台本概要

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タイトル 死んでみてから言ってみろ!
作者名 マリー  (@Cobalt_Blue0327)
ジャンル コメディ
演者人数 2人用台本(女2)
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 ◆あらすじ
とあるビルの屋上。自分を取り巻く環境に絶望して、楽になろうとする少女がいた。
さあ、いざ行かん。
一歩を踏み出そうとした少女の元へ、ある女性が現れた。
「私、昔から便秘気味なんです」
果たして彼女は少女の自殺を止められるのか?

◆所要時間
10〜15分。

◆台本使用について
使用連絡は必須ではありませんが、教えていただけると聞きに行けるのでとても嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
少女 76 家庭環境を苦に、ビルの屋上で飛び降りようとする女子高生。
5 日夜婚活に励む成人女性。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:どこかのビルの屋上。 0:明らかにサイズの合っていない制服を着た少女が遺書を持ってやってくる。 0:踵の潰れた靴を脱ぎ、傍らに遺書を置いて、ビルの下を覗き込む。 0:しばらくためらう様子を見せた後、意を決して飛び込もうとする。 0:女が飛び込んでくる。 女:「早まらないでー!」 少女:「わああっ!?(落ちそうになり、慌てて体勢を整える)」 女:「死んだって良いことないですよー!」 少女:「だ、誰あんた!関係ないでしょ!ほっといてよ!」 女:「出たー!王道の謳い文句―!」 少女:「別に謳い文句じゃないんだけど!」 女:「白昼堂々、こんな町中のビルで飛び降りようとするなんて、誰かに止めてもらいたいって言ってるようなもんですよ!」 少女:「そ、そんなことない!」 女:「とにかく危ないから、ほら、こっちに来てください」 少女:「……嫌。私は死ぬって決めたの。死んで楽になりたいの!」 女:「死んで楽になれるなんて、誰が言ったんですか?楽になれる保証、どこにもないじゃないですか!」 少女:「う」 女:「死んだらどうなるかわからないのに、死んだ方が楽なんて言わないで下さい!」 女:「あなたはまだ若いんだし、色んな可能性を持ってるんですよ。」 女:「それを全て捨ててまで、死んだ方が楽なんて……死んでみてから言って下さい!」 少女:「どっちだよ!死んでほしいの!?」 女:「そ、そんなこと言ってないじゃないですか」 女:「ただ、死んだこともないのに、死んだ方が楽なんて言うのおかしいなって」 女:「まだまだこれから楽しいことがいっぱい待ってますよ。勉強に精を出すもよし」 女:「恋愛に一生懸命になるも良し。夢を見つけて、夢を叶えて、そうすれば」 女:「生きてて良かったー!って思うようになりますから!生きてて良かったって、」 少女:「死んでみてから言ってみろー!」 女:「ひえっ」 少女:「生きてて良かった!?それこそ死んでみてから言ってみてよ!」 少女:「どうする?死んだ後に楽園が待ってたら。食べるものも寝るところも心配なし」 少女:「勉強なんてしなくても何にでもなれるし、好きな人とも思った通りに恋愛できる」 少女:「そんな世界が待ってたらどうすんの!」 女:「そ、そんな都合良いことあるわけないじゃないですか~」 少女:「は!?なんでわかんの!?あんた死んだことあんの!?」 女:「ないですけどぉ……」 少女:「それで「生きてて良かった」って何!?死んだこともないのに、生きててよかったなんておかしくない!?」 少女:「ねえ!どうなの!」 女:「つ、強い……!」 少女:「じゃあ、そういうことだから」 女:「待ってー!」 少女:「何!まだなんかあんの!」 女:「た、確かに死んだことはないけど!死んだ後の世界なんて、本当に誰にもわからないじゃないですか!」 女:「そんな未知の可能性に賭けるより、生きて幸せになる為に努力した方が確実じゃありませんか?」 女:「あなたは、何が辛いんですか?」 少女:「……それ」 女:「え?」 少女:「そこに置いておいた遺書」 女:「よ、読めってことですか?」 少女:「そう」 女:「誤字脱字をチェックすればいいんですか?」 少女:「してどうすんの!あんたが聞いたんでしょ!読んだらわかるから」 女:「じゃ、じゃあ失礼して……。お父さん、お母さん、後を追う不幸をお許しください」 少女:「二人が死んで、十年経ちます」 少女:「おじの家に引き取られた私の暮らしは、それはもう悲惨なものでした」 少女:「おじの家には既に息子が二人いて、私の面倒を見る余裕なんてありません」 少女:「私は毎日、学校が終わるとまっすぐ家に帰り、家族の代わりに家事をします」 少女:「私に使うお金はないと言わんばかりに、私に与えてくれるものは何もありませんでした」 少女:「いつまでもサイズの合わない服を着て、寝床は押入れ。食事は皆の食べ残し」 少女:「みずぼらしい恰好をした私を、学校の人は笑います。友達なんていません。学校ではいつもひとりぼっちです」 少女:「そしてとうとう、おじとおばに言われました。お前は大学には行かせない」 少女:「高校を卒業したら働き、育てた恩返しに給料は全て家に入れろ」 少女:「私は確信しました。生きていても、私は一生この家族の奴隷なんだと」 少女:「こんな人生を送るくらいなら、大好きな両親がいるところに行きたい」 少女:「お父さん、お母さん。きっと私が死ぬことは望まないでしょう」 少女:「でも、大丈夫。私がそっちに行ったら、三人仲良く暮らせるんだから」 少女:「それがきっと幸せ。死んだ方が、幸せ。それじゃあ、今から向かいますね」 女:「…………。」 少女:「……引いてるでしょ」 女:「えっ」 少女:「思ってたより重い内容で引いてるでしょ」 女:「そそそそ、そんな。あぁー高校生の悩みなんて恋愛とか勉強とかくだらないものかと思ってたよ」 女:「思いのほか重いの来ちゃったよ。やばいよ手に負えないよー、なんて、お、思ってないですよお」 少女:「嘘へたくそか!」 女:「ど、どうしてわかるんですか!?エスパーですか!?」 少女:「むしろいい歳してそこまでわかりやすいのがどうかしてるよ」 少女:「そういうわけだから。じゃ」 女:「待ってー!!」 少女:「もう!いい加減にして!ほっといてよ!」 女:「うぅ……。」 少女:「……で、何!?」 女:「聞いてくれるんですか!?やっぱり本当に死ぬ気はないんですね!?」 少女:「いちいち腹立つなぁ!」 女:「それでは聞いてください。私の主張」 少女:「歌謡曲みたいに言うな」 女:「確かにあなたの生い立ちは重いです。死を考えても、きっとおかしくないのでしょう」 女:「ですが!ですが!敢えて私は言いたい!どんなに辛い人生でも、小さな幸せは確実に転がっていると!」 少女:「小さな幸せぇ~?」 女:「私昔から便秘気味なんです」 少女:「は?」 女:「あと、昨日婚活パーティに参加してきました」 少女:「はあ?」 女:「収穫はありませんでした。素敵な男性は、私より若くて可愛い人を選びました」 女:「そりゃ、選ぶなら若い子の方が良いに決まってます」 女:「そんなこんなで次々とカップルが誕生していく中、私は誰からも選ばれず」 女:「帰り道なんて惨めなものでしたよ。新たな出会いを手に仲睦まじく帰っていくカップルたちの中を、一人で歩いて帰りました」 女:「こう見えて私、週に二十回は婚活パーティに参加してます。それでも収穫なしです」 少女:「週二十……週二十!?」 女:「今は早朝からやっているものもありますから」 少女:「いやそれでもだよ」 女:「たった一人の帰り道、私は思いました」 女:「私はこのまま、誰からも愛されず、一人で生きていくのかと」 女:「同級生が結婚して家事に育児に奮闘していく中、私は自分しか食べない料理を作り、」 女:「自分のぬくもりしか感じないベッドで眠り、休日は録り溜めしていたドラマの一気見、流行のイケメン俳優に心躍らせ、」 女:「その内無駄に貯まった貯金でマンションを買い、寂しさを紛らわす為に飼った犬に慰めてもらう人生……」 少女:「そこそこ良い人生だよ」 女:「孤独な人生を想像すると、不安で夜も眠れませんでした。ここで話は便秘に戻ります」 少女:「あ、あぁ、そんな話もあったね」 女:「私昔から便秘気味なんです」 少女:「聞いたよ、もう」 女:「何日もお通じがでないと苦しくて苦しくて。けど昨日の夜、なんと!久しぶりに!大量だったんです」 少女:「聞きたくないよ!何の話なの!?」 女:「体に溜まった老廃物が、何日も私を悩ませた悪魔が、ようやく出て行ったんです。それが先ほど伝えた、小さな幸せです」 少女:「汚いんだよ!たとえ話が!なんでよりによってそういう話なの!」 女:「その小さな幸せを感じた時!私は一瞬でも、嫌なことを忘れられたんです」 女:「他にもあります!使ったトイレットペーパーが、不足なく使い切れた時とか!空気清浄機にバレずに放屁した時とか!」 少女:「なんで全部シモの話なの?そこから離れてよ!」 女:「……お酒を飲みすぎた後、吐いてスッキリした時?」 少女:「上だけど!上だけどそういうことじゃない!あんた、恋人できないの絶対年齢のせいじゃないよ!」 女:「ど、どこがダメなんでしょうか」 少女:「わかってないのがタチ悪いよ!とりあえず下品な話はやめな?相手の反応見ながら話しな?」 少女:「あんた、会話する時一方的に喋るタイプでしょ」 女:「そういえば……相手の話ってあんまり覚えてないかもしれません」 少女:「あと、空気読めないって言われない?」 女:「確かに、よく言われます」 少女:「でしょ?そういうところ、直していったらいいんじゃない?」 女:「わかりました!アドバイス、ありがとうございます」 少女:「……」 女:「……」 少女:「じゃ」 女:「待って待って!よく今の流れで飛び降りようとしましたね!?」 少女:「あんたが変な流れにしたんでしょ!?」 女:「とにかく、一回考え直しましょ?」 少女:「無責任なこと言わないで!大人のくせに!」 少女:「あんたはただ、目の前で人が死ぬのが嫌なだけでしょ」 少女:「私が今死ぬのを辞めたとして、その後もずっと助けられるわけじゃないでしょ。だから、もうほっといて」 女:「は、早まらないで!」 少女:「早まってないんだよ!熟考した結果だよ!」 女:「確かに、あなたの環境はあまりにも酷いけど。あなたは、良い人じゃないですか」 少女:「は?」 女:「見ず知らずの私の、悪いところを指摘してくれたし」 女:「あと、私の思ってること、当てられたじゃないですか。それって、人の気持ちも考えられるってことでしょう?」 少女:「そんなこと言ったって。私が良い人だったって、なんの意味もない」 女:「良い人が死ぬのは、勿体ないですよ。良い人は……必ずモテます!」 少女:「そこ?」 女:「はい!きっとあなたが婚活パーティに参加したら、モテモテですよ!引く手数多ですよ!選び放題ですよ!」 女:「そこで素敵な人と出会って。すっごく幸せな家庭を築けると思います!」 少女:「何それ。慰めにしては適当すぎるよ」 女:「慰めじゃありません!築きたくありませんか?幸せな家庭!」 少女:「そりゃ……そうだけど」 女:「死ぬのはそこからでもいいじゃないですか!」 女:「幸せな家庭が築けるか、チャレンジしてみて!ダメだったら、また考えましょう!」 少女:「……無理だよ」 女:「え!?ど、どうして!?」 少女:「……疲れたんだ。幸せになることを期待するの。幸せな家庭を築くこと」 少女:「大好きな家族に囲まれること。喉から手が出るほど欲しいよ。でも、疲れたんだよ」 女:「そんな」 少女:「……あんた、ちょいちょいムカつくけど。でも、全力で止めようとしてくれるのは、嬉しかったよ」 少女:「最後に、上辺だけでも、私のこと心配してくれる人と出会えてよかった。今度こそ、さよなら」 女:「待って!」 0:少女、いよいよ飛び降りようとする。 0:女が駆け寄り、少女を引っ張り出す。その反動で、自分が落ちそうになる。 女:「わーーーっ!!」 0:女、なんとか体勢を立て直すが、その場にしゃがみ込む。 女:「いやーー!高いーっ!死ぬーっ!いやーっ!」 少女:「ちょ、ちょっと落ち着いて」 女:「死にたくないよーっ!まだ結婚してないよー!犬も飼ってないよー!」 女:「幸せになってないよー!いやーっ!高いところやだーっ!」 少女:「うるさいな!こっち来て!」 0:少女が女を引っ張り出す。 少女:「ほら、もう大丈夫だから」 女:「ひぃひぃ……怖かった……」 少女:「情けないなあ……」 女:「わ、私実は、小さい時ジャングルジムから落ちて大怪我したことあって。それから高所恐怖症なんです……」 少女:「はあ?それなのに止めにきたの?」 女:「死ぬかと思った~……生きててよかった~……」 少女:「……はは。あはは」 女:「何がおかしいんですか!?私、死にかけたんですよ!」 少女:「ビビってるあんたがおかしくて……」 女:「……笑った顔、カワイイですよ。絶対、あなたはモテます!」 少女:「まだそういうこと言う?あんまり言うと、嘘くさいよ」 女:「え……じゃああなたはモテませんよ」 少女:「そう言われると腹立つな。本当、ズレてるよね」 女:「でも、改めて決意できました!」 少女:「何を?」 女:「今のまま死んだら絶対後悔する!私、めげずに婚活します!あなたも、一緒に行きませんか?」 少女:「なんでそうなるの」 女:「あなたに群がる男のおこぼれが貰えそうですから!」 少女:「うわあ……」 女:「いいから一緒に行きましょうよ。案外、楽しいですよ!」 少女:「……あーあ。なんか、あほらしすぎて、死ぬ気失せてきた」 女:「本当ですか?」 少女:「でも、家に帰ったらまた死にたくなるかもしれない」 女:「えっ……」 少女:「死に場所は、ここに決めたから」 女:「ここに?」 少女:「そしたら、また止めにきてよ。その代わりに、またアドバイス、してあげるから」 女:「も、勿論!何度だって止めます!一緒に婚活パーティに行ってくれるまで!」 少女:「えぇ~。本当に行くの?」 女:「はい!」 少女:「はあ……わかった」 女:「本当ですかー!これから早速パーティあるんです!行きましょう!」 少女:「今から!?未成年ってダメじゃないの?」 女:「あ、そっか。じゃー……私が暗い顔して会場から出てきたら、慰めてください!」 少女:「めんどくさー」 女:「私とあなたの仲じゃないですか!ほらほら、行きましょ!」 少女:「ま、待ってよ」 0:女、少女を引っ張ってはけていく。少しして、少女が戻ってくる。 0:遺書を拾い、中を読む。 少女:「死んだ方が、幸せ。……いつか、死んでみてから言ってみるか」 0:遺書を破り捨て、はける。

0:どこかのビルの屋上。 0:明らかにサイズの合っていない制服を着た少女が遺書を持ってやってくる。 0:踵の潰れた靴を脱ぎ、傍らに遺書を置いて、ビルの下を覗き込む。 0:しばらくためらう様子を見せた後、意を決して飛び込もうとする。 0:女が飛び込んでくる。 女:「早まらないでー!」 少女:「わああっ!?(落ちそうになり、慌てて体勢を整える)」 女:「死んだって良いことないですよー!」 少女:「だ、誰あんた!関係ないでしょ!ほっといてよ!」 女:「出たー!王道の謳い文句―!」 少女:「別に謳い文句じゃないんだけど!」 女:「白昼堂々、こんな町中のビルで飛び降りようとするなんて、誰かに止めてもらいたいって言ってるようなもんですよ!」 少女:「そ、そんなことない!」 女:「とにかく危ないから、ほら、こっちに来てください」 少女:「……嫌。私は死ぬって決めたの。死んで楽になりたいの!」 女:「死んで楽になれるなんて、誰が言ったんですか?楽になれる保証、どこにもないじゃないですか!」 少女:「う」 女:「死んだらどうなるかわからないのに、死んだ方が楽なんて言わないで下さい!」 女:「あなたはまだ若いんだし、色んな可能性を持ってるんですよ。」 女:「それを全て捨ててまで、死んだ方が楽なんて……死んでみてから言って下さい!」 少女:「どっちだよ!死んでほしいの!?」 女:「そ、そんなこと言ってないじゃないですか」 女:「ただ、死んだこともないのに、死んだ方が楽なんて言うのおかしいなって」 女:「まだまだこれから楽しいことがいっぱい待ってますよ。勉強に精を出すもよし」 女:「恋愛に一生懸命になるも良し。夢を見つけて、夢を叶えて、そうすれば」 女:「生きてて良かったー!って思うようになりますから!生きてて良かったって、」 少女:「死んでみてから言ってみろー!」 女:「ひえっ」 少女:「生きてて良かった!?それこそ死んでみてから言ってみてよ!」 少女:「どうする?死んだ後に楽園が待ってたら。食べるものも寝るところも心配なし」 少女:「勉強なんてしなくても何にでもなれるし、好きな人とも思った通りに恋愛できる」 少女:「そんな世界が待ってたらどうすんの!」 女:「そ、そんな都合良いことあるわけないじゃないですか~」 少女:「は!?なんでわかんの!?あんた死んだことあんの!?」 女:「ないですけどぉ……」 少女:「それで「生きてて良かった」って何!?死んだこともないのに、生きててよかったなんておかしくない!?」 少女:「ねえ!どうなの!」 女:「つ、強い……!」 少女:「じゃあ、そういうことだから」 女:「待ってー!」 少女:「何!まだなんかあんの!」 女:「た、確かに死んだことはないけど!死んだ後の世界なんて、本当に誰にもわからないじゃないですか!」 女:「そんな未知の可能性に賭けるより、生きて幸せになる為に努力した方が確実じゃありませんか?」 女:「あなたは、何が辛いんですか?」 少女:「……それ」 女:「え?」 少女:「そこに置いておいた遺書」 女:「よ、読めってことですか?」 少女:「そう」 女:「誤字脱字をチェックすればいいんですか?」 少女:「してどうすんの!あんたが聞いたんでしょ!読んだらわかるから」 女:「じゃ、じゃあ失礼して……。お父さん、お母さん、後を追う不幸をお許しください」 少女:「二人が死んで、十年経ちます」 少女:「おじの家に引き取られた私の暮らしは、それはもう悲惨なものでした」 少女:「おじの家には既に息子が二人いて、私の面倒を見る余裕なんてありません」 少女:「私は毎日、学校が終わるとまっすぐ家に帰り、家族の代わりに家事をします」 少女:「私に使うお金はないと言わんばかりに、私に与えてくれるものは何もありませんでした」 少女:「いつまでもサイズの合わない服を着て、寝床は押入れ。食事は皆の食べ残し」 少女:「みずぼらしい恰好をした私を、学校の人は笑います。友達なんていません。学校ではいつもひとりぼっちです」 少女:「そしてとうとう、おじとおばに言われました。お前は大学には行かせない」 少女:「高校を卒業したら働き、育てた恩返しに給料は全て家に入れろ」 少女:「私は確信しました。生きていても、私は一生この家族の奴隷なんだと」 少女:「こんな人生を送るくらいなら、大好きな両親がいるところに行きたい」 少女:「お父さん、お母さん。きっと私が死ぬことは望まないでしょう」 少女:「でも、大丈夫。私がそっちに行ったら、三人仲良く暮らせるんだから」 少女:「それがきっと幸せ。死んだ方が、幸せ。それじゃあ、今から向かいますね」 女:「…………。」 少女:「……引いてるでしょ」 女:「えっ」 少女:「思ってたより重い内容で引いてるでしょ」 女:「そそそそ、そんな。あぁー高校生の悩みなんて恋愛とか勉強とかくだらないものかと思ってたよ」 女:「思いのほか重いの来ちゃったよ。やばいよ手に負えないよー、なんて、お、思ってないですよお」 少女:「嘘へたくそか!」 女:「ど、どうしてわかるんですか!?エスパーですか!?」 少女:「むしろいい歳してそこまでわかりやすいのがどうかしてるよ」 少女:「そういうわけだから。じゃ」 女:「待ってー!!」 少女:「もう!いい加減にして!ほっといてよ!」 女:「うぅ……。」 少女:「……で、何!?」 女:「聞いてくれるんですか!?やっぱり本当に死ぬ気はないんですね!?」 少女:「いちいち腹立つなぁ!」 女:「それでは聞いてください。私の主張」 少女:「歌謡曲みたいに言うな」 女:「確かにあなたの生い立ちは重いです。死を考えても、きっとおかしくないのでしょう」 女:「ですが!ですが!敢えて私は言いたい!どんなに辛い人生でも、小さな幸せは確実に転がっていると!」 少女:「小さな幸せぇ~?」 女:「私昔から便秘気味なんです」 少女:「は?」 女:「あと、昨日婚活パーティに参加してきました」 少女:「はあ?」 女:「収穫はありませんでした。素敵な男性は、私より若くて可愛い人を選びました」 女:「そりゃ、選ぶなら若い子の方が良いに決まってます」 女:「そんなこんなで次々とカップルが誕生していく中、私は誰からも選ばれず」 女:「帰り道なんて惨めなものでしたよ。新たな出会いを手に仲睦まじく帰っていくカップルたちの中を、一人で歩いて帰りました」 女:「こう見えて私、週に二十回は婚活パーティに参加してます。それでも収穫なしです」 少女:「週二十……週二十!?」 女:「今は早朝からやっているものもありますから」 少女:「いやそれでもだよ」 女:「たった一人の帰り道、私は思いました」 女:「私はこのまま、誰からも愛されず、一人で生きていくのかと」 女:「同級生が結婚して家事に育児に奮闘していく中、私は自分しか食べない料理を作り、」 女:「自分のぬくもりしか感じないベッドで眠り、休日は録り溜めしていたドラマの一気見、流行のイケメン俳優に心躍らせ、」 女:「その内無駄に貯まった貯金でマンションを買い、寂しさを紛らわす為に飼った犬に慰めてもらう人生……」 少女:「そこそこ良い人生だよ」 女:「孤独な人生を想像すると、不安で夜も眠れませんでした。ここで話は便秘に戻ります」 少女:「あ、あぁ、そんな話もあったね」 女:「私昔から便秘気味なんです」 少女:「聞いたよ、もう」 女:「何日もお通じがでないと苦しくて苦しくて。けど昨日の夜、なんと!久しぶりに!大量だったんです」 少女:「聞きたくないよ!何の話なの!?」 女:「体に溜まった老廃物が、何日も私を悩ませた悪魔が、ようやく出て行ったんです。それが先ほど伝えた、小さな幸せです」 少女:「汚いんだよ!たとえ話が!なんでよりによってそういう話なの!」 女:「その小さな幸せを感じた時!私は一瞬でも、嫌なことを忘れられたんです」 女:「他にもあります!使ったトイレットペーパーが、不足なく使い切れた時とか!空気清浄機にバレずに放屁した時とか!」 少女:「なんで全部シモの話なの?そこから離れてよ!」 女:「……お酒を飲みすぎた後、吐いてスッキリした時?」 少女:「上だけど!上だけどそういうことじゃない!あんた、恋人できないの絶対年齢のせいじゃないよ!」 女:「ど、どこがダメなんでしょうか」 少女:「わかってないのがタチ悪いよ!とりあえず下品な話はやめな?相手の反応見ながら話しな?」 少女:「あんた、会話する時一方的に喋るタイプでしょ」 女:「そういえば……相手の話ってあんまり覚えてないかもしれません」 少女:「あと、空気読めないって言われない?」 女:「確かに、よく言われます」 少女:「でしょ?そういうところ、直していったらいいんじゃない?」 女:「わかりました!アドバイス、ありがとうございます」 少女:「……」 女:「……」 少女:「じゃ」 女:「待って待って!よく今の流れで飛び降りようとしましたね!?」 少女:「あんたが変な流れにしたんでしょ!?」 女:「とにかく、一回考え直しましょ?」 少女:「無責任なこと言わないで!大人のくせに!」 少女:「あんたはただ、目の前で人が死ぬのが嫌なだけでしょ」 少女:「私が今死ぬのを辞めたとして、その後もずっと助けられるわけじゃないでしょ。だから、もうほっといて」 女:「は、早まらないで!」 少女:「早まってないんだよ!熟考した結果だよ!」 女:「確かに、あなたの環境はあまりにも酷いけど。あなたは、良い人じゃないですか」 少女:「は?」 女:「見ず知らずの私の、悪いところを指摘してくれたし」 女:「あと、私の思ってること、当てられたじゃないですか。それって、人の気持ちも考えられるってことでしょう?」 少女:「そんなこと言ったって。私が良い人だったって、なんの意味もない」 女:「良い人が死ぬのは、勿体ないですよ。良い人は……必ずモテます!」 少女:「そこ?」 女:「はい!きっとあなたが婚活パーティに参加したら、モテモテですよ!引く手数多ですよ!選び放題ですよ!」 女:「そこで素敵な人と出会って。すっごく幸せな家庭を築けると思います!」 少女:「何それ。慰めにしては適当すぎるよ」 女:「慰めじゃありません!築きたくありませんか?幸せな家庭!」 少女:「そりゃ……そうだけど」 女:「死ぬのはそこからでもいいじゃないですか!」 女:「幸せな家庭が築けるか、チャレンジしてみて!ダメだったら、また考えましょう!」 少女:「……無理だよ」 女:「え!?ど、どうして!?」 少女:「……疲れたんだ。幸せになることを期待するの。幸せな家庭を築くこと」 少女:「大好きな家族に囲まれること。喉から手が出るほど欲しいよ。でも、疲れたんだよ」 女:「そんな」 少女:「……あんた、ちょいちょいムカつくけど。でも、全力で止めようとしてくれるのは、嬉しかったよ」 少女:「最後に、上辺だけでも、私のこと心配してくれる人と出会えてよかった。今度こそ、さよなら」 女:「待って!」 0:少女、いよいよ飛び降りようとする。 0:女が駆け寄り、少女を引っ張り出す。その反動で、自分が落ちそうになる。 女:「わーーーっ!!」 0:女、なんとか体勢を立て直すが、その場にしゃがみ込む。 女:「いやーー!高いーっ!死ぬーっ!いやーっ!」 少女:「ちょ、ちょっと落ち着いて」 女:「死にたくないよーっ!まだ結婚してないよー!犬も飼ってないよー!」 女:「幸せになってないよー!いやーっ!高いところやだーっ!」 少女:「うるさいな!こっち来て!」 0:少女が女を引っ張り出す。 少女:「ほら、もう大丈夫だから」 女:「ひぃひぃ……怖かった……」 少女:「情けないなあ……」 女:「わ、私実は、小さい時ジャングルジムから落ちて大怪我したことあって。それから高所恐怖症なんです……」 少女:「はあ?それなのに止めにきたの?」 女:「死ぬかと思った~……生きててよかった~……」 少女:「……はは。あはは」 女:「何がおかしいんですか!?私、死にかけたんですよ!」 少女:「ビビってるあんたがおかしくて……」 女:「……笑った顔、カワイイですよ。絶対、あなたはモテます!」 少女:「まだそういうこと言う?あんまり言うと、嘘くさいよ」 女:「え……じゃああなたはモテませんよ」 少女:「そう言われると腹立つな。本当、ズレてるよね」 女:「でも、改めて決意できました!」 少女:「何を?」 女:「今のまま死んだら絶対後悔する!私、めげずに婚活します!あなたも、一緒に行きませんか?」 少女:「なんでそうなるの」 女:「あなたに群がる男のおこぼれが貰えそうですから!」 少女:「うわあ……」 女:「いいから一緒に行きましょうよ。案外、楽しいですよ!」 少女:「……あーあ。なんか、あほらしすぎて、死ぬ気失せてきた」 女:「本当ですか?」 少女:「でも、家に帰ったらまた死にたくなるかもしれない」 女:「えっ……」 少女:「死に場所は、ここに決めたから」 女:「ここに?」 少女:「そしたら、また止めにきてよ。その代わりに、またアドバイス、してあげるから」 女:「も、勿論!何度だって止めます!一緒に婚活パーティに行ってくれるまで!」 少女:「えぇ~。本当に行くの?」 女:「はい!」 少女:「はあ……わかった」 女:「本当ですかー!これから早速パーティあるんです!行きましょう!」 少女:「今から!?未成年ってダメじゃないの?」 女:「あ、そっか。じゃー……私が暗い顔して会場から出てきたら、慰めてください!」 少女:「めんどくさー」 女:「私とあなたの仲じゃないですか!ほらほら、行きましょ!」 少女:「ま、待ってよ」 0:女、少女を引っ張ってはけていく。少しして、少女が戻ってくる。 0:遺書を拾い、中を読む。 少女:「死んだ方が、幸せ。……いつか、死んでみてから言ってみるか」 0:遺書を破り捨て、はける。