台本概要

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タイトル レフォルム
作者名 みのるしろいし  (@siroishi_jp)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 レフォルム→改革(ドイツ語・フランス語)
(M)→モノローグ。

【お願い】
事前・事後でも構いませんので、
上演時はX(旧Twitter)等でメンション付きでポストか、DM等でも良いですので
ご連絡頂けますと、喜びます。
何らかの形で上演内容を残して頂けますと、さらに喜びます。
これを機に他の台本も閲覧頂けますと、ハンパなく喜びます。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
松田 115 松田 雅人。電子タバコを好む
泉谷 114 泉谷 沙織。紙タバコを好む
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:2006年4月1日 泉谷:本日より、営業部にてお世話になります。*泉谷《いずみや》です。 0:2023年10月15日 泉谷:(M)勤続17年、同期や先輩を追い越して総務課長になった。 泉谷:(M)周りは、「スピード出世だねぇ」「部長と寝てる」「アイツはコネ入社だから」とか、変な噂ばかり。 泉谷:(M)確かにこの会社の社長は、*泉谷《いずみや》。 泉谷:(M)私はその娘。でも、コネは一切使っていない。 泉谷:(M)全て実力。父は優しいが、仕事における姿勢は別。 泉谷:(M)入社も出世街道も、全て自分の力で突き進んできた。 泉谷:(M)営業部から総務部に異動した時は、「*左遷《させん》だ」「生き急いで女捨ててるのにもったいない」と言った。 泉谷:(M)私にその言葉は届かなかった。 泉谷:(M)父から役員業務を継ぐために社内の仕事を見るための異動。 泉谷:(M)また、働く女性目線での改革提案が欲しいとの要望だった。 泉谷:(M)総務部異動後も、誰よりも働いて誰よりも動いた。 泉谷:(M)難色を示されようともデータを出し、*懐柔《かいじゅう》していくように進めた。 泉谷:(M)それが、自分の首を絞めようとも。 泉谷:(M)20歳になって、ストレスの捌け口と憧れを求めて吸い始めた*煙草《たばこ》。そのオアシスを閉じる時が来た。 泉谷:(M)*健康増進法改正《けんこうぞうしんほうかいせい》、社会の波には逆らえず。*敷地内全面禁煙《しきちないぜんめんきんえん》。 泉谷:(M)よって今日でこの*喫煙所《きつえんじょ》を使うのは最後。残業時間に張り紙に来たが。 泉谷:(M)最後に一本だけと思い、中に入る。 泉谷:(M)すると、この時間には珍しい人の姿があった。 : 0:2023年4月1日 松田:本日より、営業部にてお世話になります、松田*雅人《まさと》です。 : 0:2023年10月16日 松田:・・・とは言ったものの、流石にこの量はやりすぎだ。 松田:新人に割り振られる量では絶対にない。 松田:押印だって本来課長の役割なのに。 松田:こんな作業終わるはずない・・・はぁ、今日も残業か。 松田:休憩するか・・・ 松田:(M)*喫煙所《きつえんじょ》に向かう、カートリッジの先端に口付け、ゆっくりと吸い込み、水蒸気を吐き出す。 松田:(M)この時間は誰も居なくて気楽だ。 泉谷:あれ?こんな時間まで残業? 松田:(M)声をかけられた俺は、1人の至福の時間から急に現実に引き戻された。 松田:は、はい! 泉谷:こんな時間まで残業? 松田:そうですね・・・まだ仕事に慣れてなくて 泉谷:上司には相談しないとダメよ? 松田:アハハ・・・ 泉谷:どこの部課? 松田:営業部法人営業課です。 泉谷:・・・あぁ。岡本課長のところね。 松田:はい。 泉谷:なるほど。納得。 松田:え? 泉谷:まあ、頑張ってね。 松田:は、はい・・・ 泉谷:それ、電子タバコ? 松田:そうです。 泉谷:へぇー、初めて見た。何で吸い始めたの? 松田:*喫煙所《きつえんじょ》って、一種のコミュニケーションの場だと思うんです。先輩の話を聞いたり出来ると思いまして。 泉谷:なるほどね、賢いじゃない。 泉谷:コミュニケーションの取り方として良いわね。 松田:健康的では無いですけどね。 泉谷:そうね(笑) 松田:あのー、お名前 泉谷:(被せて)あ、ごめん今から会議なの。行くわね! 松田:は、はい! 泉谷:とりあえず1年頑張ってみたら良いと思うわ。 松田:・・・え? 松田:(M)燻(くゆ)らせた副流煙と、ミントの香りを残して、足早に彼女は出ていった。 : 0:2023年10月17日 松田:(M)束の間のオアシスは、2週間後には物置となっていた。 : 0:2024年4月1日、総務部 松田:(M)春待つ*蕾《つぼみ》を揺らす一番風と共に、僕に突風が吹き抜ける。 松田:(M)人事異動の内示がやってきた。 松田:(M)異動先は、総務部。 松田:(M)営業部が他の部に異動することはほとんど無いらしい。 松田:(M)岡本は、「お前に才能がなかったんだろうな、追い出し部屋かも知れんな」と言った。 松田:(M)会社の花形を追われるのだ、言われても仕方ない。 松田:(M)同僚達も心なしか見下すような目だった。 : 0:2024年4月1日、総務部 泉谷:あ、いたいた。松田くん。 松田:はい!営業部から異動になりました。松田*雅人《まさと》です。 泉谷:部長の*泉谷《いずみや》です。・・・流石に覚えてないか。 松田:え・・・? 泉谷:1年頑張ったわね。 松田:あ・・・! 松田:(M)そう、あの日喫煙所で声をかけてくれたのはこの人だった。 泉谷:詳しくはまた後で話すわ。 泉谷:朝礼、行きましょ。 松田:はい! : 0:総務部、朝会 泉谷:本日より、総務部部長を拝命しました、*泉谷彩花《いずみやあやか》でございます。 泉谷:これまでの経験を活かし、社員が働きやすく出来る環境を作るのが目標です。 泉谷:よろしくお願い申し上げます。 泉谷:続けて、人事異動が発生し、3名が本日より仲間として加わります。 松田:本日付けで配属になりました。松田*雅人《まさと》と申します。 松田:2023年4月入社の2年目で、前部署の営業部では法人営業を担当していました。 松田:最初のうちはご迷惑をおかけする場面もあるかも知れませんが、一日も早く戦力になれるよう精進いたします。 松田:ご指導・ご*鞭撻《べんたつ》のほど、*何卒《なにとぞ》よろしくお願いいたします。 0:拍手 泉谷:松田さんは、業務改革推進課の所属になるわ。よろしくね。 松田:はい!よろしくお願いいたします。 : 松田:(M)朝礼後の部内ミーティング。 泉谷:業務改革推進課は、今年から新設の課になります。課長は私が兼任になります。 泉谷:昨今叫ばれている働き方改革、これを当社でも推進したい。 泉谷:そのために、各部署から集まって頂きました。よろしくお願いいたします。 松田:はい!よろしくお願いいたします。 泉谷:各部の現状を聞きたいです。交流も兼ねて個人面談をしていきます。 松田:(M)元法務部の立花さん。元経理部の平井さん、そして俺の番。 泉谷:さて、松田くんね。 松田:あの・・・ 泉谷:何? 松田:営業部だったら、僕以外に適任が居そうな気もするのですが・・・ 泉谷:フフッ、普通ならね。 泉谷:でも、松田くんは割と重要なのよ? 松田:と、言いますと? 泉谷:今回の業務改革は、いろんな目線が必要になってくるの。 泉谷:松田君のような若い人の目線も必要になる。 松田:なるほど。 泉谷:しかも、松田君のいた法人営業は、社内でも特に問題視されてるくらい残業時間が長いの。 松田:え・・・? 泉谷:原因はなんだと思う? 松田:僕らの仕事が遅いから・・・でしょうか? 泉谷:いいえ、法人営業は、本来ウチのメインでは無いの。 泉谷:だから数年前までは基準に沿ってるの。 松田:そうなんですか。 泉谷:残業実態ってどう? 松田:若手社員に残業が多いのは事実ですね。 泉谷:若手に・・・? 松田:えぇ、若手社員は残業代を請求しないものだ。 松田:とは教えられてました。 泉谷:そんなのおかしいに決まってるじゃない。どこのブラック企業よ。 松田:そうだったんですか!? 泉谷:・・・まずは営業部から必要そうね。安心して、ウチはコンプライアンス重視してるから。 松田:かしこまりました。 泉谷:とりあえず提出してもらった日報だけど、どう見ても過去数年の勤怠と差があるわよね? 松田:は、はい・・・部には正確な日報を提出していますが勤怠は定時で切ってこいと。 泉谷:定時で切らせるなら日報も定時までで書きそうなものだけど? 松田:働いた実績と日報はキチンと提出しないと働いてないとみなされてしまうので、そこは徹底されてました。 松田:恐らく上層部が書き換えたのかと。 泉谷:なるほど、上層部が抜かりないのね。 泉谷:法人営業の売り上げが、役職者に集中しているのもこの勤怠なら当然ね・・・ 泉谷:恐らく、契約前になったら担当が変わっていたのでしょう? 松田:はい、契約前になると、病気になった・怪我をしたなどで担当が変えさせられました。 泉谷:明らかな成績の横取りね・・・その音声って残っていたりする? 松田:はい、残っています。お客様とのやり取りや商談の進め方を記録するために 松田:ボイスレコーダーを持っていました。 泉谷:それ、私も昔にやっていたわ。 松田:*泉谷《いずみや》部長も営業から総務に? 泉谷:そう、その頃は営業部全体ピリピリしてたから不正なんてしようが無かったけどね。 松田:そうだったんですね。 泉谷:でも、これで働き方改革よりも前にやることができそうね・・・膿を放出しないと。 松田:部署ができたってことは、それぐらい改革に本気ってことですもんね。 泉谷:えぇ、そうよ。 松田:どのぐらい戦力になれるかはわかりませんが、頑張ります。 : 0:2024年6月21日、総務部 松田:部長、来週の全社会議での資料作成が完了いたしました。 泉谷:あ、ありがとう。すべて練り込まれてるわね。 松田:良いんですか・・・?この資料で。 泉谷:完璧よ?どうして? 松田:普段の資料は、重要な言葉や画像1つであることが多いのに、今回の資料はかなりこう・・・ 松田:一般的な会議提示資料ですよね? 泉谷:そうね。今回は部外が相手先だから、一般的なものでいいの。 泉谷:社内サイトにも掲載される予定の資料だからね。 松田:それでも文字数少なくなってしまいました・・・伝わるでしょうか。 泉谷:普段よりは多いし大丈夫よ、きっと。 松田:かしこまりました。想定質問も大丈夫そうですか? 泉谷:えぇ、最初の頃よりは準備が上手くなったわね。 松田:はい、部長の指導の賜物です。 泉谷:褒めてもらっても何も出ないわよ。 松田:期待していませんよ。 泉谷:じゃ、会社を変えるための爆弾を投下と行きましょうか。 松田:えぇ。 : 0:2024年6月24日、居酒屋 泉谷:プレゼン成功を祝して、乾杯 松田:乾杯 泉谷:幹部陣ポカーンだったわね。 松田:そりゃあ、あぁなりますよ。部署内でも知らなかった情報もありましたよね。 泉谷:だからそれぞれにプレゼンを作成してもらったのよ。 泉谷:各部署からメンバー集めたのもそれが目的でもある。 松田:部長らしいなとは思いましたが、まさか働き方改革の一歩目で会社の膿を出すとは、どこも思ってなかったでしょうね。 泉谷:まっさらに生まれ変わらせ無いとね。これからの会社の未来のためにも。 松田:そうですね、まだ始まったばかりですよね。 泉谷:タバコ、吸っていい? 松田:良いですよ。僕もいいですか? 泉谷:いいわよ、松田君、あえて*喫煙《きつえん》可能な店選んでくれたよね? 松田:そうですよ。 泉谷:そういう気遣い、素敵だと思うわ。 松田:*喫煙者《きつえんしゃ》だからこそ、中で吸って良い飲食店の情報にも詳しくなると思うんですよね。 泉谷:わかるわよ、*喫煙所《きつえんじょ》に向かうのって、1人の時だと少なくしたいもんね。 松田:はい、会社の飲み会の時もなるべく減らそうとは思っているのですが、欲には勝てなくて。 泉谷:そこは・・・私が居て良かったね? 松田:はい(笑) 泉谷:(タバコに火を点けて吸う)・・・ふぅ 泉谷:あれ?普段吸ってるのは電子タバコじゃなかったっけ? 松田:そうなんですが、いつも買ってる店が発注ミス起こしてカートリッジが無いって言われて。 松田:どうせなら紙タバコ使ってみようと思って吸ってます。 泉谷:ふーん、ってよく見たらアークローヤル!? 松田:はい、アークローヤルのパラダイスティーです。 泉谷:私と同じ銘柄じゃない! 松田:お店の人が勧めてくれたのがこれでした。 泉谷:初めて吸うにはクセ無い? 松田:そんなことなかったですよ。紅茶の香り、好きなので。 泉谷:へぇー 泉谷:ホントは吸ってみて、ダメだったら私に渡そうって魂胆だったりするー? 松田:そんなことないですよ。 泉谷:そこは嘘でもそうって言ってほしかったなぁ。 松田:そういうもんですか? 泉谷:そういうものよ。嘘も方便って言うじゃない? 松田:以後気をつけます。 泉谷:あ!でも不正隠すのはダメよ? 松田:わかってますよ。 泉谷:まあ、ほれ、かんぱーい 松田:カンパーイって、先輩、飲み過ぎ注意ですよ。 : 0:1時間後 泉谷:Zzz・・・・ 松田:先輩?先輩!? 泉谷:んぇ? 松田:んぇ?じゃないですよ! 泉谷:久しぶりにぃ・・・こうしておさけ飲んだからぁ・・・ 松田:もう・・・なんでそうなるんですかぁ。 泉谷:帰るぞぉ、松田ぁ。 松田:はいはい・・・お会計済ませたので行きますよ。 泉谷:良いぞぉ、松田ぁ。 松田:店前にタクシー呼んだら、住所言えますか? 泉谷:あ、私今近くのホテル借りてるからそこに連れてってー 松田:そ、そうですか、なら連れていきますね。 : 0:2024年6月26日、ホテル506号室 泉谷:・・・・うぅん?ハッ!? 泉谷:あれ・・・確か松田くんと飲んでて・・・? 泉谷:スマホ・・・ : 0:メッセージ 松田:昨夜は飲みに付き合っていただき、ありがとうございました。 松田:ホテルの部屋まで送り届けました。 松田:受付の方にオートロックかかると聞いていたので、そのまま失礼しました。 松田:また明後日からもご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。 : 0:2024年6月26日、ホテル506号室 泉谷:松田くん・・・やるわね。 泉谷:でも、まさかホテルの部屋まで介抱して、何もせず帰る男って実在するのね。 泉谷:って私は何を期待してるんだバカッ! 泉谷:それに、飲み代払ってないー!! : 0:2024年9月30日、総務部 泉谷:明日から制度変更ね 松田:そうですね、一気に社内が変わりそうですね。 泉谷:大変な時期が続くけどついてこれる? 松田:もちろんですよ。 泉谷:部報の発信も終わったし、退社しましょうか。 : 0:2024年9月30日、駅前 泉谷:まさか人身事故が起きるとは思わなかったわね・・・ 松田:全くですよ・・・座れていたからまだ良かったものの。 泉谷:そうね、同じ駅方面だから良かったけど、一人だったら結構地獄だったわ。 松田:同感です。 泉谷:じゃあ、ここで。 松田:部長、待ってください。 泉谷:ん? 松田:もう少しだけ時間頂けませんか? 泉谷:良いわよ、相談? 松田:はい。 泉谷:カフェも居酒屋もやってないわね・・・ 松田:駅前の公園のベンチでもいいですか? 泉谷:良いわよ。 : 0:2024年9月30日、公園 泉谷:最近は忙しくて相談とかも乗れてなかったわね。 松田:そうですね。でも、グループウェアの導入によってその点は解消されましたね。 泉谷:話しかけにくい状態でも、文章を残したりすることが出来るようになって、内部連携が綿密に出来るようになったわね。 泉谷:それでも相談出来てないことがあったの? 松田:はい、僕個人のことなので。 泉谷:ふーん。私用の相談を私に? 松田:部長。 泉谷:はい? 松田:・・・*泉谷《いずみや》さん! 泉谷:はいっ!? 松田:・・・・好きです。僕と付き合ってください。 泉谷:・・・・へっ!? 松田:*泉谷《いずみや》さんの部下になってから、仕事にやりがいや楽しさを見つけることが出来るようになって、 松田:私生活にもゆとりが持てるようになりました。 松田:そんな中で、仕事外でも*泉谷《いずみや》さんのことを見るようになって。 松田:仕事中と違う姿に凄く惹かれていきました。そこから、*泉谷《いずみや》さんのことをもっと知りたい。 松田:もっと近くでいろんな感情を分かち合いたいと思うようになりました。 松田:それが好きになっているということに僕は気づきました。 泉谷:・・・でも、私、*松田《まつだ》くんよりもかなり上だよ? 松田:正直、年齢差なんて関係ないとは言えないと思います。 松田:価値観の差とか僕が想像も出来ない差があるかもしれません。 松田:でも、僕は*泉谷《いずみや》さんが好きなんです。 : 泉谷:*松田《まつだ》くん・・・後悔しないの? 松田:むしろ、今ここで言わないと後悔すると思いました。 泉谷:・・・・これは、夢よね?*松田《まつだ》君。そうに違いないわ。 泉谷:もしくは私の祖父がウチの社長だったて知っていてそこの地位に惚れたの? 松田:・・・へ。 泉谷:ほ、ほらね!そうなのよ!そうでなきゃおかしいよね! 松田:へぇっ!?*泉谷《いずみや》さんの祖父さん、社長だったんですか!? 泉谷:・・・え!?知らなかったの!? 松田:はい。 泉谷:・・・・フッ。 松田:・・・? 泉谷:・・・私と同じ煙草吸っていたのは? 松田:・・・吸っているって知っていて、その香りが好きになったからです。 泉谷:・・・飲みに行った日にホテルまで送ってくれた時は? 松田:・・・本当に気持ちよさそうに寝てたので、起こすのもいけないって思って帰りました。 泉谷:・・・バカ正直すぎるのよ。 松田:え? 泉谷:そこは・・・知りたくなかったかな。 松田:ごめんなさい・・・ 泉谷:でも、その天然ボケなところ。嫌いじゃないよ。 松田:・・・・はい? 泉谷:褒めているのよ?私も気になっては居たから。 泉谷:それなら・・・試してみる? 松田:試す? 泉谷:若さゆえの過ちっていう可能性もあるでしょ? 泉谷:だから、お試しと思ってくれていいわ。 松田:僕は本気ですよ。 泉谷:そう思っていても実は違うってことが若い頃にはあるのよ。 松田:・・・そういうものですか。 泉谷:ええ、きっと。 松田:・・・でも、それって泉谷《いずみや》さん。 松田:今は僕のことに興味を持ってくれているってことですよね? 泉谷:ん? 松田:だって、僕のことに仕事以外で興味が無かったらそんな提案にならないと思います。 泉谷:・・・負けたわ。 松田:フフッ。 泉谷:あーもう!*雅人《まさと》! 松田:はい?! 泉谷:今から恋人同士になるんでしょ?名前で呼ばせてよ。 松田:・・・・はい! : 0:2027年2月1日、社内 松田:(M)2月の社内広報を準備する。 松田:(M)メイン記事は新制度を利用した社員へのインタビュー。 松田:(M)と言っても今回の対象は僕。 : 0:--(以下、泉谷《いずみや》のモノローグはインタビュアーのセリフ) 泉谷:(M)今回は、社内男性社員で初めて育児休暇制度を利用された、*泉谷雅人《いずみやまさと》さんにインタビューです。 泉谷:(M)取得しようとしたきっかけは? 松田:妻と共に子どもの成長に携わりたいという気持ちが大きかったです。 松田:誰しもその気持ちはあると思いますが、こうして育休を取ることにまだまだ抵抗があると思いました。 松田:その旗手になる心持ちもあって、育児休暇を取得しました。 泉谷:(M)取得してみてここが大変だったという点はあるでしょうか? 松田:社内業務については、滞りなく進めていただくことが出来ました。 松田:グループウェアの導入によって、引き継ぐべき内容を文章で確実に共有できるようになったのが大きいと思います。 松田:一番大変だったのは、夫婦揃って吸っていたタバコを止めることです。 泉谷:(M)育児はそこまで大変ではなかったのでしょうか? 松田:大変な点はもちろん有りました。 松田:でも、それらが全て初めての経験だったので、大変になるのがわかっていたため、良い経験だと思えています。 松田:育児休暇を取って参加することに寄って、大変だな、辛いなと思う気持ちや、 松田:子どもが可愛い、嬉しいなと思えることを共有できたことが、育児が大変という内容を軽減出来た理由だと思います。 泉谷:(M)なるほど。ありがとうございました。

0:2006年4月1日 泉谷:本日より、営業部にてお世話になります。*泉谷《いずみや》です。 0:2023年10月15日 泉谷:(M)勤続17年、同期や先輩を追い越して総務課長になった。 泉谷:(M)周りは、「スピード出世だねぇ」「部長と寝てる」「アイツはコネ入社だから」とか、変な噂ばかり。 泉谷:(M)確かにこの会社の社長は、*泉谷《いずみや》。 泉谷:(M)私はその娘。でも、コネは一切使っていない。 泉谷:(M)全て実力。父は優しいが、仕事における姿勢は別。 泉谷:(M)入社も出世街道も、全て自分の力で突き進んできた。 泉谷:(M)営業部から総務部に異動した時は、「*左遷《させん》だ」「生き急いで女捨ててるのにもったいない」と言った。 泉谷:(M)私にその言葉は届かなかった。 泉谷:(M)父から役員業務を継ぐために社内の仕事を見るための異動。 泉谷:(M)また、働く女性目線での改革提案が欲しいとの要望だった。 泉谷:(M)総務部異動後も、誰よりも働いて誰よりも動いた。 泉谷:(M)難色を示されようともデータを出し、*懐柔《かいじゅう》していくように進めた。 泉谷:(M)それが、自分の首を絞めようとも。 泉谷:(M)20歳になって、ストレスの捌け口と憧れを求めて吸い始めた*煙草《たばこ》。そのオアシスを閉じる時が来た。 泉谷:(M)*健康増進法改正《けんこうぞうしんほうかいせい》、社会の波には逆らえず。*敷地内全面禁煙《しきちないぜんめんきんえん》。 泉谷:(M)よって今日でこの*喫煙所《きつえんじょ》を使うのは最後。残業時間に張り紙に来たが。 泉谷:(M)最後に一本だけと思い、中に入る。 泉谷:(M)すると、この時間には珍しい人の姿があった。 : 0:2023年4月1日 松田:本日より、営業部にてお世話になります、松田*雅人《まさと》です。 : 0:2023年10月16日 松田:・・・とは言ったものの、流石にこの量はやりすぎだ。 松田:新人に割り振られる量では絶対にない。 松田:押印だって本来課長の役割なのに。 松田:こんな作業終わるはずない・・・はぁ、今日も残業か。 松田:休憩するか・・・ 松田:(M)*喫煙所《きつえんじょ》に向かう、カートリッジの先端に口付け、ゆっくりと吸い込み、水蒸気を吐き出す。 松田:(M)この時間は誰も居なくて気楽だ。 泉谷:あれ?こんな時間まで残業? 松田:(M)声をかけられた俺は、1人の至福の時間から急に現実に引き戻された。 松田:は、はい! 泉谷:こんな時間まで残業? 松田:そうですね・・・まだ仕事に慣れてなくて 泉谷:上司には相談しないとダメよ? 松田:アハハ・・・ 泉谷:どこの部課? 松田:営業部法人営業課です。 泉谷:・・・あぁ。岡本課長のところね。 松田:はい。 泉谷:なるほど。納得。 松田:え? 泉谷:まあ、頑張ってね。 松田:は、はい・・・ 泉谷:それ、電子タバコ? 松田:そうです。 泉谷:へぇー、初めて見た。何で吸い始めたの? 松田:*喫煙所《きつえんじょ》って、一種のコミュニケーションの場だと思うんです。先輩の話を聞いたり出来ると思いまして。 泉谷:なるほどね、賢いじゃない。 泉谷:コミュニケーションの取り方として良いわね。 松田:健康的では無いですけどね。 泉谷:そうね(笑) 松田:あのー、お名前 泉谷:(被せて)あ、ごめん今から会議なの。行くわね! 松田:は、はい! 泉谷:とりあえず1年頑張ってみたら良いと思うわ。 松田:・・・え? 松田:(M)燻(くゆ)らせた副流煙と、ミントの香りを残して、足早に彼女は出ていった。 : 0:2023年10月17日 松田:(M)束の間のオアシスは、2週間後には物置となっていた。 : 0:2024年4月1日、総務部 松田:(M)春待つ*蕾《つぼみ》を揺らす一番風と共に、僕に突風が吹き抜ける。 松田:(M)人事異動の内示がやってきた。 松田:(M)異動先は、総務部。 松田:(M)営業部が他の部に異動することはほとんど無いらしい。 松田:(M)岡本は、「お前に才能がなかったんだろうな、追い出し部屋かも知れんな」と言った。 松田:(M)会社の花形を追われるのだ、言われても仕方ない。 松田:(M)同僚達も心なしか見下すような目だった。 : 0:2024年4月1日、総務部 泉谷:あ、いたいた。松田くん。 松田:はい!営業部から異動になりました。松田*雅人《まさと》です。 泉谷:部長の*泉谷《いずみや》です。・・・流石に覚えてないか。 松田:え・・・? 泉谷:1年頑張ったわね。 松田:あ・・・! 松田:(M)そう、あの日喫煙所で声をかけてくれたのはこの人だった。 泉谷:詳しくはまた後で話すわ。 泉谷:朝礼、行きましょ。 松田:はい! : 0:総務部、朝会 泉谷:本日より、総務部部長を拝命しました、*泉谷彩花《いずみやあやか》でございます。 泉谷:これまでの経験を活かし、社員が働きやすく出来る環境を作るのが目標です。 泉谷:よろしくお願い申し上げます。 泉谷:続けて、人事異動が発生し、3名が本日より仲間として加わります。 松田:本日付けで配属になりました。松田*雅人《まさと》と申します。 松田:2023年4月入社の2年目で、前部署の営業部では法人営業を担当していました。 松田:最初のうちはご迷惑をおかけする場面もあるかも知れませんが、一日も早く戦力になれるよう精進いたします。 松田:ご指導・ご*鞭撻《べんたつ》のほど、*何卒《なにとぞ》よろしくお願いいたします。 0:拍手 泉谷:松田さんは、業務改革推進課の所属になるわ。よろしくね。 松田:はい!よろしくお願いいたします。 : 松田:(M)朝礼後の部内ミーティング。 泉谷:業務改革推進課は、今年から新設の課になります。課長は私が兼任になります。 泉谷:昨今叫ばれている働き方改革、これを当社でも推進したい。 泉谷:そのために、各部署から集まって頂きました。よろしくお願いいたします。 松田:はい!よろしくお願いいたします。 泉谷:各部の現状を聞きたいです。交流も兼ねて個人面談をしていきます。 松田:(M)元法務部の立花さん。元経理部の平井さん、そして俺の番。 泉谷:さて、松田くんね。 松田:あの・・・ 泉谷:何? 松田:営業部だったら、僕以外に適任が居そうな気もするのですが・・・ 泉谷:フフッ、普通ならね。 泉谷:でも、松田くんは割と重要なのよ? 松田:と、言いますと? 泉谷:今回の業務改革は、いろんな目線が必要になってくるの。 泉谷:松田君のような若い人の目線も必要になる。 松田:なるほど。 泉谷:しかも、松田君のいた法人営業は、社内でも特に問題視されてるくらい残業時間が長いの。 松田:え・・・? 泉谷:原因はなんだと思う? 松田:僕らの仕事が遅いから・・・でしょうか? 泉谷:いいえ、法人営業は、本来ウチのメインでは無いの。 泉谷:だから数年前までは基準に沿ってるの。 松田:そうなんですか。 泉谷:残業実態ってどう? 松田:若手社員に残業が多いのは事実ですね。 泉谷:若手に・・・? 松田:えぇ、若手社員は残業代を請求しないものだ。 松田:とは教えられてました。 泉谷:そんなのおかしいに決まってるじゃない。どこのブラック企業よ。 松田:そうだったんですか!? 泉谷:・・・まずは営業部から必要そうね。安心して、ウチはコンプライアンス重視してるから。 松田:かしこまりました。 泉谷:とりあえず提出してもらった日報だけど、どう見ても過去数年の勤怠と差があるわよね? 松田:は、はい・・・部には正確な日報を提出していますが勤怠は定時で切ってこいと。 泉谷:定時で切らせるなら日報も定時までで書きそうなものだけど? 松田:働いた実績と日報はキチンと提出しないと働いてないとみなされてしまうので、そこは徹底されてました。 松田:恐らく上層部が書き換えたのかと。 泉谷:なるほど、上層部が抜かりないのね。 泉谷:法人営業の売り上げが、役職者に集中しているのもこの勤怠なら当然ね・・・ 泉谷:恐らく、契約前になったら担当が変わっていたのでしょう? 松田:はい、契約前になると、病気になった・怪我をしたなどで担当が変えさせられました。 泉谷:明らかな成績の横取りね・・・その音声って残っていたりする? 松田:はい、残っています。お客様とのやり取りや商談の進め方を記録するために 松田:ボイスレコーダーを持っていました。 泉谷:それ、私も昔にやっていたわ。 松田:*泉谷《いずみや》部長も営業から総務に? 泉谷:そう、その頃は営業部全体ピリピリしてたから不正なんてしようが無かったけどね。 松田:そうだったんですね。 泉谷:でも、これで働き方改革よりも前にやることができそうね・・・膿を放出しないと。 松田:部署ができたってことは、それぐらい改革に本気ってことですもんね。 泉谷:えぇ、そうよ。 松田:どのぐらい戦力になれるかはわかりませんが、頑張ります。 : 0:2024年6月21日、総務部 松田:部長、来週の全社会議での資料作成が完了いたしました。 泉谷:あ、ありがとう。すべて練り込まれてるわね。 松田:良いんですか・・・?この資料で。 泉谷:完璧よ?どうして? 松田:普段の資料は、重要な言葉や画像1つであることが多いのに、今回の資料はかなりこう・・・ 松田:一般的な会議提示資料ですよね? 泉谷:そうね。今回は部外が相手先だから、一般的なものでいいの。 泉谷:社内サイトにも掲載される予定の資料だからね。 松田:それでも文字数少なくなってしまいました・・・伝わるでしょうか。 泉谷:普段よりは多いし大丈夫よ、きっと。 松田:かしこまりました。想定質問も大丈夫そうですか? 泉谷:えぇ、最初の頃よりは準備が上手くなったわね。 松田:はい、部長の指導の賜物です。 泉谷:褒めてもらっても何も出ないわよ。 松田:期待していませんよ。 泉谷:じゃ、会社を変えるための爆弾を投下と行きましょうか。 松田:えぇ。 : 0:2024年6月24日、居酒屋 泉谷:プレゼン成功を祝して、乾杯 松田:乾杯 泉谷:幹部陣ポカーンだったわね。 松田:そりゃあ、あぁなりますよ。部署内でも知らなかった情報もありましたよね。 泉谷:だからそれぞれにプレゼンを作成してもらったのよ。 泉谷:各部署からメンバー集めたのもそれが目的でもある。 松田:部長らしいなとは思いましたが、まさか働き方改革の一歩目で会社の膿を出すとは、どこも思ってなかったでしょうね。 泉谷:まっさらに生まれ変わらせ無いとね。これからの会社の未来のためにも。 松田:そうですね、まだ始まったばかりですよね。 泉谷:タバコ、吸っていい? 松田:良いですよ。僕もいいですか? 泉谷:いいわよ、松田君、あえて*喫煙《きつえん》可能な店選んでくれたよね? 松田:そうですよ。 泉谷:そういう気遣い、素敵だと思うわ。 松田:*喫煙者《きつえんしゃ》だからこそ、中で吸って良い飲食店の情報にも詳しくなると思うんですよね。 泉谷:わかるわよ、*喫煙所《きつえんじょ》に向かうのって、1人の時だと少なくしたいもんね。 松田:はい、会社の飲み会の時もなるべく減らそうとは思っているのですが、欲には勝てなくて。 泉谷:そこは・・・私が居て良かったね? 松田:はい(笑) 泉谷:(タバコに火を点けて吸う)・・・ふぅ 泉谷:あれ?普段吸ってるのは電子タバコじゃなかったっけ? 松田:そうなんですが、いつも買ってる店が発注ミス起こしてカートリッジが無いって言われて。 松田:どうせなら紙タバコ使ってみようと思って吸ってます。 泉谷:ふーん、ってよく見たらアークローヤル!? 松田:はい、アークローヤルのパラダイスティーです。 泉谷:私と同じ銘柄じゃない! 松田:お店の人が勧めてくれたのがこれでした。 泉谷:初めて吸うにはクセ無い? 松田:そんなことなかったですよ。紅茶の香り、好きなので。 泉谷:へぇー 泉谷:ホントは吸ってみて、ダメだったら私に渡そうって魂胆だったりするー? 松田:そんなことないですよ。 泉谷:そこは嘘でもそうって言ってほしかったなぁ。 松田:そういうもんですか? 泉谷:そういうものよ。嘘も方便って言うじゃない? 松田:以後気をつけます。 泉谷:あ!でも不正隠すのはダメよ? 松田:わかってますよ。 泉谷:まあ、ほれ、かんぱーい 松田:カンパーイって、先輩、飲み過ぎ注意ですよ。 : 0:1時間後 泉谷:Zzz・・・・ 松田:先輩?先輩!? 泉谷:んぇ? 松田:んぇ?じゃないですよ! 泉谷:久しぶりにぃ・・・こうしておさけ飲んだからぁ・・・ 松田:もう・・・なんでそうなるんですかぁ。 泉谷:帰るぞぉ、松田ぁ。 松田:はいはい・・・お会計済ませたので行きますよ。 泉谷:良いぞぉ、松田ぁ。 松田:店前にタクシー呼んだら、住所言えますか? 泉谷:あ、私今近くのホテル借りてるからそこに連れてってー 松田:そ、そうですか、なら連れていきますね。 : 0:2024年6月26日、ホテル506号室 泉谷:・・・・うぅん?ハッ!? 泉谷:あれ・・・確か松田くんと飲んでて・・・? 泉谷:スマホ・・・ : 0:メッセージ 松田:昨夜は飲みに付き合っていただき、ありがとうございました。 松田:ホテルの部屋まで送り届けました。 松田:受付の方にオートロックかかると聞いていたので、そのまま失礼しました。 松田:また明後日からもご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。 : 0:2024年6月26日、ホテル506号室 泉谷:松田くん・・・やるわね。 泉谷:でも、まさかホテルの部屋まで介抱して、何もせず帰る男って実在するのね。 泉谷:って私は何を期待してるんだバカッ! 泉谷:それに、飲み代払ってないー!! : 0:2024年9月30日、総務部 泉谷:明日から制度変更ね 松田:そうですね、一気に社内が変わりそうですね。 泉谷:大変な時期が続くけどついてこれる? 松田:もちろんですよ。 泉谷:部報の発信も終わったし、退社しましょうか。 : 0:2024年9月30日、駅前 泉谷:まさか人身事故が起きるとは思わなかったわね・・・ 松田:全くですよ・・・座れていたからまだ良かったものの。 泉谷:そうね、同じ駅方面だから良かったけど、一人だったら結構地獄だったわ。 松田:同感です。 泉谷:じゃあ、ここで。 松田:部長、待ってください。 泉谷:ん? 松田:もう少しだけ時間頂けませんか? 泉谷:良いわよ、相談? 松田:はい。 泉谷:カフェも居酒屋もやってないわね・・・ 松田:駅前の公園のベンチでもいいですか? 泉谷:良いわよ。 : 0:2024年9月30日、公園 泉谷:最近は忙しくて相談とかも乗れてなかったわね。 松田:そうですね。でも、グループウェアの導入によってその点は解消されましたね。 泉谷:話しかけにくい状態でも、文章を残したりすることが出来るようになって、内部連携が綿密に出来るようになったわね。 泉谷:それでも相談出来てないことがあったの? 松田:はい、僕個人のことなので。 泉谷:ふーん。私用の相談を私に? 松田:部長。 泉谷:はい? 松田:・・・*泉谷《いずみや》さん! 泉谷:はいっ!? 松田:・・・・好きです。僕と付き合ってください。 泉谷:・・・・へっ!? 松田:*泉谷《いずみや》さんの部下になってから、仕事にやりがいや楽しさを見つけることが出来るようになって、 松田:私生活にもゆとりが持てるようになりました。 松田:そんな中で、仕事外でも*泉谷《いずみや》さんのことを見るようになって。 松田:仕事中と違う姿に凄く惹かれていきました。そこから、*泉谷《いずみや》さんのことをもっと知りたい。 松田:もっと近くでいろんな感情を分かち合いたいと思うようになりました。 松田:それが好きになっているということに僕は気づきました。 泉谷:・・・でも、私、*松田《まつだ》くんよりもかなり上だよ? 松田:正直、年齢差なんて関係ないとは言えないと思います。 松田:価値観の差とか僕が想像も出来ない差があるかもしれません。 松田:でも、僕は*泉谷《いずみや》さんが好きなんです。 : 泉谷:*松田《まつだ》くん・・・後悔しないの? 松田:むしろ、今ここで言わないと後悔すると思いました。 泉谷:・・・・これは、夢よね?*松田《まつだ》君。そうに違いないわ。 泉谷:もしくは私の祖父がウチの社長だったて知っていてそこの地位に惚れたの? 松田:・・・へ。 泉谷:ほ、ほらね!そうなのよ!そうでなきゃおかしいよね! 松田:へぇっ!?*泉谷《いずみや》さんの祖父さん、社長だったんですか!? 泉谷:・・・え!?知らなかったの!? 松田:はい。 泉谷:・・・・フッ。 松田:・・・? 泉谷:・・・私と同じ煙草吸っていたのは? 松田:・・・吸っているって知っていて、その香りが好きになったからです。 泉谷:・・・飲みに行った日にホテルまで送ってくれた時は? 松田:・・・本当に気持ちよさそうに寝てたので、起こすのもいけないって思って帰りました。 泉谷:・・・バカ正直すぎるのよ。 松田:え? 泉谷:そこは・・・知りたくなかったかな。 松田:ごめんなさい・・・ 泉谷:でも、その天然ボケなところ。嫌いじゃないよ。 松田:・・・・はい? 泉谷:褒めているのよ?私も気になっては居たから。 泉谷:それなら・・・試してみる? 松田:試す? 泉谷:若さゆえの過ちっていう可能性もあるでしょ? 泉谷:だから、お試しと思ってくれていいわ。 松田:僕は本気ですよ。 泉谷:そう思っていても実は違うってことが若い頃にはあるのよ。 松田:・・・そういうものですか。 泉谷:ええ、きっと。 松田:・・・でも、それって泉谷《いずみや》さん。 松田:今は僕のことに興味を持ってくれているってことですよね? 泉谷:ん? 松田:だって、僕のことに仕事以外で興味が無かったらそんな提案にならないと思います。 泉谷:・・・負けたわ。 松田:フフッ。 泉谷:あーもう!*雅人《まさと》! 松田:はい?! 泉谷:今から恋人同士になるんでしょ?名前で呼ばせてよ。 松田:・・・・はい! : 0:2027年2月1日、社内 松田:(M)2月の社内広報を準備する。 松田:(M)メイン記事は新制度を利用した社員へのインタビュー。 松田:(M)と言っても今回の対象は僕。 : 0:--(以下、泉谷《いずみや》のモノローグはインタビュアーのセリフ) 泉谷:(M)今回は、社内男性社員で初めて育児休暇制度を利用された、*泉谷雅人《いずみやまさと》さんにインタビューです。 泉谷:(M)取得しようとしたきっかけは? 松田:妻と共に子どもの成長に携わりたいという気持ちが大きかったです。 松田:誰しもその気持ちはあると思いますが、こうして育休を取ることにまだまだ抵抗があると思いました。 松田:その旗手になる心持ちもあって、育児休暇を取得しました。 泉谷:(M)取得してみてここが大変だったという点はあるでしょうか? 松田:社内業務については、滞りなく進めていただくことが出来ました。 松田:グループウェアの導入によって、引き継ぐべき内容を文章で確実に共有できるようになったのが大きいと思います。 松田:一番大変だったのは、夫婦揃って吸っていたタバコを止めることです。 泉谷:(M)育児はそこまで大変ではなかったのでしょうか? 松田:大変な点はもちろん有りました。 松田:でも、それらが全て初めての経験だったので、大変になるのがわかっていたため、良い経験だと思えています。 松田:育児休暇を取って参加することに寄って、大変だな、辛いなと思う気持ちや、 松田:子どもが可愛い、嬉しいなと思えることを共有できたことが、育児が大変という内容を軽減出来た理由だと思います。 泉谷:(M)なるほど。ありがとうございました。