台本概要

 218 views 

タイトル ite-デーモンハーツ-
作者名 桜蛇あねり(おうじゃあねり)  (@aneri_writer)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男3、女2)
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 iteシリーズ第4作目。
魔族が頂点にたち、人間が支配されている世界、サタナーク。
悪魔族の魔王がトップに君臨し、この国を統治していた。
桜蛇あねりの台本「魔王を倒しにきたらお留守でした」「魔王を倒しにきたら反抗期でした」から続くお話。
(この二つの台本を読んでいなくても、わかるようになっていますが、事前に目を通しておくと世界観・キャラ設定等がよくわかると思います)

※世界観を壊さない程度のアドリブ等はOKです。

『ite』シリーズ
0. ラスト・ブラック
1. ite-ロジカルハーツ- 桜蛇あねり、天駆ケイとのコラボ台本
2. ite-ドラゴンハーツ- 
3. ite-マーメイドハーツ-
4. ite-デーモンハーツ-

 218 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ライ 80 ディア村いちのセイバー。魔法よりも、剣術の方が得意。 光の魔法を操れる。
ニーニャ 73 ディア村いちのウィッチ。様々な強力な魔法を操ることができる。 最近、息子がファイヤーボールを覚えた。
魔王 72 この世界の頂点に立ちし魔王。悪魔族。 闇の魔法を操ることができる。人間が憎い。
ナキア 107 魔王の娘。とんでもない魔力の持ち主。めちゃくちゃ強い。 人間と仲良くしたいのに、お父さんが許してくれない。
ラリマー 88 アイトと呼ばれる存在。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:「ite-デーモン・ハーツ-」 : 0:魔王城 : 魔王:さあ、これで最後だ人間よ。闇夜の支配者サタン、我が悪魔の力を源に、力を解き放て。全てを無に返し、全てを虚像で包みこめ。暗黒の流星群、ダークホール・メテオ ! : 魔王:.......はぁ。また邪魔したな、ナキア。 ナキア:お父さん、お疲れ様〜。 魔王:どうして毎回、人間を逃がすようなマネをする。 ナキア:んー?なんのことー? 魔王:我が最後のトドメを刺そうとした瞬間、人間に強制転移魔法スターシスフォースをかけて逃がしているだろう。今頃我に挑んできた人間共は故郷の村に飛ばされているはずだ。 ナキア:あーあ、バレちゃった。 魔王:ナキア。いい加減、人間に情けをかけるのはやめろ。お前はいずれ我のあとを継ぎ、魔王となる。人間を支配し、逆らう者は殺さなければならない。 ナキア:.........殺さなきゃダメなの? 魔王:だから言ってるだろう。今やこの世界は魔族が統治し、人間はその魔族の支配下にある。そして、その魔族の頂点に立つのが、我々悪魔族だ。この世界のトップとして、魔族には威厳を、人間には恐怖を与えなければならない。その為には、歯向かうに人間には死を与えなければならないのだ。 ナキア:殺さなくてもさ、私たちの力は絶大なんだってこと見せつければ、恐怖は与えられるんじゃないの?刃向かっても、絶対勝てないだろうなって思わせれば...... 魔王:いい加減にしろ! ナキア:っ! 魔王:我らは悪魔。人間に情けをかけるなぞ恥ずかしい真似をするな!それだから、お前は未だに悪魔族の力である、闇魔法を使えずにいるんだ。 ナキア:.......お父さん、魔族と人間が対等に暮らすことはできないの? 魔王:ナキア。 ナキア:私は人間と仲良くしたいって...... (魔王に頬をはたかれる) ナキア:いっ....! 魔王:いつまでそんなことを言っているつもりだ。お前は人間がやったことを忘れたのか!ヤツらは、我の妻を....お前の母を殺したんだぞ! ナキア:........そんなん、ひとりの人間がやった事じゃん。お母さんを殺した人間のことは許してないよ!だけど.......人間がみんなお母さんを殺したわけじゃない! 魔王:黙れ!我は許さぬ。人間はみな、滅ぼすべき存在なのだ! ナキア:もう、お母さんを殺したやつはお父さんが返り討ちにしたじゃん。......それで復讐は終わりじゃないの....? 魔王:........明日は一日城をあける。乗り込んでくる人間は全て殺せ。いいな。 ナキア:........お父さんのわからずや。 0:魔王城への道のり ライ:ここは魔族が頂点にたち、人間が支配されている世界、サタナーク。悪魔族の魔王がトップに君臨し、この国を統治していた。人間は何度もその魔王に挑むが、魔王を討ち取ったものは未だにいない....。魔王の絶対的な力の前に、人間はなすすべも無く、ただただ従うだけだった......。しかし!我々は絶対に諦めない!ディア村1番セイバー、ライ!何度敗れようとも、屈しない!必ずや勝利をこの手に........ ニーニャ:はいはい。いい加減その暑苦しいナレーションやめてよね。もう飽きた。 ライ:またかニーニャ!だからさぁ!これは必要なの!魔王の城に攻め入る前の、なんか、こう、鼓舞、みたいな、ルーティンみたいな! ニーニャ:だからってさ、毎回毎回されるとうざいんだってば。聞かされるこっちの身にもなってよ。 ライ:いーや、確かに、前回までに関してはまぁ、しつこかったよな、ごめん。......でもさ!今回はほら!ラリマーがいるからさ!いるじゃん!なんかこう、この世界の説明的なさ?ねえ、ラリマー? ニーニャ:いや、いらんでしょ。ラリマー、ここにきてもう1ヶ月たつんだからさ。魔王の城攻めるのは初めてだけど、この世界の説明はしたじゃん。1か月前に。ねぇ、ラリマー? ラリマー:あー、まぁいらんわな。俺聞かされたし。 ニーニャ:ほら。 ライ:いやいや!いるんだって!魔王の城攻め入る前は!いるの!なんかモチベーション的に! ラリマー:なぁ、今から魔王に挑みに行くんだよな? ニーニャ:そうだけど? ラリマー:挑んでも挑んでも倒せないような強大な力を持った魔王を倒しに行くんだよな? ライ:おう、そうだ。 ラリマー:なんでそんな緊張感ないの? ライ:あー、まぁ行ってみればわかるって。 ニーニャ:ま、厳密に言うと、魔王じゃないんだけどね。さ、ついたよ! ラリマー:あぁ?どういう.... ニーニャ:ナキアちゃーん!おっ邪魔しまーすっ! ナキア:ニーニャ!いらっしゃい!相変わらず元気そうだね! ニーニャ:もっちのろん!超元気よ!あ!そだ、ちょ、聞いてよナキア!最近さ、ついにうちの子がファイアーボール使えるようになったんだよね。 ナキア:えっ!もう!?まだ3歳じゃなかったっけ?早いね、さすがニーニャの息子くん! ニーニャ:でっしょ〜!んで?ナキアちゃんは?そろそろ新しい彼氏、できた? ナキア:まだだよ〜、今はなかなかそれどころじゃなくて...... ラリマー:え?なにこれ。 ライ:何って、恋バナじゃね? ラリマー:いや、恋バナじゃねって.....相手、魔王、なんだよな? ライ:んー、まぁ次期魔王、ってとこだな。 ラリマー:だよな。......なんで仲良くしてんの。対立してんじゃねぇのかよ。 ライ:へへ、これが俺らのやり方ってとこだな! ラリマー:はぁ?わけわかんねぇ....。 ナキア:あれ?新しい仲間? ニーニャ:そうそう!1ヶ月前くらいにね。前に一緒にいたザックが引退しちゃってどーしようかなって思ってたんだけど、ちょうどうちの村に来てくれてさ。 ライ:おう、そうだ!こいつはラリマー!言っとくけど、めちゃくちゃ強ぇからな!今日こそお前を倒してやる! ラリマー:えぇー....。えっと、どうも、ラリマーです。 ナキア:あー、どうも、魔王の娘のナキアです。どうぞよろしくお願いします。 ラリマー:ねぇ、なにこれ....。なんで今から闘う相手と自己紹介しあってんの....? ニーニャ:よーし!じゃあ今回も、やりますかっ! ライ:オッケー!ラリマー!戦闘準備っ! ラリマー:あぁもう!こいつらのノリわけわかんねぇ! ナキア:今日も同じ結果よ!来なさい! ニーニャ:轟かせ!大爆発!ビックバン! ナキア:おぉ!すごい!もうそこまで詠唱しなくても撃てるようになったんだね! ニーニャ:あたしだって、あなたに追いつけるよう必死なんだからね!......さすが、この程度の攻撃じゃ防御すらしなくてもへーきなのね。 ナキア:えへへ、嬉しい!ここまで成長の早い人間は初めてだよ! ニーニャ:あなたがわざわざ教えてくれるからさ!詠唱破棄のコツとかね!ファイアーストーム! ナキア:アイスサイクロン!ニーニャは飲み込み早いから、戦うのすごく楽しい! ライ:おいおい、あんま2人だけで楽しむなって!くらえ!光輝斬(こうきざん)! ナキア:っ!ゴーレムパラディナ!....危ないわね、斬撃は怖いんだからやめてよ! ライ:ちゃんと防いでんじゃねぇか毎回!ほら、連撃だ!はぁぁぁぁ! ナキア:ゴーレムパラディナ展開!ねー、ライ、斬撃ばっかじゃなくてさ、私が前に教えた魔法使ってみなさいよ。 ライ:無理だよ!俺はもともと魔力が少ないんだよ!こっちの剣の方が強くなれんだよ!はぁぁっ! ナキア:前にお父さんに向かって光の強力魔法撃ち込んでたじゃない!それのさらに倍の威力の光魔法ってだけじゃん、簡単よ。 ライ:アホか!俺は魔法特化じゃなくて剣術特化なんだって!それに、お前、光魔法耐性あるから効かねぇじゃねぇか! ナキア:効かなくても、どのくらいの威力なのかはわかるわよ、ほら、試しにうってみなって!効かないけど。 ライ:撃つわけねぇだろ!そろそろ決めるぞ!ラリマー! ラリマー:なぁ....こんな緊張感のない戦闘なんなんだ....。 ニーニャ:これがうちらの戦闘ってこと!いいから早く撃って! ラリマー:ったく....。闇で包め、ダークサイド・ワールド。 ナキア:っ!闇の魔法っ!?フェアリーパラ.... ライ:無数の斬撃を!ホーリーソード! ナキア:っ!斬撃と魔法の連携攻撃..っ! ニーニャ:いくらナキアちゃんでも、このふたつを同時に守ることはできないよね? ナキア:......っ! ラリマー:やった、か....? ライ:いや、手応えないな。 ニーニャ:この反応......後ろ? ナキア:あーぶな、今回ばかりはちょっと危なかったわね。 ラリマー:転移魔法か。 ナキア:対象の相手を転移させる、強制転移魔法スターシスフォースは自分自身にも使うことが可能なの。まぁ、ちょっと複雑な術の組み方が必要だけど。 ライ:ちぇっ、勝てるかとおもったんだがなぁ。 ナキア:残念、まだまだ私には適わないよ。ビックバン第2式、ビックバン・テラ・ワールド! ニーニャ:あぁもう!またさらに強い魔法を! ライ:ねぇ、そろそろこの城も耐えられないんじゃないか? ラリマー:だから!なんでそんな悠長なんだよお前らは! 0:(ビックバン炸裂) ナキア:ふぅ。今日も楽しかったなぁ。みんなまた強くなってた。........いいなぁ。私もみんなのところへ行って、一緒に遊びたいなぁ......。 ラリマー:なるほどなぁ、アイツらの緊張感のなさが理解出来た。 ナキア:えっ!?なんで、3人とも、ディア村にとばしたはず! ラリマー:お前は俺たちを殺すつもり、無いんだな。確実に殺せるような魔法を撃った後に、強制転移魔法で避難させる、と。それをヤツら相手に毎回やってきたってわけだ。 ナキア:ねぇちょっと!なんであんたは効いてないの!位置がズレた...?も、もう1回!強制転移、スターシスフォース! ラリマー:わりぃな。俺には効かねぇんだ。さぁて、お前の本気、見せてもらおうか! ダークホール! ナキア:詠唱破棄の闇魔法!?あっぶない!とんでもない新入りね.....。ファイヤーストーム! ラリマー:おぉ、炎の魔法も操れるのか! ナキア:全然効いてない....!?ねぇ、あんた何者なのよ!ビッグバン・テラ! ラリマー:っとぉ!さすがの威力だな。さて、そろそろお前の話を聞かせてもらおうか。 ナキア:はぁ?どういう意味..... ラリマー:スターシスフォース! ナキア:っ!目の前にっ!? ラリマー:さ、この距離で闇魔法をお前に撃ったらどうなるだろうな? ナキア:......っ!..........私の負け、よ。撃ちなさい....。 ラリマー:よし、じゃあ俺の勝ちだな。 ナキア:...殺さないの? ラリマー:俺は別にお前を倒しに来たんじゃねぇんだよ。 ナキア:え? ラリマー:俺は....この世界を平和に導きに来たのさ。 ナキア:そっか、キモイ。 ラリマー:おい!キモイはねぇだろ! ナキア:ナルシストすぎてキモイなって。 ラリマー:はいはい、言い方が悪かったよ。もう時期な、この世界が滅ぶような災厄が起きるんだ。 ナキア:災厄? ラリマー:どういうものかは分からねぇが、今この世界はかなり危険だってこと。その災厄から世界を守るために、龍結晶(りゅうけっしょう)が生み出した存在が、俺だ。 ナキア:龍結晶が?じゃああんたは龍結晶の分身ってこと? ラリマー:どっちかって言うと龍結晶の子ども、ってとこかな。この世界を創造し、世界のバランスを保ち、魔法の源となっている石、龍結晶が生み出した子ども”アイト”。それが俺。 ナキア:ふぅん。なるほど、ね。で、私の話を聞きたいって言うのは......っと、その前に場所を移動してもいい?お父さんが帰ってきたらいろいろ面倒だから。 ラリマー:オーケー。どこに行けばいい? ナキア:あんたも転移は使えるのよね。だったら、龍結晶の祠。行ける? ラリマー:いい場所のチョイスだ。行こう。 0:ディア村 ライ:あーあ、まーたダメだったな。 ニーニャ:毎回毎回、強くなりすぎなのよね、ナキアちゃん。私も頑張ってんだけどなかなか追いつけないわ。 ライ:ってか、ラリマーは? ニーニャ:あー、アイツなら魔法無効化できるから、まだあっち残ってんじゃないかな? ライ:無効化できんの!? ニーニャ:え、知らなかったの?アイツさ、龍結晶から生まれた存在だって言ってたじゃん。 ライ:おう。 ニーニャ:魔法ってのは、龍結晶の力を借りて、それを言霊(ことだま)にのせて発動させるじゃん。 ライ:そうなのか。 ニーニャ:あんた魔法使ってるのに仕組み知らなかったの?...まぁいいや。その言霊で術を紡げば紡ぐほど魔法の威力は増していく。ま、強力な魔法にはそれだけ長い詠唱が必要ってことね。 ライ:勉強になるなぁ。 ニーニャ:いや、あんた光の魔法使ってんじゃん。......理屈を知らずに使ってたのね。んで!言霊の代わりに、自分自身の魔力を使うことができれば、詠唱なしでも撃てるようにはなるけど、それには膨大な魔力と複雑な術の組み方が必要になるの。詠唱なして魔法を放つのはすごいって事ね。 ライ:なーるほどな。じゃあナキアやラリマーはやっぱすげぇ魔力持ってんだな。 ニーニャ:そういうこと。特にラリマーに至っては、自身が龍結晶みたいなものだから、好きなだけ魔力を放出させることができるし、龍結晶の力で紡がれた魔法なんて無効化できるってこと。 ライ:ほへぇ。じゃあラリマー最強じゃねぇか! ニーニャ:あくまで魔法相手、はね。斬撃や打撃とかまでは無効化できないから。 ライ:アイツがいれば、この状況も変わるかもしれねぇな。 ニーニャ:そうだといいな。 0:龍結晶の祠。 ラリマー:俺が生まれた場所、龍結晶の祠。やっぱここは落ち着くな。 ナキア:そっか。私もね、ここはすごく落ち着ける場所なの。ずっとずっと毎日、ここに来てる。 ラリマー:ほう?毎日? ナキア:5歳のときからずっと。毎日、朝にここで祈りを捧げているの。 ラリマー:魔王の娘が祈り、ねぇ。理由を聞いてもいいか? ナキア:私が殺してしまった3人の人間に、祈りを捧げるため。 ラリマー:殺した? ナキア:5歳の時にね。その日、お父さんたちがお城を留守にしててさ。私は1人でお留守番してたの。その時に、その3人の人間がお父さんを倒しに来て。 ラリマー:その人間を返り討ちにしたのか。 ナキア:ううん。そうじゃないの。その人間たちはね、私がひとりで寂しく留守番してることを知ると、剣を置いて私の相手してくれてさ。ふふ、魔王の娘なのにね。5歳の私はね、魔力も力も全然なくて、魔法なんて使えなかった.....はずだった。 ラリマー:はずだった、か。 ナキア:彼らに遊んでもらっている時に...私の魔力が....暴走しちゃったんだと思う。..........気づいたら彼らは倒れてた。私は...殺すつもりなんてなかったのに......私は.....彼らを殺してしまった...! ラリマー:魔力の暴走か。....幼い子にはよくあるらしいな。そこから覚醒する魔族や魔法使いも少なくない、というのは聞いたことがある。 ナキア:だから、私はね。自分の魔力が暴走しないように、自分の魔力をちゃんと支配できるように、ちゃんと手加減して、殺さないで闘えるように強くなろうって、その時思ったの。たくさん魔力を磨いて、鍛えて。習得が困難と言われる上級転移魔法、スターシスフォースも必死に覚えて。 ラリマー:なかなか努力だけでここまで魔力を磨けるとは思えないけどな。まぁ、龍結晶の力もあるんだろう。祈りを捧げれば、そのぶん力を引き出しやすくなる。 ナキア:うん。その日から毎日、ここに来てはあの3人に謝罪と祈りを捧げて。.....これは私の勝手な妄想なんだけど、あの3人は毎回ね、ここで私のことを見守ってくれてる気がするの。ここにくると、彼らに頭を撫でられてるような、抱きしめられてるような、そんな暖かい気持ちになれる。.....だから私は、人間が好きだし、一緒に仲良く暮らしていきたいって思うんだよね。 ラリマー:なるほど。お前は、アイツら...ライとニーニャだけじゃなく、人間と仲良くしたい、と。 ナキア:そう。でも、お父さんはそれを許さないから。どんだけ説得しても、お父さんは人間を対等に見てくれない。.....特に最近は....お母さんが殺されてからは、変わってしまった。私が何とかしたいって思うんだけど、なかなか上手くいかなくて。 ラリマー:人間も魔王...父のことも好きだから、か? ナキア:....うん。どっちも大切なの。だから私は、お父さんを倒しに来た人間を逃がすことしかできない。前はお父さんもそれを見て見ぬふりをしてたんだけど、ね。最近は咎められるようになっちゃって。それに、ここ最近は定期的にお城をあけることが多くて。何をしに行ってるのか...。 ラリマー:.........すでにとらわれている、かもな。絶望に。 ナキア:え?絶望? ラリマー:いや、なんでもない。んで、その魔王がいないタイミングでライとニーニャが遊びに来る、と。 ナキア:そう。あの2人...あなたが来る前はもう1人いたんだけどね。その3人と闘いながら、会話したり魔法を教えたりするのがすごく楽しいの。でもね、もっともっと、普通に遊びたいなって、いろんなとこに行きたいなって、思うんだよね。 ラリマー:ふぅん。.......お前さ、ライに惚れてんのか。 ナキア:はへっ!?へ?は?なんで!?えっ!? ラリマー:惚れてんだな。 ナキア:うっ.....なんでわかんのよ.....。 ラリマー:恋する瞳っていうのかな。お前がライを見る時、そんな目だったからさ。なんか、そういう目、見たことあんだよなぁ。 ナキア:ライには言わないでよ.....。魔族と人間が一緒に暮らすようになるまでは、秘めておこうと思うから。 ラリマー:言わねぇよ。ま、お前の考えはわかった。(ボソッとつぶやく).....災厄の源も、だいたい予想がついた。 ナキア:あー、ここに来るとつい気が緩んじゃうのよね。全部話しちゃった。 ラリマー:多分近いうちにまた会うことになるさ。じゃあな。スターシスフォース! ナキア:結局アイツは何がしたかったんだろ?まぁいいや。私も帰ろ!スターシスフォース! 0:ディア村 ライ:お、ラリマー、おかえり。 ニーニャ:ナキアちゃんと何話してきたの? ラリマー:ただいま。ちょっとした恋バナだ。 ライ:なんだそれ。 ニーニャ:へーえ? ラリマー:ま、有益な情報は得られた、かな。.....あとはどこにあるか、だよなぁ。 ニーニャ:毎回毎回、ナキアちゃんホント強くなるよね。今回も魔力かなりあがってた。 ライ:斬撃の耐性もだいぶあがってたな。 ラリマー:斬撃の耐性とかわかんのか? ニーニャ:わかるよ。”スペクトル・アイ”って魔法でね。相手の魔力だったり、どんな魔法を使うのか、どれだけ耐性があるのか、分析することが出来るのよ。毎回私が戦闘始まる前に使ってる。 ライ:で、ニーニャが分析した情報を、俺も知ることが出来て.....あ、そういえばニーニャ、ラリマーに”マジック・リンク”かけてなくね? ニーニャ:あー、そうだ。かけとこっか。 ラリマー:マジック・リンク? ニーニャ:そ。情報を共有する魔法だよ。これをかけておくと、私が”スペクトル・アイ”を使った時に、ラリマーもその場で情報を知ることができるの。他にも、スターシスフォースの転移先共有、とかね。転移魔法って、行ったことのない場所には転移できないでしょ?でも、マジック・リンクをかけておけば、ラリマーが行ったことのない場所でも、私が行った場所で空間を繋げば、転移することができるの。 ラリマー:なるほど、それは便利だな。 ライ:そうそう!何かと役に立つからさ。 ニーニャ:マジック・リンク!.....おけ、これでリンク繋がったよ。 ラリマー:サンキュ。 ライ:っし!じゃあ今日も綺麗に負けたということで!次までにまた各々強くなること!以上!解散っ! ニーニャ:今回、ちょっと、惜しかったから、次こそは勝てるかな?戦略、考えとこ!じゃあね、2人とも! ラリマー:おう。またな。 ライ:またな、ニーニャ!よし、ラリマー、今夜の晩メシどうする? ラリマー:昨日狩った獲物の肉がまだ残ってただろ。あれで何か作ろうぜ。 ライ:オーケー!じゃ、俺らも帰るかぁ! 0:魔王城 ナキア:アイト、って言ってたわよね。なかなか面白そうなやつだったなぁ。かなり強かったし、こっちももっと強い魔法で行かなきゃ、次は負けちゃうかもなぁ。......そうだ、お父さんの書斎にもっと強力な魔法の魔導書があったはず!ちょっと借りてこよっと! 0:魔王の書斎 ナキア:えぇっと、確かこの辺りに.....これこれ!...........ん?机の上、かなり散らかってるわね?.........あれ...?これはなに....?魔法陣のメモ......?......え、なにこれ....。見たことの無い術式が複雑に組まれてる....。新しい、魔法?でも......この組み方....禁忌の術式に近い....。これはなに?嫌な....嫌な魔法な気がする....!......あっ、これは......。 魔王:ナキア。そこで何をしている。 ナキア:っ!お、お父さん....。 魔王:ここは我の書斎だ。何をしているのか、と聞いている。 ナキア:ちょ、ちょっと新しい魔法を習得しようかなって、魔導書を借りに来たの。 魔王:そうか。我は今からここに用がある。出ていきなさい。 ナキア:う、うん...。ごめんなさい....。 魔王:........。 ナキア:.........。 魔王:どうした、早く出ていけと言っている。 ナキア:ねぇ、お父さん。 魔王:なんだ。 ナキア:”ラスト・ブラック”って....なに....? 魔王:見たのか。 ナキア:中身はわからないけど、禁断の術式がたくさん組まれてた....。ねぇ、お父さん.....お父さんは何をするつもりなの......? 魔王:.......わかった。全てを教えよう。ナキア、来なさい。 ナキア:おとう、さん......。 0:魔王城地下遺跡 ナキア:ここ、は....?お城の地下にこんな遺跡あったの? 魔王:最近だ。我が創り上げた。 ナキア:......っ!あの中心にあるのは......? 魔法陣と......黒い、龍結晶....? 魔王:さて、予定より少し早いが。始めるか。.......我が支配下にひれ伏せ、コントロール・マインド! ナキア:あっ...!?お...おとう.....さん....? 魔王:まだ材料が足りないな。お前の絶望の元になる人間をここに連れてきてもらおう。 ナキア:どういう....こと......? 魔王:強制操作、スターシスフォース。 ナキア:あぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 魔王:お前が使うスターシスフォースなら、あの人間どもをここに呼び出すことが可能だ。コントロール・マインドは、相手の魔法を強制的に使わせる術…。ナキア、イメージしろ。よくここに来ている、お前と仲のいい人間どもを。 ナキア:あぁ...っ!やめ....て......!あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!! (スターシスフォース発動、ライとニーニャが召喚される) ライ:.....んー。......っ!?え、なんだ、ここ....!? ニーニャ:っ!!ここ、は....?えっ..?ナキアちゃん!? ナキア:そん....な......! ライ:ナキアと...魔王!?それに、ここは.....? 魔王:人間ども、我の魔法の生贄となってもらおう。動きを封じよ、縛りの術....バインドフォース! ライ:ぐあっ!! ニーニャ:くっ....動けない....っ! ナキア:お父さん!やめて!2人に手を出さないでっ! 魔王:ナキア。今から発動させる魔法には、お前の魔力が必要だ。お前の最大の魔力を魔法陣の中心に放て。 ナキア:いやっ!やりたくないっ! ニーニャ:ねぇ...この魔法陣....禁術がたくさん組まれてる....。ちょっと!この魔法陣で何するつもりなの!? 魔王:じきにわかる事だ。ナキア。魔法陣を発動しろ。なぜ、この人間をここに呼んだのか、お前ならわかるだろう。 ナキア:........魔法を発動させないと、2人を殺す、ってこと....? 魔王:発動、してもらおうか。 ライ:ナキア!やめろ!よく分かんねぇけど、発動させたらヤバいんだろ!? ニーニャ:これはヤバい!ナキアちゃん、ダメ!私たちのことはいいから......っ! 魔王:無駄だ。この魔法陣は、ナキアの絶望でも発動するようになっている。もしナキアが自分で発動しなくとも、お前らを殺してナキアが絶望を感じれば、魔法は発動する。 ライ:くっ!くそ、動け....ねぇ.....っ! ニーニャ:させないっ!ファイヤーストーム! 魔王:その程度の魔法、我には効かん。大人しくしていろ。 ニーニャ:くうっ! ナキア:お父さん......私が発動したら、この2人には手を出さないって、約束してくれる....? ライ:おい!ナキア! 魔王:いいだろう。こいつらは生かしてやろう。 ナキア:わかった。 ニーニャ:待ってよ、ナキアちゃん!ダメだって!あなた自身もどうなるかわかんないだよ!? ナキア:ライ。ニーニャ。........ありがとう。 ライ:待て!やめろ! ニーニャ:ナキアちゃん!! ナキア:発動。 (黒い炎が燃え上がる) 魔王:ハハハハハ!これで!我が野望も叶う!!絶望の王よ!よみがえれ!! ライ:なんだ、これ!黒い炎が! ナキア:あ、あ.........あぁぁぁぁぁぁぁっ!! ニーニャ:黒い炎が!ナキアちゃんを.....! 魔王:さぁ......今ごろ人間の村に仕組んできた魔法陣も発動している頃だ......今宵、人間どもを絶望の炎で焼き付くし、滅ぼしてやる! ライ:なんだって!?村を.....!? ナキア:やだ......おとう......さん......やめ.....て....! ニーニャ:ナキアちゃん!ナキアちゃん!くっ......できるか......わかんないけど......あなたに教えてもらったこの魔法! ナキア:ニー.....ニャ........ライ......逃げ....て.. ニーニャ:宇宙の星々の導き、世界の理に反する者、空間を繋ぎ合わせ、対象を転移させよ!強制転移!スターシスフォースっ!ナキアをディア村へ! ライ:っ!ニーニャ、その魔法! ニーニャ:ずっと使えなかった、ナキアちゃんにたくさん助けてもらったこの魔法。だけど!ずっとずっと使えるようにって練習してきた!だから!この魔法で!あなたを逃がす!私たちの村へ! ナキア:ニーニャ......っ!........あ、あぁっ!あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!! ニーニャ:っ!転移、しない....?失敗......した....。 魔王:その程度の魔力で、今ここに張っている結界は破れぬ。大人しく、世界が絶望に染る様を見ているがよい。 ニーニャ:そん、な.....! ライ:くそ、くそっ!何も出来ねぇのかよ!このまま見てることしかできねぇのかよ! 魔王:さぁ、始めようか。......黒き星が地に堕ちて、黒の輝きは世界を統べる.... ニーニャ:詠唱が始まった!なんとか.....とめないと.....! 魔王:暗黒の地と化した大地に、絶望よよみがえれ ライ:光り輝け、ストレートフラッシュ!.....くそ、ダメだ.....全然効いてねぇ....! 魔王:闇と終焉の焔は全てを包み ナキア:お父さん.....お願い..やめて....お父さん......っ! 魔王:厭世(えんせい)に満ちた魂を捧げよ。 ライ:やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!! 魔王:ラスト..... ラリマー:スターシスフォースっ!!させるかぁぁぁっ!!!!光輝斬(こうきざん)!! 魔王:っ!?ぐうっ! ライ:ラリマー!? ラリマー:あっぶねぇ....。 ニーニャ:ラリマー.....。 ラリマー:悪ぃ、遅くなっちまった。解放せよ、バインドブレイク。 ライ:拘束が解けた......助かった、ラリマー。 魔王:なんだ貴様は.....どこから湧いてきた....! ラリマー:ニーニャ。お前がこことディア村をスターシスフォースで繋いでくれたおかげで、俺のスターシスフォースも繋げることが出来た。 ニーニャ:....!よかった、成功、してたんだ。 魔王:すんでのところで邪魔をしやがって....!先に貴様らを片付けてやる....! ライ:来るぞ....! ラリマー:ライ、ニーニャ、狙うのはあの魔法陣にある黒い龍結晶だ。あれを壊さないと、この脅威は終わらない。 ニーニャ:わかった。 ラリマー:ニーニャ、俺を援護してくれ。魔王を引きつける。ライ、お前は黒い龍結晶を壊してくれ。 ライ:よし、任せろ。 魔王:我の...絶望を.....邪魔するなぁぁぁぁ!!! ラリマー:行くぞっ! ライ:おう! ニーニャ:轟け、大爆発!ビックバン! 魔王:絶望を、絶望を、絶望を!! ラリマー:光の剣!ホーリーソード!.....完全にのまれてやがるな。魔王!自分の娘を生贄に捧げるまで堕ちたか! 魔王:アレは、たダの器。絶望の王ノたメの、器。 ラリマー:目を覚ませよ、魔王...!くっ!もっと威力を!フラッシュソード! 魔王:邪魔...するナ。おおおおおっ! (鋭い爪でラリマーをなぎ払う) ラリマー:がっ!? ニーニャ:ラリマー!っ!全てを焼き尽くせ、灰燼(かいじん)と成り果てし炎の地にさらなる業火を!フレイムワールド! 魔王:絶望の炎よ。ブラックフレイム。 ニーニャ:うああああぁっ! ライ:ニーニャ!ラリマー! ラリマー:こっちはいい!破壊に集中しろっ! 魔王:トドメ、だ。 ナキア:お父さん.....お父さん......やめ、て......戻ってきて、お父さん......! 魔王:っ!(一瞬、動揺する) ラリマー:ライ!今だ! ライ:うおおおおぉぉぉ!最大威力っ!!ホーリーソード・テラ!!! 0:黒い龍結晶に攻撃するが、壊すことができない。 ライ:ダメだ.....壊れねぇ....!黒い結界みたいなのが邪魔してる! 魔王:フハハハハハハハ!お前ら人間ごときに、壊させるものか!! ニーニャ:ライ!その結界、物理攻撃じゃダメ!最大の光魔法で!ナキアちゃんから教えてもらった、最強の! 魔王:邪魔だ。(爪でなぎ払う) ニーニャ:あぁっ!! ライ:ニーニャ!...そんな、最大の光魔法なんて...... 魔王:お前が1番、目障りだ、アイトの騎士よ。(ラリマーの首をつかむ) ラリマー:ぐあぁっ!くそ、おい!ライ!使え!魔王が...俺を殺そうとしている....間に!ぐぅっ! ライ:そんなっ!.....っ! ナキア:ライ........。 ライ:ナキア...。 ナキア:お願い、お父さんを救って......。ライなら.....できるから.....世界を.....救って...。 ライ:っ!わかった.....俺にしか、できない...! ナキア:信じてる。 ライ:ナキアからもらった、この魔法...!希望の神、エルピスよ。我らの絆のもと、その力を与えたまえ。希望の光、友愛の輝き。全てを照らす白き光となれ!サンシャイン・グラマラス・フィリア! 魔王:っ!?ぐ、ぐあああああああああぁぁぁっ!!!!! ラリマー:(魔王から開放される)ぐっ!げほ、げほっ!......黒い龍結晶は!? ニーニャ:.......!消えて、いってる! 0:黒い龍結晶が砕け散る。 ライ:.....はぁ、はぁ....発動、できた...!壊せた!黒い炎も消えたぞ! 魔王:.....っ!?う....これ、は......? ラリマー:目を覚ましたみたいだな。魔王。 魔王:我は.....何かに操られていた、のか.....。 ニーニャ:ナキアちゃんっ! 魔王:!?ナキア!?おい、ナキア! ナキア:ぅ.....うぅ.....。 魔王:なんだ、これは...黒い魔法が....これは、呪い....!? ラリマー:ヤバいな、絶望の炎に晒されてる時間が長かったか。このままだと、肉体と精神が壊されちまう.....! ニーニャ:そんな!ナキアちゃん!しっかりしてよ! 魔王:我の...せいで....!くそっ!ナキア!頼む、死なないでくれ!なにか...手は....っ! ライ:みんな、離れてくれ。 ニーニャ:ライ...? ライ:俺のねえさんから授かった、全ての呪いを浄化する聖なる魔法。それをナキアにかければ助かるはずだ。 魔王:待ってくれ。聖なる魔法は、悪魔族にとっては消滅の魔法に等しい。いくらナキアでも耐えられない.....! ライ:魔王。お前の娘は、お前が思っているよりもずっと強い。大丈夫、耐えられるよ。ナキアを信じろ。 魔王:......しかし、 ニーニャ:私たちはずっとナキアちゃんの強さを見てきた。大丈夫だよ。ナキアちゃんなら。 魔王:........人間。ナキアを.....娘を、救ってくれ。頼む。 ライ:あぁ。天使の導く聖なる輝き、闇の脅威を取り払え.....リフテッド! 0:翌日、龍結晶の祠。 ライ:もう帰るのか。 ラリマー:この世界での役目は終わったからな。次の世界を救いにいかないと。 ニーニャ:大変なんだね、そのアイトってのも。 ラリマー:これが俺の役目だからな。 ライ:ま、世界を救って、落ち着いたらまたこの世界に来いよ。一緒に魔王倒しに行こうぜ。 ラリマー:……。それは、できない。 ライ:ん?なんでだ? ラリマー:この世界から離れたら、俺はここでの記憶を失い、次の世界へ新しく生まれ変わる。もう、この世界に来ることはないだろう。……また脅威にさらされて、アイトとして来たとしても、それは俺じゃない、新しいアイトだ。 ニーニャ:えー、なにそれ、面倒だね。 ラリマー:そういう運命なんだ。だから…お前たちのことは…。 ライ:知らねーよ、運命なんて。そんなもん、ぶっ壊して来いって。 ラリマー:…は? ニーニャ:そうそう、できないから、とか運命だから、とかって決めつけるのマジダサいから。 ラリマー:いや、ダサいとかそういうんじゃなくて……。 ナキア:スターシスフォース!あ!やっぱりここにいた! ライ:お!ナキア!元気になったか!…と、 ニーニャ:魔王、も…? 魔王:ナキアに無理やり連れてこられた。 ナキア:違うでしょ!…お父さんね、言いたいことがあるんだって。 ライ:わかった。聞くよ。 魔王:……。人間、今回は迷惑をかけた。……そして、娘を救ってくれてありがとう。礼を言う。 ニーニャ:おお、魔王からお礼言われる日が来るなんてね! 魔王:お前たちは、我よりもずっとずっと娘のことを理解し、信じていた。人間と魔族なぞ相容れることはないと、我らの力に遠くおよばないと、ずっと我は人間のことを見下してきた。……だが、娘とお前たちは、互いを尊重し合い、信じあっていたのだな。 ライ:そうだよ。ずっとずっと戦い合ってきたからな、俺たちは。 ナキア:ね!まぁ、私には遠く及ばないけどね! ライ:いーや、絶対にいつか倒してやるさ! ナキア:できるもんならやってみなさいよ。 ニーニャ:また力磨いて、挑みにいくよ!あー、そのときは魔王も一緒に倒しちゃおうかな? 魔王:……そのことなんだがな、人間。我はもう、あの城をナキアに任せようと思う。 ナキア:え?お父さん? 魔王:人間の支配も、魔族の統治も、すべてナキアの思うようにやらせよう。 ナキア:私、支配なんてやめて、人間と対等な世界にするよ? 魔王:お前の好きにやればいい。ただ、魔族を憎む人間、人間を見下している魔族はお前が思っているよりも多い。 ナキア:…うん、わかってる。でも、きっと時間をかけて真剣に向き合えば、きっとわかってくれる日がくるよ。 魔王:そうか。人間よ。我の力だけでは、ナキアを支えるのは力不足だ。お前たちの力も、貸してくれないか。 ライ:おう!もちろんだ! ニーニャ:任せてよね。ナキアちゃん、一緒にがんばろう! 魔王:礼を言う。 ナキア:えへへ、ありがとう! 魔王:そこのアイトの騎士よ。 ラリマー:おう、なんだ。 魔王:世界を救ってくれてありがとう。 ラリマー:まさか、魔王様から礼を言われるとはな。んじゃ、俺はそろそろ行くわ。 ナキア:行っちゃうの? ラリマー:がんばれよ、いろいろと。 ナキア:うん、ありがとね、ラリマー。 ライ:楽しかったぜ、ラリマー。 ニーニャ:短い間だったけどね。 ラリマー:あぁ。さよならだ、俺の大切な親友… ライ:ちげぇだろ、ラリマー。 ラリマー:は?なにがだよ。 ニーニャ:さよなら、じゃなくて、またね、だよ! ラリマー:だから俺は……いや、そうだな。……またな、大切な親友たち。 ライ:おう!また来いよ! ニーニャ:待ってるからね~! 0:ラリマーの体は龍結晶の中に消えていった。 ラリマー:(M)またね、か。あいつらにはずっと振り回されっぱしだった気がするな。……楽しい世界だった。種族を越えて信じあう絆、か。うらやましいな。俺もその中で一緒にこの世界の行く末を見ていたかった。時間はかかるだろうが、きっとどの種族も平等な、平和な世界になっていくんだろう。……また、この世界に来れるといいな。…さて、寂しさに浸るのはこれくらいにしよう。龍結晶、次はどの世界に行けば……。ん?龍結晶…?……っ!この感覚…っ!絶望が…絶望の王が…よみがえった…?なぜだ!?ラストブラックの発動は阻止したはずだ…!……まさか…他の世界で…ラストブラックが発動した…?やべぇ、その世界に早く生まれ変わらないと!龍結晶が……世界が、全ての世界が危ない!早く、次の、世界へ…! 0:終

0:「ite-デーモン・ハーツ-」 : 0:魔王城 : 魔王:さあ、これで最後だ人間よ。闇夜の支配者サタン、我が悪魔の力を源に、力を解き放て。全てを無に返し、全てを虚像で包みこめ。暗黒の流星群、ダークホール・メテオ ! : 魔王:.......はぁ。また邪魔したな、ナキア。 ナキア:お父さん、お疲れ様〜。 魔王:どうして毎回、人間を逃がすようなマネをする。 ナキア:んー?なんのことー? 魔王:我が最後のトドメを刺そうとした瞬間、人間に強制転移魔法スターシスフォースをかけて逃がしているだろう。今頃我に挑んできた人間共は故郷の村に飛ばされているはずだ。 ナキア:あーあ、バレちゃった。 魔王:ナキア。いい加減、人間に情けをかけるのはやめろ。お前はいずれ我のあとを継ぎ、魔王となる。人間を支配し、逆らう者は殺さなければならない。 ナキア:.........殺さなきゃダメなの? 魔王:だから言ってるだろう。今やこの世界は魔族が統治し、人間はその魔族の支配下にある。そして、その魔族の頂点に立つのが、我々悪魔族だ。この世界のトップとして、魔族には威厳を、人間には恐怖を与えなければならない。その為には、歯向かうに人間には死を与えなければならないのだ。 ナキア:殺さなくてもさ、私たちの力は絶大なんだってこと見せつければ、恐怖は与えられるんじゃないの?刃向かっても、絶対勝てないだろうなって思わせれば...... 魔王:いい加減にしろ! ナキア:っ! 魔王:我らは悪魔。人間に情けをかけるなぞ恥ずかしい真似をするな!それだから、お前は未だに悪魔族の力である、闇魔法を使えずにいるんだ。 ナキア:.......お父さん、魔族と人間が対等に暮らすことはできないの? 魔王:ナキア。 ナキア:私は人間と仲良くしたいって...... (魔王に頬をはたかれる) ナキア:いっ....! 魔王:いつまでそんなことを言っているつもりだ。お前は人間がやったことを忘れたのか!ヤツらは、我の妻を....お前の母を殺したんだぞ! ナキア:........そんなん、ひとりの人間がやった事じゃん。お母さんを殺した人間のことは許してないよ!だけど.......人間がみんなお母さんを殺したわけじゃない! 魔王:黙れ!我は許さぬ。人間はみな、滅ぼすべき存在なのだ! ナキア:もう、お母さんを殺したやつはお父さんが返り討ちにしたじゃん。......それで復讐は終わりじゃないの....? 魔王:........明日は一日城をあける。乗り込んでくる人間は全て殺せ。いいな。 ナキア:........お父さんのわからずや。 0:魔王城への道のり ライ:ここは魔族が頂点にたち、人間が支配されている世界、サタナーク。悪魔族の魔王がトップに君臨し、この国を統治していた。人間は何度もその魔王に挑むが、魔王を討ち取ったものは未だにいない....。魔王の絶対的な力の前に、人間はなすすべも無く、ただただ従うだけだった......。しかし!我々は絶対に諦めない!ディア村1番セイバー、ライ!何度敗れようとも、屈しない!必ずや勝利をこの手に........ ニーニャ:はいはい。いい加減その暑苦しいナレーションやめてよね。もう飽きた。 ライ:またかニーニャ!だからさぁ!これは必要なの!魔王の城に攻め入る前の、なんか、こう、鼓舞、みたいな、ルーティンみたいな! ニーニャ:だからってさ、毎回毎回されるとうざいんだってば。聞かされるこっちの身にもなってよ。 ライ:いーや、確かに、前回までに関してはまぁ、しつこかったよな、ごめん。......でもさ!今回はほら!ラリマーがいるからさ!いるじゃん!なんかこう、この世界の説明的なさ?ねえ、ラリマー? ニーニャ:いや、いらんでしょ。ラリマー、ここにきてもう1ヶ月たつんだからさ。魔王の城攻めるのは初めてだけど、この世界の説明はしたじゃん。1か月前に。ねぇ、ラリマー? ラリマー:あー、まぁいらんわな。俺聞かされたし。 ニーニャ:ほら。 ライ:いやいや!いるんだって!魔王の城攻め入る前は!いるの!なんかモチベーション的に! ラリマー:なぁ、今から魔王に挑みに行くんだよな? ニーニャ:そうだけど? ラリマー:挑んでも挑んでも倒せないような強大な力を持った魔王を倒しに行くんだよな? ライ:おう、そうだ。 ラリマー:なんでそんな緊張感ないの? ライ:あー、まぁ行ってみればわかるって。 ニーニャ:ま、厳密に言うと、魔王じゃないんだけどね。さ、ついたよ! ラリマー:あぁ?どういう.... ニーニャ:ナキアちゃーん!おっ邪魔しまーすっ! ナキア:ニーニャ!いらっしゃい!相変わらず元気そうだね! ニーニャ:もっちのろん!超元気よ!あ!そだ、ちょ、聞いてよナキア!最近さ、ついにうちの子がファイアーボール使えるようになったんだよね。 ナキア:えっ!もう!?まだ3歳じゃなかったっけ?早いね、さすがニーニャの息子くん! ニーニャ:でっしょ〜!んで?ナキアちゃんは?そろそろ新しい彼氏、できた? ナキア:まだだよ〜、今はなかなかそれどころじゃなくて...... ラリマー:え?なにこれ。 ライ:何って、恋バナじゃね? ラリマー:いや、恋バナじゃねって.....相手、魔王、なんだよな? ライ:んー、まぁ次期魔王、ってとこだな。 ラリマー:だよな。......なんで仲良くしてんの。対立してんじゃねぇのかよ。 ライ:へへ、これが俺らのやり方ってとこだな! ラリマー:はぁ?わけわかんねぇ....。 ナキア:あれ?新しい仲間? ニーニャ:そうそう!1ヶ月前くらいにね。前に一緒にいたザックが引退しちゃってどーしようかなって思ってたんだけど、ちょうどうちの村に来てくれてさ。 ライ:おう、そうだ!こいつはラリマー!言っとくけど、めちゃくちゃ強ぇからな!今日こそお前を倒してやる! ラリマー:えぇー....。えっと、どうも、ラリマーです。 ナキア:あー、どうも、魔王の娘のナキアです。どうぞよろしくお願いします。 ラリマー:ねぇ、なにこれ....。なんで今から闘う相手と自己紹介しあってんの....? ニーニャ:よーし!じゃあ今回も、やりますかっ! ライ:オッケー!ラリマー!戦闘準備っ! ラリマー:あぁもう!こいつらのノリわけわかんねぇ! ナキア:今日も同じ結果よ!来なさい! ニーニャ:轟かせ!大爆発!ビックバン! ナキア:おぉ!すごい!もうそこまで詠唱しなくても撃てるようになったんだね! ニーニャ:あたしだって、あなたに追いつけるよう必死なんだからね!......さすが、この程度の攻撃じゃ防御すらしなくてもへーきなのね。 ナキア:えへへ、嬉しい!ここまで成長の早い人間は初めてだよ! ニーニャ:あなたがわざわざ教えてくれるからさ!詠唱破棄のコツとかね!ファイアーストーム! ナキア:アイスサイクロン!ニーニャは飲み込み早いから、戦うのすごく楽しい! ライ:おいおい、あんま2人だけで楽しむなって!くらえ!光輝斬(こうきざん)! ナキア:っ!ゴーレムパラディナ!....危ないわね、斬撃は怖いんだからやめてよ! ライ:ちゃんと防いでんじゃねぇか毎回!ほら、連撃だ!はぁぁぁぁ! ナキア:ゴーレムパラディナ展開!ねー、ライ、斬撃ばっかじゃなくてさ、私が前に教えた魔法使ってみなさいよ。 ライ:無理だよ!俺はもともと魔力が少ないんだよ!こっちの剣の方が強くなれんだよ!はぁぁっ! ナキア:前にお父さんに向かって光の強力魔法撃ち込んでたじゃない!それのさらに倍の威力の光魔法ってだけじゃん、簡単よ。 ライ:アホか!俺は魔法特化じゃなくて剣術特化なんだって!それに、お前、光魔法耐性あるから効かねぇじゃねぇか! ナキア:効かなくても、どのくらいの威力なのかはわかるわよ、ほら、試しにうってみなって!効かないけど。 ライ:撃つわけねぇだろ!そろそろ決めるぞ!ラリマー! ラリマー:なぁ....こんな緊張感のない戦闘なんなんだ....。 ニーニャ:これがうちらの戦闘ってこと!いいから早く撃って! ラリマー:ったく....。闇で包め、ダークサイド・ワールド。 ナキア:っ!闇の魔法っ!?フェアリーパラ.... ライ:無数の斬撃を!ホーリーソード! ナキア:っ!斬撃と魔法の連携攻撃..っ! ニーニャ:いくらナキアちゃんでも、このふたつを同時に守ることはできないよね? ナキア:......っ! ラリマー:やった、か....? ライ:いや、手応えないな。 ニーニャ:この反応......後ろ? ナキア:あーぶな、今回ばかりはちょっと危なかったわね。 ラリマー:転移魔法か。 ナキア:対象の相手を転移させる、強制転移魔法スターシスフォースは自分自身にも使うことが可能なの。まぁ、ちょっと複雑な術の組み方が必要だけど。 ライ:ちぇっ、勝てるかとおもったんだがなぁ。 ナキア:残念、まだまだ私には適わないよ。ビックバン第2式、ビックバン・テラ・ワールド! ニーニャ:あぁもう!またさらに強い魔法を! ライ:ねぇ、そろそろこの城も耐えられないんじゃないか? ラリマー:だから!なんでそんな悠長なんだよお前らは! 0:(ビックバン炸裂) ナキア:ふぅ。今日も楽しかったなぁ。みんなまた強くなってた。........いいなぁ。私もみんなのところへ行って、一緒に遊びたいなぁ......。 ラリマー:なるほどなぁ、アイツらの緊張感のなさが理解出来た。 ナキア:えっ!?なんで、3人とも、ディア村にとばしたはず! ラリマー:お前は俺たちを殺すつもり、無いんだな。確実に殺せるような魔法を撃った後に、強制転移魔法で避難させる、と。それをヤツら相手に毎回やってきたってわけだ。 ナキア:ねぇちょっと!なんであんたは効いてないの!位置がズレた...?も、もう1回!強制転移、スターシスフォース! ラリマー:わりぃな。俺には効かねぇんだ。さぁて、お前の本気、見せてもらおうか! ダークホール! ナキア:詠唱破棄の闇魔法!?あっぶない!とんでもない新入りね.....。ファイヤーストーム! ラリマー:おぉ、炎の魔法も操れるのか! ナキア:全然効いてない....!?ねぇ、あんた何者なのよ!ビッグバン・テラ! ラリマー:っとぉ!さすがの威力だな。さて、そろそろお前の話を聞かせてもらおうか。 ナキア:はぁ?どういう意味..... ラリマー:スターシスフォース! ナキア:っ!目の前にっ!? ラリマー:さ、この距離で闇魔法をお前に撃ったらどうなるだろうな? ナキア:......っ!..........私の負け、よ。撃ちなさい....。 ラリマー:よし、じゃあ俺の勝ちだな。 ナキア:...殺さないの? ラリマー:俺は別にお前を倒しに来たんじゃねぇんだよ。 ナキア:え? ラリマー:俺は....この世界を平和に導きに来たのさ。 ナキア:そっか、キモイ。 ラリマー:おい!キモイはねぇだろ! ナキア:ナルシストすぎてキモイなって。 ラリマー:はいはい、言い方が悪かったよ。もう時期な、この世界が滅ぶような災厄が起きるんだ。 ナキア:災厄? ラリマー:どういうものかは分からねぇが、今この世界はかなり危険だってこと。その災厄から世界を守るために、龍結晶(りゅうけっしょう)が生み出した存在が、俺だ。 ナキア:龍結晶が?じゃああんたは龍結晶の分身ってこと? ラリマー:どっちかって言うと龍結晶の子ども、ってとこかな。この世界を創造し、世界のバランスを保ち、魔法の源となっている石、龍結晶が生み出した子ども”アイト”。それが俺。 ナキア:ふぅん。なるほど、ね。で、私の話を聞きたいって言うのは......っと、その前に場所を移動してもいい?お父さんが帰ってきたらいろいろ面倒だから。 ラリマー:オーケー。どこに行けばいい? ナキア:あんたも転移は使えるのよね。だったら、龍結晶の祠。行ける? ラリマー:いい場所のチョイスだ。行こう。 0:ディア村 ライ:あーあ、まーたダメだったな。 ニーニャ:毎回毎回、強くなりすぎなのよね、ナキアちゃん。私も頑張ってんだけどなかなか追いつけないわ。 ライ:ってか、ラリマーは? ニーニャ:あー、アイツなら魔法無効化できるから、まだあっち残ってんじゃないかな? ライ:無効化できんの!? ニーニャ:え、知らなかったの?アイツさ、龍結晶から生まれた存在だって言ってたじゃん。 ライ:おう。 ニーニャ:魔法ってのは、龍結晶の力を借りて、それを言霊(ことだま)にのせて発動させるじゃん。 ライ:そうなのか。 ニーニャ:あんた魔法使ってるのに仕組み知らなかったの?...まぁいいや。その言霊で術を紡げば紡ぐほど魔法の威力は増していく。ま、強力な魔法にはそれだけ長い詠唱が必要ってことね。 ライ:勉強になるなぁ。 ニーニャ:いや、あんた光の魔法使ってんじゃん。......理屈を知らずに使ってたのね。んで!言霊の代わりに、自分自身の魔力を使うことができれば、詠唱なしでも撃てるようにはなるけど、それには膨大な魔力と複雑な術の組み方が必要になるの。詠唱なして魔法を放つのはすごいって事ね。 ライ:なーるほどな。じゃあナキアやラリマーはやっぱすげぇ魔力持ってんだな。 ニーニャ:そういうこと。特にラリマーに至っては、自身が龍結晶みたいなものだから、好きなだけ魔力を放出させることができるし、龍結晶の力で紡がれた魔法なんて無効化できるってこと。 ライ:ほへぇ。じゃあラリマー最強じゃねぇか! ニーニャ:あくまで魔法相手、はね。斬撃や打撃とかまでは無効化できないから。 ライ:アイツがいれば、この状況も変わるかもしれねぇな。 ニーニャ:そうだといいな。 0:龍結晶の祠。 ラリマー:俺が生まれた場所、龍結晶の祠。やっぱここは落ち着くな。 ナキア:そっか。私もね、ここはすごく落ち着ける場所なの。ずっとずっと毎日、ここに来てる。 ラリマー:ほう?毎日? ナキア:5歳のときからずっと。毎日、朝にここで祈りを捧げているの。 ラリマー:魔王の娘が祈り、ねぇ。理由を聞いてもいいか? ナキア:私が殺してしまった3人の人間に、祈りを捧げるため。 ラリマー:殺した? ナキア:5歳の時にね。その日、お父さんたちがお城を留守にしててさ。私は1人でお留守番してたの。その時に、その3人の人間がお父さんを倒しに来て。 ラリマー:その人間を返り討ちにしたのか。 ナキア:ううん。そうじゃないの。その人間たちはね、私がひとりで寂しく留守番してることを知ると、剣を置いて私の相手してくれてさ。ふふ、魔王の娘なのにね。5歳の私はね、魔力も力も全然なくて、魔法なんて使えなかった.....はずだった。 ラリマー:はずだった、か。 ナキア:彼らに遊んでもらっている時に...私の魔力が....暴走しちゃったんだと思う。..........気づいたら彼らは倒れてた。私は...殺すつもりなんてなかったのに......私は.....彼らを殺してしまった...! ラリマー:魔力の暴走か。....幼い子にはよくあるらしいな。そこから覚醒する魔族や魔法使いも少なくない、というのは聞いたことがある。 ナキア:だから、私はね。自分の魔力が暴走しないように、自分の魔力をちゃんと支配できるように、ちゃんと手加減して、殺さないで闘えるように強くなろうって、その時思ったの。たくさん魔力を磨いて、鍛えて。習得が困難と言われる上級転移魔法、スターシスフォースも必死に覚えて。 ラリマー:なかなか努力だけでここまで魔力を磨けるとは思えないけどな。まぁ、龍結晶の力もあるんだろう。祈りを捧げれば、そのぶん力を引き出しやすくなる。 ナキア:うん。その日から毎日、ここに来てはあの3人に謝罪と祈りを捧げて。.....これは私の勝手な妄想なんだけど、あの3人は毎回ね、ここで私のことを見守ってくれてる気がするの。ここにくると、彼らに頭を撫でられてるような、抱きしめられてるような、そんな暖かい気持ちになれる。.....だから私は、人間が好きだし、一緒に仲良く暮らしていきたいって思うんだよね。 ラリマー:なるほど。お前は、アイツら...ライとニーニャだけじゃなく、人間と仲良くしたい、と。 ナキア:そう。でも、お父さんはそれを許さないから。どんだけ説得しても、お父さんは人間を対等に見てくれない。.....特に最近は....お母さんが殺されてからは、変わってしまった。私が何とかしたいって思うんだけど、なかなか上手くいかなくて。 ラリマー:人間も魔王...父のことも好きだから、か? ナキア:....うん。どっちも大切なの。だから私は、お父さんを倒しに来た人間を逃がすことしかできない。前はお父さんもそれを見て見ぬふりをしてたんだけど、ね。最近は咎められるようになっちゃって。それに、ここ最近は定期的にお城をあけることが多くて。何をしに行ってるのか...。 ラリマー:.........すでにとらわれている、かもな。絶望に。 ナキア:え?絶望? ラリマー:いや、なんでもない。んで、その魔王がいないタイミングでライとニーニャが遊びに来る、と。 ナキア:そう。あの2人...あなたが来る前はもう1人いたんだけどね。その3人と闘いながら、会話したり魔法を教えたりするのがすごく楽しいの。でもね、もっともっと、普通に遊びたいなって、いろんなとこに行きたいなって、思うんだよね。 ラリマー:ふぅん。.......お前さ、ライに惚れてんのか。 ナキア:はへっ!?へ?は?なんで!?えっ!? ラリマー:惚れてんだな。 ナキア:うっ.....なんでわかんのよ.....。 ラリマー:恋する瞳っていうのかな。お前がライを見る時、そんな目だったからさ。なんか、そういう目、見たことあんだよなぁ。 ナキア:ライには言わないでよ.....。魔族と人間が一緒に暮らすようになるまでは、秘めておこうと思うから。 ラリマー:言わねぇよ。ま、お前の考えはわかった。(ボソッとつぶやく).....災厄の源も、だいたい予想がついた。 ナキア:あー、ここに来るとつい気が緩んじゃうのよね。全部話しちゃった。 ラリマー:多分近いうちにまた会うことになるさ。じゃあな。スターシスフォース! ナキア:結局アイツは何がしたかったんだろ?まぁいいや。私も帰ろ!スターシスフォース! 0:ディア村 ライ:お、ラリマー、おかえり。 ニーニャ:ナキアちゃんと何話してきたの? ラリマー:ただいま。ちょっとした恋バナだ。 ライ:なんだそれ。 ニーニャ:へーえ? ラリマー:ま、有益な情報は得られた、かな。.....あとはどこにあるか、だよなぁ。 ニーニャ:毎回毎回、ナキアちゃんホント強くなるよね。今回も魔力かなりあがってた。 ライ:斬撃の耐性もだいぶあがってたな。 ラリマー:斬撃の耐性とかわかんのか? ニーニャ:わかるよ。”スペクトル・アイ”って魔法でね。相手の魔力だったり、どんな魔法を使うのか、どれだけ耐性があるのか、分析することが出来るのよ。毎回私が戦闘始まる前に使ってる。 ライ:で、ニーニャが分析した情報を、俺も知ることが出来て.....あ、そういえばニーニャ、ラリマーに”マジック・リンク”かけてなくね? ニーニャ:あー、そうだ。かけとこっか。 ラリマー:マジック・リンク? ニーニャ:そ。情報を共有する魔法だよ。これをかけておくと、私が”スペクトル・アイ”を使った時に、ラリマーもその場で情報を知ることができるの。他にも、スターシスフォースの転移先共有、とかね。転移魔法って、行ったことのない場所には転移できないでしょ?でも、マジック・リンクをかけておけば、ラリマーが行ったことのない場所でも、私が行った場所で空間を繋げば、転移することができるの。 ラリマー:なるほど、それは便利だな。 ライ:そうそう!何かと役に立つからさ。 ニーニャ:マジック・リンク!.....おけ、これでリンク繋がったよ。 ラリマー:サンキュ。 ライ:っし!じゃあ今日も綺麗に負けたということで!次までにまた各々強くなること!以上!解散っ! ニーニャ:今回、ちょっと、惜しかったから、次こそは勝てるかな?戦略、考えとこ!じゃあね、2人とも! ラリマー:おう。またな。 ライ:またな、ニーニャ!よし、ラリマー、今夜の晩メシどうする? ラリマー:昨日狩った獲物の肉がまだ残ってただろ。あれで何か作ろうぜ。 ライ:オーケー!じゃ、俺らも帰るかぁ! 0:魔王城 ナキア:アイト、って言ってたわよね。なかなか面白そうなやつだったなぁ。かなり強かったし、こっちももっと強い魔法で行かなきゃ、次は負けちゃうかもなぁ。......そうだ、お父さんの書斎にもっと強力な魔法の魔導書があったはず!ちょっと借りてこよっと! 0:魔王の書斎 ナキア:えぇっと、確かこの辺りに.....これこれ!...........ん?机の上、かなり散らかってるわね?.........あれ...?これはなに....?魔法陣のメモ......?......え、なにこれ....。見たことの無い術式が複雑に組まれてる....。新しい、魔法?でも......この組み方....禁忌の術式に近い....。これはなに?嫌な....嫌な魔法な気がする....!......あっ、これは......。 魔王:ナキア。そこで何をしている。 ナキア:っ!お、お父さん....。 魔王:ここは我の書斎だ。何をしているのか、と聞いている。 ナキア:ちょ、ちょっと新しい魔法を習得しようかなって、魔導書を借りに来たの。 魔王:そうか。我は今からここに用がある。出ていきなさい。 ナキア:う、うん...。ごめんなさい....。 魔王:........。 ナキア:.........。 魔王:どうした、早く出ていけと言っている。 ナキア:ねぇ、お父さん。 魔王:なんだ。 ナキア:”ラスト・ブラック”って....なに....? 魔王:見たのか。 ナキア:中身はわからないけど、禁断の術式がたくさん組まれてた....。ねぇ、お父さん.....お父さんは何をするつもりなの......? 魔王:.......わかった。全てを教えよう。ナキア、来なさい。 ナキア:おとう、さん......。 0:魔王城地下遺跡 ナキア:ここ、は....?お城の地下にこんな遺跡あったの? 魔王:最近だ。我が創り上げた。 ナキア:......っ!あの中心にあるのは......? 魔法陣と......黒い、龍結晶....? 魔王:さて、予定より少し早いが。始めるか。.......我が支配下にひれ伏せ、コントロール・マインド! ナキア:あっ...!?お...おとう.....さん....? 魔王:まだ材料が足りないな。お前の絶望の元になる人間をここに連れてきてもらおう。 ナキア:どういう....こと......? 魔王:強制操作、スターシスフォース。 ナキア:あぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 魔王:お前が使うスターシスフォースなら、あの人間どもをここに呼び出すことが可能だ。コントロール・マインドは、相手の魔法を強制的に使わせる術…。ナキア、イメージしろ。よくここに来ている、お前と仲のいい人間どもを。 ナキア:あぁ...っ!やめ....て......!あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!! (スターシスフォース発動、ライとニーニャが召喚される) ライ:.....んー。......っ!?え、なんだ、ここ....!? ニーニャ:っ!!ここ、は....?えっ..?ナキアちゃん!? ナキア:そん....な......! ライ:ナキアと...魔王!?それに、ここは.....? 魔王:人間ども、我の魔法の生贄となってもらおう。動きを封じよ、縛りの術....バインドフォース! ライ:ぐあっ!! ニーニャ:くっ....動けない....っ! ナキア:お父さん!やめて!2人に手を出さないでっ! 魔王:ナキア。今から発動させる魔法には、お前の魔力が必要だ。お前の最大の魔力を魔法陣の中心に放て。 ナキア:いやっ!やりたくないっ! ニーニャ:ねぇ...この魔法陣....禁術がたくさん組まれてる....。ちょっと!この魔法陣で何するつもりなの!? 魔王:じきにわかる事だ。ナキア。魔法陣を発動しろ。なぜ、この人間をここに呼んだのか、お前ならわかるだろう。 ナキア:........魔法を発動させないと、2人を殺す、ってこと....? 魔王:発動、してもらおうか。 ライ:ナキア!やめろ!よく分かんねぇけど、発動させたらヤバいんだろ!? ニーニャ:これはヤバい!ナキアちゃん、ダメ!私たちのことはいいから......っ! 魔王:無駄だ。この魔法陣は、ナキアの絶望でも発動するようになっている。もしナキアが自分で発動しなくとも、お前らを殺してナキアが絶望を感じれば、魔法は発動する。 ライ:くっ!くそ、動け....ねぇ.....っ! ニーニャ:させないっ!ファイヤーストーム! 魔王:その程度の魔法、我には効かん。大人しくしていろ。 ニーニャ:くうっ! ナキア:お父さん......私が発動したら、この2人には手を出さないって、約束してくれる....? ライ:おい!ナキア! 魔王:いいだろう。こいつらは生かしてやろう。 ナキア:わかった。 ニーニャ:待ってよ、ナキアちゃん!ダメだって!あなた自身もどうなるかわかんないだよ!? ナキア:ライ。ニーニャ。........ありがとう。 ライ:待て!やめろ! ニーニャ:ナキアちゃん!! ナキア:発動。 (黒い炎が燃え上がる) 魔王:ハハハハハ!これで!我が野望も叶う!!絶望の王よ!よみがえれ!! ライ:なんだ、これ!黒い炎が! ナキア:あ、あ.........あぁぁぁぁぁぁぁっ!! ニーニャ:黒い炎が!ナキアちゃんを.....! 魔王:さぁ......今ごろ人間の村に仕組んできた魔法陣も発動している頃だ......今宵、人間どもを絶望の炎で焼き付くし、滅ぼしてやる! ライ:なんだって!?村を.....!? ナキア:やだ......おとう......さん......やめ.....て....! ニーニャ:ナキアちゃん!ナキアちゃん!くっ......できるか......わかんないけど......あなたに教えてもらったこの魔法! ナキア:ニー.....ニャ........ライ......逃げ....て.. ニーニャ:宇宙の星々の導き、世界の理に反する者、空間を繋ぎ合わせ、対象を転移させよ!強制転移!スターシスフォースっ!ナキアをディア村へ! ライ:っ!ニーニャ、その魔法! ニーニャ:ずっと使えなかった、ナキアちゃんにたくさん助けてもらったこの魔法。だけど!ずっとずっと使えるようにって練習してきた!だから!この魔法で!あなたを逃がす!私たちの村へ! ナキア:ニーニャ......っ!........あ、あぁっ!あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!! ニーニャ:っ!転移、しない....?失敗......した....。 魔王:その程度の魔力で、今ここに張っている結界は破れぬ。大人しく、世界が絶望に染る様を見ているがよい。 ニーニャ:そん、な.....! ライ:くそ、くそっ!何も出来ねぇのかよ!このまま見てることしかできねぇのかよ! 魔王:さぁ、始めようか。......黒き星が地に堕ちて、黒の輝きは世界を統べる.... ニーニャ:詠唱が始まった!なんとか.....とめないと.....! 魔王:暗黒の地と化した大地に、絶望よよみがえれ ライ:光り輝け、ストレートフラッシュ!.....くそ、ダメだ.....全然効いてねぇ....! 魔王:闇と終焉の焔は全てを包み ナキア:お父さん.....お願い..やめて....お父さん......っ! 魔王:厭世(えんせい)に満ちた魂を捧げよ。 ライ:やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!! 魔王:ラスト..... ラリマー:スターシスフォースっ!!させるかぁぁぁっ!!!!光輝斬(こうきざん)!! 魔王:っ!?ぐうっ! ライ:ラリマー!? ラリマー:あっぶねぇ....。 ニーニャ:ラリマー.....。 ラリマー:悪ぃ、遅くなっちまった。解放せよ、バインドブレイク。 ライ:拘束が解けた......助かった、ラリマー。 魔王:なんだ貴様は.....どこから湧いてきた....! ラリマー:ニーニャ。お前がこことディア村をスターシスフォースで繋いでくれたおかげで、俺のスターシスフォースも繋げることが出来た。 ニーニャ:....!よかった、成功、してたんだ。 魔王:すんでのところで邪魔をしやがって....!先に貴様らを片付けてやる....! ライ:来るぞ....! ラリマー:ライ、ニーニャ、狙うのはあの魔法陣にある黒い龍結晶だ。あれを壊さないと、この脅威は終わらない。 ニーニャ:わかった。 ラリマー:ニーニャ、俺を援護してくれ。魔王を引きつける。ライ、お前は黒い龍結晶を壊してくれ。 ライ:よし、任せろ。 魔王:我の...絶望を.....邪魔するなぁぁぁぁ!!! ラリマー:行くぞっ! ライ:おう! ニーニャ:轟け、大爆発!ビックバン! 魔王:絶望を、絶望を、絶望を!! ラリマー:光の剣!ホーリーソード!.....完全にのまれてやがるな。魔王!自分の娘を生贄に捧げるまで堕ちたか! 魔王:アレは、たダの器。絶望の王ノたメの、器。 ラリマー:目を覚ませよ、魔王...!くっ!もっと威力を!フラッシュソード! 魔王:邪魔...するナ。おおおおおっ! (鋭い爪でラリマーをなぎ払う) ラリマー:がっ!? ニーニャ:ラリマー!っ!全てを焼き尽くせ、灰燼(かいじん)と成り果てし炎の地にさらなる業火を!フレイムワールド! 魔王:絶望の炎よ。ブラックフレイム。 ニーニャ:うああああぁっ! ライ:ニーニャ!ラリマー! ラリマー:こっちはいい!破壊に集中しろっ! 魔王:トドメ、だ。 ナキア:お父さん.....お父さん......やめ、て......戻ってきて、お父さん......! 魔王:っ!(一瞬、動揺する) ラリマー:ライ!今だ! ライ:うおおおおぉぉぉ!最大威力っ!!ホーリーソード・テラ!!! 0:黒い龍結晶に攻撃するが、壊すことができない。 ライ:ダメだ.....壊れねぇ....!黒い結界みたいなのが邪魔してる! 魔王:フハハハハハハハ!お前ら人間ごときに、壊させるものか!! ニーニャ:ライ!その結界、物理攻撃じゃダメ!最大の光魔法で!ナキアちゃんから教えてもらった、最強の! 魔王:邪魔だ。(爪でなぎ払う) ニーニャ:あぁっ!! ライ:ニーニャ!...そんな、最大の光魔法なんて...... 魔王:お前が1番、目障りだ、アイトの騎士よ。(ラリマーの首をつかむ) ラリマー:ぐあぁっ!くそ、おい!ライ!使え!魔王が...俺を殺そうとしている....間に!ぐぅっ! ライ:そんなっ!.....っ! ナキア:ライ........。 ライ:ナキア...。 ナキア:お願い、お父さんを救って......。ライなら.....できるから.....世界を.....救って...。 ライ:っ!わかった.....俺にしか、できない...! ナキア:信じてる。 ライ:ナキアからもらった、この魔法...!希望の神、エルピスよ。我らの絆のもと、その力を与えたまえ。希望の光、友愛の輝き。全てを照らす白き光となれ!サンシャイン・グラマラス・フィリア! 魔王:っ!?ぐ、ぐあああああああああぁぁぁっ!!!!! ラリマー:(魔王から開放される)ぐっ!げほ、げほっ!......黒い龍結晶は!? ニーニャ:.......!消えて、いってる! 0:黒い龍結晶が砕け散る。 ライ:.....はぁ、はぁ....発動、できた...!壊せた!黒い炎も消えたぞ! 魔王:.....っ!?う....これ、は......? ラリマー:目を覚ましたみたいだな。魔王。 魔王:我は.....何かに操られていた、のか.....。 ニーニャ:ナキアちゃんっ! 魔王:!?ナキア!?おい、ナキア! ナキア:ぅ.....うぅ.....。 魔王:なんだ、これは...黒い魔法が....これは、呪い....!? ラリマー:ヤバいな、絶望の炎に晒されてる時間が長かったか。このままだと、肉体と精神が壊されちまう.....! ニーニャ:そんな!ナキアちゃん!しっかりしてよ! 魔王:我の...せいで....!くそっ!ナキア!頼む、死なないでくれ!なにか...手は....っ! ライ:みんな、離れてくれ。 ニーニャ:ライ...? ライ:俺のねえさんから授かった、全ての呪いを浄化する聖なる魔法。それをナキアにかければ助かるはずだ。 魔王:待ってくれ。聖なる魔法は、悪魔族にとっては消滅の魔法に等しい。いくらナキアでも耐えられない.....! ライ:魔王。お前の娘は、お前が思っているよりもずっと強い。大丈夫、耐えられるよ。ナキアを信じろ。 魔王:......しかし、 ニーニャ:私たちはずっとナキアちゃんの強さを見てきた。大丈夫だよ。ナキアちゃんなら。 魔王:........人間。ナキアを.....娘を、救ってくれ。頼む。 ライ:あぁ。天使の導く聖なる輝き、闇の脅威を取り払え.....リフテッド! 0:翌日、龍結晶の祠。 ライ:もう帰るのか。 ラリマー:この世界での役目は終わったからな。次の世界を救いにいかないと。 ニーニャ:大変なんだね、そのアイトってのも。 ラリマー:これが俺の役目だからな。 ライ:ま、世界を救って、落ち着いたらまたこの世界に来いよ。一緒に魔王倒しに行こうぜ。 ラリマー:……。それは、できない。 ライ:ん?なんでだ? ラリマー:この世界から離れたら、俺はここでの記憶を失い、次の世界へ新しく生まれ変わる。もう、この世界に来ることはないだろう。……また脅威にさらされて、アイトとして来たとしても、それは俺じゃない、新しいアイトだ。 ニーニャ:えー、なにそれ、面倒だね。 ラリマー:そういう運命なんだ。だから…お前たちのことは…。 ライ:知らねーよ、運命なんて。そんなもん、ぶっ壊して来いって。 ラリマー:…は? ニーニャ:そうそう、できないから、とか運命だから、とかって決めつけるのマジダサいから。 ラリマー:いや、ダサいとかそういうんじゃなくて……。 ナキア:スターシスフォース!あ!やっぱりここにいた! ライ:お!ナキア!元気になったか!…と、 ニーニャ:魔王、も…? 魔王:ナキアに無理やり連れてこられた。 ナキア:違うでしょ!…お父さんね、言いたいことがあるんだって。 ライ:わかった。聞くよ。 魔王:……。人間、今回は迷惑をかけた。……そして、娘を救ってくれてありがとう。礼を言う。 ニーニャ:おお、魔王からお礼言われる日が来るなんてね! 魔王:お前たちは、我よりもずっとずっと娘のことを理解し、信じていた。人間と魔族なぞ相容れることはないと、我らの力に遠くおよばないと、ずっと我は人間のことを見下してきた。……だが、娘とお前たちは、互いを尊重し合い、信じあっていたのだな。 ライ:そうだよ。ずっとずっと戦い合ってきたからな、俺たちは。 ナキア:ね!まぁ、私には遠く及ばないけどね! ライ:いーや、絶対にいつか倒してやるさ! ナキア:できるもんならやってみなさいよ。 ニーニャ:また力磨いて、挑みにいくよ!あー、そのときは魔王も一緒に倒しちゃおうかな? 魔王:……そのことなんだがな、人間。我はもう、あの城をナキアに任せようと思う。 ナキア:え?お父さん? 魔王:人間の支配も、魔族の統治も、すべてナキアの思うようにやらせよう。 ナキア:私、支配なんてやめて、人間と対等な世界にするよ? 魔王:お前の好きにやればいい。ただ、魔族を憎む人間、人間を見下している魔族はお前が思っているよりも多い。 ナキア:…うん、わかってる。でも、きっと時間をかけて真剣に向き合えば、きっとわかってくれる日がくるよ。 魔王:そうか。人間よ。我の力だけでは、ナキアを支えるのは力不足だ。お前たちの力も、貸してくれないか。 ライ:おう!もちろんだ! ニーニャ:任せてよね。ナキアちゃん、一緒にがんばろう! 魔王:礼を言う。 ナキア:えへへ、ありがとう! 魔王:そこのアイトの騎士よ。 ラリマー:おう、なんだ。 魔王:世界を救ってくれてありがとう。 ラリマー:まさか、魔王様から礼を言われるとはな。んじゃ、俺はそろそろ行くわ。 ナキア:行っちゃうの? ラリマー:がんばれよ、いろいろと。 ナキア:うん、ありがとね、ラリマー。 ライ:楽しかったぜ、ラリマー。 ニーニャ:短い間だったけどね。 ラリマー:あぁ。さよならだ、俺の大切な親友… ライ:ちげぇだろ、ラリマー。 ラリマー:は?なにがだよ。 ニーニャ:さよなら、じゃなくて、またね、だよ! ラリマー:だから俺は……いや、そうだな。……またな、大切な親友たち。 ライ:おう!また来いよ! ニーニャ:待ってるからね~! 0:ラリマーの体は龍結晶の中に消えていった。 ラリマー:(M)またね、か。あいつらにはずっと振り回されっぱしだった気がするな。……楽しい世界だった。種族を越えて信じあう絆、か。うらやましいな。俺もその中で一緒にこの世界の行く末を見ていたかった。時間はかかるだろうが、きっとどの種族も平等な、平和な世界になっていくんだろう。……また、この世界に来れるといいな。…さて、寂しさに浸るのはこれくらいにしよう。龍結晶、次はどの世界に行けば……。ん?龍結晶…?……っ!この感覚…っ!絶望が…絶望の王が…よみがえった…?なぜだ!?ラストブラックの発動は阻止したはずだ…!……まさか…他の世界で…ラストブラックが発動した…?やべぇ、その世界に早く生まれ変わらないと!龍結晶が……世界が、全ての世界が危ない!早く、次の、世界へ…! 0:終