台本概要

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タイトル ジョイエリ デラ トライセイ【ファイル:アメジスト】
作者名 不尽子(つきぬこ)  (@tsukinuko)
ジャンル コメディ
演者人数 3人用台本(男1、女1、不問1) ※兼役あり
時間 20 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 イタリアの異能者で構成されたトライセイ探偵団の新入ネーロと、その指導役ヴィオラが珍事件を解決…!?
ご使用の場合はご一報いただけると大変喜びます(強制じゃないです)

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ネーロ 60 不幸体質な新入の男装女子。宝石マニアで心の声がうるさい。
ヴィオラ 64 ネーロの指導役を担う日系青年。優しいが根暗で自分の能力をネーロに明かせないでいる。
ナレーション 不問 6 役名の通り。ターゲットと兼役。
ターゲット 不問 14 役名の通り。ナレーションと兼役。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ヴィオラ:港の埠頭(ふとう)にある廃屋、と…此処がターゲットの隠れ家か。 ネーロ:相手は単独って聞きましたけど、本当に二人だけで大丈夫なんでしょうか?それも僕みたいな新入りが…。 ヴィオラ:大丈夫だよネーロ、ヴェルデの予知が絶対なのは知ってるだろ?俺達は依頼をこなすだけだ。 ネーロ::…分かりました。頑張りますね、ヴィオラさん! 0:  ナレーション:このネーロと呼ばれた男装女子は、普段はジーノ・マーティンと名乗っている。 ナレーション:ある日このヴィオラという青年に連れられた「異能者」が集まるトライセイ探偵事務所で、住み込みで働かせて貰っている新人である。 ナレーション:その際に「ネーロ」というコードネームを貰い、普段は受付事務をしているが、たまにこうしてヴィオラを指導役として依頼を遂行している。 ナレーション:だがネーロは、何かしらの異能を発揮出来た事は無い。もし能力があるとすれば…。 ネーロ:うひゃっ! ヴィオラ:!?どうした!? ネーロ:…いえ、カモメにフンを落とされただけです…。 ヴィオラ:え、え?一旦帰る?シャワー浴びて出直す? ネーロ:そんな理由で帰ったら、ヴェルデさんに怒られますよ…。 ヴィオラ:…そ、それもそうか…。 ナレーション:彼女にも異能があるとするならば、それはこの不幸体質の事だろう。 ナレーション:実際にそれで何度も住む場所を失くしている事もあり、今回の依頼も足を引っ張るように思えてならないようだ。 ナレーション:しかし、ネーロにも何かしらの異能は備わっているはずである。異能同士にしか見えないある現象が、彼女にも見えているのだから。 ヴィオラ:…ん、ターゲットが出て来たぞ。誰かと電話するのか…? ネーロ:(心の声)あ、ダンさんの目が光った!綺麗だなぁ〜、本当アメジストみたい! ヴィオラ:……。 ネーロ:(心の声)好きなんだよなぁ〜アメジスト!まず色が綺麗だし、「誠実」とか「心の平和」とか、石言葉もダンさんにピッタリ当て嵌まる! ネーロ:マイナスなエネルギーをプラスに変えてくれるパワーストーンだから、ダンさんと居ると本当に何でも上手くいきそうな―― ヴィオラ:(遮るように咳払い)…ネーロ、集中してくれ。 ネーロ:あ、すみません!(ここから心の声)ヤバい、鼻息荒かったかな?大事な依頼だってのに、失敗したらメイさんに殺されちゃうよ〜…。 ナレーション:このように、異能者はその力を使う際に、瞳が宝石の如く輝くのだ。 ナレーション:そしてそれは同じ異能者にしか認識出来ないものであり、今みたいにヴィオラの瞳をアメジストと称したネーロも異能者には違いないのだ。 ナレーション:だが彼女は生まれてこの方、自分に異能があると思えるような出来事は一切起きていない。 ナレーション:その為彼女自身も、自分がどんな異能を持っているのかなど知るよしも無いのだ。 ヴィオラ:(溜息)…ん、電話が繋がったようだな。 ターゲット:クッキーとクラッカーの準備が整いました。明日の納品が可能ですので、送りました位置情報に従いお越し下さい。お待ちしております。 ヴィオラ:なるほど…クッキーは麻薬、クラッカーはピストルの隠語だな。 ネーロ:じゃあ、やっぱり密売…?でも、あんな遠い所から電話の内容が聞こえるなんて凄いですね! ヴィオラ:まぁ、その…耳は良いんだ。 ネーロ:流石ヴィオラさん! ヴィオラ:静かに、こっちへ来る! ターゲット:(喫煙中)フゥ〜…ふふ、今日のタバコは一際美味い。 0:二人の横をターゲットがタバコをポイ捨てしながら通り過ぎる。 ヴィオラ:…何とか見つからずに済んだな。さっきあいつがポイ捨てしたタバコ、当たってないか? ネーロ:はい、ちゃんと避けたのでうわっ!? ヴィオラ:っ!?い、犬!? ネーロ:痛い痛い噛まないで!タバコ投げたの僕じゃないってばぁ〜!! ヴィオラ:お、落ち着けネーロ! 0:突然銃声が鳴り、その音に驚いた犬が逃げていく。 ヴィオラ:! ネーロ:あ…。 ターゲット:動くな。此処は一般人は近寄れないようにしているはずだ。お前達は何者だ? ネーロ:…す、すみませんヴィオラさん…。 ヴィオラ:…大丈夫だ。合図をしたらすぐに逃げるぞ。 ネーロ:は、はい…。 ターゲット:質問に答えろ!さもないと…。 0:突然ターゲットのスマホが大音量で鳴り響く。 ターゲット:っ!? ヴィオラ:今だ! ネーロ:っ…!! ターゲット:な、待てっ! ヴィオラ:っ!(異能を発動する) ターゲット:ぐっ…!?何だ、この声は…頭が割れそうだっ…!! 0:埠頭から離れた場所。 ヴィオラ:(息を切らせて)…何とか、撒けたな…。 ネーロ:(息を切らせて)…さっきの電話、ターゲットの客からでしょうか…? ヴィオラ:いや、多分ビアンコが助けてくれたんだ。電波さえ届けばあいつのテリトリーだからな。 ネーロ:…ごめんなさい。 ヴィオラ:え? ネーロ:僕、結局ヴィオラさんの足を引っ張りました。今日こそヴィオラさんの役に立って、恩返しがしたかったのに…。 ヴィオラ:お、恩返し?俺は何も…。 ネーロ:初めてヴィオラさんに会った時、助けてくれたじゃないですか!あの時のお礼だって出来てないのに…前の依頼の時だって…! ヴィオラ:…あれは仕事だ。ネーロが気にする事じゃない。 ネーロ:…僕、悔しいです…。皆さんの役に立ちたいのに、こんな迷惑のかけ方ばかりでっ…。 ヴィオラ:……。 ナレーション:ネーロは隕石事故で住む場所と職場までも失くし、途方に暮れていた矢先にある悪徳業者に詐欺にかけられそうになっていた。 ナレーション:それをヴィオラが、否、正確には彼とその仲間達が助け、ネーロを探偵事務所に招き入れる事になったのだ。 ヴィオラ:…ジーノ。 ネーロ:っ!は、はい…。 ヴィオラ:これが終わったら、宝石店でも覗きに行こうか。 ネーロ:え…? ヴィオラ:好きなんだろ?買ってやるのは流石に無理かもだけど…、また色んな石の事を教えてくれよ。 ネーロ:……。 ヴィオラ:…よし、リラックス出来たな。 ネーロ:え? ヴィオラ:肩の力を入れすぎなんだよ。意気込むのは良い事だけど、かえってドツボにハマる事もあるから。 ネーロ:あ…ありがとう、ございます…。 ヴィオラ:それにほら、さっきカモメにフンを落とされたんだ。運がついて、次は良い事があるかも知れないぞ? ネーロ:…え?フンがついたから、運…?どういう意味ですか…? ヴィオラ:え、あ…。…ごめん、俺の故郷にそういう話があって…。 ネーロ:あー、ヴィオラさんってジャッポーネの人でしたっけ!すいません僕の方こそ、ちゃんと勉強してなくて…! ヴィオラ:いや、いいよ。とりあえず、気を取り直してターゲットの監視を続けよう。密売の証拠が掴めるまであともう少しだ! ネーロ:はいっ! 0:再び埠頭に戻る。 ネーロ:…良かった、誰にも見つからずに戻れて…。 ヴィオラ:…妙だな。静かすぎる…。 ネーロ:密売の準備に行ったんじゃないですか?とにかく今の内に、ターゲットのアジトに侵入しましょう!(アジトへ駆け出す) ヴィオラ:あっ…おい、待て! 0:ネーロがアジトに駆け寄ると、足元にサブマシンガンが放たれる。 ネーロ:わ!?わ、わわっ!! ヴィオラ:ネーロ! ターゲット:動くな。 ネーロ:っ…! ターゲット:随分と肝が据わってるじゃないか。このまま引き下がって海に落ちてくれるかと思ってたが…。 ヴィオラ:おい、そいつから離れろ! ターゲット:動くなと言っただろ!こいつを魚の餌にされたいか! ヴィオラ:くっ…! ネーロ:ご、ごめんなさいヴィオラさん…。僕、またっ…。 ヴィオラ:……。 ターゲット:さて、お前は人質として、このまま私と来てもらおうか。 ネーロ:…え、あの? ターゲット:ほう、思ったより可愛い顔をしてるじゃないか。これは高く売れそうだなぁ…? ネーロ:…あの、あんまり僕に近付かない方が…。 ターゲット:ははは、何だ、怯えているのか? ネーロ:いえ、そうじゃなくて…さっき貴方がサブマシンガンなんて撃ったから、足場が崩れかけてっ…!? 0:言い終える前に、ネーロとターゲットの立っていた足場が崩れる。 ターゲット:はぁっ!? ネーロ:ほらぁっ!! 0:ネーロとターゲットが海に落ちる。 ヴィオラ:っ!?ジュリエッタ!!(慌てて駆け寄る) 0:海面からゴポゴポと気泡が立つ。 ヴィオラ:待ってろ、今助けてやる! ネーロ:ぷはぁっ!! ヴィオラ:! ネーロ:はぁービックリしたぁ…。 ヴィオラ:ネーロ、大丈夫か!? ネーロ:はい、僕は大丈夫です!ただ…。 ヴィオラ:? ネーロ:あのターゲット…どうやら金槌みたいで、上がれなくなっちゃったみたいで…。 ヴィオラ:…え、こんな港にアジト構えてるクセに? ネーロ:…船の方が、密売しやすいんじゃないですか?多分…。 ヴィオラ:…とりあえず、このまま溺れ死なれても寝覚め悪いし、引き上げてやるか。 ネーロ:あ、僕行きますよ。ヴィオラさんが濡れる必要無いですし。 ヴィオラ:そうか?じゃあ頼む。 ネーロ:はい!…あ、それと。 ヴィオラ:ん? ネーロ:僕、ジュリエッタじゃなくてジーノです。 ヴィオラ:あ…ご、ごめん…。 ネーロ:(海に潜る) 0:  ナレーション:こうして二人はターゲットを引き上げた後、アジトに潜入して無事密売の証拠を手に入れる事が出来た。 ナレーション:だが、二人の不安定な関係はまだまだ続く…。 0:  ヴィオラ:…ダメだな、こいつは暫く目が覚めそうにない。 ネーロ:(心の声)また光ってる!本当いつ見ても綺麗だよなぁ〜ダンさんの目! ヴィオラ:……。 ネーロ:(心の声)ダンさんってクールでカッコいいし、かと思えばすっごく優しくて頼り甲斐もあるし、顔もイケメンなのに何でモテないんだろうなぁ〜。 ヴィオラ:っ〜〜! ネーロ:(心の声)さっき名前で呼ばれた時もついドキッてしちゃったし、これじゃ男に化けてる意味が―― ヴィオラ:(遮る)聞こえてんだよ!全部!! ネーロ:……え? ヴィオラ:あ、しまっ……。 ネーロ:…ひょっとして、今の全部声に出ちゃってました!? ヴィオラ:え…。 ネーロ:あ、ああああ!忘れて下さい!お願いですから、聞かなかった事にして下さい!本当僕、次から気を付けますからあぁ!! ヴィオラ:…いや、その…うん。気を付けて…。 0:  ヴィオラ:(心の声)はぁ〜良かった、バレてなかったぁ…。いや良くねーよ!ジーノは仲間なんだぞ!?言わないとマズいだろうが! ヴィオラ:(心の声)でも今更こんな話して、「え、今までずっと聞いてたの?気持ち悪…」とか思われたりでもしたら…あぁ〜畜生!俺はどうりゃいいんだよぉ〜!! 0:突然、ヴィオラのスマホにメールが届く。 ヴィオラ:ん、何だ?ビアンコから…? ネーロ:あ、証拠のデータ化の話ですか? ヴィオラ:……。 ネーロ:…ヴィオラさん? ヴィオラ:うるっせぇんだよ引き篭もり野郎!!!(スマホを叩き落とす) ネーロ:うわぁっ!?あー画面が割れて…「ヘタレ」? ヴィオラ:あ、いや何でも無い!ごめん、急に大声出して…。 ネーロ:は、はぁ…。 ヴィオラ:(クソデカ溜息) ネーロ:…ヴィ、ヴィオラさん…? 0:  ナレーション:彼はコードネーム「ヴィオラ」、本名はダン・サクマ。 ナレーション:彼の能力名は「以心伝心」、つまり相手の心を読んだり自分の心の声を相手に伝えたり出来る能力だ。 ナレーション:幼少の頃からその異能で苦労してきたダンには、自分を羨望(せんぼう)の眼差しで見つめる彼女に対して、己の能力を伝える勇気は持ち合わせていなかったのである。 ネーロ:(心の声)や、やっぱり怒ってるよね?僕があんなヘマしたからかな…。ヴィオラさんに余計な気まで遣わせて…。 ヴィオラ:(心の声)無理無理無理言えない言えない言えない。あんなキラキラした目で見つめられて、こんなキモい能力だなんて知られたら幻滅される…! 0:  ネーロ:(ヴィオラと同時に)もし嫌われたら…どうしよう…! ヴィオラ:(ネーロと同時に) もし嫌われたら…どうしよう…!

ヴィオラ:港の埠頭(ふとう)にある廃屋、と…此処がターゲットの隠れ家か。 ネーロ:相手は単独って聞きましたけど、本当に二人だけで大丈夫なんでしょうか?それも僕みたいな新入りが…。 ヴィオラ:大丈夫だよネーロ、ヴェルデの予知が絶対なのは知ってるだろ?俺達は依頼をこなすだけだ。 ネーロ::…分かりました。頑張りますね、ヴィオラさん! 0:  ナレーション:このネーロと呼ばれた男装女子は、普段はジーノ・マーティンと名乗っている。 ナレーション:ある日このヴィオラという青年に連れられた「異能者」が集まるトライセイ探偵事務所で、住み込みで働かせて貰っている新人である。 ナレーション:その際に「ネーロ」というコードネームを貰い、普段は受付事務をしているが、たまにこうしてヴィオラを指導役として依頼を遂行している。 ナレーション:だがネーロは、何かしらの異能を発揮出来た事は無い。もし能力があるとすれば…。 ネーロ:うひゃっ! ヴィオラ:!?どうした!? ネーロ:…いえ、カモメにフンを落とされただけです…。 ヴィオラ:え、え?一旦帰る?シャワー浴びて出直す? ネーロ:そんな理由で帰ったら、ヴェルデさんに怒られますよ…。 ヴィオラ:…そ、それもそうか…。 ナレーション:彼女にも異能があるとするならば、それはこの不幸体質の事だろう。 ナレーション:実際にそれで何度も住む場所を失くしている事もあり、今回の依頼も足を引っ張るように思えてならないようだ。 ナレーション:しかし、ネーロにも何かしらの異能は備わっているはずである。異能同士にしか見えないある現象が、彼女にも見えているのだから。 ヴィオラ:…ん、ターゲットが出て来たぞ。誰かと電話するのか…? ネーロ:(心の声)あ、ダンさんの目が光った!綺麗だなぁ〜、本当アメジストみたい! ヴィオラ:……。 ネーロ:(心の声)好きなんだよなぁ〜アメジスト!まず色が綺麗だし、「誠実」とか「心の平和」とか、石言葉もダンさんにピッタリ当て嵌まる! ネーロ:マイナスなエネルギーをプラスに変えてくれるパワーストーンだから、ダンさんと居ると本当に何でも上手くいきそうな―― ヴィオラ:(遮るように咳払い)…ネーロ、集中してくれ。 ネーロ:あ、すみません!(ここから心の声)ヤバい、鼻息荒かったかな?大事な依頼だってのに、失敗したらメイさんに殺されちゃうよ〜…。 ナレーション:このように、異能者はその力を使う際に、瞳が宝石の如く輝くのだ。 ナレーション:そしてそれは同じ異能者にしか認識出来ないものであり、今みたいにヴィオラの瞳をアメジストと称したネーロも異能者には違いないのだ。 ナレーション:だが彼女は生まれてこの方、自分に異能があると思えるような出来事は一切起きていない。 ナレーション:その為彼女自身も、自分がどんな異能を持っているのかなど知るよしも無いのだ。 ヴィオラ:(溜息)…ん、電話が繋がったようだな。 ターゲット:クッキーとクラッカーの準備が整いました。明日の納品が可能ですので、送りました位置情報に従いお越し下さい。お待ちしております。 ヴィオラ:なるほど…クッキーは麻薬、クラッカーはピストルの隠語だな。 ネーロ:じゃあ、やっぱり密売…?でも、あんな遠い所から電話の内容が聞こえるなんて凄いですね! ヴィオラ:まぁ、その…耳は良いんだ。 ネーロ:流石ヴィオラさん! ヴィオラ:静かに、こっちへ来る! ターゲット:(喫煙中)フゥ〜…ふふ、今日のタバコは一際美味い。 0:二人の横をターゲットがタバコをポイ捨てしながら通り過ぎる。 ヴィオラ:…何とか見つからずに済んだな。さっきあいつがポイ捨てしたタバコ、当たってないか? ネーロ:はい、ちゃんと避けたのでうわっ!? ヴィオラ:っ!?い、犬!? ネーロ:痛い痛い噛まないで!タバコ投げたの僕じゃないってばぁ〜!! ヴィオラ:お、落ち着けネーロ! 0:突然銃声が鳴り、その音に驚いた犬が逃げていく。 ヴィオラ:! ネーロ:あ…。 ターゲット:動くな。此処は一般人は近寄れないようにしているはずだ。お前達は何者だ? ネーロ:…す、すみませんヴィオラさん…。 ヴィオラ:…大丈夫だ。合図をしたらすぐに逃げるぞ。 ネーロ:は、はい…。 ターゲット:質問に答えろ!さもないと…。 0:突然ターゲットのスマホが大音量で鳴り響く。 ターゲット:っ!? ヴィオラ:今だ! ネーロ:っ…!! ターゲット:な、待てっ! ヴィオラ:っ!(異能を発動する) ターゲット:ぐっ…!?何だ、この声は…頭が割れそうだっ…!! 0:埠頭から離れた場所。 ヴィオラ:(息を切らせて)…何とか、撒けたな…。 ネーロ:(息を切らせて)…さっきの電話、ターゲットの客からでしょうか…? ヴィオラ:いや、多分ビアンコが助けてくれたんだ。電波さえ届けばあいつのテリトリーだからな。 ネーロ:…ごめんなさい。 ヴィオラ:え? ネーロ:僕、結局ヴィオラさんの足を引っ張りました。今日こそヴィオラさんの役に立って、恩返しがしたかったのに…。 ヴィオラ:お、恩返し?俺は何も…。 ネーロ:初めてヴィオラさんに会った時、助けてくれたじゃないですか!あの時のお礼だって出来てないのに…前の依頼の時だって…! ヴィオラ:…あれは仕事だ。ネーロが気にする事じゃない。 ネーロ:…僕、悔しいです…。皆さんの役に立ちたいのに、こんな迷惑のかけ方ばかりでっ…。 ヴィオラ:……。 ナレーション:ネーロは隕石事故で住む場所と職場までも失くし、途方に暮れていた矢先にある悪徳業者に詐欺にかけられそうになっていた。 ナレーション:それをヴィオラが、否、正確には彼とその仲間達が助け、ネーロを探偵事務所に招き入れる事になったのだ。 ヴィオラ:…ジーノ。 ネーロ:っ!は、はい…。 ヴィオラ:これが終わったら、宝石店でも覗きに行こうか。 ネーロ:え…? ヴィオラ:好きなんだろ?買ってやるのは流石に無理かもだけど…、また色んな石の事を教えてくれよ。 ネーロ:……。 ヴィオラ:…よし、リラックス出来たな。 ネーロ:え? ヴィオラ:肩の力を入れすぎなんだよ。意気込むのは良い事だけど、かえってドツボにハマる事もあるから。 ネーロ:あ…ありがとう、ございます…。 ヴィオラ:それにほら、さっきカモメにフンを落とされたんだ。運がついて、次は良い事があるかも知れないぞ? ネーロ:…え?フンがついたから、運…?どういう意味ですか…? ヴィオラ:え、あ…。…ごめん、俺の故郷にそういう話があって…。 ネーロ:あー、ヴィオラさんってジャッポーネの人でしたっけ!すいません僕の方こそ、ちゃんと勉強してなくて…! ヴィオラ:いや、いいよ。とりあえず、気を取り直してターゲットの監視を続けよう。密売の証拠が掴めるまであともう少しだ! ネーロ:はいっ! 0:再び埠頭に戻る。 ネーロ:…良かった、誰にも見つからずに戻れて…。 ヴィオラ:…妙だな。静かすぎる…。 ネーロ:密売の準備に行ったんじゃないですか?とにかく今の内に、ターゲットのアジトに侵入しましょう!(アジトへ駆け出す) ヴィオラ:あっ…おい、待て! 0:ネーロがアジトに駆け寄ると、足元にサブマシンガンが放たれる。 ネーロ:わ!?わ、わわっ!! ヴィオラ:ネーロ! ターゲット:動くな。 ネーロ:っ…! ターゲット:随分と肝が据わってるじゃないか。このまま引き下がって海に落ちてくれるかと思ってたが…。 ヴィオラ:おい、そいつから離れろ! ターゲット:動くなと言っただろ!こいつを魚の餌にされたいか! ヴィオラ:くっ…! ネーロ:ご、ごめんなさいヴィオラさん…。僕、またっ…。 ヴィオラ:……。 ターゲット:さて、お前は人質として、このまま私と来てもらおうか。 ネーロ:…え、あの? ターゲット:ほう、思ったより可愛い顔をしてるじゃないか。これは高く売れそうだなぁ…? ネーロ:…あの、あんまり僕に近付かない方が…。 ターゲット:ははは、何だ、怯えているのか? ネーロ:いえ、そうじゃなくて…さっき貴方がサブマシンガンなんて撃ったから、足場が崩れかけてっ…!? 0:言い終える前に、ネーロとターゲットの立っていた足場が崩れる。 ターゲット:はぁっ!? ネーロ:ほらぁっ!! 0:ネーロとターゲットが海に落ちる。 ヴィオラ:っ!?ジュリエッタ!!(慌てて駆け寄る) 0:海面からゴポゴポと気泡が立つ。 ヴィオラ:待ってろ、今助けてやる! ネーロ:ぷはぁっ!! ヴィオラ:! ネーロ:はぁービックリしたぁ…。 ヴィオラ:ネーロ、大丈夫か!? ネーロ:はい、僕は大丈夫です!ただ…。 ヴィオラ:? ネーロ:あのターゲット…どうやら金槌みたいで、上がれなくなっちゃったみたいで…。 ヴィオラ:…え、こんな港にアジト構えてるクセに? ネーロ:…船の方が、密売しやすいんじゃないですか?多分…。 ヴィオラ:…とりあえず、このまま溺れ死なれても寝覚め悪いし、引き上げてやるか。 ネーロ:あ、僕行きますよ。ヴィオラさんが濡れる必要無いですし。 ヴィオラ:そうか?じゃあ頼む。 ネーロ:はい!…あ、それと。 ヴィオラ:ん? ネーロ:僕、ジュリエッタじゃなくてジーノです。 ヴィオラ:あ…ご、ごめん…。 ネーロ:(海に潜る) 0:  ナレーション:こうして二人はターゲットを引き上げた後、アジトに潜入して無事密売の証拠を手に入れる事が出来た。 ナレーション:だが、二人の不安定な関係はまだまだ続く…。 0:  ヴィオラ:…ダメだな、こいつは暫く目が覚めそうにない。 ネーロ:(心の声)また光ってる!本当いつ見ても綺麗だよなぁ〜ダンさんの目! ヴィオラ:……。 ネーロ:(心の声)ダンさんってクールでカッコいいし、かと思えばすっごく優しくて頼り甲斐もあるし、顔もイケメンなのに何でモテないんだろうなぁ〜。 ヴィオラ:っ〜〜! ネーロ:(心の声)さっき名前で呼ばれた時もついドキッてしちゃったし、これじゃ男に化けてる意味が―― ヴィオラ:(遮る)聞こえてんだよ!全部!! ネーロ:……え? ヴィオラ:あ、しまっ……。 ネーロ:…ひょっとして、今の全部声に出ちゃってました!? ヴィオラ:え…。 ネーロ:あ、ああああ!忘れて下さい!お願いですから、聞かなかった事にして下さい!本当僕、次から気を付けますからあぁ!! ヴィオラ:…いや、その…うん。気を付けて…。 0:  ヴィオラ:(心の声)はぁ〜良かった、バレてなかったぁ…。いや良くねーよ!ジーノは仲間なんだぞ!?言わないとマズいだろうが! ヴィオラ:(心の声)でも今更こんな話して、「え、今までずっと聞いてたの?気持ち悪…」とか思われたりでもしたら…あぁ〜畜生!俺はどうりゃいいんだよぉ〜!! 0:突然、ヴィオラのスマホにメールが届く。 ヴィオラ:ん、何だ?ビアンコから…? ネーロ:あ、証拠のデータ化の話ですか? ヴィオラ:……。 ネーロ:…ヴィオラさん? ヴィオラ:うるっせぇんだよ引き篭もり野郎!!!(スマホを叩き落とす) ネーロ:うわぁっ!?あー画面が割れて…「ヘタレ」? ヴィオラ:あ、いや何でも無い!ごめん、急に大声出して…。 ネーロ:は、はぁ…。 ヴィオラ:(クソデカ溜息) ネーロ:…ヴィ、ヴィオラさん…? 0:  ナレーション:彼はコードネーム「ヴィオラ」、本名はダン・サクマ。 ナレーション:彼の能力名は「以心伝心」、つまり相手の心を読んだり自分の心の声を相手に伝えたり出来る能力だ。 ナレーション:幼少の頃からその異能で苦労してきたダンには、自分を羨望(せんぼう)の眼差しで見つめる彼女に対して、己の能力を伝える勇気は持ち合わせていなかったのである。 ネーロ:(心の声)や、やっぱり怒ってるよね?僕があんなヘマしたからかな…。ヴィオラさんに余計な気まで遣わせて…。 ヴィオラ:(心の声)無理無理無理言えない言えない言えない。あんなキラキラした目で見つめられて、こんなキモい能力だなんて知られたら幻滅される…! 0:  ネーロ:(ヴィオラと同時に)もし嫌われたら…どうしよう…! ヴィオラ:(ネーロと同時に) もし嫌われたら…どうしよう…!