台本概要

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タイトル 【女性三人台本・百合】あーしを結んでLily Girl !!
作者名 つくもだし  (@tkmds_osakana)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 3人用台本(女3)
時間 30 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 女性3人用声劇台本です。劇の所要時間は30分ほどです。
百合オタクちゃんがふたりのギャルと交流するおはなし。百合要素があります。

・ナナミとヨツバに声を張るシーンがあります。
・キスシーンがありますが、声に出して読むところと、キス音にするか声に出すかは演者さんにおまかせの部分があります。
・配信する場合は作者名およびタイトル名を記載していただければ、作者への連絡は不要です。(有償・無償を問いません。)
 ですが、聞きに行きたいので教えていただけると嬉しいです。

【配役表】
島津ナナミ:
柴田チカ :
竹中ヨツバ:

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ナナミ 100 ギャル1。明るい茶髪。ポニーテール(結んだ先をヘアアイロンで巻いてウェーブ状にしている)。陽気で楽天的。
チカ 98 ギャル2。黒髪ロングヘア。面倒くさがりなため普段は髪をおろしているが、バイトの時だけハーフアップにしている。基本的にだるそう。
ヨツバ 97 重度の百合オタク。黒髪ボブメガネ。メガネを外すと可愛い系の美少女だが、本人は無自覚。自称陰キャながらよくしゃべる。※ヨツバMもクリック・タップをお願いします。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:昼休み ヨツバM:友達のいない陰キャオタクの私には、学校は居心地のいい場所じゃない。 唯一の楽しみはこっそり百合マンガを読むこと。 ヨツバM:私の席は後ろの隅だし、ちゃんとカバーもしてるし、昼休みはいつも通りマンガを読んでやり過ごそう。読書に集中しているように見せれば話しかけられることもない。 ヨツバ:ああ、この見開き! 本当に魅力的だなぁ……ドキドキする…… ヨツバM:突然、ぬっ、とページに影が差し込んだ。なんだろう? 曇ってきたのかな? ナナミ:ヨツバちゃん、何読んでるの? ヨツバ:ッ!? ヨツバM:なんて日だろう。強引に覗き込まれてしまった。しかもギャル。有無を言わせぬ行動と言動。だからギャルって嫌いだ。 ヨツバM: 私の高校生活が終わりを告げた音がした。存在が溶けてしまいそうだ。どうしてこんな仕打ちを受けなければいけないんですか、百合神(ゆりがみ)様。 ナナミ:あ、マンガだ! ……ん? 女の子同士でちゅーしてる? ねぇチカ、チカ、チカ!! 見て見て! 女の子同士でちゅーしてるマンガだよ! チカ:え、ガチ? へぇ、こういう作品もあるんだ……えーっと、タイトルは―― ナナミ:ていっ! ヨツバM:茶髪ギャルが黒髪ギャルに抱きついた。正面から。 ヨツバM:片方はニコニコしながら、もう片方はどこか迷惑そう……だけど……。顔、近くない? 10……いや5センチくらいしか離れてない……え? きっす? きっす? きっすですか? 入籍するの? ナナミ:こういう感じ? こういうの見てて楽しいんだ~? チカ:そうなの? てかくすぐったいんだけど ナナミ:チカ、また胸おっきくなった? いや、言わなくていいわ、わかるから! チカ:その言葉、そのまま返す ヨツバ:なッッッッツ!? ヨツバM:ああ、なんて日だろう……百合神様、ありがとう……高校生活なんてもうどうでもいい、この光景が見られただけで私は幸せです……。 0: ヨツバM:翌日から、ナナミちゃんとチカちゃんと私で、お昼ごはんを食べることになった。といっても、私がお弁当を広げていたらふたりが机をくっつけてきたし、いつの間にかナナミちゃんからあだ名で呼ばれることになってたワケだけど……。 ナナミ:わー、バっちのお弁当、んまそー! ヨツバ:あ、ありがとう……。できれば好きなものを食べたいからね チカ:ん、ってことは自分で作ってるの? ヨツバ:うん。冷蔵庫にあるものでなにが作れるかなって思い浮かべて…… ナナミ:え、すっご! 料理めちゃできるじゃん! ヨツバ:そんなことないよ! ナナミ:ホントー? この卵焼きとかさ、んぐんぐ ヨツバ:あっ チカ:光の速さでつまんだな、コイツ…… ナナミ:おいしい! え、すっごいおいしい! 激ウマ! ヨツバ:……あ、ありがとう……! チカ:ナナミ……ちょっとは距離の詰め方考えなよ。ヨツバちゃん、気をつけて。コイツは調子に乗りやすいから ナナミ:しょーがないじゃん! バっちのお弁当がキラキラしてたから、吸い寄せられちゃった! チカ:カラスか! ってかそういう問題じゃないでしょ。この間もアタシが頼んだケーキ勝手に食べたよね? ナナミ:アレはね~、ケーキがあーしに語りかけてきたんだって! 『お願い、食べて』って! チカ:はぁ……キリがないな。ごめんね、ヨツバちゃん。かわりに謝るよ。アタシのゆで卵でよければ―― ヨツバ:ぷっ……あはは! チカ:よ、ヨツバちゃん? ナナミ:ほらー! バっちも笑ってるし、あーしは美味しい思いをしてるし! イッセキニチョー、みたいな? ヨツバ:ふふ……その、こういうやりとり、あんまり見たことなかったから可笑しくって チカ:そっか。それならいいけど ナナミ:あ、そーだ! じゃあ、チカ、ほっぺ貸して チカ:ん ナナミ:ちゅっ(チカのほっぺにキスする、ここは声に出してください) ヨツバ:ガハッッッツ チカ:なにかと思えば……そういうとこだからね ナナミ:お返しとしてはアリでしょ! ヨツバ:あの……もっと…… ナナミ:ん? ヨツバ:私のお弁当全部食べていいから……私にはもうそれくらいしかできないよ……! ナナミ:それはダメ! 食べないとこのあともたないよ チカ:ヨツバちゃんも似たりよったりだったか…… 0: ヨツバM:私たちはいつの間にかすっかり仲良くなっていた。お昼ごはんを毎日一緒に食べるのはもちろん、下校も一緒だ。 ナナミ:おっつかれー! さくっと帰りますか! チカ:あ、今日アタシはバイトだから。ふたりで帰って ヨツバ:うん、わかった。いってらっしゃい、チカちゃん ナナミ:適度にサボれよ! チカ:言われなくてもそうするよ、ありがと。じゃあね ヨツバM:考えてみればナナミちゃんとふたりっきりで帰るのは初めてかもしれない。私は緊張して何も言えなくなってしまう。 ナナミ:んー……バっち ヨツバ:は、はい ナナミ:このあと時間ある? ヨツバ:う、うん。あるよ ナナミ:ちょーっと相談に乗ってほしいことがあるんだけど! おごるから! ヨツバ:おごりじゃなくていいけど……どんな話? ナナミ:そうだなぁ……ここじゃ言いづらいから、とりあえず行こっ ヨツバ:うーん? 0:喫茶店 チカ:いらっしゃいませ……ってなんだ、アンタたちか ナナミ:げぇっ!? チカのバ先ってここかよ~! チカ:悪い? ナナミ:いや悪くはないけど……まーいっか、ほれほれ接客したまえよ チカ:……2名様ですね、一番奥のボックス席へどうぞ ヨツバ:チカちゃん、おつかれさま。落ち着いてて、素敵な喫茶店だね チカ:でしょ。マスターに伝えておくよ、友達がそう言ってたって ヨツバ:うん、よろしくね ナナミ:ふぁ~~~……まーじかー……まいっか! バっち、席行こ! ヨツバ:あ、うん 0: チカ:さて、ご注文は? ナナミ:あーしはアイスティーかな チカ:ガムシロップ、ミルク、レモンから選べるけど ナナミ:ガムシロとミルクをくださいな! チカ:かしこまりました。ヨツバちゃんは? ヨツバ:ブレンドコーヒーをアイスで。それと……この、本日のケーキってどんなもの? チカ:木いちごと桃のタルト ヨツバ:じゃあそれもお願いします ナナミ:めっちゃおいしそう! あーしもちょーだい チカ:はい、かしこまりました。少々お待ちください 0:(チカ、厨房の方へ去っていく) ナナミ:……チカってあんな顔できるんだぁ……意外だなぁ……ふへへ…… ヨツバ:わ、私はナナミちゃんがそんなにニヤニヤしてるほうが意外だよ、どうしたの? ナナミ:あー、まぁね? このあとの話につながるんだけどさ ヨツバ:どういうこと? ナナミ:あーしさ、チカのこと好きなんだよね ヨツバ:うん ナナミ:恋愛的な意味で、なんだ ヨツバ:へっ? ナナミ:バっちはそういうマンガよく読んでるみたいだし? 話とか、恋愛のコツとか……聞けたらなって ヨツバ:いやいやいやいや無理無理無理無理!! ナナミ:え、なんで? ヨツバ:わ、私はあくまで百合、えっと、女の子同士の恋愛を見る立場であって、恋愛とかまったくしたことないし、いや、恋愛自体には憧れてはいるけど自分が割って入るのは違うから! 私は壁だから! だからつまりえっとお手本を示すとかは全然できないよ!? ナナミ:わ、オタク特有の早口だ! 初めて聞いたかも! ……ってそれはいいとして、一回さ、水飲も? ヨツバ:う、うん……ごくっごくっ……ぷはぁっ ナナミ:んー……ちょっと急だったかな? バっちだったらフツーに聞いてもらえるかなって思ったんだけど ヨツバ:ああ、そういうことだったんだね……私も、テンパっちゃってごめんね ナナミ:ううん、いいよ。一応あーしもさ、恋愛に関係ありそうなこととか調べてはいるんだけど、男子と女子の話が基本なんだ ヨツバ:まぁ、そうだよね…… ナナミ:そういうわけで、話しても大丈夫? ヨツバ:むしろ私でいいの? さっきも言ったけど経験なくてよければ…… ナナミ:それは……実を言うと、あーしも一緒 ヨツバ:え゛!? チカ:お待たせいたしました……ヨツバちゃん、どうしたのその顔。んで、なんでナナミはうつむいてるの? ヨツバ:はっ! いや大丈夫、全然、全ッ然なんでもないから! チカ:そっか。なんでもある、と ヨツバ:う…… チカ:ま、深くは聞かないよ。ところで、ご注文の品は以上でお揃いですか? ヨツバ:は、はい チカ:ん。ではごゆっくりどうぞ ナナミ:……チカ チカ:ん? ナナミ:そのエプロン、すっごく似合ってるよ チカ:ふふ、ありがと。初めて言われた。けっこう嬉しいもんだね ナナミ:っ…… チカ:もっと褒めてくれたらスマイルとやらをサービスしてあげてもいいよ ナナミ:敬語使われてキュンとした! チカ:アンタが接客しろって言ったし ナナミ:学校だと髪おろしてるのに今はハーフアップなのガチありがとう! チカ:まあ、このほうが動きやすいからね ナナミ:遊ぶときより大人っぽい格好なのもいい! かわいい! かわいい!! かわいいよ!!! チカ:なッ……! ナナミ:お? もしかして照れてる? ご自慢のスマイルはどしたー? チカ:バカ!(ナナミにチョップする) ナナミ:いでっ! なにすんだよー! ……へへっ チカ:なんだコイツ……あ、ごめんねヨツバちゃん ヨツバ:う、ううん! ご、ごちそうさま! チカ:まだ食べてないでしょ……? まあ、それじゃ、ごゆっくり 0:(チカ退場) ヨツバ:はぁ……なんて百合的な空間! 言葉が出なかった……! それにしても、な、ナナミちゃん、大丈夫……? 突っ伏しちゃってるけど ナナミ:……っはーーー!! ね、見た! 見たよね!? なにあのかんわいい生き物!? やばいって! てかなにあれ!? 照れ顔最高かよ!! あーーーーーもうムリムリムリムリ!! 死ぬ! 死んでもいい! いや生きる! もっと見たいから生きる!! ヨツバ:わ、オタク特有の早口だね。とりあえずお水飲もう? ナナミ:はっ……ごくごく……ぷはぁっ ヨツバ:落ち着いた? ナナミ:うん! よーし、勇気出して褒めたご褒美として、ケーキいただきます! もぐもぐ……ん! おいしい! ヨツバ:私もいただきます。ん……おいしいね! 桃の果汁がすごい……! ナナミ:わかる! なんこれすご! 桃にぶん殴られたみたい! レシピ聞いたら教えてくれるかな? ヨツバ:ナナミちゃん、お菓子作りするの? ナナミ:うん! 甘いもの好きだからねー。ここ前から気になってたとこだけど、来て正解だったわ~……チカが居るのはさすがに予想できなかったけど…… ヨツバ:でも、その、色々楽しめたようでよかったね ナナミ:ガチそれ! ってかさ、どうすればいいんだろうね、これから。アピールしてるつもりだけど伝わってない気がするし ヨツバ:妙に距離が近いな、とは思ってたけどもしかして…… ナナミ:ん、そういうこと。脈ナシなのかな ヨツバ:うーん……確かめてみたことは? ナナミ:ないかも? というか、友達からその先に進めないっていうか…… ヨツバ:きっかけがない、のかな? 多分だけど ナナミ:そうかも! あーしはアピールするしかできないんすよ~ ヨツバ:えっと、じゃあ、私は……見守っていこうかな ナナミ:あー、それいいね! なんかあったら教えてもらう感じで ヨツバ:それなら任せて! 得意だから! ナナミ:オッケー! いや~、それにしても、聞いてくれてありがとね。かなりスッキリした! ヨツバ:ううん、私こそ……まさかこんな身近で百合を見られるとは思ってもみなかったから、その、ありがとう、話してくれて ナナミ:いやいやこっちこそありがと! ってこれじゃ無限感謝編に入っちゃうな~、一旦ストップ! ヨツバ:そうだね ナナミ:つまりあれだ、バっちがあーしの恋をバックアップしてくれるから……備えあれば嬉しいな、ってヤツ? ヨツバ:憂いなし、だよ……ふふっ ナナミ:どっちでも通じるって! じゃあ、よろしくね! ヨツバ:うん! 0:翌日、放課後 ナナミ:ふたりとも、おつかれさまー。さーて、やりますか! チカ:なにを? ナナミ:バっちへのお礼 ヨツバ:ん? お礼? ナナミ:昨日相談乗ってもらったからねー チカ:ふーん。てかアタシは強制参加なのか ナナミ:そりゃそうでしょ! あーしら……その……親友だし? チカ:……そうだね ナナミ:もしかしてヤダ? チカ:協力してあげなくもない ナナミ:じゃあいいじゃーん! ほい、おいで ヨツバ:……おっとぉ? チカ:はいはい、ぎゅー ヨツバ:だぁぁぁぁぁ!?!? ナナミ:チカ~、好きだよ。むぎゅ~。ぱふぱふ! チカ:……胸押し付けんなって ナナミ:あ、嫌だった? ごめんごめん チカ:嫌というか、あれ…… ナナミ:ん? ヨツバ:ぜは……ぜは……いけませんッ……お客様ッッッ!! ナナミ:あっちゃー、刺激が強すぎたかぁ チカ:鼻血出してないだけマシじゃない? ナナミ:バっち、バっち~ ヨツバ:ハッ……ここはどこ? ナナミ:えーっと、ここは西暦743年、さっき墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいのほう)が作られたんだって チカ:出た、声に出して読むと気持ちいい日本語第1位の『墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいのほう)』だ ヨツバ:ねえそれどこ調べなの!? 1位は坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)じゃないの!? チカ:てかこれで戻れるんだ……こだわりポイント謎すぎでしょ ナナミ:あっはは! バっち、やっぱりおもろ! イジりがいがあるな~ ヨツバ:うぅ…… チカ:相談、か……ヨツバちゃん、アタシもいいかな ヨツバ:え? うん、いいけど ナナミ:なんだなんだ~? 悩める乙女ってか? チカ:まあね。あ、ナナミはお呼びじゃないから、今日はひとりで帰って ナナミ:なんでよ!? チカ:うるさいな……アタシ、職員室に用あるから。ヨツバちゃん、先に喫茶店行ってて ヨツバ:うん、わかった。えっと、ナナミちゃん……ごめんね? ナナミ:バっちが謝ることないって! チカ、明日なんかおごれよ~! チカ:しょうがないな……いいよ。じゃあナナミはまた明日ね ナナミ:あいよー! 0:喫茶店 チカ:ごめんね、急に呼び出しちゃって ヨツバ:ううん大丈夫。話って? チカ:あー、その、ナナミについてなんだけど ヨツバ:うん チカ:アタシさ、アイツと付き合いたいんだよね ヨツバ:う、うん? チカ:だから、相談に乗ってほしい ヨツバ:なるほど…… チカ:あれ、けっこう反応が薄いな。飛びつくか驚くかと思ったんだけど。もしかして慣れてる? ヨツバ:いや慣れてはない、けど……びっくりもしてるし……なんというか、意外だなぁって チカ:ま、そんなもんなのかな ヨツバ:そう、かな……というより私でいいの? 話は聞くけど…… チカ:少なくとも同性愛に抵抗はないかなって ヨツバ:似た者同士だ…… チカ:ん? ヨツバ:な、なんでもないよ? それで、相談っていうのは? チカ:いつ告白しようか迷っててね ヨツバ:ふむふむ チカ:けどさ、フられるかもって思うと……その、怖くて。それに…… ヨツバ:それに? チカ:ヨツバちゃんも見てると思うけど、けっこうなスキンシップされてるのも正直キツくて。一応嬉しいんだけど……なんていうかな ヨツバ:うーん……たとえ冗談だとしても、チカちゃんとしてはナナミちゃんのことが本当に好きだから、困っちゃったりとか、申し訳ない気持ちがある……とか? チカ:あ、それ。それだ。もう友達としての範囲を超えちゃってるんだよね、アタシの中では ヨツバ:なんとなくだけど、チカちゃんとしては『ナナミちゃんとの関係をハッキリさせたい』って感じかな? チカ:そう……それにしても的を得てるね、ヨツバちゃん ヨツバ:マンガで見たことがあるんだ チカ:あー。さすが ヨツバ好きで読んでたけど、役に立ってよかった チカ:ヨツバちゃんのおかげで無駄な経験はないって分かったよ。ありがとう ヨツバ:こちらこそ、そう言ってもらえて嬉しいよ! ありがとうね。それで、チカちゃんは……告白、したいんだよね チカ:うん……だけど、タイミングがわからない、かな…… ヨツバ:そっか。じゃあ、そうだなぁ。呼び出すのと、流れで告白するのだったら、どっちがいい? チカ:流れかな、呼び出すのはすごく緊張する、と思う ヨツバ:うん チカ:あと、できれば早くナナミに聞きたい ヨツバ:そうなの? チカ:アタシ、ナナミのこと好きすぎて……接するのもひと苦労なんだ。こんなこと言ったら変だと思われるかもしれないけどさ、泣きそうになるんだよね。ナナミに近づかれると胸が苦しくて、締め付けられて……とにかく、なんだろ……なんて言ったらいいかな……ごめん、うまく言えないや…… ヨツバ:大丈夫だよ。うまく言おうとしなくても……真剣なんだってことはすごくわかるよ チカ:うん……そのさ、こんなに苦しいの、初めてなんだよね。ナナミ以外にも好きになったヤツは居たことあるけど、ここまでキツくなくて、ああもう……何言ってんだろアタシ ヨツバ:そういうこともあるよ……あ、そういえばまだなにも注文してなかったね。なにか飲んだら落ち着くかも? チカ:そうしよっか……。ああ、紅茶飲みたいな……ミルクと砂糖入れて ヨツバ:うん、わかった。すみませーん、注文お願いします! 0: チカ:ふぅ……ヨツバちゃん、すごいな。ほんとに落ち着いた ヨツバ:よかった~。あったかいものを飲めば、心もぽかぽかするからね チカ:そうだね。ねえ、ヨツバちゃん ヨツバ:なに? チカ:ヨツバちゃんに話したら、覚悟が決まったよ。明日、告る ヨツバ:……うん チカ:それでさ、アタシ……ナナミとふたりっきりだとしたら泣く自信しかないんだよね。だから付き添っててほしい ヨツバ:ん? 付き添ってて……? チカ:付き添いは付き添いだけど ヨツバ:…… チカ:だめかな ヨツバ:……だめ、では、ないけど……いいのかなって チカ:むしろ居てほしい。どんな結果になっても、見ててほしい ヨツバ:わ、わかった。何もできないと思うけど、それでもいいなら チカ:ありがとう。助かるよ 0: ヨツバM:そして翌日の放課後。私たちは教室でなんでもない話をしていた。 ふと、会話が途切れた。すると――。 チカ:あのさ、ナナミ ナナミ:んー? チカ:……好きだよ ナナミ:おー、どしたどした~? あーしも好きだよ? チカ:違う ナナミ:え、なにが? チカ:付き合って ナナミ:どこに? チカ:…… ナナミ:おーい、チカー? ヨツバ:あ、あっ…… チカ:……これ以上どうしろって言うんだよ……! ナナミ:んんん? ヨツバ:……あーもう!! あのね、ふたりとも私にばっかり話してて、全然自分たちのこと見てないんだから! ナナミ:え、どういうこと? チカ:まさか……! ヨツバ:チカちゃんはわかったみたいだね、そういうこと。ふたりの話は聞かせてもらったよ……ううん、聞かせてもらっていたの。つまりあなたたちは両方とも片思いしてるんだよ! ナナミ:マジで!? チカ、ほんとなの? チカ:そ、そうだけど ナナミ:なんだぁ、ってことは…… 0:(ナナミ、チカの耳元に顔を近づける) ナナミ:(ささやくように)好きだよ、チカ チカ:……ッ!! ナナミ:ん~? 我が愛しのチカちゃんは耳が弱いのかな~? こしょこしょ チカ:ひゃ……っ!? ん~~~! ナナミ:あっはは! ガチじゃん! チカ:うっさいバカ……アタシも好きだよ…… ナナミ:なっはっは! いいね! 嬉しいな~! ね、チカ、ちゅーしていい? チカ:……うん ナナミ:ちゅっ(キス音にするか、声に出すかはおまかせします) チカ:ぅ……ぐすっ…… ナナミ:どしたの!? え、なんかした!? ごめん! チカ:嬉しいからに決まってるでしょ……この鈍感女……ばか……すき…… ナナミ:あ、そっかそっか! よしよ~し ヨツバ:あ、あの~、お取り込み中のところすみません、ワタクシ帰らせていただきたいのですが ナナミ:なんで? ヨツバ:なんで? って、どう考えてもジャマなので……というか、本当だったらふたりに気付いてもらわなくちゃいけないことを言っちゃったから、気まずいというか…… ナナミ:あーしたちをくっつけてくれたわけだし、これからも見守ってよ! ヘンかな? チカ:……アタシも別にいいけど ヨツバ:そ、そういう趣味の方々なんですかねェ!? ナナミ:かもねー チカ:なんか、悪くはないっていうか…… ヨツバ:ヴェエエエ ナナミ:てなわけで、チカのバ先でお祝いでもしますか! コーサイ記念! チカ:賛成 ナナミ:あ、もちろんバっちも一緒にね! チカ:よろしく、見守り隊長 ヨツバ:た、隊長ってなに!? えっ、ふたりで引っ張らないでって! アッアッ私は壁! 壁になりたいのにーーーー!! 0:了

0:昼休み ヨツバM:友達のいない陰キャオタクの私には、学校は居心地のいい場所じゃない。 唯一の楽しみはこっそり百合マンガを読むこと。 ヨツバM:私の席は後ろの隅だし、ちゃんとカバーもしてるし、昼休みはいつも通りマンガを読んでやり過ごそう。読書に集中しているように見せれば話しかけられることもない。 ヨツバ:ああ、この見開き! 本当に魅力的だなぁ……ドキドキする…… ヨツバM:突然、ぬっ、とページに影が差し込んだ。なんだろう? 曇ってきたのかな? ナナミ:ヨツバちゃん、何読んでるの? ヨツバ:ッ!? ヨツバM:なんて日だろう。強引に覗き込まれてしまった。しかもギャル。有無を言わせぬ行動と言動。だからギャルって嫌いだ。 ヨツバM: 私の高校生活が終わりを告げた音がした。存在が溶けてしまいそうだ。どうしてこんな仕打ちを受けなければいけないんですか、百合神(ゆりがみ)様。 ナナミ:あ、マンガだ! ……ん? 女の子同士でちゅーしてる? ねぇチカ、チカ、チカ!! 見て見て! 女の子同士でちゅーしてるマンガだよ! チカ:え、ガチ? へぇ、こういう作品もあるんだ……えーっと、タイトルは―― ナナミ:ていっ! ヨツバM:茶髪ギャルが黒髪ギャルに抱きついた。正面から。 ヨツバM:片方はニコニコしながら、もう片方はどこか迷惑そう……だけど……。顔、近くない? 10……いや5センチくらいしか離れてない……え? きっす? きっす? きっすですか? 入籍するの? ナナミ:こういう感じ? こういうの見てて楽しいんだ~? チカ:そうなの? てかくすぐったいんだけど ナナミ:チカ、また胸おっきくなった? いや、言わなくていいわ、わかるから! チカ:その言葉、そのまま返す ヨツバ:なッッッッツ!? ヨツバM:ああ、なんて日だろう……百合神様、ありがとう……高校生活なんてもうどうでもいい、この光景が見られただけで私は幸せです……。 0: ヨツバM:翌日から、ナナミちゃんとチカちゃんと私で、お昼ごはんを食べることになった。といっても、私がお弁当を広げていたらふたりが机をくっつけてきたし、いつの間にかナナミちゃんからあだ名で呼ばれることになってたワケだけど……。 ナナミ:わー、バっちのお弁当、んまそー! ヨツバ:あ、ありがとう……。できれば好きなものを食べたいからね チカ:ん、ってことは自分で作ってるの? ヨツバ:うん。冷蔵庫にあるものでなにが作れるかなって思い浮かべて…… ナナミ:え、すっご! 料理めちゃできるじゃん! ヨツバ:そんなことないよ! ナナミ:ホントー? この卵焼きとかさ、んぐんぐ ヨツバ:あっ チカ:光の速さでつまんだな、コイツ…… ナナミ:おいしい! え、すっごいおいしい! 激ウマ! ヨツバ:……あ、ありがとう……! チカ:ナナミ……ちょっとは距離の詰め方考えなよ。ヨツバちゃん、気をつけて。コイツは調子に乗りやすいから ナナミ:しょーがないじゃん! バっちのお弁当がキラキラしてたから、吸い寄せられちゃった! チカ:カラスか! ってかそういう問題じゃないでしょ。この間もアタシが頼んだケーキ勝手に食べたよね? ナナミ:アレはね~、ケーキがあーしに語りかけてきたんだって! 『お願い、食べて』って! チカ:はぁ……キリがないな。ごめんね、ヨツバちゃん。かわりに謝るよ。アタシのゆで卵でよければ―― ヨツバ:ぷっ……あはは! チカ:よ、ヨツバちゃん? ナナミ:ほらー! バっちも笑ってるし、あーしは美味しい思いをしてるし! イッセキニチョー、みたいな? ヨツバ:ふふ……その、こういうやりとり、あんまり見たことなかったから可笑しくって チカ:そっか。それならいいけど ナナミ:あ、そーだ! じゃあ、チカ、ほっぺ貸して チカ:ん ナナミ:ちゅっ(チカのほっぺにキスする、ここは声に出してください) ヨツバ:ガハッッッツ チカ:なにかと思えば……そういうとこだからね ナナミ:お返しとしてはアリでしょ! ヨツバ:あの……もっと…… ナナミ:ん? ヨツバ:私のお弁当全部食べていいから……私にはもうそれくらいしかできないよ……! ナナミ:それはダメ! 食べないとこのあともたないよ チカ:ヨツバちゃんも似たりよったりだったか…… 0: ヨツバM:私たちはいつの間にかすっかり仲良くなっていた。お昼ごはんを毎日一緒に食べるのはもちろん、下校も一緒だ。 ナナミ:おっつかれー! さくっと帰りますか! チカ:あ、今日アタシはバイトだから。ふたりで帰って ヨツバ:うん、わかった。いってらっしゃい、チカちゃん ナナミ:適度にサボれよ! チカ:言われなくてもそうするよ、ありがと。じゃあね ヨツバM:考えてみればナナミちゃんとふたりっきりで帰るのは初めてかもしれない。私は緊張して何も言えなくなってしまう。 ナナミ:んー……バっち ヨツバ:は、はい ナナミ:このあと時間ある? ヨツバ:う、うん。あるよ ナナミ:ちょーっと相談に乗ってほしいことがあるんだけど! おごるから! ヨツバ:おごりじゃなくていいけど……どんな話? ナナミ:そうだなぁ……ここじゃ言いづらいから、とりあえず行こっ ヨツバ:うーん? 0:喫茶店 チカ:いらっしゃいませ……ってなんだ、アンタたちか ナナミ:げぇっ!? チカのバ先ってここかよ~! チカ:悪い? ナナミ:いや悪くはないけど……まーいっか、ほれほれ接客したまえよ チカ:……2名様ですね、一番奥のボックス席へどうぞ ヨツバ:チカちゃん、おつかれさま。落ち着いてて、素敵な喫茶店だね チカ:でしょ。マスターに伝えておくよ、友達がそう言ってたって ヨツバ:うん、よろしくね ナナミ:ふぁ~~~……まーじかー……まいっか! バっち、席行こ! ヨツバ:あ、うん 0: チカ:さて、ご注文は? ナナミ:あーしはアイスティーかな チカ:ガムシロップ、ミルク、レモンから選べるけど ナナミ:ガムシロとミルクをくださいな! チカ:かしこまりました。ヨツバちゃんは? ヨツバ:ブレンドコーヒーをアイスで。それと……この、本日のケーキってどんなもの? チカ:木いちごと桃のタルト ヨツバ:じゃあそれもお願いします ナナミ:めっちゃおいしそう! あーしもちょーだい チカ:はい、かしこまりました。少々お待ちください 0:(チカ、厨房の方へ去っていく) ナナミ:……チカってあんな顔できるんだぁ……意外だなぁ……ふへへ…… ヨツバ:わ、私はナナミちゃんがそんなにニヤニヤしてるほうが意外だよ、どうしたの? ナナミ:あー、まぁね? このあとの話につながるんだけどさ ヨツバ:どういうこと? ナナミ:あーしさ、チカのこと好きなんだよね ヨツバ:うん ナナミ:恋愛的な意味で、なんだ ヨツバ:へっ? ナナミ:バっちはそういうマンガよく読んでるみたいだし? 話とか、恋愛のコツとか……聞けたらなって ヨツバ:いやいやいやいや無理無理無理無理!! ナナミ:え、なんで? ヨツバ:わ、私はあくまで百合、えっと、女の子同士の恋愛を見る立場であって、恋愛とかまったくしたことないし、いや、恋愛自体には憧れてはいるけど自分が割って入るのは違うから! 私は壁だから! だからつまりえっとお手本を示すとかは全然できないよ!? ナナミ:わ、オタク特有の早口だ! 初めて聞いたかも! ……ってそれはいいとして、一回さ、水飲も? ヨツバ:う、うん……ごくっごくっ……ぷはぁっ ナナミ:んー……ちょっと急だったかな? バっちだったらフツーに聞いてもらえるかなって思ったんだけど ヨツバ:ああ、そういうことだったんだね……私も、テンパっちゃってごめんね ナナミ:ううん、いいよ。一応あーしもさ、恋愛に関係ありそうなこととか調べてはいるんだけど、男子と女子の話が基本なんだ ヨツバ:まぁ、そうだよね…… ナナミ:そういうわけで、話しても大丈夫? ヨツバ:むしろ私でいいの? さっきも言ったけど経験なくてよければ…… ナナミ:それは……実を言うと、あーしも一緒 ヨツバ:え゛!? チカ:お待たせいたしました……ヨツバちゃん、どうしたのその顔。んで、なんでナナミはうつむいてるの? ヨツバ:はっ! いや大丈夫、全然、全ッ然なんでもないから! チカ:そっか。なんでもある、と ヨツバ:う…… チカ:ま、深くは聞かないよ。ところで、ご注文の品は以上でお揃いですか? ヨツバ:は、はい チカ:ん。ではごゆっくりどうぞ ナナミ:……チカ チカ:ん? ナナミ:そのエプロン、すっごく似合ってるよ チカ:ふふ、ありがと。初めて言われた。けっこう嬉しいもんだね ナナミ:っ…… チカ:もっと褒めてくれたらスマイルとやらをサービスしてあげてもいいよ ナナミ:敬語使われてキュンとした! チカ:アンタが接客しろって言ったし ナナミ:学校だと髪おろしてるのに今はハーフアップなのガチありがとう! チカ:まあ、このほうが動きやすいからね ナナミ:遊ぶときより大人っぽい格好なのもいい! かわいい! かわいい!! かわいいよ!!! チカ:なッ……! ナナミ:お? もしかして照れてる? ご自慢のスマイルはどしたー? チカ:バカ!(ナナミにチョップする) ナナミ:いでっ! なにすんだよー! ……へへっ チカ:なんだコイツ……あ、ごめんねヨツバちゃん ヨツバ:う、ううん! ご、ごちそうさま! チカ:まだ食べてないでしょ……? まあ、それじゃ、ごゆっくり 0:(チカ退場) ヨツバ:はぁ……なんて百合的な空間! 言葉が出なかった……! それにしても、な、ナナミちゃん、大丈夫……? 突っ伏しちゃってるけど ナナミ:……っはーーー!! ね、見た! 見たよね!? なにあのかんわいい生き物!? やばいって! てかなにあれ!? 照れ顔最高かよ!! あーーーーーもうムリムリムリムリ!! 死ぬ! 死んでもいい! いや生きる! もっと見たいから生きる!! ヨツバ:わ、オタク特有の早口だね。とりあえずお水飲もう? ナナミ:はっ……ごくごく……ぷはぁっ ヨツバ:落ち着いた? ナナミ:うん! よーし、勇気出して褒めたご褒美として、ケーキいただきます! もぐもぐ……ん! おいしい! ヨツバ:私もいただきます。ん……おいしいね! 桃の果汁がすごい……! ナナミ:わかる! なんこれすご! 桃にぶん殴られたみたい! レシピ聞いたら教えてくれるかな? ヨツバ:ナナミちゃん、お菓子作りするの? ナナミ:うん! 甘いもの好きだからねー。ここ前から気になってたとこだけど、来て正解だったわ~……チカが居るのはさすがに予想できなかったけど…… ヨツバ:でも、その、色々楽しめたようでよかったね ナナミ:ガチそれ! ってかさ、どうすればいいんだろうね、これから。アピールしてるつもりだけど伝わってない気がするし ヨツバ:妙に距離が近いな、とは思ってたけどもしかして…… ナナミ:ん、そういうこと。脈ナシなのかな ヨツバ:うーん……確かめてみたことは? ナナミ:ないかも? というか、友達からその先に進めないっていうか…… ヨツバ:きっかけがない、のかな? 多分だけど ナナミ:そうかも! あーしはアピールするしかできないんすよ~ ヨツバ:えっと、じゃあ、私は……見守っていこうかな ナナミ:あー、それいいね! なんかあったら教えてもらう感じで ヨツバ:それなら任せて! 得意だから! ナナミ:オッケー! いや~、それにしても、聞いてくれてありがとね。かなりスッキリした! ヨツバ:ううん、私こそ……まさかこんな身近で百合を見られるとは思ってもみなかったから、その、ありがとう、話してくれて ナナミ:いやいやこっちこそありがと! ってこれじゃ無限感謝編に入っちゃうな~、一旦ストップ! ヨツバ:そうだね ナナミ:つまりあれだ、バっちがあーしの恋をバックアップしてくれるから……備えあれば嬉しいな、ってヤツ? ヨツバ:憂いなし、だよ……ふふっ ナナミ:どっちでも通じるって! じゃあ、よろしくね! ヨツバ:うん! 0:翌日、放課後 ナナミ:ふたりとも、おつかれさまー。さーて、やりますか! チカ:なにを? ナナミ:バっちへのお礼 ヨツバ:ん? お礼? ナナミ:昨日相談乗ってもらったからねー チカ:ふーん。てかアタシは強制参加なのか ナナミ:そりゃそうでしょ! あーしら……その……親友だし? チカ:……そうだね ナナミ:もしかしてヤダ? チカ:協力してあげなくもない ナナミ:じゃあいいじゃーん! ほい、おいで ヨツバ:……おっとぉ? チカ:はいはい、ぎゅー ヨツバ:だぁぁぁぁぁ!?!? ナナミ:チカ~、好きだよ。むぎゅ~。ぱふぱふ! チカ:……胸押し付けんなって ナナミ:あ、嫌だった? ごめんごめん チカ:嫌というか、あれ…… ナナミ:ん? ヨツバ:ぜは……ぜは……いけませんッ……お客様ッッッ!! ナナミ:あっちゃー、刺激が強すぎたかぁ チカ:鼻血出してないだけマシじゃない? ナナミ:バっち、バっち~ ヨツバ:ハッ……ここはどこ? ナナミ:えーっと、ここは西暦743年、さっき墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいのほう)が作られたんだって チカ:出た、声に出して読むと気持ちいい日本語第1位の『墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいのほう)』だ ヨツバ:ねえそれどこ調べなの!? 1位は坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)じゃないの!? チカ:てかこれで戻れるんだ……こだわりポイント謎すぎでしょ ナナミ:あっはは! バっち、やっぱりおもろ! イジりがいがあるな~ ヨツバ:うぅ…… チカ:相談、か……ヨツバちゃん、アタシもいいかな ヨツバ:え? うん、いいけど ナナミ:なんだなんだ~? 悩める乙女ってか? チカ:まあね。あ、ナナミはお呼びじゃないから、今日はひとりで帰って ナナミ:なんでよ!? チカ:うるさいな……アタシ、職員室に用あるから。ヨツバちゃん、先に喫茶店行ってて ヨツバ:うん、わかった。えっと、ナナミちゃん……ごめんね? ナナミ:バっちが謝ることないって! チカ、明日なんかおごれよ~! チカ:しょうがないな……いいよ。じゃあナナミはまた明日ね ナナミ:あいよー! 0:喫茶店 チカ:ごめんね、急に呼び出しちゃって ヨツバ:ううん大丈夫。話って? チカ:あー、その、ナナミについてなんだけど ヨツバ:うん チカ:アタシさ、アイツと付き合いたいんだよね ヨツバ:う、うん? チカ:だから、相談に乗ってほしい ヨツバ:なるほど…… チカ:あれ、けっこう反応が薄いな。飛びつくか驚くかと思ったんだけど。もしかして慣れてる? ヨツバ:いや慣れてはない、けど……びっくりもしてるし……なんというか、意外だなぁって チカ:ま、そんなもんなのかな ヨツバ:そう、かな……というより私でいいの? 話は聞くけど…… チカ:少なくとも同性愛に抵抗はないかなって ヨツバ:似た者同士だ…… チカ:ん? ヨツバ:な、なんでもないよ? それで、相談っていうのは? チカ:いつ告白しようか迷っててね ヨツバ:ふむふむ チカ:けどさ、フられるかもって思うと……その、怖くて。それに…… ヨツバ:それに? チカ:ヨツバちゃんも見てると思うけど、けっこうなスキンシップされてるのも正直キツくて。一応嬉しいんだけど……なんていうかな ヨツバ:うーん……たとえ冗談だとしても、チカちゃんとしてはナナミちゃんのことが本当に好きだから、困っちゃったりとか、申し訳ない気持ちがある……とか? チカ:あ、それ。それだ。もう友達としての範囲を超えちゃってるんだよね、アタシの中では ヨツバ:なんとなくだけど、チカちゃんとしては『ナナミちゃんとの関係をハッキリさせたい』って感じかな? チカ:そう……それにしても的を得てるね、ヨツバちゃん ヨツバ:マンガで見たことがあるんだ チカ:あー。さすが ヨツバ好きで読んでたけど、役に立ってよかった チカ:ヨツバちゃんのおかげで無駄な経験はないって分かったよ。ありがとう ヨツバ:こちらこそ、そう言ってもらえて嬉しいよ! ありがとうね。それで、チカちゃんは……告白、したいんだよね チカ:うん……だけど、タイミングがわからない、かな…… ヨツバ:そっか。じゃあ、そうだなぁ。呼び出すのと、流れで告白するのだったら、どっちがいい? チカ:流れかな、呼び出すのはすごく緊張する、と思う ヨツバ:うん チカ:あと、できれば早くナナミに聞きたい ヨツバ:そうなの? チカ:アタシ、ナナミのこと好きすぎて……接するのもひと苦労なんだ。こんなこと言ったら変だと思われるかもしれないけどさ、泣きそうになるんだよね。ナナミに近づかれると胸が苦しくて、締め付けられて……とにかく、なんだろ……なんて言ったらいいかな……ごめん、うまく言えないや…… ヨツバ:大丈夫だよ。うまく言おうとしなくても……真剣なんだってことはすごくわかるよ チカ:うん……そのさ、こんなに苦しいの、初めてなんだよね。ナナミ以外にも好きになったヤツは居たことあるけど、ここまでキツくなくて、ああもう……何言ってんだろアタシ ヨツバ:そういうこともあるよ……あ、そういえばまだなにも注文してなかったね。なにか飲んだら落ち着くかも? チカ:そうしよっか……。ああ、紅茶飲みたいな……ミルクと砂糖入れて ヨツバ:うん、わかった。すみませーん、注文お願いします! 0: チカ:ふぅ……ヨツバちゃん、すごいな。ほんとに落ち着いた ヨツバ:よかった~。あったかいものを飲めば、心もぽかぽかするからね チカ:そうだね。ねえ、ヨツバちゃん ヨツバ:なに? チカ:ヨツバちゃんに話したら、覚悟が決まったよ。明日、告る ヨツバ:……うん チカ:それでさ、アタシ……ナナミとふたりっきりだとしたら泣く自信しかないんだよね。だから付き添っててほしい ヨツバ:ん? 付き添ってて……? チカ:付き添いは付き添いだけど ヨツバ:…… チカ:だめかな ヨツバ:……だめ、では、ないけど……いいのかなって チカ:むしろ居てほしい。どんな結果になっても、見ててほしい ヨツバ:わ、わかった。何もできないと思うけど、それでもいいなら チカ:ありがとう。助かるよ 0: ヨツバM:そして翌日の放課後。私たちは教室でなんでもない話をしていた。 ふと、会話が途切れた。すると――。 チカ:あのさ、ナナミ ナナミ:んー? チカ:……好きだよ ナナミ:おー、どしたどした~? あーしも好きだよ? チカ:違う ナナミ:え、なにが? チカ:付き合って ナナミ:どこに? チカ:…… ナナミ:おーい、チカー? ヨツバ:あ、あっ…… チカ:……これ以上どうしろって言うんだよ……! ナナミ:んんん? ヨツバ:……あーもう!! あのね、ふたりとも私にばっかり話してて、全然自分たちのこと見てないんだから! ナナミ:え、どういうこと? チカ:まさか……! ヨツバ:チカちゃんはわかったみたいだね、そういうこと。ふたりの話は聞かせてもらったよ……ううん、聞かせてもらっていたの。つまりあなたたちは両方とも片思いしてるんだよ! ナナミ:マジで!? チカ、ほんとなの? チカ:そ、そうだけど ナナミ:なんだぁ、ってことは…… 0:(ナナミ、チカの耳元に顔を近づける) ナナミ:(ささやくように)好きだよ、チカ チカ:……ッ!! ナナミ:ん~? 我が愛しのチカちゃんは耳が弱いのかな~? こしょこしょ チカ:ひゃ……っ!? ん~~~! ナナミ:あっはは! ガチじゃん! チカ:うっさいバカ……アタシも好きだよ…… ナナミ:なっはっは! いいね! 嬉しいな~! ね、チカ、ちゅーしていい? チカ:……うん ナナミ:ちゅっ(キス音にするか、声に出すかはおまかせします) チカ:ぅ……ぐすっ…… ナナミ:どしたの!? え、なんかした!? ごめん! チカ:嬉しいからに決まってるでしょ……この鈍感女……ばか……すき…… ナナミ:あ、そっかそっか! よしよ~し ヨツバ:あ、あの~、お取り込み中のところすみません、ワタクシ帰らせていただきたいのですが ナナミ:なんで? ヨツバ:なんで? って、どう考えてもジャマなので……というか、本当だったらふたりに気付いてもらわなくちゃいけないことを言っちゃったから、気まずいというか…… ナナミ:あーしたちをくっつけてくれたわけだし、これからも見守ってよ! ヘンかな? チカ:……アタシも別にいいけど ヨツバ:そ、そういう趣味の方々なんですかねェ!? ナナミ:かもねー チカ:なんか、悪くはないっていうか…… ヨツバ:ヴェエエエ ナナミ:てなわけで、チカのバ先でお祝いでもしますか! コーサイ記念! チカ:賛成 ナナミ:あ、もちろんバっちも一緒にね! チカ:よろしく、見守り隊長 ヨツバ:た、隊長ってなに!? えっ、ふたりで引っ張らないでって! アッアッ私は壁! 壁になりたいのにーーーー!! 0:了