に戻ります。 家持アイ:先程石坂あかりの話を1番聞き、指導する機会が多いのは日下部(くさかべ)だと言った。 家持アイ:そして、金木さんは石坂あかりをマワした主犯だと言っても違いない。 家持アイ:何となくつじつまが合ってきませんか? 佐野みずほ:……ッ《口を抑える》 新村チノ:ヤッバー!クサカベ激やばじゃん! 家持アイ:ま、動機の話はそれこそホントに想像だけだから。 家持アイ:でもこれだけ不審な状況証拠が出れば警察もきっと動く。 家持アイ:あとはアッチが日下部(くさかべ)を煮るなり焼くなりすればいずれ真相はわかるよ。 0:  :(数日後、教室) キュート:号外号外だよお! 新村チノ:金木さん殺害事件のほーこく、来た!? キュート:大正解~新村ちゃんに1億万点♪ 新村チノ:やったーーーー! 家持アイ:桁キモいの気づけって……。 新村チノ:それで!?結局は!? 新村チノ:クサカベってどーなったの!? キュート:まあまあ落ち着いて~。 キュート:クサカベはあれから警察に連行されて自供、動機はまさに家持ちゃんの読み通り! キュート:さすが!名探偵! 新村チノ:やっぱか~! 新村チノ:すごすぎるモッチー!お手柄じゃん! 家持アイ:あっそ……。 新村チノ:や~これで金木さんの魂も無事成仏か~! 新村チノ:うんうん、いいことしたあとは気持ちがいいね! キュート:はは、まあ新村ちゃんの名推理ー……も途中で光ってたしねえ! キュート:いやー2人揃って名コンビだったねえ! キュート:まさに令和のシャーロック・ホームズが如し!なーんて! 家持アイ:ウザ……。 新村チノ:あーでも1つだけまだ気になっててさー。 新村チノ:金木さんが彼氏に指示したってなんでわかったんー? 家持アイ:……『だいたい金木が私のこと……』 家持アイ:『あんなクソ男がいる場所』……。 新村チノ:え、なに? 家持アイ:……石坂あかりが最初の時に言ってた言葉。 家持アイ:普通マワされたらクソ男“達”とか言わない?特定の人物だけを指すのは違和感。 家持アイ:そんでそっから調べてみたら金木さんの元カレがいて……って感じ。 家持アイ:その先は単なる推測だったけどね。 新村チノ:えっえっ何それ、いつのセリフ!? 新村チノ:意味わかんないんだけど! 新村チノ:頭パンクしそう! キュート:はっは、いやー、まー世の中忘れた方がいいこともあるってことで! キュート:それではめでたしめでたし。 0:  :(人気のない美術室)  :(キュートが机に座っている)  :(そこに家持アイが入ってくる) 家持アイ:アンタさ、ホントなんなの? キュート:んん~?なにって、なにがぁ? 家持アイ:とぼけるな、アンタは最初から金木さんの事件が他殺だったことも……それから警察がちゃんと他殺と断定していたことも知っていた。 家持アイ:それどころか犯人もその手口さえも知っているような言動もあった。 キュート:……それで? 家持アイ:お前は誰だ。 キュート:今日も最高に可愛いキュートちゃん♪ 家持アイ:《睨みつける》 キュート:……ひひ、コワイコワイ。 キュート:蛇に睨まれた蛙だね、これは。 キュート:んにゃあ、そうだなあ……実はボク1つ嘘をついてたんだぁ。 家持アイ:嘘? キュート:ボクはただの推理オタクって言ったよねえ。 キュート:まあそれも間違っちゃあいないんだが……ホントはファンなんだ、ドがつくほどのね。 家持アイ:? キュート:キミだよ、家持アイさん。 キュート:ボクは君の最高のファンでありたいのさ。  :(少し遠くからチノの声がして) 新村チノ:《少し遠くから》モッチー?どこいんのー? 新村チノ:帰りモック寄って帰ろーよー? キュート:あーらぁ、お時間かな……。 キュート:じゃね、家持ちゃん。 キュート:大丈夫、また会うさ。 キュート:この世に謎がある限りずっとね。 キュート:よっと。《窓枠に足をかける》 家持アイ:!?なにして…… キュート:またね。《窓から飛び降りる》 家持アイ:! 新村チノ:《教室に入ってきて》あ!モッチーやっと見つけたー! 新村チノ:……ん?どしたん? 家持アイ:キュートが……窓から、飛び降りた。 新村チノ:え!?ウソ!? 新村チノ:《窓に近寄り下を覗く》どこどこ? 新村チノ:え、どこ? 家持アイ:?《ソロリと窓に近寄り下を覗く》 家持アイ:……いない。 新村チノ:ヤッバー! 家持アイ:は? 新村チノ:モッチーからこーゆうこと初めてされたわ~! 新村チノ:パンチ効いてんね~! 新村チノ:てかなんでキュート!?あいつマジ飛びそうじゃね? 新村チノ:リアル感ぱなかったわ~!いやービビった~!《ケラケラ笑う》 家持アイ:……《緊迫感が解け》はぁ。 新村チノ:モッチー、はよモックの花見バーガー食べ行こ! 新村チノ:驚いたら腹減ったわ~!ウチ、肉倍ましにしよ~! 家持アイ:……ふ。 家持アイ:アンタのそういうとこ別に嫌いじゃないよ。 新村チノ:え!マ!? 新村チノ:モッチー今笑った!? 家持アイ:は? 新村チノ:ね、もっかい!もっかい笑ってみて! 新村チノ:低血圧ギャルの貴重なテンアゲシーン! 家持アイ:意味わかんないから……。 新村チノ:ま、いっか!ウチといたらどうせまた笑うっしょ! 新村チノ:ウチおもしれー女?だから! 家持アイ:はいはい……。 家持アイ:《しばし足を止めつぶやく》シャーロック・ホームズか……悪くは、ないかもね。  :   :   :  :Fin.